結論
第一興商は、業務用通信カラオケ「DAM」の最大手だ。スナック・バーでは 8 割弱、カラオケルームでは 5 割台半ばのシェアを持つ。自前のカラオケ店「ビッグエコー」と駐車場も営む。
筆者の結論は、今の値段は少し高いというものだ。事業の稼ぐ力は確かだが、国内の成熟した需要で、実質では伸びない。10 年で価値が今の時価総額の 8 割台に落ち着くと見る。
利益の半分強を稼ぐのは業務用カラオケだ。機器の貸し出しと曲の配信料が積み上がる、いわゆるストック型の商売である。対して売上の 4 割強を占めるビッグエコーは、利益率が 1 割を切る。家賃と人件費の重い外食に近い商売だ。
2021 年 3 月期には営業赤字に落ちた。ナイト市場が小さくなる中で外出が止まれば、同社でも需要は蒸発する。堀はあっても、景気や感染症には強くない。
最近は駐車場の買収で稼ぎの柱を増やしている。ただ規模はまだ小さい。10 年後の中立の姿は、物価の分だけ育つ会社だ。ROE は 9% 台で、資本コストを少し上回る程度にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業と普通の事業の抱き合わせ」と映る。
良い事業は業務用カラオケだ。ほぼ独占に近いシェアと、毎月の配信料が積み上がる収益の形は、投資を少なくして利益を出せる。新しい機種に投じるお金は要るが、利益率 18% は十分に高い。
普通の事業はビッグエコーと駐車場だ。ビッグエコーは家賃と人件費の固定費が重く、需要が落ちると利益が一気に消える。駐車場は買収で伸びるが、土地という資産を買う形になり、資本効率は上がりにくい。
オーナー利益は、純利益から機器や店の更新に要る投資を引いた分になる。見かけの純利益よりかなり小さいと見る。
経営者の資本配分は堅実で、無理な買収で価値を壊した形跡はない。ただ、ROE 12% の目標に届く道筋は見えない。
払う値段の安全域は薄い。今の値段は、10 年後も今の稼ぐ力が保たれる中立の筋書きを超える水準で、良い方に偏った前提だ。もう少し安ければ、堀の分だけ持ち続けたい会社になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は業務用カラオケだ。DAM という機器をスナック、カラオケルーム、介護施設などへ貸し出し、毎月の配信料も取る。稼働は 22 万台で、台数は年に 1% ほどずつ増えてきた。新機種に入れ替わるたびに料金も上がる。売上は 650 億円台、営業利益率は 18% と高い。
ビッグエコーは、同じ DAM を使う自前のカラオケ店だ。店と飲食の合計は 650 店ほどで、売上は 700 億円台と全体で最も大きい。ただ店は賃借が多く、家賃・人件費・食材費が重い。利益率は 9% 前後にとどまる。
三つ目は駐車場だ。「ザ・パーク」の名で駅前の狭い土地を中心に運営し、買収で施設を増やしている。数字は「その他」に含まれ、不動産賃貸や BGM 放送も入る。利益率は 13% ほどある。
音楽ソフトは、カラオケの曲の制作と音楽出版だ。売上は小さく、利益もほとんど出ない。DAM の曲数を厚くするための裏方である。
つまり同社は、利益の稼ぎ頭と、売上の多い外食に近い事業が同居する会社だ。前者の堀が後者の弱さを覆い隠している。
優良さと弱いところ
堀は、曲の数と、店との長い付き合いだ。DAM は約 34 万曲を配信し、権利者との契約や配信の仕組みを長年積み上げてきた。スナックやカラオケルームは、機器を入れ替えるとなじみの客が戸惑うので、一度入ると変えにくい。競合の JOYSOUND(エクシング、ブラザー系)とは、この 2 社でほとんどを分け合う構図だ。
財務は堅い。自己資本比率は 5 割台半ばで、利払いの 40 倍の営業利益を稼ぐ。コロナ禍の赤字でも潰れる心配はなかった。
弱いのは資本効率と成長だ。ROE は 10% 前後が中央値で、会社の目標の 12% には長く届いていない。ビッグエコーのように、利益率が低く家賃の固定費が重い事業が自己資本の多くを食う。
経営は堅実だが、攻めの動きは駐車場の買収に限られる。国内のカラオケ需要が成熟する中で、次の柱をどう作るかが問われている。2021 年の赤字から立ち直ったのは評価できるが、ROE を上げる構造の変化は見えない。
価格を決める力は中程度だ。物価と人件費の上昇を、機器の貸し出し料とルームの料金に少しずつ乗せている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カラオケ市場は、帝国データバンクの推計で 2024 年度に約 3,200 億円。2018 年度の 3,485 億円に近づいたが、2021 年度には 1,740 億円まで落ちていた。回復の中身は、忘年会などの宴会、推し活、歌わない利用、訪日客だ。客単価は伸び悩み、食材と人件費が利益を削っている。
業務用の側は、スナック・バーなどのナイト市場が長期で細っている。同社の稼働台数がそれでも増えてきたのは、カラオケルームと介護施設への広がりが穴を埋めてきたためだ。介護施設では歌う習慣が健康に良いとされ、設置が伸びている。
競争の相手は JOYSOUND だ。機器は新機種ごとに曲数や演出を競う。同社の最新機は「LIVE DAM WAO!」で、ゲーム会社の技術も入れた。
ルーム運営ではカラオケ館、まねきねこ、シダックスなど大手が並ぶ。繁華街の競争は激しく、郊外は家族連れが主役だ。人口減の中で、店は少しずつ減るとみる。
10 年で見ると、国内の客数は実質で小さくなる。名目では物価の分だけ育つ。成長の源は、機器と料金の値上げ、駐車場の増加に限られる。
資本政策と M&A
資本政策は穏当だ。配当は 2027 年 3 月期も小幅な増配の予定で、増配を続ける姿勢だ。自社株買いは必要に応じて行い、2024 年には約 40 億円を実施した。ROE 12% 以上を中長期の目標にするが、足元の予想は 10% 前後だ。
営業キャッシュフローは、既存事業への投資、借金の返済、株主への還元に回す方針だ。大きな買収では借金の活用も視野に入れる。純有利子負債は 60 億円台で、今は実質的に借金も現金も小さい。
買収は駐車場に集中している。施設を持つ会社を買い、車室を一気に増やしてきた。カラオケ本体では大型の買収はなく、1 店ずつ入れ替える地道なやり方だ。
本社を港区三田へ集約し、旧拠点などの固定資産を売って利益を出した年がある。そのため直近期の純利益は一時的に膨らみ、今期は 21% の減益見通しになる。実力の利益は 120 億円台とみるのが妥当だ。
創業家とみられる個人が大株主に並ぶとされるが、持株比率は確かめられていない。親会社を持つ会社ではない。
株主優待(現物の還元):年およそ2億円を会社の費用ベースで見込む(100株帯の年間額面約2千円×優待対象株主約3万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
DAM は寡占の堀を持つストック型の事業だ。2 社の寡占で、配信の曲数と更新の速さが参入の壁になっている。スナックの減少は進むが、介護施設とカラオケルームの買い替えが続き、稼働は今も増えている。新機種の更新のたびに貸し出し料と配信料が上がり、利益率 18% を保てる。
ビッグエコーは推し活や歌わない利用という新しい需要を取り込み、宴会の戻りで客数も回復している。2026 年 4〜6 月期の営業利益は前年同期比で 17.6% 増えた。値上げが定着し、固定費の重さが逆に利益を押し上げる局面だ。
駐車場は 4,000 を超える施設に広がり、買収で車室を伸ばせる。カラオケとは景気の波が違うので、全体の安定に効く。
財務は堅く、純有利子負債は小さい。配当と自社株買いを増やせば、ROE は目標の 12% に近づく。10 年かけて利益が物価を上回って伸びれば、今の値段は割高とは言えない。物価が 3% 続く世界では、値上げできる会社の利益が名目で伸びるのは自然なことでもある。
慎重な見方
国内のカラオケ需要は成熟し、人口は減る。ナイト市場は縮み続け、DAM の稼働台数を押し下げる。介護施設は新しい需要だが、1 台あたりの稼ぎは小さい。
JOYSOUND との競争は終わらない。機器の貸し出し条件を引き下げる圧力は続き、1 台あたりの料金は物価に追いつかない。スマホやオンラインの歌い方が若い客を取れば、ルームの客数も減る。
ビッグエコーは、家賃と人件費が固定費として重い。コロナ禍では営業赤字に落ち、需要が止まるとすぐ利益が消える構造を見せた。人件費と食材費の上昇を価格に載せきれない年も出る。
駐車場は景気に強いが、土地代と競争(大手の時間貸し)で利益率の上がり方には限りがある。
会社が目標とする ROE 12% は何年も届いていない。今の予想も 10% 前後だ。この水準の ROE で、資本コストを大きく超える倍率を払うのは筋が通らない。ビッグエコーのリースの約束や、新しい会計基準で見かけの借金が増える点も、安全域を薄くする。
どちらに重みを置いたか
事業の堀では強気の見方が正しい。DAM の寡占は崩れにくく、駐車場の積み上げも確かだ。しかし、成長の源が物価の値上げと買収に限られ、実質では横ばいという点は慎重な見方が突いている。
ROE が資本コストを少し上回る程度の会社に、高い倍率は付けにくい。中立の筋書きでは 10 年後の時価総額は今の 1 割ほどしか増えず、配当の分を足しても資本コストに届かない。そのため確率は中立を中心に置いたうえで、やや悲観にも楽観と同じ程度の重みを置いた。コロナ禍の赤字という前例があり、悲観は 10% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,257 円2,333 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 941 円973 億円)。 今の値に割り戻すと 1,819 円1,880 億円、今との差 +3.0%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,046 円4,183 億円 | 1,238 円1,280 億円 | +199.2% | +11.6% | 528 円546 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,222 円3,331 億円 | 1,085 円1,122 億円 | +143.9% | +9.3% | 948 円980 億円 |
| 中立 | 36% | 2,419 円2,501 億円 | 961 円993 億円 | +91.4% | +6.7% | 1,217 円1,258 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,086 円1,123 億円 | 766 円792 億円 | +4.9% | +0.5% | 408 円421 億円 |
| 悲観 | 10% | 340 円351 億円 | 644 円666 億円 | −44.3% | −5.7% | 98 円102 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,257 円2,333 億円 | 941 円973 億円 | +81.1% | +6.1% | 3,199 円3,307 億円 |
今の株価時価総額 1,766 円1,826 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% ナイトも介護も取り込み、駐車場も育つ 利益 225 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 4,046 円4,183 億円
業務用カラオケの稼働は介護施設と家庭に近い小さな店への広がりで増え、DAM は 23 万台を超えて増える。新機種の更新ごとに賃貸料とコンテンツ料が上がり、1 台あたりの稼ぎは物価を超えて伸びる。ビッグエコーは推し活や歌わない利用、宴会の戻りで客数を保ち、客単価も物価並み以上に取る。駐車場は買収と土地活用の提案で車室が 7 万室台まで増える。営業利益は 330 億円前後まで伸び、自己資本の厚みを生かした自社株買いも続く。ただしこれは、国内のカラオケ需要が人口減に負けず、競合の JOYSOUND との差も保てた、うまくいき過ぎの筋書きだ。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 業務用カラオケ:数量 23.5(DAM 稼働台数(万台))× 価格 42(1 台あたり年間売上(万円・名目。機器販売・賃貸・配信料の合計))→ 売上 998 億円・営業利益 200 億円。DAM 23.5 万台、1 台あたり今の 1.45 倍、営業利益率 20%
- カラオケ・飲食店舗:数量 680(店舗相当数(店数 × 客数の指数。店))× 価格 1.54(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 1,047 億円・営業利益 115 億円。店舗相当 680、1 店あたり今の 1.42 倍、利益率 11%
- 音楽ソフト:数量 230(出荷・配信の点数(万点・推定))× 価格 0.33(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 3 億円。230 万点、今の 1.30 倍、利益率 3.5%
- パーキング・その他:数量 7.2(駐車場の車室数(万室。その他の事業は車室に比例させて換算))× 価格 58(1 室あたり年間売上(万円・名目。不動産・BGM を含む))→ 売上 419 億円・営業利益 63 億円。7.2 万車室、1 室あたり今の 1.40 倍、利益率 15%
倍率:事業の純利益 225 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.59 倍、時価総額 4,183 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:介護や小さな店への広がり、新機種の値上げ、駐車場の買収が全部うまく運ぶ必要があり、確度は高くない。
やや楽観 22% 堅調に伸びる、実質の力は一回り上 利益 190 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 3,222 円3,331 億円
DAM の稼働は微増で、機器の更新と配信曲数の差が単価を押し上げる。新機種の入れ替えごとに貸し出し料と配信料が上がり、業務用カラオケの利益率は 19% を保つ。ビッグエコーの客数は横ばいで、物価と人件費の上昇を料金へほぼ転嫁できる。推し活や歌わない利用が客単価を支える。駐車場は買収を重ねて車室を 6 万室台まで増やし、その他の利益が全体を下支えする。営業利益は 280 億円前後になる。会社が掲げる ROE 12% には届かないが、近い所まで戻る。物価を超える実質の伸びはわずかで、上振れの源は単価と買収に限られる。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 業務用カラオケ:数量 22.9(DAM 稼働台数(万台))× 価格 41(1 台あたり年間売上(万円・名目。機器販売・賃貸・配信料の合計))→ 売上 939 億円・営業利益 178 億円。DAM 22.9 万台、今の 1.40 倍、利益率 19%
- カラオケ・飲食店舗:数量 655(店舗相当数(店数 × 客数の指数。店))× 価格 1.50(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 980 億円・営業利益 98 億円。店舗相当 655、今の 1.38 倍、利益率 10%
- 音楽ソフト:数量 220(出荷・配信の点数(万点・推定))× 価格 0.31(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 2 億円。220 万点、今の 1.25 倍、利益率 3%
- パーキング・その他:数量 6.7(駐車場の車室数(万室。その他の事業は車室に比例させて換算))× 価格 57(1 室あたり年間売上(万円・名目。不動産・BGM を含む))→ 売上 382 億円・営業利益 53 億円。6.7 万車室、今の 1.37 倍、利益率 14%
倍率:事業の純利益 190 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.53 倍、時価総額 3,331 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新機種の効き目と駐車場の積み上げで上振れる筋書き。実現の確度は中立より低い。
中立 36% 実質は横ばい、物価の分だけ育つ 利益 153 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 2,419 円2,501 億円
実質では横ばい、名目では物価の分だけ育つ 10 年になる。DAM はスナック・バーの減少が続くが、介護施設とカラオケルームの買い替え需要が穴を埋め、稼働は今より 4% ほど減る。1 台あたりの売上は物価並みに上がる。ビッグエコーは不採算店を畳みつつ客単価を物価並みに上げ、客数は少し減る。駐車場は買収で車室が 2 割増える。JOYSOUND との競争は続くが、寡占の構図は変わらない。営業利益は 230 億円前後、純利益は 150 億円台になる。株主へは利益の 7 割を戻し、ROE は 9% 台にとどまる。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 業務用カラオケ:数量 21.5(DAM 稼働台数(万台))× 価格 39(1 台あたり年間売上(万円・名目。機器販売・賃貸・配信料の合計))→ 売上 844 億円・営業利益 152 億円。DAM 21.5 万台(今の 0.96 倍)、今の 1.34 倍、利益率 18%
- カラオケ・飲食店舗:数量 620(店舗相当数(店数 × 客数の指数。店))× 価格 1.45(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 901 億円・営業利益 81 億円。店舗相当 620、今の 1.34 倍、利益率 9%
- 音楽ソフト:数量 190(出荷・配信の点数(万点・推定))× 価格 0.30(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 1 億円。190 万点、今の 1.20 倍、利益率 2.5%
- パーキング・その他:数量 6.1(駐車場の車室数(万室。その他の事業は車室に比例させて換算))× 価格 56(1 室あたり年間売上(万円・名目。不動産・BGM を含む))→ 売上 340 億円・営業利益 44 億円。6.1 万車室、今の 1.34 倍、利益率 13%
倍率:事業の純利益 153 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.3 倍、時価総額 2,494 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:実質横ばい・物価並みの成長という、成熟した国内需要の素直な置き方。事業の堀が強く、悪化も上振れも同じ程度に見る。
やや悲観 22% スナックの減少と値引きでじわじわ細る 利益 97 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,086 円1,123 億円
スナック・バーの閉店が加速し、DAM の稼働は 2 割近く減る。JOYSOUND との機器の貸し出し条件の競争で、1 台あたりの料金は物価に追いつかない。ビッグエコーは郊外と繁華街の両方で競争が厳しく、人件費と食材費の上昇を転嫁しきれず、利益率は 6% 台に下がる。家賃は固定で残る。駐車場は伸びるが、本体の落ち込みは埋められない。営業利益は 150 億円台に減り、純利益は今の水準を大きく割る。ROE は資本コストを下回り、ためた利益の値打ちは額面未満になる。会社は ROE 目標を下げる判断を迫られる。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に15億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 業務用カラオケ:数量 19.5(DAM 稼働台数(万台))× 価格 37(1 台あたり年間売上(万円・名目。機器販売・賃貸・配信料の合計))→ 売上 731 億円・営業利益 113 億円。DAM 19.5 万台、今の 1.28 倍、利益率 15.5%
- カラオケ・飲食店舗:数量 560(店舗相当数(店数 × 客数の指数。店))× 価格 1.39(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 777 億円・営業利益 51 億円。店舗相当 560、今の 1.28 倍、利益率 6.5%
- 音楽ソフト:数量 160(出荷・配信の点数(万点・推定))× 価格 0.28(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。160 万点、今の 1.10 倍、利益率 1.5%
- パーキング・その他:数量 5.3(駐車場の車室数(万室。その他の事業は車室に比例させて換算))× 価格 53(1 室あたり年間売上(万円・名目。不動産・BGM を含む))→ 売上 282 億円・営業利益 31 億円。5.3 万車室、今の 1.28 倍、利益率 11%
倍率:ROE 6.2% が k 7% を下回るので、ためた利益は額面未満で、正当化 PER は 1÷k=12.5 倍が頭。やや悲観は稼ぐ力の落ちた構造とみて、上限に寄せず 10.5 倍に置いた。
確率:スナックの減少は止まっておらず、JOYSOUND との競争とルーム運営の人件費上昇が重なる確率を、やや上振れより厚く置く。
悲観 10% 通信カラオケの値引き競争と店の閉鎖で構造的に傷む 利益 39 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 340 円351 億円
スマホやオンラインの歌い方に若い客が移り、スナック・バーの閉店も重なって、DAM の稼働は 3 割近く減る。JOYSOUND との値引き競争で、1 台あたりの料金は物価より大きく遅れる。ビッグエコーは客数が 3 割落ち、借りている店の家賃だけが残って、ほぼ利益が出ない。音楽ソフトは赤字になる。駐車場だけが堅調だが、全体の営業利益は 70 億円前後まで細る。還元は利益を超える分を、遊休地や店舗の売却で賄う。借金が小さいので財務は持ちこたえるが、配当は減らさざるを得ない。これは稼ぐ力が構造的に失われ、普通の中堅の外食・遊技企業に落ちた姿だ。
株主優待は現物の還元で、年およそ2億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に10億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 業務用カラオケ:数量 16.5(DAM 稼働台数(万台))× 価格 35(1 台あたり年間売上(万円・名目。機器販売・賃貸・配信料の合計))→ 売上 570 億円・営業利益 71 億円。DAM 16.5 万台、今の 1.18 倍(値引き競争)、利益率 12.5%
- カラオケ・飲食店舗:数量 450(店舗相当数(店数 × 客数の指数。店))× 価格 1.25(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 561 億円・営業利益 11 億円。店舗相当 450、今の 1.15 倍、家賃が残り利益率 2%
- 音楽ソフト:数量 120(出荷・配信の点数(万点・推定))× 価格 0.25(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 −1 億円。120 万点、据え置き、赤字
- パーキング・その他:数量 4.5(駐車場の車室数(万室。その他の事業は車室に比例させて換算))× 価格 48(1 室あたり年間売上(万円・名目。不動産・BGM を含む))→ 売上 215 億円・営業利益 19 億円。4.5 万車室、今の 1.15 倍、利益率 9%
倍率:ROE 2.8% が k 7% を大きく下回る。優位を失った会社は、倍率を上げず稼ぐ力(純利益÷k)の範囲で 9.0 倍に置いた。売れる資産は本社の自社ビル・駐車場の土地などがあるが、額と税後の売却価値を確かめられていないので床には足していない。
確率:構造の負けは起きにくい堀(楽曲の独占契約・8 割弱のスナックシェア)があるが、需要の蒸発(コロナ禍で営業赤字)の前例があり、5% を超えて置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
業務用カラオケ
DAM 機器の販売・賃貸と、配信料などコンテンツ収入。
| 数量DAM 稼働台数(万台) | 価格1 台あたり年間売上(万円・名目。機器販売・賃貸・配信料の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.3 | 29 | 653 | 119 |
| 10 年後 中立 | 21.5 | 39 | 844 | 152 |
取り方:2025 年 3 月期の稼働 22.0 万台(前年比 +1.3%)に基づき、今期は 22.3 万台と推定。売上 653 億円を割ると 1 台あたり約 29 万円。台数は実質、値上げや新機種の単価上昇は 1 台あたりの売上(名目)に入れた。
カラオケ・飲食店舗
ビッグエコーなど直営のカラオケ店と飲食店。
| 数量店舗相当数(店数 × 客数の指数。店) | 価格1 店あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 655 | 1.08 | 710 | 66 |
| 10 年後 中立 | 620 | 1.45 | 901 | 81 |
取り方:2025 年 3 月期のカラオケ店 503・飲食店 159 の合計 662 店から、閉店を引いて 655 店相当と推定。売上 710 億円を割ると 1 店あたり約 1.08 億円。客数の増減は店舗相当数に入れ、物価と値上げは 1 店あたりの売上に入れた。
音楽ソフト
カラオケの楽曲の制作、音楽・映像ソフトの販売、音楽出版。
| 数量出荷・配信の点数(万点・推定) | 価格1 点あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 220 | 0.25 | 55 | 1 |
| 10 年後 中立 | 190 | 0.30 | 57 | 1 |
取り方:売上 55 億円を、1 点あたり約 0.25 万円で 220 万点分と推定(開示がないので概算)。パッケージの縮小で点数は減り、価格は物価より小さく上がるとみる。
パーキング・その他
「ザ・パーク」の駐車場運営、不動産賃貸、BGM 放送。
| 数量駐車場の車室数(万室。その他の事業は車室に比例させて換算) | 価格1 室あたり年間売上(万円・名目。不動産・BGM を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.1 | 42 | 212 | 28 |
| 10 年後 中立 | 6.1 | 56 | 340 | 44 |
取り方:駐車場は約 4,400 施設・5.1 万車室。「その他」の売上 212 億円(不動産・BGM を含む)を車室数で割ると 1 室あたり約 42 万円。車室の増加は買収と土地活用の提案による。
リスクと懸念
ナイト市場の縮小
スナック・バーなどで DAM は 8 割弱のシェアを持つが、店そのものが減っている。閉店が加速すると、シェアが高くても稼働台数が減り、業務用カラオケの利益が先に細る。介護施設の設置で穴を埋められるかが分かれ目だ。
JOYSOUND との値引き競争
業務用は 2 社でほぼ分け合うため、機器の貸し出し条件や配信料の競争が表に出やすい。1 台あたりの料金が物価に追いつかなくなると、利益率 18% が下がる。業務用の営業利益は全体の 5 割強なので、効き方が大きい。
ビッグエコーの固定費
借りている店が多く、家賃と人件費は売上が落ちても減らない。コロナ禍の 2021 年 3 月期は営業赤字だった。新しいリース会計基準が 2028 年 3 月期から貸借表に載るので、見かけの借金は増える。需要の蒸発が起きれば、利益が一気に消える構造だ。
人件費・食材費の上昇
ルームと飲食は、人件費と食材費の上昇を料金へ載せきれない年が出る。客単価が伸び悩むという調査もあり、値上げで客足が遠のけば、利益率 9% 前後の薄い儲けが先に消える。
駐車場の買収の成果
駐車場は買収で施設を増やしてきたが、買った会社の稼ぎが想定を下回れば、のれんの減損が出る。大手の時間貸しとの競争と土地代の上昇もあり、利益率の維持は簡単ではない。
ROE が目標に届かない
会社の中長期目標は ROE 12% 以上だが、今期の予想は 10% 前後だ。構造を変える手が見えないまま、物価の値上げだけに頼ると、資本効率は上がらない。
今後の分かれ目
- DAM の稼働台数が 3 期続けて減ったら
- ナイト市場の縮小が介護・ルームの増加を上回ったとみる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- JOYSOUND が機器の貸し出し条件を大きく引き下げ、DAM も追随したら
- 業務用カラオケの利益率が下がる。1 台あたりの料金が物価に届かない筋書きに寄せる。
- ビッグエコーの既存店の売上が前年を 3 期続けて上回り、利益率が 11% を超えたら
- 中立のルームの利益率 9% を上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 駐車場の買収が 1 件で数百億円規模になったら
- 借金が増え、のれんの減損リスクも増える。買収の価格と利益の乗り方を見て、確率を動かす。
- 自社株買いと配当で、利益の 8 割以上を戻す方針が示されたら
- 成長は変わらないが、1 株あたりの価値は上がる。還元の合計を増やした筋書きに直す。
- 感染症や景気後退で外出が止まったら
- 2021 年 3 月期のような営業赤字を再び見る。悲観の確率を一時的に上げて見直す。
見ておくもの
- DAM の稼働台数と機器賃貸の件数(四半期の決算説明資料)
- ビッグエコーの既存店の売上高と客数
- パーキングの施設数・車室数と買収の発表
- 会社の ROE 目標 12% への道筋と還元方針の更新
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 7%(基本 7.5% + 循環 +0.5% ・値決め力 −0.25% ・寿命 +0.25%)と長期の成長 4%(物価 3% + 実質 1%)から、利益ベースの正当化 PER で出した。中立は ROE 9.3% で資本コストを少し上回る程度なので、下限の 1÷k=12.5 倍にほぼ張り付く。今の PER(直近の実績・予想)は見ていない。10 年の数量は国内の需要を実質で横ばい〜微減、価格は物価並みの 1.34 倍とし、駐車場の車室だけ買収で増やした。ビッグエコーはリースの固定費が残るので、悲観では利益率を大きく下げた。新リース会計基準(2028/03 期から貸借表に載る)で営業利益と借金の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ、家賃を営業費用に入れた形でそろえた。売れる資産(自社ビルや駐車場の土地)の含み益は確かめられていないので、悲観の床に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.3→18.59 倍・やや楽観 PER 13.5→17.53 倍・中立 PER 12.9→16.3 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。