結論
丸藤シートパイルは、工事現場の土を支える鋼矢板やH形鋼などの重仮設資材を、建設会社に売り、貸し、工事まで手がける会社だ。創業100年を超え、売上は約400億円になった。
筆者の結論は、やや割安である。10年後の価値は今の時価総額を2割強上回る。理由は、稼ぐ力が少しずつ育っているのに、今の値段が純現金と資産の厚みにすら届いていないことだ。
この会社の稼ぎは3層に分かれる。最も利益率が高いのは、鋼材を貸す賃貸で、売上の約13%が営業利益の過半を生む。販売と工事は薄利だが、客を逃がさない入り口になる。
足元の利益は過去最高だ。建設コストの上昇を価格に移す改善が行き渡った。ただ、筆者は利益率が5%を超えて伸びるとは置かない。人件費、工場の整備、鋼材の更新費が先に増え、価格改善は一巡するからだ。
それでも、ROEが資本コストに届かない中立で、値段は妥当を上回る。自己資本比率は71%、純現金は約39億円ある。市場が厚みを評価していないだけだ。
割高と見る人の言い分にも理がある。ROEは6%で資本コストに届かず、鋼材の更新費が利益を食う。筆者もそこは認める。ただ、それを織り込んでもなお、今の値段は資産の厚みの半分にとどまる。買収や再編の可能性も、価値の計算には入れていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は派手さはないが、持ち続けやすい資産の会社だ。
事業の本質は、鋼材という実物を持ち、何度も貸して稼ぐことにある。堀は強くないが、古い在庫と整備網は参入を難しくする。人手不足の時代に、整備の効率で差がつく。
一方、オーナーの手元に残る利益は、会計上の利益より少ない。賃貸用の鋼材は更新に高い鋼材の値段がかかり、減価償却は取得時の値段のままだ。物価が上がるほど、利益は見かけより厚く出る。更新投資は年16億円ほどで、すでに償却を上回る。
資本の使い方は評価できる。配当と自社株買いで利益の約7割を戻した。無理な買収もない。
安全域は厚い。自己資本は約327億円で、時価総額の2倍ある。ROEが低くても、中立で今の値段を超え、悲観でも資産が支える。
ただ、ROEが資本コストに届かない限り、帳簿の厚みに高い値段はつかない。そこを割り引いて見ている。
経営の質を測るうえで、筆者は今後の自社株買いの規模を見ておきたい。割安な時に買えば価値は増える。逆に、更新投資ばかりが膨らんで還元が細れば、評価は下がる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、建設現場の地面を掘る時に使う鋼製の仮設資材だ。鋼矢板(地中に打ち込む鋼の壁)、H形鋼、山留めの材料、道路を覆う覆工板などを、建設会社に売り、貸し、工事を請け負う。
売上403億円の内訳は、工事約149億円、販売約136億円、賃貸約53億円、加工と運送が約65億円だ。営業は取引先別に組まれ、鹿島、大林、安藤ハザマ、熊谷組などが主な客になる。営業圏は北海道から関西までだ。
鋼材は日本製鉄の製品が中心で、商社経由で仕入れる。自社の工場で鋼材を洗い、補修し、穴を開けて整備して、また貸し出す。この整備の技術が、鋼材を何度も使い回す収益の元だ。
子会社は運送のフジ運輸と、杭打ちなど工事のディ・ケイ・コムの2社。人員は506人で、半数以上が営業だ。
3つの層の稼ぎ方は違う。賃貸は資産を持つ分、利益率が高い。販売は鋼材の値段を乗せるだけで利益は薄い。工事は人手が要り、利益率はさらに薄い。会社は工事を伸ばして客との関係を深め、賃貸の稼働を上げる戦略をとっている。
副業として、工場の屋根の太陽光の売電と、神奈川県愛川町の土地の賃貸もある。
数量の単位は開示されていないため、筆者は販売量を約6万トン、賃貸の保有量を約10万トン、工事を約2,000件と推定した。いずれも根拠は弱く、数量の変化率で動かす形にしている。
営業は取引先ごとに組まれており、大手ゼネコンと密につながる。鹿島の売上の割合は1年で15%から10%に下がり、客の分散は進んだ。
優良さと弱いところ
優良さは、普通よりやや上だが、強い堀とまでは言わない。
堀に近いのは、鋼材を何度も使い回す仕組みと、整備工場の網だ。賃貸用の鋼材は、洗って補修すれば長く貸せる。古い鋼材の山を持ち、関東から関西まで工場を構えるのは、新規の参入者が一朝一夕にまねできない。大手ゼネコンとの長い取引も、仕事の継続を支える。
弱みは三つある。まず、鋼材は日本製鉄の製品に頼る。次に、客は大手建設会社で、値段の交渉力が強い。さらに、工事と販売は薄利で、景気や公共工事の波に左右される。
足元の利益率は5.2%と、過去の最高だ。以前は2〜4%台で、2022年3月期は1.8%まで落ちた。直近は鋼材の値段と人件費の上昇を価格に移す力が出たが、これが続くかは見極めが要る。
資本面は健全で、自己資本比率は71%、純現金は約39億円ある。ただ、ROEは6%で資本コストに届かない。厚い資産を稼ぐ力に変え切れていない点が、最大の課題だ。
経営は2024年からの計画を前倒しで達成し、実行力は一定程度ある。
経営の質を見るうえで、前の計画の達成と、新しい計画の中身は参考になる。新計画は100億円を整備の自動化、IT、人材に回す。人手不足の時代に整備の効率を上げる狙いは筋が通る。ただ、鋼材は新品の値段が上がるほど更新費が重くなり、整備の自動化だけでは吸収し切れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の元は、都市の再開発、道路・河川・港湾の工事、民間の工場や物流倉庫の建設だ。地面を掘る工事は必ず土留めが要る。国土の強靱化や老朽インフラの更新で、公共工事は底堅い。
国内の数量は、人口減で建設需要は細る方向だが、再開発と工場投資がそれを支える。筆者は10年の販売の数量を実質で5%減、賃貸は同水準、工事は5%増と置いた。
価格は、鋼材の値段と人件費に連動して上がる。10年で1.34倍を基本とした。鋼材は市況で動くが、中長期では物価に沿う。賃料と工事の単価は、建設現場の人手不足と材料高で上がりやすい。
構造の変化として、人手不足と2024年問題が効く。現場で鋼材を整備する人も、運ぶ人も足りない。茨城の自動整備ラインのように、整備の自動化に投資できる会社が有利になる。
競争は、新品を売るメーカー系、リースを専業にする中小、自社で仮設材を持つゼネコンと広く、同社のシェアは開示がない。市場の大きさも公的な統計は乏しく、数量は推定で置いた。
分かれ目は、公共工事の予算、都市の再開発の進み具合、人手不足による整備費の上昇、日本製鉄の供給と値段の3点だ。
需要の構造には、もう一つ見ておく点がある。再開発の工事は、地下を深く掘る大型の案件が増え、土留めの資材は大きく高性能なものが要る。同社は高強度の腹起材など、新しい製品の特許も出している。数量だけでなく、1件あたりの単価が上がる面もある。
反対に、中古の鋼材は新品に比べて安く、価格競争に巻き込まれやすい。リース専業の中小や、ゼネコンの自社保有との競争で、賃料は上がりにくい。
資本政策と M&A
資本政策は、配当性向35%以上の累進配当と、自社株買いの組み合わせだ。当期は配当約4.6億円と自社株買い約9億円で、合計は純利益の約7割に当たる。
筆者は還元の割合を10年の平均で5割台半ばと置いた。方針の35%を超える実績があり、自己資本が厚いためだ。利益が減る筋書きでは、還元も減らした。
新しい中期経営計画(2026〜2030年度)は、2031年3月期に売上470億円、営業利益30億円、ROE8%以上を掲げる。5年で100億円を投資し、整備の自動化、IT、人材に回す。営業利益30億円は、筆者の中立(10年後に26億円)を上回る。
政策保有株は、東亜建設工業、鹿島建設などで約22億円だ。配当は利益に入っているので、価値には足していない。当期はみずほFGなどを売却した。
愛川町の土地は簿価で約11億円だ。時価は開示がなく、含み益は足していない。株式は2026年4月に5分割された。
資本効率の観点では、ROE8%以上を掲げた点が重要だ。今の6%から上げるには、利益を伸ばすか、自己資本を減らすかしかない。純現金と自己資本比率71%を考えれば、自社株買いの余地は大きい。ただ、運転資金の事情で、実際に戻せる額は見た目より小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
価格改善が効き、利益率は過去最高になった。建設コストが上がる局面では、鋼材と工事の値段が上がり、同社の稼ぎは膨らむ。賃貸は稼働が上がるほど利益が増え、鋼材の使い回しで資産の効率も上がる。
中期計画は、2031年3月期に売上470億円、営業利益30億円を掲げる。前の計画は前倒しで達成した実績がある。人手不足で整備を外に出す客が増え、工事の受注も伸びている。茨城の自動整備ラインで生産性が上がれば、利益率はさらに上がる。
財務は堅い。純現金約39億円、自己資本比率71%、投資有価証券約22億円がある。時価総額164億円は、その資産の半分にしかならない。自社株買いが続けば、1株あたりの価値は増える。人口が減っても、再開発と国土強靭化の需要は底堅く、鋼材の値段が物価で上がれば、賃貸の収益も物価で上がる。
工事の受注が伸びる点も強みだ。鋼材を貸し、工事も受ければ、現場での客のつながりは深くなる。工事を入口に、販売と賃貸の売上が付いてくる。価格改善と整備の自動化が重なれば、利益率はまだ上がる余地がある。
慎重な見方
利益の最高は、建設コスト高の転嫁が一度効いただけだ。この改善は一巡し、次は人件費、運送費、整備の費用が先に増える。賃貸の鋼材は更新に高い値段がかかり、減価償却も増える。
客は大手ゼネコンで、値段の交渉力が強い。工事の売上が伸びても、利益率は2%に届かない。鹿島向けの売上は1年で4分の3に減っており、客の集中が崩れるときの影響は小さくない。
仕入は日本製鉄に頼る。鋼材の値段と供給は自社で決められない。公共工事の予算が減れば、数量が一気に落ちる。2022年3月期の営業利益率は1.8%だった。
ROEは6%で資本コストに届かず、現金が積み上がるだけだ。純現金は事業の運転資金に近く、株主に戻る余裕は見た目より小さい。人口減の国内市場で、工事の人手は減る。
再開発の大型案件は、大手ゼネコンが仮設資材を自社で持つ方向に動くと、貸し出しの需要が減る。新品の販売は市況で値段が動き、賃貸の稼働は景気の悪化とともに真っ先に落ちる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。資産の厚みが下を支えるうえ、価格改善の実績があるからだ。ただ、利益率は過去の最高圏にあり、その先まで置かない。
確率は中立に4割、やや楽観と楽観に合わせて3割、悲観側に3割を置いた。悲観側は、公共工事の減少と価格競争を意識して厚めにした。10年後の価値は今の時価総額を2割強上回る。
バリュー投資の目では、売れる資産に裏づけられた会社の下値は堅く、上値の余地は小さくない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,781 円307 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 643 円111 億円)。 今の値に割り戻すと 1,312 円226 億円、今との差 +38.5%、 期待の年率 +9.9%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,413 円589 億円 | 1,003 円173 億円 | +366.4% | +16.6% | 353 円61 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,296 円396 億円 | 806 円139 億円 | +227.6% | +12.6% | 683 円118 億円 |
| 中立 | 40% | 1,848 円319 億円 | 708 円122 億円 | +169.9% | +10.4% | 1,022 円176 億円 |
| やや悲観 | 20% | 968 円167 億円 | 441 円76 億円 | +48.8% | +4.1% | 282 円49 億円 |
| 悲観 | 10% | 696 円120 億円 | 139 円24 億円 | −11.8% | −1.2% | 84 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,781 円307 億円 | 643 円111 億円 | +155.9% | +9.9% | 2,423 円418 億円 |
今の株価時価総額 947 円163 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:価格改善が続き、賃貸の稼働が上がる 利益 41 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 3,413 円589 億円
公共工事と再開発が底堅く、同社は価格改善を続けて、10年後の売上は600億円台に乗る。販売は鋼材の値段の上昇で1.4倍になり、賃貸は稼働が1割増えて賃料も1.45倍になる。賃貸の利益率は30%まで上がる。工事は人手不足で外注が増え、件数が15%伸びる。営業利益率は7%台と、計画の6.4%も超える。
茨城の自動整備ラインが全工場に広がり、整備の費用が下がる。経営は資産の効率を上げ、自社株買いも増やす。10年の還元は170億円ほどになる。
販売と工事の両方で大手ゼネコンとの取引が深まり、客の分散も進む。中古の鋼矢板が新品に比べて安いことも、賃貸と販売の両方に追い風になる。資産の効率が上がり、ROEは9%近くまで戻る。
- 販売(鋼矢板・H形鋼・山留材など):数量 63.0(販売する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 32(1トンあたりの販売額(万円・名目))→ 売上 200 億円・営業利益 9 億円。63 千トン × 1 トン 31.8 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 4.5%
- 賃貸(重仮設資材のリース):数量 110(貸し出せる鋼材の保有量(千トン。推定))× 価格 7.68(1トンあたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 25 億円。保有 110 千トン × 年 7.7 万円(今の 1.45 倍)、営業利益率 30.0%
- 工事(杭打ち・山留め工事):数量 2.3(施工件数(千件。推定))× 価格 1,080(1件あたりの工事額(万円・名目))→ 売上 248 億円・営業利益 9 億円。2.30 千件 × 1 件 1080 万円(今の 1.45 倍)、営業利益率 3.5%
- 加工・運送:数量 168(加工・運送する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 5.71(1トンあたりの加工・運送料(万円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 5 億円。168 千トン × 1 トン 5.71 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.46 倍、時価総額 588 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:楽観は、価格改善の継続と賃貸の稼働上昇が同時に起きる筋書き。計画の目標を超える必要があり、確率は低めに置いた。
やや楽観 22% やや楽観:計画に近い成長 利益 30 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,296 円396 億円
公共工事は横ばいで、民間の再開発と工場投資が数量を支える。販売は数量が変わらず、値段だけ1.37倍になる。賃貸は稼働が5%増え、賃料は1.4倍に上がる。工事は件数が1割増え、単価も1.4倍になる。営業利益率は5%台後半と、過去の最高圏を保つ。
整備の自動化で人手を補い、人件費の増加を吸収する。賃貸の鋼材は更新費がかかるが、使い回しで効率は保たれる。
ROEは7%近くまで戻るが、資本コストの8%には届かない。それでも、配当と自社株買いを合わせた還元は利益の半分以上が続き、1株あたりの価値は着実に増えていく。10年後の売上は580億円台、営業利益は33億円ほどになる。
- 販売(鋼矢板・H形鋼・山留材など):数量 60.0(販売する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 31(1トンあたりの販売額(万円・名目))→ 売上 186 億円・営業利益 7 億円。60 千トン × 1 トン 31.1 万円(今の 1.37 倍)、営業利益率 3.5%
- 賃貸(重仮設資材のリース):数量 105(貸し出せる鋼材の保有量(千トン。推定))× 価格 7.42(1トンあたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 20 億円。保有 105 千トン × 年 7.4 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 25.5%
- 工事(杭打ち・山留め工事):数量 2.2(施工件数(千件。推定))× 価格 1,043(1件あたりの工事額(万円・名目))→ 売上 230 億円・営業利益 6 億円。2.20 千件 × 1 件 1043 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 2.5%
- 加工・運送:数量 160(加工・運送する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 5.59(1トンあたりの加工・運送料(万円・名目))→ 売上 89 億円・営業利益 4 億円。160 千トン × 1 トン 5.59 万円(今の 1.37 倍)、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 396 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:やや楽観は、中期計画に近い水準まで利益率が上がる筋書き。
中立 40% 中立:最高圏の利益率はやや低下。それでも資産の厚みは残る 利益 24 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,848 円319 億円
数量は、人口減で販売が5%減るが、賃貸は同水準、工事は5%増える。価格は物価並みに1.34倍で、賃料も同じだ。営業利益率は5%に近い水準で、現在の5.2%をやや下回る。売上は約540億円、営業利益は約26億円になる。
全社の費用も物価で上がる。ただ、賃貸の鋼材の減価償却は、今ある分は取得時の値段のままで増えない。更新で買う鋼材の分だけが高い値段で足される。この効果で、費用が物価の1.34倍そのままで増えるより、利益率は少し守られる。それでも更新投資は償却を上回り、現金は細る。
会社の計画は2031年3月期に営業利益30億円だが、筆者は10年かけても26億円にとどまると見る。
- 販売(鋼矢板・H形鋼・山留材など):数量 57.0(販売する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 30(1トンあたりの販売額(万円・名目))→ 売上 173 億円・営業利益 5 億円。57 千トン × 1 トン 30.4 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 3.0%
- 賃貸(重仮設資材のリース):数量 100(貸し出せる鋼材の保有量(千トン。推定))× 価格 7.10(1トンあたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 17 億円。保有 100 千トン × 年 7.1 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 23.5%
- 工事(杭打ち・山留め工事):数量 2.1(施工件数(千件。推定))× 価格 1,013(1件あたりの工事額(万円・名目))→ 売上 213 億円・営業利益 4 億円。2.10 千件 × 1 件 1013 万円(今の 1.36 倍)、営業利益率 2.0%
- 加工・運送:数量 157(加工・運送する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 5.47(1トンあたりの加工・運送料(万円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 3 億円。157 千トン × 1 トン 5.47 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 319 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中立は、直近の最高の利益率が少し戻る筋書き。価格改善は一巡し、人件費と整備費が先に増える。
やや悲観 20% やや悲観:公共工事が減り、価格が据え置かれる 利益 15 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 968 円167 億円
公共工事の予算が絞られ、再開発も遅れる。販売の数量は15%減り、賃貸の稼働は1割落ちる。大手ゼネコンは仕入れ値を抑えようとし、販売の価格は物価に届かず1.25倍にとどまる。賃料は1.2倍に上がるのがやっとだ。工事の件数は1割減る。
営業利益率は4%に届かず、営業利益は17億円ほどになる。人件費の上昇が続き、整備の費用も重い。それでも純現金と資産があり、財務は揺るがない。
工事は件数が減るうえに単価も上がらず、赤字に近づく。賃貸の鋼材は稼働が落ちても更新費は止められず、現金が細る。10年後の売上は440億円ほどで、営業利益は17億円にとどまる。ROEは3%台に落ちる。
- 販売(鋼矢板・H形鋼・山留材など):数量 51.0(販売する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 28(1トンあたりの販売額(万円・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 4 億円。51 千トン × 1 トン 28.4 万円(今の 1.25 倍)、営業利益率 2.5%
- 賃貸(重仮設資材のリース):数量 90.0(貸し出せる鋼材の保有量(千トン。推定))× 価格 6.36(1トンあたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 11 億円。保有 90 千トン × 年 6.4 万円(今の 1.20 倍)、営業利益率 20.0%
- 工事(杭打ち・山留め工事):数量 1.8(施工件数(千件。推定))× 価格 931(1件あたりの工事額(万円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 3 億円。1.80 千件 × 1 件 931 万円(今の 1.25 倍)、営業利益率 1.5%
- 加工・運送:数量 141(加工・運送する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 5.10(1トンあたりの加工・運送料(万円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 2 億円。141 千トン × 1 トン 5.10 万円(今の 1.25 倍)、営業利益率 3.0%
倍率:ROE 3.4% は k 7.5% に届かず、上限 1÷k=12.5 倍の約 7.5 割の 9.5 倍。利益の質が低い筋書きなので上限へ寄せない。
確率:やや悲観は、数量が減り、価格改善が戻される筋書き。
悲観 10% 悲観:需要が縮み、薄利の事業は赤字寸前 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 696 円120 億円
建設需要が構造的に細り、公共工事の予算も削られる。販売の数量は3割減り、賃貸の稼働は4分の1落ちる。賃料は10年で上がらず、賃貸の利益率は12%に下がる。工事は赤字になる。営業利益はゼロ近くになる。
日本製鉄の値上げが転嫁できず、大手ゼネコンも内製化に動く。売上は300億円ほどに縮み、固定費の重い整備工場が赤字の元になる。株主への還元も絞られ、資産の換金価値が値段の下値になる。
整備の人手は減り、運送の費用は上がる。客は仮設資材を自社で持つ方向に動き、賃貸の需要は構造的に細る。それでも、純現金、有価証券、土地、売掛金といった資産が下値を支える。時価総額は資産の換金価値の周辺に落ち着く。
- 販売(鋼矢板・H形鋼・山留材など):数量 42.0(販売する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 25(1トンあたりの販売額(万円・名目))→ 売上 105 億円・営業利益 0 億円。42 千トン × 1 トン 24.9 万円(今の 1.10 倍)、営業利益率 0.0%
- 賃貸(重仮設資材のリース):数量 75.0(貸し出せる鋼材の保有量(千トン。推定))× 価格 5.30(1トンあたりの年間賃料(万円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 5 億円。保有 75 千トン × 年 5.3 万円(今の 1.00 倍)、営業利益率 12.0%
- 工事(杭打ち・山留め工事):数量 1.4(施工件数(千件。推定))× 価格 820(1件あたりの工事額(万円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 −1 億円。1.40 千件 × 1 件 820 万円(今の 1.10 倍)、営業利益率 -1.0%
- 加工・運送:数量 115(加工・運送する鋼材の量(千トン。推定))× 価格 4.28(1トンあたりの加工・運送料(万円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 0 億円。115 千トン × 1 トン 4.28 万円(今の 1.05 倍)、営業利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロなので、売れる資産の換金価値で置く。今の自己資本 327 億円×0.37=約 120 億円。
確率:悲観は、構造的に需要が縮み、客に価格を押される筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
販売(鋼矢板・H形鋼・山留材など)
重仮設資材の新品・中古の販売。売上の約3割。
| 数量販売する鋼材の量(千トン。推定) | 価格1トンあたりの販売額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 23 | 136 | 5 |
| 10 年後 中立 | 57.0 | 30 | 173 | 5 |
取り方:販売量は開示がなく、約6万トンと推定した(根拠は弱い)。売上136.1億円から1トンあたり22.7万円を逆算した。山留材や覆工板など単価の高い品を含む。千トン×万円×0.1=億円。セグメント利益は開示がなく、全社の営業利益21.1億円を賃貸の利益率を高めに見て配分した推定値で、販売は約3%。
賃貸(重仮設資材のリース)
自社が持つ鋼材を建設会社に貸して賃料を得る。利益の大半を生む。
| 数量貸し出せる鋼材の保有量(千トン。推定) | 価格1トンあたりの年間賃料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 5.30 | 53 | 14 |
| 10 年後 中立 | 100 | 7.10 | 71 | 17 |
取り方:賃貸用の鋼材の保有量は開示がなく、約10万トンと推定した(根拠は弱い)。賃貸売上53.0億円から1トンあたり年5.3万円を逆算。利益率は約25%と推定し、鋼材の減価償却と整備費を引いた後の値。
工事(杭打ち・山留め工事)
仮設工事、杭打ちなどの施工。売上の約37%で、薄利ながら伸びている。
| 数量施工件数(千件。推定) | 価格1件あたりの工事額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 745 | 149 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2.1 | 1,013 | 213 | 4 |
取り方:施工件数は開示がなく、約2,000件と推定した。工事売上149.0億円から1件745万円を逆算。千件×万円×0.1=億円。利益率は約2%と推定。
加工・運送
鋼材の整備・加工と、フジ運輸による運送。
| 数量加工・運送する鋼材の量(千トン。推定) | 価格1トンあたりの加工・運送料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 160 | 4.08 | 65 | 3 |
| 10 年後 中立 | 157 | 5.47 | 86 | 3 |
取り方:加工料32.0億円と運送33.3億円の計65.3億円。扱う量は販売・賃貸・工事で動く鋼材の合計として約16万トンと推定した。利益率は約4%と推定。
リスクと懸念
公共工事・民間建設の波
売上の中心は建設工事の仮設資材で、公共工事の予算と民間の建設投資に連動する。2022年3月期は営業利益率が1.8%まで落ちた。数量は10年で5%減る中立を置いたが、予算が絞られれば販売と賃貸が一気に落ちる。
価格改善の一巡
直近の最高益は、建設コスト高を価格に移した効果が大きい。一巡すると、人件費・運送費・整備費の上昇が利益を削る。客は大手ゼネコンで値段の交渉力が強く、価格を維持できない可能性がある。
日本製鉄への仕入れ依存
鋼材は日本製鉄の製品が中心で、商社経由で買う。値段や供給の方針は自社で決められない。鋼材の値上げを客に転嫁できないと、販売と賃貸の利益が落ちる。
賃貸鋼材の更新費
賃貸用の鋼材は更新に高い値段がかかる。償却は取得時の値段のままだが、新しく買う分は高く、設備投資は年約16億円と償却を上回る。利益が出ても、手元の現金は細る。
工事の薄利と人手不足
工事は売上の約37%を占めるが利益率は低い。現場の人手が足りず、人件費が先に上がる。伸ばすほど利益が増えるとは限らない。
客の集中
鹿島建設への売上は1年で約15%から約10%に下がった。大手ゼネコン数社への依存が続き、一社の方針変更が数量を動かす。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて5%を超えたら
- 価格改善が定着したとして、中立の利益率を上げ、やや楽観の確率を上げる。
- 公共工事の予算が前年度から大きく減ったら
- 販売と賃貸の数量の前提を下げ、やや悲観側に確率を寄せる。
- 自社株買いが毎年続き、配当性向も上がったら
- 資本の使い方の評価を上げ、還元の前提を厚くする。
- 日本製鉄が鋼矢板の値上げを発表し、客に転嫁できなかったら
- 販売と賃貸の利益率の前提を下げる。
- 茨城の自動整備ラインで整備費が下がったら
- 賃貸と加工の利益率の前提を上げる。
- 中期計画の営業利益30億円が前倒しで達成されたら
- 中立の利益率の置き方を見直し、楽観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益率(5%台を保てるか)
- 公共工事の予算と民間の建設投資
- 日本製鉄の鋼材の値段と供給
- 賃貸の稼働と更新投資、現金の増減
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k は 7.5%(quality の合計 +0.5%)、g は 4%、ROE が k に届かない中立は上限 1÷k 以下に置いた。今の PER・PBR(PBR は約 0.5)や同業の倍率には寄せていない。販売量・保有量・施工件数は開示が無く推定なので、数量は変化率で動かし、価格は物価に合わせた。減価償却は今の賃貸鋼材のぶんを増やさず、更新で買う鋼材のぶんだけ足し、費用を物価で一律に増やしていない。賃貸資産の償却額は有報の要約で確かめられておらず、推定である。当社は鋼材を貸す側なので、新リース会計基準の影響は小さい。政策保有株の配当は利益に残しており、価値に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.7→14.46 倍・やや楽観 PER 11.2→13.33 倍・中立 PER 11.2→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 0.5%=8.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。