結論
丸建リースは、ビルや地下鉄の工事現場で土を支える鋼材を貸し、杭の打ち抜きや山留めの工事まで請け負う会社である。旧社名は丸紅建材リース、丸紅が議決権の37%を持つ。筆者の結論は、やや割高だ。会社に問題があるわけではない。資本に対する稼ぎが薄い。
2026年3月期の売上は265億円、純利益は14億円で、6期続けて増益となった。ただ営業利益は5%減り、現金も増えていない。鋼材や運送のコストが上がり、買った鋼材は在庫と貸し出し資産に回った。営業のお金の流れは1億円しかない。
ROEは7%台で、資本コストの8.6%に届かない。自己資本の厚さは財務の強さに見えるが、稼ぐ力には結びついていない。借入は68億円ほどあり、金利が上がる10年は利払いも重くなる。
10年の中立では、物価の分だけ賃料が上がり、純利益は16億円台に増える。それでもROEは6%台にとどまる。丸紅の存在は信用の支えだが、資本の使い方を決めるのも丸紅の意向になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えるが、安くない」。時価総額は117億円で自己資本181億円の6割台だが、それは資本コストを下回る稼ぎしか生んでいないからだ。ためた利益は、額面に満たない価値しか持たない。
オーナー利益、つまり再投資を引いた手取りは、見かけの純利益より少ない。鋼材を買い足し、更新するお金が毎年出ていく。2026年3月期は営業のお金の流れが1億円しかなく、純利益14億円の大半が在庫と資産に回った。配当5億円は、借入で賄った計算になる。
堀、つまり他社がまねできない強みは、広くない。鋼材を買えば誰でも貸せる。差がつくのは在庫の幅、工場、信用だ。丸紅グループという後ろ盾は強みだが、同時に資本の使い道を縛る。
安全域は、投資有価証券と鋼材の資産にある。悲観でも65億円ほどの床は見える。ただ、今の値段の半分ほどで、払う値段に見合う優良さがあるかと問えば、筆者の答えは否である。
何で稼ぐ会社か
丸建リースの事業は3つある。重仮設、重仮設等工事、土木・上下水道施設工事だ。2026年3月期の売上264億円のうち、重仮設が194億円、工事が54億円、土木が17億円だった。
重仮設は、鋼矢板、H形鋼、覆工板、敷鉄板といった鋼材を建設会社に貸し、売り、修理して加工する。深い穴を掘る工事の壁と蓋になる材料で、ビルの建設や地下鉄の工事に欠かせない。稼ぎの柱で、営業利益は19億円ある。
工事部門は、杭の打ち込みと引き抜き、山留めの架設、地中連続壁などの基礎工事を請け負う。2025年2月に竹本基礎工事を子会社にして、工事部門の売上が3分の1増えた。2026年4月には大地リースも子会社にした。
海外では、タイの子会社と中国の合弁会社を持分法で持つ。持分法の利益は経常利益を押し上げており、今期は4億円ほどあった。
従業員は連結で382人。賃借しているのは本社事務所だけで、年間賃料は0.2億円と小さい。鋼材の賃貸資産は自社で持つため、固定費は家賃でなく減価償却と借入の利払いに出る。主な顧客は建設会社で、西松建設は前期に売上の約12%を占めた。
優良さと弱いところ
優良さは、普通と見る。強みは、重仮設の鋼材を大量に持ち、全国に工場と在庫を構える点だ。丸紅グループの信用と鋼材の調達網が、大きな案件への入り口になる。
弱みは、値段を自分で決めにくいことだ。賃料は鋼材の市況と競合に左右される。2026年3月期は、売上が12%増えたのに重仮設の利益は8%減った。資機材と運送のコストが上がり、賃料への転嫁が追いつかなかった。
資本効率は、この10年で目立って改善していない。ROEは6〜8%台で、営業利益率は3%台から5〜6%台へ上がったものの、資本コストを超えたことはない。自己資本は102億円から181億円へ増えたのに、利益は倍にならなかった。
経営は、中計で2028年度に純利益15億円以上、ROE8.5%以上を掲げる。実績は13.6億円と7.8%で、あと一歩だ。配当性向は35%以上の方針で、足もとは37%。無理のない水準だが、ROEを引き上げる決め手は見えにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
重仮設のレンタルは、国内の建設投資に連動する小さな市場だ。国内の建設投資は名目で70兆円台にあり、そのうち山留め・仮設の鋼材を貸す市場は限られる。同業にはジェコスなどがあり、大手が少数で市場を分け合う。
数量は実質で緩やかに減る。人口が減り、新築の件数は伸びにくい。一方で、都市の再開発、老朽インフラの更新、防災工事が下支えする。人手不足で工期が延びても、鋼材を借りる期間が延びるため、貸し手には悪くない面もある。筆者は、10年で実質1割弱の縮みを中立と見る。
価格は物価と鋼材相場に連動する。鋼材が値上がりすると、貸す側の資産の価値は上がるが、新しく買う鋼材は高くつく。賃料への転嫁は遅れるのが常で、2026年3月期もその形だった。
循環のどこにいるかといえば、いまは増収局面にある。ただ営業利益は伸び悩み、利益の質は良くない。買収を重ねて数量を補う動きは、これからも続くとみる。同業との競争は、価格より在庫の幅と納期で決まる面が強い。大型案件では、鋼材を一度に大量に出せる会社が選ばれやすい。丸建リースが丸紅の調達網を持つのは、その意味で強みになる。
資本政策と M&A
資本政策は、配当を方針どおりに払いつつ、買収で広げる形だ。配当性向は連結で35%以上。2026年3月期は商号変更の記念配当を含めて37%だった。2027年3月期は性向36.7%を予定する。
M&Aは、2025年2月の竹本基礎工事、2026年4月の大地リース、2026年9月の雄正工業と続く。買収の金額は開示が薄く、のれんは年6億円ほど増えた。借入は9億円増え、純有利子負債は76億円に膨らんだ。
政策保有株は9銘柄、15億円。株式は2026年4月に1株を3株に分割した。自己株式は7%ほど持つ。
丸紅が議決権の37.3%を持つ。丸紅の持分法の会社で、信用と人材の面で支えになる。一方、10年のうちに丸紅が完全子会社化に動く可能性はあり、MC参考値の買収確率は約27%。買収価格が本質価値を上回るかは別の問題だ。株主優待の記載は有価証券報告書にない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産が厚いのに、値段が自己資本の6割台にしかならない。鋼材の貸し手は、需要が戻れば強い。都市の再開発、老朽インフラの更新、防災工事は10年単位で続く。人手不足で工期が延びれば、鋼材を借りる期間も延びる。
足もとの数字も悪くない。売上は6期連続で伸び、純利益は過去最高の14億円。竹本基礎工事と大地リース、雄正工業の買収で、数量は実質で広がる。工事部門の利益は前期比で2.5倍になった。タイと中国の持分法の会社も利益を増やしている。
物価が年3%上がる世界では、取得済みの鋼材の帳簿価額は据え置かれ、賃料だけが上がる。減価償却が増えないので、利益は名目で伸びやすい。丸紅グループの信用で、大きな案件の入口も確保できる。
中計は2028年度に純利益15億円以上、ROE8.5%以上を掲げる。達成すれば資本コストにほぼ並び、PBR1倍を目指す道が開ける。丸紅が支える会社なので、危機で資金繰りに窮する心配も小さい。
慎重な見方
安く見えるのは、稼ぎが薄いからだ。ROEは7%台で、資本コスト7.3%に届かない。中計のROE8.5%を達成しても、資本コストを下回る。ためた利益は額面どおりの価値を持たない。
営業のお金の流れは1億円。純利益14億円は在庫と貸し出し資産に消え、配当は借入で賄っている。借入は68億円ほどあり、純有利子負債は76億円に増えた。金利が3.5%へ上がれば、利払いは今の2倍を超える。
重仮設の利益は、売上が12%増えたのに8%減った。鋼材と運送のコストが上がっても、賃料に転嫁できなかった。新しく買う鋼材は物価で高くなり、更新の投資も増える。減価償却が据え置かれる利点は、更新の現金の重さで打ち消される。
買収も不透明だ。竹本基礎工事の対価を調整するお金がまだ出ている。のれんは年6億円増えた。買収を重ねるほど、本業の資本効率は下がる。丸紅が37%を持ち、少数株主は資本の使い道を決められない。丸紅にとって、この会社は鋼材の販売先でもある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、資産の厚みと物価の追い風を描く。慎重な見方は、資本コストを下回る稼ぎと、現金が増えない事実を突く。後者のほうが10年の見通しとしては強い。
このため中立は、増益でもROEがkに届かない姿に置き、確率は慎重側の悲観を厚く置いた。強気側の資産の厚みは、悲観の床として生きる。ただ、その床は今の値段のおよそ半分であり、払う値段の安全域としては足りない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,971 円188 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 505 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 1,329 円126 億円、今との差 +9.0%、 期待の年率 +7.3%(資本コスト 7.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 3,979 円379 億円 | 757 円72 億円 | +288.5% | +14.5% | 237 円23 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,907 円277 億円 | 662 円63 億円 | +192.8% | +11.3% | 607 円58 億円 |
| 中立 | 38% | 2,375 円226 億円 | 588 円56 億円 | +143.1% | +9.3% | 1,126 円107 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,046 円100 億円 | 399 円38 億円 | +18.5% | +1.7% | 405 円39 億円 |
| 悲観 | 12% | 686 円65 億円 | 158 円15 億円 | −30.8% | −3.6% | 101 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,971 円188 億円 | 505 円48 億円 | +103.1% | +7.3% | 2,475 円236 億円 |
今の株価時価総額 1,219 円116 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.3% を下回るほど割高。
楽観 5% 建設ラッシュと海外・買収が重なる 利益 26 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 3,979 円379 億円
都市の再開発とインフラの更新が続き、重仮設の需要が高水準を保つ。丸建リースは大地リースや雄正工業などの買収を生かして、取扱量を実質で2割ほど広げる。
賃料は鋼材の値上がりに追いつき、物価を上回って上がる。貸し出す鋼材は取得済みの古い帳簿価額のまま回るので、値上がり分がそのまま利益に残る。営業利益率は11%台に乗る。
工事部門は、買収した竹本基礎工事を軸に受注が伸びる。タイと中国の持分法の会社も利益を増やし、純利益は25億円ほどになる。配当は性向を守って増え、10年で72億円を返す。借入の返済も進み、自己資本比率は上がる。
- 重仮設事業(鋼材の賃貸・販売):数量 85.8(国内の建設投資(兆円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.38(値段の指数(今を1.00))→ 売上 328 億円・営業利益 38 億円。利益率11.5%
- 重仮設等工事事業(山留・基礎工事):数量 160(施工する現場数(件・実質、推定))× 価格 1.34(1現場あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 105 億円・営業利益 7 億円。利益率6.5%
- 土木・上下水道施設工事等事業:数量 26.0(完工する工事件数(件・実質、推定))× 価格 1.33(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。利益率4.0%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.85 倍、時価総額 379 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設投資が高水準を保ち、買収した工事会社が育ち、海外の持分法の会社も伸びる必要がある。鋼材の値段が上がる局面は貸し手に有利だが、毎期の利益は鋼材価格に振られる。薄く置いた。
やや楽観 17% 需要が底堅く、買収が実を結ぶ 利益 20 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,907 円277 億円
建設投資の水準が保たれ、重仮設の稼働が高い状態が続く。買収した工事会社の通年化で、取扱量は実質1割強増える。賃料は鋼材の値上がりに少し遅れて物価並みに上がる。
工事部門は竹本基礎工事の統合が進み、利益率が6%に乗る。重仮設の営業利益率は10%台後半を保つ。持分法の利益は今期の水準が続く。
純利益は20億円ほどに増え、配当は性向37%で10年に63億円になる。それでもROEは資本コストに届かない。買収した会社の統合は進むが、本業の資本効率を押し上げるほどの規模はない。借入は緩やかに減り、利払いの負担は抑えられる。海外の持分法の利益は今の水準を保つ。
- 重仮設事業(鋼材の賃貸・販売):数量 78.1(国内の建設投資(兆円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.36(値段の指数(今を1.00))→ 売上 295 億円・営業利益 32 億円。利益率10.8%
- 重仮設等工事事業(山留・基礎工事):数量 140(施工する現場数(件・実質、推定))× 価格 1.32(1現場あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 90 億円・営業利益 5 億円。利益率6.0%
- 土木・上下水道施設工事等事業:数量 24.0(完工する工事件数(件・実質、推定))× 価格 1.31(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。利益率3.5%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 277 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:鋼材の賃貸稼働量は足もとで増えており、買収した会社の通年化も数字に出る。実現しやすい上振れとして厚めに置いた。
中立 38% 中立:物価分の値上がりで増益、資本効率はkに届かない 利益 17 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,375 円226 億円
建設投資は実質で緩やかに減り、買収による取扱量の上乗せがそれを上回る。重仮設の数量は実質で5%ほど増える程度。賃料は鋼材と物価に連動して、10年で1.33倍になる。
取得済みの鋼材の帳簿価額と減価償却は据え置かれるので、賃料の上昇は利益に残る。ただ、新しく買う鋼材は高く、更新に回るお金も増える。営業利益率は10%台前半にとどまる。
本社費は物価で増える。工事部門は竹本基礎工事の通年化で数量が増え、利益率は5%台半ば。純利益は16億円台で、配当は性向37%、10年で56億円。それでも自己資本は厚くなり、ROEは6%台にとどまる。
- 重仮設事業(鋼材の賃貸・販売):数量 73.2(国内の建設投資(兆円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.33(値段の指数(今を1.00))→ 売上 270 億円・営業利益 28 億円。利益率10.3%
- 重仮設等工事事業(山留・基礎工事):数量 125(施工する現場数(件・実質、推定))× 価格 1.30(1現場あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 79 億円・営業利益 4 億円。利益率5.5%
- 土木・上下水道施設工事等事業:数量 21.0(完工する工事件数(件・実質、推定))× 価格 1.30(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。利益率3.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 226 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想は今期が微増益、中計は2028年度に純利益15億円以上とする。6期連続の増益だが、営業利益は今期減った。計画どおりの緩やかな増益を中心に置いた。
やや悲観 28% 建設投資の縮みと値下げ競争で緩やかに悪化 利益 9 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,046 円100 億円
建設投資が実質で1割ほど縮み、重仮設の稼働が落ちる。競合が稼働率を取りに来て、賃料は物価に届かず10年で1.24倍にとどまる。鋼材の仕入れ価格は上がるので、営業利益率は9%に下がる。
工事部門は受注が細り、利益率は5%を割る。本社費は物価で増えるが、一部を削って耐える。海外の持分法の利益も落ち着く。
純利益は9億円台まで下がるが、配当性向35%は守り、10年で38億円を返す。借入の金利は3.5%に上がり、利払いも重い。買収した工事会社は思うように伸びず、統合の費用だけが先に出る。丸紅の意向で設備の更新は先送りされる。
- 重仮設事業(鋼材の賃貸・販売):数量 61.6(国内の建設投資(兆円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.24(値段の指数(今を1.00))→ 売上 212 億円・営業利益 19 億円。利益率9.0%
- 重仮設等工事事業(山留・基礎工事):数量 105(施工する現場数(件・実質、推定))× 価格 1.22(1現場あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 63 億円・営業利益 3 億円。利益率4.5%
- 土木・上下水道施設工事等事業:数量 19.0(完工する工事件数(件・実質、推定))× 価格 1.22(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。利益率2.0%
倍率:事業のROEは約4%でkを大きく下回り、上限は1÷k=11.6倍。利益が減る筋書きなので、上限の約7割の8.5倍に置いた。
確率:国内の建設投資は人口減で実質縮む方向にあり、鋼材の貸し手は稼働率を取りに値下げする。慎重な見方を強く見て厚めに置いた。
悲観 12% 構造的な需要減と鋼材相場の崩れ 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 686 円65 億円
リーマン級の後退で、建設投資が実質で25%ほど縮む。重仮設の稼働は大きく落ち、鋼材相場が崩れて、貸す鋼材も売る鋼材も安くなる。賃料は物価の4割ほどしか上がらない。
営業利益はほぼ消え、本社費と減価償却が重くのしかかる。工事部門は赤字に近づき、のれんの減損も出る。借入の金利が3.5%に上がり、純利益は赤字になる。
配当は減らし、10年で15億円の返却にとどまる。それでも投資有価証券と鋼材の資産が下支えとなり、会社は続く。ただ、成長はなく、資産を抱えた会社として見られる。買収した会社は減損を出し、海外の持分法の利益も細る。10年後の丸建リースは、現金を稼ぐ会社というより、鋼材の在庫を持つ会社に近い。
- 重仮設事業(鋼材の賃貸・販売):数量 49.9(国内の建設投資(兆円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア)× 価格 1.05(値段の指数(今を1.00))→ 売上 145 億円・営業利益 7 億円。利益率4.5%
- 重仮設等工事事業(山留・基礎工事):数量 70.0(施工する現場数(件・実質、推定))× 価格 1.05(1現場あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 36 億円・営業利益 0 億円。利益率1.0%
- 土木・上下水道施設工事等事業:数量 14.0(完工する工事件数(件・実質、推定))× 価格 1.05(1件あたり売上の指数(今を1.00))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。利益率-2.0%
倍率:床は今の自己資本181億円に掛けるPBR0.36倍(約65億円)。事業は赤字なので稼ぐ力ではなく売れる資産で値が付く。
確率:リーマン級の景気後退に、鋼材相場の崩れと買収した会社の不振が重なる必要がある。ただ固定費と借金のある事業なので、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
重仮設事業(鋼材の賃貸・販売)
ビルや地下鉄の工事現場で土を支える鋼矢板・H形鋼・覆工板・敷鉄板を貸し、売り、修理・加工する。売上の約7割を占める稼ぎの柱。
| 数量国内の建設投資(兆円・実質)× 今のシェアを1とした相対シェア | 価格値段の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 1.00 | 194 | 19 |
| 10 年後 中立 | 73.2 | 1.33 | 270 | 28 |
取り方:国内の建設投資を実質で約70兆円と置き、重仮設の売上194億円をその市場に対する取扱量(rev_factor)とした。数量は市場の実質規模×相対シェア、価格は賃料と販売単価の指数。営業利益はセグメント利益19.35億円(前期比7.9%減。資機材・運送コストの上昇が響いた)。
重仮設等工事事業(山留・基礎工事)
鋼材の打ち込み・引き抜き、山留めの架設、地中連続壁、場所打ち杭などの基礎工事。2025年2月に竹本基礎工事を子会社にして拡大。
| 数量施工する現場数(件・実質、推定) | 価格1現場あたり売上の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 1.00 | 54 | 3 |
| 10 年後 中立 | 125 | 1.30 | 79 | 4 |
取り方:開示は売上とセグメント利益だけなので、1現場あたり約0.49億円と置き、年110現場と推定した。営業利益はセグメント利益2.89億円(前期比2.5倍。竹本基礎工事の上乗せ)。
土木・上下水道施設工事等事業
土木工事、上下水道施設、建築設備、工場のプラント工事(興信工業)。小さな補完の事業。
| 数量完工する工事件数(件・実質、推定) | 価格1件あたり売上の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 21.0 | 1.00 | 17 | 0 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 1.30 | 22 | 1 |
取り方:開示は売上とセグメント利益だけなので、1件あたり約0.8億円と置き、年21件と推定した。営業利益はセグメント利益0.42億円。
リスクと懸念
鋼材相場と賃料の転嫁の遅れ
鋼材が値上がりすると、新しく買う鋼材は高くつくが、賃料への転嫁は遅れる。2026年3月期も重仮設の売上が12%増えたのに利益は8%減った。相場が崩れれば、在庫と貸し出し資産の評価も下がる。
建設投資の縮み
国内の建設投資は人口減で実質縮む方向にある。公共投資や大型の再開発が延期されると、鋼材の稼働が落ちる。固定費が重い事業なので、稼働率が数ポイント動くだけで利益が大きく振れる。
資本効率が上がらないこと
ROEは7%台で、資本コストにも中計目標の8.5%にも届かない。営業のお金の流れは1億円で、配当は借入で賄った形だ。資本を稼ぎに回す決め手が見えにくい。
借入の金利上昇
純有利子負債は76億円で、借り換えのたびに金利が3.5%近くへ上がる。利払いは今の2倍を超え、営業外の利益を食う。買収を続けるほど借入が増える。
買収の統合と減損
竹本基礎工事、大地リース、雄正工業と続く買収で、のれんが年6億円ほど増えた。統合が進まなければ減損が出る。買収額の開示が薄く、外から見えにくい。
丸紅との関係と海外
丸紅が議決権の37%を持ち、経営方針に影響する。完全子会社化の可能性もある一方、少数株主は資本の使い道を決めにくい。タイと中国の持分法の会社は政治・為替の影響を受ける。
今後の分かれ目
- 営業のお金の流れが2年続けて純利益並みに増えたら
- 利益が現金に変わっている証拠なので、強気側に確率を寄せる。
- 重仮設の営業利益率が賃料の転嫁で11%を超えたら
- 価格を決める力が増したと見て、中立から強気側へ寄せる。
- 鋼材相場が下がり、賃料が値下げ競争に入ったら
- 貸し出し資産の評価が下がるので、弱気側の確率を上げる。
- 丸紅が公開買付けで完全子会社化に動いたら
- 買付価格が本質価値を上回るかが分かれ目になる。上回れば強気側へ。
- 買収した会社でのれんの減損が出たら
- 買収の失敗として、やや悲観側に重みを移す。
見ておくもの
- 重仮設の稼働量・賃料と営業利益率
- 営業のお金の流れと純有利子負債
- 鋼材(H形鋼・鋼矢板)の相場
- 買収した会社の売上と利益、のれん
- 丸紅の持株の動き
- 配当性向とROEの実績(中計の8.5%)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROEがkに届かない筋書きが多く、上限は1÷k=11.6倍。中立はその約8割の9.3倍で、今の株価と同業の倍率は見ていない。悲観の床は過去のPBRでなく、投資有価証券と賃貸の鋼材・設備を売った額から置いた。減価償却は取得原価のまま据え置き、新しい鋼材の購入分だけ物価で高くなる前提とした(開示で確認できず、減価償却費は推定)。10年後の数字は、新リース会計基準を入れず今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→14.85 倍・やや楽観 PER 10→13.7 倍・中立 PER 9.3→13.7 倍)。
資本コスト 7.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.60% → 7.30%。