結論
トミタは、1911年に銀座で輸入工具の小売りから始まった、工作機械と工具の専門商社だ。国内と北米、アジアの製造業の工場に、機械と工具、制御機器を売る。2025年には計量・計測機器の新日本産業を買った。
筆者の結論は「やや割高」だ。いちばんの理由は、商社としての取り分の薄さにある。売上229億円に対し、営業利益は7億円で、利益率は3%しかない。自己資本利益率は5%前後で、資本コストの8.5%に届かない。
手元の現金は約70億円と、時価総額にほぼ並ぶ。ただ配当は利益の2割ほどで、現金は10年で倍に積み上がった。創業家とその関係先が約2割を持ち、2026年には買収への防衛策も入れた。現金が株主に戻る道は細い。
明るいのは北米だ。日系の工場の投資で売上は2割を超えて伸び、利益の6割以上を稼ぐ。だが国内の利益は3分の1減り、アジアは赤字だ。筆者は、厚い現金の半分ほどしか株主の価値にならないと見る。今の値段は、その割引を踏まえてもまだ高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「堅実だが薄い商売に、使われない現金が付いている」形だ。10年後も工具と機械を工場に届ける仕事は残るだろう。ただ堀、つまり他社がまねできない強みは、北米の日系の工場との付き合いくらいで、値段を決める力はない。
株主のものになる利益で見ると、純利益は年6〜7億円で、工場のような大きな設備がいらない分、利益の多くは現金で残る。それは良い点だ。だがその現金は配当に回らず、会社にたまる。ためた現金は年2%ほどしか稼がない。
安全域は、現金と保有株の厚さにあるように見える。だが使い道を決めるのは創業家と経営陣で、防衛策もある。株主の手に届かない現金は、値打ちを割り引いて見るしかない。
資本の配分は「ためる」の一言だ。北米への投資と小さな買収は筋が通るが、それを超える現金の使い道が示されない限り、オーナーとして高い値は払えない。現金の使い道がはっきりした時が、見直す時だ。
何で稼ぐ会社か
売上の57%が日本、27%が北米、14%がアジア、残りが欧州だ。扱う品は工作機械、切削の工具、制御機器、鍛圧機械で、メーカーから仕入れて製造業の工場に売る。工具や消耗品は繰り返し売れ、機械は設備投資の時に大きく売れる。
国内では自動車や機械の部品の工場が主な客だ。2025年11月に買った新日本産業は、研究所や品質検査の現場に計量・計測機器を売る会社で、客の幅を広げる。
北米は米国、カナダ、メキシコに子会社を持ち、日系の自動車・部品の工場に機械を納め、据え付けまで手伝う。北米の営業利益は4.4億円と、全社の6割以上を稼ぐ。アジアはタイ、インドネシア、中国、インドなどで、今は小さな赤字だ。
従業員は連結で213人と少ない。在庫と売掛金を抱えるので、運転資金は要るが、工場のような大きな設備は持たない。利益は、メーカーと客の間に立つ手数料のような薄い取り分だ。
保有する株は、取引先のダイキン工業、東京精密、オークマなどだ。配当が営業外の利益を支える。
稼ぎの源は、品ぞろえと据え付けの手間賃だ。客の工場が新しい機械を入れる時、どの機械と工具を組み合わせるかを提案し、納めて動くまで面倒を見る。その手間に対して、仕入れ値に少し上乗せした値段で売る。
優良さと弱いところ
強みは、100年を超える取引の歴史と、北米の日系の工場との結びつきだ。現地で機械の据え付けや保守を手伝える商社は限られ、日系の部品メーカーが北米に出るたびに声がかかる。
弱みは三つある。一つ目は取り分の薄さだ。営業利益率は過去12年で1%台から5%台を行き来し、値段を決めるのはメーカーと客だ。二つ目は循環だ。工作機械の受注は数年ごとに大きく振れ、2010年3月期には営業赤字になった。三つ目は資本の使い方だ。現金は時価総額に並ぶほど積み上がり、自己資本利益率は5%前後にとどまる。
経営は手堅いが、資本を株主に返す意志は弱い。2026年には株主の承認を得て、買収への防衛策を入れた。創業家の資産会社と従業員の持株会で約2割、自己株も15%を超える。
買収の意欲はある。2025年の新日本産業は、計測という隣の分野に客を広げる買い物で、筋は通っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
工作機械の需要は、世界の製造業の設備投資で大きく振れる。国内の工作機械の受注は、2018年の山から2020年の谷まで半分近くに落ち、その後また戻った。今は自動化と省人化の投資が支えるが、自動車の電動化で部品の数が減る逆風もある。
専門商社の役割は、メーカーと工場の間で品をそろえ、据え付けと保守を手伝うことだ。ただメーカーの直販と、工具の通販が広がり、商社の取り分は細る方向にある。同じ領域のCominix、NaITO、杉本商事も、利益率は1〜4%台だ。
北米は追い風だ。米国の製造業の国内回帰と、メキシコへの工場の移転で、日系の部品メーカーの投資が続く。関税の行方で投資の場所は揺れるが、北米の中での設備の需要は底堅い。
10年で見れば、国内の数量は人口と製造業の縮小で少しずつ減り、北米とインドが伸びる。値段は物価並みに上がる。勝ち残るのは、海外の工場と計測・自動化の提案で、ただの仲介を超える役割を持つ商社だ。
人手不足は追い風にもなる。工場が人を減らすほど、自動化の機械と計測の仕組みへの投資が要る。その提案ができる商社には、仕事が増える。
資本政策と M&A
論点は、積み上がった現金だ。手元の現金は69.5億円と、10年前の33億円から倍に増えた。借入はほとんどない。保有する取引先の株も20億円を超える。
還元は年1回の配当で、2026年3月期は総額1.3億円と、純利益の2割ほどだ。自己株は発行済みの15%を超えるが、近年の自社株買いは目立たない。
2026年6月には、株主総会の承認を得て買収への防衛策を入れた。創業家の資産会社と従業員の持株会で約2割を持つ。買収で稼ぎを広げる意欲はあり、新日本産業を買ったが、現金の多くは手つかずだ。筆者は、余った現金のうち株主に届くのは半分程度と見る。防衛策の導入で、他社に買われて現金が株主に戻る道も狭まった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金だけで時価総額にほぼ並ぶ。手元の現金は69.5億円、借入はほぼゼロで、取引先の株も20億円を超える。事業の価値はほとんどタダで買える計算だ。
北米は本物の成長だ。日系の自動車・部品の工場が北米に設備を増やし、北米の売上は前の期に24%伸びた。現地で機械の据え付けまで手伝える商社は少なく、日系メーカーが出るたびに声がかかる。
会社は次の期に営業利益10億円と、4割を超える増益を見込む。新日本産業の計量・計測機器が国内の客の幅を広げ、工具の継続的な取引も厚くなる。
防衛策の導入は、裏を返せば会社の価値を誰かが見つけたということだ。現金を使った自社株買いや増配に舵を切れば、値段は大きく変わる。
景気の谷でも、この会社は倒れない。借金がなく、現金が厚い。工具や消耗品の継続的な取引が売上の底を支える。谷で赤字になっても、それは一時のことだ。
国内の人手不足も、自動化の設備と計測機器の需要を押し上げる。提案のできる商社には、仕事が回ってくる。
慎重な見方
商社の取り分は薄い。営業利益率は3%で、過去12年でも5%台が最高だ。値段を決めるのはメーカーと客で、メーカーの直販と工具の通販が広がるほど、取り分は細る。
循環も激しい。工作機械の受注は数年ごとに半分近くまで落ちる。2010年3月期には営業赤字、2021年3月期には営業利益率1.4%まで沈んだ。国内の利益は前の期に3分の1減り、アジアは赤字だ。
現金は厚いが、株主のものになっていない。配当は利益の2割ほどで、現金は10年で倍に積み上がった。創業家と関係先で約2割を持ち、防衛策まで入れた。経営に現金を返す気配はない。
ためた現金が年2%しか稼がないなら、自己資本利益率はさらに下がる。帳簿の厚さを価値と見るのは早い。
北米の伸びも、関税と政策しだいで止まりうる。日系の工場の投資の場所は、米国の政策で数年のうちに変わる。利益の6割以上を一つの地域に頼る形は、強みでもあり危うさでもある。会社の増益の見通しも、北米頼みだ。
どちらに重みを置いたか
現金の厚さと北米の成長という強気の論点には根拠があるが、取り分の薄さと、現金が株主に戻らない形の点で慎重な見方が勝る。確率は中立に厚く置き、工作機械の谷の実績から、やや悲観をやや楽観と同じ厚さにした。現金は事業の価値と分けて、戻り方を半分にして足した。防衛策の導入で他社に買われる道は狭まり、現金の戻り方を上げる理由にはならない。北米の伸びは中立の数量に入れてある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,927 円153 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 326 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 1,647 円86 億円、今との差 +19.6%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,815 円252 億円 | 459 円24 億円 | +283.1% | +14.4% | 422 円22 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,994 円209 億円 | 402 円21 億円 | +219.3% | +12.3% | 967 円51 億円 |
| 中立 | 38% | 3,287 円172 億円 | 344 円18 億円 | +163.7% | +10.2% | 1,380 円72 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,513 円79 億円 | 249 円13 億円 | +27.9% | +2.5% | 388 円20 億円 |
| 悲観 | 10% | 811 円42 億円 | 153 円8 億円 | −30.0% | −3.5% | 96 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,927 円153 億円 | 326 円17 億円 | +136.3% | +9.0% | 3,253 円170 億円 |
今の株価時価総額 1,377 円72 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 北米の工場の国内回帰に乗り、海外が稼ぎ頭になる 利益 14 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 4,815 円252 億円
米国の製造業の国内回帰と、メキシコへの工場の移転が10年続く。日系の自動車・部品の工場が北米で設備を増やし、トミタの北米の売上は数量で1.5倍になる。現地での機械の据え付けと、工具の継続的な納入で、利益率は7.5%に上がる。
国内は人手不足を背景に、自動化の設備と計測機器の需要が底堅い。新日本産業の計量・計測機器を既存の顧客に売り込み、利益率は3.5%まで戻る。アジアも赤字を脱し、インドの日系工場の立ち上げが稼ぎに加わる。
全社の営業利益率は5%近くと、過去12年の山の水準に戻る。手元の現金は配当とあわせて小さな買収にも使われ、自己資本利益率は7%近くまで上がる。それでも資本コストには届かない。
- 日本:数量 120(国内の営業の従事者数(人、推定))× 価格 150(1 人あたり売上(百万円・名目))→ 売上 180 億円・営業利益 6 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 3.5%
- 北米:数量 67.5(北米の従事者数(人、推定))× 価格 187(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 126 億円・営業利益 9 億円。数量 今の 1.50 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 7.5%
- アジア:数量 52.0(アジアの従事者数(人、推定))× 価格 110(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.30 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 2.5%
- 欧州:数量 12.8(欧州の従事者数(人、推定))× 価格 75(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 1.60 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 15.22 倍、時価総額 239 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北米の工場の投資が 10 年続き、国内とアジアも利益率が戻る必要がある。全社の営業利益率 5% 近くは過去 12 年で 2 期しかない。
やや楽観 22% 北米が伸び、国内は計測機器で底を固める 利益 12 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 3,994 円209 億円
北米の日系の工場の投資が続き、北米の売上は数量で4割近く増える。現地の利益率は7%を保つ。国内は工作機械の受注が山と谷を繰り返しながら、平均ではわずかに減る。
新日本産業の計量・計測機器が、研究所や品質検査の現場に入り込み、国内の利益率を3%に戻す。工具や消耗品の継続的な取引が増えるほど、景気の谷での落ち込みも浅くなる。アジアは小さな黒字を保つ。
全社の営業利益率は4%台で、会社が次の期に見込む水準に近い。配当は利益の2割前後のまま少しずつ増え、現金は積み上がる。経営の方針が大きく変わらない限り、株主への還元は厚くならない。
- 日本:数量 116(国内の営業の従事者数(人、推定))× 価格 149(1 人あたり売上(百万円・名目))→ 売上 174 億円・営業利益 5 億円。数量 今の 0.97 倍 × 単価 今の 1.36 倍、利益率 3.0%
- 北米:数量 62.1(北米の従事者数(人、推定))× 価格 186(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 8 億円。数量 今の 1.38 倍 × 単価 今の 1.36 倍、利益率 7.0%
- アジア:数量 48.0(アジアの従事者数(人、推定))× 価格 109(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 1.20 倍 × 単価 今の 1.36 倍、利益率 1.8%
- 欧州:数量 11.6(欧州の従事者数(人、推定))× 価格 75(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 1.45 倍 × 単価 今の 1.36 倍、利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 14.31 倍、時価総額 195 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北米は直近で 2 割を超える増収で、会社は次の期に営業利益 10 億円を見込む。国内の弱さを海外が補う形はすでに数字に出ている。
中立 38% 国内は細り、北米が補って、利益率は3%台半ば 利益 10 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,287 円172 億円
国内の製造業の設備投資は実質で横ばいからやや減り、日本の売上は数量で5%減る。工作機械の受注は数年ごとに山と谷を繰り返すが、10年ならすと平均の水準にとどまる。メーカーと顧客の間に立つ商社の取り分は薄く、国内の利益率は2.5%だ。
北米は日系の工場の投資が続き、数量で25%増える。利益率は6.5%と、今よりわずかに下がる。アジアは中国の日系工場の縮小とインドの立ち上げが相殺し、ほぼ収支とんとんだ。
全社の営業利益率は3.6%で、過去12年の真ん中あたりだ。営業外では現金の利息と保有株の配当が利益を支える。配当は利益の2割前後で、現金はさらに積み上がる。
- 日本:数量 114(国内の営業の従事者数(人、推定))× 価格 147(1 人あたり売上(百万円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 4 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 2.5%
- 北米:数量 56.3(北米の従事者数(人、推定))× 価格 183(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 7 億円。数量 今の 1.25 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 6.5%
- アジア:数量 44.0(アジアの従事者数(人、推定))× 価格 107(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 1.10 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 1.0%
- 欧州:数量 10.4(欧州の従事者数(人、推定))× 価格 74(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 1.30 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 157 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工作機械の受注の山と谷をならし、国内は細り海外が補うという筋書きに最も厚く置いた。
やや悲観 22% 工作機械の長い谷で、国内と海外がともに沈む 利益 5 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,513 円79 億円
世界の製造業の設備投資が長く冷え込み、工作機械の受注は谷が続く。国内の数量は15%減り、値上げも物価に届かない。国内の利益率は1%台に落ちる。
北米も日系の工場の投資が一巡し、数量は伸びない。メーカーが顧客に直接売る動きも強まり、商社の取り分が削られる。アジアは赤字が続く。
全社の営業利益は5億円前後まで減り、営業外の利息と配当で純利益を何とか保つ。手元の現金は配当と赤字の穴埋め、買収した会社のてこ入れに使われ、少しずつ目減りする。経営は守りに入り、株主への還元は増えない。
自己資本は増えても、その多くは利息しか稼がない現金で、資本の効率はさらに下がる。
- 日本:数量 102(国内の営業の従事者数(人、推定))× 価格 137(1 人あたり売上(百万円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 2 億円。数量 今の 0.85 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 1.2%
- 北米:数量 45.0(北米の従事者数(人、推定))× 価格 171(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 3 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 4.5%
- アジア:数量 36.0(アジアの従事者数(人、推定))× 価格 100(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 0.90 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 -1.0%
- 欧州:数量 8.0(欧州の従事者数(人、推定))× 価格 69(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 0.0%
倍率:ROE 2.8% で k を大きく下回る。稼ぐ力の筋書きとして PER 8.0 倍(1÷k の 68%)に置き、余った現金は 0.75 倍の 37.5 億円に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:2010 年 3 月期には営業赤字、2021 年 3 月期には営業利益率 1.4% まで落ちた。工作機械の谷は 10 年に 1〜2 度来る。
悲観 10% 商社の取り分が消え、営業赤字が常態になる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 811 円42 億円
工作機械のメーカーが通販や直販で顧客と直接つながり、専門商社を通す理由が薄れる。国内の数量は3割減り、営業は赤字になる。北米も利益率が2%まで落ち、アジアの赤字は広がる。
新日本産業の買収も期待した利益を出せず、のれんを減損する。営業利益はほぼゼロで、純利益は現金の利息と保有株の配当だけになる。
手元の現金と保有株は残るが、使い道を決めるのは創業家と経営陣で、防衛策も入っている。清算されるわけではないので、少数株主に届く値は帳簿の現金を下回りうる。配当は大きく減る。
専門商社としての価値は、現金と保有株の一部にまで縮む。
- 日本:数量 84.0(国内の営業の従事者数(人、推定))× 価格 126(1 人あたり売上(百万円・名目))→ 売上 106 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.70 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 -1.0%
- 北米:数量 36.0(北米の従事者数(人、推定))× 価格 157(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.80 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 2.0%
- アジア:数量 28.0(アジアの従事者数(人、推定))× 価格 92(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.70 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 -3.0%
- 欧州:数量 6.4(欧州の従事者数(人、推定))× 価格 63(1 人あたり売上(百万円・円換算・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 0.80 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 -2.0%
倍率:営業赤字で、純利益は現金の利息と保有株の配当だけになる。売れる資産の床(69 億円)に戻り方 0.5 を掛けた約 42 億円を、今の自己資本 129 億円に対する PBR 0.328 倍として置いた。
確率:メーカーの直販と通販で専門商社の役割が細る流れは現実にある。ただ現金が厚く倒れる心配はないので、1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
国内の製造業に工作機械・工具・制御機器・鍛圧機械を売る。2025 年 11 月から新日本産業の計量・計測機器が加わった。
| 数量国内の営業の従事者数(人、推定) | 価格1 人あたり売上(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 110 | 132 | 3 |
| 10 年後 中立 | 114 | 147 | 168 | 4 |
取り方:日本の売上 131.6 億円を、国内の従事者約 120 人(提出会社 78 人と国内子会社の推定)で割った。人数を実質の数量、値上げと取扱品の単価は 1 人あたり売上に入れる。営業利益は有報の所在地別の値。
北米
米国・カナダ・メキシコの子会社が、日系の自動車・部品の工場などに機械と工具を売る。
| 数量北米の従事者数(人、推定) | 価格1 人あたり売上(百万円・円換算・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45.0 | 136 | 61 | 4 |
| 10 年後 中立 | 56.3 | 183 | 103 | 7 |
取り方:北米の売上 61.4 億円を、従事者約 45 人(推定)で割った。ドル円は 150 円で固定。営業利益は有報の所在地別の値。
アジア
タイ・インドネシア・中国・インドなどの子会社が、日系の工場に機械と工具を売る。
| 数量アジアの従事者数(人、推定) | 価格1 人あたり売上(百万円・円換算・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 80 | 32 | −1 |
| 10 年後 中立 | 44.0 | 107 | 47 | 0 |
取り方:アジアの売上 32.0 億円を、従事者約 40 人(推定)で割った。営業損失 0.75 億円は有報の所在地別の値。
欧州
欧州の子会社の販売。
| 数量欧州の従事者数(人、推定) | 価格1 人あたり売上(百万円・円換算・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 55 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.4 | 74 | 8 | 0 |
取り方:その他(欧州)の売上 4.4 億円を、従事者約 8 人(推定)で割った。営業利益は有報の値。所在地別の合計と連結の差 0.4 億円は調整に入れた。
リスクと懸念
工作機械の受注の谷
工作機械の受注は数年ごとに半分近くまで落ちる。機械の売上が大きく減り、2010年3月期には営業赤字になった。工具の継続的な取引だけでは谷を埋められない。
メーカーの直販と通販
工作機械のメーカーが客と直接つながり、工具は通販で買われるようになった。専門商社を通す理由が薄れれば、薄い取り分がさらに削られる。
北米の投資の行方
利益の6割以上を北米が稼ぐ。米国の関税やメキシコの政策で日系の工場の投資の場所が変われば、北米の売上は大きく揺れる。
現金が株主に戻らない
手元の現金は時価総額にほぼ並ぶが、配当は利益の2割ほどだ。創業家と関係先で約2割を持ち、防衛策も入れた。現金は会社にたまり、年2%ほどしか稼がない。
買収の成否
2025年に新日本産業を買った。計量・計測機器が既存の客に広がらなければ、のれんの減損が出る。次の買収で現金を高値で使う恐れもある。
今後の分かれ目
- 自社株買いを再開するか、配当を利益の 4 割以上に上げたら
- 現金の戻り方を 0.5 から引き上げ、価値を見直す。
- 北米の売上が 2 期続けて 2 割以上伸び、利益率 7% を保ったら
- やや楽観の確率を上げる。
- 国内の工作機械の受注が前年比 3 割以上減ったら
- やや悲観の確率を上げ、国内の利益率を見直す。
- 大株主が変わるか、防衛策が発動される事態になったら
- 支配の形が変わる可能性を見て、筋書きの確率を見直す。
- 新日本産業ののれんを減損したら
- 買収の目利きを厳しく見て、悲観側へ確率を移す。
見ておくもの
- 北米の売上と営業利益率
- 国内の工作機械の受注の動き
- 配当性向と自社株買いの有無
- 手元の現金の残高
- 新日本産業の売上と利益
倍率と資本コストの決め方
地域ごとに従事者数(推定)× 1 人あたり売上で積み、数量は実質、単価は名目(中立 10 年 1.34 倍)。工作機械の受注は循環なので、中立は山でも谷でもない平均の数量に置いた。k は 7.5% + quality 1.0% の 8.5%。ROE は 5% 前後で k に届かず、PER は上限 1÷k の 7〜9 割。余った現金 50 億円は事業の PER に混ぜず戻り方 0.5 で足し、保有株は配当を利益に残すので価値に足さず悲観の床にだけ入れた。株数は配当の総額から 522.7 万株で、facts の 518.7 万株は使っていない。今の株価・PBR は倍率に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→15.22 倍・やや楽観 PER 10→14.31 倍・中立 PER 9.5→13.33 倍・悲観 PBR 0.27→0.328 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% で 8.5%。同じ領域の Cominix(8.5%)と同じ。NaITO(9.0%)より北米の稼ぎがある分、杉本商事(8.2%)より機械の比重が高く循環が大きい分で間に置いた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。