結論
横浜魚類は、横浜市中央卸売市場で産地から魚を受け取り、仲卸や量販店に売る荷受の会社だ。筆者の結論は割高である。一番の理由は、売上が200億円を超えても営業利益は2億円ほどしか残らず、しかもその利益が魚の量の細りと費用の上昇に挟まれていることにある。
直近の決算は30年で最も良い利益率だった。円安と不漁で魚の値段が上がり、南部市場の加工場の売上も伸びた。ただ利益の一部は、過去に積んだ貸倒れの備えの戻しで、実力は見かけより小さい。会社自身も次の期は減益を見込む。
10年先を見ると、国内の魚の消費は人口とともに減り、産地から量販店へ市場を通さず運ぶ流れも強まる。冷凍や加工の伸びが鮮魚の減りをある程度補うが、手数料と粗利の取り分は大きく変わらない。
筆頭株主はニッスイで約2割を持つ。持ち合いの株と現金はあるが、事業の稼ぐ力が資本コストに届かない以上、利益に掛けられる倍率は低い。中立の価値は今の値段の半分に届かないと筆者は見る。
見ておきたいのは、市場の再編がどう進むかだ。横浜丸魚との統合や大手の取り込みは、縮む市場では自然な流れで、その条件がこの株の行方を左右する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい事業ではない。荷受の許可は参入の壁だが、その市場を通る魚が年々減っている。壁の内側にいても、守る価値のある利益が細っていくなら、堀とは呼びにくい。
売上の1%しか残らない商売では、魚の値段が上がっても株主の取り分はほとんど増えない。直近の好決算も、魚の値上がりと貸倒れの備えの戻しに支えられていた。
良い点は財務の堅さだ。借入は少なく、無理な投資で資本を壊した跡もない。ただ、配当は少なく、持ち合いの株と現金が積み上がるだけで、株主に返す道は細い。
安全域、つまり払う値段と価値の差のゆとりは、今の値段では見当たらない。市場の再編で横浜丸魚と組むか、大手の傘下に入るか。その時の条件が、この株の値打ちを決めることになる。
持ち合いの株と堅い財務は、悪い年の支えにはなる。しかしそれは株主の手に戻らない限り、株主の価値を増やさない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、魚の売り買いの差と、生産者から預かった魚を売る時の手数料だ。産地の漁協や商社から鮮魚と冷凍魚を受け取り、市場で仲卸や量販店に売る。売上の大半はこの水産物卸売業で、扱う魚の量はおよそ3万3千トンになる。
部門は二つある。鮮魚は量が4%減ったが、単価の上昇で売上は増えた。冷凍・塩干は量が1割増え、売上は鮮魚を上回った。冷凍の伸びは、量販店や外食が扱いやすい加工品を求める流れに沿っている。
もう一つの柱が不動産の賃貸で、売上は2億円弱と小さいが、利益の2割近くを支える。横浜南部市場の跡地にできた食品の拠点で、低温の加工・物流の設備と食品の加工場を借りて営み、その一部を貸している。賃貸の減価償却は年1億円ほどと重い。
客は市場の仲卸と、首都圏の量販店・外食・加工業者だ。代金の回収には時間がかかり、資金の多くは売掛金と在庫に寝ている。過去に取引先の倒産で大きな貸倒れを出しており、引当金はいまも2億円を超える。
荷受の商売は、魚を右から左へ流すだけに見えて、実は量と鮮度の調整役だ。朝の数時間で何十トンもの魚を値付けし、売り切る力が要る。この腕は長年の産地との付き合いに支えられており、新しく入る会社がすぐにまねできるものではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは小さい。中央卸売市場の荷受は許可制で、横浜の水産の荷受は当社と横浜丸魚の2社しかない。この許可は参入の壁になる。ただ、市場を通らない取引が増えるほど、その壁の価値は薄れていく。
値段を決める力も弱い。魚の値段は市場と産地が決め、手数料の率は長く変わらない。粗利を上げようとすれば、加工や冷凍で手間を足すしかない。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は2%ほどで、営業利益率は30年間ずっと1%以下だった。直近の7%前後のROEは、魚の値上がりと引当金の戻しに助けられた数字だ。
財務は堅い。借入は少なく、現金と有価証券で借入を上回る。ただ持っている株の多くは取引先との持ち合いで、売る予定は示されていない。
加工と冷凍に手を広げているのは正しい方向だ。ただ、その分野には商社や大手の水産会社がいて、荷受の許可という壁は効かない。強みを広げるほど、普通の競争の場に出ていくことになる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
水産物の卸売は、長い縮小の途中にある。国内の魚の消費は人口の減少と魚離れで細り、1人あたりの量も落ちてきた。漁獲の減少と資源を守る規制も重なり、国内の水揚げは増えない。
流通の形も変わった。大手の量販店や外食は産地や商社から直接仕入れ、市場を通る魚の割合は下がり続けている。横浜市は南部市場の水産を本場に集め、市場の再編が進んだ。当社の売上も10年前の350億円前後から、200億円台に縮んだ。
追い風もある。冷凍や加工の需要は伸びており、円安と不漁で魚の値段が上がれば、売上と手数料は名目で増える。当社の冷凍・塩干の量が1割増えたのはその表れだ。
競争の相手は、同じ市場の横浜丸魚、仲卸、産地から直接運ぶ商社、自前の販売網を持つ大手の水産会社だ。人件費と物流費の上昇は、利益率の薄い荷受に重くのしかかる。筆者は、市場を通る魚が細る流れは10年では止まらないと見る。それでも鮮度と量の調整を担う機能は残るので、縮み方は緩やかだ。
市場の制度そのものも変わった。2020年の改正卸売市場法で、荷受が市場の外の客に売る規制は緩んだ。これは荷受の商売を広げる機会であると同時に、市場の中の会社を守っていた枠が外れたことも意味する。
資本政策と M&A
配当性向は3割弱で、額は少しずつ増えてきた。次の期は中間配当を始めるが、年の額は変わらない。自社株買いの実績はない。
株主はニッスイが19.8%で筆頭、横浜銀行・横浜冷凍・東洋水産などの取引先が続く。持ち合いの色が濃い株主の構成で、株主の声で資本の使い方が変わる会社ではない。
当社も取引先の株を約8億円持ち、年0.2億円ほどの配当を受け取る。売る方針は示されておらず、その配当は利益の側に残して見る。
再編の可能性はある。同じ市場の横浜丸魚との統合や、ニッスイによる子会社化は、市場の縮小が進むほど現実味を帯びる。ただ発表はなく、値段も交渉で決まる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
直近の決算は、30年で最も良い利益率だった。南部市場の加工場が動き、冷凍・塩干の量は1割増えた。量販店や外食は、店で魚をさばく人手が足りず、加工済みの魚を求めている。荷受が加工まで引き受ければ、手数料だけの商売から一歩抜け出せる。
魚の値段は円安と不漁で上がり続け、売上は名目で増える。費用の上昇を値段に乗せられれば、利益率は今の1%を保てる。
財務は堅い。借入は少なく、現金と有価証券で借入を上回る。不動産の賃貸は、魚の量に関係なく利益を生む。
筆頭株主はニッスイだ。市場の再編が進めば、横浜丸魚との統合やニッスイによる取り込みで、事業の価値が見直される道もある。地域で二つしかない荷受の許可は、再編の時に効く。
2020年の卸売市場法の改正で、荷受は市場の外の客にも売りやすくなった。産地との長い付き合いと冷蔵の設備を持つ荷受は、市場の外でも魚を集める力で勝負できる。加工場を持つ当社は、その流れに乗りやすい位置にいる。
慎重な見方
利益率1%の荷受は、費用が少し上がるだけで赤字に近づく。直近の好決算には、貸倒れの備えの戻し0.4億円が入っていた。それを除けば、営業利益は1.7億円ほどだ。会社自身も次の期は減益と見込む。
魚の量は減り続ける。鮮魚の扱いは前の期より4%減った。量販店や外食は産地から直接仕入れ、市場を通る魚の割合は下がる一方だ。冷凍の伸びも、商社や大手の水産会社との取り合いになる。
取引先の倒産は過去に大きな傷を残した。売掛金は20億円あり、魚が高い時ほど仲卸や小さな量販店の資金繰りは苦しくなる。
賃貸の建物は償却が重く、いずれ建て替えや設備の更新が要る。建築費の上昇で投資が膨らめば、少ない利益はさらに削られる。
改正卸売市場法は、荷受を守っていた枠も外した。市場の外で戦うなら、相手は商社や大手の水産会社で、規模も資金も桁が違う。荷受の許可という壁が効かない場で、利益率1%の会社が勝ち抜くのは難しい。直近の好決算を10年の起点にするのは危うい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。加工と冷凍の伸びは本物だが、鮮魚の量の減りと費用の上昇を上回るほどではない。直近の利益には一過性の戻しも含まれる。確率は中立に厚く置き、やや悲観と悲観を合わせた重みを、上振れの二つより重くした。横浜丸魚と同じ物差しで見ている。上振れの鍵は加工場の増設と、再編の条件だ。加工の量と利益率が開示で確かめられるまでは、慎重な側に重みを置く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 304 円19 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 76 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 180 円11 億円、今との差 −73.8%、 期待の年率 −5.8%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 570 円36 億円 | 112 円7 億円 | −0.8% | −0.1% | 48 円3 億円 |
| やや楽観 | 18% | 456 円29 億円 | 96 円6 億円 | −19.7% | −2.2% | 99 円6 億円 |
| 中立 | 40% | 346 円22 億円 | 80 円5 億円 | −37.9% | −4.7% | 171 円11 億円 |
| やや悲観 | 23% | 155 円10 億円 | 64 円4 億円 | −68.1% | −10.8% | 50 円3 億円 |
| 悲観 | 12% | 64 円4 億円 | 32 円2 億円 | −86.0% | −17.9% | 12 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 304 円19 億円 | 76 円5 億円 | −44.8% | −5.8% | 380 円24 億円 |
今の株価時価総額 687 円43 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 加工と冷凍で荷受の先へ進む 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 570 円36 億円
量販店と外食の人手不足が深まり、さばいた魚や加工品を荷受から買う流れが強まる。南部市場の加工場が増設され、冷凍・塩干の量は今より増える。鮮魚の量は減るが、加工で手間を足した分だけ単価が上がり、営業利益率は今の1%から1.3%前後へ上がる。横浜丸魚との協業や物流の共同化で費用も下がる。財務は堅いままで、配当は利益に合わせて増える。市場の荷受から、首都圏の魚の加工と物流を担う会社へと見方が変わる10年になる。ニッスイとの取引も太くなり、輸入の冷凍魚の扱いが伸びる。費用の上昇も物流の共同化で吸収できる。
- 鮮魚(荷受):数量 14,500(取扱数量(トン))× 価格 83(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 120 億円・営業利益 1 億円。量 0.88 倍・単価 1.41 倍
- 冷凍・塩干(加工を含む):数量 17,000(取扱数量(トン))× 価格 94(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 160 億円・営業利益 2 億円。量 1.04 倍・加工で単価 1.39 倍
- 不動産等賃貸:数量 12.0(賃貸面積(千平方メートル・推定))× 価格 1.83(1 平方メートルあたりの年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 1.23 倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.36 倍、時価総額 32 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:加工の伸びと費用の削減が同時に進む必要があり、30年続いた1%の利益率の壁を超える筋書きなので、重みは小さく置いた。
やや楽観 18% 冷凍の伸びが鮮魚の減りを補う 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 456 円29 億円
鮮魚の量は人口の減少と市場離れで2割近く減るが、冷凍・塩干は加工品の需要で今の量をほぼ保つ。魚の値段は物価をやや上回って上がり、売上は名目で増える。営業利益率は1%をわずかに上回り、直近の好決算に近い水準が続く。賃貸の利益も安定している。貸倒れの大きな傷は出ない。配当は利益に合わせて少し増える。地味だが、横浜の魚の流れの要として稼ぎ続ける筋書きだ。ROEは資本コストに届かないが、財務の堅さで株主の価値は少しずつ積み上がる。市場の再編は起きても、当社は横浜の荷受として残る。財務の堅さが、谷の年の支えになる。
- 鮮魚(荷受):数量 13,500(取扱数量(トン))× 価格 81(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 109 億円・営業利益 1 億円。量 0.82 倍
- 冷凍・塩干(加工を含む):数量 15,500(取扱数量(トン))× 価格 92(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 143 億円・営業利益 2 億円。量 0.95 倍
- 不動産等賃貸:数量 12.0(賃貸面積(千平方メートル・推定))× 価格 1.78(1 平方メートルあたりの年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 1.2 倍
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.36 倍、時価総額 24 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:冷凍・塩干の量が直近で1割増えたことは開示で確かめられる。ただ鮮魚の減りと費用の上昇を上回るかは未知で、中立より低く置いた。
中立 40% 中立:量が細り、薄い利益率が続く 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 346 円22 億円
鮮魚の量は市場離れで4分の3に減り、冷凍・塩干も加工の伸びで減りを抑えるが、今の量の85%にとどまる。魚の値段は物価並みに上がり、売上は名目で横ばいから微増になる。営業利益率は貸倒れの戻しのない普通の年の0.9%前後に戻る。賃貸の償却は取得した時の値段のまま残るので、賃料が少し上がれば利益は増えるが、建物の更新が近づく。本社の費用は物価で増える。配当は今の水準が続く。財務は堅いままだが、株主の取り分は薄い10年になる。横浜丸魚との協業は物流など一部にとどまり、大きな再編は起きない。魚の値段が上がる年と下がる年が交互に来て、利益は年ごとに揺れる。
- 鮮魚(荷受):数量 12,400(取扱数量(トン))× 価格 79(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 98 億円・営業利益 1 億円。量 0.75 倍(横浜丸魚の荷受 0.72 倍に揃える)・単価は物価並み 1.34 倍
- 冷凍・塩干(加工を含む):数量 13,900(取扱数量(トン))× 価格 91(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 126 億円・営業利益 1 億円。量 0.85 倍(加工の伸びで鮮魚より緩い)・単価 1.34 倍
- 不動産等賃貸:数量 12.0(賃貸面積(千平方メートル・推定))× 価格 1.70(1 平方メートルあたりの年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料 1.15 倍・償却は取得時の値段のまま
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.36 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去の利益率と量の減り方、同じ市場の横浜丸魚の見通しを合わせた中心の筋書き。最も厚く置いた。
やや悲観 23% 市場離れが進み、費用に押される 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 155 円10 億円
量販店と外食の直接仕入れが速く進み、鮮魚の量は今の3分の2に減る。冷凍も商社や大手の水産会社と取り合いになり、量は2割強減る。人件費と物流費の上昇を値段に乗せきれず、営業利益率は0.5%前後に落ちる。小口の取引先の貸倒れも時々出る。賃貸の設備は更新を迫られ、建築費の上昇で投資が膨らむ。配当は据え置くが、増やす余地はない。赤字にはならないが、株主の価値は細っていく。横浜丸魚も同じ悩みを抱え、市場の中で同じ客を取り合う。統合の話が出ても、条件の交渉は長引く。持ち合いの株の配当が、細った本業の利益を支える形になる。
- 鮮魚(荷受):数量 11,000(取扱数量(トン))× 価格 76(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 0 億円。量 0.67 倍
- 冷凍・塩干(加工を含む):数量 12,500(取扱数量(トン))× 価格 88(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 110 億円・営業利益 1 億円。量 0.77 倍
- 不動産等賃貸:数量 12.0(賃貸面積(千平方メートル・推定))× 価格 1.58(1 平方メートルあたりの年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。賃料 1.07 倍
倍率:ROE 2.6%(0.82 ÷ 31.9)と資本コストを大きく下回る。稼ぐ力は 0.82 ÷ 8.3% = 10 億円で、その内の PER 9.0 倍とした。今の自己資本 26.9 億円より大きい 31.9 億円に対し PBR 0.23 倍で中立より低い。
確率:市場離れは過去10年で売上が4割近く縮んだ実績がある。費用の上昇も続く前提なので、上振れの二つより厚く置いた。
悲観 12% 構造的に負け、荷受の役目が細る 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 64 円4 億円
市場を通る魚の流れが細り、横浜の荷受の役目そのものが縮む。鮮魚の量は今の半分になり、冷凍も大手に奪われる。営業利益はほぼゼロから赤字に転び、大口の取引先の倒産で貸倒れも出る。配当は大きく減る。賃貸の設備は更新の投資が重く、利益を食う。最後は横浜丸魚との統合か、大手の傘下に入る道しか残らず、その条件は弱い側として決まる。株主に残るのは、売掛金と在庫、持ち合いの株を売った後の一部だ。持ち合いの相手も株を手放し、株主の構成が揺らぐ。再編の時に少数株主が受け取る額は、弱い交渉の立場を映して小さくなる。冷凍の倉庫と加工場の価値も、使い道が限られて高くは売れない。
- 鮮魚(荷受):数量 8,500(取扱数量(トン))× 価格 70(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 0 億円。量 0.51 倍
- 冷凍・塩干(加工を含む):数量 10,000(取扱数量(トン))× 価格 82(1 トンあたりの売上(万円))→ 売上 82 億円・営業利益 0 億円。量 0.61 倍
- 不動産等賃貸:数量 12.0(賃貸面積(千平方メートル・推定))× 価格 1.50(1 平方メートルあたりの年間賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。賃料ほぼ横ばい
倍率:赤字の筋書きなので PBR で測る。稼ぐ力は無く、床は売れる資産から負債を引いた残りに戻り方を掛けた額(floor_assets_oku 4 億円)。今の自己資本 26.9 億円に対する PBR 0.149 倍。市場の倍率は使っていない。
確率:過去にも赤字の期が3度あり、貸倒れの傷も深かった。市場の荷受という仕組みが細る流れは現実で、同業と同じく12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鮮魚(荷受)
産地から受け取った鮮魚を市場で仲卸・量販店に売る。
| 数量取扱数量(トン) | 価格1 トンあたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16,522 | 59 | 97 | 1 |
| 10 年後 中立 | 12,400 | 79 | 98 | 1 |
取り方:短信の部門の開示:鮮魚 16,522 トン・売上 97.42 億円から 1 トンあたり 58.96 万円。営業利益は卸売業の 2.19 億円を売上で鮮魚と冷凍に分けた推定(貸倒引当金の戻し 0.40 億円を含む)。
冷凍・塩干(加工を含む)
冷凍魚・塩干品と、南部市場の食品加工場で作る加工品。
| 数量取扱数量(トン) | 価格1 トンあたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16,328 | 68 | 111 | 1 |
| 10 年後 中立 | 13,900 | 91 | 126 | 1 |
取り方:短信の部門の開示:冷凍・塩干 16,328 トン・売上 110.57 億円から 1 トンあたり 67.72 万円。営業利益は卸売業の利益を売上で分けた推定。
不動産等賃貸
南部市場の食品拠点の低温加工・物流設備などの賃貸。
| 数量賃貸面積(千平方メートル・推定) | 価格1 平方メートルあたりの年間賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 1.49 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 1.70 | 2 | 1 |
取り方:売上 1.78 億円・営業利益 0.36 億円はセグメント開示。面積の開示は無く、12 千平方メートル × 年 1.49 万円と推定。減価償却 1.03 億円が費用の大半で、償却は物価で増やさない。10 年の賃料は、市場の中の業務用の施設で借り手が限られるので物価並みには上がらず、中立で 1.15 倍とした。
リスクと懸念
市場を通る魚の細り
量販店や外食は産地や商社から直接仕入れ、中央卸売市場を通る魚は減り続ける。鮮魚の扱いは直近でも4%減った。荷受の許可の価値は、市場を通る量とともに薄れていく。
人件費と物流費の上昇
利益率1%の荷受にとって、人件費と物流費の上昇は重い。値段に乗せられなければ、少しの費用の上振れで赤字に近づく。会社自身も次の期の減益を見込んでいる。
取引先の貸倒れ
売掛金は20億円あり、引当金はいまも2億円を超える。魚が高い時ほど仲卸や小さな量販店の資金繰りは苦しくなり、倒産が出れば一度で年の利益が消える。
魚の値段の上下
円安と不漁で魚の値段が上がった直近は追い風だった。値段が下がる局面では売上と粗利が名目で縮み、在庫の評価も傷む。
設備の更新と償却
賃貸と加工の設備は償却が重く、いずれ更新が要る。建築費の上昇で投資が膨らめば、利益と現金の両方が細る。
持ち合いと再編の条件
ニッスイが約2割を持ち、取引先の持ち合いも厚い。再編が起きても、少数株主に有利な条件になる保証はない。
今後の分かれ目
- 横浜丸魚との統合やニッスイによる子会社化が発表されたら
- 本業の価値は今の値段を下回るので、株主の受け取りは再編の条件で決まる。分析の前提が変わる。
- 冷凍・加工の量が3年続けて伸びたら
- 荷受の先へ進む動きが本物になる。やや楽観の重みを上げる。
- 大口の取引先の倒産が出たら
- 利益が一度で消える危うさが表に出る。やや悲観に重みを移す。
- 持ち合いの株を売り、配当や自社株買いに回す方針が出たら
- 現金と株が株主に戻る道が開く。現金の戻り方を見直す。
- 鮮魚の扱いが年5%以上減り続けたら
- 市場離れが想定より速い。中立の量を下げる。
見ておくもの
- 鮮魚と冷凍・塩干の取扱数量
- 営業利益率と貸倒引当金の繰入・戻し
- 横浜市場の再編の動き
- ニッスイの持分と取引の中身
倍率と資本コストの決め方
鮮魚と冷凍・塩干をトン数(実質)×1トンあたりの売上(物価込み)で積み、量の減り方は同じ市場の横浜丸魚に揃えた。賃貸の減価償却は物価で増やさず、本社の費用は物価で増やした。ROEがkを下回るので倍率は1÷k=12.0倍を上限とし、中立はその8割。悲観は売れる資産から負債を引いた床で置いた。今や過去のPBR・PERは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→11.36 倍・やや楽観 PER 10.8→11.36 倍・中立 PER 9.6→11.36 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.8% = 8.3%。同じ横浜市場の荷受の横浜丸魚(8.3%)と同じ。貸倒れの過去やニッスイの意向は k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 8.80%。