結論
東京産業は、三菱重工の製品を中部以東で売る代理店を軸に、発電所の機器や保守、原子力関連の工事、環境・生産設備を扱う機械商社だ。売上は632億円、営業利益は34億円で、2026年3月期の営業利益は過去最高だった。
筆者の結論は、今の値段は割高寄りというものだ。理由は資本効率にある。自己資本の厚さに比べて利益が小さく、10年後の中立でもROEは7%台にとどまり、資本コストに届かない。
稼ぎの柱は火力と原子力の保守・更新である。仕様が決まれば長く続く仕事で、10年で数量が大きく崩れる姿は描きにくい。一方で、太陽光の事業投資では大きな損失を出し、訴訟の和解金30億円も払った。会計処理の誤りで課徴金も受けている。経営の体質には傷が残る。
中立では、原子力が伸び、再生可能エネルギーの工事が細り、営業利益は33億円前後に落ち着く。物価で名目の数字はふくらむが、実質の成長は乏しい。時価総額275億円は、会社が示す今期の純利益17億円の16倍にあたる。安全域は見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家の目で見れば、東京産業は「わかる事業だが、安く買えない会社」である。発電所と原子力施設の保守という、10年後も必要な仕事を持つ。それは評価できる。
ただし、株主が受け取る利益は少ない。自己資本250億円に対し、会社の計画する純利益は17億円だ。10年後の中立でも、純利益は25億円、ROEは7%台である。資本コストを下回る事業に、帳簿の資本が眠っている。
資本の使い方にも疑問が残る。太陽光の事業投資と、その後始末で、数年分の利益を失った。経営は反省し、リスク管理を改めたと説明しているが、統治の傷は数字で裏づけられるまで消えない。
払う値段はどうか。時価総額275億円は純資産とほぼ同じで、一見、割安に見える。しかし、ROEが資本コスト未満なら帳簿の価値は満額ではない。稼ぐ力に対して値段は高めだ。安全域は薄い。筆者は、この会社を「持ち続けたい事業」とは言わない。
何で稼ぐ会社か
東京産業は、環境・エネルギーに強い機械総合商社を名乗る。2026年3月期の売上632億円は、大きく4つの領域に分かれる。
火力は売上54億円、営業利益9億円。発電所の補機や部品の納入、定期点検などの保守が中心で、高効率設備への大型リプレース工事も受けた。三菱重工の販売代理店として、中部以東の火力向けを担う。
原子力等は売上52億円、営業利益7.3億円。青森・六ヶ所村の再処理工場で進む大規模な安全対策工事など、核燃料サイクル施設の保守と工事が柱だ。会社は2028年3月期以降の本格的な収益貢献を見込む。
再生可能エネルギーは売上170億円、営業利益12億円(臨時収益4.7億円を含む)。バイオマス燃料の供給と、メガソーラーなどの建設請負で成り立つ。新しい建設請負の受注は止めており、積み上げた案件を引き渡していく段階にある。
生産・環境設備は売上353億円、営業利益5.8億円。工場向けの生産設備、環境機器、包装資材、化学品、生活産業向けの素材などで、点数は多いが利益率は低い。欧州の子会社も持つ。
法定の区分では電力、環境・化学・機械、生活産業の3つで開示する。電力が利益の約6割を稼ぎ、売上の過半を占める環境・化学・機械は薄利だ。
優良さと弱いところ
優良さは限定的だ。強みは、発電所や原子力施設という「止められない設備」の保守に深く入っていることである。設備ごとに仕様と履歴を知る商社が入れ替わりにくく、定期の仕事が繰り返し来る。三菱重工の代理店という看板も、新設や更新の案件への入口になる。
弱みは3つある。第1に利益率が低い。営業利益率は過去12年で最高でも5%台で、多くの期は1〜3%だった。第2に仕入先への依存が大きい。代理店の権益は仕入先が握っており、商社が値段を決める力は弱い。第3に、経営の規律に疑問符がつく。太陽光のEPC(設計・調達・建設の一括請負)と自社発電への投資で損失を出し、貸倒引当金の過少計上などで2025年に課徴金1,750万円の命令を受けた。
財務は、現金193億円に対し純現金は63億円、自己資本比率は24.7%である。商社として標準的な厚みで、強いとは言えない。ROEは過去10年の中央値で7%弱にすぎない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、あっても薄い。筆者は、残る割合を普通とみて評価する。強い堀とは扱わない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は、国内の発電設備と、その周辺の産業設備である。需要は3つの流れで決まる。
1つ目は火力だ。国内の石炭火力は減らす方向だが、電力の安定供給のため、LNG火力の高効率化や更新、容量市場に支えられた既存設備の維持が続く。長期の脱炭素電源オークションでも、火力の維持に資金が回る構図がある。2030年に石炭火力で20%のアンモニアを混ぜて燃やす計画もあり、混焼設備の改造需要が見込める。数量は横ばいから緩やかな減少と見るのが妥当だ。
2つ目は原子力である。柏崎刈羽6号機が2026年4月に営業運転に入るなど、再稼働が進む。安全対策、定期点検、再処理工場の保守は、長期にわたり続く。ここは数量が伸びる数少ない領域だ。
3つ目は再生可能エネルギーだ。太陽光は固定価格買取制度(FIT)の山を越えた。同社も建設請負の新規受注をやめた。バイオマス燃料の供給のような、契約が長い仕事だけが残る。
競合は、同じ三菱重工系の西華産業(西日本が地盤)や第一実業、また電力会社の系列会社や重工メーカーの直販だ。入札と指名で決まる案件が多く、商社の取り分は薄い。メーカーが直接売る流れも、長期には取り分を削る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心である。中期経営計画「T-ScaleUp2027」は、純資産配当率(DOE)4%以上を掲げる。配当性向は2026年3月期で約39%だった。配当は利益に連動せず自己資本に連動するので、利益が落ちても減りにくい。自社株買いは機動的に検討する姿勢だが、実績は小さい。
中期経営計画の最終年度、2027年3月期の目標は売上730億円・営業利益25億円・純利益17億円・ROE8%だった。売上は630億円に引き下げた。営業利益と純利益は据え置きである。
資本政策で目を引くのは負の面だ。太陽光の訴訟は2026年4月に和解し、和解金30億円を特別損失とした。自社保有の太陽光は売却を終え、投資キャッシュフローで50億円が入った。不採算の子会社の清算やEV関連の見直しも進めている。
M&Aは、成長投資24億円の枠で、CO2削減に役立つ分野を狙う方針だ。三菱重工は大株主で、持株比率は約9%まで下がったとされる。時価総額が小さく、TOB(株式公開買付け)で買われる側になる可能性は否定できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
原子力と火力の保守は、これから数年で収益の厚みを増す。再処理工場の安全対策は進行中で、2028年3月期以降に本格的な貢献が見込まれる。柏崎刈羽6号機の営業運転開始のように、再稼働が現実のものとなり、点検と保守の仕事が増える。火力は高効率設備への大型リプレースを受注済みで、アンモニア混焼の改造需要が2030年に向けて立ち上がる。
太陽光の損失は、訴訟の和解と資産の売却で出口が見えた。新規の建設請負をやめ、不採算の子会社を清算し、EV関連も縮小する。重荷が消えれば、利益は保守とバイオマス燃料の安定収益だけになる。営業利益は2026年3月期に過去最高の34億円を出した。
自己資本比率は24.7%で純現金63億円と、財務に傷はない。DOE4%以上の配当方針は、利益が落ちても配当が減りにくい強みである。三菱重工の代理店という地位は、新設案件の入口になり続ける。時価総額が小さく、再編で買われる可能性もある。10年で営業利益が50億円近くまで伸び、PERが11倍台に乗る筋書きは、十分にありうる。
慎重な見方
稼ぐ力が弱い。営業利益率は過去12年で最高でも5%台で、2027年3月期の計画は営業利益25億円、純利益17億円と、減益を会社自身が見込む。34億円の営業利益には臨時収益4.7億円と貸倒引当金の戻入が含まれ、実力は27億円前後だ。
原子力は伸びても、元請けの重工メーカーが利益の大半を取る。商社の取り分は薄く、入札で値段を叩かれる。火力は国内の石炭火力の削減で、長期には縮む領域だ。再生可能エネルギーは、建設請負を止めたので売上が170億円から細る。
統治の傷は深い。太陽光で数年分の利益を失い、会計処理の誤りで課徴金を受け、2026年4月には30億円の和解金を払った。再発防止の仕組みが働いているかは、まだ証明されていない。
財務も見かけほど強くない。現金193億円の多くは前受金や買掛金の時間差で、自由に使えるお金ではない。ROEは10年後でも7%台で、資本コストに届かず、帳簿の資本は満額の価値を持たない。今の時価総額は、この低い稼ぐ力にしては高い。
どちらに重みを置いたか
保守の安定は本物だが、利益の水準は低く、ROEは資本コストに届かないままという見方が強いと判断した。強気の言い分である原子力の伸びは、中立の数量に織り込んだ。確率は中立を中心に置き、統治の傷と請負の波を考えて、やや悲観側と悲観側をわずかに厚くした。楽観は、原子力が計画以上に伸び、代理店の取り分が広がる筋書きに絞った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,193 円312 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 416 円109 億円)。 今の値に割り戻すと 852 円223 億円、今との差 −19.2%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,149 円561 億円 | 498 円130 億円 | +150.9% | +9.6% | 185 円48 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,684 円440 億円 | 463 円121 億円 | +103.6% | +7.4% | 451 円118 億円 |
| 中立 | 37% | 1,385 円362 億円 | 444 円116 億円 | +73.3% | +5.7% | 677 円177 億円 |
| やや悲観 | 24% | 660 円172 億円 | 379 円99 億円 | −1.6% | −0.2% | 249 円65 億円 |
| 悲観 | 11% | 170 円45 億円 | 257 円67 億円 | −59.5% | −8.7% | 47 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,193 円312 億円 | 416 円109 億円 | +52.5% | +4.3% | 1,609 円420 億円 |
今の株価時価総額 1,055 円276 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 原子力の拡大と代理店権益の広がりが重なる 利益 37 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 2,149 円561 億円
原子力の再稼働が相次ぎ、再処理工場とあわせて保守・安全対策の工事が高い水準で続く。原子力等の案件数は今の1.7倍に増える。火力は高効率設備への更新と、アンモニア混焼の改造が重なり、単価も上がる。再生可能エネルギーはバイオマス燃料の長期契約が積み上がり、建設請負の細りを補う。
統治の立て直しが実を結び、不採算の事業は整理が終わる。営業利益率は5%台半ばまで上がるが、過去最高の水準を超えない。三菱重工との関係が深まり、大株主の下で再編が進む可能性も、この筋書きでは前向きに働く。配当はDOE4%超を保ち、ROEは9%台に届く。
- 火力:数量 330(納入・保守の案件数(件))× 価格 0.25(1件あたり売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 13 億円。更新・混焼で数量増
- 原子力等:数量 340(工事・保守・機器販売の案件数(件))× 価格 0.36(1件あたり売上(億円))→ 売上 124 億円・営業利益 16 億円。案件数が今の1.7倍
- 再生可能エネルギー:数量 72.3(燃料供給契約・工事の案件数(件))× 価格 2.80(1件あたり売上(億円))→ 売上 202 億円・営業利益 10 億円。燃料契約が残る
- 生産・環境設備:数量 900(取引先数(社))× 価格 0.54(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 487 億円・営業利益 10 億円。物価分を転嫁
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.74 倍、時価総額 544 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:原子力の再稼働と再処理工場の工事が計画以上に長く続き、代理店の取り分も広がる必要がある。条件が多く重なるので7%にとどめた。
やや楽観 21% 原子力が伸び、火力の更新が着実に進む 利益 30 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 1,684 円440 億円
原子力の安全対策と保守が計画どおり積み上がり、案件数は今の1.45倍になる。火力は国内の更新と混焼の改造需要を取り込み、数量は横ばいを保つ。生産・環境設備は物価の分を値上げで転嫁し、利益率をわずかに上げる。
再生可能エネルギーは建設請負の終了で売上が減るが、バイオマス燃料の長期契約が残り、利益は小さな黒字を保つ。統治上の問題は再発しない。
営業利益は40億円弱、利益率は5%に近づく。過去の山には届かない。
三菱重工の代理店としての地位は保たれ、仕入先との関係が悪化する場面もない。ROEは8%台まで上がり、資本コストにわずかに届く姿だ。多くの業界見通しの上位に近い、無理のない10年といえる。
- 火力:数量 315(納入・保守の案件数(件))× 価格 0.25(1件あたり売上(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 12 億円。数量は微増
- 原子力等:数量 290(工事・保守・機器販売の案件数(件))× 価格 0.36(1件あたり売上(億円))→ 売上 103 億円・営業利益 13 億円。案件数が今の1.45倍
- 再生可能エネルギー:数量 61.2(燃料供給契約・工事の案件数(件))× 価格 2.74(1件あたり売上(億円))→ 売上 168 億円・営業利益 8 億円。請負が終わり減る
- 生産・環境設備:数量 873(取引先数(社))× 価格 0.53(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 466 億円・営業利益 9 億円。数量は微減
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.94 倍、時価総額 418 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の上位レンジに近い想定で、原子力の工事と火力の更新が無理なく進む。この会社が過去に見せた実績の範囲に収まる。
中立 37% 原子力は伸びるが、請負の細りで全体は実質横ばい 利益 25 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,385 円362 億円
原子力は再稼働と再処理工場の工事に支えられ、案件数は今の1.25倍に増える。火力は国内の更新と保守で数量を保つ。再生可能エネルギーは建設請負がほぼ消え、バイオマス燃料の供給と保守が残る。生産・環境設備は国内製造の縮小と包装資材の反動で、数量が少し減る。
名目の売上は物価で膨らみ760億円ほどになるが、実質では今の水準を下回る。営業利益は33億円前後、利益率は4%台前半で、2027年3月期の計画25億円を物価の分だけ上回る。
還元はDOE4%を守る。ROEは7%台にとどまり、資本コストには届かない。「手堅いが稼ぎは平凡」な10年になる。
- 火力:数量 300(納入・保守の案件数(件))× 価格 0.24(1件あたり売上(億円))→ 売上 72 億円・営業利益 11 億円。数量は横ばい
- 原子力等:数量 250(工事・保守・機器販売の案件数(件))× 価格 0.35(1件あたり売上(億円))→ 売上 87 億円・営業利益 11 億円。案件数が今の1.25倍
- 再生可能エネルギー:数量 55.3(燃料供給契約・工事の案件数(件))× 価格 2.68(1件あたり売上(億円))→ 売上 148 億円・営業利益 6 億円。請負が消えて縮む
- 生産・環境設備:数量 855(取引先数(社))× 価格 0.53(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 449 億円・営業利益 8 億円。数量は5%減
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.26 倍、時価総額 337 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保守の安定に請負の細りと薄利の生産設備が重なる、会社の実力どおりの10年。経営計画の水準とも矛盾しない。
やや悲観 24% 原子力は伸びず、仕入先と入札に値段を叩かれる 利益 16 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 660 円172 億円
原子力の工事は特定の大型案件に偏り、案件が一巡すると数量が伸びない。火力は国内の石炭火力の削減で、案件数が今の85%に減る。仕入先の重工メーカーが直接販売を広げ、代理店の取り分が削られる。入札の値下げ圧力で、単価の上がりは物価に届かない。
再生可能エネルギーは建設請負が消え、バイオマス燃料の契約も更新で値下げを迫られる。生産・環境設備は欧州子会社の不振と国内の縮小が重なる。
営業利益は21億円まで下がり、利益率は3%台前半。配当はDOE4%を維持できず、自己資本の減らし方を見直す。ROEは5%台で、資本コストを大きく下回る。
- 火力:数量 255(納入・保守の案件数(件))× 価格 0.23(1件あたり売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 7 億円。石炭火力の削減で数量減
- 原子力等:数量 200(工事・保守・機器販売の案件数(件))× 価格 0.34(1件あたり売上(億円))→ 売上 68 億円・営業利益 7 億円。案件数は横ばい
- 再生可能エネルギー:数量 42.5(燃料供給契約・工事の案件数(件))× 価格 2.60(1件あたり売上(億円))→ 売上 111 億円・営業利益 3 億円。請負が消え契約も値下げ
- 生産・環境設備:数量 765(取引先数(社))× 価格 0.51(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 390 億円・営業利益 6 億円。欧州子会社が不振
倍率:事業の純利益16億円・事業ROE5.1% は k 7.75% 以下なので、上限は1÷k=12.1倍。ROEが5%台で新しい投資の稼ぎが資本コストを下回るため、上限の約72%の8.7倍に置いた。谷の利益に谷の倍率を重ねてはいない。
確率:重工メーカーの直販が広がり、入札の値段が下がる流れが10年かけて強まる想定。請負の波もあり、確率はやや厚めに置いた。
悲観 11% 代理店権益を失い、薄利の商いだけが残る 利益 6 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 170 円45 億円
三菱重工が代理店契約を見直し、発電所向けの取り分を直販へ切り替える。火力は国内の石炭火力の撤退で数量が大きく減り、原子力も大型案件の一巡で細る。再生可能エネルギーでは、過去の請負案件の瑕疵や追加の訴訟で費用がかさむ。
統治の問題が再発し、取引先や金融機関の信用が落ちる。生産・環境設備は価格競争で赤字すれすれの利益率になる。
営業利益は6億円まで落ち、実質の売上も3割以上減る。配当はDOEを守れず、利益の7割以下に絞る。ROEは2%で、会社は存在するが、成長も安定も失った姿になる。数十年かけて築いた保守の信頼が、そのまま利益の源泉でなくなる10年だ。
- 火力:数量 195(納入・保守の案件数(件))× 価格 0.22(1件あたり売上(億円))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。数量が3分の2に
- 原子力等:数量 140(工事・保守・機器販売の案件数(件))× 価格 0.31(1件あたり売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 3 億円。案件の一巡で3割減
- 再生可能エネルギー:数量 25.5(燃料供給契約・工事の案件数(件))× 価格 2.30(1件あたり売上(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。請負案件の費用がかさむ
- 生産・環境設備:数量 630(取引先数(社))× 価格 0.47(1社あたり年間売上(億円))→ 売上 297 億円・営業利益 2 億円。価格競争で赤字すれすれ
倍率:事業の純利益6億円・事業ROE2.0% は k 7.75% を大きく下回り、上限は1÷k=12.1倍。代理店権益を失う構造的な負けで、上限の約60%の7.3倍に置いた。稼ぐ力は6億円÷k=約74億円で、時価総額はこれ以下。
確率:代理店契約の見直しや重工メーカーの直販化、統治問題の再発が重なる構造的な負けの筋書き。起きる確率は高くないが、10年では無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
火力
火力発電所向けの補機・部品の納入、定期点検などの保守、高効率設備への更新工事。三菱重工の販売代理店業務を含む。
| 数量納入・保守の案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 0.18 | 54 | 9 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.24 | 72 | 11 |
取り方:決算説明資料の火力は売上54億円・営業利益9億円。件数は開示がないので、年間約300件・1件0.18億円と推定した。保守と補機の小口が多く、大型の更新工事が年に数件混じる。
原子力等
核燃料サイクル施設(再処理工場など)の安全対策工事・保守と、プラントメーカー向け機器の販売。
| 数量工事・保守・機器販売の案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 0.26 | 52 | 7 |
| 10 年後 中立 | 250 | 0.35 | 87 | 11 |
取り方:決算説明資料の原子力等は売上52億円(前期比10億円減)・営業利益7.3億円。件数は推定で年間約200件・1件0.26億円。前期はプラントメーカー向け機器販売が多かった反動で減った。2028年3月期以降に本格貢献を見込む。
再生可能エネルギー
バイオマス燃料の供給と、メガソーラーなどの建設請負。新規の建設請負は受注を止めている。
| 数量燃料供給契約・工事の案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 85.0 | 2.00 | 170 | 12 |
| 10 年後 中立 | 55.3 | 2.68 | 148 | 6 |
取り方:決算説明資料の再生可能エネルギーは売上170億円(前期比51億円減)・営業利益12億円。営業利益には臨時収益4.7億円を含み、実力は7億円前後。案件数は推定で約85件・1件2.0億円。大型の建設請負と燃料の長期契約が混ざる。
生産・環境設備
工場の生産設備、環境機器、包装資材、化学品、生活産業向けの素材などの販売。欧州子会社を含む。
| 数量取引先数(社) | 価格1社あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 900 | 0.39 | 353 | 6 |
| 10 年後 中立 | 855 | 0.53 | 449 | 8 |
取り方:決算説明資料の生産・環境設備は売上353億円(前期比21億円減)・営業利益5.8億円。取引先数は推定で約900社・1社0.392億円。法定の環境・化学・機械と生活産業の事業にほぼ当たる。包装資材の駆け込み需要が一巡した。
リスクと懸念
統治と開示の傷
貸倒引当金の過少計上などで2025年に課徴金1,750万円の命令を受けた。太陽光の事業投資でも大きな損失が出ている。リスク管理の強化を掲げるが、再発しないと示す実績はまだ短い。取引先や金融機関の見る目が厳しくなれば、請負や資金繰りに響く。
三菱重工への依存
代理店の権益は仕入先が握る。契約の見直しや直販への切り替えが起きれば、火力の取り分は一気に失われる。大株主である三菱重工の持株比率は低下してきたとされ、関係の濃さが続く保証はない。
請負案件の波と瑕疵
再生可能エネルギーの建設請負は1件が大きく、前期末の引き渡しの反動で売上が51億円減った。新規受注は止めたが、積み上げた案件の完工と、引き渡し後の瑕疵対応が残る。想定外の費用は一度に利益を削る。
火力の長期縮小
国内の石炭火力は削減の方向にある。LNG火力の更新と混焼の改造需要で補えるかは政策に左右される。補えなければ、最も利益率の高い火力の数量が縮む。
原子力の遅れ
原子力は成長領域だが、再稼働や工事は規制と地元の判断で遅れやすい。2028年3月期以降の本格貢献という会社の見通しが後ろにずれれば、中立の数量を下げることになる。
薄利の生産・環境設備
売上の過半を占める領域だが、営業利益率は2%を切る。欧州子会社の反動減や包装資材の駆け込み需要の一巡もあり、利益は景気と為替に揺れる。人件費の増加を転嫁しきれないと、全社の利益を押し下げる。
今後の分かれ目
- 原子力等の成約高と契約残高が増え続け、2028年3月期の利益が計画を上回ったら
- 中立の原子力の数量を上げ、楽観・やや楽観の確率を増やす。
- 三菱重工が代理店の取り分を直販へ切り替えると発表したら
- 火力の利益率と数量を下げ、やや悲観・悲観に確率を移す。
- 再生可能エネルギーの請負案件で追加の損失や訴訟が出たら
- 統治への評価を下げ、悲観側の確率を上げる。
- 営業利益率が5%を超える期が2期以上続いたら
- 利益の水準を引き上げ、やや楽観の筋書きを中立に近づける。
- 三菱重工などによるTOBが提示されたら
- 買収価格を10年の価値と比べ、中立の価値を基準に、提示額を判断する。
- DOE4%を維持できず減配に転じたら
- 還元の前提を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 原子力等・火力の成約高と契約残高
- 再生可能エネルギーの建設請負の完工と追加費用
- 営業利益率(5%を超えるか)
- 三菱重工の持株比率と代理店契約の変化
- DOE4%以上の配当の維持
- 課徴金後の内部統制・リスク管理の運用状況
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から置いた。ROEが資本コスト k 7.75% に届かない筋書きは上限1÷kで、上限の6〜8割に置いた。今の時価総額275億円に合わせて逆算してはいない。純利益は今期計画17億円を起点に10年で緩やかに積み、実質の成長は置いていない。新リース会計基準で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形にそろえた。同じ領域の西華産業(k 8.0%)より請負の波が大きく、k を高めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→14.74 倍・やや楽観 PER 10.3→13.94 倍・中立 PER 9.7→13.26 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality を足した(決まり v2)。統治の傷や訴訟は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。