結論
OUGホールディングスは、魚の流通を担う水産卸の持株会社だ。大阪などの卸売市場で魚を売る荷受のうおいちと、冷凍エビなどを市場の外で売るショクリューが二本柱で、売上の大半を占める。筆者の結論は「ほぼ適正」である。本質価値は、今の時価総額を 1 割弱上回る程度とみる。
稼ぎ方は薄利多売だ。2026 年 3 月期は売上 3,637 億円に対し営業利益 63 億円、利益率は 1.7% にすぎない。しかも増益の主因は養殖ブリで、本業の荷受と市場外は 2 期続けて減益だった。
養殖は魚の相場が高い年は大きく稼ぎ、安い年は赤字になる。今期の 21 億円の黒字は、そのまま続く水準ではない。会社自身も来期は営業利益 46 億円と、大きく減る計画を出している。
10 年後の中立は、営業利益 53 億円ほどだ。魚の消費量は人口とともに細り、物価の分だけ売上が増えても、利益は今より小さい。強気なら 97 億円、慎重なら 34 億円になる。
倍率は 9 倍台にとどまる。自己資本の稼ぐ力が資本コストを下回るからだ。いま PER が 5 倍に届かないのは、利益が特別に大きい年だからで、安さの証拠とは言い切れない。筆者が見るのは、薄い利益率が守れるかと、荷受という仕組みが先細るかどうかの 2 点である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「長く持ちたい事業」ではない。利益率が 1% 台で、堀が浅く、市場の仕組みそのものが先細る恐れがあるからだ。持つなら、価格が事業の実力よりかなり安い時に限る。
見るべきは、今の利益が何で出ているかだ。荷受と市場外の営業利益は合計で 41 億円、養殖が 21 億円。養殖は相場に任せた賭けに近く、買った値段に見合う安全域は、本業だけで測るべきだと筆者は考える。
本業の実力は、過去 10 年の純利益の中央値(十数億円)に近い。ここに物価の伸びが乗っても、人口減で数量が削れ、10 年後の営業利益は今の 63 億円に届かない。
資本の使い方は悪くない。DOE の引き上げ、不採算の整理、政策保有株の縮減は、少数株主に向いた動きだ。ただ、稼ぐ力が資本コストに届かない限り、積み上がる自己資本は価値を生まない。
結論として、今の値段は、特別に膨らんだ利益に対しては割安に見え、10 年の実力に対しては適正に近い。安全域はあまり大きくない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 2 つある。荷受事業は、産地や輸入業者から魚を預かり、市場で仲卸や小売に売る仕事だ。売上は 2,212 億円で、全体の 6 割を占める。中身は大阪魚市場・和歌山魚類・滋賀県魚市場が 2007 年に合併してできたうおいちで、近畿が地盤になる。
荷受は魚の相場が上がっても下がっても、手数料と薄い差益で稼ぐ。利益率は 1% 台前半だ。もう 1 つの市場外事業は、ショクリューが冷凍エビなどを輸入し、全国 30 数か所の拠点から量販店・外食・ホテルに直接売る。売上は 1,433 億円で、利益率は同じく 1% 前後になる。2025 年にはタイゲンを吸収して、重なる事業を整理した。
養殖事業は兵殖が営み、九州・四国の海でブリ・ハマチ・マグロを育てる。売上は 116 億円と小さいが、今期は営業利益が 21 億円と、全社の 3 分の 1 を稼いだ。前期は 4.5 億円の赤字だった。ブリの相場が大きく振れる事業で、餌の高止まりと高水温による斃死も重なる。
残りは食品加工・物流・リースなどで、合わせても売上の 3% ほどだ。冷凍マグロ加工のツナクラフトワークスを取り込み、タイにも拠点を持つ。従業員は連結で 1,301 人、持株会社の本体は 29 人しかいない。
会社の中計は「鮮魚の強化、グループ連携、関東の深耕、海外、サステナブル」の 5 本柱だ。関東では市場の取引から物流を切り離す商物分離型の営業を広げ、国内の取引先を増やす狙いがある。
優良さと弱いところ
この会社の質は、堀が浅い薄利の流通業という一言に尽きる。魚を右から左に流すだけなら、誰でもできる。取引先の量販店や外食には値段を決める力があり、卸は規模と物流と目利きで選ばれ続けるしかない。
強みは、全国に張った販売網と、魚種の目利き、産地との長い付き合いだ。荷受は産地から魚を集める力が命で、これは一朝一夕には作れない。市場外事業の冷凍エビも、輸入の手配と在庫の持ち方で差がつく。養殖までグループに持つ水産会社は少ない。
弱みは 3 つある。第 1 に利益率が 1% 台と薄く、少しの値崩れや在庫の損で消える。第 2 に魚の消費量そのものが細っている。1 人あたりの魚介の供給量は、長い目で見て 3 割ほど減った。第 3 に、2020 年の卸売市場法の改正で、市場を通さない直接取引が自由になった。荷受という役割は、少しずつ必要とされなくなる恐れがある。
資本の効率は、今期の ROE が 13% と高いが、これは養殖の大きな黒字が効いた一時的な姿だ。過去 10 年の中央値は 7.9% で、資本コストを下回る年が多い。会社の中計の目標は ROE 8% と控えめで、筆者はこちらが実力に近いとみる。
経営は堅実だ。不採算の拠点を閉じ、関空トレーディングとモトイを清算し、政策保有株も減らしている。ただ、成長投資の買収は小粒で、大きく化ける事業は見当たらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
水産卸の市場は、数量が細り、値段が上がる構図にある。人口が減り、魚離れも進んでいる。1 人あたりの魚介の供給量は 37.5 キロから 25.8 キロへ、長い目で減った。一方で漁獲は減り、輸入は円安と世界の需要で高くなっている。この結果、魚の値段だけが上がり、量は減る。卸にとっては、売上は増えても数量の土台が痩せる環境だ。
卸売市場の役割も変わっている。水産物のうち市場を通るのは 5 割弱で、割合は下がり続けている。2020 年の改正卸売市場法は、第三者への販売や直荷引きの禁止をやめた。量販店や外食が産地と直接結ぶことが容易になり、荷受の存在意義が問われている。
競合は市場ごとに違う。豊洲では中央魚類・東都水産・大都魚類・築地魚市場の 4 社が荷受で、水産最大手のマルハニチロが大都魚類を完全子会社にした。川上のメーカー系が荷受を取り込む動きは、独立系の荷受には厳しい。OUG は近畿に強く、東京の巨大市場の外で粘る形になる。
市場外では、商社や水産メーカー、量販店のPB調達が相手だ。冷凍エビは価格が世界相場で決まり、卸の利鞘は薄い。人件費と物流費の上昇も、利益率を押し下げる。2026 年 3 月期は、荷受と市場外の営業利益がともに減った。
循環の位置としては、魚の値段が高止まりしている。需要が高値疲れに入ると、量が落ち、在庫の評価損も出やすい。養殖ブリも末端で高値疲れが見え、単価は下がり気味だ。今の高い利益は、循環の山に近い。
資本政策と M&A
還元は割安感を支える柱だ。会社は配当を、利益の割合でなく自己資本の 2.4% を目安にする方式(DOE)にした。以前は 1.6% だった。利益が落ちる年でも配当が減りにくい一方、自己資本が増えれば配当も増える。配当の総額は年 10 億円ほどだ。自社株買いの開示は、今は見当たらない。
株主優待もある。500 株以上で、保有が 3 年未満なら 7 千円相当、3 年以上なら 1.5 万円相当の水産品を贈る(2026 年 9 月の基準日から)。額は小さく、年間の費用は 1 億円に届かないとみる。
政策保有株は、上場分で 72 億円ある。Umios が 37 億円、三菱 UFJ が 13 億円を占める。会社は縮減の方針を掲げ、保有は 2 銘柄減った。含み益は税引きで 7 割ほどが、悲観の床の一部になる。
借入金は 223 億円で、1 年で 22 億円減った。純有利子負債は 209 億円と、時価総額に近い。金利が上がると、借り換えで年 5 億円ほど利払いが増える。
買収は小粒だ。冷凍マグロ加工の取得、タイゲンの吸収、拠点の整理が中心だ。TOB(株式公開買い付け)の可能性は、時価総額が 234 億円と小さく、PBR が 1 倍を割っているので、ゼロではない。ただ、大株主の構成は確認できなかったので、筋書きには織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
荷受と市場外の足場は固い。産地との信頼、全国 30 数か所の拠点、魚種の目利きは、数年では作れない。魚の値段は物価以上に上がる局面が続く見込みで、売上は名目で自然に伸びる。
関東の深耕が当たれば、数量は減るどころか増える。商物分離型の営業で、市場の外でも売れる体制を作れば、荷受の弱みを補える。中計の目標は 2 年目でほぼ超えており、経営の達成力はある。
養殖は投資の回収期に入った。陸上養殖の協定、ブリのブランド化、マグロの拡大で、利益の波を小さくできる。養殖が 10 年を通して安定して 20 億円規模を稼げば、全社の営業利益は 100 億円近くに届く。
財務も改善している。借入金は 1 年で 22 億円減り、DOE は 2.4% に上がった。自己資本が増えるほど配当が増える方式なので、株主還元は自動的に厚くなる。
今の時価総額は 234 億円と、直近の純利益の 4 倍台にすぎない。利益が半分に落ちても倍率は 8 倍台で収まり、下値は限られる。養殖と関東が当たる側に賭ける理由は十分にある。
慎重な見方
今の利益は山である。営業利益 63 億円のうち、21 億円は養殖ブリの高値による。ブリは高値疲れが見え始め、会社自身も来期は営業利益 46 億円と減益を見込む。荷受と市場外は、すでに 2 期続けて減益だ。
市場の外へ魚が流れる構造は変わらない。市場法の改正で、量販店は産地と直接結べる。荷受は、仲介の必要性を問われ続ける。豊洲では水産最大手のマルハニチロが荷受を子会社にしており、独立系の立場は厳しくなる。
人口が減るので、魚の数量は実質で減り続ける。1 人あたりの供給量は長い目で見て 3 割減った。売上が物価で増えても、薄い利益率のまま人件費と物流費が上がれば、利益は削られる。
借金は 223 億円ある。借り換えで金利が 3.5% になれば、利払いは年 5 億円ほど増える。利益率が 1% 台の会社には重い。
資本の稼ぐ力も弱い。過去 10 年の ROE の中央値は 7.9% で、資本コストに届かない。自己資本が増えても、価値が増えるとは限らない。今の ROE 13% は、養殖の山が作った見かけの数字である。
どちらに重みを置いたか
双方の言い分に理があるが、筆者は慎重な側に少し確率を寄せた。強気の根拠である関東の深耕と養殖の安定は、数字で示された実績がまだ薄い。慎重な側の根拠である市場外流通の拡大と人口減は、すでに数字に出ている。
中立を 38% と最も厚くし、やや悲観を 25%、悲観を 10% に置いた。強気側は、やや楽観 20%、楽観 7% とした。薄利の流通業は、良い筋書きが長く続くことより、悪い年が混じることの方が現実的だからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,642 円466 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,653 円143 億円)。 今の値に割り戻すと 5,587 円302 億円、今との差 +29.9%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 18,589 円1,003 億円 | 4,095 円221 億円 | +427.5% | +18.1% | 1,588 円86 億円 |
| やや楽観 | 20% | 12,230 円660 億円 | 3,076 円166 億円 | +256.0% | +13.5% | 3,061 円165 億円 |
| 中立 | 38% | 9,458 円510 億円 | 2,594 円140 億円 | +180.3% | +10.9% | 4,580 円247 億円 |
| やや悲観 | 25% | 4,651 円251 億円 | 2,409 円130 億円 | +64.2% | +5.1% | 1,765 円95 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,380 円75 億円 | 1,630 円88 億円 | −30.0% | −3.5% | 301 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,642 円466 億円 | 2,653 円143 億円 | +162.7% | +10.1% | 11,295 円610 億円 |
今の株価時価総額 4,300 円232 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 関東で商物分離の営業が実を結び、国内の取引先が広がる 利益 76 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 18,589 円1,003 億円
関東の深耕が実を結び、荷受の取扱量は人口減を跳ね返す。市場の外でも売る体制が広がり、量販店との直接取引も取り込む。荷受の数量は今の 9 割を保つ。
市場外はエビの調達力と外食向けの拡大で数量が 1 割増える。養殖は陸上養殖とブランド化が当たり、出荷量が 4 割増える。ブリの相場は高止まりし、営業利益率は 10% に乗る。
営業利益は 97 億円と今の 5 割増しになる。物価の分の値上がりを転嫁できた結果で、利益率は荷受で 1.35% だ。借金は減り、DOE の引き上げも続く。
中計の目標を毎期超えてきた達成力が、10 年続く姿である。ただし、養殖の高利益を 10 年続けるには、相場の外れを避け続ける必要がある。
- 水産物荷受事業(うおいち):数量 17.7(荷受の取扱数量(万トン))× 価格 1,587(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 2,809 億円・営業利益 38 億円。荷受:数量 17.701、売値 1587.0、利益率 1.35%
- 市場外水産物卸売事業(ショクリュー):数量 12.1(市場外の取扱数量(万トン))× 価格 1,794(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 2,175 億円・営業利益 33 億円。市場外:数量 12.122、売値 1794.0、利益率 1.50%
- 養殖事業(兵殖):数量 1.2(養殖の出荷量(万トン))× 価格 1,876(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 218 億円・営業利益 22 億円。養殖:数量 1.162、売値 1876.0、利益率 10.00%
- 食品加工事業:数量 1.2(加工品の販売量(万トン))× 価格 938(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 111 億円・営業利益 3 億円。食品加工:数量 1.188、売値 938.0、利益率 3.00%
- 物流事業:数量 2.5(物流の取扱量(万トン))× 価格 134(1 キロあたりの手数料(円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。物流:数量 2.509、売値 134.0、利益率 4.00%
- その他(リース・小売など):数量 0.4(その他の取扱数量(万トン))× 価格 1,340(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。その他:数量 0.35、売値 1340.0、利益率 2.00%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.98 倍、時価総額 986 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:7%。関東の深耕・養殖の安定・海外の拡大が、10 年を通じて外れずに続く必要があり、薄利の流通業では確率を低く置く。
やや楽観 20% 計画どおり関東と養殖が育ち、利益率が少し上がる 利益 53 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 12,230 円660 億円
荷受は数量が 14% 減るが、関東の深耕で減りは軽くて済む。物価の分は転嫁でき、価格は 1.36 倍になる。荷受の利益率は 1.15% まで戻る。
市場外は数量を保ち、エビと冷凍魚の調達で利益率が 1.3% に上がる。養殖は出荷が 2 割増えるが、ブリの相場は平均に戻り、営業利益率は 7.5% にとどまる。
営業利益は 71 億円で、今より 1 割ほど高い。人件費と物流費の上昇を値段に移せるかが分かれ目で、ここでは移せる。
借金は少しずつ減り、利払いの増加は 3 億円ほどで収まる。配当は DOE に沿って厚くなる。
- 水産物荷受事業(うおいち):数量 16.5(荷受の取扱数量(万トン))× 価格 1,564(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 2,588 億円・営業利益 30 億円。荷受:数量 16.546、売値 1564.0、利益率 1.15%
- 市場外水産物卸売事業(ショクリュー):数量 11.2(市場外の取扱数量(万トン))× 価格 1,768(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 1,987 億円・営業利益 26 億円。市場外:数量 11.24、売値 1768.0、利益率 1.30%
- 養殖事業(兵殖):数量 1.0(養殖の出荷量(万トン))× 価格 1,750(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 174 億円・営業利益 13 億円。養殖:数量 0.996、売値 1750.0、利益率 7.50%
- 食品加工事業:数量 0.9(加工品の販売量(万トン))× 価格 938(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 87 億円・営業利益 2 億円。食品加工:数量 0.924、売値 938.0、利益率 2.00%
- 物流事業:数量 2.2(物流の取扱量(万トン))× 価格 134(1 キロあたりの手数料(円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。物流:数量 2.219、売値 134.0、利益率 3.00%
- その他(リース・小売など):数量 0.3(その他の取扱数量(万トン))× 価格 1,340(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。その他:数量 0.315、売値 1340.0、利益率 1.00%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.78 倍、時価総額 624 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20%。会社の実績(中計の超過達成)に沿う姿で、強気と中立の間に置く。
中立 38% 量は細り、物価の分だけ売上が伸び、利益は今より小さい 利益 39 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 9,458 円510 億円
魚の量は、人口減と市場経由率の低下で 2 割弱細る。荷受の数量は今の 82%、市場外は 95% にとどまる。売値は物価並みに 1.34 倍になるが、利益率は荷受 1.0%、市場外 1.15% と、今より下がる。
養殖は出荷量が 5% 増えるが、ブリの相場は高値から平準に戻り、価格は 1.14 倍にとどまる。営業利益率は 5% で、利益は 7 億円になる。今期の 21 億円から大きく減る。
営業利益は 53 億円で、今の 63 億円より低い。物価の分だけ売上が伸びても、数量の減りと賃金・物流費の上昇で、実質の利益は細る。
借り換えで利払いは 3 億円ほど増え、純利益は 39 億円になる。配当は DOE 2.4% を軸に、自己資本とともに緩やかに増える。
- 水産物荷受事業(うおいち):数量 15.8(荷受の取扱数量(万トン))× 価格 1,541(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 2,431 億円・営業利益 24 億円。荷受:数量 15.777、売値 1541.0、利益率 1.00%
- 市場外水産物卸売事業(ショクリュー):数量 10.5(市場外の取扱数量(万トン))× 価格 1,742(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 1,824 億円・営業利益 21 億円。市場外:数量 10.469、売値 1742.0、利益率 1.15%
- 養殖事業(兵殖):数量 0.9(養殖の出荷量(万トン))× 価格 1,596(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 139 億円・営業利益 7 億円。養殖:数量 0.871、売値 1596.0、利益率 5.00%(ブリ相場が高値から平準に戻り、価格は物価並みより低い)
- 食品加工事業:数量 0.8(加工品の販売量(万トン))× 価格 938(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 1 億円。食品加工:数量 0.759、売値 938.0、利益率 1.50%
- 物流事業:数量 1.9(物流の取扱量(万トン))× 価格 134(1 キロあたりの手数料(円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。物流:数量 1.93、売値 134.0、利益率 2.50%
- その他(リース・小売など):数量 0.3(その他の取扱数量(万トン))× 価格 1,340(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。その他:数量 0.28、売値 1340.0、利益率 0.00%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 459 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:38%。人口減で数量が削れ、物価の分で売上は伸びる。利益は今の山より低い平準に戻る、10 年の中心の姿として最も厚く置いた。
やや悲観 25% 市場外流通と賃金・物流費の上昇に押され、利益率が 1% を割る 利益 24 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 4,651 円251 億円
量販店と外食が産地と直接結ぶ動きが広がり、荷受の数量は 26% 減る。市場外もエビの競争で数量が 12% 減り、値段は物価ほど上がらず 1.30 倍にとどまる。
荷受の利益率は 0.85%、市場外は 0.95% に下がる。養殖はブリの相場が下がり、利益率は 1% でほぼ収益を生まない。食品加工はとんとんで、その他は小さな赤字が続く。
営業利益は 34 億円で、今の半分強になる。金利が上がり、利払いも年 5 億円ほど増える。
配当は DOE の方針を守るが、利益の半分近くを占める。自己資本は伸びにくく、ROE は 4% 台に下がる。
- 水産物荷受事業(うおいち):数量 14.2(荷受の取扱数量(万トン))× 価格 1,495(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 2,129 億円・営業利益 18 億円。荷受:数量 14.238、売値 1495.0、利益率 0.85%
- 市場外水産物卸売事業(ショクリュー):数量 9.7(市場外の取扱数量(万トン))× 価格 1,690(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 1,639 億円・営業利益 16 億円。市場外:数量 9.698、売値 1690.0、利益率 0.95%
- 養殖事業(兵殖):数量 0.8(養殖の出荷量(万トン))× 価格 1,400(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 116 億円・営業利益 1 億円。養殖:数量 0.83、売値 1400.0、利益率 1.00%
- 食品加工事業:数量 0.7(加工品の販売量(万トン))× 価格 910(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 0 億円。食品加工:数量 0.66、売値 910.0、利益率 0.00%
- 物流事業:数量 1.8(物流の取扱量(万トン))× 価格 130(1 キロあたりの手数料(円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。物流:数量 1.833、売値 130.0、利益率 2.00%
- その他(リース・小売など):数量 0.2(その他の取扱数量(万トン))× 価格 1,300(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。その他:数量 0.245、売値 1300.0、利益率 -1.00%
倍率:事業の純利益 24 億円・ROE 約 4.3% は k 8.5% を大きく下回り、上限は 1÷k=11.8 倍。薄利で金利の重荷が残る筋書きなので、上限の約 7 割弱の 8.0 倍に置いた。
確率:25%。薄利の流通業が、コスト増と値下げ圧力を転嫁しきれない姿。借金を抱えるため、中立に近い厚みで置いた。
悲観 10% 荷受という仕組みが先細り、養殖の赤字と金利で行き詰まる 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,380 円75 億円
量販店と産地の直接取引が主流になり、荷受の数量は今の 6 割まで細る。利益率は 0.55% まで落ち、売上が残っても利益はほとんど出ない。市場外も数量が 25% 減り、利益率は 0.6% になる。
養殖はブリの相場が崩れ、斃死も重なって赤字が常態化する。出荷量は 1 割減り、価格は今を下回る。食品加工とその他も赤字だ。
営業利益は 8 億円まで細り、金利の上昇で利払いが重くのしかかる。純利益はほぼゼロで、拠点の閉鎖と減損も出る。
自己資本は減損で痩せ、株主の取り分は純現金でなく、売れる資産が頼りになる。配当は DOE の最低限で抑えられる。
- 水産物荷受事業(うおいち):数量 11.5(荷受の取扱数量(万トン))× 価格 1,438(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 1,659 億円・営業利益 9 億円。荷受:数量 11.544、売値 1437.5、利益率 0.55%
- 市場外水産物卸売事業(ショクリュー):数量 8.3(市場外の取扱数量(万トン))× 価格 1,625(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 1,343 億円・営業利益 8 億円。市場外:数量 8.265、売値 1625.0、利益率 0.60%
- 養殖事業(兵殖):数量 0.7(養殖の出荷量(万トン))× 価格 1,330(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 −5 億円。養殖:数量 0.747、売値 1330.0、利益率 -5.00%
- 食品加工事業:数量 0.5(加工品の販売量(万トン))× 価格 875(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 −1 億円。食品加工:数量 0.528、売値 875.0、利益率 -3.00%
- 物流事業:数量 1.7(物流の取扱量(万トン))× 価格 125(1 キロあたりの手数料(円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。物流:数量 1.737、売値 125.0、利益率 1.00%
- その他(リース・小売など):数量 0.2(その他の取扱数量(万トン))× 価格 1,250(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 −1 億円。その他:数量 0.175、売値 1250.0、利益率 -3.00%
倍率:純利益はほぼ 0 で稼ぐ力は低く、売れる資産が値段の土台になる。今の自己資本 414 億円に PBR 0.18 倍を掛けた。運転資金の多くは回収に時間がかかり、市場の施設は借り物が多いと推定して、床を帳簿の 2 割弱に置いた。EV÷営業利益は 34 倍と高いが、営業利益が谷にあるためで、値段は売れる資産で支える。
確率:10%。市場外流通の拡大、ブリの崩れ、金利の上昇が重なる構造的な負け。薄利で借金があるため、慎重な側にしっかり厚みを置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水産物荷受事業(うおいち)
卸売市場で産地・輸入から魚を預かり、仲卸や小売に売って手数料と差益を得る。大阪・和歌山・滋賀などが地盤。
| 数量荷受の取扱数量(万トン) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19.2 | 1,150 | 2,212 | 25 |
| 10 年後 中立 | 15.8 | 1,541 | 2,431 | 24 |
取り方:荷受の売上 2,212 億円を、市場の単価(名古屋本場の令和 5 年は 1 キロ約 1.2 千円、浜松は約 1.1 千円)に近い 1.15 千円で割り、約 19.2 万トンとみた推定値。生鮮と冷凍が混ざるので単価は幅を持たせてある。物価の分は価格に入れ、数量は実質。
市場外水産物卸売事業(ショクリュー)
冷凍エビなどを輸入し、全国 30 数か所の拠点から量販店・外食・ホテルに市場を通さず売る。
| 数量市場外の取扱数量(万トン) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.0 | 1,300 | 1,433 | 16 |
| 10 年後 中立 | 10.5 | 1,742 | 1,824 | 21 |
取り方:市場外の売上 1,433 億円を、冷凍エビを中心とした平均 1.3 千円で割り、約 11 万トンとみた推定値。エビの単価は高く、他の冷凍魚は安いので、平均はこの幅の中ほどに置いた。
養殖事業(兵殖)
九州・四国の海でブリ・ハマチ・マグロを育てて売る。相場の山谷が利益をそのまま動かす。
| 数量養殖の出荷量(万トン) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 1,400 | 116 | 21 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 1,596 | 139 | 7 |
取り方:養殖の売上 116 億円を、ブリの相場が高い今期の 1.4 千円で割り、約 0.83 万トンとみた推定値。出荷量は開示がなく、相場の高さが今期の黒字の理由。10 年後の価格は、高値の相場が平準に戻る分、物価並み(1.34 倍)より低く置く。
食品加工事業
冷凍マグロの加工などを手がける小さな事業。ツナクラフトワークスの取得で広げている。
| 数量加工品の販売量(万トン) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 700 | 46 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 938 | 71 | 1 |
取り方:食品加工の売上 46 億円を、平均 0.7 千円(加工マグロなど)で割った推定値。
物流事業
グループの冷蔵・配送を担う小さな事業。
| 数量物流の取扱量(万トン) | 価格1 キロあたりの手数料(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.9 | 100 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 134 | 26 | 1 |
取り方:物流の売上 19 億円を、1 キロ 0.1 千円の手数料で割った推定値。
その他(リース・小売など)
リースや小売など、水産の本業の外にある小さな事業。
| 数量その他の取扱数量(万トン) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 1,000 | 35 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 1,340 | 38 | 0 |
取り方:売上 35 億円を、1 キロ 1 千円の水産品の取扱い(約 0.35 万トン)とみた粗い推定値。
リスクと懸念
養殖ブリの相場が崩れる
今期の営業利益 63 億円のうち、養殖が 21 億円を占める。ブリの相場は高値疲れが見え始め、餌の高止まりと高水温による斃死も重なる。2022〜2023 年のような赤字に戻れば、全社の利益は 3 分の 1 が消える。
市場を通さない取引が広がる
改正卸売市場法で、第三者への販売と直荷引きの禁止が外れた。量販店や外食が産地と直接結べば、荷受の取扱量は減る。荷受は売上の 6 割で、利益率は 1% 台前半しかなく、数量の減りがそのまま利益の減りになる。
魚の消費量が細る
人口が減り、1 人あたりの魚介の供給量も長期で下がっている。魚の値段が高止まりして高値疲れが広がれば、量はさらに落ちる。10 年の中立は数量が 2 割弱減る姿で、その外側にも下振れの余地がある。
利幅の薄さと在庫の評価損
営業利益率は 1.7% にすぎない。相場が急落すれば在庫の評価損が出て、荷受・市場外の利益は簡単に消える。人件費と物流費の上昇を値段に移せなければ、利益率はさらに下がる。
金利上昇と借金
借入金は 223 億円で、純有利子負債は時価総額の 9 割ほどある。借り換えで金利が 3.5% に上がれば、利払いは年 5 億円ほど増える。利益の薄い会社には重く、配当や投資の余力を削る。
荷受の施設と賃借の固定費
荷受事業は市場の施設を借りて営む部分が多いと推定する(未経過リース料は開示から取れなかった)。売上が落ちても施設の賃借料は落ちにくく、悲観の局面では固定費として利益を圧迫する。2028 年 3 月期からの新リース会計で、負債の見かけは増える。
大株主・経営の不透明さ
大株主の構成は今回確認できなかった。持株会社の本体は 29 人で、子会社への依存が強い。TOB や再編が起きれば値段は動きうるが、筋書きの確率には織り込んでいない。
今後の分かれ目
- 養殖ブリの相場が 2 年続けて高止まりし、養殖の営業利益が 15 億円を超え続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし循環の山の利益を倍率で買っていないかは別に確かめる。
- 荷受の取扱数量が毎年 1〜2% ずつ減り、利益率も 1% を割ったら
- 市場外流通の拡大が数字に出たと読み、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 関東の商物分離型営業が数字で実を結び、荷受以外の取引先が増えたら
- 荷受の弱みを補う道が開けたとみて、中立の数量を上方に直す。
- DOE が引き上げられ、自社株買いが始まったら
- 還元が厚くなる。ただし ROE が資本コストに届かない限り、倍率は上がらない。
- 大手の水産メーカーや商社が出資や TOB を仕掛けてきたら
- 再編の価値が加わる。筋書きにはない上振れとして別に考える。
見ておくもの
- 荷受と市場外の営業利益と利益率(四半期)
- 養殖の営業利益とブリ相場
- 卸売市場法の運用と市場外取引の比率
- DOE の水準と自社株買いの有無
- 借入金と利払い、政策保有株の縮減
- 来期の営業利益 46 億円の計画との差
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER には寄せていない。10 年の売上は、荷受・市場外・養殖の数量(実質)と単価(名目、物価 3% 込み)から積み上げ、倍率は ROE が資本コストを下回るので上限 1÷k(11.8 倍)の 8 割(9.4 倍)に置いた。今の時価総額が純利益の 5 倍に届かない点は、利益が山にあることの結果で、倍率の根拠にしていない。日本基準の新リース会計(2028 年 3 月期から)で形が変わる点は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.98 倍・やや楽観 PER 10→11.78 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。