結論
シンデン・ハイテックスは、半導体やディスプレイ、電子機器を仕入れて売る専門商社だ。筆者の結論は、本質価値が今の時価総額を大きく下回る、つまり割高というものだ。理由は、今期の利益がメモリー価格の急騰による山の水準にあることだ。
2027年3月期の第1四半期は、売上が約2倍の196億円、営業利益が5倍の12億円になった。会社は通期予想を、売上500億円から790億円へ、営業利益17億円から40億円へ引き上げた。主因はメモリーの値上がりで、会社自身も市況の追い風を含むと認めている。
商社の利益率は薄い。過去12年の営業利益率は最高でも5%台で、多くの期は2〜3%だった。値上がりが一巡すれば、利益は元の水準へ戻りやすい。しかも在庫と売掛金が増え、自己資本比率は33.7%から23%に下がった。
配当は前期の約1.8倍に増える予定だが、山の利益から出る配当である。筆者は、10年を通した利益と還元で見ると、今の値段は高いと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良いときの利益を、永続するものと誤解してはいけない会社」だ。商社は仕入れて売るだけで、値段の決定権は仕入先と顧客が握る。利益率が薄いのは、構造的な宿命である。
オーナーに残る利益も小さい。純利益は営業利益の半分に届かず、売掛金と在庫に資金が吸われる。売上が急に伸びる局面ほど、運転資金が膨らみ、借入が増える。会計上の利益ほど現金は残らない。
経営は、株主還元に前向きだ。だが、増配は山の利益に連動したものにすぎない。資本の使い方で評価できる実績は、まだ見えない。
安全域は薄い。自己資本は小さく、メモリー価格が下がれば、在庫の評価損と売掛金の貸倒れが重なる。値段は、山の利益に支えられている。筆者は、この値段に十分な余裕があるとは見ない。
持ち続けたいと思える会社かと問われれば、利益の質が確かめられるまで、慎重に見たいと答える。
何で稼ぐ会社か
事業は、電子部品と電子機器を仕入れて売る商社だ。事業の種類は1つだが、売上は品目で4つに分かれる。昨期の売上428億円のうち、半導体製品が約6割、ディスプレイが約2割、システム製品が約15%、バッテリーと電力機器が数%を占めた。
半導体製品は、メモリーなどを海外メーカーから仕入れ、国内外の機器メーカーに売る。値段はメーカーが決め、商社は数量と調達力で稼ぐ。ディスプレイは、液晶モジュールを産業機器向けなどに売る。PC向けの需要が一巡し、足もとは減っている。
システム製品は、検査装置、AIサーバー関連機器、基板製品、電子機器の受託製造(EMS)を含む。商社の中では付加価値が高い。会社はここを伸ばして、市況に左右されにくい構造に変えたいと説明する。
バッテリー事業は、家庭用の蓄電システム向けのリチウムイオン電池が主力だったが、終息に向かっている。その代わりに、他の電池や電力機器を伸ばす方針だ。
海外の売上も大きく、為替の変動の影響を受ける。自己株は発行済株式の約1割ある。
顧客は国内外の電機・産業機器メーカーで、個別の取引先の開示は少ない。大型案件が入る年と入らない年で、売上と利益が大きく動く。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、小回りの利く調達力だ。大手商社が相手にしない少量の案件や、品薄の部品の確保で顧客をつかんできた。今期の伸びも、新しい案件と、調達機能を生かした製品の確保が寄与したと会社は説明する。
ただし、堀、つまり他社がまねできない強みとまでは言えない。扱う製品は半導体メーカーが値段を決め、商権(取り扱う権利)も永続しない。マクニカや加賀電子のような大手に比べ、規模で劣る。
収益力は低い。過去10年の営業利益率は1〜5%で、ROEの中央値は8%台だが、これは借入の多さで底上げされたものだ。純利益は営業利益の半分に届かない期が多く、利払いと税の負担が重い。
資本の使い方は、まだ評価が定まらない。配当は利益に連動する方針で、株主還元には前向きだ。しかし財務は急に弱くなり、貸倒引当金の計上も出た。急拡大の局面で、売掛金の質を見極める必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体市況は、AIサーバー向けの需要で大きく動いている。メモリーを中心に供給が絞られ、価格が上がった。会社は、成長が用途ごとに偏り、従来の市況連動型とは違うと述べる。AI関連と、それ以外で収益の差が開いているという認識だ。
商社は、この値上がりの恩恵を受けやすい。仕入れた在庫の値段が上がり、売上が膨らむ。しかし値上がりが止まれば、在庫に損失が出る。今期の増収の多くは値段の効果で、数量の伸びではない。
競合は、国内最大手のマクニカ、加賀電子、東京エレクトロンデバイス、トーメンデバイスなどだ。メモリー専業に近い商社もあり、規模の大きい相手が優位に立つ。半導体メーカーが商社を介さず、直接販売に切り替える動きも続く。
ディスプレイは、PC向けの需要の一巡で減っている。システム製品や電池は、新しい案件が積み上がる途中だが、数字は小さい。10年を通せば、メモリー価格の山が過ぎた後の姿が本体になる。
データセンター向けの投資は続くが、商社が取れる付加価値は、メーカーの直販化や中国勢の台頭で薄くなる可能性もある。
資本政策と M&A
還元は、配当が中心だ。過去の配当は、2022年3月期に大きく増え、2024年3月期に半減するなど、利益に連動して大きく動いてきた。今期の予想配当は前期の約1.8倍で、山の利益に合わせた増配である。
自己株は発行済株式の約1割にのぼる。買収の発表は無く、連結範囲の変更もない。急拡大した売上は、既存事業の値上がりによる。
財務は、売上の急拡大に伴って弱くなっている。第1四半期末の総資産は342億円と、期首の221億円から5割増え、自己資本比率は33.7%から23%へ下がった。借入が増えれば、利払いの負担が重くなる。
設備投資は小さく、減価償却の影響は軽い。新リース会計基準の影響は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
半導体市況は、AIサーバー向けの投資で構造的に強くなった。過去のようなシリコンサイクルの波ではなく、メモリーの供給制約が長く続くスーパーサイクルだという見方がある。第1四半期の営業利益率は6%を超え、過去12年の最高5.3%を上回った。
会社は、調達力を生かした品薄品の確保と、新規ビジネスの立ち上げで、市況の追い風を超える伸びを作っている。システム製品は、AIサーバー関連で伸び、EMSも案件が積み上がる。商社の中でも付加価値の高い領域へ移れば、利益率は上がる。
配当は前期の約1.8倍に増え、還元も強まった。業績予想は、5月から8月にかけて大きく上方修正され、修正の余地はなお残る。メモリーの高値が数年続けば、利益は今の水準を保ち、純利益は20億円規模で続く。
その場合、株の価値は今の水準を上回る。
商権を持ち、調達力で他社と差をつけている限り、山の利益が思ったより長く続く可能性は、十分に考えられる。
慎重な見方
今期の利益は、メモリーの値上がりという一時的な追い風でできている。会社自身が、市況の追い風を含むと認めている。商社の営業利益率は過去12年で1〜5%で、6%台は例外中の例外だ。
値上がりが止まれば、在庫の評価損が出る。拡大した売掛金の中には、貸倒れのリスクも潜む。第1四半期に貸倒引当金を積んだことは、その兆候である。自己資本比率は一気に23%まで下がり、借入が増えれば、金利が上がる環境で利益を圧迫する。
半導体メーカーの直接販売や、中国勢の台頭で、商権を失うおそれもある。ディスプレイ事業は縮み、バッテリー事業の主力は終息に向かう。EMSも調整局面で、第2の柱はまだ小さい。
10年を通せば、利益は元の薄い水準に戻り、配当も縮む。今の値段は、山の利益を永続するかのように評価している。
ディスプレイとバッテリーの主力が縮む中、新しい柱が育つ保証もない。商社の収益は、数量よりも仕入れの値段で決まる。値上がりで膨らんだ利益は、反動でも同じ大きさで戻ってくる。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、市況の追い風が続く間の姿としては正しい。しかし10年を測るには、山を平準化して見る必要がある。確率は中立に33%、やや悲観に28%、悲観に14%を置き、楽観は7%とした。商社の薄い利益率と、財務の悪化、在庫と売掛金のリスクが、確率を悲観の側へ寄せた。結果として、10年の価値は今の時価総額を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,894 円73 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,339 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 3,336 円63 億円、今との差 −46.5%、 期待の年率 0.0%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,950 円206 億円 | 4,244 円80 億円 | +143.5% | +9.3% | 1,064 円20 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,754 円127 億円 | 3,289 円62 億円 | +60.9% | +4.9% | 1,808 円34 億円 |
| 中立 | 33% | 4,631 円87 億円 | 2,706 円51 億円 | +17.6% | +1.6% | 2,421 円46 億円 |
| やや悲観 | 28% | 992 円19 億円 | 1,592 円30 億円 | −58.6% | −8.4% | 723 円14 億円 |
| 悲観 | 14% | 753 円14 億円 | 796 円15 億円 | −75.2% | −13.0% | 217 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,894 円73 億円 | 2,339 円44 億円 | −0.1% | 0.0% | 6,233 円117 億円 |
今の株価時価総額 6,240 円118 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:メモリーの高値が長引き、システム製品も伸びて利益率が4%近くになる 利益 16 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 10,950 円206 億円
メモリーの供給制約が長く続き、取扱数量も値段も高い水準を保つ。調達力を生かして、新しい取引先を次々と獲得する。
システム製品は、AIサーバーや検査装置で2倍に伸び、営業利益率が上がる。ディスプレイは縮むが、損は出ない。
営業利益率は4%近くになり、過去12年の最高5.3%に迫る。営業利益は約32億円で、昨期の約3倍だ。ただし純利益は営業利益の半分にとどまり、売掛金と在庫の運転資金が膨らむ。配当性向は5割程度を保つ。
この筋書きは、メモリー高と新規案件の獲得が重なる必要があり、実績のない領域に賭ける姿だ。
- 半導体製品:数量 138(取扱数量(百万個))× 価格 363(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 500 億円・営業利益 19 億円。数量1.3倍、値段1.45倍
- ディスプレイ:数量 122(出荷台数(万台))× 価格 7,500(1台あたりの平均単価(円))→ 売上 91 億円・営業利益 2 億円。数量0.9倍
- システム製品・電池ほか:数量 1,640(受注の件数(件))× 価格 1,400(1件あたりの平均金額(万円))→ 売上 230 億円・営業利益 10 億円。件数2倍、付加価値
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.98 倍、時価総額 206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向けの供給制約が10年近く続き、システム製品でも付加価値が取れる必要がある。山の利益を永続させる前提が強く、7%にとどめた。
やや楽観 18% やや楽観:市況の追い風が数年続き、システム製品が伸びる 利益 11 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 6,754 円127 億円
メモリーの高値は数年続くが、その後は落ち着く。取扱数量は1割ほど増え、値段は物価を少し上回る。
システム製品は1.7倍に伸び、EMSも案件が積み上がる。ディスプレイは縮み続ける。
営業利益率は3%台前半で、過去の平均より高い。営業利益は約22億円。ただし山の期間は短く、純利益は10億円ほどで、10年の平均では昨期の約2倍にとどまる。
システム製品の伸びが、メモリーの反動を和らげる。営業利益は約22億円まで上がる局面があっても、長くは続かない。ただ、商社の薄利という構造は変わらない。会社が掲げる付加価値の高い領域への移行は、一部でしか実現しない。
- 半導体製品:数量 119(取扱数量(百万個))× 価格 345(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 410 億円・営業利益 13 億円。数量1.12倍
- ディスプレイ:数量 108(出荷台数(万台))× 価格 7,500(1台あたりの平均単価(円))→ 売上 81 億円・営業利益 2 億円。数量0.8倍
- システム製品・電池ほか:数量 1,394(受注の件数(件))× 価格 1,360(1件あたりの平均金額(万円))→ 売上 190 億円・営業利益 8 億円。件数1.7倍
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 127 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:メモリー高が数年続き、システム製品が育つ姿。今期の勢いを考えて、18%を置いた。
中立 33% 中立:山が過ぎて、利益率は2%台の通常の水準に戻る 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,631 円87 億円
メモリー価格の山は2〜3年で過ぎ、利益は通常の水準に戻る。取扱数量は横ばいで、値段は物価並みに上がる。
ディスプレイは3割減り、システム製品は5割増える。営業利益率は2%台後半と、過去の平均の少し上だ。液晶モジュールは値下がりが続き、ディスプレイの値段は10年で1.2倍にとどまる。営業利益は約16億円、純利益は約7億円。
10年の間には、山の3年で純利益が20億円規模になる。その配当と自己資本の積み上げが、10年の価値の一部を支える。それでも10年後の姿は、昨期に近い水準にとどまる。
商権は大半を保ち、財務も悪化は一時的で済む。大きな成功も失敗もない、平均的な姿である。
- 半導体製品:数量 106(取扱数量(百万個))× 価格 335(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 355 億円・営業利益 9 億円。数量1.0倍、値段1.34倍
- ディスプレイ:数量 94.5(出荷台数(万台))× 価格 7,200(1台あたりの平均単価(円))→ 売上 68 億円・営業利益 1 億円。数量0.7倍。液晶モジュールは値下がりが続き、値段は1.2倍
- システム製品・電池ほか:数量 1,230(受注の件数(件))× 価格 1,340(1件あたりの平均金額(万円))→ 売上 165 億円・営業利益 6 億円。件数1.5倍
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 87 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:メモリーの値上がりは数年で一巡する。商社の薄利という構造と、山の利益の反動を踏まえ、最も確率の高い姿に33%を置いた。
やや悲観 28% やや悲観:商権を一部失い、在庫と貸倒れの損失が出る 利益 3 億円 · PER 5.5 倍 · 株価時価総額 992 円19 億円
山が過ぎたあと、在庫の評価損と売掛金の貸倒れが出る。主要な商権の一部を失い、取扱数量が2割減る。値段も物価に追いつかない。
ディスプレイは半減し、システム製品も思ったほど伸びない。営業利益率は2%を割り、営業利益は8億円ほどになる。
配当は、山の3年に増えるが、その後は減る。自己資本は積み上がっても、稼ぐ力に比べて資産が重く、借入の利払いが利益を圧迫する。在庫の評価損の処理が、2年ほど利益を押し下げる。
山の利益で増えた配当は、利益の後退とともに続けにくくなる。株主の取り分は、思ったほど積み上がらない。
- 半導体製品:数量 84.8(取扱数量(百万個))× 価格 325(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 276 億円・営業利益 5 億円。数量0.8倍、商権の喪失
- ディスプレイ:数量 67.5(出荷台数(万台))× 価格 6,900(1台あたりの平均単価(円))→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円。数量0.5倍
- システム製品・電池ほか:数量 984(受注の件数(件))× 価格 1,300(1件あたりの平均金額(万円))→ 売上 128 億円・営業利益 3 億円。件数1.2倍
倍率:ROEは3%台でkを大きく下回る。正当化PERは約5倍で、それよりわずかに上の5.5倍に置いた(7割への引き上げはしていない)。
確率:半導体メーカーの直接販売化で商権を失い、山の後の反動で損失が出る姿。商社の構造的な弱さから、28%を置いた。
悲観 14% 悲観:メーカーの直接販売化と財務の悪化で、稼ぐ力を失う 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 753 円14 億円
半導体メーカーが直接販売に切り替え、主要な商権を失う。取扱数量が半減し、在庫の評価損が大きく出る。
ディスプレイは赤字になり、システム製品も小さいまま。営業利益は1億円程度まで落ち、稼ぐ力では価値を測れない。取引先の信用不安が重なり、売掛金の回収にも苦労する。
借入が重く、配当は大きく減る。売れる資産は運転資本が中心で、投げ売りの割引が大きい。自己資本は減損で70億円に減る。
山の3年の利益と配当は、その後の損失で相殺される。商社として、規模を縮めて生き残る姿である。残る事業は、システム製品の一部と小口の取引にとどまる。
- 半導体製品:数量 53.0(取扱数量(百万個))× 価格 300(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 159 億円・営業利益 1 億円。数量0.5倍、商権の喪失
- ディスプレイ:数量 40.5(出荷台数(万台))× 価格 6,600(1台あたりの平均単価(円))→ 売上 27 億円・営業利益 −1 億円。赤字
- システム製品・電池ほか:数量 738(受注の件数(件))× 価格 1,200(1件あたりの平均金額(万円))→ 売上 89 億円・営業利益 1 億円。件数0.9倍
倍率:稼ぐ力では測れない。売れる運転資本の投げ売りの割引と、借入の返済を考え、約14億円を、今の自己資本75億円に対して0.19倍とした。EV(時価総額と純有利子負債の合計)で見ても、稼ぐ力はほぼ無く、借入の返済を優先する前提である。営業利益がほぼゼロでEV÷営業利益の倍率は意味を持たない。
確率:商権の大半を失い、財務の悪化で身動きが取れなくなる姿。薄利の商社として、起こりうるため14%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体製品
メモリーなど半導体を仕入れて機器メーカーに売る。売上の約6割で、今期の急増の主役。
| 数量取扱数量(百万個) | 価格1個あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 106 | 250 | 265 | 8 |
| 10 年後 中立 | 106 | 335 | 355 | 9 |
取り方:品目別の売上構成(前年同期の半導体製品62%)から売上を約265億円と推定。単価は開示が無いため推定し、数量を約106百万個と置いた。営業利益は全社11億円を、構成比と利益率の想定で割り振った推定値。
ディスプレイ
液晶モジュールを産業機器などに売る。PC向けの需要が一巡し、減少している。
| 数量出荷台数(万台) | 価格1台あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 135 | 6,000 | 81 | 2 |
| 10 年後 中立 | 94.5 | 7,200 | 68 | 1 |
取り方:品目別の売上構成(前年同期の19%)から売上を約81億円と推定。単価は推定し、約135万台と置いた。営業利益は推定。
システム製品・電池ほか
検査装置・AIサーバー関連・基板製品・EMS、電池・電力機器、その他。
| 数量受注の件数(件) | 価格1件あたりの平均金額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 820 | 1,000 | 82 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,230 | 1,340 | 165 | 6 |
取り方:品目別の売上構成(システム製品15%、電池・その他4%)から売上を約82億円と推定。件数と金額は推定。営業利益は推定。
リスクと懸念
メモリー価格の反落
今期の増益の主因はメモリーの値上がりで、会社自身も市況の追い風と認めている。値下がりに転じれば、在庫の評価損が出て、売上も利益も急に縮む。
運転資金と財務の悪化
売上の急拡大で在庫と売掛金が増え、第1四半期末の総資産は期首から5割増えた。自己資本比率は33.7%から23%へ下がった。借入が増えるほど、利払いが重くなる。
貸倒れ
第1四半期に貸倒引当金の繰入が出た。新しい取引先が急に増えた局面では、売掛金の質が落ちやすい。大口の貸倒れが出れば、利益の大半が吹き飛ぶ。
商権の喪失
半導体メーカーが商社を介さず直接販売に切り替えたり、大手商社が取扱いを広げたりすれば、小さな商社の商権は失われやすい。
為替の変動
海外の売上が大きく、為替の変動で損益が動く。第1四半期は為替差損が出た。
新しい柱が育たない
システム製品やEMSは伸びている途中だが、売上はまだ小さい。ディスプレイは縮み、電池の主力は終息に向かう。柱の入れ替えが遅れれば、利益率は元の水準に戻る。
今後の分かれ目
- メモリー価格が下落に転じ、在庫の評価損が出たら
- 中立から悲観側へ確率を移す。山の利益の反動が早く来たと判断する。
- 営業利益率が2期続けて5%を超えたら
- 商社の構造が変わった可能性として、楽観・やや楽観に確率を移す。
- 貸倒引当金の繰入が拡大したら
- 売掛金の質の低下と見て、悲観側へ確率を移す。
- システム製品の売上が100億円を超え、利益率が高まったら
- 市況に左右されにくい柱ができた証拠として、評価を上げる。
- 自己資本比率が20%を下回ったら
- 借入の負担が重くなったとして、財務の評価を下げる。増資や配当の見直しにも注意する。
- 配当が利益に連動して大きく下がったら
- 山の利益が一巡した合図として見る。
見ておくもの
- メモリー価格と半導体製品の売上・利益率
- 営業利益率(過去12年の最高5.3%との差)
- 在庫・売掛金・借入の増え方と自己資本比率
- 貸倒引当金の繰入
- システム製品・EMSの売上と利益
- 配当性向と自己株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価・過去や同業のPERは使っていない。ROEがkの9.75%に届かないため、正当化PER(RONIC方式、g4%、残る割合は弱い1/3)の約75〜85%に置いた。中立は山を平準化し、営業利益率2%台後半とした。山の3年の利益と配当は、純利益の合計と還元に入れた。今期の会社予想(営業利益40億円)は、中立には採っていない。減価償却は小さく、物価の影響は軽い。新リース会計基準の影響は小さく、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。今期・来期の会社予想の純利益(各約20億円)を、純利益の合計に入れたため、自己資本の流れは直線の機械計算より大きい。結果は大きな割高だが、株価に寄せて調整してはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.5→12.98 倍・やや楽観 PER 7.3→12.12 倍・中立 PER 6.3→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質+2.25%を足して9.75%。商社の薄利と財務の悪化を k に入れ、メモリーの山の反動は筋書きの利益率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.75% → 8.25%。