結論
ムラキは、ガソリンスタンド(SS)向けにカーケア商品を卸す専門商社だ。補修部品、ケミカル、洗車用品、SS の備品が主力で、売上の約 98% が SS 向けになる。会社の説明では、全国の SS の約 3 割が取引先だ。事業の幅は狭いが、50 年を超える取引の実績がある。
筆者の結論は割高だ。10 年後の中立でも、時価総額は今を下回る。最大の理由は、本業の稼ぐ力が資本コストに届かないことにある。営業利益率は 1〜2% で、自己資本が厚いため ROE は 2〜4% にとどまる。
一方で純現金は 15 億円あり、時価総額の 7 割に当たる。ただ卸の現金は、売掛金や在庫を回す運転資金と重なる。筆者は余った分を 9 億円とみた。2026 年 9 月には、ホテルや不動産を手がけるストライダーズ系が 12.25% を取得して提携した。現金は事業の転換に回る可能性があるので、株主に戻る見込みは半分に割り引いた。
給油所は 30 年で半分に減り、これからも年 2% ほど減る。卸は物価の値上げでこの縮みを相殺するだけで、成長の理由はない。安全域は現金にあり、事業にはない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く買える優良事業」ではなく「安く買える現金入りの箱」だ。事業そのものは、縮む業界で薄い利益を積むだけで、オーナーが手元に残せる利益は年 1 億円に届かない。
この利益に正当な倍率を掛けても、事業の価値は自己資本を下回る。ROE が資本コストより低いと、ためた利益は額面未満の価値にしかならないからだ。
一方で現金は事業の運転資金と混じっている。卸は売掛金を回収して買掛金を払う間、現金を持つ必要があり、純現金 15 億円のすべてが株主のものではない。筆者は余りを 9 億円とみた。
10 年のうちに割安に化けるには、取引先の SS が想定ほど減らず、同時に値上げが利益率を押し上げることが要る。それを確率の高い筋書きとは言いにくい。経営が現金を成長に使うか、株主に戻すかも不透明で、安全域は薄い。
何で稼ぐ会社か
ムラキは 1957 年の設立で、1964 年から石油元売の自動車関連用品の指定業者として SS に商品を届けてきた。扱うのは自動車の補修部品、ケミカル(洗浄剤・添加剤)、SS の備品、販売促進用のギフトなどで、かつての開示では補修部品が約 4 割、ケミカルが約 3 割を占めた。
売上の約 98% が SS 向けで、関東の南北が大きく、東京・東海がこれに続く。最大の取引先はアポロリンク(出光系)とエネオストレーディングで、2 社合わせて売上の 4 分の 1 強を占める。埼玉県の関東物流センターから全国の営業所へ商品を流す仕組みだ。
子会社は 3 社ある。テックコーポレーションは自動車ボディメンテ資材と販促物の企画・製作、ミツワ商会は札幌のカーケア商品卸、ムラキ協力事業協同組合は社員教育と金融を担う。いずれも SS 向けの延長で、事業の幅は狭い。
収益は商品の値ざやで稼ぐ薄利の型だ。売上 78 億円に対し営業利益は 1 億円台で、利益率は 2% に届かない。従業員は約 150 名で、人手による営業と配送が費用の中心になる。
優良さと弱いところ
優良さは高くない。強みは元売の指定業者として積み上げた SS との取引の長さと、関東の物流センターを軸にした配送網だ。小さな SS が必要な商品を 1 本の窓口でそろえられる便利さがあり、これが取引先を保っている。
弱みは 3 つある。第 1 に、扱う商品の大半はメーカーの汎用品で、値段を自分では決められない。第 2 に、売上が SS 業界ひとつに偏り、その業界が構造的に縮んでいる。第 3 に、大手 SS 事業者の購買が一括化するほど、卸の交渉力は落ちる。
資本の効率も低い。過去 10 年の ROE は 1〜7% で、中央値は 3% 弱だ。利益を出しても、厚い自己資本に薄められてしまう。経営は借金をしない堅実さを持つが、現金の使い道は配当にほぼ限られ、成長への再投資は乏しい。
堀と呼べるほどの優位はなく、10 年後に今より強いとは言いにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
SS の数は 1994 年度の約 6 万か所をピークに、2024 年度末の約 2.7 万か所へ半減した。理由は燃費の向上、需要の減少、後継者不足だ。赤字経営の SS が 4 割近くあり、廃業の波は今も続いている。
この先の最大の変数は電動車だ。乗用車の保有台数に占める電動車の割合は、10 年で大きく上がるとみるのが自然で、ガソリンの販売量はさらに減る。SS は燃料の利ざやだけでは立ちゆかず、洗車、コーティング、タイヤ・バッテリー交換といったカーケアに収益の軸を移そうとしている。
卸にとっては、この移りが追い風にも向かい風にもなる。カーケア商材の単価は上がるが、SS の数と来店の頻度は減る。元売系の大手 SS 事業者は調達をまとめ、卸を通さない直接購買を進める力がある。
競合は、元売系の商社(エネオストレーディング、アポロリンクなど)と、メーカーの直販、ネット通販だ。ムラキはこの元売系の商社の間をぬって、独立系の卸として生き残っている。業界全体の再編が進めば、規模の小さい卸ほど押される。この点で、取引先を増やせる成長の余地は乏しい。
資本政策と M&A
資本の使い方は保守的だ。借金はほぼなく、純現金が 15 億円ある。配当は 2026 年 3 月期に純利益の約 7 割まで高めた。2022 年 3 月期から段階的に、1 株配当を 5 割ほど引き上げてきた。株主優待はない。
自社株買いの実績は確認できなかった。新たな買収は 2016 年のミツワ商会が最後で、規模は小さい。
2026 年 9 月 17 日、ホテル・不動産・事業再生のストライダー(証券コード 9816)の連結子会社が、議決権の 12.25% を取得し、資本業務提携を結んだ。両社は SS や遊休地を、レンタカー・充電・整備・物販の拠点に変える「地域モビリティ・ハブ構想」を掲げる。この新しい大株主は、小さな会社を株式交換で取り込む型の投資家で、ムラキの現金は配当より事業の転換に回る可能性がある。筆者は戻り方を半分に割り引いた。
株の需給の面では、時価総額が 22 億円と小さく、さらに持株を増やされる、あるいは買収や非公開化の対象になりうる。kabufu のシミュレーションでは、提携の前の時点で 10 年以内の買収・TOB の確率は約 2 割だった。ただ、買収価格が本業の価値を超えて純現金に近い水準になるかは、買い手次第で読めない。筋書きの確率には織り込まず、悲観を厚くして安全を見た。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
給油所が減っても、車は走り続ける。SS は燃料の利ざやだけでは立ちゆかず、洗車、コーティング、タイヤ・バッテリー交換といった整備・カーケアに収益の軸を移している。その商材を全国の SS に届けられる卸は少なく、ムラキは元売の指定業者として築いた営業網と関東の物流センターを持つ。
取引先の SS が減っても、残る SS は高単価のカーケア商材を多く買うので、1 か所あたりの売上は物価を超えて伸びる余地がある。直近の営業利益率は 1.8% と過去の山に近く、物流や人件費の上昇は値上げで通せている。
純現金は 15 億円で時価総額の 7 割に当たる。配当は純利益の 7 割弱まで高まり、株主還元の姿勢は変わりつつある。もし買収や非公開化があれば、現金に近い価格がつく。下値が堅いのに、上は利益率の改善で伸びる余地がある。時価総額が小さい分、配当の増額や自社株買いが 1 回あるだけで、評価は大きく変わりうる。
慎重な見方
売上の 98% が SS 向けで、その SS は 30 年で半分に減った。電動車が増えれば燃料の販売量はさらに落ち、廃業の波は加速する。ムラキは業界の縮みから逃げられない。
最大の取引先 2 社で売上の 4 分の 1 強を占める。元売系の大手 SS 事業者が調達を一括化すれば、卸は飛ばされるか、値引きを迫られる。扱う商材は汎用品で、値決めの力は弱い。営業利益率は 1〜2% に張りつき、人件費と物流費の上昇が重なれば 1% を割る。2027 年 3 月期は中東情勢で予想が出せず、4〜6 月期は営業利益が 1 割減った。
ROE は 2〜3% で資本コストに届かない。純現金は厚いが、卸の運転資金と重なり、全部が株主のものではない。経営に現金を戻す強い方針がなければ、現金も時価総額に反映されにくい。時価総額が小さく、出来高も薄いので、買い手の現れない状態が長く続くおそれもある。また 4〜6 月期の営業利益は 1 割減っており、費用の上昇が利益率を押し下げ始めている。
どちらに重みを置いたか
事業の稼ぐ力が資本コストを下回るという点で、慎重な見方が強い。強気の見方が正しくても、効くのは利益率が 0.5 ポイント上がる程度で、倍率の上限が 1÷k に抑えられるので価値は大きく動かない。確率は、中立を 4 割に置き、やや悲観と悲観を合わせて 3 割半に厚くした。現金の厚みと買収の可能性は、悲観の床と余った現金の足し算で評価した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,135 円16 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 363 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 743 円11 億円、今との差 −49.7%、 期待の年率 +0.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,796 円26 億円 | 599 円9 億円 | +62.0% | +4.9% | 192 円3 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,463 円21 億円 | 479 円7 億円 | +31.4% | +2.8% | 330 円5 億円 |
| 中立 | 40% | 1,258 円18 億円 | 394 円6 億円 | +11.8% | +1.1% | 661 円9 億円 |
| やや悲観 | 25% | 759 円11 億円 | 261 円4 億円 | −31.0% | −3.6% | 255 円4 億円 |
| 悲観 | 10% | 493 円7 億円 | 106 円2 億円 | −59.5% | −8.6% | 60 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,135 円16 億円 | 363 円5 億円 | +1.3% | +0.1% | 1,497 円21 億円 |
今の株価時価総額 1,478 円21 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% SS 向けの掃除と保護の需要を掴み、縮みを小さく食い止める 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,796 円26 億円
給油所は減るが、残った大手の SS 事業者は燃料の薄い利ざやを補うため、洗車、コーティング、タイヤ・バッテリー交換といった整備・カーケアに軸足を移す。ムラキは元売の指定業者として築いた全国の営業網と関東の物流センターで、その商材を一括して届ける役を担う。取引先の SS 数は今の 9 割にとどまり、1 か所あたりの購入量も高単価品への移りで増える。物流費と人件費の上昇は値上げで通せ、営業利益率は過去最高の 2.5% 近くまで上がる。それでも本業の稼ぐ力は資本コストに届かず、倍率は 1÷k で頭打ちになる。
- SS 向けカーケア関連商品の卸:数量 9,000(取引 SS 数(か所)× 1 か所あたり購入量(今を 1))× 価格 109(1 か所あたり売上(万円・名目、購入量が同じなら物価で動く))→ 売上 98 億円・営業利益 2 億円。取引 9,000 か所相当 × 1 か所 109 万円、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 11.75 倍、時価総額 26 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:燃料が減っても車は残り、洗車・コーティング・ケミカルの単価は上がりやすい。ただし売上の 98% が SS 向けで、構造の縮みを上回る確率は高くない。
やや楽観 17% 縮みは緩やか、利益率は近年の上限まで 利益 1 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 1,463 円21 億円
給油所の減少は過去 10 年と同じ年 2% 前後で続き、10 年後の取引先は今の 8 割台半ばに残る。元売系の物流の再編でムラキの配送網が選ばれる場面もあり、シェアの落ち込みは小さい。ケミカルや洗車用品の比率が上がり、営業利益率は 2023 年から 2024 年の水準だった 2.2% 近くで落ち着く。値上げは物価並みに通る。純利益は今の 2 倍弱まで伸びるが、自己資本が厚いので ROE は 4% 台にとどまり、資本コストを超えない。配当は純利益の 7 割弱で、現金は少しずつ積み上がる。ただし利益の伸びは物価と利益率の改善の両方に頼っていて、給油所の減少が緩む保証はない。
- SS 向けカーケア関連商品の卸:数量 8,400(取引 SS 数(か所)× 1 か所あたり購入量(今を 1))× 価格 107(1 か所あたり売上(万円・名目、購入量が同じなら物価で動く))→ 売上 90 億円・営業利益 2 億円。取引 8,400 か所相当 × 1 か所 107 万円、営業利益率 2.2%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 11.74 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:給油所の減少が過去 10 年と同じ年 2% 前後で続き、整備・洗車商材への移りが一部で効く筋書き。
中立 40% 給油所の縮みを物価の値上げで相殺する凪の 10 年 利益 1 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 1,258 円18 億円
給油所は年 2〜3% のペースで減り、取引先の数量は 10 年で 2 割強縮む。一方、物価が年 3% 上がるので 1 か所あたりの売上は 1.34 倍になり、売上は今より少し増える。営業利益率は直近の 1.8% を保つ。人件費と物流費の上昇を値上げで吸収できるかが分かれ目だが、過去 10 年は 1〜2% の幅を出ていない。配当は純利益の 7 割弱を続ける。事業の ROE は 4% 前後で資本コストを下回り、成長しても株主の価値はほとんど増えない。現金は配当を払ってもなお積み上がるが、その使い道は経営が決める。
- SS 向けカーケア関連商品の卸:数量 7,800(取引 SS 数(か所)× 1 か所あたり購入量(今を 1))× 価格 105(1 か所あたり売上(万円・名目、購入量が同じなら物価で動く))→ 売上 82 億円・営業利益 1 億円。取引 7,800 か所相当 × 1 か所 105 万円、営業利益率 1.8%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 11.73 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 10 年の売上は 71〜85 億円の箱の中で動き、利益率は 1〜2% に張りついてきた。その延長を中心に置いた。
やや悲観 25% 元売の直販化と SS の廃業が重なり、利益率が 1% 近辺まで落ちる 利益 1 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 759 円11 億円
地方の SS が後継者不足で廃業し、元売系の大手 SS 事業者は調達を一括化して卸を飛ばし始める。ムラキの取引先は今の 3 分の 2 に減り、値上げも大手の購買力に押されて物価並みには通らない。売上は 67 億円まで減るが、営業網と物流センターの固定費は削りにくく、営業利益率は 1.1% に下がる。2017 年の赤字の時のように、利益は今の 7 割ほど削られる。さらに悪い年は赤字に落ちる。配当は純利益に合わせて縮み、現金は赤字の年に少しずつ食われる。株主に戻る分は、経営の判断次第で目減りする。最大の取引先の動きが数量を左右し、1 社の方針転換で売上が数 % 動くこともある。
- SS 向けカーケア関連商品の卸:数量 6,600(取引 SS 数(か所)× 1 か所あたり購入量(今を 1))× 価格 101(1 か所あたり売上(万円・名目、購入量が同じなら物価で動く))→ 売上 67 億円・営業利益 1 億円。取引 6,600 か所相当 × 1 か所 101 万円、営業利益率 1.1%
倍率:ROE が k を大きく下回り、PER は 1÷k=11.9 倍が上限。稼ぐ力そのものが小さいので上限に置いた。余った現金は谷で食われるとみて今の額の 0.75 倍を残し、さらに戻り方 0.5 を掛けた。
確率:売上の 98% が SS 向けで、最大の取引先は 2 社で 3 割弱を占める。取引先の再編と廃業が同時に来れば利益率は簡単に下がる。
悲観 10% SS 向け卸としての役目を失い、赤字が続く 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 493 円7 億円
電動車の普及と燃費向上で燃料の販売量が急に落ち、給油所は今の半分近くまで減る。残る SS 事業者は元売のグループ調達に集約され、ムラキは取引先の 5 割を失う。物流センターと 20 か所前後の営業拠点の固定費が売上に見合わなくなり、営業赤字が続く。配当は大きく削られ、現金は赤字と事業整理の費用に食われる。事業を畳む判断が少数株主には決められないため、純現金の 3 割と他の資産の 2 割 がかろうじて価値として残る程度になる。ここまで落ちると、買収の対象としても値段がつきにくい。事業の再建より、規模を縮めて現金を守る判断が先に来るだろう。
- SS 向けカーケア関連商品の卸:数量 5,000(取引 SS 数(か所)× 1 か所あたり購入量(今を 1))× 価格 98(1 か所あたり売上(万円・名目、購入量が同じなら物価で動く))→ 売上 49 億円・営業利益 0 億円。取引 5,000 か所相当 × 1 か所 98 万円、営業利益率 −0.6%
倍率:稼ぐ力が消えるので床は純現金と売れる資産で測る。今の自己資本 28 億円に 0.25 倍(純現金の 3 割と、売掛金・在庫・土地などの 2 割の合計に近い額)を掛けた。
確率:電動車の普及と元売の直販化が重なる複合の筋書き。給油所が今の半分近くまで減れば、卸の固定費は賄えない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
SS 向けカーケア関連商品の卸
SS に補修部品・ケミカル・洗車用品・備品を卸す事業(子会社の販促物やボディメンテ資材を含む)。
| 数量取引 SS 数(か所)× 1 か所あたり購入量(今を 1) | 価格1 か所あたり売上(万円・名目、購入量が同じなら物価で動く) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 78 | 78 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7,800 | 105 | 82 | 1 |
取り方:取引 SS 数は会社の説明(SS の約 30%、約 1 万か所)の推定。売上 78.25 億円を 1 万か所で割り、1 か所あたり 78 万円とした。売上の 98% が SS 向けなので 1 セグメントで置いた。数量は SS 数の実質の動き(日本の SS 数は年 2% 前後の減少)と、カーケア商材への移りによる購入量で動く。
リスクと懸念
給油所の構造的な減少
給油所は 1994 年度の約 6 万か所から 2.7 万か所へ半減し、赤字の SS が 4 割近くある。電動車の普及と後継者不足が重なれば、取引先の数が想定より速く減り、固定費の重い卸の利益が先に消える。
取引先の集中と元売系の直接購買
アポロリンクとエネオストレーディングの 2 社で売上の約 4 分の 1 強を占める。元売系の大手が調達を一括化し卸を通さなくなれば、数量と値段の両方を失う。
薄利の構造と費用の上昇
営業利益率は 1〜2% で、物流費・人件費が上がると簡単に 1% を割る。扱う商品が汎用品で、値上げが通せない時に費用の上昇を吸収する余地が小さい。
現金の使い道が株主に決められない
純現金は厚いが、卸の運転資金と混じる。2026 年 9 月にストライダーズ系が 12.25% を取得し、事業転換の構想(地域モビリティ・ハブ)が動き出した。現金が転換の投資や買収に回れば、配当には戻らず、成果も不確かだ。
売掛債権の回収
取引先の SS が資金繰りに窮すれば、売掛金の回収が滞る。SS の経営は赤字が多く、貸倒れが利益率の薄い卸に直接響く。
原油高と中東情勢
2027 年 3 月期は中東情勢で通期予想が出せていない。原油が高騰すれば SS の来店が減り、仕入原価も上がる。4〜6 月期は営業利益が 1 割減った。
今後の分かれ目
- 給油所の年間減少率が 3% を超えて加速したら
- やや悲観と悲観の確率を上げる。取引先の数量が 10 年で 3 割以上縮む筋書きに寄る。
- 洗車・コーティングなど高単価商材の売上比率が 4 割を超えたら
- 楽観寄りの筋書きの確率を上げてよい。1 か所あたりの購入量が増える。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、現金を戻す方針が明確になったら
- 戻り方を 0.5 から 0.75〜1.0 に上げてよい。時価総額への足し算が増える。
- ストライダーズ系が持株を 20% 超へ増やす、または公開買付けを仕掛けたら
- 買収価格が純現金に近い水準なら、現金を評価しているだけで本業の評価ではない。筋書きの確率は変えず、価格を見て判断する。
- 元売系の大手が調達を一括化し、ムラキが主要取引先を失ったら
- 悲観の筋書きに近づく。固定費の削減が間に合うかを見る。
- ハブ構想の第 1 号拠点が開き、商材の購入量が増えたら
- やや楽観の確率を上げてよい。ただし投資の額と借入の有無を確かめる。
見ておくもの
- 給油所数(資源エネルギー庁の年次の発表)
- 四半期の営業利益率と販売費の伸び
- 主要取引先(アポロリンク・エネオストレーディング)の売上比率
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8.5%(基本 7.5% に、寿命 +0.5%・値決め力 +0.25%)と、事業の ROE(4% 前後で k 未満)から、1÷k の 12.1 倍に置いた。今の株価や同業の PER は見ていない。10 年後の数字は家賃や会計の形を今と同じにそろえた。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)は支店・物流センターの賃借に及ぶが、価値の式には効かない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.12→11.75 倍・やや楽観 PER 12.12→11.74 倍・中立 PER 12.12→11.73 倍・やや悲観 PER 12.12→11.9 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。