結論
栄電子は、半導体製造装置や医療・放送機器のメーカーに電子部品と電源を納める専門商社だ。売上は 73 億円、営業利益は 1.4 億円で、利益率は 2% に届かない。筆者の結論は割高である。受注の急回復は本物だが、薄利の商社が資本コストを超えて稼ぐ姿は描きにくい。
稼ぎの源は、特約店として仕入れた部品を、装置メーカーの設計に合わせて届ける手数料だ。受注は 84 億円と前の期の 1.5 倍に増え、会社は 2027 年 3 月期に売上 100 億円を見込む。ただ、装置向けの商いは山と谷が深い。2023 年 3 月期に営業利益率は 8% まで上がったが、2 年後は 1% に落ちた。
10 年を均した利益率は 3% 前後と見る。自己資本は 48 億円と厚く、純現金も投資株もあるが、ROE は過去の中央値で 4% 台にとどまる。ためた資産は、積んだ額どおりには評価できない。
今の時価総額は、受注の回復と中計の売上 150 億円をかなり織り込んでいる。倒れにくさは評価するが、安全域は今の値段にはない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、悪い会社ではないが、よい商売とも言えない。商社の利益は仕入先と顧客のあいだの手数料で、値段を決める力が弱い。
財布は堅い。自己資本比率は 65% で、純現金があり、最終赤字は 3 期だけだ。倒れにくいぶん、悲観の筋書きでも床がある。ここは評価する。
問題は資本の稼ぎ方だ。ROE は資本コストの 9.5% を大きく下回り、ためた利益は積んだ額どおりの価値を生まない。投資株 12 億円も、配当しか生まない資産だ。
10 年の中立でも利益は 3 億円弱で、払ってよい倍率は 8 倍台にとどまる。中立の筋書きでは、10 年後の価値を割り戻しても今の時価総額に届かない。
経営者が持ち合い株を売って自社株買いや増配に回せば、見方は変わる。いまはその約束がない。安全域は今の値段にはない。
何で稼ぐ会社か
事業は単一で、産業用の電子部品と電子機器の販売だ。2026 年 3 月期の売上 73 億円のうち、一般電子部品が 61%(45 億円)、電源が 18%(13 億円)を占める。残りは電子デバイス、センサー、IoT 機器などだ。
最大の顧客は、国内大手の半導体製造装置メーカーである。開示に社名はないが、取引の比率が高いことをリスクに挙げている。医療機器、放送機器、通信機器のメーカーも顧客で、装置に組み込む部品を安定して納める役割を担う。
仕入先との関係は、特約店の契約が土台だ。TDK ラムダのスイッチング電源、TDK のインダクタ、山一電機の IC ソケットなどを扱う。契約は 1 年ごとの自動更新で、仕入先が販売網を絞れば揺らぎうる。売上の増減は、顧客の装置の生産計画にほぼ連動する。在庫は 14 億円と売上の 2 割あり、先読みの仕入れが利益を左右する。
人員は連結で 85 名。小さな組織が、顧客の設計に入り込む提案力で稼ぐ。2026 年 3 月には台湾に子会社を作り、東アジアでの販売に乗り出した。売上に占める海外の比重はまだ小さく、効果が出るのはこれからだ。
優良さと弱いところ
堀は浅い。筆者は、この会社を強い堀の持ち主とは見ていない。特約店の権利と顧客の設計に入った実績は、数年は続く。ただ、仕入先も顧客も大きな会社で、値段を決めるのは彼らだ。
利益の安定性は低い。営業利益率は過去 12 年で 1% から 8% の間を動いた。2023 年 3 月期は 8.1% の最高益、2025 年 3 月期は 1.0% だ。装置投資の波がそのまま利益の波になる。
資本効率は弱い。過去 10 年の ROE の中央値は 4% 台で、資本コストには届かない年が大半だ。自己資本 48 億円には、東京エレクトロンなどの持ち合い株が 12 億円ほど含まれる。株価が上がれば自己資本は膨らむが、稼ぐ力は増えない。
経営は還元に前向きだ。配当性向は 20〜30% を目安とし、DOE(自己資本に対する配当)は 1% を下限に、2% 以上を目指す。今期の配当性向は 49% で、方針を上回る。
強みは財務の堅さだ。自己資本比率は 65%、純現金もある。最終赤字は 2009・2013・2014 年の 3 期だけで、倒れる心配は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
栄電子の戦う場は、装置メーカーに電子部品を納める小さな商社の市場だ。需要の根っこは、半導体製造装置の生産量にある。装置の生産は、世界の半導体メーカーの設備投資に左右される。
追い風は今、AI 向けの半導体投資だ。先端ロジックとメモリの工場が増え、装置の受注が戻っている。栄電子の受注残は 31 億円と前の期の 1.5 倍で、会社は 2027 年 3 月期の売上を 100 億円と見る。
逆風は、この商いの山と谷の深さだ。2023 年 3 月期に売上は 108 億円まで伸びたが、2025 年 3 月期には 64 億円まで落ちた。半導体の投資は 3〜4 年の周期で振れ、商社は在庫と人件費を抱えたまま波を受ける。
構造の変化も見逃せない。大手の半導体商社は買収で規模を積み、仕入先は取引する商社を絞る方向にある。装置メーカーが部品を直接調達する動きも、商社の取り分を削る。規模で劣る小さな商社は、提案力のある品目に絞るか、取扱品の権利を失うかの分かれ道に立つ。
10 年では、世界の半導体装置の数量は実質で伸びる。ただ、その伸びを商社が受け取れるかは別の話だと筆者は考える。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 20〜30% を目安に、DOE 1% を下限、中長期で 2% 以上だ。2026 年 3 月期の配当総額は 0.6 億円。自社株買いは小さく、自己株式はほぼゼロだ。
株主優待は、100 株以上に 少額の QUO カードを贈る。額は小さく、年の費用は 0.1 億円に届かない。受け取りは還元に数えず、差は 1 ポイントに満たない。
中計(2028 年 3 月期まで)は売上 150 億円、ROE 8% 以上、PBR 1 倍以上を掲げる。ROE 8% は、純利益を今の 3 倍を超えて増やさないと届かない。
資産では、投資有価証券が 12 億円ある。東京エレクトロン、三井住友 FG、山一電機が主なものだ。取引関係の維持が目的で、売却の数値目標は示されていない。M&A の実績はなく、TOB などの話も確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注は底を打ち、上り坂に入った。受注残は 31 億円、前の期の 1.5 倍で、2027 年 3 月期の売上 100 億円は手の届く数字だ。先端半導体の工場は世界で増え、装置の生産は 10 年で実質 3 割増える。栄電子はその部品を納める位置にいる。国内の主要な装置メーカーと長く取引してきた信頼は、新しい商社には簡単にまねできない。
利益は売上より速く伸びる。人員 85 名の小さな組織は、売上が 1.5 倍になっても人を増やさずにこなせる。2023 年 3 月期は売上 108 億円で営業利益率 8% だった。売上が 140 億円に乗れば、5% は現実的だ。
財務には余裕がある。自己資本比率は 65%、投資株 12 億円も持つ。台湾の子会社と社会インフラ向けの新分野が育てば、中計の売上 150 億円も視野に入る。配当は DOE 2% を目標にしており、増配の余地は大きい。株価が 1 倍を割る今の水準は、経営に資本効率の改善を迫る力にもなる。
慎重な見方
回復は山の手前かもしれない。装置の受注は急に増えたあと、急に減る。2023 年 3 月期の売上 108 億円は、2 年後に 64 億円まで落ちた。今回の 100 億円計画も、同じ波の上にある。売上が落ちても、人件費と在庫の負担は残る。
利益率は薄いまま変わらない。過去 12 年の営業利益率は多くの年が 1〜3% で、8% は 1 度きりだった。仕入先が値段を握る商社に、構造的な高収益は望めない。
顧客の集中も重い。国内大手の装置メーカーが部品の調達先を絞れば、取引は一気に細る。装置メーカーが商社を通さず直接買う流れも強まる。特約店契約は 1 年更新で、権利は永続しない。
資本効率の改善も遠い。ROE 8% の目標は、純利益を今の 3 倍超に増やすことを意味する。投資株 12 億円は事業の稼ぎを生まず、配当はすでに純利益の半分だ。株主優待も含め、これ以上の還元の上積みは難しい。需要が落ちる局面では、在庫の評価損が利益をさらに押し下げる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。受注の回復は本物だが、薄利と山谷の深さは 12 年の実績で確かめられている。楽観に寄せる材料は受注の勢いだけで、構造を変える材料は見当たらない。確率は中立から悲観側に厚く配った。ただ、純現金と投資株があって倒れにくいので、悲観そのものは厚くしすぎなかった。中立は両方の言い分の落としどころとして、利益率の帯の上のほうに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 624 円32 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 163 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 385 円20 億円、今との差 −37.4%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,538 円78 億円 | 334 円17 億円 | +204.9% | +11.8% | 150 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 971 円49 億円 | 246 円13 億円 | +98.1% | +7.1% | 243 円12 億円 |
| 中立 | 34% | 670 円34 億円 | 157 円8 億円 | +34.7% | +3.0% | 281 円14 億円 |
| やや悲観 | 24% | 214 円11 億円 | 108 円6 億円 | −47.5% | −6.2% | 77 円4 億円 |
| 悲観 | 14% | 196 円10 億円 | 59 円3 億円 | −58.4% | −8.4% | 36 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 624 円32 億円 | 163 円8 億円 | +28.2% | +2.5% | 787 円40 億円 |
今の株価時価総額 614 円31 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 装置投資の好況が続き、会社の計画が実現する 利益 6 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 1,538 円78 億円
装置投資の好況が長く続き、会社の計画が実現する。売上は2028年3月期に150億円へ届き、その後も台湾と社会インフラ向けが加わって160億円台になる。営業利益率は過去最高に近い5%に乗り、営業利益は8億円前後に達する。台湾の子会社が東アジアの装置工場に部品を届け、国内では社会インフラや重電向けの新しい顧客が加わる。
人員をあまり増やさずに売上をこなし、利益が売上より速く伸びる。配当は DOE 2% を超え、自己株の取得も加わる。ただ、持ち合い株は動かず、ROE は 9% 台にとどまる。薄利の商社の枠は出ない。
- 一般電子部品・デバイス等:数量 5,250(商社経由で流れる装置・産業機器向け電子部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 141 億円・営業利益 7 億円。数量 1.75 倍・価格 1.34 倍・利益率 5.0%
- 電源:数量 910(商社経由で流れる産業用電源の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。物価の分と製品単価の下落を含む))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.24 倍、時価総額 78 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:好況が10年にわたり続き、小さな商社が利益率5%まで届く必要がある。山谷の深い事業で、過去12年に8%台は1度だけなので8%に置いた。
やや楽観 20% 中計に近い水準まで伸び、薄利から一段上がる 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 971 円49 億円
中計の売上 150 億円には届かないが、140 億円台まで伸びる。営業利益率は 3.8% で、営業利益は 5 億円ほどだ。受注の回復は 2 回の山を越えて続き、台湾の子会社も黒字になる。人員は少しずつ増やすが、売上の伸びほどには増えない。
半導体装置向けは山と谷を繰り返しながら、均すと実質で 5 割増える。電源も装置以外に広がる。経営は配当性向 40% 台を続け、DOE は 1.5% 前後になる。持ち合い株はそのままで、ROE は 7% に近づく。利益は伸びるが、仕入先と顧客に値段を握られる構造は変わらず、利益率は 4% を超えない。
- 一般電子部品・デバイス等:数量 4,500(商社経由で流れる装置・産業機器向け電子部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 120 億円・営業利益 5 億円。数量 1.50 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.8%
- 電源:数量 840(商社経由で流れる産業用電源の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。物価の分と製品単価の下落を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.2%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 49 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の売上150億円に近い水準が遅れて届く筋書き。2025年3月期に売上が64億円まで落ちた実績があるため、同業の21〜22%よりやや薄い20%に置いた。
中立 34% 追い風を取り込むが、山と谷の波は変わらない 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 670 円34 億円
追い風を取り込むが、山と谷の波は変わらない。売上は 120 億円台、営業利益は 3.6 億円、利益率は 3% 弱に収まる。2023 年 3 月期の 8% には戻らない。好況の年に利益が伸び、不況の年に落ちる繰り返しで、10 年を均すとこの水準になる。
装置向けの数量は、好況と不況をならして実質 3 割増える。台湾の子会社は育つが、全体を変えるほどではない。配当は性向 4 割ほどを続け、ROE は 5% 前後にとどまる。資本コストには届かないままだ。経営は中計の ROE 8% を掲げ続けるが、達成は 10 年の後半にずれ込む。
- 一般電子部品・デバイス等:数量 3,900(商社経由で流れる装置・産業機器向け電子部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 104 億円・営業利益 3 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.0%
- 電源:数量 770(商社経由で流れる産業用電源の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。物価の分と製品単価の下落を含む))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・利益率 2.6%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の回復を取り込みつつ、利益率は過去の帯(1〜3%台)の上のほうに収まる筋書き。同業の34〜35%と同じ34%を置いた。
やや悲観 24% 仕入先と顧客に押され、取り分が削られる 利益 1 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 214 円11 億円
取り分が削られる。仕入先が取引商社を絞り、装置メーカーの直接調達も増えて、取扱品の一部を失う。売上は名目で 90 億円台にとどまり、利益率は 1.9% と今の水準で止まる。大手商社は買収で規模を積み、栄電子はその流れに乗れない。
装置の好況は来るが、商社の手元に残る利益は小さい。人件費は物価並みに上がり、値上げは通りにくい。純利益は 1.5 億円。配当は性向 40% 台を保つが、金額は伸びない。台湾の子会社は黒字化に時間がかかり、新分野の開拓も遅れる。装置の好況の恩恵は、大手の商社に先に回る。人件費の上昇を値上げで転嫁しきれない。
- 一般電子部品・デバイス等:数量 3,000(商社経由で流れる装置・産業機器向け電子部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.28(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 77 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.28 倍・利益率 1.9%
- 電源:数量 665(商社経由で流れる産業用電源の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.30(価格指数(今=1.00。物価の分と製品単価の下落を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・利益率 1.9%
倍率:事業の純利益 1.45 億円・ROE 約 2.7% は k よりかなり低く、PER の上限は 1÷k=10.5 倍。取り分が削られる筋書きのため、上限の約 7 割の 7.5 倍に置いた。
確率:取扱品の一部を失い、利益率が今の1.9%に張り付く筋書き。顧客が1業種に偏る小さな会社なので、同業の22〜24%と同じ24%を置いた。
悲観 14% 商権の絞り込みと直接調達で、小さな商社が選別から外れる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 196 円10 億円
構造的に負ける。国内の装置メーカーが調達先を絞り、特約店の権利の一部を失う。直接調達も進み、売上は名目で 70 億円弱に細る。利益率は 0.8% まで落ち、営業利益は 0.5 億円ほどだ。在庫の評価損も出て、人員の整理に追い込まれる。株価が下がれば持ち合い株の含み益も目減りし、自己資本も細る。
事業の稼ぐ力は小さく、価値は純現金と投資株の回収価値に支えられる。配当は大きく減る。ROE は 1% を割る。持ち合い株は資金繰りのために売られ、株主優待も取りやめになる。売上が細るなかで再編の対象にもなりうる。
- 一般電子部品・デバイス等:数量 2,400(商社経由で流れる装置・産業機器向け電子部品の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.15(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 55 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・価格 1.15 倍・利益率 0.8%
- 電源:数量 595(商社経由で流れる産業用電源の実質市場(億円)× 取り分)× 価格 1.20(価格指数(今=1.00。物価の分と製品単価の下落を含む))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・利益率 0.8%
倍率:事業の純利益 0.44 億円・ROE 約 0.8% は k よりはるかに低く、稼ぐ力(純利益÷k)は約 5 億円。純現金と投資株の回収価値(約 10 億円)のほうが大きいため、今の自己資本 48 億円に 0.2075 倍を掛けて置いた。
確率:国内大手の装置メーカーへの依存が高く、調達先の絞り込みが起きれば一気に細る。純現金と投資株があり倒れにくいので、同業の12〜14%の中ほどの14%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
一般電子部品・デバイス等
ICソケット・インダクタ・センサー・IoT機器など、装置メーカー向けの電子部品と周辺品。
| 数量商社経由で流れる装置・産業機器向け電子部品の実質市場(億円)× 取り分 | 価格価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 1.00 | 60 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,900 | 1.34 | 104 | 3 |
取り方:開示は品名別の売上(一般電子部品44.7億・デバイス2.2億・IoT機器2.9億・センサー0.8億・その他9.2億)の合計59.9億円。数量は、装置・産業機器向けの電子部品が専門商社経由で流れる市場を約3,000億円(実質)と推定し、取り分を約2.0%とした(推定)。利益は開示が無く、全社の営業利益率1.9%に近い1.9%と推定。
電源
TDKラムダのスイッチング電源など、装置に組み込む電源の販売。
| 数量商社経由で流れる産業用電源の実質市場(億円)× 取り分 | 価格価格指数(今=1.00。物価の分と製品単価の下落を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 1.00 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 770 | 1.34 | 20 | 1 |
取り方:開示は電源の売上13.4億円(前期比+0.2%)。数量は、産業用スイッチング電源が専門商社経由で流れる市場を約700億円(実質)と推定し、取り分を約1.9%とした(推定)。利益は開示が無く、全社と同じ水準の2.1%と推定。
リスクと懸念
装置投資の山谷
売上は 2023 年 3 月期の 108 億円から、2 年で 64 億円まで落ちた。半導体の設備投資は 3〜4 年周期で振れる。売上が減っても人件費と在庫の負担は残り、利益は売上より大きく振れる。
特定の顧客への依存
国内大手の半導体製造装置メーカーとの取引比率が高い。調達先の絞り込みや、商社を通さない直接調達が進めば、売上が一気に細る。社名と比率は開示されていない。
特約店契約の更新
TDK ラムダや山一電機などとの契約は 1 年更新だ。仕入先が販売網を絞れば、取扱品を失う。商社は商権を自分では守れない。
薄利と資本効率
営業利益率は 2% 前後で、ROE は資本コストに届かない年が大半だ。自己資本の厚さは、稼ぐ力ではなく、積んだ資産の厚さにすぎない。
持ち合い株の値動き
投資有価証券の 12 億円は、東京エレクトロンなどの株価で動く。株価が下がれば自己資本が減り、PBR の見かけも変わる。事業の稼ぎとは別の揺れだ。
台湾子会社の立ち上がり
2026 年 3 月に設立した台湾の子会社は、売上も利益もこれからだ。人と在庫の費用が先に出て、立ち上がりが遅れれば利益を押し下げる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の売上が会社予想の 100 億円を超え、営業利益率が 4% に乗ったら
- やや楽観から楽観の筋書きに重みを移す。ただし倍率の上限(1÷k)は変わらず、利益の伸びがそのまま価値になるわけではない。
- 国内大手の装置メーカーが部品の調達先を絞ると発表したら
- 悲観側の確率を上げる。売上の集中度が高く、取引が一気に細る筋書きに近づく。
- 投資有価証券を売って自社株買いや増配に回す数値目標が出たら
- 余った資産の戻り方が改善し、価値の見方が上がる。ROE の上昇が確かめられれば倍率の上限も動く。
- 主要な特約店契約が更新されなかったら
- 取扱品の一部を失う筋書きに寄せる。やや悲観から悲観の確率を厚くする。
- 台湾子会社が黒字化し、海外の売上が 1 割に届いたら
- 数量の伸びを 1〜2 割上げる余地が出る。中立と、やや楽観の間に重みを移す。
見ておくもの
- 四半期の受注高と受注残(前の期の 1.5 倍の勢いが続くか)
- 営業利益率が 3% を超えて定着するか
- 投資有価証券の売却と還元の方針
- 主要な特約店契約の更新
- 台湾子会社の売上と損益
倍率と資本コストの決め方
取扱の実質物量(今の値段の億円)に価格指数を掛けて売上を積み、物価 3% は価格の側に入れた。倍率は資本コスト 8.5% と事業の ROE から、PER の上限 1÷k を出し、中立は約 8 割、やや悲観は約 7 割に置いた。今の株価や同業の倍率には寄せていない。悲観は倍率でなく、純現金と投資株の回収価値で置いた。品名別の利益と市場規模は開示が無く推定。新リース会計基準で BS の形が変わるが、栄電子は賃借の開示が小さく、10 年後は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→12.24 倍・やや楽観 PER 9→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.50%。