結論
日本製麻は、麻袋で始まった会社が、パスタとレトルトソース、自動車マットの販売で食べている小さな会社だ。筆者の結論は「割高」。営業利益は赤字で、稼ぐ力に対して今の時価総額は大きすぎる。
直近の純利益5.8億円は、タイの子会社を売った一回きりの利益で、本業の力ではない。本業の営業利益は0.35億円の赤字で、会社予想の来期も0.4億円にとどまる。この水準が10年で2倍になっても、時価総額の25億円を正当化するには遠い。
見るべき点は2つある。1つは、赤字の食品が、売値の改定と工場の稼働で黒字に転じるか。もう1つは、売上の2割を占めるスズキ向けのマットを守れるか。どちらも会社の意思より、小麦の相場と自動車の生産に左右される。
救いは財務だ。自己資本比率は6割で、借金と現金はほぼ釣り合っている。つぶれる心配は小さい。ただ、資産の多くは工場と有価証券で、株主が自由に使える現金は多くない。10年で見ても、期待は資本コストを大きく下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安全だが稼がない会社」だ。自己資本は21億円あっても、それを使った稼ぎは年に数千万円にとどまり、資本コストの1割にも届かない。
こうした会社の帳簿の資産は、1円が1円に満たない。工場や有価証券を持っていても、それを使って資本コスト以上を稼げなければ、持ち続ける価値は薄い。
経営の資本配分には疑問が残る。売却益で得た資金の使い道が見えず、配当は一時的に膨らんだ。工場増設への投資が、赤字の食品を黒字にする確証もない。
安全域は、今の値段にはない。時価総額が稼ぐ力の10倍以上に膨らんでおり、資産の価値だけで支えるには、取り出す手段が要る。筆者がこの会社を持ち続けたいと思うのは、赤字を抜けて資本コストに届く道筋が見えた時だ。いまはその道筋が、数字にはまだ現れていない。
何で稼ぐ会社か
食品が売上の半分強を占める。富山県砺波市の北陸工場と関西工場で、パスタとレトルトのカレー・ソースをつくる。ゴーゴーカレーグループとも取引がある。
産業資材は、社名の由来である黄麻(ジュート)の袋と、紙袋、大型の包装袋を売る事業だ。原料はインドやバングラデシュから仕入れる。紙や樹脂の袋に押され、数量は細っている。
マットは、自動車用のフロアマットを主にスズキ向けに売る。作っていたタイの子会社は2025年9月に売ってしまい、いまは売る側に回った。スズキ向けは売上の2割で、取引が揺らげば全社の数字が動く。
従業員は78人で、うち58人が食品の現場にいる。賃貸の不動産は、砺波の多目的ホールがあるだけで、規模は小さい。会社は北陸工場の増設とM&Aを成長の道に挙げるが、中期の数値計画は公表していない。
社名は2026年10月に「SEIMAホールディングス」へ変わり、持株会社体制に移る予定とされる。事業そのものは変わらず、食品・産業資材・マットの3つを抱える形が続く。売上の規模は24億円で、東証スタンダードの中でも小さい部類に入る。
優良さと弱いところ
筆者は、堀(他社がまねできない強み)は「弱い」と見る。パスタもレトルトも大手との値段競争にさらされ、麻袋は代わりの素材が増えている。マットは大口の1社に頼る。
数字も弱い。営業利益率は過去10年のうち、4%を超えたのは3期だけで、直近は赤字だ。その3期にはタイ子会社の利益が入っており、国内だけの稼ぎで見ると、さらに低い。
経営も安定しているとは言えない。2023年にゴーゴーカレーグループが臨時株主総会を請求し、社長が代わり、のちに解職される混乱があった。いまは落ち着いているが、大口株主が2つあり、会社の方向が変わる可能性は残る。
強みは身軽さと財務だ。人員は少なく、借金と現金が釣り合い、自己資本比率は6割ある。つぶれにくい代わりに、稼ぐ力を高める手が見えにくい。会社は営業利益率4%を目標にしてきたが、いまは数値目標を置いていない。目標を下ろした点も、筆者は慎重に受け取る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品は、パスタ・レトルトとも国内の需要が成熟している。人口減で量は細るが、共働きと簡便志向が下支えする。筆者は実質の量を10年でほぼ横ばいと見る。
値段を決めるのは大手だ。小麦と物流費が上がっても、小さな会社は売値を上げにくい。原材料の高騰を価格に移せるかが、食品の黒字化の分かれ目になる。
産業資材は縮む市場だ。黄麻の袋は、穀物の輸送が大型の袋やバラ積みに移って、需要が減ってきた。紙袋と大型袋で穴を埋めているが、利益はほとんど出ていない。
マットは、自動車の生産台数に連動する。国内の生産は横ばいからゆるやかな減少で、スズキの動向次第だ。タイで作らなくなった分、為替や輸入の影響も受ける。
3つの事業はどれも、数量が増える領域ではない。伸びるとすれば、取引先の拡大か、M&Aに限られる。
食品の同業には、日清製粉グループやニップンなどの大手があり、規模の差は圧倒的だ。小さな会社は、特定の取引先向けの受託や、独自の味で勝つしかない。ゴーゴーカレーグループ向けのレトルトは、その数少ない固定の需要にあたる。
資本政策と M&A
還元は「収益に応じて」と書くにとどまる。2026年3月期は、普通配当に特別配当を加えた配当を出したが、来期は普通配当だけの予想で、純利益より多い額を配る形になる。
タイ子会社の売却は、2025年9月に7社と個人1名へ譲渡した。売却益で純利益が膨らんだが、売却代金の使い道はまだ示されていない。借金は長期へ付け替えが進んでいる。
資本政策の中心は北陸工場の増設とM&Aだ。小さな会社の買収は、成功すれば規模の利益が出るが、失敗すれば自己資本の1割を一度に失いうる。2026年10月には持株会社体制へ移る予定とされる。
主要株主のゴーゴーカレーグループは16%前後を持つとされ、TOBや経営権の動きがゼロとは言えない。株主優待は実施していない。配当に回せる利益が薄く、増配の余地も小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
食品の赤字は一時的だ。小麦の値上がりを売値に移し終え、北陸工場の稼働率が上がれば、利益率は3〜4%に戻る。会社の来期予想が営業黒字に転じていることが、その入り口になる。
自己資本は21億円で、時価総額の25億円とほぼ釣り合う。資産の裏づけが厚く、株価の下値は固い。ゴーゴーカレーグループとの取引は、レトルトの需要を長く支える。
M&Aで規模が広がれば、固定費が薄まり、利益は2倍にも3倍にも伸びうる。主要株主が経営に関心を持ち続けており、再編や増資の動きも期待できる。タイ子会社を手放して身軽になった今こそ、変わる時期だ。
小麦の相場は永遠に上がり続けない。落ち着けば、売値の改定が利益として残る。会社は自社のレトルト商品を、取引先の外へ広げる余地もある。小さな会社だけに、1つの成功が利益を大きく動かす。固定費が軽い分、売上が伸びた時の利益の伸びは大きい。この身軽さを、筆者は見落とすべきではないと考える。
慎重な見方
本業はいまも赤字で、純利益5.8億円はタイ子会社の売却益にすぎない。来期の純利益は0.03億円の予想で、時価総額の25億円は稼ぐ力の何十倍にもなる。
食品は大手との値段競争で売値を上げられず、産業資材は縮む市場だ。マットはスズキ1社が売上の2割で、取引が揺れれば全社が傾く。数量が増える領域がなく、伸びるのは売値の分だけだ。
自己資本は工場と有価証券に固定され、取り出せる現金は少ない。配当は純利益より多く、続かない。2023年の社長をめぐる混乱が示すとおり、経営の安定も保証されない。価値は稼ぎで決まり、帳簿では決まらない。工場と有価証券を持つことと、それで稼ぐことは別の話だ。
持株会社への移行も、事業を変えるものではなく、費用が増えるだけに終わる恐れがある。大口株主が2つもあり、経営の方向が定まらない点は、買う側にとって不安材料だ。会社の規模が小さいため、一度の失敗で自己資本の1割が飛ぶ。慎重な見方は、数字より先に、この脆さを指摘する。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がずっと強い。強気の言う「黒字化」は来期予想に出ているが、それでも時価総額には遠く届かない。資産の裏づけは、取り出せなければ株主の価値にならない。中立を軸にしつつ、やや悲観と悲観を厚く置いた。黒字化の確率は低くないが、黒字化した姿でも資本コストには届かない。勝つ道が見えない以上、確率は悲観寄りが妥当だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 115 円5 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 28 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 67 円3 億円、今との差 −87.9%、 期待の年率 −12.6%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 287 円13 億円 | 49 円2 億円 | −38.8% | −4.8% | 17 円1 億円 |
| やや楽観 | 15% | 177 円8 億円 | 43 円2 億円 | −60.0% | −8.8% | 33 円1 億円 |
| 中立 | 35% | 126 円6 億円 | 36 円2 億円 | −70.6% | −11.5% | 56 円3 億円 |
| やや悲観 | 27% | 67 円3 億円 | 20 円1 億円 | −84.1% | −16.8% | 24 円1 億円 |
| 悲観 | 18% | 65 円3 億円 | 7 円0 億円 | −86.9% | −18.4% | 13 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 115 円5 億円 | 28 円1 億円 | −74.0% | −12.6% | 143 円6 億円 |
今の株価時価総額 549 円24 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 食品が黒字化し、M&Aも当たる 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 287 円13 億円
小麦の値上がりを売値に移し終え、北陸工場の稼働が上がって、食品の利益率が5%に戻る。ゴーゴーカレーグループ向けなどレトルトの納入が増え、出荷量は今の3割増になる。
マットはスズキ向けが堅調で、利益率は6%に上がる。小さなM&Aが当たり、固定費が薄まる。
それでも産業資材は縮み続け、全体の純利益は1億円にとどまる。時価総額を押し上げるほどの稼ぎにはならない。実現する条件が多く、確率は低い。
食品の黒字化、スズキ向けの維持、M&Aの成功のすべてが同時に必要で、1つでも欠ければ中立に戻る。それでも筆者は、この筋書きを完全に排除はしない。小さな会社は、一度の好循環で数字が大きく動くからだ。
- 食品(パスタ・レトルトソース):数量 4,300(出荷量(トン))× 価格 560(1キロあたり売値(円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。利益率6.0%
- 産業資材(麻袋・紙袋・フレコン):数量 320(販売枚数(万枚))× 価格 201(1枚あたり売値(円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。利益率4.0%
- マット(自動車用フロアマット):数量 7.5(販売セット数(万セット))× 価格 10,720(1セットあたり売値(円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。利益率6.5%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 13 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:実現の条件が多い上振れ。5%にとどめた。
やや楽観 15% 食品が黒字になり、利益率が3〜4%に戻る 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 177 円8 億円
食品は売値の改定が進み、利益率が4%に戻る。出荷量は1割ほど増え、レトルトの納入が伸びる。マットは横ばいで、産業資材は縮むが赤字は止まる。
全社の営業利益は1億円強になり、純利益は0.7億円ほどになる。配当は年0.2億円前後で続く。
それでも、稼ぐ力は資本コストを大きく下回る。大きな成功ではなく、「赤字を抜ける」にとどまる筋書きだ。小麦と物流費の落ち着きが前提で、その確率は半分ほどと見て、2割弱に置いた。
黒字化が実現すれば、会社の来期予想が裏づけられる。配当も、利益の範囲で続けられる。ただし資本の効率は低いままで、株主が資本コストを上回る利益を得る道には遠い。
- 食品(パスタ・レトルトソース):数量 3,800(出荷量(トン))× 価格 544(1キロあたり売値(円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。利益率4.5%
- 産業資材(麻袋・紙袋・フレコン):数量 305(販売枚数(万枚))× 価格 198(1枚あたり売値(円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。利益率3.0%
- マット(自動車用フロアマット):数量 7.0(販売セット数(万セット))× 価格 10,720(1セットあたり売値(円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。利益率5.5%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 8 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:食品の黒字化だけが実現する筋書き。
中立 35% 食品は小さな黒字、産業資材は縮み、全体は低空飛行 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 126 円6 億円
食品は小さな黒字になり、利益率は3%。産業資材は紙袋と大型袋に軸足を移して、わずかな黒字にとどまる。マットはスズキ向けが続き、利益率は4%台だ。
全社費用は物価で増え、営業利益の伸びを食う。営業利益は0.8億円ほどで、売上の3%に届かない。純利益は0.5億円ほどだ。
配当は年0.15億円ほどで、利益の大半を配る形が続く。ROEは2%に満たず、資本コストを大きく下回る。つぶれはしないが、稼がない10年である。大口株主の動きや買収で状況が変わる余地はあるが、中心の見立てには入れていない。
食品が小さく黒字に転じ、マットはスズキ向けを維持する。この「何も起きない10年」を、筆者は最も可能性の高い筋書きに置く。会社の来期予想の延長線上で、黒字幅がゆるやかに広がっていくイメージだ。
- 食品(パスタ・レトルトソース):数量 3,400(出荷量(トン))× 価格 536(1キロあたり売値(円))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。利益率4.0%
- 産業資材(麻袋・紙袋・フレコン):数量 290(販売枚数(万枚))× 価格 195(1枚あたり売値(円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。利益率2.5%
- マット(自動車用フロアマット):数量 6.5(販売セット数(万セット))× 価格 10,720(1セットあたり売値(円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。利益率5.0%
倍率:事業の純利益 0 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 6 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の来期予想の延長で、ゆるやかに黒字幅が広がる中心の筋書き。
やや悲観 27% 食品の赤字が続き、産業資材も縮む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 67 円3 億円
食品は大手との値段競争で売値を上げきれず、赤字が続く。産業資材は紙・樹脂製の袋への置き換えで数量が2割落ち、赤字になる。
マットはスズキ向けが減り、利益率は2%に下がる。全社費用は物価で増え、営業利益はほぼゼロに沈む。
配当は縮み、資産の売却で穴を埋める。構造的に地盤を失い、もう優良ではなくなっている筋書きだ。小麦が高止まりし、大手との値段競争が続く限り、食品の赤字は消えない。
資産の売却や工場の統合で延命はできるが、それは株主の価値を増やす動きではない。配当は削られ、経営の自由度も落ちる。会社が小さい分、一度の判断ミスの重みが大きい。
- 食品(パスタ・レトルトソース):数量 3,000(出荷量(トン))× 価格 512(1キロあたり売値(円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。利益率1.0%
- 産業資材(麻袋・紙袋・フレコン):数量 240(販売枚数(万枚))× 価格 188(1枚あたり売値(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。利益率-0.5%
- マット(自動車用フロアマット):数量 5.5(販売セット数(万セット))× 価格 10,400(1セットあたり売値(円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。利益率3.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロで、土地と有価証券の売れる資産の床(約3億円)が価値を支える。減損後の自己資本19.0億円に0.16倍で、今の自己資本21.1億円に対しては0.14倍。中立より低い。
確率:売値を上げられず、食品の赤字が続く筋書き。
悲観 18% スズキ向けを失い、食品の赤字と産業資材の縮小で身動きが取れない 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 65 円3 億円
スズキ向けのマットを失い、売上の2割が消える。食品は赤字が続き、産業資材は麻袋の需要が細って採算が合わなくなる。
営業赤字が続き、工場の減損と閉鎖費用が出る。配当は止まり、大口株主が動いて経営の混乱が再び起きる。
価値は、有価証券などの売れる資産の床まで落ちる。事業の稼ぐ力はなく、清算されない限り少数株主は資産の使い道を決められない。2023年のような経営の混乱が再び起きれば、事業の立て直しはさらに遠のく。
買い手が付けば、TOBで終わる道もある。ただ、売れる資産が小さいため、その価格も大きくはならない。小さな会社の最悪の筋書きは、静かに縮み続ける姿だ。
- 食品(パスタ・レトルトソース):数量 2,600(出荷量(トン))× 価格 500(1キロあたり売値(円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。利益率-3.0%
- 産業資材(麻袋・紙袋・フレコン):数量 190(販売枚数(万枚))× 価格 180(1枚あたり売値(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。利益率-3.0%
- マット(自動車用フロアマット):数量 3.5(販売セット数(万セット))× 価格 10,000(1セットあたり売値(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。利益率-2.0%
倍率:稼ぐ力はなく、床は売れる資産で測る。土地と上場株の税引き後の約6億円の半分を床(約3億円)とし、減損7億円ほどを引いた後の自己資本14.0億円に0.21倍を掛けた。今の自己資本には0.14倍。
確率:大口顧客の喪失と赤字の長期化。営業赤字が続く小さな会社なので18%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品(パスタ・レトルトソース)
富山県の北陸工場などで、パスタとレトルトのカレー・ソースを製造して売る。ゴーゴーカレーグループへの納入もある。
| 数量出荷量(トン) | 価格1キロあたり売値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,210 | 400 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3,400 | 536 | 18 | 1 |
取り方:売上12.8億円・営業損失0.3億円。パスタ(1キロ約250円)とレトルトソース(同約600円)の平均を約400円(推定、開示なし)と置き、出荷量を逆算した。原材料の小麦と人件費の上昇に、売値の改定が追いつかず赤字になっている。
産業資材(麻袋・紙袋・フレコン)
黄麻(ジュート)製の袋と紙袋、大型の包装袋を、インド・バングラデシュ産の原料などから仕入れて売る。社名の由来の古い事業。
| 数量販売枚数(万枚) | 価格1枚あたり売値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 355 | 150 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 290 | 195 | 6 | 0 |
取り方:売上5.3億円・営業損益ほぼゼロ(わずかな損失)。麻袋と紙袋・大型袋の平均売値を約150円(推定)と置き、枚数を逆算した。需要は紙・樹脂製の袋への置き換えで細っている。
マット(自動車用フロアマット)
自動車用のフロアマットを、主にスズキ向けに売る。製造していたタイの子会社は2025年9月に売却し、連結から外れた。
| 数量販売セット数(万セット) | 価格1セットあたり売値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.2 | 8,000 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 10,720 | 7 | 0 |
取り方:売上5.8億円・営業利益0.25億円(利益率4%)。1セットあたり約8,000円(推定)として、セット数を逆算した。スズキ向けが売上全体の2割(4.8億円)を占め、自動車の生産に左右される。
リスクと懸念
本業が赤字のまま
2026年3月期の営業損益は0.35億円の赤字で、純利益はタイ子会社の売却益による。来期予想も営業利益0.4億円にとどまる。売値を上げられない食品の赤字が続けば、稼ぐ力は育たない。
スズキ向けの集中
スズキが売上の2割(4.8億円)を占める。生産調整やリコール、取引先の調達方針の変更で、マットの売上は大きく動く。タイで作らなくなり、調達の面でも優位が薄れた。
原材料と人件費の上昇
小麦・物流費・人件費の上昇は、食品の利益を直接削る。小さな会社は大手より売値を上げにくく、転嫁が遅れると赤字が続く。
麻袋の需要が細る
黄麻の袋は紙・樹脂の袋に置き換わっている。輸入先のインド・バングラデシュのカントリーリスクも抱える。産業資材は、10年で縮むと見る。
経営と株主の不安定さ
2023年に大口株主が臨時株主総会を請求し、社長が代わる混乱があった。大口株主が2つあり、再び対立や経営権の動きが起きる可能性がある。
工場の更新と減損
工場は1971年と1993年の建設で古い。増設や更新には費用がかかり、償却は取得時の値段のままだが、建築費の上昇で更新の現金は膨らむ。稼げなければ減損になる。
今後の分かれ目
- 食品の営業利益が2期続けて黒字
- 売値の転嫁と稼働の改善が確認できる。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- スズキ向けの売上が大きく減る
- マットの赤字転落で全社が赤字に戻る。悲観の確率を上げる。
- ゴーゴーカレーグループが持株を増やす
- 経営権や再編の動きがありうる。TOBが出れば分析の前提が変わる。
- M&Aで自己資本の1割を超える買収をする
- 成功すれば規模の利益、失敗すれば減損。買収額と事業の稼ぎを必ず確かめる。
- タイ子会社の売却代金の使い道(還元・投資)が示される
- 還元なら戻り方の評価を上げ、投資なら稼ぐ力の見直しが要る。
見ておくもの
- 食品セグメントの営業損益(前期−0.3億円)
- スズキ向けマットの売上(前期4.8億円)
- 小麦と物流費の動き
- ゴーゴーカレーグループなど大口株主の保有割合
- 北陸工場の増設とM&Aの発表
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEが資本コストを下回る会社の上限1÷kを出発点に、利益の薄さと質の低さから上限の7〜9割に置いた(中立は7割)。今の株価や同業の倍率からは置いていない。10年の利益は、食品・産業資材・マットの出荷量と売値から積み、タイ子会社の売却益を除いた。今の時価総額が稼ぐ力を大きく上回るため、結果は大きな割高に出たが、数字を今の値段に寄せていない。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益や負債の形は変わるが、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.11 倍・やや楽観 PER 8.4→11.11 倍・中立 PER 7.4→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.00%。