結論
クリエイトは、建物の排水管や給水管、塩ビのパイプなどを、設備工事の会社に届ける管工機材の商社だ。首都圏を地盤に、売上は 370 億円を超える。筆者の結論は「適正」だ。売上の規模に比べて利益が薄すぎ、ためた利益が資本コストを稼がないことが一番の理由である。
営業利益率は 2% 台で、創業 110 年の歴史を通じて 3% を超えたことがない。中期経営計画は初の営業利益 10 億円を掲げたが、2026 年 3 月期は 8.2 億円にとどまった。2027 年 3 月期は中東の情勢で塩ビ原料の出荷制限が起き、業績予想を出せないでいる。
筆者は、配管資材の需要そのものは 10 年後も残ると見る。建物がある限り配管の更新は続く。ただ新築の着工は細り、商社の取り分は物流の手間賃に近い。物価に合わせて値段を上げられても、利幅が広がる理由は乏しい。安く見えるのは利益が一時的に凹んだためで、割安と言える材料は少ない。配当は増えてきたが、それで事業の稼ぐ力が変わるわけではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「長く残るが、稼ぐ力の弱い事業」だ。
配管は建物がある限り要る。創業から 110 年続いたことが、その寿命の長さを示す。ただ商社の取り分は、メーカーと設備業者の間の物流の手間賃に近い。売上が増えても利幅は 2% 台で変わらず、増えた売上の分だけ在庫と売掛金が膨らむ。ためた利益が資本コストを稼がないので、利益を会社に残すほど株主の価値は目減りする。
今の値段は、凹んだ利益で見れば高くも安くもない。物価に合わせて売上が伸びれば利益も増えるが、それは名目の伸びで、事業が強くなるわけではない。筆者が評価するのは、借入を減らして配当を増やす素直な資本の使い方だ。それでも、オーナーとして長く持ちたいと思える堀は見当たらない。値段に安全域があるのは、利益が戻った時だけだ。今はその手前にいる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、配管資材の品ぞろえと配送の速さだ。メーカーから大量に仕入れ、在庫を持ち、工事現場や設備業者の注文に応じて小口で届ける。売上総利益から物流と人の費用を引くと、手元には売上の 2% ほどしか残らない。
商品は四つに分かれる。塩ビのパイプや継手、マスなどの化成商品が 115 億円で最も大きい。給湯・給水の銅管や鋼管が 87 億円、集合住宅の排水集合管や耐火二層管が 71 億円、空調機器やダクトなどその他が 95 億円である。
顧客は設備工事の会社と同業の商社だ。最大の顧客は管材商社の渡辺パイプで、売上の 16% を占める。製造の子会社ダイドレを持ち、自社の排水金物を売る。施工と運送の子会社もあるが、売上はわずかだ。
会社は「業界ナンバーワンの物流」を掲げ、配送網の再編で効率を上げる。販売と施工を一緒に請け負う「材工」の受注を広げ、再開発や建て替えの案件で、モノを売るだけの商社から抜け出そうとしている。
利益の形は、売上の大きさの割に小さい。370 億円の売上に対し、在庫と売掛金はあわせて 120 億円を超え、仕入れの支払いの 97 億円がその大半をまかなう。規模が大きいほど運転資金も膨らむ商売である。
優良さと弱いところ
クリエイトの優良さは、低い。商社としての機能はあるが、値段を決める力はほとんどない。
強みは物流と品ぞろえだ。工事の現場は、必要な部材が翌朝に届かないと止まる。首都圏で細かい注文に応えられる在庫と配送網は、設備業者にとって手放しにくい。ただし同じ機能を持つ同業は多い。名古屋のオータケ、渡辺パイプ、各地の管材商社が並び、ネット通販も小口の需要を取りにくる。見積もりの競争で、利幅は薄いまま据え置かれる。
資本効率は資本コストに届かない。ROE は過去 10 年の中央値で 5% 前後だ。自己資本比率は 30% と低く見えるが、借入は少なく、負債の多くは仕入れの支払いである。
経営は堅実だが、規模の割に利益の積み上がりが遅い。減損で 2026 年 3 月期の純利益は 25% 減った。加古川の営業所の資産を見直した結果で、地方の拠点の稼ぐ力の弱さも映している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
管工機材の市場は、建物の新築と改修の量で決まる。新築の住宅の着工は人口の減少で細り、首都圏の集合住宅も資材高と人手不足で工期が延びている。一方で、古いビルやマンションの配管の更新、都市部の再開発、建て替えの需要は増えている。筆者は、新築の目減りを改修が半分ほど埋め、数量は 10 年で 1 割近く減ると見る。
値段は原料に連れて動く。塩ビや銅の値段が上がると、メーカーが価格を改定し、商社も売値に載せる。物価並みには上げられるが、それ以上に利幅を広げる力は商社には無い。2026 年は中東の情勢で原油が急騰し、塩ビ原料の出荷制限が常態化した。品物を確保できる商社に注文が集まる一方、確保できない分は売上が消える。
業界は中小の商社が多く、後継者難で再編が進む余地がある。同業の大手には、管材の渡辺パイプのような非上場の大手もある。人手不足は設備業者の側でも深刻で、現場の手間を減らすプレハブ加工の配管や、材料と施工を一緒に請け負う形の需要は伸びる。ここを取れる商社が、薄利の中でも少しずつ差をつける。クリエイトが材工の体制を急ぐのは、この流れを取りにいくためだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026 年 3 月期の配当性向は 43%、前の期は 31% だった。自社株買いは小さい。株主優待として、100 株以上の株主にクオカードを年 1 回贈るが、額は年 1 億円に満たない。
借入は返済が進み、長期借入金は 5 億円を切った。手元の現金は 17 億円あるが、受け取った手形を銀行で割り引いた分で膨らんでおり、仕入れの支払いに回る運転資金である。
大株主は取引先持株会が 2 割、創業家とみられる福井家の個人と従業員持株会が続く。取引先と従業員で安定株主を固める形で、買収の標的になりにくい。再編が進めば、同業の商社と組む可能性はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
配管の更新需要は、これから長く伸びる。高度成長期からバブル期に建ったビルやマンションの配管は寿命を迎え、改修と建て替えの案件は首都圏で増え続ける。新築が減っても、改修の需要がそれを補う。
クリエイトは首都圏の配送網で、翌朝に部材を届けられる。人手不足で設備業者は現場で待つ余裕がなく、物流の確かな商社に注文を寄せる。2026 年の塩ビ原料の出荷制限でも、仕入先との関係で品物を確保し、供給を止めなかった。こうした局面で信頼を得た商社は、平時に戻っても取引が残る。
材工の受注が軌道に乗れば、モノの売買より利幅の厚い仕事が増える。中計の営業利益 10 億円は手の届く目標で、達成すれば利益率は 2.5% に近づく。借入は減り、配当性向も上がった。利益が戻れば、今の値段は安く見える。
業界は中小の商社が多く、後継者のいない会社が増えている。再編の受け皿になれば、規模と物流の効率はさらに上がる。物流の強みは、人手が足りない時代ほど値打ちを増す。
慎重な見方
商社の利幅は薄く、上がる理由がない。110 年の歴史で営業利益率が 3% を超えたことは一度もない。売上が物価で増えても、利益は売上の 2% にとどまる。
数量は細る。新築の住宅の着工は人口の減少で減り続け、首都圏の集合住宅も工期が延びて着工が落ちている。改修の需要は増えるが、新築の分を全部は埋めない。メーカーが大口の設備業者と直接取引したり、ネット通販が小口を取ったりすれば、商社の居場所はさらに狭まる。
最大の顧客の渡辺パイプが売上の 16% を占めるのも弱みだ。同業でもあり、取引の条件を変えられれば利益に響く。2027 年 3 月期は業績予想すら出せない。原料の出荷制限が長引けば、売る品物が無くなり、売上と利益が同時に落ちる。ためた利益は資本コストを稼がず、会社に残る現金は株主の価値を目減りさせる。
物流の強みも、運転手と倉庫の人手が足りなければ費用の重しに変わる。強みを保つための投資が、薄い利益をさらに削る。
どちらに重みを置いたか
数量が細り、利幅も上がらないという慎重な見方の指摘が強い。改修需要と物流の強みは本物だが、それは利益を守る力で、広げる力ではない。中立は数量を 1 割弱減らし、利幅を今よりわずかに低く置いた。確率は中立を中心に、新築の目減りと原料の混乱が長引く筋に厚みを持たせ、悲観側を楽観側より重くした。ためた利益が資本コストを稼がない点は、どの筋書きでも変わらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,922 円75 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 410 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 1,123 円44 億円、今との差 −4.0%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,566 円139 億円 | 598 円23 億円 | +255.9% | +13.5% | 333 円13 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,811 円110 億円 | 511 円20 億円 | +183.9% | +11.0% | 664 円26 億円 |
| 中立 | 37% | 2,047 円80 億円 | 431 円17 億円 | +111.8% | +7.8% | 917 円36 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,110 円43 億円 | 328 円13 億円 | +22.9% | +2.1% | 331 円13 億円 |
| 悲観 | 12% | 516 円20 億円 | 210 円8 億円 | −37.9% | −4.7% | 87 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,922 円75 億円 | 410 円16 億円 | +99.3% | +7.1% | 2,332 円91 億円 |
今の株価時価総額 1,170 円46 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 改修と材工で数量を保ち、利幅が 2.5% を超える 利益 10 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 3,566 円139 億円
首都圏の古いビルとマンションの配管の更新が本格化し、改修の案件が新築の目減りを上回る。クリエイトは配送網と在庫で現場の要望に応え、取扱い量は今より少し増える。材工の受注が軌道に乗り、モノを売るだけの取引より利幅の厚い仕事が増える。管工機材の利幅は 2.4% に上がり、中計の 10 億円を超えて営業利益は 14 億円台に乗る。原料の出荷制限の局面で信頼を得た取引が残り、渡辺パイプとの取引も続く。配当性向は 35% 前後を保ち、借入はほぼ無くなる。
同業の中小の商社を買い、首都圏の外にも配送網を広げる。ROE は 10% に届き、資本コストを上回る。
- 管工機材:数量 31.4(配管資材の取扱い量(千トン・年、推定))× 価格 168(1 トンあたりの売値(万円・名目))→ 売上 528 億円・営業利益 13 億円。取扱い 31.4 千トン × 単価(今の 1.40 倍)、利益率 2.4%
- 物流・施工:数量 50.0(受託の配送・工事の件数(千件・年、推定))× 価格 14(1 件あたりの金額(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。50 千件 × 単価(今の 1.40 倍)、利益率 28%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.39 倍、時価総額 128 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築の目減りを改修と材工で埋めきり、同時に利幅を過去にない水準まで上げる両立が要る。110 年で一度も届かなかった利幅なので確率は低い。
やや楽観 20% 中計の 10 億円に届き、利幅は 2.3% 利益 8 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 2,811 円110 億円
新築の着工は減るが、改修と再開発の案件が多くを埋め、取扱い量は今の 0.97 倍にとどまる。原料の値上がりは売値に載せられ、単価は物価をやや上回る。配送網の再編と在庫の適正化で費用を抑え、管工機材の利幅は 2.1% に上がる。営業利益は 2030 年代前半に 10 億円を超え、10 年後は 11 億円台になる。配当は利益に連れて増え、創業家と取引先が株を持つ構図は変わらない。
プレハブ加工の配管のように現場の手間を減らす商品が伸び、物流の強みが売値にも少し反映される。ROE は資本コストの手前まで上がる。
- 管工機材:数量 29.9(配管資材の取扱い量(千トン・年、推定))× 価格 164(1 トンあたりの売値(万円・名目))→ 売上 492 億円・営業利益 10 億円。取扱い 29.9 千トン × 単価(今の 1.37 倍)、利益率 2.1%
- 物流・施工:数量 44.0(受託の配送・工事の件数(千件・年、推定))× 価格 14(1 件あたりの金額(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。44 千件 × 単価(今の 1.36 倍)、利益率 27%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.69 倍、時価総額 99 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の営業利益 10 億円は 2026 年 3 月期の 8.2 億円から手の届く距離にある。改修需要と価格改定が続けば実現の確度はそれなりにある。
中立 37% 数量は 1 割弱減り、利幅は今のまま 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,047 円80 億円
新築の住宅と集合住宅の着工は細り、排水集合管などの数量が減る。古い建物の配管の更新が一部を埋め、取扱い量は今の 0.92 倍になる。単価は原料と物価に連れて 1.34 倍に上がる。物流の費用も物価で上がり、管工機材の利幅は 1.75% と今の 1.9% をやや下回る。営業利益は 9 億円前後で、増えた分は物価の分にとどまる。配当性向 35% の還元が続き、残った利益は在庫と売掛金に積まれる。ROE は 6% 台で、資本コストに届かない。
会社は 10 年後も首都圏の配管資材の商社として残るが、規模の割に稼ぎは小さいままである。
- 管工機材:数量 28.3(配管資材の取扱い量(千トン・年、推定))× 価格 161(1 トンあたりの売値(万円・名目))→ 売上 455 億円・営業利益 8 億円。取扱い 28.3 千トン × 単価(今の 1.34 倍)、利益率 1.75%
- 物流・施工:数量 39.0(受託の配送・工事の件数(千件・年、推定))× 価格 13(1 件あたりの金額(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。39 千件 × 単価(今の 1.34 倍)、利益率 25%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 69 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築の着工の減少は続き、改修がその半分ほどを埋める。値段は原料と物価に連れて上がるが、利幅を広げる力は無いとみて、中立に最大の確率を置く。
やや悲観 23% 新築の目減りと直販で利幅が削られる 利益 4 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,110 円43 億円
首都圏の集合住宅の着工がさらに落ち、改修の需要も工事の人手不足で伸び悩む。取扱い量は今の 0.85 倍になる。メーカーが大口の設備業者に直接売り、ネット通販が小口の注文を取って、売値の改定は物価に届かない。物流の費用は上がり続け、管工機材の利幅は 1.3% に下がる。営業利益は 6 億円前後に落ち、配当は利益に合わせて減る。渡辺パイプとの取引も細り、規模の利益が失われる。
地方の営業所は閉じられ、残る拠点も人手の確保に苦しむ。ためた利益は在庫と売掛金に眠り、ROE は 5% を切る。株主に残るのは、細った配当だけになる。
- 管工機材:数量 26.2(配管資材の取扱い量(千トン・年、推定))× 価格 154(1 トンあたりの売値(万円・名目))→ 売上 402 億円・営業利益 5 億円。取扱い 26.2 千トン × 単価(今の 1.28 倍)、利益率 1.3%
- 物流・施工:数量 35.0(受託の配送・工事の件数(千件・年、推定))× 価格 13(1 件あたりの金額(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。35 千件 × 単価(今の 1.28 倍)、利益率 20%
倍率:ROE 4.7% が k 8.50% 以下なので、ためた利益は額面未満で、PER の上限は 1÷k=11.8 倍。利益が細る筋書きなので上限の 8 割(上限の 80%=9.41 倍)。
確率:着工の減少が改修の伸びを上回り、メーカー直販と通販が小口を取る筋。2021 年 3 月期に赤字になったように、利幅は景気で簡単に削られるので厚めに置く。
悲観 12% 商社の取り分が消え、利益がほぼ出なくなる 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 516 円20 億円
原料の出荷制限が長引き、品物を確保できない期間が何度も来る。その間に設備業者はメーカーの直販や大手の商社に乗り換え、戻ってこない。新築の着工は 3 割近く減り、取扱い量は今の 0.75 倍になる。売値は物価を下回り、物流の費用は下がらない。管工機材の利幅は 0.5% まで落ち、営業利益は 2 億円前後になる。会社の価値は稼ぐ力でなく、在庫と売掛金から仕入れの支払いを引いた正味の運転資金の回収に近づく。
売掛金の焦げ付きも増え、配当は大きく減る。上場を続ける意味も問われ、同業への身売りが現実の選択肢になる。
- 管工機材:数量 23.1(配管資材の取扱い量(千トン・年、推定))× 価格 144(1 トンあたりの売値(万円・名目))→ 売上 333 億円・営業利益 2 億円。取扱い 23.1 千トン × 単価(今の 1.20 倍)、利益率 0.5%
- 物流・施工:数量 30.0(受託の配送・工事の件数(千件・年、推定))× 価格 12(1 件あたりの金額(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。30 千件 × 単価(今の 1.20 倍)、利益率 12%
倍率:稼ぐ力がほぼ消えるので、床は正味の運転資金と土地の回収(floor_assets)とし、今の自己資本 55.7 億円の 0.36 倍にあたる 20 億円に置いた。
確率:新築の大幅な減少、原料の混乱の長期化、最大の顧客の離反が重なる筋。どれも起こりうるが、同時に重なる確度は高くない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
管工機材
排水・給水・塩ビの配管資材と住宅設備機器を仕入れ、在庫を持って設備工事の会社に小口で届ける。
| 数量配管資材の取扱い量(千トン・年、推定) | 価格1 トンあたりの売値(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.8 | 120 | 369 | 7 |
| 10 年後 中立 | 28.3 | 161 | 455 | 8 |
取り方:セグメントの売上 369.3 億円(化成 115・給湯給水 87・排水 71・その他 95)。塩ビ管・銅管・鋼管・機器が混ざるので、1 トンあたり平均 120 万円と置いて取扱い量を約 3.1 万トンとした推定で、開示の実数ではない。利益はセグメント利益 7.0 億円。
物流・施工
運送の子会社による配送の受託と、施工の子会社による配管・電気工事の請負。
| 数量受託の配送・工事の件数(千件・年、推定) | 価格1 件あたりの金額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 39.0 | 10 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 39.0 | 13 | 5 | 1 |
取り方:物流関連 2.78 億円と施工関連 1.10 億円の合計(外部の売上)。1 件 10 万円として件数を約 3.9 千件とした推定。利益は物流 1.37 億円と施工の損失 0.10 億円の合計。
リスクと懸念
原料の出荷制限が長引く
中東の情勢で原油が急騰し、塩ビやポリエチレンの原料の出荷制限が常態化した。売上の最大の柱の化成商品が確保できなければ、売る品物そのものが無くなる。2027 年 3 月期は業績予想を出せていない。
新築の着工の減少
人口の減少と資材高、人手不足で、首都圏の集合住宅と住宅の着工が細っている。排水集合管や耐火二層管は新築向けが中心で、改修の需要だけでは埋めきれない。
最大の顧客への依存
管材商社の渡辺パイプが売上の 16% を占める。同業でもあり、取引の条件を変えられたり、取引が細ったりすれば、薄い利益はすぐに消える。
メーカー直販とネット通販
メーカーが大口の設備業者と直接取引し、ネット通販が小口の注文を取れば、在庫と配送で稼ぐ商社の取り分は狭まる。利幅 2% 台の会社には、わずかな値下げも重い。
人手と物流の費用
運転手と倉庫の人手不足で、物流の費用は物価より速く上がる。配送網の再編で吸収できなければ、強みのはずの物流が利益を削る。
売掛金と手形の焦げ付き
顧客は中小の設備業者が多く、建設の不況では倒産が増える。手形を割り引いて現金を作る取引もあり、焦げ付けば損が出る。
今後の分かれ目
- 中計の営業利益 10 億円を 2027 年 3 月期かその次の期に達成したら
- 利幅 2.5% が実力に近いとみて、やや楽観に確率を寄せる。
- 原料の出荷制限が 1 年以上続き、売上が 1 割以上落ちたら
- やや悲観の確率を上げ、数量の前提を下げる。
- 材工の受注が売上の 1 割を超えたら
- モノを売るだけの商社から抜け出す証拠とみて、利幅の前提を上げる。
- 渡辺パイプとの取引が大きく減ったら
- 悲観の確率を上げる。
- 同業の商社との統合や買収を発表したら
- 値段と規模の利益を見て、物流の費用が下がるかを確かめる。
- 配当性向を 50% 以上に上げる方針を出したら
- ためた利益の目減りが小さくなるので、中立の倍率を上限に近づけてよい。
見ておくもの
- 新設住宅着工戸数と首都圏の集合住宅の着工
- 塩ビ原料の出荷制限と価格改定
- 営業利益率と中計 10 億円の進み
- 渡辺パイプ向けの売上
- 配当性向
倍率と資本コストの決め方
数量は管工機材の取扱い量(推定のトン数)で実質に置き、原料と物価は単価の側に入れた。利幅は過去 20 年の山 3.1% を超えない 2% 台を中立にした。ROE が k 8.5% に届かないので PER は 1÷k が上限で、その 8〜9 割に置いた。今の PER や同業オータケの値付けは見ていない。手元の現金は手形の割引で膨らんだ運転資金とみて、余った現金に数えなかった。リースは今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.84→13.39 倍・やや楽観 PER 10.82→12.69 倍・中立 PER 10.35→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。