結論
ヤマシタヘルスケアHDは、九州の病院へ医療機器と消耗品を届ける卸の持株会社だ。中核は創業100年の山下医科器械で、売上は約640億円ある。筆者の結論は「割高」である。事業は堅いが、営業利益率は1%強しかなく、資本コストを上回る稼ぎが見込めないからだ。
売上の大半は、注射器やカテーテルなどの消耗品と治療材料である。病院は毎日これを使うので、需要は景気に左右されにくい。一方で、保険で決まる材料の値段は改定のたびに下がり、物流と人件費は物価と一緒に上がる。利幅は広がりにくい。
財務は堅い。借金はほぼ無く、現金預金が約41億円ある。時価総額の半分近くが現金という形だ。ただ自己資本利益率は7%弱で、資本コスト7.75%に届かない。ためた現金が株主の利回りを薄めている面もある。
10年後も九州の病院に材料を届けている姿は想像しやすい。だが利益が大きく伸びる筋道は見えにくい。筆者は、今の値段は本質価値を大きく上回ると見る。厚い現金を差し引いても、事業の稼ぎが資本コストに届かないからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「長く残るが、オーナーとして利回りが足りない」事業だ。病院に材料を届ける仕事は、10年後も必ずある。九州での信用も簡単には崩れない。だが、卸の利幅は薄く、値段を決める力はメーカーと国の側にある。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益とほぼ同じ年6億円台だ。設備はほとんど要らないが、売上が増えれば売掛金と在庫に現金が寝る。
資本の使い方は保守的すぎる。時価総額の半分近い現金を、2%前後でしか回らない形で抱えている。これを買収か還元に回さない限り、自己資本利益率は資本コストに届かない。安全域は現金が支えるが、事業の稼ぎだけでは今の値段を正当化しにくい。
筆者は、この会社を長く持ちたいとは思いにくい。事業は誠実だが、払う値段に見合う稼ぎの伸びが見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。医療機器メーカーから製品を仕入れ、九州の病院や診療所に毎日届ける。取引先はテルモやオリンパスなどの大手で、病院の手術室や病棟で使う材料を切らさないことが仕事になる。物流の拠点は佐賀県鳥栖市、長崎県諫早市、福岡市の3か所にある。
2026年5月期の売上は641億円で、ほぼ全てが医療機器の販売だ。中身は五つに分かれる。最大は注射器・手袋などの一般消耗品で266億円。次がカテーテルなど体への負担が小さい治療に使う低侵襲治療の材料で149億円、整形外科や眼科などの専門領域が131億円ある。この三つが売上の85%を占め、病院の手術や検査の件数に合わせて動く。
残りは、画像診断装置などの一般機器が79億円、情報・サービスが17億円だ。機器は病院の設備投資に左右され、2026年5月期は16%減った。小さな医療機器の製造と、医療モールの賃貸もあるが、売上はわずかだ。2025年10月には子会社イーディライトを手放し、医療の卸に絞った。
利益は薄い。営業利益は7.4億円、利益率は1.1%にとどまる。粗利から物流費と人件費を引くと、ほとんど残らない構造だ。
優良さと弱いところ
強みは、九州に根を張った配送網と病院との長い付き合いである。手術の材料は、欠品すれば手術が止まる。夜間や休日にも届ける体制は、病院にとって切り替えにくい価値だ。地元で100年続けてきた信用もある。
ただ、これは堀、つまり他社がまねできない強みとしては浅い。扱う品はメーカーの製品で、同じ物を他の卸も売れる。値段は保険の償還価格と病院の入札で決まり、卸が値上げで利益を守る力は弱い。病院の共同購入が広がれば、値引きの圧力はさらに強まる。
資本効率は平凡だ。自己資本利益率は過去9年の中央値で6.8%、資本コストに届いていない。会社は自己資本利益率10%を目標に掲げるが、達成の筋道は示されていない。経営は手堅く、無理な買収はしない。その代わり、現金を厚く持ち続けている。
筆者がいちばん気にしているのは、利幅の下がり方だ。3年で営業利益率は2.0%から1.1%へほぼ半分になった。地域の信用が値段に結びついていない証拠である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医療材料の卸は、数量がゆっくり伸び、値段は上がりにくい市場だ。高齢化で手術や検査の件数は増える。九州は全国より高齢化が早く、病床も人口あたりで多い。一方、特定保険医療材料、つまり保険で値段が決まる材料は、2年ごとの改定で下がる。数量は増えても、売上の伸びは物価に届きにくい。
九州の医療材料と機器の流通は、筆者の推定で4,000億円規模だ。全国の医療機器市場約4.5兆円に、九州の病床の比率を掛けて置いた。ヤマシタはその約16%を握る計算になる。競合は全国規模のシップヘルスケアHDのグループや、地場の卸だ。
病院の経営は苦しい。人件費の上昇に診療報酬が追いつかず、赤字の病院が増えている。設備投資は先送りされやすく、機器の売上は振れやすい。病院の統合や共同購入が進めば、卸は少数の大口顧客に値引きを迫られる。卸どうしの再編も起こりうる。ヤマシタは買う側にも、買われる側にもなりうる規模だ。
10年先を見ると、九州の人口減は全国より早く進む。2030年代の後半には患者の数そのものが減り始める地域も出る。数量の追い風は、時間とともに弱まっていく。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向30%以上だ。2026年5月期は記念を含めて配当の総額が約2.7億円と、純利益の4割を超えた。自社株買いにも約1.5億円を使った。来期は記念の分がなくなり、配当は普通の水準に戻る。
手元には現金預金が約41億円あり、借入はほぼ無い。投資有価証券も約11億円あり、テルモとオリンパスの株が大半を占める。取引先との関係で持つ株だ。
中期経営計画では、2027年5月期に売上730億円、営業利益9.5億円を目指す。今期の会社予想は営業利益8億円で、届くかは微妙だ。九州で中小の卸を買い集める余地はあるが、大きな買収の実績はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
九州の医療は、まだ伸びる。高齢者の比率は全国より高く、手術や検査の件数は増え続ける。低侵襲治療の材料は、カテーテルや内視鏡の手技が広がるほど数量が増える。専門領域も整形外科や眼科で伸びている。消耗品の売上は2026年5月期も3%前後増えた。
財務の余力も大きい。借金がほぼ無く、現金は時価総額の半分近い。病院の経営難で地場の小さな卸が立ち行かなくなれば、ヤマシタは取引先ごと引き受けられる。規模が増えれば、物流の拠点を共有して利益率は上がる。会社は営業利益率1.3%以上と自己資本利益率10%を目標に掲げている。
資本政策が変われば、株主の取り分は大きく変わる。配当性向を上げ、現金を自社株買いに回せば、自己資本利益率は一気に上がる。全国の大手が九州の足場を求めて買収を申し出る可能性もある。
今の値段は、厚い現金を差し引けば事業を利益の7倍ほどで買える水準でもある。九州で100年続く信用を、そこまで安く見る必要はない。
慎重な見方
利幅は細る。保険の材料価格は改定ごとに下がり、物流費と人件費は物価と一緒に上がる。卸はこの差を吸収する側にいる。営業利益率は2023年5月期の2.0%から、2026年5月期には1.1%まで下がった。中期計画の目標にも届いていない。
顧客の病院が弱っている。赤字の病院が増え、機器の更新は先送りされ、材料は入札で値切られる。病院の統合や共同購入が進むほど、卸の交渉力は落ちる。全国大手が価格で攻めれば、地場の卸は利益を守れない。
現金は株主の役に立っていない。厚い現金を抱えたまま、自己資本利益率は7%弱にとどまる。人口減は九州で先に進み、2030年代後半には患者の数そのものが減り始める。10年後に今より強い会社になっている絵は描きにくい。
経営が保守的なのも気になる。中期計画は利益率の目標を掲げるが、どう届かせるかの具体策は乏しい。現金をため続ける会社が、急に資本の使い方を変えるとは考えにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。数量が伸びるのは確かだが、値段が物価に追いつかない以上、利幅は守りにくい。現金の使い方が変わる見込みも、今の開示からは読み取れない。確率は中立を4割弱とし、悲観側を楽観側より厚くした。買収の可能性は上振れとして楽観に含めた。悲観を13%と厚めにしたのは、病院の再編が九州でもすでに始まっているからだ。現金の厚さは下値を支えるが、それだけで確率を楽観に寄せる理由にはならない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 3,269 円83 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 927 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 2,188 円56 億円、今との差 −38.9%、 期待の年率 +1.6%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,579 円142 億円 | 1,144 円29 億円 | +87.8% | +6.5% | 403 円10 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,577 円116 億円 | 1,007 円26 億円 | +56.0% | +4.5% | 1,005 円26 億円 |
| 中立 | 38% | 3,861 円98 億円 | 987 円25 億円 | +35.4% | +3.1% | 1,842 円47 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,045 円52 億円 | 841 円21 億円 | −19.4% | −2.1% | 722 円18 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,018 円26 億円 | 704 円18 億円 | −51.9% | −7.1% | 224 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,269 円83 億円 | 927 円24 億円 | +17.2% | +1.6% | 4,196 円107 億円 |
今の株価時価総額 3,580 円91 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 九州の再編を主導し、利幅が戻る 利益 10 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,579 円142 億円
九州の病院で手術と検査の件数が増え、低侵襲治療と専門の材料が数量を押し上げる。経営の苦しい地場の卸をヤマシタが引き受け、取扱量は10年で15%増える。物流の拠点を共有し、配送の効率が上がる。
材料の値段は改定で下がる分を、保険外の消耗品の値上げが補い、売値は10年で2割上がる。営業利益率は1.4%まで戻る。機器も病院の建て替えの波で数量を保つ。純利益は10億円に近づき、自己資本利益率は7%弱まで戻る。資本コストにはまだ届かないが、九州で最も強い医療材料の卸として、地域の再編の受け皿になる。
病院の側でも、手間のかかる院内の物品管理を卸に任せる動きが広がり、ヤマシタの取り分が増える。
- 消耗品・治療材料の卸:数量 36.9(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 204(1床あたりの年間の材料の売上(万円。保険の材料価格の改定で下がり、保険外の消耗品は物価で上がる))→ 売上 753 億円・営業利益 11 億円。数量1.15倍(買収と件数増)・価格1.20倍・利益率1.4%
- 医療機器・情報サービスほか:数量 33.7(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 40(1床あたりの年間の機器・サービスの売上(万円。物価並みに上がる))→ 売上 135 億円・営業利益 2 億円。数量1.05倍・価格1.34倍(物価並み)・利益率1.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 142 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利幅の改善と地域の再編の両方が要る筋書きで、過去3年は利益率が下がってきた。実現の道は狭く6%とした。
やや楽観 18% 数量が伸び、利幅を保つ 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,577 円116 億円
高齢化で手術と検査の件数が増え、消耗品と治療材料の取扱量は10年で1割伸びる。保険外の消耗品は物価に合わせて値上げが通り、売値は15%上がる。物流の自動化で人手の増加を抑え、営業利益率は1.2%を保つ。
機器は病院の財政が苦しく数量は横ばいだが、値段は物価並みに上がる。純利益は8億円台に乗る。現金は配当と小さな自社株買いで少しずつ戻る。会社の姿は今とほぼ同じで、地域の手堅い卸であり続ける。
中期計画の目標にはやや届かないが、利益は物価に近い速さで伸び、配当も少しずつ増えていく。株主から見れば、可もなく不可もない10年になる。
- 消耗品・治療材料の卸:数量 35.3(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 196(1床あたりの年間の材料の売上(万円。保険の材料価格の改定で下がり、保険外の消耗品は物価で上がる))→ 売上 690 億円・営業利益 8 億円。数量1.10倍・価格1.15倍・利益率1.2%
- 医療機器・情報サービスほか:数量 32.1(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 39(1床あたりの年間の機器・サービスの売上(万円。物価並みに上がる))→ 売上 126 億円・営業利益 2 億円。数量1.00倍・価格1.32倍・利益率1.3%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 116 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高齢化で件数が伸び、値上げも一部通る筋書き。中期計画の利益率目標に近く、起こりやすさは中立の半分ほどと見て18%。
中立 38% 数量は少し増え、利幅は少し細る 利益 7 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,861 円98 億円
手術や検査の件数は高齢化で少し増え、消耗品と治療材料の取扱量は10年で5%伸びる。だが保険で決まる材料の値段は改定で下がり、売値は10年で1割しか上がらない。物流と人件費は物価で3割以上増えるので、消耗品の利益率は1.05%に細る。
機器は病院の財政難で数量が5%減るが、値段は物価に近く上がる。営業利益は8億円前後、純利益は6億円台後半でほぼ横ばいだ。還元は配当性向3〜4割にとどまり、自己資本は130億円台に膨らむ。自己資本利益率は5%ほどに下がる。事業は残るが、株主の利回りは資本コストに届かないままだ。
- 消耗品・治療材料の卸:数量 33.7(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 187(1床あたりの年間の材料の売上(万円。保険の材料価格の改定で下がり、保険外の消耗品は物価で上がる))→ 売上 630 億円・営業利益 7 億円。数量1.05倍・価格1.10倍(保険の材料価格が改定で下がり、物価並みに上がるのは保険外の消耗品だけ)・利益率1.05%
- 医療機器・情報サービスほか:数量 30.5(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 39(1床あたりの年間の機器・サービスの売上(万円。物価並みに上がる))→ 売上 118 億円・営業利益 1 億円。数量0.95倍・価格1.30倍・利益率1.2%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 98 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:件数の緩やかな増加と、保険の材料価格の下げ、物価で上がる費用がぶつかる最も起こりやすい姿として38%とした。
やや悲観 25% 値下げと費用高で利幅が削られる 利益 5 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,045 円52 億円
病院の共同購入が九州でも広がり、入札の値下げが続く。材料の売値は10年で5%しか上がらず、物流費と人件費の上昇を吸収できない。消耗品の利益率は0.85%まで下がる。
病院の赤字で機器の更新は先送りされ、機器の取扱量は15%減る。営業利益は5億円台に落ち、純利益は5億円弱になる。配当は方針どおり減り、現金は一部が利益の穴埋めに回る。自己資本利益率は4%を割り、厚い現金を抱えたまま稼ぐ力だけが細っていく。
中期計画の目標は遠のき、経営は現金を守る姿勢をさらに強める。株主にとっては、厚い現金が下値を支えるだけの会社になる。
- 消耗品・治療材料の卸:数量 32.1(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 179(1床あたりの年間の材料の売上(万円。保険の材料価格の改定で下がり、保険外の消耗品は物価で上がる))→ 売上 573 億円・営業利益 5 億円。数量1.00倍・価格1.05倍・利益率0.85%
- 医療機器・情報サービスほか:数量 27.3(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 37(1床あたりの年間の機器・サービスの売上(万円。物価並みに上がる))→ 売上 102 億円・営業利益 1 億円。数量0.85倍・価格1.25倍・利益率0.5%
倍率:事業ROEが4%を割り、k 7.75%を大きく下回る。稼ぐ力÷kで見ると約11倍になるが、利益が細り続ける筋書きなので上限の7割強の9.0倍とした。
確率:過去3年で利益率は2.0%から1.1%へ下がっており、この流れが続く姿は十分ありうる。中立に次ぐ25%とした。
悲観 13% 全国大手と病院の再編に取り残される 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,018 円26 億円
九州の病院が統合され、購買を本部に集める。全国大手の卸がまとめて取引を取り、ヤマシタは大口の病院を失う。消耗品と治療材料の取扱量は15%減り、値段は10年間ほぼ上がらない。利益率は0.5%まで落ちる。
機器も数量が3割減り、利益はほとんど出なくなる。営業利益は2億円台、純利益は2億円台半ばにとどまる。現金の一部は赤字の拠点の整理と、うまくいかない買収に消える。もう地域の優良な卸とは呼べない姿だ。
病院の再編から取り残された卸に、買い手が付くとも限らない。自己資本利益率は2%前後まで落ち、株主の利回りは国債にも届かなくなる。
- 消耗品・治療材料の卸:数量 27.3(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 170(1床あたりの年間の材料の売上(万円。保険の材料価格の改定で下がり、保険外の消耗品は物価で上がる))→ 売上 464 億円・営業利益 2 億円。数量0.85倍・価格1.00倍・利益率0.5%
- 医療機器・情報サービスほか:数量 22.5(九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア)× 価格 36(1床あたりの年間の機器・サービスの売上(万円。物価並みに上がる))→ 売上 80 億円・営業利益 0 億円。数量0.70倍・価格1.20倍・利益率0%
倍率:構造的に負けた筋書き。事業ROEは2%前後で、稼ぐ力÷k(約12.5倍)より低く、利益の縮みが続く前提で上限の64%の8.0倍とした。厚い現金は余った現金として別に足している。
確率:病院の統合と全国大手の攻勢で地場の卸が取引を失う、構造的に負ける姿。病院の経営難は現実に進んでおり13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
消耗品・治療材料の卸
注射器・手袋などの一般消耗品、カテーテルなどの低侵襲治療材料、整形外科・眼科などの専門材料を病院へ届ける。
| 数量九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア | 価格1床あたりの年間の材料の売上(万円。保険の材料価格の改定で下がり、保険外の消耗品は物価で上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 32.1 | 170 | 546 | 6 |
| 10 年後 中立 | 33.7 | 187 | 630 | 7 |
取り方:九州の病院の病床を約20万床、1床あたりの年間の材料の流通を約170万円と推定し、市場は約3,400億円。2026/05期の一般消耗品266億・低侵襲治療149億・専門131億の合計545.8億円から、シェアは約16%で、病床に直すと約3.2万床分にあたる(推定)。千床×万円×0.1で億円。利益の開示は無く、全社の営業利益7.37億円を売上の比で配った推定。
医療機器・情報サービスほか
画像診断装置などの医療機器、病院向けの情報・サービス、小さな製造と医療モールの賃貸。
| 数量九州の病院の病床(千床・推定)× 自社シェア | 価格1床あたりの年間の機器・サービスの売上(万円。物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 32.1 | 30 | 96 | 1 |
| 10 年後 中立 | 30.5 | 39 | 118 | 1 |
取り方:消耗品と同じ約3.2万床分の病院を相手に、一般機器79億・情報サービス17億ほか95.7億円を売る。1床あたり約30万円(推定)。機器は病院の設備投資で振れ、前期比16%減。利益は全社の営業利益の残りを置いた推定。
リスクと懸念
材料価格の改定と入札の値下げ
保険で決まる材料の値段は2年ごとに下がり、病院は入札で卸に値引きを迫る。仕入値が同じだけ下がらなければ、卸の粗利が削られる。営業利益率が1.1%から0.8%に下がるだけで、営業利益は3割減る。
物流費と人件費の上昇
配送の運転手と倉庫の人手は不足し、費用は物価以上に上がりやすい。売値に転嫁しにくい事業なので、上昇分はそのまま利幅を削る。2023年5月期から3年で営業利益率は半分近くに下がった。
病院の経営悪化と設備投資の先送り
人件費の上昇に診療報酬が追いつかず、赤字の病院が増えている。機器の更新が先送りされ、2026年5月期は機器の売上が16%減った。病院の倒産や統合は、売掛金の回収と取引の継続にも響く。
全国大手との価格競争
シップヘルスケアHDなど全国規模の卸が九州で攻勢をかければ、価格で対抗しにくい。病院の共同購入が広がれば、地場の卸の強みである細かい配送の価値が値段に反映されにくくなる。
現金のため込みと資本効率
時価総額の半分近い現金を抱えたまま、自己資本利益率は資本コストを下回る。還元や買収に回す方針が示されなければ、現金は株主の利回りを薄め続ける。
今後の分かれ目
- 中期計画の営業利益9.5億円(2027年5月期)に届いた
- 利幅を守る力があると判断し、やや楽観の確率を上げる。
- 九州の同業の卸を買収し、物流拠点を共有して利益率が上がった
- 規模の効果が出たとみて、楽観側の数量と利益率を引き上げる。
- 材料価格の改定が毎年になり、下げ幅も深まった
- 消耗品の値段の見通しを下げ、やや悲観と悲観の確率を厚くする。
- 配当性向を大きく上げる、または大きな自社株買いを打ち出した
- 現金の戻り方を1.0に上げる。稼ぐ力は変わらないので倍率は据え置く。
- 全国大手から買収の提案が出た
- 公開買付けの値段で評価が決まる。本質価値の計算は止め、分析の対象から外す。
見ておくもの
- 営業利益率(1.1%)と中期計画の1.3%目標との差
- 消耗品・低侵襲治療の売上の伸び
- 機器の売上と九州の病院の設備投資
- 特定保険医療材料の価格改定の幅
- 配当性向と自社株買いの規模、現金預金の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。資本コスト7.75%に対し、10年後の自己資本利益率は中立で5%前後と届かないので、PERの上限は1÷k=12.5倍になる。中立はその85%、楽観は9割強に置いた。余った現金は運転資金を引いた20億円だけを、戻り方0.75で足した。悲観は事業の稼ぐ力から置き、過去のPBRは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.9 倍・やや楽観 PER 11→12.9 倍・中立 PER 10.6→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.5%を足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。