結論
カワサキは、大阪の泉州で賃貸倉庫を持つ会社だ。タオルなど服飾の販売と、泉大津のホテルも手がける。2026 年 8 月期の売上は 23 億円、営業利益は 4.7 億円で、利益のほとんどは賃貸・倉庫が稼ぐ。
筆者の結論は、今の値段はやや割安というものだ。株価は純資産の 5 割台で、賃貸不動産の時価は帳簿を上回る。純現金は薄いが、借入は 7 億円しかなく、自己資本比率は 75% を超える。
課題は、稼ぐ力に対して資産が厚すぎることだ。ROE は 5% 台で、資本コストに届かない。倉庫の利益率は 40% 近いが、赤字の服飾とホテルが足を引く。来期は営業利益が 11% 減る予想である。
中立の 10 年では、賃料が物価並みに伸びて倉庫の稼ぎが増え、純利益は 5 億円ほどになる。会社が稼いだお金を使い切れず、純資産が積み上がっていく姿が目に浮かぶ。
見るべきは、資本の使い方が変わるかどうかだ。ホテルと服飾の整理、倉庫の取得、株主還元の 3 つが動けば、値打ちは大きく変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は悪くない。倉庫の稼ぎは安定していて、借金が少なく、資産の時価も帳簿を上回る。値段が純資産の半分近いのも、安全域として働く。
筆者が気にするのは、資本の使い方だ。稼いだお金の多くは配当と返済に回り、新規の倉庫取得は小さい。純資産が毎年積み上がり、ROE は 5% 台にとどまる。倉庫の利回りは高くても、会社全体では資産が遊んでいる。
もう 1 つは、ホテルと服飾という本業から外れた事業だ。赤字が 3 年続いても、売却や撤退の動きはない。創業家の支配が強く、少数株主が圧力をかけにくい。
それでも、値段と稼ぐ力の差は大きい。倉庫はもともと、持ち主が働かなくても賃料が入る資産だ。10 年持てば、賃料の上昇と純資産の積み上がりが報いる。派手さはなく、じっと持つ種類の会社である。ただし、少数株主の力で会社を変えられない点は、割り引いて見るべきだ。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つある。2026 年 8 月期の売上 23 億円の内訳は、賃貸・倉庫が 61%、服飾が 23%、ホテルが 16% だ。
賃貸・倉庫は売上 14 億円で、営業利益が 5.6 億円。大阪府の泉州、つまり忠岡町・岸和田市・貝塚市に、営業倉庫と賃貸倉庫を持つ。2023 年に竣工した大型の「カワサキテクノプラザ」と、2024 年の「カワサキ貝塚テクノプラザ」が柱だ。倉庫の屋根を使った太陽光発電も 7 か所ある。
服飾は売上 5.4 億円で、赤字が続く。シェニール織物の高級タオルなどを海外から輸入し、自社ブランド「レイクアルスター」で売る。自社の通販が伸び、株主優待のクーポンも使われている。
ホテルは売上 3.6 億円で、営業損失は 0.6 億円。2023 年 4 月に直営化した泉大津のホテルである。大阪・関西万博で宿泊は増えたが、人件費と食材費が重い。
従業員は少なく、本社と倉庫の管理が中心だ。不動産の賃貸が実質の本業である。倉庫は 20 棟近くで、1 棟ごとに数社のテナントが入る。倉庫は雨風をしのぐ建物なので、築年が古くても荷物は置ける。ただし、天井の高さや荷役のしやすさで、新築に劣る。テナントとの契約は数年単位で、更新のたびに賃料が見直される。
優良さと弱いところ
同社の強みは、泉州に集めた倉庫と、長く続くテナントとの関係にある。賃貸の営業利益率は 40% 近くで、近畿圏の物流施設は空室率が低く、賃料も上向いている。倉庫の大半は自己所有で、土地は帳簿で 26 億円ある。
弱みは 3 つある。第 1 に、ホテルと服飾の赤字だ。2 つ合わせて営業損失は 0.8 億円で、倉庫の利益の 1 割以上を食う。第 2 に、築年の古い倉庫が多い。大型の新築施設との賃料差は、今後広がりうる。第 3 に、資産が厚くて効率が低い。純資産 60 億円に対し、純利益は 3 億円、ROE は 5% 台にとどまる。
堀、つまり他社がまねできない強みは、立地と長期の賃貸契約くらいで、強いとは言えない。筆者は、残る割合を普通の水準でみる。
経営は、創業家の資産管理会社と社長の持株で議決権の約半分を握る。意思決定は速いが、少数株主の意向は通りにくい。岸和田のヤード用地は、2026 年 8 月期の第 4 四半期から賃貸が始まり、収益に貢献している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
泉州の倉庫は、関西の物流の波に乗っている。近畿圏の大型マルチテナント型の物流施設は、2025 年に過去最大の供給があっても、空室率は 4% 台にとどまった。2026 年の第 1 四半期は 2% 台まで下がり、実質賃料は上昇が見込まれる。通販の拡大と、関西空港に近い立地が需要を支える。物流の人手不足で、荷主は拠点を集約する動きも強めている。
一方、同社の倉庫は、中小型で築年の古いものが多い。大型の新築施設に比べ、賃料は低く、更新のたびに借り手が動きやすい。今後の供給が 2025 年の 4 割程度に減るとの見通しは、追い風である。
服飾は、高齢層の購買力に支えられた市場で、通販への移行が進む。タオルは百貨店向けの売上が細り、輸入の原価は円安で上がっている。
ホテルは、関西の訪日客の増加で稼働が上がったが、万博の終了で需要の見通しが読みにくい。最低賃金の上昇も重い。
10 年の中立では、倉庫の賃料は物価並みに伸び、服飾とホテルは赤字が続く。倉庫の需給が緩めば、築古の物件から先に傷む。ホテルは直営のため、人件費と食材費が全て自社の負担になる。万博が終わり、需要の見通しは読みにくい。
資本政策と M&A
還元は安定している。配当性向は 34% で、年の配当総額は約 1 億円。2025 年 7 月に小さな自社株買いも実施した。株主優待は、通販のクーポンとホテルの利用券を年 2 回渡す形で、実質の還元として大きい。株主にとっては、配当と合わせて利回りを底上げする効果がある。費用は開示がなく、筆者は年 0.3 億円前後と見る。
資本の使い方は、守りだ。借入は 7 億円まで減り、毎年 2.7 億円ずつ返している。配当と優待を除く手元の資金は、設備の更新と新規倉庫の取得に回す方針である。
親会社の分類では、創業家の資産管理会社が 40% を持つ。買収の話は出ていないが、自社株が発行済みの 26% あり、MBO の可能性は常に残る。ただ、公表された動きはない。
純現金はなく、純有利子負債は 0.4 億円。受入保証金 2.7 億円と資産除去債務 4.5 億円の約束も残る。余った現金で分ける額は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
安全域は厚い。株価は純資産の 5 割台で、賃貸不動産の時価は帳簿を上回る。借入は 7 億円で、自己資本比率は 75% を超えている。倉庫の利益率は 40% 近く、近畿圏の物流施設は空室が少なく、賃料は上向いている。
倉庫の更新ごとに賃料が上がれば、利益は物価並みに伸びる。2023 年と 2024 年に竣工した大型施設が通年で稼ぎ、2026 年からはヤード用地の賃貸も加わった。会社は新規の倉庫取得を進める方針を明確にしている。大型の新築施設を借りるほどの規模のない中小の荷主にとって、泉州の倉庫は、使い勝手の良い貸し先だ。
赤字のホテルと服飾は、小さな事業だ。撤退や縮小で、営業利益を 8000 万円ほど上積みできる。株主優待は通販とホテルの利用を増やし、赤字を縮める効果もある。配当性向は 34% と手堅く、毎期の利益の 3 分の 1 が株主に戻る。配当は毎年続く。
純資産の積み上がりが ROE を下げているが、資本の使い方を変えれば、価値は一気に上がる。自社株は発行済みの 26% あり、消却や買い増しで一株の取り分を増やす選択肢もある。
慎重な見方
稼ぐ力が弱い。2027 年 8 月期は営業利益が 11% 減る予想で、2026 年も 8% 減った。倉庫の利益率は 40% 近くあるが、売上はほぼ横ばいで、今後の伸びは見えにくい。大型の新築施設の供給が続けば、築年の古い泉州の倉庫は賃料が上がらない。
資本の使い方が遅い。純資産は毎年積み上がり、ROE は 5% 台で、資本コストの 7.5% に届かない。創業家の資産管理会社が 40% を持ち、少数株主が資本政策を変えさせるのは難しい。
ホテルと服飾は、赤字が長く続いている。人件費と食材費が上がり、価格転嫁もできない。倉庫の稼ぎを赤字が削る構図は、10 年たっても変わらないだろう。経営者が自らの事業を手放さない限り、改善は期待しにくい。資産除去債務の 4.5 億円と、建物の建て替え費用の上昇も重い。小さな会社で、テナント 1 社の退去が利益に響く点も見逃せない。
値段が安いのは、この低い資本効率と少数株主の立場の弱さを映している。割安に見えるのは、見かけだけではないのか。
どちらに重みを置いたか
倉庫の稼ぎと財務の安全は本物で、値段にも余裕がある。ただ、資本効率の低さと、支配株主の強さが、価値の増え方を抑える。強気の見方が少し強いと判断し、確率は楽観を 28%、悲観側を 34% とした。慎重な見方の中身は、資本効率と支配株主の問題で、倉庫の稼ぎそのものを疑う内容ではない。そのため、悲観の確率は大きくは寄せなかった。やや割安の根拠は、安全域である。上値を追う根拠は乏しいが、下値は限られる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 2,826 円60 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 776 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 1,874 円40 億円、今との差 +26.3%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,276 円91 億円 | 1,050 円22 億円 | +259.2% | +13.6% | 426 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,724 円79 億円 | 957 円20 億円 | +215.6% | +12.2% | 936 円20 億円 |
| 中立 | 38% | 3,340 円71 億円 | 844 円18 億円 | +182.1% | +10.9% | 1,590 円34 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,620 円35 億円 | 600 円13 億円 | +49.7% | +4.1% | 533 円11 億円 |
| 悲観 | 10% | 811 円17 億円 | 356 円8 億円 | −21.3% | −2.4% | 117 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,826 円60 億円 | 776 円17 億円 | +142.9% | +9.3% | 3,602 円77 億円 |
今の株価時価総額 1,483 円32 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 倉庫の賃料が物価並みに上がり、新規取得で面積も増える 利益 7 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 4,276 円91 億円
近畿圏の物流施設の需要が強く、泉州の倉庫の賃料が物価以上に上がる。会社は新規倉庫の取得を進め、貸せる面積は今の 1.2 倍の約 8.8 万㎡になる。ホテルは関西の観光需要で稼働が上がり、営業黒字に定着する。
賃料は更新のたびに上がり、10 年で 1.34 倍。倉庫の利益率は、償却が据え置かれる効果もあり 41% に乗る。服飾は自社の通販が育ち、赤字を脱する。
営業利益は 10 億円近く、純利益は 7 億円。資本の積み上がりを抑えて配当を増やす余地も出る。ただ、新規の倉庫は取得費が高く、利回りは今の物件ほど高くない。賃料の上昇は、大型新築の供給が絞られることが前提である。
- 賃貸・倉庫:数量 88,000(貸せる面積(㎡・推定))× 価格 2.55(1㎡あたり年間売上(万円))→ 売上 22 億円・営業利益 9 億円。面積 1.2 倍・賃料 1.34 倍
- 服飾:数量 270,000(販売点数(点・推定))× 価格 0.26(1 点あたり売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量は横ばい
- ホテル:数量 44,000(宿泊・飲食の利用客数(人・推定))× 価格 1.22(1 人あたり売上(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。客数 1.1 倍
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.03 倍、時価総額 91 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:近畿圏の物流需要が長く強く、新規の倉庫取得が会社の想定どおり進み、ホテルと服飾の赤字も止まるという条件が重なる必要がある。条件が多いので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料は物価並み、面積は緩やかに増える 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,724 円79 億円
倉庫の賃料は物価に近い伸びを保ち、貸せる面積は今の 1.15 倍に増える。新規の取得は着実に進み、テナントの入れ替わりも賃料の引き上げにつながる。
服飾は通販の拡大で赤字が止まり、ホテルも小幅な黒字になる。ただ、どちらも利益への寄与は小さい。会社の努力は、倉庫の稼ぎを守る方に向く。更新を重ねるほど、テナントは長く居ついてくれる。
営業利益は 8〜9 億円、純利益は 6 億円。倉庫の利益率は 40% 前後を保つ。会社の経営方針どおりに事業が進むが、新規取得の分だけ資本が増え、ROE は資本コストにわずかに届かない。
- 賃貸・倉庫:数量 84,000(貸せる面積(㎡・推定))× 価格 2.47(1㎡あたり年間売上(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 8 億円。面積 1.15 倍・賃料 1.30 倍
- 服飾:数量 243,000(販売点数(点・推定))× 価格 0.25(1 点あたり売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1 割減
- ホテル:数量 42,000(宿泊・飲食の利用客数(人・推定))× 価格 1.18(1 人あたり売上(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。客数 5% 増
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 77 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の需給の引き締まりと新規取得の方針に沿った、会社の計画に近い筋書き。計画の 2027 年 8 月期の減益には届かないが、更新ごとの賃料の引き上げを根拠に 20% を置いた。
中立 38% 倉庫の賃料は物価に近く伸び、服飾とホテルの赤字が足を引く 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,340 円71 億円
倉庫は現状維持に近い成長を続ける。新規の取得で貸せる面積は 8% 増え、賃料は 10 年で 1.30 倍。近畿の物流施設は空室が少なく、更新ごとの賃料の引き上げが効く。ただ、築年の古い倉庫は、新築の大型施設と賃料が離れていく。
服飾は、団塊世代の客が減り、通販の拡大で何とか下支えする程度。ホテルは万博の特需が去り、人件費の上昇で赤字が続く。2 つの小さな事業の赤字は、倉庫の黒字を 1 割ほど削る。
営業利益は 7 億円台半ば、純利益は 5 億円ほど。倉庫の建物の償却は取得時の値段のままだが、建て替えの投資で来期から増える。
- 賃貸・倉庫:数量 80,000(貸せる面積(㎡・推定))× 価格 2.47(1㎡あたり年間売上(万円))→ 売上 20 億円・営業利益 8 億円。面積 1.08 倍・賃料 1.30 倍
- 服飾:数量 230,000(販売点数(点・推定))× 価格 0.24(1 点あたり売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 15% 減
- ホテル:数量 40,000(宿泊・飲食の利用客数(人・推定))× 価格 1.14(1 人あたり売上(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。客数は横ばい
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 8 月期の会社予想(減益)から、倉庫の賃料の更新と小幅な取得で緩やかに戻る流れ。2026 年 8 月期の実績にも沿う。
やや悲観 24% 築古の倉庫は賃料が上がらず、2 つの小さな事業も不振 利益 3 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,620 円35 億円
近畿圏では大型の新築施設の供給が続き、築年の古い泉州の倉庫は賃料の引き上げが効かない。更新の際に賃料の据え置きや値下げを求められ、貸せる面積も今と同じにとどまる。
服飾は高齢の客が減り、売上が 4 割近く減る。ホテルは万博後の反動で稼働が落ち、赤字が拡大する。
営業利益は 4 億円台まで下がり、純利益は 3 億円ほど。倉庫の建て替えには物価で膨らんだ費用がかかり、配当を続けると現金が細る。資産除去債務の約 4.5 億円も、解体時の現金支出として重くのしかかる。倉庫の稼働率が 9 割を割れば、利益は急に細る。
- 賃貸・倉庫:数量 74,000(貸せる面積(㎡・推定))× 価格 2.09(1㎡あたり年間売上(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。面積は横ばい・賃料 1.10 倍
- 服飾:数量 190,000(販売点数(点・推定))× 価格 0.22(1 点あたり売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 3 割減
- ホテル:数量 36,000(宿泊・飲食の利用客数(人・推定))× 価格 1.00(1 人あたり売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。客数 1 割減
倍率:事業の純利益 3.3 億円・事業 ROE は約 4% で k 7.75% を大きく下回る。上限は 1÷k の約 13.3 倍だが、新たに投じる資本の稼ぎが k を大きく下回るので、7 割に引き上げず約 56% の 7.5 倍に置いた。谷の利益に谷の倍率を重ねてもいない。
確率:近畿圏の大型新築の供給が続き、泉州の古い倉庫が競争力を失う想定。2026 年 8 月期も営業利益が 8% 減っており、起きやすい筋書きとして 24% を置いた。
悲観 10% 大口テナントの退去と供給過剰で、賃料も面積も落ちる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 811 円17 億円
大口のテナントが退去し、近畿圏の倉庫の供給過剰が重なる。貸せる面積は 2 割減り、賃料も今より下がる。空きを埋めるために値引きし、更新時の賃料も下げる。
服飾とホテルは赤字が膨らみ、会社は撤退を検討する。固定費の償却と固定資産税、人件費は売上に連動せず、利益は大きく削られる。
営業利益は 2 億円台まで落ち、純利益は 1 億円台。配当を維持できず、会社は不動産の一部を売って資金を作る。売却を急ぐほど価格は下がり、売却価値は帳簿を下回り、少数株主に戻る価値は帳簿の 3 割ほどに下がる。倉庫は買い手がつくが、泉州の築古の物件は大型新築より安く買い叩かれる。
- 賃貸・倉庫:数量 62,000(貸せる面積(㎡・推定))× 価格 1.81(1㎡あたり年間売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。面積 2 割減・賃料 0.95 倍
- 服飾:数量 140,000(販売点数(点・推定))× 価格 0.20(1 点あたり売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量 4 割減
- ホテル:数量 30,000(宿泊・飲食の利用客数(人・推定))× 価格 0.82(1 人あたり売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。客数 25% 減
倍率:稼ぐ力は純利益 1.4 億円(÷ k で約 19 億円)まで。資産の売却価値は大きいが、清算はされない前提で少数株主には戻らないとみて、今の自己資本 59.6 億円に掛けて約 0.30 倍(約 17 億円)とした。
確率:近畿の倉庫の供給過剰と、大口テナントの退去が重なる構造的な負け。同社は小さな会社でテナントの数も限られ、1 社の退去の影響が大きいので 10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸・倉庫
泉州(忠岡町・岸和田市・貝塚市)に営業倉庫・賃貸倉庫を持ち、屋根で太陽光発電もする。大型のテクノプラザが柱。
| 数量貸せる面積(㎡・推定) | 価格1㎡あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 74,000 | 1.90 | 14 | 6 |
| 10 年後 中立 | 80,000 | 2.47 | 20 | 8 |
取り方:売上 14.05 億円・営業利益 5.56 億円(利益率 40%)は開示値。貸せる面積は推定で、売上のうち賃貸収入約 13.3 億円を、泉州の倉庫の賃料水準(1 ㎡あたり年 1.8 万円前後)で割って約 7.4 万㎡と置いた。太陽光の売上(年 0.7 億円)は賃貸に含めた。
服飾
シェニール織物の高級タオルなどを輸入し、自社ブランドで百貨店・専門店と自社通販で売る。
| 数量販売点数(点・推定) | 価格1 点あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 270,000 | 0.20 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 230,000 | 0.24 | 6 | 0 |
取り方:売上 5.40 億円・営業損失 0.19 億円は開示値。販売点数は推定で、1 点平均 0.2 万円と仮定して 27 万点と置いた。
ホテル
泉大津のホテル「レイクアルスターアルザ泉大津」を直営する。宿泊と飲食。
| 数量宿泊・飲食の利用客数(人・推定) | 価格1 人あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 40,000 | 0.91 | 4 | −1 |
| 10 年後 中立 | 40,000 | 1.14 | 5 | 0 |
取り方:売上 3.63 億円・営業損失 0.62 億円は開示値。利用客数は推定で、客単価を約 0.9 万円と仮定して 4 万人と置いた。
リスクと懸念
築古の倉庫と新築の供給
近畿圏では大型新築の物流施設の供給が続く。同社の泉州の倉庫は中小型で築年が古く、賃料が上がりにくい。更新時に借り手が動けば、空室や値下げの圧力が出る。
資本効率の低さ
純資産 60 億円に対し純利益は 3 億円で、ROE は 5% 台。稼いだ現金を新規の倉庫に回さず、純資産が積み上がり続ければ、資本コストに届かない状態が長引く。
赤字事業の抱え込み
ホテルは 3 年、服飾は長く赤字が続く。営業損失は合わせて年 0.8 億円で、倉庫の利益の 1 割を削る。撤退や売却の動きがなく、人件費と食材費の上昇で赤字は広がりうる。
大口テナントの退去
小さな会社で、テナントの数が限られる。大口の退去が出ると、利益が大きく動く。2026 年 8 月期には、退去予定だったテナントが継続利用に変わった経緯がある。
資産除去債務と建て替え費用
資産除去債務は 4.5 億円あり、倉庫の解体で現金が出る。建築費の上昇で建て替えの費用も膨らみ、今ある建物の償却より現金の支出が先に重くなる。
創業家の支配
創業家の資産管理会社が 40%、社長を含めて約半分の議決権を持つ。自社株も発行済みの 26% あり、少数株主の意向は通りにくい。資本政策や撤退の判断は支配株主に左右される。
今後の分かれ目
- ホテルや服飾から撤退・売却を発表する
- 営業利益が年 0.8 億円ほど上積みされ、中立の利益を押し上げる。楽観側の確率を上げる。
- 新規の倉庫取得が進み、貸せる面積が増える
- 稼ぎは増えるが、取得費の高さで利回りは今より下がる。ROE への影響を見て判断する。
- 大口テナントの退去が開示される
- 倉庫の稼ぎが大きく動く。やや悲観の確率を上げる。
- 配当性向や自社株買いが引き上げられる
- 積み上がる純資産が株主に戻り、ROE が上がる。価値の増え方を見直す。
- 創業家が非上場化(MBO)を発表する
- 買付けが行われれば、価格次第で少数株主に区切りがつく。公表された動きは今のところ無い。
見ておくもの
- 賃貸・倉庫の稼働率とテナントの動き
- 近畿圏の物流施設の空室率と賃料
- ホテルと服飾の営業損益
- 新規倉庫の取得と設備投資の額
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)、k 7.75%、g 4%)と事業の経済性だけで置いた。ROE が k に届かない筋書きは 1÷k の約 13.3 倍が上限で、新規投資の稼ぎが k に届かないこと、築古の倉庫と赤字の 2 事業を抱えることから 5〜9 割に置いた。今の株価・過去の PER・PBR は使っていない。純資産の厚さ(PBR)は割安の根拠にしていない。10 年後は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→13.03 倍・やや楽観 PER 11.3→12.9 倍・中立 PER 9.9→12.9 倍・悲観 PBR 0.3→0.301 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0 を足した(決まり v2)。創業家支配や赤字事業の抱え込みは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.75%。