結論
リリカラは、壁紙・カーテン・床材を内装業者に卸す老舗の商社だ。オフィスの内装工事と、小さな不動産開発も手がける。筆者の結論はやや割高である。売上は330億円を超えるが、営業利益率は2%台にとどまり、資本コストに見合う稼ぎが続いた年はほとんどない。
強みは見本帳だ。内装業者や設計者は、分厚い見本帳から柄を選んで注文する。見本帳が現場に置かれている限り、注文は一定の割合で入る。ただ、この仕組みは最大手のサンゲツが一段と厚く持ち、リリカラは2番手以下の位置にいる。値段を決める力は弱い。
2024年にティーケーピーが公開買付けで親会社になった。貸会議室の大手と組み、オフィスの内装工事を伸ばす狙いだ。2025年12月期は利益が戻ったが、2026年の上期は赤字だった。新築住宅の着工は減り続け、壁紙の数量は細る。10年の中立でもROEは資本コストに届かず、今の値段には安全域が見えない。
親会社の傘下に入ったことで、少数株主にとっては利益相反の懸念も加わった。厚い配当は魅力に見えるが、その多くは親会社に流れる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見本帳の網は小さな堀だが、その堀が生む利益が細すぎる。
内装業者が見本帳から柄を選ぶ仕組みは、10年後も残るだろう。壁紙は張り替えのたびに必要で、需要が消えることはない。リリカラはその流れの中に確かに座っている。
しかし、同じ流れの上流には最大手のサンゲツがいる。リリカラは値段を決められず、営業利益率は良い年でも5%に届かない。売上の大きさに比べて、株主のものになる利益は小さい。330億円を売って、純利益は5億円前後だ。
資本の使い方にも疑問が残る。卸の稼ぎが細いからといって、在庫と借入の重い不動産開発に手を広げるのは、得意でない土俵に出ることだ。親会社の都合で資本が使われる恐れもある。
筆者は、利益が資本コストを安定して超える証拠が出るまでは、この会社に今の値段を払う理由は無いと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は3つある。
1つ目はインテリア事業で、売上の4分の3を占める。壁紙、カーテン、床材を仕入れ、全国の内装業者や工務店に卸す。商品は自社のブランドで企画し、メーカーに作らせるものが多い。注文を取る武器は見本帳だ。何千もの柄を載せた見本帳を設計事務所や内装業者に配り、そこから柄が選ばれると注文が入る。見本帳を作って配る費用は重いが、配った見本帳は数年にわたって注文を生む。
2つ目はスペースソリューション事業で、オフィスや店舗の内装工事を請け負う。移転やレイアウト変更の需要を取り、設計から施工までをまとめて受ける。親会社のティーケーピーは貸会議室と宴会場を多く持ち、その改装も取り込める。
3つ目は不動産投資開発事業だ。2025年に初めての開発物件である板橋の集合住宅を売り、利益を出した。土地を買い、建物を建てて売る事業で、在庫と借入が膨らみやすい。
顧客は住宅の新築とリフォーム、オフィスや店舗の改装に分かれる。新築が細る中で、リフォームと非住宅の比重が上がっている。
売上の大きさに比べ、利益は小さい。卸は仕入れて売るだけの部分が大きく、粗利の多くが見本帳と物流と人件費に消えるからだ。
優良さと弱いところ
優良さの芯は見本帳の網にある。内装業者は手元の見本帳から柄を選ぶ。見本帳に載らない商品は選ばれない。全国の現場に見本帳を置き続けるには、毎年大きな費用と販売の手間がかかり、新しい会社は簡単に入れない。ここは本物の参入障壁だ。
ただし、その障壁を一番うまく使っているのはサンゲツだ。最大手は見本帳の数も物流も厚く、値段の主導権も握る。リリカラは2番手以下で、値上げは最大手の動きに合わせるしかない。堀、つまり他社がまねできない強みとしては浅い。
資本効率は低い。営業利益率は過去12年で最も良い年でも5%弱、たいていは0〜2%台だ。ROEは中央値で3%台にとどまる。2022〜23年の利益率の山は、値上げが先行した一時の効果だった。
経営は親会社の方針で変わりうる。ティーケーピーとの連携で工事を伸ばす筋は理にかなうが、不動産開発は在庫と借入で財務を重くする。配当は利益の6〜8割と厚いが、親会社が多くを受け取る形だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
壁紙の需要は、住宅と建物の内装の総量で決まる。国内の壁紙の出荷は年6億平方メートル強で、その多くが新築住宅とリフォームに使われる。新設住宅の着工は年80万戸を下回る水準まで減り、10年でさらに細る見込みだ。数量の追い風は無い。
支えはリフォームと非住宅だ。古い住宅の張り替え、賃貸住宅の入れ替え時の張り替え、オフィスと店舗の改装は、新築ほど減らない。賃貸の退去のたびに壁紙は張り替えられる。この需要は人口が減っても、建物の数が残る限り続く。
価格は原料の塩化ビニルと物流費で動く。メーカーと卸は数年おきに値上げを打ち出し、最大手のサンゲツが先に動くと業界が続く。物価に沿った値上げは通りやすいが、それを超える値上げは難しい。
流通の構造も変わる。大手のハウスメーカーはメーカーから直接買う比率を高め、ネットで柄を選ぶ消費者も増えた。卸の役割は、見本帳と小口の配送、内装業者への与信に絞られていく。人手不足で内装の職人も減り、工事の量そのものが職人の数で頭打ちになる面もある。
業界の上位はサンゲツ、東リ、シンコール、リリカラなどで、上位の顔ぶれは長く変わっていない。再編が進めば、残った会社の値決め力は少し上がる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、1株あたり同じ額の配当を数年続けている。2025年12月期の配当総額は約4.4億円、配当性向は85%だった。会社は2026年12月期も同じ配当を予想する。株主優待は2022年に廃止した。
2024年5〜6月に、ティーケーピーが公開買付けを行い、リリカラを連結子会社にした。上場は維持している。親会社は貸会議室と宴会場の大手で、オフィスの内装工事で組む狙いがある。
親子上場には利益相反の懸念が残る。工事の受注や不動産の取引が親会社との間で行われれば、条件が少数株主に不利になる恐れがある。配当は厚いが、その多くは親会社が受け取る。完全子会社化の可能性もあり、その時の買付け価格は少数株主の取り分を決める。
純現金は約13億円あるが、運転資金と不動産開発の仕入れに使われ、余った現金とは言いにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
リリカラは変わり始めている。2025年12月期の営業利益は前期の約4倍に戻った。インテリアは見本帳の増冊で拡販し、スペースソリューションは大型案件が無くても利益率を上げた。不動産も初めての物件で利益を出した。3つの柱がそろって動き出した。
親会社のティーケーピーとの連携は大きい。貸会議室と宴会場は全国に多く、改装の需要が途切れない。グループの内装工事を取り込めば、スペースソリューションの数量は外部の景気に左右されにくくなる。オフィスの移転とレイアウト変更も、出社の回帰で底堅い。
壁紙の需要は新築だけではない。賃貸住宅は退去のたびに張り替え、古い住宅のリフォームも増える。建物の数が残る限り、張り替えの需要は続く。見本帳の網はその需要を確実に拾う。
配当は同じ額を守り続け、利回りは高い。中期計画の営業利益目標20億円に近づけば、今の時価総額は割安になる。2022〜23年には利益率4〜5%を実際に出しており、届かない数字ではない。
慎重な見方
利益の戻りは脆い。2026年の上期は営業赤字に戻った。工事は中東の情勢で見送られ、インテリアは見本帳の費用が先に出た。過去12年で、営業利益率が4%を超えたのは2年だけだ。それも値上げが先に通った一時の効果だった。
壁紙の数量は細る。新設住宅の着工は減り続け、大手のハウスメーカーはメーカーと直接取引する。卸を通す量は、市場の減りより速く減る。最大手のサンゲツが値段を決め、リリカラは後を追うしかない。
不動産開発は危うい。卸の会社が土地を買って建物を建てるのは、得意な仕事ではない。上期には仕掛かりの不動産が10億円増え、借入も増えた。市況が崩れれば、在庫の評価損が自己資本を削る。
親子上場の構造も重い。工事や不動産の取引が親会社との間で決まれば、少数株主は条件を選べない。厚い配当も、多くは親会社に流れる。中期計画の目標は会社予想の倍で、届く道筋は見えない。
見本帳の網も、デジタルの柄見本や3次元の内装シミュレーションが広がれば、紙の見本帳ほどの囲い込みの力を持たなくなる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。見本帳の網と親会社との連携は本物だが、利益率が資本コストを超える年は過去にほとんど無く、上期の赤字がその脆さを示した。確率は中立を中心に、悲観側をやや厚くした。不動産開発と親子上場の不透明さは、確率と利益率で表し、資本コストには足していない。強気の側が確率を増やすには、利益率3%超が数年続く証拠が要る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 724 円89 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 336 円41 億円)。 今の値に割り戻すと 534 円66 億円、今との差 −18.2%、 期待の年率 +5.0%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,631 円201 億円 | 499 円62 億円 | +226.2% | +12.6% | 213 円26 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,077 円133 億円 | 422 円52 億円 | +129.6% | +8.7% | 330 円41 億円 |
| 中立 | 36% | 742 円91 億円 | 365 円45 億円 | +69.6% | +5.4% | 399 円49 億円 |
| やや悲観 | 21% | 219 円27 億円 | 244 円30 億円 | −29.2% | −3.4% | 97 円12 億円 |
| 悲観 | 11% | 99 円12 億円 | 97 円12 億円 | −69.9% | −11.3% | 22 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 724 円89 億円 | 336 円41 億円 | +62.4% | +5.0% | 1,060 円131 億円 |
今の株価時価総額 653 円80 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 親会社との連携で工事が育ち、利益率が山を超える 利益 15 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 1,631 円201 億円
ティーケーピーとの連携がうまく回る。親会社の貸会議室や宴会場、取引先のオフィスの改装が次々に入り、スペースソリューションの件数は2割増える。設計から施工までをまとめて受ける力が評価され、1件あたりの単価も上がる。
インテリアは、リフォームと賃貸の張り替えの需要をしっかり拾う。見本帳の網を保ち、最大手の値上げに合わせて物価より少し速く値段を上げる。数量は新築の減りをリフォームで補い、ほぼ横ばいを保つ。
不動産は年3棟の開発を回し、市況にも恵まれて利益を出す。全社の営業利益率は5%台半ばまで上がり、過去の山を超える。配当は利益に合わせて増え、親会社の完全子会社化の話が出れば少数株主にも報いる値段がつく。
- インテリア(壁紙・カーテン・床材の卸):数量 72.0(取扱数量(壁紙換算・百万平方メートル・推定))× 価格 4.55(1百万平方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 328 億円・営業利益 11 億円。数量0.96倍・価格名目1.38倍
- スペースソリューション(内装工事):数量 1,800(工事件数(件・推定))× 価格 0.07(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 126 億円・営業利益 7 億円。件数1.2倍・単価名目1.41倍
- 不動産投資開発:数量 3.0(販売棟数(棟))× 価格 15(1棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 5 億円。年3棟
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.13 倍、時価総額 201 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工事と不動産が親会社の後ろ盾で育ち、インテリアも値上げが定着する筋書き。過去に利益率4%超は2年しかなく、10年続く確率は低い。
やや楽観 22% 工事とリフォームが支え、利益率が戻る 利益 11 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,077 円133 億円
インテリアの数量は新築の減りで少し細るが、リフォームと賃貸の張り替えが下支えする。値段は物価に沿って上がり、見本帳の配布を絞って費用も抑える。インテリアの営業利益率は2%台後半まで戻る。
スペースソリューションは、親会社の施設と出社回帰のオフィス改装で件数を1割伸ばす。不動産は年2棟の開発を続け、市況に合わせて堅実に売る。
全社の営業利益は17億円前後まで増える。借入は不動産の仕入れで増えるが、利払いは利益で十分にまかなえる。配当は今の額から少しずつ増え、配当性向は5割前後に落ち着く。ROEは資本コストを少し上回る。
- インテリア(壁紙・カーテン・床材の卸):数量 69.0(取扱数量(壁紙換算・百万平方メートル・推定))× 価格 4.45(1百万平方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 307 億円・営業利益 8 億円。数量0.92倍・価格名目1.35倍
- スペースソリューション(内装工事):数量 1,650(工事件数(件・推定))× 価格 0.07(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 6 億円。件数1.1倍
- 不動産投資開発:数量 2.0(販売棟数(棟))× 価格 14(1棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 3 億円。年2棟
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.06 倍、時価総額 133 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年の回復が続き、工事と不動産が少しずつ伸びる筋書き。会社予想の水準を上回るが、2022〜23年の利益率は実際に出ており、届く範囲にある。
中立 36% 見本帳の網で踏みとどまるが、資本コストに届かない 利益 8 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 742 円91 億円
10年後もリリカラは見本帳を配り、内装業者に壁紙とカーテンを卸している。新築の着工は減るが、リフォームと賃貸の張り替えがあり、取扱の数量は1割強の減りにとどまる。値段は最大手に合わせて物価並みに上がる。
インテリアの営業利益率は2%前後で、今より少し良くなる程度だ。見本帳の費用と物流費、人件費が値上げの多くを食う。スペースソリューションの件数は横ばいで、利益率も今の水準を保つ。不動産は年1〜2棟の開発を続けるが、利益の柱にはならない。
全社の営業利益は12億円台、純利益は8億円前後になる。配当は今の額を続け、利益が増えた分だけ配当性向が下がる。ROEは8%弱で、資本コストに少し届かない。
- インテリア(壁紙・カーテン・床材の卸):数量 66.0(取扱数量(壁紙換算・百万平方メートル・推定))× 価格 4.42(1百万平方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 292 億円・営業利益 6 億円。数量0.88倍・価格名目1.34倍
- スペースソリューション(内装工事):数量 1,500(工事件数(件・推定))× 価格 0.07(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 4 億円。件数横ばい・単価名目1.34倍
- 不動産投資開発:数量 1.5(販売棟数(棟))× 価格 14(1棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。年1〜2棟
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 91 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:壁紙の数量が新築の減りで細り、値上げは物価並み、工事は横ばいという中心の筋書き。会社の2026年予想の水準が10年続く形に近い。
やや悲観 21% 数量の細りと費用に押され、利益が薄くなる 利益 4 億円 · PER 6.4 倍 · 株価時価総額 219 円27 億円
新築の着工が想定より速く減り、大手のハウスメーカーはメーカーとの直接の取引を増やす。卸を通る壁紙の量は2割減る。値上げは最大手に続いて行うが、数量の減りを補えない。見本帳の費用と物流費は下がらず、インテリアの利益率は1%に落ちる。
スペースソリューションは景気の波で件数が減り、利益率も3%に下がる。不動産は市況が冷え、年1棟を低い利益で売るのがやっとだ。
全社の営業利益は6億円弱になる。配当は利益に合わせて減らさざるをえない。ROEは4%弱にとどまり、資本は利益を生まない。
親会社との取引の条件が少しずつ親会社に有利になり、少数株主の取り分は細る。
- インテリア(壁紙・カーテン・床材の卸):数量 60.0(取扱数量(壁紙換算・百万平方メートル・推定))× 価格 4.20(1百万平方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 252 億円・営業利益 3 億円。数量0.8倍・価格名目1.27倍
- スペースソリューション(内装工事):数量 1,300(工事件数(件・推定))× 価格 0.06(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。件数0.87倍
- 不動産投資開発:数量 1.0(販売棟数(棟))× 価格 13(1棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。年1棟・薄利
倍率:ROE 3.7%(純利益3.5億円÷自己資本94.7億円)。RONIC=8.75%+1/2×(3.7−8.75)=6.2%、g 4.0%から正当化PER=(1−4.0÷6.2)÷4.75%=7.5倍。数量が細り費用に押される筋書きなので、その8.5割の6.4倍に置いた。PBRは0.24倍で中立より低い。稼ぐ力の床(純利益÷k=約40億円)は上回らないが、運転資金と不動産在庫で純現金は戻らないとみた。
確率:2026年上期の赤字のように、工事の見送りと見本帳の費用が重なる年が続く筋書き。過去12年の大半の利益率がこの水準で、2割強を置いた。
悲観 11% 卸の中抜きと不動産の損で稼ぐ力を失う 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 99 円12 億円
不況の谷で住宅とオフィスの工事が一斉に止まる。壁紙の数量は3割減り、大手のハウスメーカーとネットの直販が卸の取り分を奪う。値上げは通らず、インテリアは赤字になる。
スペースソリューションは受注が細り、利益はわずかしか残らない。開発中の不動産は売れ残り、評価損で自己資本が削られる。借入の返済に追われ、配当も大きく減る。
親会社は事業の整理を進めるが、少数株主に有利な条件は期待しにくい。事業は続くが、株主のものになる利益はほぼ消える。価値は、純現金と売れる不動産の在庫を親会社の支配のもとで割り引いた額まで下がる。
- インテリア(壁紙・カーテン・床材の卸):数量 52.0(取扱数量(壁紙換算・百万平方メートル・推定))× 価格 3.90(1百万平方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 203 億円・営業利益 −1 億円。数量0.69倍・赤字
- スペースソリューション(内装工事):数量 1,000(工事件数(件・推定))× 価格 0.06(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 1 億円。件数0.67倍
- 不動産投資開発:数量 0.0(販売棟数(棟))× 価格 12(1棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。開発を止める
倍率:稼ぐ力がマイナスなのでPERは使えない。売れる資産の床(約12億円)を時価総額に置き、今の自己資本81.2億円に対するPBRは0.15倍。
確率:リーマン級の建設需要の落ち込みと、不動産在庫の評価損が重なる筋書き。過去にも赤字の年が4度あり、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
インテリア(壁紙・カーテン・床材の卸)
自社ブランドの壁紙・カーテン・床材を企画し、見本帳を通じて内装業者・工務店に卸す。
| 数量取扱数量(壁紙換算・百万平方メートル・推定) | 価格1百万平方メートルあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 75.0 | 3.30 | 247 | 3 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 4.42 | 292 | 6 |
取り方:数量の開示が無いため、国内の壁紙出荷を年6億平方メートル強とし、カーテン・床材を含めた取扱を壁紙換算で約7,500万平方メートル(シェア1割強)と推定した。売上247.28億円をこの数量で割った額を単価とした。数量は新築着工の減りで細り、価格は物価並み。
スペースソリューション(内装工事)
オフィス・店舗・親会社の施設の内装工事を設計から施工まで請け負う。
| 数量工事件数(件・推定) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 0.05 | 74 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 0.07 | 100 | 4 |
取り方:件数の開示が無いため、中小のオフィス改装の1件あたりを約500万円とみて、売上74.31億円から約1,500件と推定した。前期は大型案件があり売上が22%多かった。
不動産投資開発
土地を取得して集合住宅などを開発し、完成後に売却する。2025年に初の開発物件を販売した。
| 数量販売棟数(棟) | 価格1棟あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 10 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 14 | 21 | 2 |
取り方:2025年12月期はリリーフォート板橋大山の1棟の販売が中心で、売上10.46億円。2026年上期に仕掛販売用不動産が約10億円増えており、年1〜2棟の販売を前提にした。
リスクと懸念
新築の着工減と卸の中抜き
新設住宅の着工は減り続け、大手のハウスメーカーはメーカーとの直接の取引を増やしている。卸を通る壁紙の量は、市場の減りより速く細る恐れがある。リフォームと賃貸の張り替えで補えなければ、インテリアの利益はすぐに消える。
最大手との値決め力の差
壁紙の値段は最大手のサンゲツが主導する。リリカラは値上げも値下げも後を追う形で、原料や物流費の上昇を自分の判断で転嫁しにくい。見本帳の数と物流の厚さでも差がある。
不動産開発の在庫と借入
2026年上期に仕掛かりの不動産が約10億円増え、借入も増えた。卸の会社が開発を手がけるのは不慣れな仕事で、市況が冷えれば売れ残りと評価損が自己資本を削る。
親子上場の利益相反
ティーケーピーが親会社で、工事や不動産の取引が親会社との間で行われうる。条件が少数株主に不利になる恐れがある。完全子会社化の時は、買付け価格が少数株主の取り分を決める。
利益の振れと見本帳の費用
見本帳の制作と配布は先に費用が出る。2026年上期は前倒しの配布で営業赤字になった。工事の見送りも重なると、利益は年ごとに大きく振れる。
今後の分かれ目
- インテリアの営業利益率が2期続けて3%を超えたら
- 値上げとリフォーム需要で稼ぐ力が上がったとみて、やや楽観に寄せる。
- 親会社のグループからの工事が開示で増えたら
- スペースソリューションの数量が安定するとみて、中立から上の件数を見直す。
- 不動産の在庫が評価損を出したら
- 開発の失敗が表に出たとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ティーケーピーが完全子会社化を提案したら
- 買付け価格と本質価値の差で少数株主の取り分を判断する。
- 配当を減らしたら
- 利益の脆さが還元に及んだとみて、やや悲観に寄せる。
見ておくもの
- インテリア事業の売上と利益率
- 新設住宅着工戸数とリフォーム市場
- スペースソリューションの受注と親会社関連の工事
- 販売用・仕掛販売用不動産と借入の残高
- 親会社ティーケーピーの資本政策
倍率と資本コストの決め方
3つのセグメントを数量(実質・推定)×単価(名目)で積み、自己資本は今の値+純利益の合計−配当で流した。倍率は正当化PERと1÷kの関係だけで決め、今・過去・同業のPERやPBR、2024年の公開買付け価格は使っていない。悲観は純現金と不動産在庫の売れる額に親子上場の戻り方0.5を掛けた床で置いた。倉庫・営業所は賃借があるが家賃は売上に比べて小さく、新リース会計基準での見かけの変化は価値に入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→13.13 倍・やや楽観 PER 11.4→12.06 倍・中立 PER 9.8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 1.25%で8.75%。親子上場の利益相反や不動産開発の実行は k に足さず、筋書きと確率で表した。赤字が続く会社ではないので上乗せは置かない。