結論
小津産業は、不織布を中心とする専門商社である。半導体工場や製薬のクリーンルームで使う拭き取り布、医療・化粧品向けの布、マスクやウェットティッシュを扱う。江戸時代の紙問屋が源流で、売上の約 97% が不織布だ。
筆者の結論は、10 年の本質価値が今の時価総額を下回る、というものだ。事業は上向いている。直近の 3 か月は営業利益が 2.4 倍になった。それでも株主に届く価値は、稼ぐ力より、ためた現金と持ち合い株の戻り方で決まる。
数字で見ると、純現金が 70 億円、投資有価証券が 64 億円ある。合わせると時価総額 158 億円の 8 割を超える。事業そのものの値段が、ほとんど付いていない計算になる。
ただ、会社は自己資本の利回りが 3% 前後と低いまま、現金をためてきた。自社株買いの実績はなく、配当性向は 4 割だ。オーナー系の株主構成で、追加の還元は進みにくい。
筆者は、資産は厚いが、その戻りに確証がない点を一番重く見る。事業の改善が本物なら評価は変わりうるが、会社が今の資産を使う道を示すまでは、割安とは言えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「事業」と「ため込んだ資産」を分けて見る必要がある。事業は堅実で、直近の利益は伸びている。ただ、純利益 6 億円の事業に、純現金 70 億円と持ち合い株 64 億円が乗っている。
株主にとって価値があるのは、資産が株主に戻る時だけだ。ためた利益は、ROE が資本コストを超えない限り、1 億円が 1 億円未満の価値しかない。実際、純現金は 11 年で 5 倍に増えたが、株主還元は配当性向 4 割にとどまる。
評価できる点は、事業の改善が本物らしいことだ。価格の適正化とクリーン分野の拡大は、一過性ではなさそうに見える。
安全域は、資産の厚みでは十分だが、戻り方に確証がない。持ち続けたい会社かと問われれば、事業は魅力的でも、資本の使い方がはっきりするまでは待ちたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 97% は不織布事業である。2026 年 5 月期の売上は 107 億円で、不織布が 105 億円、不動産賃貸などその他が 3 億円だった。
不織布は 4 つの分野で売る。1 つ目はクリーン分野で、半導体・電子・製薬の工場向けの拭き取り布や資材だ。国内外で急拡大する AI/データセンター関連の需要が、足元の追い風になっている。2 つ目はウェルネスケア分野で、医療・介護・化粧品向けのウェット製品を扱う。3 つ目はエコプロダクツ分野で、鉄鋼・電力・建設向けの資材と、原子力施設の除染布を持つ。4 つ目はコンシューマー分野で、ドラッグストア向けの除菌ウェットや自社ブランドのマスクだ。
上海の販売会社は光学向けに強い。農業用資材の日本プラントシーダー、ウェットティッシュを作るディプロなど、製造の子会社も持つ。
数量は顧客の生産量で決まる。クリーン分野は半導体と製薬の生産に連動し、コンシューマー分野は人口とドラッグストアの売り場に左右される。中期経営計画(2027 年 5 月期まで)は「土台づくり」の期間で、人材と研究開発に予算を回している。長期ビジョンは 2034 年 5 月期の売上 150 億円を掲げる。
優良さと弱いところ
強みは、用途に合わせて商品を組み、納める力だ。クリーンルームのように汚れを嫌う現場では、品質と納期の信頼が価格より先に問われる。直近は「販売価格の適正化」を進め、利益が伸びた。
弱みは 3 つある。1 つ目は利益率の低さだ。営業利益率は 5% 台で、過去の最良も 5.7% にとどまる。2 つ目は、メーカーが直接顧客に売る道があり、商社の取り分が削られうる点だ。3 つ目は、コンシューマー分野のマスクが感染症の時期の需要から落ち着き、数量が戻らない点だ。
資本の効率も低い。ROE は 10 年の中央値で 3.3% と、資本コストの半分にも届かない。理由は、事業の稼ぎに対して現金と持ち合い株が厚いことにある。
経営の資本配分は堅実だが、攻めてはいない。借金は短期と社債を合わせて 26 億円あるが、現金の方がはるかに多い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
不織布の需要は、用途ごとに性格がまるで違う。半導体と製薬のクリーンルーム向けは、生産が増えるほど使う量も増える。世界で AI 用の半導体工場とデータセンターの建設が続くため、実質の数量は伸びる側にある。
医療・化粧品向けのウェット製品は、人口減の逆風を受けるが、介護や衛生意識の高まりが下支えする。マスクは感染症の時期をピークに需要が落ち着き、自社ブランドも伸びにくい。
競争は、不織布メーカー自身、他の専門商社、海外の安価な品の 3 方向から来る。メーカーが直接売る流れが強まると、商社の取り分は薄くなる。逆に、品質の保証と小ロットの対応を商社が担う限り、取引は続く。
物流費と人件費の上昇は、価格に転嫁できるかが分かれ目になる。会社は直近で価格の適正化を進め、第 1 四半期は売上が 11% 増えたのに営業利益が 2.4 倍になった。生成 AI で商品が置き換わる心配は小さいが、受発注の事務は効率化の対象になる。
感染症の時期にマスクとウェット製品が急増し、その後の反動で需要が落ち着いた経験は、この業界の数量が一過性の波を持つことを示している。クリーン分野は、そうした波を受けにくい。
資本政策と M&A
会社は、配当性向 4 割前後を目安に配当を出す。2026 年 5 月期は上場 30 周年の記念配当を含めて 2.5 億円、2027 年 5 月期は 2.3 億円の予想だ。自社株買いの実績はない。
株主は、創業家の資産管理会社の小津商店と、取引先持株会が目立つ。外から追加の還元を迫る力は弱い。
現金は 96 億円、投資有価証券は 64 億円ある。純現金は 11 年前の 14 億円から 70 億円に増えた。持ち合い株は含み益が大きく、売却すれば税を引いて 47 億円になる。縮減の方針は示されているが、速さは遅い。買収の歴史は目立たず、成長投資は人材・研究開発・提携にとどまる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
直近 3 か月の営業利益は 3.1 億円と 2.4 倍になった。2027 年 5 月期の会社予想 5.5 億円は、すでに半分以上を稼いだ計算になる。AI/データセンターと光学向けの需要が続けば、通期の利益は予想を大きく上回りうる。
長期ビジョンは、2034 年 5 月期に売上 150 億円(今の 1.5 倍)を掲げる。クリーン分野は世界の半導体・製薬工場の増設とともに数量が伸び、価格の適正化で利益率も上がる。会社は人材と研究開発に先に投資しており、それが回収期に入る。
財務は強い。純現金 70 億円と、含み益の大きい持ち合い株 64 億円を持つ。時価総額 158 億円の 8 割を超える。事業の値段がほぼ無料で付いている水準だ。株価が低いことへの市場の批判(東証の資本効率の要請)は強く、持ち合い株の売却と還元の拡大が進む余地は大きい。
感染症で一度経験した需要の急増から学び、会社は在庫と仕入れの管理を改善した。第 1 四半期の営業利益率は 10% を超え、水準が一段上がった可能性がある。
慎重な見方
事業の稼ぐ力は小さい。営業利益は過去 12 年のうち 5 億円前後が上限で、営業利益率は 5% 台が天井だった。直近の伸びは価格の適正化によるところが大きく、顧客がメーカーの直販に移れば止まる。
純現金と持ち合い株が厚いのは、株主に戻さずにためてきた結果だ。純現金は 11 年で 5 倍に増え、自己資本の利回りは 3% 前後にとどまる。自社株買いの実績はなく、配当は利益の 4 割だ。オーナー系の株主構成で、外から還元を迫る力は弱い。
含み益のある持ち合い株は、売れば税がかかる。64 億円は、税を引いて 47 億円にしかならない。コンシューマー分野のマスクは、感染症の時期の需要が戻らない。
資産が厚くても、戻らなければ価値は時間とともに目減りする。現金の 2% の利回りでは、資本コストの 8% に遠く及ばない。
第 1 四半期の営業利益率の急上昇は、季節性や価格改定の前倒しが重なった可能性がある。会社は通期予想を据え置いており、年間で同じ水準が続くとは言い切れない。
どちらに重みを置いたか
強気の主張は、直近の利益の伸びと資産の厚みに根拠がある。ただ 10 年の価値は、資産がどれだけ株主に戻るかと、事業の稼ぎが資本コストを超えられるかで決まる。戻りに確証がなく、事業の利益率も天井が低いので、慎重な主張の方が重いと判断した。
確率は中立に 35%、やや悲観を 24%、悲観を 10% と、悲観側をやや厚くした。楽観は 9% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 1,873 円158 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 375 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 1,146 円96 億円、今との差 −39.0%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,893 円244 億円 | 594 円50 億円 | +85.6% | +6.4% | 314 円26 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,297 円193 億円 | 452 円38 億円 | +46.3% | +3.9% | 605 円51 億円 |
| 中立 | 35% | 2,087 円176 億円 | 380 円32 億円 | +31.3% | +2.8% | 864 円73 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,167 円98 億円 | 297 円25 億円 | −22.1% | −2.5% | 351 円30 億円 |
| 悲観 | 10% | 961 円81 億円 | 178 円15 億円 | −39.4% | −4.9% | 114 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,873 円158 億円 | 375 円32 億円 | +19.6% | +1.8% | 2,248 円189 億円 |
今の株価時価総額 1,879 円158 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 9% 楽観:AI 関連の需要が続き、クリーン分野が倍近くに育つ 利益 14 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 2,893 円244 億円
世界で半導体工場とデータセンターの増設が続き、クリーンルーム向けの拭き取り布と資材の数量が実質で 1.6 倍に伸びる。会社は用途提案と品質保証で商社の取り分を守り、価格の適正化も定着する。人材と研究開発への先行投資が実り、クリーン・ウェルネス分野の営業利益率は 10% 台に乗る。上海の光学向け販売も育つ。コンシューマー分野はドラッグストア向けの除菌ウェットを軸に横ばいを保つ。売上は長期ビジョンの 150 億円を超える。配当は利益の 4〜5 割を保ち、持ち合い株の売却も少しずつ進むが、現金の多くは社内に残る。それでも自己資本の利回りは資本コストに届かない。
- クリーン・ウェルネス(半導体・製薬・医療・化粧品向け):数量 4.4(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 28(1 枚あたり売上(円))→ 売上 121 億円・営業利益 13 億円。枚数 4.4 億枚。営業利益率 10.5%
- コンシューマー・エコ・製造子会社:数量 3.3(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 20(1 枚あたり売上(円))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。枚数 3.3 億枚。営業利益率 4.5%
- その他(不動産賃貸・除菌関連):数量 100(賃貸面積などの指数(今を 100))× 価格 0.03(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。指数 100。利益率 30%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)73 億円。全体の PER 13.4 倍、時価総額 244 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:クリーン分野が世界の半導体・データセンター投資に乗り続け、価格適正化も定着する必要がある。足元の勢いは強いが、10 年続く保証はないので確率は低めにした。
やや楽観 22% やや楽観:クリーン分野が伸び、営業利益率 7% 台で定着する 利益 11 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,297 円193 億円
クリーン分野の数量は実質 1.35 倍になり、価格の適正化も一定の幅で定着する。AI/データセンター向けの需要が、国内外で続く。コンシューマー分野は感染症の時期の水準から落ち着き、ほぼ横ばいで推移する。会社の営業利益率は 7% 台で安定し、売上は 165 億円ほどになる。長期ビジョンの 150 億円は前倒しで達成される。配当は利益の 4 割を守り、含み益のある持ち合い株は縮減の方針のもとでゆっくり減る。事業の改善が評価される一方、ためた現金は大きくは減らない。クリーン分野の顧客との取引が深まり、紹介による新規の販路が広がる。海外の光学向けも、上海の販売会社を通じて堅調に伸びる。
- クリーン・ウェルネス(半導体・製薬・医療・化粧品向け):数量 3.7(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 27(1 枚あたり売上(円))→ 売上 99 億円・営業利益 9 億円。枚数 3.7 億枚。営業利益率 9%
- コンシューマー・エコ・製造子会社:数量 3.2(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 20(1 枚あたり売上(円))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。枚数 3.2 億枚。営業利益率 3.8%
- その他(不動産賃貸・除菌関連):数量 100(賃貸面積などの指数(今を 100))× 価格 0.03(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。指数 100。利益率 27%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)73 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 193 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の営業利益が 2.4 倍になり、会社は予想を 2 度上方修正した。半導体と製薬の需要が続けば、この水準の一部は定着する。
中立 35% 中立:クリーン分野が伸びるが、利益率は 6% 台にとどまる 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,087 円176 億円
クリーン・ウェルネス分野は半導体と製薬の増設に乗って、数量が実質 1.25 倍に伸びる。価格は物価並みに上がり、人件費と物流費の上昇も同じ率で吸収する。コンシューマー分野は人口減とマスク需要の落ち着きで、数量が 1 割ほど減る。売上は 155 億円ほどで、長期ビジョンの規模にほぼ並ぶ。営業利益率は 6% 台で、第 1 四半期の勢いのすべては続かない。配当は利益の 4 割を守る。現金は事業で少しずつ増え、持ち合い株は縮減が遅く、自己資本の利回りは資本コストに届かない。大きな成長も大きな失敗もない 10 年になる。
- クリーン・ウェルネス(半導体・製薬・医療・化粧品向け):数量 3.4(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 27(1 枚あたり売上(円))→ 売上 92 億円・営業利益 7 億円。枚数 3.44 億枚。営業利益率 8%
- コンシューマー・エコ・製造子会社:数量 3.1(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 20(1 枚あたり売上(円))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。枚数 3.05 億枚。営業利益率 3.3%
- その他(不動産賃貸・除菌関連):数量 100(賃貸面積などの指数(今を 100))× 価格 0.03(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。指数 100。利益率 27%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)73 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 174 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量はクリーン分野が実質で 1.25 倍、コンシューマー分野が 0.92 倍。営業利益率は過去の山 5.7% をやや超える 6% 台とし、会社の長期ビジョンの規模にほぼ並ぶ水準で、最も重く置いた。
やや悲観 24% やや悲観:直販への切り替えで商社の取り分が削られ、利益率が 5% を割る 利益 6 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,167 円98 億円
クリーン分野の主要顧客が、メーカーからの直接調達を広げる。商社の取り分が薄くなり、価格適正化で上げた利益率が戻る。半導体投資も一巡し、数量は実質 1.05 倍にとどまる。コンシューマー分野は競争が強く、マスクの需要も戻らない。営業利益率は 4% 台に下がる。会社は借金が小さく、配当性向 4 割を守るが、利益そのものが減るので配当も減る。含み益のある持ち合い株は動かず、現金は積み上がらない。事業の稼ぐ力は、資産の利回りと変わらない水準になる。受注の単価が下がり、在庫の評価損も出る年が重なる。中国の景気の減速が、上海の販売会社にも響く。
- クリーン・ウェルネス(半導体・製薬・医療・化粧品向け):数量 2.9(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 27(1 枚あたり売上(円))→ 売上 78 億円・営業利益 4 億円。枚数 2.9 億枚。営業利益率 5.5%
- コンシューマー・エコ・製造子会社:数量 2.8(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 20(1 枚あたり売上(円))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。枚数 2.8 億枚。営業利益率 2.5%
- その他(不動産賃貸・除菌関連):数量 100(賃貸面積などの指数(今を 100))× 価格 0.03(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。指数 100。利益率 25%
倍率:事業の ROE 約 4% は k 7.75% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 12.1 倍。稼ぐ力が落ち、利益の質も低い。7.5 倍に置いた。余り資産は谷で食う前提で今の 0.75 倍とし、戻り方 0.5 で足した。
確率:過去 12 年の営業利益率は 5.7% が上限で、直近の伸びは価格の適正化によるところが大きい。メーカー直販と海外の安価な品が重なる姿は十分にありうる。悲観側を少し厚くした。
悲観 10% 悲観:中抜きが進み、商社機能が不要になって赤字ぎりぎりまで下がる 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 961 円81 億円
クリーン分野の顧客がメーカーと直接契約を結び、小ロットの対応と品質保証を商社に頼らなくなる。国内の半導体工場の投資も鈍る。コンシューマー分野は海外の安価な品に押され、数量が 3 割近く減る。価格は物価に追いつかず、営業利益率は 1% 台まで下がる。会社は人員の整理を迫られ、減損も出る。配当は大きく減る。残る価値は、純現金と含み益のある持ち合い株で、事業の価値はほとんどなくなる。もう優良ではなくなった 10 年になる。小津商店は支えるが、増資や追加の支援には応じない。事業を縮めても、資産の売却で最低限の配当は守る。
- クリーン・ウェルネス(半導体・製薬・医療・化粧品向け):数量 2.2(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 25(1 枚あたり売上(円))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。枚数 2.2 億枚。営業利益率 2%
- コンシューマー・エコ・製造子会社:数量 2.4(取扱枚数の換算(億枚・推定))× 価格 18(1 枚あたり売上(円))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。枚数 2.4 億枚。営業利益率 0.5%
- その他(不動産賃貸・除菌関連):数量 90.0(賃貸面積などの指数(今を 100))× 価格 0.03(指数 100 あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。指数 90。利益率 20%
倍率:稼ぐ力がほぼ消える筋書きなので、売れる資産で測る。純現金約 70 億円と、持ち合い株の税引き後約 47 億円の合計約 118 億円のうち、株主に戻る分を見て、今の自己資本 192 億円の 0.424 倍に置いた。
確率:商社が提供する機能が薄れ、メーカーの直販と海外の安価な品に置き換わる筋書きは、過去に紙・日用品の卸で実際に起きた。1 割残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クリーン・ウェルネス(半導体・製薬・医療・化粧品向け)
クリーンルーム用の拭き取り布、医療・介護・化粧品向けのウェット製品。AI/データセンター関連の需要が足元の追い風。
| 数量取扱枚数の換算(億枚・推定) | 価格1 枚あたり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2.8 | 20 | 55 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3.4 | 27 | 92 | 7 |
取り方:不織布事業の売上 104.81 億円と利益 5.10 億円(決算短信)を分野で分けた推定。分野別の金額は開示がないため、売上の約 52% をクリーン・ウェルネスとし、混合の平均単価で枚数に換算した(単価は price の欄)。利益は成長分野で付加価値が高いので不織布全体の平均より高く置いた。
コンシューマー・エコ・製造子会社
マスク・除菌ウェット・メガネ拭き(一般消費者向け)、鉄鋼・電力向けの資材と除染布、農業資材、ウェットティッシュの OEM。
| 数量取扱枚数の換算(億枚・推定) | 価格1 枚あたり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 3.3 | 15 | 50 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 20 | 60 | 2 |
取り方:不織布事業から上の分を引いた残り 49.8 億円。混合の平均単価で枚数に換算した推定(単価は price の欄)。利益は不織布全体 5.10 億円から上の分を引いた残りで、競争が厳しいので利益率は低い。
その他(不動産賃貸・除菌関連)
保有する建物の賃貸と除菌関連の事業。テナント退去で売上が少し減っている。
| 数量賃貸面積などの指数(今を 100) | 価格指数 100 あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 100 | 0.03 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.03 | 3 | 1 |
取り方:その他の事業の売上 2.58 億円・利益 0.74 億円(決算短信)。賃料の更新は物価より遅いので、10 年の価格は 1.20 倍とした。
リスクと懸念
メーカーの直販による中抜き
不織布は大手メーカーが顧客に直接売る道がある。商社の取り分が削られると、価格適正化で伸びた利益率が元に戻る。クリーン分野の顧客が自社で調達を始める動きに注意がいる。
半導体・AI 投資の減速
クリーン分野の伸びは半導体工場とデータセンターの増設に連動する。投資が一巡すれば、数量の伸びが止まる。足元は中東情勢で一部に在庫調整も出た。
資産の戻りの遅さ
純現金 70 億円と持ち合い株 64 億円があるが、自社株買いの実績は無く、配当性向は 4 割。オーナー系の株主構成で、追加還元の圧力は弱い。ためた資産の価値が時間とともに目減りする。
持ち合い株の価格下落
投資有価証券 64 億円のうち、含み益が大きい。株価が下がれば自己資本が減り、売却しても税が先に引かれる。直近 3 か月は評価額が 8 億円増えたが、逆の動きも起きる。
コンシューマー分野の縮小
マスクは感染症の時期をピークに需要が落ち着いた。ドラッグストア向けは競争が強く、価格を取りにくい。人口減の逆風も重なる。
戦略投資による費用の先行
会社は人材確保と研究開発に予算を回すと明言している。2027 年 5 月期の営業利益予想は前期比で減益だ。投資が売上に結びつかなければ、利益率が下がる。
今後の分かれ目
- 2027 年 5 月期の営業利益が会社予想の 5.5 億円を大きく上回る
- クリーン分野の伸びと価格適正化が本物で、やや楽観に近づく。営業利益率 7% 近くまで見る。
- クリーン分野の主要顧客がメーカー直販に切り替える
- 商社の取り分が減り、やや悲観に近づく。クリーン分野の利益率が 5% 台に戻る。
- 持ち合い株の売却と自社株買いを発表する
- 余り資産が株主に戻る道が開き、戻り方を 0.5 から引き上げて見直せる。
- 配当性向を 6 割に引き上げる
- ためた現金の価値が表に出る速度が上がる。ただ事業の ROE は変わらず、倍率は上がらない。
- 半導体・データセンターの増設が 2 年続けて前年を割る
- クリーン分野の数量が止まり、中立の筋書きに届かなくなる。
- 小津商店など筆頭株主グループが持株を売る、または TOB を行う
- 買い付けに上乗せが付く可能性がある。ただ本質価値は動かず、少数株主の取り分は筆頭株主の判断で決まる。
見ておくもの
- クリーン分野の売上と営業利益率(四半期)
- 2027 年 5 月期の通期営業利益(予想は 5.5 億円)
- 投資有価証券の売却と自社株買いの有無
- 配当性向の引き上げ
- 長期ビジョンの利益目標の公表
倍率と資本コストの決め方
3 つの分野ごとに取扱枚数と単価を置いて 10 年の利益を積み、その時点の ROE と資本コスト 7.75% から正当化 PER の上限を出して、その 7〜8 割に置いた。中立の営業利益率は 6% 台で、過去 12 年の山 5.7% をやや超えるが、直近の価格適正化と第 1 四半期の営業利益 2.4 倍という開示を根拠にした。余り資産は、現金 96 億円から借入 26 億円と手元の余裕 20 億円を引いた 50 億円と、投資有価証券の税引き後 47 億円の合計 97 億円で、戻り方は 0.5 とした。今の PER・PBR は使っていない。リースは小さく、10 年後の数字は今の形で置いた。建物の減価償却は取得時の値段のまま年 1.6 億円ほどで、物価では増やしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.4 倍・やや楽観 PER 9.8→12.9 倍・中立 PER 8.5→12.9 倍・悲観 PBR 0.35→0.424 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。持ち合い株の戻りの遅さやオーナー系の株主構成は k に足さず、余り資産の戻り方 0.5 と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。