結論
カナデンは三菱電機の工場自動化機器、ビル設備、鉄道の電力設備、半導体を売る技術商社だ。仕入れの5割強を三菱電機に頼り、同社が議決権の2割を持つ。売上は1,500億円規模で、営業利益率は4%に届かない薄利の商売である。
筆者の結論は「やや割高」だ。理由は単純で、値決めの力を仕入先に握られた薄利の流通業に、今の値段が成長を先に織り込みすぎているからだ。10年で営業利益は今の7割増まで伸びるとみるが、それでも本質価値は今の時価総額を下回る。
救いは財務の厚さである。時価総額の4割近い純現金があり、赤字の年は過去20年にない。データセンター向けの受変電設備と防衛の追い風も実在する。ただ、現金のうち100億円ほどは運転資金に回らず余っているが、株主への戻り方は控えめだ。
中期経営計画は営業利益82億円を掲げる。前の計画で届かなかった数字なので、筆者は半分ほどしか織り込まない。安全域は現金の部分にしかない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安全だが増やすのが苦手な金庫」に近い。事業は長く続く。しかしROEは資本コストを少し上回るだけで、元手が稼ぐ力は弱い。
見たいのは3点だ。第一に、堀は自分のものか。答えは否で、仕入先の特約店契約に乗っている。第二に、稼いだ利益が株主のものになる割合。商社は在庫と売掛金に資金を取られ、成長するほど運転資金が要る。第三に、経営がお金をどう使うか。小口のM&Aは慎重で悪くないが、150億円の成長投資が失敗すれば価値は壊れる。
安全域は現金にある。手元の現金は時価総額の4割だが、運転資金分を除いた約100億円が「余り」だ。この分は、還元が控えめな間は満額の価値とは見ない。
オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、条件付きになる。三菱電機との関係が続き、現金を株主に返す姿勢がはっきりすれば、持ち続ける価値はある。今の値段は、そのいずれも織り込んで余りがある、というのが筆者の見立てだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は4つある。いちばん大きいのがFAシステムで、売上の4割弱を占める。三菱電機のシーケンサ、インバータ、サーボ、ロボットを工場に売り、制御盤や生産ラインの組み立ても請け負う。熊本の半導体工場など、省人化の投資が続く地域では技術者の手配が追いつかないほどだ。
次がインフラで、売上の4分の1強。鉄道会社向けの変電設備、防衛省や官公庁向けの電子機器、病院向けの放射線治療装置を扱う。2026年3月期は売上が35%伸び、利益は4倍になった。データセンター向けの受変電設備と変圧器の単価上昇が効いた。
そのほか、半導体・電子デバイスが2割強。インバータ向けのパワー半導体、工場向けのモジュール、空調機に載るWi-Fiモジュールを売る。利益率は柱の中で最も高い。ビル設備は昇降機や空調、映像管理システムで、売上の1割強、利益はほとんど出ない。
共通するのは、メーカーの機器をそのまま流すだけでなく、設計や組み立て、保守まで付けて売ることだ。この「付加価値」でどこまで粗利を確保できるかが、この会社の勝負になる。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、堅実さにある。派手な高収益ではない。営業利益率は過去10年で2.5〜3.9%の間に収まり、赤字の年はない。ROEは4%台から8%台で動き、中央値は7%台。資本コストをわずかに下回る水準だ。
堀、つまり他社がまねできない強みは、三菱電機の特約店という地位にある。長い取引で顧客の設備に入り込み、保守まで握る。ただし、この堀は自分のものではない。仕入先のものだ。三菱電機が販売網を組み替えれば、地位は一夜で変わる。仕入の54%を一社に頼る点を、筆者はいちばん重く見る。
財務は強い。自己資本比率は52%、借金はほぼない。ただし商社の現金は、仕入先への支払いと客先の入金の間の運転資金も兼ねる。見かけの現金がそのまま余りではない。
経営は慎重だ。M&Aは小口にとどめ、前の中期計画ではROEの目標を1年前倒しで達成した。一方、営業利益と利益率の目標は届かなかった。コストは管理できるが、売る力はこれからという印象を筆者は持つ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カナデンの市場は一つではない。国内の工場の自動化、ビル設備、鉄道・防衛・医療のインフラ、電子デバイスの4つで、それぞれ別の波に乗る。
FAは今、データセンターの受変電設備と省人化投資で好調だ。国内の製造業は人手不足が深刻で、自動化の需要は構造的に続く。ただし人口は減るので、国内の数量は大きくは伸びない。筆者は10年で1割強とみる。
インフラは公共の予算と鉄道会社の更新投資が土台だ。防衛費の増額と、老朽化した鉄道設備の更新が数量を支える。利益率が低い分野なので、案件の取り方で結果が大きく変わる。
半導体・デバイスは、世界の半導体市場が構造的に伸びる前提のもと、国内のFA・空調向けの需要も底堅い。業界はリョーサン菱洋の統合など再編が進み、立花エレテックや加賀電子、東京エレクトロンデバイスと競り合う。同じ三菱電機系の立花エレテックとは、FAとデバイスの二本立ても顧客層も近い。メーカーが取扱商社を絞る動きは、カナデンにとって守りと攻めの両面がある。商社の数が減れば、残った特約店に商流が集まる。選ばれる側に立てるかどうかが、10年の分かれ目になる。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから攻めへ変わる途中にある。手元の現金は239億円で、自己資本比率は52%と厚い。新しい中期経営計画は、3年で約440億円のお金を生み、150億円を成長投資に、100億円を還元に充てる。成長投資の中心はM&Aで、技術力の獲得が狙いだ。
還元は強まる方向だ。配当指標を連結配当性向40%から、自己資本に対する配当率(DOE)4.5%に切り替え、累進配当を続ける。2027年3月期の配当は前期より大幅に増える予定だ。自社株買いは前の計画で実施したが、新しい計画に具体策は見えない。
政策保有株は上場29銘柄で41億円と小さい。縮減する方針で、毎年少しずつ売っている。
三菱電機が議決権の21%を持つ筆頭株主で、買収される側になる可能性は消せない。会社の統計では、10年以内に買収される確率は18.5%とされる。三菱電機が完全子会社にするなら、プレミアムが乗る上振れの筋書きだが、具体的な観測は確認できていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受変電設備と防衛という、他の商社にはない追い風がある。データセンターは国内でも建設が続き、変圧器は省エネ基準の強化で単価が上がった。インフラ部門は売上が35%増え、利益は4倍に跳ねた。ここまで来れば一過性ではなく、事業の中身が変わり始めたとみるべきだ。
新しい中期経営計画は営業利益82億円、ROE10%以上を掲げ、高収益化を最優先に置く。付加価値の高い提案型の仕事に重心を移せば、利益率は5%に届く。半導体・デバイスはパワー半導体が伸び、中国市場の回復も始まった。
手元の現金は239億円と厚く、150億円をM&Aに振り向ければ技術の幅が広がる。三菱電機が2割を持つ安定株主であり、買収される場合はプレミアムの可能性もある。累進配当で配当も増える。中計どおりに進めば、10年後の利益は今の2倍に近づく。三菱電機の製品の強さと、顧客の設備に入り込んだ保守の関係は、10年たっても簡単には崩れない。
同業の再編が進むほど、販売網の中で信頼される特約店には商流が集まる。国内最大級の三菱電機系商社として、その受け皿になれる位置にいる。さらに、AIの活用で提案や問い合わせの対応が省力化できれば、人を増やさずに売上を伸ばせ、利益率の改善にもつながる。
慎重な見方
薄利の流通業という本質は変わらない。営業利益率は10年間2.5〜3.9%で、一度も4%に届かない。中計の5%目標は、前の計画で届かなかった数字の焼き直しだ。
仕入の54%を三菱電機に頼る構造は、価格交渉の力を持たないことを意味する。同社が販売網を組み替えて直販を増やせば、取り分は削られる。受変電や防衛の大型案件は、いつまでも続かない。インフラは利益率が2%に届かない分野で、案件を落とせば数字は一気に崩れる。
現金239億円の大半は運転資金で、余りは多くない。還元は配当が中心で、残りはM&Aの枠に積んである。買収が成功する保証はなく、150億円を失敗すれば、現金の安全域も縮む。ROEは過去10年の中央値で7%台。資本コストを下回る会社に、高い倍率を払う理由はない。人口が減る国内の工場とビルが主戦場で、数量の伸びにも限りがある。
過去10年を見ても、売上は年2%ほどしか伸びていない。利益が増えたのは、コストを抑えた結果であり、売上の力強さではない。受変電の好調も、大型案件が重なった一時の波である可能性が高い。営業利益率が上限を超えて定着するかは、まだ誰にもわからない。
どちらに重みを置いたか
どちらにも一理あるが、筆者は慎重な見方が一段強いと考える。追い風は実在するが、営業利益率が過去10年の上限を超えて定着する証拠はまだない。仕入先への依存は構造の問題で、好調な時期ほど目立たなくなる。
そこで確率は中立を厚く置き、やや悲観と悲観をあわせて35%とした。三菱電機が特約店を整理する筋書きは、同じ三菱電機系の立花エレテックに近い13%を置いた。一方で、現金が厚く赤字の年もないため、悲観の価値は純現金までは割れない。楽観は中計の達成を前提にして22%、さらに上の筋書きは8%に絞った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,554 円1,015 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,208 円269 億円)。 今の値に割り戻すと 2,991 円667 億円、今との差 +13.3%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,833 円1,969 億円 | 1,884 円420 億円 | +306.1% | +15.0% | 857 円191 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,811 円1,518 億円 | 1,516 円338 億円 | +215.6% | +12.2% | 1,832 円408 億円 |
| 中立 | 35% | 4,998 円1,114 億円 | 1,234 円275 億円 | +136.1% | +9.0% | 2,181 円486 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,986 円443 億円 | 1,009 円225 億円 | +13.5% | +1.3% | 659 円147 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,253 円279 億円 | 538 円120 億円 | −32.1% | −3.8% | 233 円52 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,554 円1,015 億円 | 1,208 円269 億円 | +118.4% | +8.1% | 5,762 円1,285 億円 |
今の株価時価総額 2,639 円588 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% DC受変電と防衛・半導体が重なり、中計を超えて伸びる 利益 112 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 8,833 円1,969 億円
国内のデータセンター向け受変電設備と工場の省人化投資が長く続く。FAシステムは数量が1.45倍に伸び、営業利益率は5%台に乗る。インフラは防衛・官公庁と鉄道のリニューアルが重なって1.5倍になり、半導体・デバイスもパワー半導体とWi-Fiモジュールで1.7倍に伸びる。
技術商社としての提案力が評価され、三菱電機の販売網の中で取り分が広がる。新中計が掲げる営業利益82億円は通過点になり、10年後は140億円を超える。
手元の現金は成長投資に回り、小口のM&Aで技術力を買い足す。配当は累進で増え、自己資本の積み上がりも抑えられる。
- FAシステム:数量 79,663(国内FA関連の機器・システム市場(億円・実質)× カナデンの取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00とする。物価と値上げを反映。売上=数量×価格×0.01))→ 売上 1,067 億円・営業利益 56 億円。国内FA関連市場の数量1.45倍・取り分横ばい・営業利益率5.2%
- ビル設備:数量 20,163(国内ビル設備市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 270 億円・営業利益 7 億円。数量1.1倍・営業利益率2.5%
- 社会インフラ:数量 58,612(国内インフラ関連の対象市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 785 億円・営業利益 30 億円。防衛・医療・鉄道更新で数量1.5倍・営業利益率3.8%
- 半導体・デバイス(情通を含む):数量 56,562(国内の半導体・電子デバイス流通市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 758 億円・営業利益 57 億円。パワー半導体・モジュールで数量1.7倍・営業利益率7.5%
倍率:事業の純利益 111 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 16.9 倍、時価総額 1,969 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:三菱電機の商流の伸びに、防衛・医療・半導体の追い風が10年続く必要がある。営業利益率が過去最高の倍近くになる筋書きで、条件が重なるため低く置いた。
やや楽観 22% 中計をほぼ達成し、省人化とインフラ更新で着実に伸びる 利益 91 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 6,811 円1,518 億円
中計の4事業が計画どおりに働き、数量は10年で3割ほど伸びる。FAシステムは省人化投資と受変電設備、インフラは防衛と鉄道更新、半導体・デバイスはインバータ向けのパワー半導体が支える。
営業利益率は4%台の後半まで上がる。三菱電機の取引条件は変わらず、ソリューション提案の比率が高まることで粗利が積み上がる。
余った現金は小口のM&Aと還元に分かれて使われ、自己資本はゆっくり増える。中計の高収益化は、計画の8割ほどの進み具合で10年に向かう。
三菱電機との関係は安定し、特約店としての取引条件も変わらない。半導体・デバイスの利益が全体の下支えになり、インフラは大型案件の山谷をならして育つ。
- FAシステム:数量 71,422(国内FA関連の機器・システム市場(億円・実質)× カナデンの取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00とする。物価と値上げを反映。売上=数量×価格×0.01))→ 売上 957 億円・営業利益 44 億円。数量1.3倍・営業利益率4.6%
- ビル設備:数量 19,246(国内ビル設備市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 258 億円・営業利益 6 億円。数量1.05倍・営業利益率2.2%
- 社会インフラ:数量 50,798(国内インフラ関連の対象市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 681 億円・営業利益 23 億円。数量1.3倍・営業利益率3.3%
- 半導体・デバイス(情通を含む):数量 51,572(国内の半導体・電子デバイス流通市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 691 億円・営業利益 48 億円。数量1.55倍・営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 15.83 倍、時価総額 1,518 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新中計の目標(営業利益82億円・利益率5%)に近い形で、前中計では営業利益が届かなかった実績を考えると半分を少し下回る確率に置いた。
中立 35% 国内は成熟、名目で普通に伸び、取り分は今のまま 利益 71 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 4,998 円1,114 億円
国内の工場とビルと鉄道は人口減で数量が伸びにくいが、省人化・データセンター・防衛の上乗せで10年に15%ほど増える。物価の分は価格で1.34倍になり、売上は2,300億円前後になる。
営業利益率は4%強で、新中計の5%には届かない。三菱電機の特約店としての取り分は今のまま保たれ、特別な超過成長は起きない。
10年の純利益は今の7割増。堅実で安定した、薄利の技術商社のままだ。現金は運転資金とM&Aに使われ、配当は累進で緩やかに増える。大きく崩れることもなく、大きく跳ねることもない。
三菱電機との関係は今のまま続き、半導体・デバイスの安定した利益が全体を支える。
- FAシステム:数量 63,181(国内FA関連の機器・システム市場(億円・実質)× カナデンの取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00とする。物価と値上げを反映。売上=数量×価格×0.01))→ 売上 847 億円・営業利益 36 億円。数量1.15倍・営業利益率4.2%
- ビル設備:数量 18,330(国内ビル設備市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 246 億円・営業利益 5 億円。数量横ばい・営業利益率2.0%
- 社会インフラ:数量 44,936(国内インフラ関連の対象市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 602 億円・営業利益 18 億円。数量1.15倍・営業利益率3.0%
- 半導体・デバイス(情通を含む):数量 44,917(国内の半導体・電子デバイス流通市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 602 億円・営業利益 39 億円。数量1.35倍・営業利益率6.5%
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)100 億円。全体の PER 14.57 倍、時価総額 1,114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の営業利益率(2.5〜3.9%)と国内市場の成熟、新中計の数字を半分ほど信じる形をあわせた中心の筋書き。
やや悲観 22% 三菱電機の商流の見直しとDC・防衛の一服で取り分が削られる 利益 43 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 1,986 円443 億円
三菱電機が大口顧客への直接販売を広げ、特約店に回る商流が少しずつ細る。データセンター向けと防衛の大型案件も一巡し、数量は10年で横ばいか微減になる。
FAシステムの営業利益率は3%台前半に戻り、ビル設備は1%台に沈む。半導体・デバイスは競合商社との値引き競争で利益率が5%まで下がる。
事業は続き、配当も出す。ただ、成長を前提にした期待は外れ、普通の小さな技術商社として評価される。配当は減らさない方針を保ち、現金の厚さが下値を支えるが、株主に戻る額は中立より3割ほど少なくなる。
三菱電機との関係は続くものの、特約店の取り分が少しずつ他社や直販に流れる。人の手当てが追いつかず、受注を取り逃がす場面も増える。
- FAシステム:数量 52,193(国内FA関連の機器・システム市場(億円・実質)× カナデンの取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00とする。物価と値上げを反映。売上=数量×価格×0.01))→ 売上 699 億円・営業利益 22 億円。数量0.95倍・営業利益率3.2%
- ビル設備:数量 16,497(国内ビル設備市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 221 億円・営業利益 3 億円。数量0.9倍・営業利益率1.2%
- 社会インフラ:数量 39,075(国内インフラ関連の対象市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 524 億円・営業利益 11 億円。数量横ばい・営業利益率2.0%
- 半導体・デバイス(情通を含む):数量 34,936(国内の半導体・電子デバイス流通市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 468 億円・営業利益 23 億円。数量1.05倍・営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益約42億円・事業 ROE 約6.2% は k 7.75% 以下なので、上限は 1÷k=11.8倍。取り分が削られ資本効率も落ちるため、上限の約7割の8.3倍に置いた。余った現金は谷で食う前提で今の0.75倍、戻り方0.5で足した。
確率:三菱電機が販売網を整理する動きと、好調な受変電・防衛案件の反動が10年のどこかで重なる可能性は低くない。前中計で利益目標に届かなかった実績も考慮して厚めに置いた。
悲観 13% 三菱電機の販売網から取り分を大きく失い、商権の核が細る 利益 18 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,253 円279 億円
三菱電機が特約店の数を絞り、直販とプラットフォーム経由を本格化させる。カナデンは主力のFA機器とビル設備の取り分を大きく失い、数量は3割前後減る。
インフラは大型案件が減り、半導体・デバイスも商流を失って営業利益率が3%に落ちる。営業利益は20億円台で、事業を支えるのは固定費の圧縮だけになる。
手元の現金と保有株の売却益で配当は続けるが、稼ぐ力は大きく落ちる。自己資本の厚さが唯一の安全弁になる。10年かけて静かに進む事業の縮小は、決算の数字に表れたときにはすでに手遅れだ。
三菱電機との関係は続くが、取引の中身は薄くなる。半導体・デバイスの利益でも穴は埋められず、大型案件の山も戻らない。
- FAシステム:数量 38,458(国内FA関連の機器・システム市場(億円・実質)× カナデンの取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00とする。物価と値上げを反映。売上=数量×価格×0.01))→ 売上 515 億円・営業利益 9 億円。数量0.7倍・営業利益率1.8%
- ビル設備:数量 14,664(国内ビル設備市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 196 億円・営業利益 1 億円。数量0.8倍・営業利益率0.5%
- 社会インフラ:数量 33,214(国内インフラ関連の対象市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 445 億円・営業利益 5 億円。数量0.85倍・営業利益率1.2%
- 半導体・デバイス(情通を含む):数量 26,618(国内の半導体・電子デバイス流通市場(億円・実質)× 取扱シェア(%))× 価格 1.34(値段の指数(今を1.00))→ 売上 357 億円・営業利益 11 億円。数量0.8倍・営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益18億円・ROE 約2.7% は k 7.75% よりかなり低い。稼ぐ力(純利益÷k)は約200億円で、純現金と売れる資産の税後(約268億円)のほうが大きいため、今の自己資本509億円に0.549倍を掛けて置いた(約255億円)。
確率:仕入の5割強を三菱電機に頼る構造で、販売網の再編は一度進むと戻りにくい。同じ三菱電機系の立花エレテックと同じ水準に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
FAシステム
三菱電機のFA機器と、制御盤・システムの組み立て・据え付け。国内の工場の自動化・省人化向けで、データセンター向け受変電設備も扱う。
| 数量国内FA関連の機器・システム市場(億円・実質)× カナデンの取扱シェア(%) | 価格値段の指数(今を1.00とする。物価と値上げを反映。売上=数量×価格×0.01) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 54,940 | 1.00 | 549 | 22 |
| 10 年後 中立 | 63,181 | 1.34 | 847 | 36 |
取り方:国内のFA関連の機器・システム市場を約4兆円(推定)とし、売上549億円をその約1.4%のシェアとした。数量は市場×シェア、営業利益は経常利益(セグメント)22億円を置いた。市場の大きさは公開統計がなく推定。
ビル設備
昇降機・空調・映像管理システムなど、ビル向け設備の販売と工事。
| 数量国内ビル設備市場(億円・実質)× 取扱シェア(%) | 価格値段の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18,330 | 1.00 | 183 | 3 |
| 10 年後 中立 | 18,330 | 1.34 | 246 | 5 |
取り方:国内のビル向け昇降機・空調・管理システム設備の市場を約3兆円(推定)とし、売上183億円を約0.6%のシェアとした。営業利益はセグメント経常利益3億円。
社会インフラ
鉄道の変電設備、防衛・官公庁向け電子機器、医療用の放射線治療装置。
| 数量国内インフラ関連の対象市場(億円・実質)× 取扱シェア(%) | 価格値段の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 39,080 | 1.00 | 391 | 8 |
| 10 年後 中立 | 44,936 | 1.34 | 602 | 18 |
取り方:鉄道・防衛・官公庁・医療の対象市場を約2.5兆円(推定)とし、売上391億円を約1.6%のシェアとした。営業利益はセグメント経常利益8億円(7.7億円)。
半導体・デバイス(情通を含む)
パワー半導体、工場向けモジュール、Wi-Fiモジュール、情報通信機器。
| 数量国内の半導体・電子デバイス流通市場(億円・実質)× 取扱シェア(%) | 価格値段の指数(今を1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33,270 | 1.00 | 333 | 22 |
| 10 年後 中立 | 44,917 | 1.34 | 602 | 39 |
取り方:国内の半導体・電子デバイス流通市場を約4兆円(推定)とし、売上333億円を約0.83%のシェアとした。世界の半導体市場の伸びの一部が国内に波及する前提で、数量の伸びを置いた。営業利益はセグメント経常利益22億円(21.5億円)。
リスクと懸念
三菱電機への仕入先集中
仕入の54.2%を三菱電機に頼り、同社が議決権の21%を持つ。特約店契約が変わる、直販やプラットフォーム経由の販売が増える、といった動きがあれば、取り分は仕入先の判断で決まる。堀が自分のものではない点がこの会社の最大の弱みだ。
薄利で利益が案件に左右される
営業利益率は4%に届かない。インフラは利益率が1〜2%台で、大型案件の取り方一つで通期の利益が動く。受変電や防衛は今は追い風だが、反動減も大きい。
中期計画の目標が高い
新しい計画は2028年度に営業利益82億円、利益率5%を掲げる。前の計画では営業利益も利益率も届かなかった。届かなければ、増配や成長投資への期待が剥げる。
運転資金と、見かけの現金の厚さ
現金239億円は仕入先への支払いと客先の入金の時間差を埋める役割も持つ。受注が急に増えると、現金は先に出ていく。余りの現金は見かけほど多くない。
M&A(成長投資)の失敗
3年で150億円を成長投資に充てる計画で、技術力の獲得を狙う。小口で慎重なやり方を続ける限り傷は浅いが、規模が大きくなれば価値を壊しうる。資金調達も視野に入る点が不安だ。
国内の人口減と中国向けの変動
国内の工場・ビル・鉄道は人口減で数量が伸びにくい。半導体・FA機器は中国の景況と在庫調整に左右され、2025年にも悪化した。数量の伸びは省人化と海外需要の上乗せに頼る。
同業の再編と競争
リョーサン菱洋の統合など、半導体商社の再編が進む。立花エレテックなど三菱電機系の同業とも商流が重なる。取扱商社が絞られれば、競り負けた側の取り分は一気に失われる。
今後の分かれ目
- 三菱電機が特約店の数を絞る、または直販を本格化させたら
- 取り分が削られるやや悲観から悲観の筋書きに重みを移す。仕入の依存度と契約の更新条件を最優先で確認する。
- 営業利益率が4%を超えて2期以上続いたら
- 中計の5%が現実味を帯びる。中立から、楽観寄りの筋書きに重みを移してよい。
- 自社株買いが現金の余りを使って大規模に実施されたら
- 戻り方の想定を引き上げられる。余った現金の価値が満額に近づく。
- 規模の大きいM&A(数十億円規模以上)が発表されたら
- 買収先の利益率と価格を見て、価値を壊すかどうかを判断する。技術力の獲得なら、成長の上乗せを検討する。
- 三菱電機が完全子会社化など、株の取得を提案したら
- プレミアムが乗る上振れ。ただし仕入先の支配下で価値が決まる点は変わらない。
- データセンター向けの受変電設備・防衛の案件が前年比で減ったら
- インフラの利益率が落ちる。やや悲観の筋書きが近づいていると見て、受注残を確認する。
見ておくもの
- 営業利益率(4%を超えて定着するか)
- FAシステム・インフラの受注残
- 三菱電機の販売網の見直し・直販化の動き
- 自社株買いの実施と、純現金の水準
- 小口M&Aの規模と買収先の利益率
- 中国・国内のFA・半導体需要の回復
倍率と資本コストの決め方
国内4市場の規模に取り分(シェア)を掛けて数量を置き、物価3%は価格の側に入れた。市場規模は推定で、同業の立花エレテックの確率と資本コストにそろえ、三菱電機への依存度の違い(カナデンは仕入の5割強)だけで調整した。倍率は資本コスト7.75%、事業ROE、堀は普通の1/2から正当化PERを出し、中立は1÷kの下限に置いた。今の株価には寄せていない。余った現金は戻り方0.5で別に足した。新リース会計基準でBSの形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→16.9 倍・やや楽観 PER 12.3→15.83 倍・中立 PER 11.8→14.57 倍・悲観 PBR 0.5→0.549 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。