結論
三京化成は、大阪に本社を置く化学品の専門商社だ。化学メーカーから樹脂や原料を仕入れて各業界のメーカーに売り、住宅向けの部材も扱う。売上は272億円あるが、営業利益は5億円で、売上の2%に届かない。
筆者の結論は、今の値段は本質価値とほぼ見合う、というものだ。稼ぐ力だけで見れば高くはないが、安くもない。ROE(自己資本利益率)は売却益を除くと5%台で、資本コストの8.5%に届かない。
下を支えるのは貸借対照表だ。純現金は約25億円、花王株を中心とする持ち合い株は約32億円ある。時価総額37億円に対し、この2つで50億円を超える。ただ、創業家系の資産管理会社が筆頭株主で、還元は配当が中心だ。資産がそのまま株主に戻るとは限らない。
10年で見ると、取扱量はアジアの子会社の分だけ少し増え、単価は物価並みに上がる。住宅向けは新築の減少で細る。利益は名目でゆっくり伸びるが、資本の効率は大きくは変わらないと筆者は見る。持ち合い株の売却代金が自社株買いに回るかどうかが、この会社の値打ちを最も大きく動かす。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「つぶれにくいが、稼ぎは資本に見合わない商社」と見る。
オーナーとして持つなら、まず稼ぐ力を見る。売却益を除いた純利益は5億円前後で、自己資本92億円に対して5%台だ。ためた利益が、それに見合う価値を生まない形だ。利益を積むほど資本の効率は下がる。値段を決める力がなく、景気が悪い年は利益がほぼ消える点も、長く持つ理由にはなりにくい。
一方で、資産は手堅い。借金はなく、純現金と持ち合い株で時価総額を上回る。帳簿の上の安全域はある。
問題は、その資産を誰が使うかだ。還元は配当が中心で、余った現金と株を株主に戻す仕組みは弱い。少数株主は、その使い道を決められない。筆者は余った現金の4分の3ほどしか株主のものとして数えない。
持ち合い株の売却が自社株買いにつながれば、見方は変わる。今はまだ、資産の厚みが値段の下支えにとどまる段階だ。
何で稼ぐ会社か
事業は2つある。化学品を扱う科学事業が売上の9割弱の235億円、住宅用の部材や木工品を扱う建装材事業が37億円だ。
科学事業は、化学メーカーから合成樹脂、塗料や接着剤の原料、工業用の薬品を仕入れ、塗料、樹脂加工、紙、電子部品などのメーカーに売る。売り先は広く、1社で売上の1割を超える顧客はない。上海、シンガポール、タイ、ベトナムに販売の子会社を持ち、アジアに出た日系メーカーにも届ける。2026年3月期は、この事業の営業利益が6.2億円と3割近く増えた。
建装材事業は、三重県の大同工業と島根県のキョーワが担う。住宅メーカー向けの部材を保管・加工し、木工の製品を作って売る。新築住宅の着工が細り、前期は売上が15%、利益が半分近く減った。
商社の稼ぎは、仕入れと売りの値段の差だ。全社で売上総利益を積み、人件費と物流費、本社の費用を引いた残りが営業利益になる。従業員は連結で135人と少ない。1人あたりの売上は大きいが、利幅は薄い。
営業利益の外に、持ち合い株の配当と現金の利息が年1億円余り入る。純利益が営業利益を上回る年が多いのは、このためだ。前期はこれに持ち合い株の売却益が加わり、純利益は7.5億円に膨らんだ。本業の実力は、それより2割ほど低い。
優良さと弱いところ
事業の質は、中小の化学品商社として平凡だ。値段を決める力は持たない。
化学品の値段は、メーカーの値決めと原料の相場で動く。商社はその間で口銭を取るだけだ。営業利益率は過去12年で0.2〜1.9%の間にとどまり、2%を超えた年は一度もない。景気が悪い年は、利益がほぼ消える。
良い点は、偏りが小さいことだ。顧客は塗料、樹脂、紙、電子部品と幅広く、大口の1社に頼っていない。仕入れ先も複数のメーカーに分かれる。小口の配送や品目の取りそろえなど、メーカーが自分でやりたくない仕事を担い、取引は長く続いてきた。
弱い点は資本の効率だ。自己資本92億円のうち、持ち合い株が3分の1を占める。その配当利回りは低く、全社のROEを押し下げる。会社は持ち合い株を毎年見直し、前期は6銘柄を約8億円で売った。方向は正しいが、数字の目標はない。
借金はほとんどなく、純現金で回る。赤字の年は過去20年でほぼ無く、つぶれにくい会社ではある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の化学品の流通は、数量で見ると横ばいだ。化学品商社の市場は約4.3兆円で、2030年までほとんど伸びない見通しがある。長瀬産業と稲畑産業の2社が4割を握り、その下に品目ごとの中小の商社が並ぶ。三京化成はその下の層にいる。
伸びるのは電子材料や化粧品・医薬の原料で、大手はそこに人と資金を寄せている。三京化成の扱いは塗料や樹脂、工業薬品が中心で、景気とともに動く汎用の品目が多い。量の伸びは、国内でなくアジアの日系メーカーから来る。
業界を通した逆風は、メーカーの直接取引だ。大手の化学メーカーは販売と物流を自前で効率化し、商社を通す量を減らしたい。中小の商社が残るには、小口の配送や品目の取りそろえで、メーカーより安く役割を果たし続けるしかない。人手不足で物流の費用が上がるなか、それを値段に乗せられるかが利益を分ける。
建装材は、新築住宅の着工に縛られる。国内の着工は人口と世帯の減少で細り続け、10年で2割前後減ると筆者は見る。リフォームや非住宅の用途に広げない限り、この事業の量は戻らない。2つの事業とも、量で伸びる絵は描きにくい。値段を物価並みに上げ続けられるかが、利益を守る唯一の道だ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は安定配当の維持で、前期と今期は同じ額を払う。配当の総額は年0.9億円ほどで、売却益を除いた純利益の2割に当たる。株主優待はない。
自己株は発行済み株式の2割を超え、過去には自社株買いも行ってきた。ただ、毎年の方針として示した還元の数字はない。
持ち合い株は約32億円で、花王が15億円と半分近くを占める。会社は毎年9月末に保有の意義を見直し、薄れた銘柄は売る方針だ。前期の売却は約8億円あった。この売却代金を自社株買いに回すかが、株主にとっての分かれ目になる。
筆頭株主は創業家系の資産管理会社とみられる新光企画で、持株は17%台だ。親会社はなく、M&Aの話も出ていない。小さな会社で買収の対象になりうるが、筆者は筋書きの中心には置かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
三京化成は、帳簿だけで見ても安い。純現金25億円と持ち合い株32億円を足すと、時価総額37億円を大きく上回る。事業の価値は、ほとんどただで手に入る計算だ。
事業も悪くない。前期は科学事業の利益が3割近く増えた。顧客は塗料、樹脂、紙、電子部品と広く、大口の1社に頼っていない。アジアの4か国に販売の子会社を持ち、日系メーカーの海外の工場にも届ける。国内が横ばいでも、量を伸ばす道はある。
資本の使い方も動き始めた。会社は持ち合い株を毎年見直し、前期は約8億円を売った。東証が資本の効率を求めるなか、この代金を自社株買いに回せば、ROEは上がり株主の取り分は一気に増える。自己株が2割を超えるのは、過去にも買い戻してきた証拠だ。
小さな会社なので、買収の対象にもなりうる。今の値段は、こうした上振れを何も織り込んでいない。
下がった時の守りも固い。借金はなく、赤字の年はほとんどない。最悪の年でも、資産の厚みが値段を支える。上は開いていて下は限られる、形の良い賭けだ。
慎重な見方
資産の厚みは、少数株主のものではない。還元は配当が中心で、配当性向は2割にすぎない。創業家系の会社が筆頭株主で、余った現金と株をどう使うかは会社が決める。帳簿の上で安く見えても、その差が埋まる保証はない。
事業の稼ぎは薄い。営業利益率は過去12年で2%を超えたことがない。口銭はメーカーと相場に決められ、値上げの力はない。人件費と物流費が物価で上がれば、利益はすぐに削られる。
大手メーカーの直接取引の流れは、業界全体で進んでいる。扱いの中心は汎用の樹脂や薬品で、電子材料のような伸びる分野は大手の商社が押さえている。建装材は新築の減少で、前期も利益が半分近く減った。
ROEは売却益を除けば5%台で、資本コストに届かない。利益を積むほど資本の効率は下がる。稼ぐ力で測れば、今の値段に大きな安全域はない。
買収の期待も当てにならない。筆頭株主が手放さない限り、外から買われる道は細い。資産の厚みは、配当で少しずつ戻る分しか株主に届かないと考えるべきだ。
どちらに重みを置いたか
資産の厚みについては、強気の言い分に理がある。ただ、還元の数字の目標がなく、持ち合い株を売った代金の使い道も見えない。それを株主の価値として満額数えるのは早い。10年の稼ぐ力は資本コストに届かず、確率は中立を中心に置き、慎重な側をやや厚くした。顧客と仕入れ先が分かれている分、大きく崩れる確率は高くしていない。持ち合い株の代金が自社株買いに回れば、強気の側に寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,447 円76 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,336 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 4,722 円43 億円、今との差 +17.2%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 11,735 円106 億円 | 2,218 円20 億円 | +246.2% | +13.2% | 977 円9 億円 |
| やや楽観 | 23% | 10,573 円95 億円 | 1,663 円15 億円 | +203.6% | +11.7% | 2,814 円25 億円 |
| 中立 | 40% | 9,592 円87 億円 | 1,331 円12 億円 | +171.0% | +10.5% | 4,369 円39 億円 |
| やや悲観 | 20% | 5,538 円50 億円 | 998 円9 億円 | +62.2% | +5.0% | 1,307 円12 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,495 円23 億円 | 665 円6 億円 | −21.6% | −2.4% | 316 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,447 円76 億円 | 1,336 円12 億円 | +142.8% | +9.3% | 9,783 円88 億円 |
今の株価時価総額 4,030 円36 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% アジアの取扱が伸び、持ち合い株の売却代金を自社株買いに回す 利益 8 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 11,735 円106 億円
上振れの姿は、資本の使い方が変わることだ。会社は持ち合い株の縮減を進め、花王株を含めて半分以上を売る。その代金で10年に10億円近い自社株買いを行う。
事業では、ベトナムとタイの子会社がアジアに出た日系メーカーへの販売を伸ばし、取扱量は15%増える。品目の取りそろえと小口の配送が評価され、科学事業の利益率は3%に上がる。建装材もリフォーム向けに広げて、量の落ちを小さく抑える。
営業利益は10億円近くに増え、純利益は8億円弱になる。ROEは6%近くまで上がるが、資本コストにはまだ届かない。それでも、株主が受け取る額は今の形よりはっきり増える。
- 科学事業(化学品・原料・資材):数量 90.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 41(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 369 億円・営業利益 11 億円。アジアで量、口銭も厚く
- 建装材事業(住宅用部材・木工製品):数量 8.5(住宅向け部材の出荷(千戸相当、推定))× 価格 55(1戸あたりの売上(万円、推定))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。リフォームで量を保つ
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 104 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:持ち合い株の売却は毎年続いているが、代金を自社株買いに回す方針は示されていない。資本の使い方まで変わる姿は1割に届かない確率とした。
やや楽観 23% アジアの子会社が伸び、口銭が少し厚くなる 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 10,573 円95 億円
アジアの子会社が現地の日系メーカーへの販売を伸ばし、取扱量は1割弱増える。単価は物価並みに上がる。
小口の配送と品目の取りそろえで役割を示し、科学事業の利益率は2.8%に上がる。人件費と物流費は物価並みに増えるが、量の伸びがそれを吸収する。建装材は新築の減少で量が1割強減るが、利幅は少し戻る。
純利益は7億円近くになる。配当は増え、持ち合い株の売却代金で小さな自社株買いも行う。それでも持ち合い株と現金は厚く残り、ROEは5%前後にとどまる。資本コストとの差は縮むが、埋まるまでには至らない。中抜きの流れは止まらないが、海外の量がそれを上回る姿だ。
- 科学事業(化学品・原料・資材):数量 85.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 41(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 344 億円・営業利益 10 億円。量と口銭が少し上向く
- 建装材事業(住宅用部材・木工製品):数量 8.0(住宅向け部材の出荷(千戸相当、推定))× 価格 54(1戸あたりの売上(万円、推定))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。量は減るが利幅は戻る
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 89 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期は科学事業の利益が3割近く増え、アジアの4社の販売網もそろっている。量の上積みと口銭の改善が続く姿として2割強。
中立 40% 化学品は少し増え、住宅向けは細る。利益は物価並み 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 9,592 円87 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、今の形が続く姿だ。国内の化学品の需要は横ばいで、アジアの伸びが少し上乗せになる。科学事業の取扱量は5%増え、単価は物価並みに上がる。
口銭はメーカーと相場に決められるので、利益率は2.6%と前期並みにとどまる。建装材は新築の減少で量が2割近く減る。本社の費用は物価並みに増え、営業利益は7億円弱になる。物価を差し引けば、ほぼ横ばいだ。
持ち合い株の配当と現金の利息が年1.5億円ほど入り、純利益は6億円弱になる。配当を中心に10年で12億円ほどを返し、残りは現金として積もる。ROEは4%台で、資本の効率は今より少し下がる。
- 科学事業(化学品・原料・資材):数量 82.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 40(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 330 億円・営業利益 9 億円。量は5%増・単価は物価並み
- 建装材事業(住宅用部材・木工製品):数量 7.5(住宅向け部材の出荷(千戸相当、推定))× 価格 54(1戸あたりの売上(万円、推定))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。新築の減少で量が細る
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 78 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率は0.2〜1.9%で動き、取扱の形も大きくは変わっていない。今の形が続く最も自然な筋書きとして4割。
やや悲観 20% メーカーの直接取引が進み、取扱量が細る 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 5,538 円50 億円
大手の化学メーカーが販売と物流を自前で効率化し、汎用の品目から商社を通す量を減らす。科学事業の取扱量は1割強減り、値段の競争で単価も物価ほどには上がらない。
人件費と物流費は物価並みに上がるので、口銭の目減りがそのまま利益を削る。科学事業の利益率は1.8%に下がり、建装材はとんとん近くまで落ちる。純利益は2.6億円に縮む。
配当は守るが、自社株買いは止まる。価値は稼ぐ力より、純現金と持ち合い株の売れる値で決まる。ただ、その使い道は会社が決めるので、少数株主に戻るのは4分の3ほどとみる。会社は残るが、株主にとっては長い足踏みの10年になる。
- 科学事業(化学品・原料・資材):数量 70.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 38(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 266 億円・営業利益 5 億円。直接取引に一部が移る
- 建装材事業(住宅用部材・木工製品):数量 6.0(住宅向け部材の出荷(千戸相当、推定))× 価格 50(1戸あたりの売上(万円、推定))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。着工減でとんとん近く
倍率:ROEは約2%で、稼ぐ力は2.6億円÷k=約31億円。床の資産(純現金と持ち合い株の税後)に戻り方0.75を掛けた37.5億円の方が大きいので、今の自己資本92億円に0.408倍を掛けた額とする。
確率:大手メーカーが販売を効率化し商社を通す量を減らす流れは業界全体にあり、住宅着工の減少も確かだ。2割とした。
悲観 10% 汎用品の取扱を失い、本業が赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 2,495 円23 億円
メーカーの直接取引が汎用品の全体に広がり、科学事業の取扱量は3割減る。残る取引も値段の競争で、口銭はさらに薄くなる。建装材は住宅メーカーの内製化で赤字に落ちる。
本社の費用を賄えず、営業利益は赤字になる。持ち合い株の配当と利息で、純利益はほぼとんとんだ。
会社は清算されず、事業を縮めながら続く。持ち合い株は売られても、その現金の使い道は会社が決める。少数株主に戻るのは半分ほどとみる。床は、純現金と持ち合い株の税後から事業の縮小の費用を引き、その半分だ。資産があっても、使い道を選べない株主には届かない。この筋書きは、その弱さが最も強く出る姿だ。
- 科学事業(化学品・原料・資材):数量 55.0(取扱数量(千トン、推定))× 価格 36(1トンあたりの販売単価(万円、推定))→ 売上 198 億円・営業利益 2 億円。汎用品を失う
- 建装材事業(住宅用部材・木工製品):数量 4.0(住宅向け部材の出荷(千戸相当、推定))× 価格 48(1戸あたりの売上(万円、推定))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。赤字
倍率:本業は赤字で稼ぐ力はほぼ消える。価値は床の資産で測り、今の自己資本92億円に0.245倍を掛けた22.5億円とする。
確率:顧客と仕入れ先が分かれているので、一気に崩れる形は起きにくい。それでも汎用品の中抜きと住宅の縮みが重なる姿は1割ある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
科学事業(化学品・原料・資材)
化学メーカーから合成樹脂・塗料原料・工業薬品などを仕入れ、国内とアジアのメーカーに売る。
| 数量取扱数量(千トン、推定) | 価格1トンあたりの販売単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 78.4 | 30 | 235 | 6 |
| 10 年後 中立 | 82.0 | 40 | 330 | 9 |
取り方:2026年3月期の科学事業の売上235.2億円・営業利益6.16億円(有報)。数量の開示はなく、樹脂・化学品の単価を1トン30万円前後と置いて割り戻した推定。
建装材事業(住宅用部材・木工製品)
住宅メーカー向けの部材の保管・加工と木工製品の製造販売(大同工業・キョーワ)。
| 数量住宅向け部材の出荷(千戸相当、推定) | 価格1戸あたりの売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.2 | 40 | 37 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.5 | 54 | 40 | 1 |
取り方:2026年3月期の建装材事業の売上36.8億円・営業利益1.09億円(有報)。戸数の開示はなく、1戸あたり40万円前後で割り戻した推定。
リスクと懸念
メーカーの直接取引
大手の化学メーカーは販売と物流の効率化を進め、汎用の品目から商社を通す量を減らしたい。小口の配送や品目の取りそろえで役割を示せなければ、取扱量と口銭がともに細る。
住宅着工の減少
建装材事業は新築住宅の着工に縛られる。人口と世帯の減少で着工は細り続け、前期も利益が半分近く減った。リフォームや非住宅に広げなければ、この事業は赤字に近づく。
景気の谷
塗料や樹脂は製造業の景気とともに動く。営業利益率は2%に届かず、不況の年は利益がほぼ消える。2020年3月期には営業利益率が0.2%まで落ちた。
資産が株主に戻らない
純現金と持ち合い株で時価総額を上回るが、還元は配当が中心だ。創業家系の会社が筆頭株主で、余った資産の使い道は少数株主には決められない。資産の厚みが値段に表れにくい。
物流費と人件費
人手不足で物流と人の費用は物価以上に上がりうる。口銭が薄い商社は、上がった費用を値段に乗せられないと利益がすぐに削られる。
今後の分かれ目
- 持ち合い株の売却代金で自社株買いを行う
- 資本の使い方が変わった証拠。戻り方を1.0に見直し、強気の側に確率を寄せる。
- 配当性向や総還元性向の数字の目標を出す
- 余った現金が株主に戻る道筋が見える。戻り方と還元の額を引き上げる。
- アジアの子会社の売上が2割以上伸びる
- 量の伸びが国内の横ばいを上回っている。科学事業の取扱量の中立を引き上げる。
- 建装材事業が2期続けて赤字になる
- 住宅向けの縮みが想定より速い。建装材の量と利幅を下げ、慎重な側に確率を寄せる。
- 主要な仕入れ先が直接販売に切り替える
- 中抜きが始まった印。科学事業の取扱量の中立を下げ、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 科学事業の営業利益率
- 建装材事業の売上と損益
- 持ち合い株の売却額と代金の使い道
- 自社株買いと配当の額
- アジアの子会社の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト8.25%を下回るため、式の上限1÷k=11.8倍を基準に中立は8割の9.4倍とした。今のPER・PBRは見ていない。持ち合い株は配当が利益に入るので余った現金に足さず(二重を避けた)、床の計算だけに入れた。起点の純利益は売却益を除いて5億円にならした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 9.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。