結論
SPK は、自動車の補修用部品を国内外に卸す創業 100 年超の専門商社だ。国内では全国約 700 社の部品商に、海外では 80 か国超の顧客に部品を届ける。直近の売上は 750 億円台、営業利益率は 4.8% と、卸としての薄さはあるが安定している。
筆者の結論は「ほぼ適正、ただし割安ではない」だ。10 年後の中立で時価総額は今の 1.5 倍ほどになるが、年率にすると 6% 台で、資本コストを大きく上回らない。利益は物価並みに伸びるが、稼いだ資金の 7 割が社内に残り、自己資本利益率は資本コストを下回っていく。この点が上振れを抑える。
強みは、車齢の高止まりで補修需要が景気に左右されにくいことだ。海外営業が直近で 1 割成長し、買収したブリッツを核にしたカスタムパーツも立ち上がった。
一方、卸は中抜きの圧力を受けやすい。整備工場向けの通販や、メーカーの直接供給が広がれば、間に入る価値が薄れる。電気自動車(EV)の比率が上がれば、エンジン周りの部品も減る。筆者は、この 2 つが 10 年のうちで最も重い論点だと考えている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、SPK は「悪くない会社だが、安く買う理由が見つからない」会社だ。
オーナーとして残る利益を見ると、卸は在庫と売掛金に資金が要る。稼いだ利益のうち、物価で膨らむ運転資金に回る分が大きい。純利益がそのまま株主の自由なお金になるわけではない。
堀は、品ぞろえと配送網に支えられている。ただし、それが 10 年後も広がっている保証はない。中抜きと EV という二重の変化が、10 年かけて効いてくる。わかりにくいのは、その速さだ。
経営の資本配分は、堅実だが積極的ではない。現金を溜め、小型の買収を重ねる。自己資本利益率が資本コストに届かない水準へ落ちるなら、溜めずに返す方が株主のためだ。
安全域を言えば、財務は強く、悲観でも会社は残る。ただ、払う値段に対して、楽観でも大きな上振れは望みにくい。値段が今よりかなり低いところに来て初めて、安全域が得られる。
何で稼ぐ会社か
SPK は自動車部品と産業機械車輌部品の卸だ。売上は 4 つの本部で構成される。
国内営業本部が売上の 4 割強を占める。全国約 700 社の自動車部品商に、国内外メーカーの補修用部品を供給する。部品商はそれを整備工場やカー用品店へ売る。SPK は在庫と物流を持ち、必要な部品を素早く届けることで稼ぐ。取り扱い点数の多さと、地域の部品商との長い付き合いが商売の土台になっている。
海外営業本部は 80 か国超・250 社超の顧客へ日本車向けの部品を輸出する。2026 年 3 月期は円安を追い風に前期比 10% 増えた。米国やシンガポール、タイなどに現地法人と倉庫を持つ。
工機営業本部は建機・農機メーカー向けに組付け用の部品を納める。北米・欧州の需要減で売上は横ばいだ。
CUSPA 営業本部は、チューニングやドレスアップ向けのカスタムパーツを企画し販売する。2024 年 11 月にブリッツを買収し、売上は 5 割増えた。
全体で連結従業員は約 650 人。薄利多売の商売で、在庫の回転と物流の効率が利益を決める。
優良さと弱いところ
SPK の強みは、品ぞろえと配送網という地味な機能にある。部品商は何万点もの部品から、客の車に合うものを素早く探し出す必要がある。SPK は全国 19 か所の拠点と大阪の本社を使い、部品商の在庫の持ち方を肩代わりしている。この関係は一朝一夕には壊れない。
数字にも出ている。営業利益率は過去 12 年、3% から 5% の狭い幅に収まっている。赤字の期はない。純現金で、営業利益は支払利息の 60 倍ある。財務が傷む心配は小さい。配当も 29 期連続で増やしている。
弱みは 3 つある。第 1 に、値決め力が小さい。仕入先の値上げを客に転嫁できるかどうかは、競争次第だ。第 2 に、資本の使い方が鈍い。自己資本比率は 61% と厚いのに、配当性向は 3 割弱で、現金を溜めている。自己資本利益率は 9% 台で、資本コストの 7.75% をわずかに上回るだけだ。第 3 に、買収で広げた事業が、本業と同じ採算に育つ保証はない。
堀は、狭く浅い。筆者は「普通の堀」と見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
補修部品の市場は、保有台数と車齢で決まる。日本の自動車保有は約 8,000 万台で、人口とともに緩やかに減る。しかし、新車の買い替えが遅れ、平均車齢は伸びている。古い車ほど部品を替えるので、台数が減っても部品の需要は崩れにくい。日本の自動車アフターマーケット全体は、2017 年から 2022 年にかけて年 1% ほど縮んだとする調査がある。
国内の流通は、メーカー系列の純正部品と、独立系の部品商が併存している。独立系は純正より安く、短い納期を売りにする。SPK はその独立系を支える卸だ。
構造変化は 2 つある。第 1 は EV で、エンジンや変速機、排気系の部品が不要になる。ただし、日本の保有車の入れ替えは遅く、10 年では主力の車種を置き換えきれない。第 2 は流通の短縮で、ネット通販やメーカーの直接供給が整備工場に届く。これは卸の取り分を直接削る。
海外は別の力学になる。東南アジア、中東、アフリカでは、日本車の保有が増え続ける。現地の部品商は、日本から安定して部品を買う必要がある。SPK はここを取っている。ただし、円安で稼いだ分は、円高に戻れば減る。本分析では 10 年とも 150 円で固定して見ている。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本だ。配当性向は 3 割弱で、配当は 29 期連続で増やしている。自社株買いの記載はなく、数値目標も示していない。2026 年 4 月に 1 株を 2 株に分割した。
資本の使い方は、買収が主役だ。2020 年以降だけでも、米国の部品販売会社、カー用品の会社、北光社、ブリッツと続く。いずれも小型で、1 件で会社の姿が変わる規模ではない。買収のたびに売上は増えるが、利益率が上がったかどうかは、まだ見えない。
政策保有株は上場で 23 銘柄にとどまり、金額もごく小さい。持ち合いで資本が眠る会社ではない。
問題は現金の溜まり方だ。自己資本は 10 年で 2 倍近くになった。今の配当性向のままだと、10 年後の自己資本利益率は 7% 台に落ちる。株主還元を強めれば、同じ利益でも価値は上がる。10 年以内の TOB や買収の確率は、別の推計で 2 割弱とされている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
補修部品は、景気が悪くても車が走る限り必要になる。日本の平均車齢は伸び続け、古い車ほど部品を替える。台数が減っても、1 台あたりの部品の売上は増える。国内営業は、その安定した土台になる。
成長の主役は海外だ。東南アジア、中東、アフリカでは、日本車の保有が実質で増え続けている。SPK は 80 か国超の顧客網と、現地の倉庫を持つ。直近の 2 期で海外は 1 割ずつ伸びた。円安が一巡しても、台数の伸びは続く。
第 3 の柱は CUSPA だ。ブリッツの買収で、自社企画のカスタムパーツを持つようになった。高採算の自社企画品が増えれば、全体の利益率を押し上げる。中計の営業利益率と ROE 10% の目標を果たせば、過去最高の水準まで届く。
財務は純現金で、赤字の期はない。配当は 29 期連続の増配だ。これだけ堅い会社が、成長しながら利益率を上げる余地は、まだ残っている。物価 3% の世界では、在庫を持つ卸ほど、値上げの転嫁で利益が増える。
慎重な見方
卸は、中抜きに最も弱い。整備工場向けのネット通販と、メーカーの直接供給は、すでに広がっている。部品商が減れば、SPK の顧客も減る。国内営業は、売上の 4 割強を占める主力だ。
EV の比率が高まれば、エンジンや変速機、排気系の補修部品が減る。日本は入れ替えが遅いと言っても、10 年は短くない。海外の主力も日本車で、日本車の電動化と中国車の拡大に挟まれる。
利益率は 4% 台で、物価で上がる人件費と物流費を吸収する余地が小さい。買収で売上は増えたが、今期の予想では売上が 6% 増えるのに営業利益は 3% しか増えない。
最も気になるのは資本の使い方だ。利益の 3 割弱しか配当せず、残りは社内に溜まる。そのため、自己資本利益率は年々下がる。しかも自社株買いの記載はなく、還元を厚くする約束もない。
最後に、競争の相手は国内にとどまらない。海外の顧客は現地の流通業者や中国・韓国系の部品とも比べて買う。価格で勝てなければ、円安の追い風が止まった時に海外の伸びは鈍る。薄利の卸が 10 年かけて利益を伸ばし続けるには、中抜きとEVの両方を避ける必要があり、その前提は楽観に寄りすぎている。資本コストを超えない事業に溜めるお金は、額面どおりの価値にならない。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。海外の伸びと車齢の高止まりは本物で、中立の筋書きでも利益は 10 年で 5 割近く増える。しかし、その成長の大半は物価で、実質の稼ぐ力は伸びていない。資本が溜まって自己資本利益率が資本コストを割る、という点を覆す材料がない。確率は慎重側に寄せ、やや悲観と悲観で 3 割とした。ただし、財務が強く、悲観でも会社は残るので、楽観側の確率も 3 割を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,676 円541 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 467 円94 億円)。 今の値に割り戻すと 1,624 円328 億円、今との差 +15.5%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,241 円857 億円 | 564 円114 億円 | +241.8% | +13.1% | 384 円78 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,570 円721 億円 | 525 円106 億円 | +191.2% | +11.3% | 901 円182 億円 |
| 中立 | 40% | 2,968 円600 億円 | 480 円97 億円 | +145.2% | +9.4% | 1,379 円279 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,547 円313 億円 | 421 円85 億円 | +39.9% | +3.4% | 393 円80 億円 |
| 悲観 | 10% | 550 円111 億円 | 307 円62 億円 | −39.0% | −4.8% | 86 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,676 円541 億円 | 467 円94 億円 | +123.6% | +8.4% | 3,144 円635 億円 |
今の株価時価総額 1,406 円284 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外と新領域が伸び、卸の機能が厚みを増す 利益 55 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 4,241 円857 億円
海外営業が南アジア・中東・アフリカの日本車の保有増に乗り、輸出先の顧客数を増やして 10 年で売上を 1.9 倍近くまで伸ばす。国内は走行距離の増えない高齢車が整備工場に集まり、部品の点数と単価が上がって、台数の減りを打ち消す。CUSPA はブリッツを軸にしたチューニング・モータースポーツ用品で採算の高い自社企画品の比率を高め、営業利益率が 8% を超える。これまで買収を重ねて取り込んだ会社が、物流と在庫を共通にすることで効く。会社の目標である ROE 10% 以上も実現するが、それでも卸の基本構造は変わらず、利益率は 5% 台後半までの上振れにとどまる。
- 国内営業本部(補修部品):数量 8,200(国内の自動車保有台数(万台))× 価格 548(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 449 億円・営業利益 25 億円。数量 1.00 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 5.6%
- 海外営業本部(輸出):数量 17,400(輸出先の日本ブランド車の保有台数(万台、推定))× 価格 327(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 568 億円・営業利益 34 億円。数量 1.45 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 6.0%
- 工機営業本部(産業機械・建機農機向け):数量 345(対象の建機・農機の出荷台数(万台、推定))× 価格 3,568(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 123 億円・営業利益 6 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 4.5%
- CUSPA 営業本部(カスタムパーツ):数量 648(国内のカスタム用品を買う車両の台数(万台、推定))× 価格 2,101(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 136 億円・営業利益 12 億円。数量 1.35 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.52 倍、時価総額 849 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の輸出先が広がり、カスタムの高採算が定着するという筋書き。実際に海外は直近 2 期で 1 割成長しているが、世界景気と為替に依存するため、1 割に満たない確率に置いた。
やや楽観 22% 海外とカスタムが牽引し、国内は堅調 利益 47 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 3,570 円721 億円
海外が実質で年 3% 台のペースで伸び続け、直近の勢いが半分ほど続く。輸出先の日本車の保有は東南アジアや中東で増え、現地の部品商との取引が広がる。国内は保有台数が緩やかに減る一方、車齢の高止まりで 1 台あたりの整備部品の売上が増え、横ばいをやや下回る程度で踏みとどまる。工機は北米・欧州の建機・農機の需要が戻り、緩やかに増える。CUSPA はブリッツの取り込みが進み、自社企画のカスタムパーツが増える。営業利益率は 5% 台前半まで上がるが、仕入先の値上げを転嫁しきれない局面も混ざり、過去の山を大きく超えるには至らない。
- 国内営業本部(補修部品):数量 7,995(国内の自動車保有台数(万台))× 価格 536(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 428 億円・営業利益 23 億円。数量 0.97 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 5.3%
- 海外営業本部(輸出):数量 16,200(輸出先の日本ブランド車の保有台数(万台、推定))× 価格 320(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 518 億円・営業利益 29 億円。数量 1.35 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 5.6%
- 工機営業本部(産業機械・建機農機向け):数量 321(対象の建機・農機の出荷台数(万台、推定))× 価格 3,568(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 115 億円・営業利益 5 億円。数量 1.07 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 4.0%
- CUSPA 営業本部(カスタムパーツ):数量 586(国内のカスタム用品を買う車両の台数(万台、推定))× 価格 2,056(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 120 億円・営業利益 9 億円。数量 1.22 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 7.8%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.95 倍、時価総額 700 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が実質で年 3% 台伸び、国内も車齢の高止まりで台数が保たれる筋書き。直近の勢いを素直に延ばした形で、中立に次いで起こりやすい。
中立 40% 車齢の高止まりに支えられ、物価並みに成長する 利益 40 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,968 円600 億円
国内は保有台数が人口とともにやや減るが、平均車齢の上昇で整備・交換の頻度が保たれ、台数に当たる需要は 10 年で 5% 減にとどまる。物価が 3% で進むので、部品の値上げは仕入先から順に価格へ転嫁され、10 年で 1.34 倍になる。海外は輸出先の日本車の保有が実質で年 2% 台伸び、売上は 1.7 倍ほどになる。工機は北米・欧州の建機・農機の需要が横ばいで、価格だけが物価並みに上がる。CUSPA は取り込みの効果が一巡し、実質では緩やかに伸びる。営業利益率は 4.8% で、過去 12 年の山(5.0%)を超えない。人件費や物流費も物価で上がるので、本社費も 1.34 倍に増える。
- 国内営業本部(補修部品):数量 7,790(国内の自動車保有台数(万台))× 価格 524(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 408 億円・営業利益 20 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 5.0%
- 海外営業本部(輸出):数量 15,000(輸出先の日本ブランド車の保有台数(万台、推定))× 価格 313(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 469 億円・営業利益 24 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 5.2%
- 工機営業本部(産業機械・建機農機向け):数量 300(対象の建機・農機の出荷台数(万台、推定))× 価格 3,568(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 3.5%
- CUSPA 営業本部(カスタムパーツ):数量 528(国内のカスタム用品を買う車両の台数(万台、推定))× 価格 2,011(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 106 億円・営業利益 7 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.28 倍、時価総額 564 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は保有台数の減少と車齢の上昇が相殺し、海外が実質で年 2% 台伸びる筋書き。過去 12 年の利益率の山(5.0%)を超えない形で、最も確率が高い。
やや悲観 20% EC と直販に利が削られ、国内が縮む 利益 30 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,547 円313 億円
整備工場向けのネット通販や、メーカー・大手チェーンの直接仕入れが広がり、卸が間に入る分の利益が削られる。国内の部品商という顧客の数も減り、国内営業の売上は実質で 1 割近く縮む。仕入先の値上げは転嫁しきれず、価格は物価を下回る。海外は中国・韓国系の部品との価格競争が強まり、伸びが鈍る。工機は北米・欧州の需要の低迷が長引き、実質で 1 割減る。CUSPA は円安で輸入仕入れが重くなり、高採算を保てない。人件費と物流費は物価どおりに膨らむので、営業利益率は 4% 台前半まで下がる。会社は残り、配当も続くが、成長の物語は終わる。
- 国内営業本部(補修部品):数量 7,544(国内の自動車保有台数(万台))× 価格 509(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 384 億円・営業利益 18 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 4.6%
- 海外営業本部(輸出):数量 13,200(輸出先の日本ブランド車の保有台数(万台、推定))× 価格 299(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 394 億円・営業利益 18 億円。数量 1.10 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 4.6%
- 工機営業本部(産業機械・建機農機向け):数量 270(対象の建機・農機の出荷台数(万台、推定))× 価格 3,328(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 3 億円。数量 0.90 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 2.8%
- CUSPA 営業本部(カスタムパーツ):数量 456(国内のカスタム用品を買う車両の台数(万台、推定))× 価格 1,876(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 5 億円。数量 0.95 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 5.5%
倍率:事業の ROE は 6.0% で k を下回り、PER の上限は 1÷k=12.9 倍。構造的に値幅が削られる筋書きなので、稼ぐ力から上限の 7 割に当たる 9.0 倍に置いた。
確率:整備工場向けの EC や、メーカー直販・系列網の囲い込みで値幅が削られる筋書き。薄利の卸には起こりやすい形で、中立に次ぐ確率を置いた。
悲観 10% 中抜きと EV 化で部品商の役目が細る 利益 14 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 550 円111 億円
EV の比率が高まり、エンジン・変速機・排気系の補修部品が減り始める。同時にメーカーが自社ブランドの補修部品を整備工場へ直接届ける体制を強め、部品商の中間流通が飛ばされる。国内営業は実質で 15% 減り、価格も物価に届かない。海外は円安の追い風が消え、現地の流通業者が日本の卸を介さず仕入れる。拠点・倉庫・人件費といった固定費は物価で膨らむのに、売上が追いつかず、営業利益率は 3% を割る。買収で膨らんだ事業の一部は見直しを迫られ、減損も出る。部品商としての優良さを失った姿だ。顧客の部品商は数を減らし、残った会社も仕入れ先を絞り込む。SPK は品ぞろえの広さという強みを生かせず、在庫を抱えて値引きで売るしかなくなる。
- 国内営業本部(補修部品):数量 6,970(国内の自動車保有台数(万台))× 価格 450(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 314 億円・営業利益 11 億円。数量 0.85 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 3.6%
- 海外営業本部(輸出):数量 9,600(輸出先の日本ブランド車の保有台数(万台、推定))× 価格 257(保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 246 億円・営業利益 9 億円。数量 0.80 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 3.5%
- 工機営業本部(産業機械・建機農機向け):数量 210(対象の建機・農機の出荷台数(万台、推定))× 価格 2,929(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 1 億円。数量 0.70 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 1.5%
- CUSPA 営業本部(カスタムパーツ):数量 336(国内のカスタム用品を買う車両の台数(万台、推定))× 価格 1,650(1 台あたりの SPK 売上(円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。数量 0.70 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 3.0%
倍率:事業の ROE は 3% 台で k を大きく下回る。稼ぐ力は純利益÷k で測り、上限の 1÷k=12.9 倍の 6 割強に当たる 8.0 倍に置いた。
確率:EV 化で内燃機関の補修部品が減り、同時にメーカー・EC の直販で部品商が飛ばされる構造的な負け。進行は遅いが、10 年あれば起こりうる水準として 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内営業本部(補修部品)
全国約 700 社の自動車部品商に、国内外メーカーの補修用部品を卸す。会社の基幹で、売上の 4 割強を占める。
| 数量国内の自動車保有台数(万台) | 価格保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,200 | 391 | 321 | 16 |
| 10 年後 中立 | 7,790 | 524 | 408 | 20 |
取り方:国内の保有台数を概数で 8,200 万台とし、国内営業本部の売上 320.8 億円を 1 台あたり単価を 391.2(円換算の値)と割り戻した(保有台数の概数は未確認で推定)。台数は実質、物価 3% と部品の高単価化は価格に入れた。セグメント利益は未開示のため、営業利益率 5.0% と推定。
海外営業本部(輸出)
80 か国超・250 社超の顧客へ日本車向けの補修部品を輸出する。直近 2 期で最も伸びた本部。
| 数量輸出先の日本ブランド車の保有台数(万台、推定) | 価格保有 1 台あたりの SPK 売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,000 | 233 | 280 | 15 |
| 10 年後 中立 | 15,000 | 313 | 469 | 24 |
取り方:輸出先 80 か国の日本ブランド車の保有を 1.2 億台と推定し、海外営業本部の売上 279.8 億円を 1 台あたり単価を 233.2(円換算の値)と割り戻した(台数は推定)。ドル円は 150 円で固定。台数は実質、物価と円安の追い風は価格に入れた。営業利益率 5.2% は推定。
工機営業本部(産業機械・建機農機向け)
建機・農機などのメーカーに、組付けや補修に使う部品を納める。北米・欧州の需要減で、直近は横ばい。
| 数量対象の建機・農機の出荷台数(万台、推定) | 価格1 台あたりの SPK 売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 2,663 | 80 | 3 |
| 10 年後 中立 | 300 | 3,568 | 107 | 4 |
取り方:取引先メーカーの対象機種の出荷を年 300 万台相当と推定し、工機営業本部の売上 79.9 億円を 1 台あたり単価を 2,662.7(円換算の値)と割り戻した(推定)。台数は実質、部品の値上げは価格に入れた。営業利益率 3.5% は推定。
CUSPA 営業本部(カスタムパーツ)
チューニング・ドレスアップ・モータースポーツ向けのカスタムパーツを企画・販売する。2024 年 11 月に買収したブリッツが加わり、売上が急増した。
| 数量国内のカスタム用品を買う車両の台数(万台、推定) | 価格1 台あたりの SPK 売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 480 | 1,500 | 72 | 5 |
| 10 年後 中立 | 528 | 2,011 | 106 | 7 |
取り方:年間にカスタム用品を買う車両を 480 万台相当と推定し、CUSPA の売上 72.0 億円を 1 台あたり単価を 1,500.4(円換算の値)と割り戻した(推定)。台数は実質、輸入仕入れの円安分と高単価化は価格に入れた。営業利益率 7.0% は推定。買収済みの通期分は直近期に入っているので、これ以降の押し上げは小さい。
リスクと懸念
中抜きの進行
整備工場向けのネット通販や、メーカーの直接供給が広がれば、部品商という顧客そのものが減る。国内営業は売上の 4 割強を占め、卸の取り分を直接削られる。進行は遅いが、10 年あれば形を変える力がある。
EV 化による補修部品の変質
エンジン・変速機・排気系の部品は EV に不要で、10 年後の保有車の電動化比率が高まるほど、補修需要が細る。日本は入れ替えが遅いが、海外の主力である日本車の電動化は別の競争にさらされる。
仕入先の値上げの転嫁
営業利益率は 4% 台で余裕が小さい。仕入先の値上げ、人件費、物流費の上昇を客に転嫁できなければ、物価 3% の中で利益率が静かに下がる。値上げの局面ほど、大手に集約される圧力が強まる。
円安が戻った時の海外
海外営業は円安の追い風で直近に 1 割伸びた。為替が円高に戻れば、円換算の売上と採算が下がる。本分析は 150 円で固定して見ているが、為替の変動は短期の業績を左右する。
買収の消化
2024 年 11 月に買収したブリッツを含め、小型の買収を重ねている。買収した事業が本業並みの採算に育たなければ、のれんの減損や、統合の手間が利益を削る。CUSPA の利益率は開示されておらず、検証できない。
資本の溜め込み
自己資本比率は 61% と厚く、配当性向は 3 割弱だ。このままだと自己資本利益率は 10 年で資本コストを下回る。還元の強化がなければ、利益が伸びても価値は伸びにくい。
今後の分かれ目
- 国内の部品商の数が年に 5% を超えて減り始めたら
- 中抜きが加速している兆候。やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 海外営業の売上が円安の一巡後も、実質で 5% 以上伸び続けたら
- 楽観とやや楽観の確率を上げる。為替でなく、台数の伸びだと確認できる。
- 自社株買いや配当性向の引き上げを明確に打ち出したら
- 資本が溜まる構図が変わる。ROE が資本コストを超えて保たれ、倍率の上限が上がる。
- 営業利益率が 5% を超えて 2 期以上続いたら
- 過去の山を超える構造変化。中立の利益率を見直す。
- 大型の買収を発表したら
- 本業とは別の事業になる可能性。買収額と採算を確認する。
- 国内の電動車比率が急に高まり、補修部品の取扱点数が減り始めたら
- EV 化の速度が想定を超えている。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 国内営業と海外営業の売上の伸びと営業利益率
- セグメント別の営業利益の開示の有無
- CUSPA の採算
- 配当性向と自社株買いの方針
- 国内の自動車保有台数と平均車齢の推移
倍率と資本コストの決め方
先に 4 つの本部ごとに数量と価格を置き、10 年後の売上と営業利益を積み上げた。今の株価や過去の PER・PBR から倍率を置いていない。倍率は k 7.5%(基本 7.5% に品質 +0.25%)と g 4% による正当化 PER から決めた。事業の ROE は中立で 7.6% と k を下回るので、PER の上限は 1÷k=12.9 倍。中立・やや楽観・楽観は上限の 9 割に置いた。やや悲観と悲観は稼ぐ力から出し、7 割と 6 割強に置いた。結果は今の時価総額より低めに出たが、数字を今の株価に合わせて調整してはいない。リースはシンガポールの倉庫が中心で小さく、新リース会計基準の影響は小さい。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.52 倍・やや楽観 PER 12.3→14.95 倍・中立 PER 11.6→14.28 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。