結論
杉本商事は、工場で使う測定機器や切削工具などを 100 万点超そろえ、全国 49 の営業所から製造業へ納める専門商社だ。売上は約 490 億円で、営業利益率は 4% 台にとどまる。現金は有利子負債を 60 億円上回る。
筆者の結論は、10 年先の価値は今の時価総額をやや下回るというものだ。事業は安定している。ただ、卸は利益が薄く、資本を厚く持つほど ROE が資本コストに届かない。時価総額の約半分は現金と有価証券で、本業そのものの値段は軽い。それでも、本業の利益が物価並みにしか伸びない以上、値段の上がり方には限りがある。
直近の追い風は半導体関連の需要だ。今期の第 1 四半期は営業利益が 7 割増え、10 月には中間期の利益予想も引き上げた。一方、前期は営業利益が 14% 減り、第 4 次中期計画の今期の営業利益目標 28.6 億円に対し、会社予想は 20.7 億円と大きく離れている。
株主還元は手厚い。配当性向は 30% 以上を公約し、前期は 46% を配った。さらに 30 億円の自社株買いを実行し、発行済み株数は 3 年で 1 割強減った。筆者は、この還元の姿勢を評価する。余った現金 35 億円は、全額が株主に戻るとみた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、杉本商事は事業の質は普通で、財務と株主還元の姿勢が良い会社だ。
良い点は三つある。借金より現金が多い。利益の半分近くを配当に回し、さらに自社株買いまでする。仕入先と顧客の数が多く、特定の相手に依存しない。
気になる点も三つある。ひとつは、利益の薄さだ。営業利益率が 4% 台の卸は、人件費が 3% 上がるだけで利益が目減りする。ふたつめは、資本の重さだ。純資産 340 億円に対して本業の利益は 17 億円ほどで、ROE は資本コストに届かない。みっつめは、中抜きの圧力が静かに進むことだ。標準品の工具は通販に流れ、残るのは技術相談が要る領域だけになる。
株主のものになる利益は、設備投資がごく小さいので、純利益の 9 割ほどになる。年 15 億円強だ。今の時価総額から現金 60 億円と有価証券 58 億円を引くと、本業は 7 倍台で評価されている計算になる。軽い値段だが、本業の利益が 10 年かけて物価並みにしか伸びない会社に、それ以上は払えない。
払う値段に安全域があるかと問えば、現金と有価証券という下支えはあるが、本業の成長は期待しにくい。中立の筋書きでも価値は今の値段をやや下回る。
何で稼ぐ会社か
杉本商事は 1921 年の創業で、大阪市西区に本社を置く。扱うのは、測定機器と機械工具を中心とした産業用の機器だ。測定機器は、長さや重さを測る計器、環境・測量の機器、光学・科学機器、検知器、分析計など。機械工具は、切削工具、電動・空圧・油圧の工具、作業工具など。合わせて 100 万点超を取り扱い、仕入先は 1,000 社を超える。
営業は営業所ごとの独立採算で、国内 49 の拠点に社員が張りついている。報告上の区分は地域別で、西部が売上の 44%、中部が 29%、東部が 23%、海外が 4% を占める。西部と中部は、機械・自動車・電機の工場が集まる土地だ。顧客は製造業の購買部門と生産現場、建設現場など数多く、1 社への依存は小さい。
儲けの仕組みは、メーカーから仕入れた商品に利ざやを乗せ、注文に素早く応えることにある。品ぞろえの幅と届ける速さで選ばれる。測定機器は使い方の相談や校正の手配など、技術的な手間がかかる。この手間を引き受ける対価が、売上総利益に含まれる。
従業員は連結で約 590 人。営業所の人員が大半で、売上は 1 人あたり 8 千万円を超える。工場の自動化や半導体関連の工場の新設は、測定機器と工具の需要を押し上げる。
優良さと弱いところ
杉本商事の強みは、100 年かけて築いた顧客網と、営業所に権限を渡した機動力にある。仕入先 1,000 社超と 100 万点超の品ぞろえは、1 社の購買部門が自前でそろえるより手間が少ない。測定機器は、機種の選び方や校正の手配など技術的な相談が付きもので、単なる値段比べになりにくい。
財務は強い。現金は 83 億円で、短期の借入 23 億円を引いても純現金が 60 億円ある。自己資本比率は約 78% だ。純粋な投資目的の株も持ち、前期は 5 億円を超える売却益を出した。
弱みもはっきりしている。ひとつは利益の薄さだ。営業利益率は過去 12 年で 4〜6% にとどまり、ROE も 5〜7% 台だ。資本コストの 8% 台に届かず、利益を積み上げるほど資本が余る構造になっている。ふたつめは、前期の営業利益の落ち込みだ。東部と中部のセグメント利益が 3 割近く減り、会社が掲げた中期計画の目標とも大きく離れた。みっつめは、競争の変化だ。通販の MonotaRO、在庫を厚く持つトラスコ中山、FA 部品に強いミスミが、標準的な工具の注文を取りにいく。
筆者は、堀は深くない会社と見る。測定機器の技術相談と営業所の密着で守る領域は残るが、標準的な工具の注文は通販に流れやすい。値段を決める力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
機械工具と測定機器の卸は、製造業の設備投資と工場の稼働率で需要が決まる。景気の波を受けやすく、2009 年には機械商社の受注が 4 割から 6 割減った例がある。杉本商事も 2010 年 3 月期は、営業利益がわずかな赤字に落ちた。
長い目で見ると、構造は二つの力に引っぱられる。ひとつは省人化と半導体関連の設備投資だ。国内は人手不足で、工場の自動化が進む。半導体の工場や装置の増設は、測定機器・検査機器・工具の需要を押し上げる。直近の第 1 四半期は、半導体関連の需要で売上が 8.6% 増えた。もうひとつは、中抜きの圧力だ。標準品の工具は、通販や在庫型の大手へ注文が移る。メーカーが自社で直販する動きもある。
専門商社どうしでも、収益力に差がつきつつある。トラスコ中山は在庫を厚く持って即納で差をつけ、ミスミは FA 部品の短納期供給で稼ぐ。単純な仕入販売だけの商社は、利益率が薄いままだ。
人手不足と物流費の上昇は、卸全体のコストを押し上げる。価格に転嫁できる卸だけが利益率を保てる。国内の製造業の拠点数は減り続け、工場数の実質の減少は年 1% 前後になる。ここに設備の自動化需要が重なり、市場全体の数量は 10 年でほぼ横ばいとみる。
海外は売上の 4% で、まだ小さい。貿易部が担い、東南アジアや中国向けの輸出が中心だ。伸ばす余地はあるが、同社の人員と販路では急には増えない。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 30% 以上の公約だ。前期の連結配当性向は 46%、DOE(純資産配当率)は 2.8% だった。1 株の配当は前期より減ったが、自社株買いで株数が減っているので、総額の落ち込みは小さい。
自社株買いは前期だけで 30 億円で、株数は 3 年で 20.2 百万株から 17.5 百万株へ減った。自己株の残高は 69 億円ある。純現金は 2 年で 84 億円から 60 億円へ減り、利益を超えて株主に戻してきた。筆者はこの姿勢を高く見る。
持っている有価証券は約 58 億円だ。純投資の上場株が 28 銘柄で約 27 億円、非上場が 11 億円、取引先の理研計器(取扱商品の安定仕入のために持つ)が約 6 億円だ。前期は売却益を 5 億円計上した。売る方針や金額の目標は開示されていないので、価値には足さない。配当は年 0.7 億円で、利益に入っている。
内部留保の使い道には、営業力の強化、新しい基幹システム、M&A が挙がる。前期は大阪府泉大津市の土地を取得した。M&A の実績はほとんど無く、大型の買収を狙う力も見えない。買収される側の確率は、推定で 10 年に 2 割ほどある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
杉本商事は、いま追い風の入り口に立っている。半導体関連の設備投資は、世界的に長いブームの途中だ。国内でも半導体の工場や装置の新設が相次ぎ、測定機器・検査機器の需要を押し上げる。直近の第 1 四半期は、売上が 8.6% 増え、営業利益は 7 割も増えた。10 月には中間期の経常利益の予想を 6 割引き上げた。
構造の変化も味方になる。人手不足で工場の自動化は進み、工具や測定機器は買い替えと買い増しを繰り返す。測定機器は技術相談が付きもので、校正や使い方の提案で顧客を囲える。
財務の余力は大きい。現金は有利子負債を 60 億円上回り、有価証券も 58 億円ある。前期は 30 億円の自社株買いをして、株数を減らした。会社は配当性向 30% 以上を公約し、実際は 46% を配った。この姿勢が続けば、1 株あたりの利益と配当は物価を超えて伸びる。
営業利益率は、2019 年 3 月期に 6.3% まで上がった実績がある。海外を含む販路の拡大と、基幹システムへの投資が実を結べば、5〜6% は届く水準だ。10 年かけて数量が伸びて物価分も乗るなら、利益は 2 倍近くになる。
慎重な見方
杉本商事の利益は、薄いうえに伸びてこなかった。営業利益率は 12 年のあいだ 4〜6% に収まり、直近の 4.2% は期の中で低い部類だ。前期は営業利益が 14% 減った。会社の中期計画は、今期の営業利益を 28.6 億円としたが、会社予想は 20.7 億円で、3 割弱も足りない。計画と実績の距離が大きい。
標準品の工具の注文は、通販の MonotaRO や在庫型のトラスコ中山に移る。メーカーが直接売る動きもあり、卸の中抜きは今後も進む。残る測定機器の技術相談も、専門性を持つ社員を育て続けなければ守れない。
資本の重さも問題だ。純資産は 340 億円で、そのうち現金と有価証券が 4 割ある。ROE は 5〜7% で、資本コストを下回る。利益を溜めても、その分の価値は額面を下回る。自社株買いで株数を減らしても、本業の稼ぐ力は増えない。
前期の純利益が増えたのは、有価証券の売却益が 5 億円あったからで、本業は減益だった。半導体の需要は景気の波が大きく、数年で冷え込む可能性もある。
今の値段は、本業の成長をやや織り込みすぎている。
どちらに重みを置いたか
直近の勢いと財務、還元の姿勢では強気の見方が上回る。ただ、10 年という長さでは、慎重な見方の指摘が重い。利益率が長く 4〜6% にとどまり、計画と実績の差が大きく、中抜きの圧力は構造的だ。
確率は中立に 38% を置き、強気側(楽観とやや楽観)は 30%、悲観側(やや悲観と悲観)は 32% とした。利益率が 3% 台に落ちるやや悲観を 22% と、同じ領域の会社並みに置いた。現金 60 億円と有価証券 58 億円という床があり、赤字に落ちる筋書きは置いていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,788 円313 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 673 円118 億円)。 今の値に割り戻すと 1,362 円238 億円、今との差 +2.1%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,111 円544 億円 | 921 円161 億円 | +202.1% | +11.7% | 323 円56 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,418 円423 億円 | 818 円143 億円 | +142.4% | +9.3% | 712 円124 億円 |
| 中立 | 38% | 2,032 円355 億円 | 727 円127 億円 | +106.6% | +7.5% | 1,048 円183 億円 |
| やや悲観 | 22% | 866 円151 億円 | 481 円84 億円 | +0.8% | +0.1% | 296 円52 億円 |
| 悲観 | 10% | 447 円78 億円 | 378 円66 億円 | −38.2% | −4.7% | 82 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,788 円313 億円 | 673 円118 億円 | +84.4% | +6.3% | 2,461 円430 億円 |
今の株価時価総額 1,335 円233 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 半導体関連と省人化が続き、営業利益率が 5% 台に乗る 利益 35 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 3,111 円544 億円
半導体と省人化の設備投資が 10 年にわたり続き、国内の工場の自動化が進む。杉本商事は測定機器の技術相談と校正の手配で顧客を囲い、標準品の工具も営業所の速さで守る。数量は西部で 2 割、中部で 15%、東部で 15% 増え、海外は新しい販路が育って 2.5 倍になる。値段は物価並みに上がり、売上は 800 億円近くになる。
営業利益率は、2019 年 3 月期の山 6.3% に迫る 5.5% 前後へ上がる。営業利益は 44 億円。会社は配当性向を高め、自社株買いも続ける。基幹システムへの投資が実り、営業所の生産性が上がる。
- 西部:数量 213(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 343 億円・営業利益 20 億円。数量 1.20 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 5.9%
- 中部:数量 134(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 216 億円・営業利益 11 億円。数量 1.15 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 5.2%
- 東部:数量 109(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 176 億円・営業利益 8 億円。数量 1.15 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 4.6%
- 海外:数量 31.7(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 2.01(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 4 億円。数量 2.50 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 14.83 倍、時価総額 544 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:設備投資の追い風が 10 年続き、通販の中抜きも防ぎ、さらに利益率が過去の山を上回る必要があり、確率は低い。
やや楽観 22% 半導体需要が支え、営業利益率は 4% 台後半へ 利益 29 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,418 円423 億円
半導体関連の設備投資が一服しながらも続き、国内の工場の自動化が進む。数量は西部で 1 割、中部と東部で 7〜8% 増え、海外は 2 倍になる。値段は物価並みに上がり、売上は 730 億円になる。
営業利益率は、営業所の生産性向上と測定機器の比率の上昇で 4.9% まで改善し、営業利益は 36 億円になる。配当性向は 46% 前後を保ち、自社株買いも続ける。通販の中抜きは標準品で進むが、測定機器の技術相談で守る。
営業所の人員は、数量の増えた分だけ必要になり、給与は物価並みに上がる。値段の転嫁がきちんと進むので、売上総利益の増え方が人件費の増え方を少し上回り、利益率は 0.7 ポイントほど上がる。海外は貿易部の人員増で伸びるが、全体の中では 1 割に届かない。
- 西部:数量 195(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 314 億円・営業利益 17 億円。数量 1.10 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 5.3%
- 中部:数量 125(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 201 億円・営業利益 9 億円。数量 1.07 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 4.6%
- 東部:数量 103(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 7 億円。数量 1.08 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 4.0%
- 海外:数量 25.3(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 2.01(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。数量 2.00 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 6.6%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 423 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の半導体関連の勢いの延長で、数量が緩やかに増える。会社が示す成長の筋書きに近い。
中立 38% 売上は物価並みに伸び、営業利益率は 4% 台前半で落ち着く 利益 24 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,032 円355 億円
国内の製造業の拠点は減るが、省人化と半導体の需要が補い、数量は西部で横ばい、中部で 3% 減、東部は横ばいとなる。海外は小さな基盤から 1.5 倍になる。値段は物価並みの 1.34 倍で、売上は 660 億円ほどに伸びる。営業利益率は 4.3% で、前期の 4.2% とほぼ同じだ。
営業利益は 29 億円、純利益は 24 億円になる。標準品の工具は通販へ流れ、測定機器と技術相談の領域で守る形が続く。配当性向は 45% 前後、自社株買いは余った現金の範囲で行われ、現金は積み上がりも減りもしない。会社は「堅実な専門商社」の位置にとどまる。
- 西部:数量 178(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 285 億円・営業利益 13 億円。数量 1.00 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 4.7%
- 中部:数量 113(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 7 億円。数量 0.97 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 4.1%
- 東部:数量 95.0(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.61(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 153 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 3.5%
- 海外:数量 19.0(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 2.01(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。数量 1.50 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 6.2%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)35 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 355 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量が横ばいで物価の分だけ売上が伸び、利益率は直近 4 期の水準を保つ、実績に最も近い筋書き。
やや悲観 22% 通販・在庫型の大手に標準品を奪われ、利益率が 3% 台へ 利益 16 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 866 円151 億円
標準品の工具の注文が通販と在庫型の大手へ流れ、数量は西部で 12%、中部と東部で 15% 減る。値段の転嫁も思うように進まず、1.30 倍にとどまる。売上は 550 億円で、物価を考えると実質では縮む。
人件費は物価並みに上がるので、営業利益率は 3.2% に落ちる。営業利益は 18 億円。測定機器の技術相談と営業所の密着で収益の底は守るが、標準品の利益が削られる。配当性向は公約の 30% を上回る 4 割台を保ち、現金は積み上がる。
営業所の統廃合で固定費を減らそうとするが、人員の削減は数量の減るペースに追いつかない。新しい基幹システムへの投資も、成果が出るまでに時間がかかる。優良な専門商社という評価から、普通の卸へ一段後退する。
- 西部:数量 156(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.56(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 244 億円・営業利益 9 億円。数量 0.88 倍 × 値段 1.30 倍、営業利益率 3.5%
- 中部:数量 99.2(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.56(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 155 億円・営業利益 5 億円。数量 0.85 倍 × 値段 1.30 倍、営業利益率 3.0%
- 東部:数量 80.8(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.56(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 126 億円・営業利益 3 億円。数量 0.85 倍 × 値段 1.30 倍、営業利益率 2.5%
- 海外:数量 15.2(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.95(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。数量 1.20 倍 × 値段 1.30 倍、営業利益率 5.0%
倍率:ROE(事業分)は 4% 前後で k を下回る。RONIC=8.25%+1/2×(3.9%−8.25%)=6.1%、g 3.5% から正当化 PER=約 8.9 倍。値下げと中抜きで利益率が落ちる構造の負けなので、上限の 9 割をさらに下げ 8.0 倍に置いた。余った現金は谷で食うとみて 0.75 倍の約 26 億円に減らし、戻り方 1.0 を掛けて足した。
確率:中抜きの圧力、前期の減益、中期計画の未達という具体的な懸念が重なる筋書き。同じ領域の会社と同水準の確率にした。
悲観 10% 国内製造業の縮小と中抜きが重なり、利益率が 2% 前後に 利益 9 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 447 円78 億円
国内の製造業の拠点が大きく減り、メーカーの直販と通販・在庫型の大手が標準品を取り込む。数量は西部と中部、東部で 3 割近く減り、値段も 1.25 倍と物価に届かない。売上は 440 億円まで縮む。
営業利益率は 2% まで落ち、営業利益は 9 億円となる。営業所の統廃合と人員整理を行うが、固定費の重さが残る。在庫の評価損と有価証券の下落で、自己資本は 20 億円ほど目減りする。それでも無借金で、現金と有価証券の厚みから配当は続ける。
測定機器の技術相談と校正の収益は残るが、売上の中で占める割合が小さく、全体の利益を支えきれない。営業所は半分ほどに減り、会社は地域の中堅の工具・測定機器商社として、小さく静かに続く姿になる。
- 西部:数量 128(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.50(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 192 億円・営業利益 4 億円。数量 0.72 倍 × 値段 1.25 倍、営業利益率 2.2%
- 中部:数量 81.7(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.50(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 123 億円・営業利益 2 億円。数量 0.70 倍 × 値段 1.25 倍、営業利益率 1.8%
- 東部:数量 66.5(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.50(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 1 億円。数量 0.70 倍 × 値段 1.25 倍、営業利益率 1.3%
- 海外:数量 12.7(取扱明細行数(万行、推定))× 価格 1.88(1 行あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍 × 値段 1.25 倍、営業利益率 3.5%
倍率:ROE(事業分)は 2% 台で k を大きく下回る。RONIC=8.25%+1/2×(2.3%−8.25%)=5.3%、g 3.5% から正当化 PER=約 7.2 倍。稼ぐ力の弱った卸なので 7.0 倍に置いた。余った現金は 0.5 倍の約 18 億円に減らして足した。純利益が営業利益より大きいのは、営業外の仕入割引・配当・受取利息が残るためで、net_op_why の対象外(悲観)とした。
確率:国内の工場の拠点減少、メーカー直販、通販・在庫型の大手の浸透が同時に進む複合の筋書き。実現すれば深いが、測定機器の技術相談と現金・有価証券の厚みで 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
西部
大阪を中心とする西日本の営業所の売上。機械工具・測定機器を製造業・建設現場へ納める。
| 数量取扱明細行数(万行、推定) | 価格1 行あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 178 | 1.20 | 213 | 10 |
| 10 年後 中立 | 178 | 1.61 | 285 | 13 |
取り方:西部の売上 213 億円を、1 行(商品 1 点の受注明細)あたり約 1.2 万円とみて約 178 万行に分けた(推定。開示は無い)。行数は実質の数量で、物価の 3% は単価に入れる。営業利益はセグメント利益 9.9 億円を使った。
中部
名古屋を中心とする中部の営業所。自動車・機械・部品加工の工場向けが厚い。
| 数量取扱明細行数(万行、推定) | 価格1 行あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 117 | 1.20 | 140 | 5 |
| 10 年後 中立 | 113 | 1.61 | 182 | 7 |
取り方:中部の売上 140 億円を 1 行あたり約 1.2 万円とみて約 117 万行に分けた(推定)。行数は実質、物価は単価に入れる。営業利益はセグメント利益 5.5 億円。
東部
東京を中心とする東日本の営業所。東北から関東までの製造業向け。
| 数量取扱明細行数(万行、推定) | 価格1 行あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 95.0 | 1.20 | 114 | 4 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 1.61 | 153 | 5 |
取り方:東部の売上 114 億円を 1 行あたり約 1.2 万円とみて約 95 万行に分けた(推定)。行数は実質、物価は単価に入れる。営業利益はセグメント利益 3.8 億円。
海外
貿易部が担う輸出入と海外向けの販売。
| 数量取扱明細行数(万行、推定) | 価格1 行あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.7 | 1.50 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 19.0 | 2.01 | 38 | 2 |
取り方:海外の売上 19 億円を、貿易取引の 1 行あたり約 1.5 万円とみて約 12.7 万行に分けた(推定)。行数は実質、物価は単価に入れる。営業利益はセグメント利益 1.3 億円。
リスクと懸念
製造業の設備投資の循環
機械工具と測定機器の卸は、顧客の設備投資と工場の稼働率で受注が決まる。過去には 2009〜10 年に営業利益が大きく落ち、2010 年 3 月期はわずかな赤字になった。半導体関連の追い風は、冷え込めば逆回転する。
通販・在庫型の大手による中抜き
通販の MonotaRO、在庫を厚く持つトラスコ中山、FA 部品のミスミが、標準品の工具の注文を取りにいく。メーカーの直販も増える。営業所の独立採算で支えてきた標準品の売上が削られると、人手のかかる営業所の利益が落ちる。
薄い利益率と人件費の上昇
営業利益率は 4% 台で、売上総利益の大半が人件費と物流費に消える。人手不足で賃金が物価以上に上がり、値段に転嫁できなければ、利益はすぐ目減りする。前期はまさにこの形で営業利益が 14% 減った。
中期計画と実績の大きな差
第 4 次中期計画は今期の営業利益を 28.6 億円としたが、会社予想は 20.7 億円で 3 割ほど足りない。計画の前提が甘かったか、実行が遅れているかの、どちらかだ。新事業・新市場の成果が見えるまで、成長の話は割り引いて聞く必要がある。
純利益の一過性と有価証券の変動
前期の純利益は有価証券の売却益 5 億円で押し上げられた。純投資の上場株は 27 億円、非上場は 11 億円あり、相場が崩れれば評価損が出る。利益の質は営業利益で見る必要がある。
海外展開の遅れ
海外の売上は全体の 4% で、貿易部が担うだけだ。国内の製造業の数が減る中、成長の余地を海外に求めても、人員と販路が追いつかない。海外事業の利益率は高めだが、規模が小さく全体を動かさない。
今後の分かれ目
- 半導体関連の設備投資が続き、測定機器の売上が 2 期連続で 1 割以上伸びたら
- 強気側の筋書きに確率を移す。営業利益率が 5% 台へ乗るかを見る。
- 半導体の投資が冷え込み、第 1 四半期のような営業利益の伸びが 2 期続けて止まったら
- やや悲観側へ寄せる。受注は 1 年ほど先に落ちるので、受注の動きを先に見る。
- 通販・在庫型の大手が測定機器にも本格参入し、営業所の売上が前年を 3% 以上割ったら
- 中抜きが測定機器にも及んだとみて、悲観側の確率を上げる。
- 会社が政策保有株の売却方針と金額を開示し、売却益を実現したら
- 有価証券を余り資産として足す方向で見直す。利益への影響は配当分だけなので上積みは明確だ。
- 自社株買いか配当性向の引き下げが決まったら
- 現金の戻り方を見直す。今は全額が戻るとみているので、下げる方向になる。
- 買収の提案が出たら(推定確率は 10 年で 2 割)
- 提案の値段を、現金と有価証券を含む価値と比べる。
見ておくもの
- 第 2 四半期(10 月 29 日ごろ)の営業利益率と、中間期の利益予想の修正理由
- 半導体関連・測定機器の売上の伸び(直近 1Q は売上 +8.6%)
- 営業利益率が 4% 台から 5% 台に乗るか
- 自社株買い・配当性向・政策保有株の売却方針の発表
- 第 4 次中期計画の次の計画の数値目標
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER や過去の PBR に寄せず、利益で測った。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で、k は基本 7.5% に循環+0.5%・値決め力+0.25% を入れた 8.25%、g は 3.5%(卸の長期の名目成長)、RONIC は事業の ROE が k に届かないので k を下回る値で置いた。上限の 8〜9 割に置き、事業に要らない現金 35 億円は分けて足した。今の時価総額の半分は現金と有価証券だが、有価証券は配当が利益に入るので足していない。設備投資が小さく減価償却は 3 億円前後(推定)で、物価では増やさない。新リース会計の影響は営業所の賃借で小さく、今と同じ形で置いた。今の株価を見て筋書きを変えていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.4→14.83 倍・やや楽観 PER 10.1→13.79 倍・中立 PER 9.8→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。