結論
ダイトロンは、半導体や産業機械のメーカー向けに電子部品・電源・画像機器を納め、光デバイスやウェーハの製造装置も自社で作る技術商社である。2025年12月期の売上は1,031億円で、初めて1,000億円を超えた。
筆者の結論は、今の株価はやや割高というものだ。足元の勢いは本物で、2026年12月期の営業利益は90億円と、前の期より3割近く増える計画になった。ただ、この勢いが10年続くと見るには根拠が足りない。
勢いの源は3つある。データセンター向けの無停電電源(GF事業)、光デバイス製造装置、半導体装置に組み込む部品だ。受注残は積み上がり、数年は売上に変わっていく。
弱みは、電子部品の大半が仕入れて売る商売で、利益率が6%台にとどまることだ。半導体の設備投資が冷えれば、装置も部品も同時に落ちる。
財務は堅い。純現金は204億円ある。ただ、長納期の装置と在庫を抱える商売なので、これを余った現金とは見ていない。利益と配当が着実に伸びる良い会社だが、払う値段に安全域が足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は、良い会社だが、割安とは言えない。
持ち続けたい理由は、財務が堅く、経営者が堅実なことだ。純現金が204億円あり、借金で背伸びしない。顧客の装置に組み込まれる部品と、自社の装置という2本の足を持ち、データセンター電源という新しい芽もある。
ためらう理由は、稼ぐ力が景気の波に近いことだ。営業利益率は7%前後で、粗利益の2割前後が部品の仕入れ値で決まる。10年先を見通せるかと問われれば、見通しにくい。半導体と産業機械の設備投資の波を、10年のうちに少なくとも1回は受けるからだ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益から運転資金と設備投資の増加分を引いた額だ。在庫が積み上がる成長期は、利益の割に現金が増えない。2022年の営業キャッシュフローは赤字だった。
安全域の面では、今の値段は10年の筋書きの平均を上回る。強気の筋書きが実現して、やっと見合う水準だ。バリュー投資家なら、もっと安い値段まで待つ。
何で稼ぐ会社か
ダイトロンは、売上の約7割を占める電子機器・部品と、約3割の製造装置の2本柱で稼ぐ。大阪が本社で、国内外に10社の子会社を持つ。
電子機器・部品は、電子部品とその組み立て品、半導体、組み込み機器、電源、画像機器・部品、情報システムを扱う。顧客は半導体製造装置や産業機械のメーカーで、装置の中に入る部品を納める。仕入れて売るだけでなく、技術者が仕様を詰め、組み立てて納める点が普通の商社と違う。
製造装置は、光デバイス(光通信などに使う部品)の製造装置や、シリコンウェーハの関連設備が中心だ。愛知の中部工場を軸に自社で開発・製造し、納期は1年を超えるものが多い。粗利益率は4割台と、部品の2割前後より高い。
新しい柱がGF事業だ。海外メーカーの大型UPS(停電に備える電源)を国内のデータセンターに納め、設計・施工・保守までを手がける。2025年12月期の売上は73億円で、全体の約7%になった。
海外の売上比率は2022年で25%台だった。北米の生産拠点では、半導体製造装置に組み込む部品の販売が伸びている。
優良さと弱いところ
優良さの中心は、顧客の装置の設計に入り込んでいる点にある。部品の仕様を一緒に決め、組み立てまで引き受けるので、顧客が仕入れ先を替える手間は大きい。ただ、これは商社としては強いが、独占ではない。堀は普通の強さだと筆者は見る。
自社の装置は、受注から納入まで1年を超える。長い納期は、顧客との関係が深い証拠であり、同時に受注残という先行きの見通しも生む。光デバイス装置の粗利益率は4割台で、ここが利益の質を押し上げている。
経営の資本配分は堅実だ。自己資本比率は44.8%で、配当性向の目安を30%から40%へ引き上げた。大型の買収で資本を傷めた歴史は見当たらない。社長は10年以上の長期ビジョンを掲げ、売上1,000億円を1年前倒しで達成した。
弱みは3つある。1つ目は、利益率が低いことだ。営業利益率は過去の最高でも7%台で、少し原価が上がれば利益は大きくぶれる。2つ目は、顧客が半導体と産業機械の設備投資に偏ることだ。3つ目は、オリジナル製品の比率が目標の25%に届いていないことだ。
技術者の確保も課題で、人件費が先に増える年は利益が削られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の市場は、製造業の設備投資と、データセンターの電源投資の2つで決まる。どちらも長く伸びる力はあるが、波が大きい。
製造業の設備投資は、人手不足による省人化で国内の底堅さが続く。世界のFA(工場の自動化)市場は、調査によって幅はあるが、年に6〜12%の伸びとの予測がある。ただ2009年のリーマン後と2019年の中国の不況では、機械商社の受注が3〜5割減った。ダイトロンも2009年と2013年に赤字を出している。
半導体の分野は、生成AIの設備投資で追い風が強い。光デバイス装置の受注は2026年上期で94億円、前年同期の1.9倍だった。ただ、この伸びは一部の大型案件に偏る可能性が高い。設備投資の山の利益を、そのまま10年に延ばしてはいけない。
データセンター向けのUPSは、AIの計算需要で市場が広がる。海外の大手電機メーカーが同じ市場にいて、ダイトロンは設計・施工・保守で差をつけている。ただ、規模では大手に劣り、受注が数件でぶれる段階だ。
競合は多い。電子部品の商社ではマクニカ、加賀電子、東京エレクトロンデバイスなどがいて、品目ごとの価格競争は厳しい。メーカーが直接販売に切り替える圧力も、10年のうちには強まりうる。
価格は、銅や部品の値上がりを転嫁できるかが分かれ目になる。2023年のように、人件費と販管費が先に増えて減益になる年もあった。
資本政策と M&A
資本政策は、増配と堅い財務の両立だ。配当性向の目安は30%から40%へ上がった。株は2026年1月に1株を2株へ分割した。純現金は204億円ある。
使い道として、社長は体力に見合ったM&A、老朽化した工場の建て替え、海外工場と拠点の整備を挙げた。大型買収で借金を増やす姿勢ではない。
中期経営計画は、2021〜23年の10M、2024〜26年の11M、2027〜30年の12Mへ続く。売上1,000億円を超える会社という長期の目標は、2025年に1年前倒しで達成した。次の目標は、創業75周年の2027年に新しく決める。
大株主には、公益財団法人のダイトロン福祉財団(約9.5%)、従業員と取引先の持株会、生命保険会社や銀行が並ぶ。財団と持株会の安定した株主が厚い。ただ、時価総額が約880億円と小さく、事業会社や投資ファンドが関心を持つ余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ダイトロンは、生成AIの投資で需要の山の真ん中にいる。2026年上期の営業利益は50.5億円で、前年同期より35%増えた。通期の営業利益は90億円と、前の期の70億円から3割近く伸びる。
光デバイス製造装置の受注は94億円(前年同期の1.9倍)、受注残は126億円ある。粗利益率は4割を超え、売上に変わるほど利益率が上がる。GF事業も、受注残が103億円ある。データセンター向けUPSは、2026年に売上92億円を計画する。
半導体製造装置に組み込む部品の販売も伸び、北米の生産拠点が受け皿になる。利益率の高い装置とGFの比重が上がれば、会社全体の営業利益率は10年で8〜9%まで上がる。
新しい中期経営計画は、創業75周年の2027年に出る。売上2,000億円と海外比率30%を掲げれば、10年のうちにROEは14%台まで上がる。配当性向40%の目安も、利益が伸びれば配当が着実に増える。
純現金204億円は、体力に見合ったM&Aの余力でもある。新しい技術を持つ会社を取り込めば、装置の幅が広がる。
慎重な見方
今の利益は、設備投資の山の上にある。営業利益率は6%台が過去の天井で、2026年の8%台は特別な年だ。山は必ず下る。
光デバイス装置の受注は、前年同期の1.9倍に増えたが、これは一部の大型案件に偏る可能性が高い。1台数億円の装置が、受注を一度逃せば売上が数十億円減る。GF事業も、売上が90億円規模と小さく、案件が数件ずれるだけで大きくぶれる。
電子部品の商売は、粗利益率が2割前後で、競合が多い。マクニカ、加賀電子などの大手が、同じ顧客と取引している。顧客が仕入れ先を直接メーカーへ切り替える動きも続く。
生成AIの投資は、いつか一巡する。そうなれば、装置も部品もUPSも、同時に注文が減る。2009年と2013年は赤字、2020年は営業利益が24億円まで落ちた。10年のうちに、少なくとも1回は同じ波が来る。
財務の堅さは評価するが、売上の7割が低利益率の部品で、純現金も在庫と運転資金に使われる。利益の増加を、倍率が先回りして織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
どちらも根拠があるが、慎重な見方がやや強い。足元の受注残は本物で、2〜3年は利益が増えると見る。ただ、10年では、設備投資の波と、利益率の低い部品の比重が重い。
そのため、確率は中立に最も厚く置き、強気側に24%、弱気側に35%を割いた。悲観の確率も、10%を少し上回る12%に置いた。
慎重な側を厚くした理由は、売上の7割が低利益率の部品で、利益が設備投資の山に引きずられやすいことだ。強気の根拠である受注残は、数年の売上を支えるが、10年の数量までは保証しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 7,295 円1,496 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,497 円307 億円)。 今の値に割り戻すと 4,678 円960 億円、今との差 +13.6%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 13,160 円2,699 億円 | 1,882 円386 億円 | +265.1% | +13.8% | 1,203 円247 億円 |
| やや楽観 | 24% | 10,444 円2,142 億円 | 1,706 円350 億円 | +194.9% | +11.4% | 2,916 円598 億円 |
| 中立 | 33% | 8,449 円1,733 億円 | 1,570 円322 億円 | +143.2% | +9.3% | 3,306 円678 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,444 円706 億円 | 1,365 円280 億円 | +16.7% | +1.6% | 1,106 円227 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,298 円266 億円 | 878 円180 億円 | −47.2% | −6.2% | 261 円54 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,295 円1,496 億円 | 1,497 円307 億円 | +113.4% | +7.9% | 8,793 円1,804 億円 |
今の株価時価総額 4,120 円845 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% AI投資が長く続き、GFと装置が柱に育つ 利益 134 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 13,160 円2,699 億円
生成AIの計算投資が長く続き、データセンター電源と光デバイス装置が会社の柱に育つ。GF事業は案件が毎年積み上がり、売上は300億円近くまで伸びる。製造装置は大型案件を取り続け、粗利益率の高い売上が全社の3割近くになる。
電子部品は、半導体製造装置メーカーの北米・アジアの拡大に乗って海外が伸びる。仕様提案と組み立ての付加価値が認められ、利益率は6%台後半へ上がる。2027年の新しい中期経営計画が掲げる海外30%とオリジナル製品25%にも届く。
自己資本は、配当性向40%の目安を守りながら厚みを増し、ROEは14%台に高まる。純現金は、体力に見合った買収にも回る。この場合は、技術商社として一段高い評価を受ける10年になる。
- 電子機器・部品(GF事業を除く):数量 130(出荷物量(百万点・部品とアセンブリの点数換算、推定))× 価格 1,031(1点あたり平均価格(円))→ 売上 1,340 億円・営業利益 87 億円。利益率6.5%
- GF事業(データセンター向けUPS):数量 60.0(年間の納入案件数(件、推定))× 価格 48,910(1件あたり平均売上(万円))→ 売上 294 億円・営業利益 32 億円。利益率11.0%
- 製造装置:数量 180(年間の納入台数(台、推定))× 価格 32,200(1台あたり平均売上(万円))→ 売上 580 億円・営業利益 81 億円。利益率14.0%
倍率:事業の純利益 134 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍。全体の PER 19.48 倍、時価総額 2,610 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向けの電源・光デバイス装置の需要が10年続き、利益率も上がる必要がある。実現すれば強いが、設備投資の波を越えて続く確度は低い。
やや楽観 24% 受注残が売上に変わり、装置とGFが着実に伸びる 利益 110 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 10,444 円2,142 億円
光デバイス装置とGF事業の受注残が売上に変わり、2020年代の後半に利益が大きく伸びる。その後も半導体と産業機械の設備投資は底堅く、省人化の需要が部品の数量を支える。
GF事業は売上が200億円台へ育ち、製造装置も大型案件を続けて取る。電子部品は価格競争が続くが、仕様提案の付加価値で利益率は6%を保つ。
利益は10年で2倍近くになる。ROEは12%台で安定し、配当性向40%の目安で増配が続く。ただ、利益率の水準は、設備投資の山の高さに左右される。強気の筋書きほどの高い利益率は、装置が続けて大型案件を取れた場合に限る。部品側は価格競争が続くので、全体の利益率は7%を大きく超えない。
- 電子機器・部品(GF事業を除く):数量 123(出荷物量(百万点・部品とアセンブリの点数換算、推定))× 価格 1,016(1点あたり平均価格(円))→ 売上 1,249 億円・営業利益 75 億円。利益率6.0%
- GF事業(データセンター向けUPS):数量 50.0(年間の納入案件数(件、推定))× 価格 48,910(1件あたり平均売上(万円))→ 売上 245 億円・営業利益 26 億円。利益率10.5%
- 製造装置:数量 165(年間の納入台数(台、推定))× 価格 30,820(1台あたり平均売上(万円))→ 売上 509 億円・営業利益 64 億円。利益率12.5%
倍率:事業の純利益 110 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.73 倍、時価総額 2,060 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の受注残(装置126億円・GF103億円)が数年の売上を支え、業種の中立前提の上側(年5〜7%)に近い。連続して成功する必要があるので、中立より薄く置いた。
中立 33% 中立:部品は物価並みに伸び、装置とGFが利益率を支える 利益 92 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 8,449 円1,733 億円
半導体と産業機械の設備投資は、人手不足と生成AIで緩やかに伸びる。ただ、途中に1回は調整の年が入り、数量は10年で3割ほど増えるにとどまる。
電子部品は、物価並みに値段が上がり、数量は設計に入り込んだ顧客で緩やかに増える。GF事業は売上が200億円近くまで育つが、案件の波は残る。製造装置は、受注残が一巡した後は平常の水準に戻る。
営業利益率は7%前後で、2026年の8%台から少し下がる。ROEは11%台で、増配は続くが、特別な超過成長はない。技術商社としての位置を保つ、実力どおりの10年だ。受注残の山が一巡した後の装置は、平常の水準に落ち着く。GF事業は、定期的な更新と保守の収入が土台を支える。部品は、顧客の設計に入った品目で安定した数量を稼ぐ。
- 電子機器・部品(GF事業を除く):数量 117(出荷物量(百万点・部品とアセンブリの点数換算、推定))× 価格 1,016(1点あたり平均価格(円))→ 売上 1,188 億円・営業利益 65 億円。利益率5.5%
- GF事業(データセンター向けUPS):数量 40.0(年間の納入案件数(件、推定))× 価格 48,910(1件あたり平均売上(万円))→ 売上 196 億円・営業利益 19 億円。利益率9.5%
- 製造装置:数量 150(年間の納入台数(台、推定))× 価格 30,820(1台あたり平均売上(万円))→ 売上 462 億円・営業利益 53 億円。利益率11.5%
倍率:事業の純利益 92 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18 倍、時価総額 1,656 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの10年中立(設備投資が年4〜7%で伸びる)と、会社の実力(売上の7割が低利益率の部品)の落としどころ。慎重な見方がやや強いので、中立に最も厚く置いた。
やや悲観 23% 設備投資が一巡し、AI向けの伸びが細る 利益 64 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 3,444 円706 億円
生成AIの設備投資が一巡し、光デバイス装置の大型案件が減る。GF事業も、データセンターの電源更新が思ったほど続かず、売上は100億円台で足踏みする。
電子部品は、メーカーの直接販売と大手商社との競争で、値上がりを十分に転嫁できない。利益率は5%を割る年が増える。
営業利益は2026年の水準を下回り、ROEは9%台に落ちる。配当は維持するが、増配は止まる。堅い財務は保つので、会社が傷むことはない。ただ、優良な技術商社という評価は薄れる。装置は受注を取り損ねた年に売上が大きく落ち、GFは更新が先送りされる。部品は価格を転嫁できず、粗利益が削られる。人件費だけが先に増えるので、営業利益率は4%台に下がる。
- 電子機器・部品(GF事業を除く):数量 105(出荷物量(百万点・部品とアセンブリの点数換算、推定))× 価格 1,016(1点あたり平均価格(円))→ 売上 1,066 億円・営業利益 51 億円。利益率4.8%
- GF事業(データセンター向けUPS):数量 28.0(年間の納入案件数(件、推定))× 価格 48,910(1件あたり平均売上(万円))→ 売上 137 億円・営業利益 11 億円。利益率8.0%
- 製造装置:数量 120(年間の納入台数(台、推定))× 価格 29,900(1台あたり平均売上(万円))→ 売上 359 億円・営業利益 34 億円。利益率9.5%
倍率:事業 ROE 9.2%。ROE が k に近いので、倍率の上限は低く、稼ぐ力を重く見て 10.0 倍に置いた。
確率:半導体と産業機械の設備投資は10年のうちに調整を受ける。過去にも2009年・2013年に赤字、2020年に営業利益が大きく落ちた。強気の根拠が連続して外れる必要はなく、確度が高い。
悲観 12% 構造的な負け:顧客の海外移転と中抜きで装置も部品も縮む 利益 28 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 1,298 円266 億円
顧客の半導体・産業機械メーカーの設備投資が国内で縮み、海外メーカーが自前の調達網に切り替えていく。部品の仕入れ先は、直接販売を強め、商社の取り分が削られる。
自社の光デバイス装置は、特定顧客への依存が裏目に出て、大型案件が戻らない。GF事業も、大手電機メーカーが直接施工を広げ、価格競争に巻き込まれる。
営業利益は2026年の半分以下になり、純利益は30億円を割る。配当は減り、純現金は運転資金と在庫の整理に使われる。会社は残るが、稼ぐ力は大きく落ちる。技術者を抱えたまま売上が減るので、固定費の重さが利益を直撃する。配当を守るために内部留保を取り崩し、新しい投資の余力も細る。顧客の海外移転は不可逆で、元の水準には戻らない。
- 電子機器・部品(GF事業を除く):数量 85.0(出荷物量(百万点・部品とアセンブリの点数換算、推定))× 価格 947(1点あたり平均価格(円))→ 売上 805 億円・営業利益 27 億円。利益率3.3%
- GF事業(データセンター向けUPS):数量 15.0(年間の納入案件数(件、推定))× 価格 43,800(1件あたり平均売上(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。利益率5.0%
- 製造装置:数量 85.0(年間の納入台数(台、推定))× 価格 27,600(1台あたり平均売上(万円))→ 売上 235 億円・営業利益 14 億円。利益率6.0%
倍率:悲観は稼ぐ力から出す。今の自己資本355億円に PBR 0.75 倍を掛けた。谷の値付けは根拠にしていない。
確率:半導体・産業機械の設備投資が構造的に縮み、仕入れ先の直接販売も進む。リーマン級の不況が重なれば起こるが、会社の財務が堅いので10%を少し上回る程度に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子機器・部品(GF事業を除く)
半導体製造装置・産業機械メーカー向けの電子部品・組み立て品・半導体・電源・画像機器。仕様提案と組み立てまで行う技術商社の本体。
| 数量出荷物量(百万点・部品とアセンブリの点数換算、推定) | 価格1点あたり平均価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 90.0 | 758 | 682 | 36 |
| 10 年後 中立 | 117 | 1,016 | 1,188 | 65 |
取り方:2025年12月期の売上1,031億円のうち電子機器・部品は73.2%の約755億円で、うちGF事業の73億円を除いた682億円を本体とした。点数は開示が無いので、取扱品の平均単価を約760と置いた推定。営業利益は部門別の開示が無く、製造装置の粗利益率が高いことを踏まえ、利益率5.3%と推定。
GF事業(データセンター向けUPS)
海外メーカーの大型UPSを国内のデータセンターに納め、設計・施工・保守まで行う。
| 数量年間の納入案件数(件、推定) | 価格1件あたり平均売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.0 | 36,500 | 73 | 7 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 48,910 | 196 | 19 |
取り方:2025年12月期の売上73億円(決算説明)。案件数は開示が無いので年20件、1件約3.7億円と推定。粗利益率は2026年4〜6月期で28.4%と全社を上回るため、営業利益率を約10%と推定。 数量は実物(納入案件数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
製造装置
光デバイス製造装置とシリコンウェーハ関連設備を自社で開発・製造する。納期は1年を超える。
| 数量年間の納入台数(台、推定) | 価格1台あたり平均売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120 | 23,000 | 276 | 32 |
| 10 年後 中立 | 150 | 30,820 | 462 | 53 |
取り方:2025年12月期の売上1,031億円のうち製造装置は26.8%の約276億円。台数は開示が無いので、年約120台・1台約2.3億円と置いた推定。粗利益率は4割台で、販売費を引いた営業利益率を約11.6%と推定。
リスクと懸念
半導体・産業機械の設備投資の下振れ
売上の大半が半導体製造装置と産業機械のメーカー向けで、設備投資が冷えれば部品と装置が同時に落ちる。2009年と2013年は赤字、2020年は営業利益が24億円まで落ちた。10年のうちに同じ波を少なくとも1回は受ける。
光デバイス装置の受注の偏り
光デバイス装置は1台数億円で、2026年上期の受注(94億円)が一部の大型案件に偏る可能性が高い。1件の延期や取消しで、売上と利益が大きくぶれる。納期が1年を超えるので、見通しの外れも後から出る。
データセンター電源の競争と案件の小ささ
GF事業の売上は73億円と小さく、2026年の計画も92億円だ。海外の大手電機メーカーが同じ市場におり、案件が数件ずれるだけで年の売上が動く。受注残は103億円あるが、その先の更新が続くかが分かれ目になる。
電子部品の低い利益率と中抜き
電子機器・部品の粗利益率は2割前後で、営業利益率は5%台にとどまる。メーカーが直接販売に切り替えたり、大手の商社に顧客を奪われたりすれば、利益は急に薄くなる。値上がりを転嫁できない年は、人件費が先に利益を削る。
在庫の積み上がりと運転資金
2022年は在庫の積み上げと法人税の支払いで、営業キャッシュフローが赤字になった。半導体の需要が急に変わると、在庫の評価損や不良在庫が出る。純現金204億円も、運転資金の波で目減りしうる。
技術者の確保と人件費
技術商社は、顧客に仕様を提案できる技術者が稼ぐ力の源だ。人手不足の中で採用費と人件費が先に増え、2023年は減益になった。この負担は10年続き、価格に十分転嫁できない年も出る。
今後の分かれ目
- 光デバイス装置の受注が2期続けて前年を上回り、受注残が200億円を超えたら
- 装置の利益率が会社全体を引き上げる筋書きに近づく。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- GF事業の売上が100億円を超え、粗利益率28%台を保ったら
- 新しい柱として定着したと見て、データセンター電源の数量の伸びを上方に直す。
- 半導体メーカーの設備投資が前年を2割以上下回ったら
- 部品と装置が同時に落ちる局面で、やや悲観側に確率を寄せる。
- 電子機器・部品の営業利益率が5%を下回る年が続いたら
- 価格競争か中抜きが進んだと見て、中立の利益率と倍率を下げる。
- 2027年の新しい中期経営計画が、売上2,000億円と利益率8%を掲げて、根拠も示したら
- 強気の筋書きの確度が上がる。ただ、実績が伴うまで確率は動かさない。
- 大型のM&Aで純現金が半分以上減ったら
- 資本配分の評価を下げ、買った事業の利益率を慎重に見直す。
見ておくもの
- 光デバイス製造装置の受注高・受注残・粗利益率
- GF事業(データセンター向けUPS)の売上と受注残
- 電子機器・部品の営業利益率(5〜6%を保てるか)
- 半導体製造装置メーカーと産業機械メーカーの設備投資
- 2027年に出る新しい中期経営計画の数値目標
- 在庫と営業キャッシュフロー
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースの式で置いた。k は 7.25%(基本 7.5% + quality +0.5%)、g は 4%、堀は普通なので残る割合は 1/2。式の上限は事業 ROE 11% 台で約 14〜15 倍になり、中立は上限の約 85% の 12.5 倍に置いた。市場の PER・PBR は倍率の根拠に使っていない。今の株価が倍でも半分でも、筋書きと倍率は動かない。悲観の床は稼ぐ力と純現金から出し、過去の PBR の底は使っていない。10年後の数字は、リース会計の形が変わる前の今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→19.48 倍・やや楽観 PER 13.5→18.73 倍・中立 PER 12.5→18 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。