結論
三信電気は、半導体と電子部品を電機・ゲーム機・産業機器のメーカーに売る中堅の専門商社だ。売上の87%は薄利のデバイス事業、利益の半分以上は売上の13%しかないソリューション事業が稼ぐ。
筆者の結論は、10年で見た本質価値は今の値段をやや下回る、というものだ。事業が悪いわけではない。ただ取扱品はAI向けの先端品ではなく、世界の半導体市場が広がる果実の大半は届かない。直近の好決算も、任天堂向けの急増と大阪支店の土地・建物の売却益に支えられた面が大きい。
強みは二つある。製品群ごとに技術者を置いて顧客の設計に入り込むこと、そして財務が軽いことだ。自己資本比率は5割を超え、純有利子負債は小さい。会社は連結配当性向50%を目処に掲げ、資本効率の目標も持つ。株主を向いた経営だと筆者は見る。
一方で、堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。主な顧客の一社が売上の17%を占め、仕入先の商権は仕入先が握る。売上は10年で年1.4%ずつ縮み、2017年3月期には赤字も出した。中立の稼ぎで割り引いた価値は今の値段に届かず、安全域は見当たらない。
株主に戻る利益は、配当性向50%の方針で年18億円ほどだ。この額が10年続いても、今の値段を正当化するには足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず先が読めるかを問う。三信電気の10年先は読みにくい。取扱品は仕入先が握り、売上の17%を一社が占め、利益の半分以上を稼ぐ事業は小さいからだ。
事業の質は、利益率の高い小さな部門と、利益の薄い大きな部門の組み合わせだ。薄利の事業は資本をそれほど要らないが、稼ぎも株主に残る額が小さい。資本の使い方は誠実で、配当性向50%の方針と過去の自己株TOBは、株主を向いている証拠だ。
安全域を探すと、財務は軽いが、純資産の厚みが価値を支えるわけではない。事業のROEが資本コストと同じか下回る期間が長く、積み上げた利益がそのまま価値になるわけではないからだ。中立の稼ぎで割り引いた価値は、今の値段にやや届かない。オーナーとして持ち続けたいと思える、安全域のある値段ではないと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
三信電気は、半導体と電子部品の専門商社だ。ST、日本航空電子、Realtek、YAGEO、Rockchipなどの製品を仕入れ、電機・ゲーム機・産業機器・車載のメーカーに売る。営業の横には製品群ごとの専任技術者が付き、部品選びから開発の支援までを引き受ける。2026年3月期の売上1,724億円のうち、このデバイス事業が1,502億円、87%を占める。
デバイス事業の稼ぎは薄い。セグメント利益は27億円で、利益率は1.8%だ。主要顧客は任天堂で、販売額は前期の182億円から298億円へ増え、売上の17%に達した。任天堂向けの具体的な品目は開示されていない。筆者は、2025年6月に発売された新型機の立ち上がりが効いたと見るが、ゲーム機の販売サイクルに合わせて波打つ売上でもある。
もう一つの柱がソリューション事業だ。ネットワークとセキュリティ製品の導入・運用、販売管理や人事給与などの業務システム、AI・DXの支援を、企業向けに一貫して提供する。売上は221億円で全体の13%と小さいが、セグメント利益は34億円、利益率は15%に上る。全社の利益の55%をここで稼ぐ。仕入高が売上の約7割に当たるため、機器やライセンスの再販が中心で、人手で売る部分は3割ほどと筆者は見る。
仕入れから納品までの物流、EMSを通した生産の手配、海外での開発支援は、日本・アジア・北米の拠点網を使って引き受ける。2016年には車載関連の共同開発グループが、ソフトウェア開発の国際指標であるCMMIレベル2を取った。メーカーの設計段階に入る商社でありたいという意思は、この辺りに表れている。
優良さと弱いところ
優良さは中くらいだ。強みの中心は小回りと財務の軽さで、堀は厚くない。
取扱品は台湾・中国・韓国・欧州の中堅メーカーが中心で、AIデータセンター向けの先端ロジックやメモリの大手は並ばない。商権は仕入先が握っており、条件を変えられれば受け入れるしかない。営業の横に置いた製品群ごとの技術者と、モジュールまで組んで渡す提案力が差別化の源だが、これだけで他社を寄せ付けない堀とは言えない。
財務は堅い。自己資本比率は50.5%で、利息の約14倍の営業利益がある。ROE は直近5年で7〜11%に収まり、資本コストの前後を行き来してきた。
長い目で見ると傷もある。売上は2015年3月期の2,191億円から10年で年1.4%ずつ縮み、2017年3月期には16億円の赤字を出した。直近の利益率4%は過去の山とほぼ並んでおり、ここから上積みする余地は大きくない。経営は中計で ROE8%以上と株主資本コスト8%を明示し、旧村上ファンド系の大株主を自己株TOBで退出させた経験もある。資本の使い方には誠実だと筆者は見る。
筆者は、この会社の本当の価値は、利益率15%のソリューション事業をどこまで育てられるかにかかっていると見る。デバイスだけなら、薄利で仕入先任せの典型的な商社だ。ソリューションが売上の13%から20%台へ育てば、全社の質は一段上がる。ただし、その育ち方はまだ数年分の実績しかない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の半導体市場は、AIデータセンター向けの先端ロジックとHBMメモリが牽引し、2025年は前年比26%増の約8,000億ドルまで広がった。ただし、この拡大の大半は先端品に集中している。三信電気の取扱品は中堅メーカーの汎用品が中心で、この波の外側にいる。
商社同士の再編は進む。リョーサン菱洋ホールディングスの経営統合や、レスターへの統合がその例だ。仕入先も取扱商社を絞り込む。生き残るのは、設計の段階から入り込む技術商社か、規模で物流を握る商社だ。三信電気は前者を目指すが、規模ではマクニカや東京エレクトロンデバイスに及ばない。
ゲーム機・家電・産業機器・車載といった顧客側の数量は成熟している。国内の需要は人口とともに細り、伸びを作るのは海外の製造拠点とAIを積んだ端末だ。
ソリューション側では、セキュリティ製品の需要は続く。しかし導入・運用の人手を売る部分は、AIエージェントが置き換えていく。この事業の売上の約7割は機器とライセンスの再販で、人手で売る部分は3割ほどだ。置き換えの影響は限定されるが、再販も顧客が直接クラウドから買う流れに押される。
三信電気が戦う場所は、世界の半導体市場の全体ではなく、その中の中堅メーカーの汎用品と電子部品だ。ここでは国内の同業に加え、取扱メーカー自身の日本法人や、中国・台湾の代理店との競争がある。世界市場は10年で名目の年6〜8%伸びる、というのが業種全体の前提だが、三信電気のシェアが同じ速さで伸びる保証はない。ゲーム機は新型機の山と谷があり、家電は国内の数量が細る。車載と産業機器が数量を支える側に回る。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向50%を目処にする。2026年3月期の配当と自社株買いの合計は約18億円だった。2021年には上限157億円の自己株TOBを実施し、旧村上ファンド系の保有分の大半を買い取っている。今は筆頭が信託口で、支配株主はいない。
中期経営計画「V76」は、2027年3月期に経常利益50億円以上、純利益35億円以上、ROE8%以上、自己資本比率40〜45%を掲げる。自己資本比率は今50.5%なので、目標より余力がある。純有利子負債は102億円で、金利が上がっても利払いの増加は小さい。
M&Aは、買う側の実績が開示から確認できない。買われる側としては、時価総額が425億円と小さく、商社再編の流れの中にある。当サイトの推定で、10年以内のTOB・買収の確率は約24%だ。任天堂は三信電気株を政策保有しており、理由を取引関係の維持とするが、保有割合は確認できなかった。株主優待はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
三信電気の利益の質は、この3年で明らかに変わった。ソリューションは、セキュリティとネットワークの再販を軸に売上が22%、利益が56%伸び、利益率15%の事業が全社の稼ぎの55%を占めるまでに育った。デバイスも、最大顧客の任天堂向けが182億円から298億円へ増え、2026年3月期の純利益は5割近く増えた。中計V76の目標は経常利益50億円以上、ROE8%以上で、すでに達成が見えている。
財務は軽く、配当性向50%の方針で株主に利益を戻し続ける。自己資本比率は50%を超え、中計の目標水準を上回る余力がある。商社再編の流れの中で、時価総額425億円の小さな会社は、買収の対象にもなりやすい。TOBが起きれば、事業の本質価値に近いところまで値段が動くと見る向きも多い。ソリューションが10年で売上を倍にできれば、全社の利益率は今より上がる。
配当性向50%を守る経営陣が、ROE8%以上の目標を中計で掲げていること自体が、株主を向いた経営の証拠でもある。小さな会社が少しずつ質を上げる局面は、市場に評価されるまで時間がかかる。10年という長い目で見れば、利益の質の変化が価値に追いつく。
慎重な見方
三信電気の本質は、仕入先に値段と商権を握られた薄利の流通業だ。デバイスの利益率は2%前後で、利益は売上の動きに敏感に振れる。2017年3月期には16億円の赤字を出し、売上は10年で年1.4%縮んだ。直近の好決算は、任天堂向けの急増と大阪支店の土地・建物の売却益に支えられている。2027年3月期の会社予想は減益で、足元から利益は下がる。
最大顧客の任天堂は売上の17%を占める。新型機の山は一巡すれば反動が来る。しかも取扱品はAIデータセンター向けの先端品ではなく、世界の半導体市場の拡大の恩恵が薄い。商社同士の再編でマクニカや東京エレクトロンデバイスが規模を広げる中、小さな商社は条件の悪化に耐えにくい。ソリューションの人手の部分も、AIエージェントに置き換わる。小さな高収益部門に全社の価値を預けるには、足場が弱い。
仮に楽観が当たってソリューションが倍になっても、全社の利益の質はまだ薄利の商社の域を出ない。10年の間に、AIエージェントが導入・運用の人手を置き換える流れは確実に来る。売上の約3割は、この置き換えの的になる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうがやや強い。ソリューションの伸びと財務の軽さは本物だが、全社の価値を決めるのは、売上の9割近くを占める薄利のデバイスだ。そこでは最大顧客の山の反動と、取扱品の弱さが残る。
このため確率は、楽観を抑え、やや悲観と悲観に厚めに置いた。ただし資本の使い方が誠実で財務が軽い点は、悲観をさらに厚くしない理由になる。中立は、世界の半導体市場の伸びを取り込みきれない普通の商社の姿に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,693 円697 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,977 円242 億円)。 今の値に割り戻すと 3,833 円469 億円、今との差 +13.1%、 期待の年率 +8.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 12,421 円1,521 億円 | 3,030 円371 億円 | +355.8% | +16.4% | 1,391 円170 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,226 円1,007 億円 | 2,491 円305 億円 | +216.2% | +12.2% | 2,358 円289 億円 |
| 中立 | 34% | 5,693 円697 億円 | 2,067 円253 億円 | +128.9% | +8.6% | 2,638 円323 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,724 円333 億円 | 1,478 円181 億円 | +24.0% | +2.2% | 966 円118 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,691 円207 億円 | 948 円116 億円 | −22.2% | −2.5% | 317 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,693 円697 億円 | 1,977 円242 億円 | +126.2% | +8.5% | 7,670 円939 億円 |
今の株価時価総額 3,390 円415 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 新しい取扱品とソリューションが育ち、利益の質が上がる 利益 109 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 12,421 円1,521 億円
世界の半導体市場は名目で年10%伸び、三信電気の取扱品の幅も広がる。台湾・中国・韓国の中堅メーカーの商権が増え、AIを載せた端末やロボット向けのチップで新しい顧客も取る。任天堂向けは新型機の販売が長持ちして高止まりする。取扱シェアは今の1.26%から1.15%への小幅な低下にとどまり、デバイスの売上は3,560億円へ2.4倍になる。営業利益率は2.8%へ上がる。
ソリューションはセキュリティ製品の再販が伸びる。人手で売る部分も、AIを使った運用の請負へ移して守り切る。売上は483億円、営業利益率は14%。全社の営業利益は今の2倍を超える167億円になり、自己資本利益率も13%に乗る。会社が掲げたROE8%以上の目標を、大きく上回る10年になる。ここまで来ても、取扱品の構造は変わらない。薄利の流通業が、規模を広げて利益率を少し上げた姿だ。
- デバイス事業:数量 17.7(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS統計)×取扱シェア)× 価格 202(1ドル150円×物価の倍率(円))→ 売上 3,560 億円・営業利益 100 億円。世界半導体市場2,064億ドル(名目)を物価1.34倍で割った実質1535億ドル×取扱シェア1.15%=取扱高17.66億ドル(実質)、価格は1ドル150円×物価1.34倍、営業利益率2.8%
- ソリューション事業:数量 359(取扱高(億円・実質)=守備範囲の国内IT投資(筆者の推定、今約2.5兆円)×取扱シェア)× 価格 1.34(物価の倍率)→ 売上 483 億円・営業利益 68 億円。守備範囲の実質市場が今の1.25倍×取扱シェア1.15%=実質売上359億円、価格は物価1.34倍、営業利益率14%
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.99 倍、時価総額 1,521 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新規商権の獲得とソリューションの成長が同時に成り立つ必要があり、重なる確率は低い。ただし中計の目標を超える実績はすでに出ている。
やや楽観 22% デバイスは小幅に前進、ソリューションが利益を支える 利益 79 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 8,226 円1,007 億円
世界の半導体市場は名目で年8%伸びる。三信電気の取扱シェアは1.05%へ下がるが、市場の伸びと新しい商権が穴を埋め、デバイスの売上は10年で1.8倍の2,705億円になる。任天堂向けは新型機の山を越えても一定の規模が残る。営業利益率は2.6%にとどまる。
ソリューションはネットワークとセキュリティ製品の再販を軸に伸び、売上409億円、営業利益率13%を保つ。人手で売る部分はAIエージェントに置き換わるが、再販の伸びがそれを補う。全社の営業利益は今の1.8倍の124億円、自己資本利益率は10%台に乗り、配当性向50%の方針も続く。中計の目標を達成し続ける姿で、大きな驚きのない良い10年だ。薄利の大きな部門と高収益の小さな部門という構図が、そのまま規模を増すだけである。
- デバイス事業:数量 13.4(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS統計)×取扱シェア)× 価格 202(1ドル150円×物価の倍率(円))→ 売上 2,706 億円・営業利益 70 億円。世界半導体市場1,718億ドル(名目)を物価1.34倍で割った実質1278億ドル×取扱シェア1.05%=取扱高13.42億ドル(実質)、価格は1ドル150円×物価1.34倍、営業利益率2.6%
- ソリューション事業:数量 305(取扱高(億円・実質)=守備範囲の国内IT投資(筆者の推定、今約2.5兆円)×取扱シェア)× 価格 1.34(物価の倍率)→ 売上 409 億円・営業利益 53 億円。守備範囲の実質市場が今の1.16倍×取扱シェア1.05%=実質売上304億円、価格は物価1.34倍、営業利益率13%
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.78 倍、時価総額 1,007 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近4年のROEが7〜11%で推移した実績と、中計の目標水準を上回る稼ぎが続くイメージに近い。
中立 34% 薄利のデバイスと小さな高収益部門が並び続ける 利益 58 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,693 円697 億円
世界の半導体市場は名目で年7%伸びるが、三信電気の取扱品はAI向けの先端品ではなく、市場の伸びの大半は届かない。取扱シェアは任天堂向けの山が一巡して0.95%へ下がり、デバイスの売上は10年で1.5倍の2,231億円にとどまる。営業利益率は2.3%と、今の水準を保つ。
ソリューションの売上は342億円に伸びる。セキュリティ製品の再販は需要が続く。ただし人手が要る導入・運用の部分はAIエージェントに置き換わり、実質の売上は10年で1.15倍にとどまる。営業利益率は12%に下がる。
全社の営業利益率は3.6%と、過去の山の4.2%を下回る。純利益は58億円で、今の稼ぐ力の1.3倍だ。自己資本利益率は8%で、会社が掲げる目標の下限に重なる。特別に良くも悪くもない、普通の中堅商社として10年が過ぎる。
- デバイス事業:数量 11.1(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS統計)×取扱シェア)× 価格 202(1ドル150円×物価の倍率(円))→ 売上 2,231 億円・営業利益 51 億円。世界半導体市場1,566億ドル(名目)を物価1.34倍で割った実質1165億ドル×取扱シェア0.95%=取扱高11.07億ドル(実質)、価格は1ドル150円×物価1.34倍、営業利益率2.3%
- ソリューション事業:数量 254(取扱高(億円・実質)=守備範囲の国内IT投資(筆者の推定、今約2.5兆円)×取扱シェア)× 価格 1.34(物価の倍率)→ 売上 342 億円・営業利益 41 億円。守備範囲の実質市場が今の1.07倍×取扱シェア0.95%=実質売上254億円、価格は物価1.34倍、営業利益率12%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 677 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中心値(世界半導体市場の名目6〜8%)と、取扱品が先端品でない点、ソリューションの再販が主体である点を組み合わせた中心の筋書き。
やや悲観 23% 任天堂向けが細り、取扱シェアがやせる 利益 31 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 2,724 円333 億円
世界の半導体市場の伸びは名目で年4%に鈍る。任天堂向けの販売は新型機の山を越えると大きく細る。仕入先のメーカーも国内の商社を減らし、直販や大手への集約を進める。取扱シェアは0.8%まで下がり、デバイスの売上は1,413億円とやや減る。営業利益率は1.8%まで落ちる。
ソリューションでもAIエージェントが導入・運用の人手を置き換える。再販は価格競争になり、実質の売上は今より1割ほど減る。売上は271億円、営業利益率は10%に下がる。
純利益は31億円と、今の稼ぐ力の7割に落ち、ROEは5%を切る。配当性向50%は守られるが、金額は縮む。事業が壊れるわけではない。ただ、株主の取り分が資本コストに届かない会社として、10年が過ぎる。
- デバイス事業:数量 7.0(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS統計)×取扱シェア)× 価格 202(1ドル150円×物価の倍率(円))→ 売上 1,413 億円・営業利益 25 億円。世界半導体市場1,178億ドル(名目)を物価1.34倍で割った実質876億ドル×取扱シェア0.80%=取扱高7.01億ドル(実質)、価格は1ドル150円×物価1.34倍、営業利益率1.8%
- ソリューション事業:数量 202(取扱高(億円・実質)=守備範囲の国内IT投資(筆者の推定、今約2.5兆円)×取扱シェア)× 価格 1.34(物価の倍率)→ 売上 271 億円・営業利益 27 億円。守備範囲の実質市場が今の0.95倍×取扱シェア0.85%=実質売上202億円、価格は物価1.34倍、営業利益率10%
倍率:事業の純利益31億円・事業 ROE 4.9% は k 8.5% 以下なので、PERの上限は1÷k=10.5倍。成長と堀の持ちを低く見る筋書きのため、上限の約65%の6.8倍に置いた。
確率:新型機の山の反動と、中国系メーカーの直販化、商社の再編に押される構図が同時に進む筋書き。直近の予想が減益である点も踏まえた。
悲観 12% 仕入先と最大顧客の双方を失い、小さな商社に戻る 利益 13 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,691 円207 億円
取扱メーカーが日本の商社を使わず直接売る動きが広がる。取扱品に多い中国・台湾メーカー(RealtekやRockchipなど)も、商権を大手商社に集める。任天堂向けは最大顧客でありながら、調達の見直しで半分以下に落ちる。世界の半導体市場は名目で年5%伸びても、三信電気の取扱シェアは0.55%まで下がる。デバイスの売上は1,069億円に縮み、営業利益率は1.0%と、2017年3月期の水準に近い。
ソリューションもAIエージェントが人手の仕事を奪い、再販は値引き競争になる。売上は188億円へ縮み、営業利益率は7%に落ちる。純利益は10年で12億円まで細り、ROEは2%台になる。
稼ぐ力は細っても、売掛金や在庫を回収して返せば、帳簿の自己資本の一部は株主に残る。その額を、悲観の床に置く。
- デバイス事業:数量 5.3(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS統計)×取扱シェア)× 価格 202(1ドル150円×物価の倍率(円))→ 売上 1,069 億円・営業利益 11 億円。世界半導体市場1,296億ドル(名目)を物価1.34倍で割った実質964億ドル×取扱シェア0.55%=取扱高5.30億ドル(実質)、価格は1ドル150円×物価1.34倍、営業利益率1.0%
- ソリューション事業:数量 140(取扱高(億円・実質)=守備範囲の国内IT投資(筆者の推定、今約2.5兆円)×取扱シェア)× 価格 1.34(物価の倍率)→ 売上 188 億円・営業利益 13 億円。守備範囲の実質市場が今の0.80倍×取扱シェア0.70%=実質売上140億円、価格は物価1.34倍、営業利益率7%
倍率:事業ROEは2%台で資本コストを大きく下回り、稼ぐ力から出る価値は72億円にとどまる。床は純現金+売れる資産の税後(207億円)で、今の自己資本459億円×0.451。ためた利益には掛けていない。
確率:取扱メーカーの直販化と最大顧客の離脱が同時に起きる構造的な負け。2017年3月期に赤字を出した前例があり、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
デバイス事業
半導体(システムLSI・マイコン・パワー半導体・ディスプレイドライバなど)と電子部品(コネクタ・コンデンサ・液晶モジュールなど)を、電機・ゲーム機・産業機器・車載のメーカーに売る。
| 数量取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS統計)×取扱シェア | 価格1ドル150円×物価の倍率(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 150 | 1,502 | 36 |
| 10 年後 中立 | 11.1 | 202 | 2,231 | 51 |
取り方:WSTSの2025年実績(約7,956億ドル)を今の世界市場とし、デバイス事業の売上1,502億円(ドル換算で約10.0億ドル)を、その約1.26%の取扱シェアとして逆算した。この数字は商社の取扱高のシェアで、メーカー自身の生産シェアではない。数量は市場×シェア(実質)、価格は1ドル150円で、物価の分だけ10年で1.34倍にする。開示されたセグメント利益は経常ベースで27億円(1.8%)。全社の営業利益69億円と経常利益61億円の差(約8億円)は主に利払いなので、借入の使い道である在庫を持つデバイスに寄せ、営業利益は35.5億円(2.4%)とした。
ソリューション事業
ネットワーク・セキュリティ製品の導入と運用、販売管理・人事給与などの業務システム、AI・DX支援を、企業向けに提供する。機器とライセンスの再販が仕入高から見て約7割。
| 数量取扱高(億円・実質)=守備範囲の国内IT投資(筆者の推定、今約2.5兆円)×取扱シェア | 価格物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 221 | 1.00 | 221 | 34 |
| 10 年後 中立 | 254 | 1.34 | 342 | 41 |
取り方:三信電気の守備範囲に当たる国内の法人向けネットワーク・セキュリティ・業務システムのIT投資を、数兆円規模の国内ITサービス市場のうち約2.5兆円と筆者が推定した(開示は無い)。売上221億円はその約0.89%。仕入高は売上の約7割(155億円)で、再販が中心。セグメント利益34億円(15.3%)は経常ベース。営業利益は33.6億円(15.2%)とした。10年の数量は、再販(約7割)が国内のセキュリティ需要で実質年2%台伸び、人手で売る部分(約3割)がAIエージェントの代替で0.65倍に縮む、という合成で置く。
リスクと懸念
最大顧客と新型機の山の反動
任天堂向けの販売は前期の182億円から298億円へ増え、売上の17%を占める。ゲーム機は新型機の山を越えると販売が細る。具体的な品目が開示されず、調達先の見直しで取引が変わっても外から見えにくい。
仕入先の商権と直販化
取扱品は台湾・中国・韓国・欧州の中堅メーカーが中心で、商権は仕入先が握る。メーカーが取扱商社を絞り込んだり、直接売ったりすれば、三信電気は条件を受け入れるしかない。米中の対立が強まれば、中国系メーカーの取扱にも影響が出る。
半導体の循環と在庫評価損
営業利益は2017年3月期の8億円から2023年3月期の68億円まで、6年で8倍に振れた。需要が急に減れば、仕入れた在庫の値下がりが直撃する。薄利の事業では、わずかな在庫評価損が利益を消す。
AI向け先端品の外にいる
世界の半導体市場の拡大は、AIデータセンター向けの先端ロジックとHBMに集中している。三信電気の取扱品は汎用の中堅品が中心で、この拡大の果実が届きにくい。市場が伸びても、取扱シェアが下がれば売上は増えない。
AIエージェントによるソリューションの代替
ソリューションの売上の約3割は、導入・運用の人手で売る部分だ。AIエージェントが設計・構築・保守の作業を置き換えれば、この部分は縮む。残りの再販も、顧客が直接クラウドから買う流れで価格が下がる。利益率15%の高収益部門が、10年で12%前後に落ちる恐れがある。
商社再編の中で規模が足りない
リョーサン菱洋の統合やレスターへの統合など、半導体商社の再編が進む。仕入先が取扱商社を絞る流れの中で、売上1,700億円規模の三信電気は、規模でマクニカなどに及ばない。買われる側になる可能性もあるが、買われなければ小さな商社のまま残る。
直近の利益に含まれる一時要因
2026年3月期の純利益50億円には、大阪支店の土地・建物の売却益が入っている。2027年3月期の会社予想は経常利益が17.7%減る見通しで、足元の稼ぐ力は、ここ1年の好決算ほど高くない。
今後の分かれ目
- 任天堂向けの販売額が前期を割り込んだら
- デバイスの売上と利益が同時に細る合図だ。やや悲観の筋書きに重みを移す。
- ソリューションの営業利益率が15%を超えて売上が2年続けて伸びたら
- 再販だけでなく自社の付加価値が育っている証拠だ。やや楽観の確率を上げてよい。
- AIエージェントを自社のサービスに組み込んだ受注が、金額で開示されたら
- ソリューションの人手の部分を守れる材料になる。ただし再販の価格下落も合わせて見る。
- 仕入先メーカーが日本の取扱商社を絞り、三信電気が外れたら
- デバイスの取扱シェアが一段下がる。悲観の筋書きが近づいたと見る。
- TOBや経営統合の提案が出たら
- 事業の本質価値に近いところまで値段が動く可能性があるが、提示価格が稼ぐ力から見て妥当かを別に確かめる。
- ROEが2期続けて8%を割ったら
- 中計の目標が崩れたことになり、配当性向50%の方針の持続性も疑わしくなる。
見ておくもの
- 任天堂向けの販売額と売上に占める比率
- ソリューション事業の売上成長率と営業利益率
- デバイス事業のセグメント利益率(1.8%前後からどちらへ動くか)
- 仕入先メーカーの取扱商社の絞り込みと新規商権の獲得
- 中計V76の達成度と、次の中計での資本効率の目標
- 配当性向50%の維持と自己株式取得の有無
倍率と資本コストの決め方
世界半導体市場の名目の伸びは業種ノートの値(中立6〜8%)をそのまま使い、物価1.34倍で割った実質を数量に置いた。物価は価格の側にだけ入れた(二重に数えない)。デバイスの取扱シェアは、任天堂向けの山が一巡して下がる前提で1.26%から0.95%へ置いた(シェアは数量の側、価格の欄は物価だけ)。悲観の床は貸借対照表の内訳を確かめられておらず、回収率を控えめに推定した。ソリューションの数量は、再販約7割と人手の約3割に分け、人手の部分にAIエージェントの代替(0.65倍)を当てた。倍率は資本コスト8.5%(基本7.5%、quality合計+2.0%)、長期成長4%、堀は普通から正当化PERの上限を出し、中立はその約8割に置いた。ROEは資本コスト以下なので上限は1÷k。悲観は事業ROEが資本コストを大きく下回る筋書きで、上限の55%に置き、谷のPBRは使っていない。今の値付けには寄せていない。店舗や倉庫を借りて営む会社ではなく、新リース会計基準の影響は小さいと見て個別には扱わない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.50%。