結論
サトー商会は、仙台に本拠を置く業務用食品の専門商社だ。ホテルや飲食店、病院、学校給食に食材を卸し、東北5県には業務用の食品直売センターを持つ。筆者の結論は「割高」。財務は盤石だが、稼ぐ力が資本に見合っていない。
強みは財務だ。自己資本比率は74%、有利子負債はほぼゼロで、現金は時価総額の4割近い。不況でも潰れない会社だ。ただ、この安全は株主の利益には直結しない。現金と資産がたまったままでは、ROEは4%台にとどまる。
利益は薄く、伸びにくい。営業利益率は3%前後で、人件費と運賃の上昇が毎期効く。直近も増収で営業減益だった。東北は人口が減り、外食の客数も細る。物価の分だけ売上は伸びても、量は減る。
中立の価値は、今の時価総額を大きく下回る。割安と言えるのは、会社が現金を株主に返し、資本の稼ぎを引き上げた時だけだ。それが起きる気配は、今のところ薄い。株主優待は東北産の米だが、利回りに響く額ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、サトー商会は「安全だが、儲けは薄い」会社だ。現金は厚く、借金はなく、景気後退でも潰れない。ただ、バリュー投資が重んじるのは、投じた資本がどれだけ稼ぐかだ。この会社は、自己資本272億円に対して純利益が12億円で、ROEは4%台にとどまる。
株主が自由に使える利益は、純利益の8割ほどと筆者は見る。配送トラックや店舗への投資は小さいからだ。ただ、実際に株主へ戻るのは配当性向で3割強だけで、残りは現金や有価証券として会社に残る。
筆者がいちばん気にするのは、資本の使い方だ。現金を増やし続ける会社は、事業に再投資する先が乏しいと自ら言っているに等しい。ここで会社が還元を厚くするか、買収で規模を取りにいけば、物語は変わる。
安全域は、悲観の筋書きでは厚いが、中立でも今の値段に届かない。安全だから割安とは言えない。
何で稼ぐ会社か
サトー商会は、仙台市に本社を置く業務用食品の専門商社だ。上場は1994年で、連結の従業員は約700人。直近の売上508億円のうち、卸売が約88%、小売が約12%を占める。
稼ぎの中心は卸売だ。顧客は、ホテルやレストラン、学校給食、病院、高齢者施設、社員食堂、弁当・惣菜店などだ。調理済みの冷凍食品を中心に、製菓・製パンの原材料や包装資材も扱う。東北6県に自社のトラックと配送員を持ち、自前の配送網を持つ点が特徴になる。
小売は、業務用の食品直売センターだ。東北5県に21店あり、業務用の食品を現金払いで持ち帰れる売場だ。売上は63億円で、直近は店舗の運営費が増えて減収だった。
利益の出方は偏っている。卸売の営業利益は22億円、小売は3億円だ。ここから本社の費用9億円を引くと、全社の営業利益は16億円になる。
ほかに自社ブランド(PB)商品の開発もあり、卸の利幅を少し厚くする狙いだ。連結子会社のアキタサトー商会と合わせた2社で事業を営む。顧客は東北と北関東に広がり、一件あたりの取引は小さいが、数が多く、長く続く関係が利益を支えている。
優良さと弱いところ
優良さは「財務は堅いが、事業の堀は浅い」にまとまる。堀、つまり他社がまねできない強みは、物流網と顧客との長い取引にあるが、深くはない。
強みは三つある。一つ目は、東北6県をカバーする自前の配送網だ。自前で届ける力は、遠く離れた大手には出しにくい。二つ目は、病院・給食という景気に左右されにくい顧客だ。三つ目は、実質無借金の財務で、コロナ禍の2021年3月期でも営業利益率は1.9%を保った。
弱みも三つある。一つ目は、利益率の薄さだ。営業利益率は過去12年で1.9%から3.4%の間にとどまる。二つ目は、東北という人口減の速い地域に集中している点だ。三つ目は、価格を決める力の弱さで、仕入れ値と運賃の上昇を顧客に全部は転嫁できない。
資本の使い方は保守的だ。ROEは過去10年の中央値で4.6%と、資本コストを大きく下回る。現金と有価証券を厚く持ち続ける点は、安全のためとはいえ、株主から見れば資本の無駄でもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業務用食品卸の市場は、外食・給食の食材を運ぶ「物流の仕事」だ。量は人口と外食の客数に連動し、日本では実質で横ばいか緩やかな減少に向かう。とくに東北は人口の減りが速く、10年先の量は今より1割前後少ないと筆者は見る。
追い風と逆風が同時に来ている。追い風は価格転嫁だ。仕入れ値が上がれば卸の売値も上がり、売上は物価並みに伸びる。逆風は、人件費と運賃の上昇だ。2024年の物流規制以降、配送の費用は毎年上がり、卸の利益を削る。直近もサトー商会は増収だが営業減益だった。
競争相手は、国分グループ、三菱食品、日本アクセスなど全国の大手卸の業務用部門と、地場の食材卸だ。大手は物流網と仕入れの力で勝る。地場は小回りと顧客との関係で戦う。
食品卸は、再編が進みやすい業界だ。規模が物流の効率を決めるため、小さな卸は大手の傘下に入るか、特定の顧客層に特化するかを迫られる。サトー商会は、病院・給食・外食に強い東北の専門卸として、後者を選んでいる。ただ、その専門性だけで大手の規模に対抗できるかは、10年の間に試される。
資本政策と M&A
資本政策は、保守的で安定している。配当性向は3割強で、2027年3月期も小幅に増やす計画だ。自社株買いは2022年に8億円を実施した。それ以外は大きな動きはない。
株主構成は、安定が中心だ。サトー興産が約25%、取引先の持株会が約13%、社員持株会が約3%で、合計で4割を超える。光通信系の投資組合も約4%を持つが、会社を動かす力はまだ弱い。
株主優待は、100株以上で東北産の米を贈る制度だ。費用は年に数千万円とみられ、利益への影響は小さい。
買収は目立たない。連結子会社のアキタサトー商会があるが、大型の買収で価値を壊したことはない。逆に、現金が厚く自己資本比率が高い会社は、外から見れば買収の標的にもなりうる。ただ、4割を超える安定株主がいるため、敵対的な買収は難しい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
サトー商会は、盤石の財務に、堅い需要が乗った会社だ。顧客の病院・給食・福祉施設は景気に左右されず、コロナ禍でも営業利益率は1.9%を保った。卸売は5期連続で増収となり、売上は336億円から445億円へ伸びた。価格転嫁も進んでいる。
財務は、安全域になる。有利子負債は7億円しかなく、現金は70億円近い。金利が上がるほど、受取利息が増えて利益を押し上げる。自己資本比率は74%と、大型の買収も、配当の引き上げも、いつでもできる体力がある。
資本の使い方は、変わりうる。光通信系の投資組合が4%を持ち、現金の積み上がりへの圧力は強まっている。配当性向を5割に上げれば、株主の受け取りは今の1.5倍になる。
業務用の東北5県の直売センターと自社物流は、全国の大手には出しにくい東北での顧客との距離だ。病院や給食という手堅い領域で、10年後も安定して稼ぐ。人口が減っても高齢者施設の食数は当面減りにくく、量の減りは外食に限られる。
慎重な見方
利益は、構造的に細っている。直近は増収でも営業利益が5.8%減り、2027年3月期の会社計画も増収・営業利益横ばいだ。人件費と運賃の上昇が、価格転嫁を上回って卸の利益を削っている。1四半期の営業利益も7%減った。
東北は、日本でも人口の減りが速い地域だ。外食の客数と給食の食数は減り、卸の量は実質で縮む。物価の分だけ売上が伸びても、配送の費用はそれ以上に伸びる。
現金の厚みは、株主の取り分とは別の話だ。サトー興産と取引先・社員の持株会で4割を超え、投資組合が4%を持つだけでは、会社は動かない。現金は、積み上がるだけで株主に戻らない可能性が高い。ROEは4%台で、資本コストの半分だ。
大手卸は、物流と仕入れの力で業務用にも広がる。メーカーの直販や、外食チェーンのセントラルキッチン化も、地場の卸にとっては中抜きの脅威になる。今の値段は、現金の厚みを織り込みすぎている。人口減の東北に集中した、利幅の薄い事業の10年先を、今の利益のまま見るのは楽観に過ぎる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。強気の見方が言う財務の安全は本物だが、資本の稼ぎが資本コストの半分という事実は消えない。還元が増える期待は、4割を超える安定株主を前に確かなものとは言えない。確率は、中立に4割弱、やや悲観に25%を置いた。楽観とやや楽観には、還元の増加と値上げの定着を入れたが、確率は低くとどめた。10年先の営業利益は、物価で膨らむ人件費と運賃に押されて今とほぼ同じにとどまり、倍率は資本コストの手前の会社として置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,291 円191 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 545 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 1,491 円124 億円、今との差 −26.1%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,551 円296 億円 | 899 円75 億円 | +120.4% | +8.2% | 312 円26 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,120 円260 億円 | 719 円60 億円 | +90.2% | +6.6% | 691 円58 億円 |
| 中立 | 38% | 2,799 円233 億円 | 564 円47 億円 | +66.6% | +5.2% | 1,278 円107 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,309 円109 億円 | 420 円35 億円 | −14.4% | −1.5% | 432 円36 億円 |
| 悲観 | 12% | 751 円63 億円 | 276 円23 億円 | −49.2% | −6.5% | 123 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,291 円191 億円 | 545 円45 億円 | +40.5% | +3.5% | 2,836 円237 億円 |
今の株価時価総額 2,019 円168 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 価格転嫁が定着し、還元も厚くなる 利益 21 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,551 円296 億円
病院・福祉施設・給食という手堅い顧客が量を支え、東北の人口減の影響は一部にとどまる。実質の量は今並みを保ち、価格は物価を少し上回って通る。卸売の営業利益率は5%台前半に乗り、直売センターも自社ブランド商品を伸ばして4%台に届く。営業利益は25億円ほどになり、過去12年の最高の3.4%を上回る。会社は光通信系の投資組合などからの求めに応え、配当性向を4割台へ引き上げる。現金の積み上がりは止まり、ROEは6%に近づく。それでも資本コストには届かないが、会社の資本の使い方は大きく変わり、株主の受け取りも増える。大手卸との競争は続くが、東北の少量配送の強みが守られる最も良い姿だ。
- 卸売(業務用食品):数量 7.4(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 828(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 614 億円・営業利益 33 億円。数量 7.42 万トン × 売値 828(円/キロ)、利益率 5.4%
- 小売(業務用食品直売センター):数量 0.9(販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 966(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 4 億円。数量 0.861 万トン × 売値 966(円/キロ)、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 296 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:病院・給食の手堅い需要で価格転嫁が定着し、会社が還元も増やす二つが重なる必要がある。連続して当たる筋書きなので、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 値上げが通り、還元が少し増える 利益 17 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,120 円260 億円
量は実質で4%ほど減るが、価格は物価に近く上がる。卸売の営業利益率は5%台に保たれ、直売センターは店舗の運営費を価格で吸収する。人件費と運賃の上昇は、顧客への価格転嫁でほぼ相殺できる。営業利益は21億円ほどで、直近より少し高い。会社は株主からの求めを受けて配当性向を4割へ引き上げる。現金の積み上がりは緩み、ROEは5%まで上がるが、資本コストには届かない。大手卸の攻勢は東北では限定的で、病院・給食の顧客は守られる。外食向けは客数の減少で弱いが、給食と福祉が下支えする。配送の効率化が進み、1便あたりの運び賃も抑えられる。
- 卸売(業務用食品):数量 7.1(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 816(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 581 億円・営業利益 30 億円。数量 7.12 万トン × 売値 816(円/キロ)、利益率 5.1%
- 小売(業務用食品直売センター):数量 0.8(販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 952(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 3 億円。数量 0.815 万トン × 売値 952(円/キロ)、利益率 4.1%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 248 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格転嫁が人件費・運賃の上昇をおおむね吸収し、会社が還元を少し増やす姿。中立に次ぐ厚みで置いた。
中立 38% 量は減り、価格は物価並み。利益は横ばい 利益 14 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,799 円233 億円
東北の人口減と外食の縮小で、卸売の量は実質で8%ほど減り、価格だけが物価並みに上がる。卸売の営業利益率は4.8%、直売センターは3.8%と、どちらも直近より少し薄くなる。人件費と運賃の上昇は、価格転嫁で大部分を吸収するが、全部は取り戻せない。本社の費用も物価で増える。営業利益は17億円ほどで、今とほぼ同じだ。物価で膨らむ人件費の分だけ、実質では目減りする。会社は配当性向を3割台半ばで続けるが、現金はゆるやかにたまり、ROEは4%前後にとどまる。大きな失敗も大きな成功もない、平らな10年になる。財務の堅さは変わらず、悲観のときの支えになる。
- 卸売(業務用食品):数量 6.8(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 804(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 549 億円・営業利益 26 億円。数量 6.83 万トン × 売値 804(円/キロ)、利益率 4.8%
- 小売(業務用食品直売センター):数量 0.8(販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 938(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 3 億円。数量 0.770 万トン × 売値 938(円/キロ)、利益率 3.8%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 208 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:量は実質で減り、価格だけが物価並みに上がり、人件費と運賃の上昇で利益率が少し細る、標準の姿。最も厚く置いた。
やや悲観 25% 人口減で量が細り、運賃上昇を転嫁しきれない 利益 9 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 1,309 円109 億円
東北の人口減と外食の縮小で、卸売の量が実質で14%ほど減る。価格転嫁は進むが、人件費と運賃の上昇には追いつかず、卸売の営業利益率は4%台前半に下がる。直売センターは運営費に押されて営業利益率が2%台に落ち、閉鎖する店も出る。営業利益は10億円ほどで、2021年3月期の谷に近い水準へ戻る。会社は配当を守るが、増やす余力は乏しく、還元は3割を少し超える程度だ。現金は運転資金に食われ、余った現金は減る。市場からは「資本コストを稼げない会社」と見られ、倍率は低いままだ。大手卸は東北でも業務用を取りにきて、地場の卸は取りこぼしが増える。
- 卸売(業務用食品):数量 6.4(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 780(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 498 億円・営業利益 21 億円。数量 6.38 万トン × 売値 780(円/キロ)、利益率 4.2%
- 小売(業務用食品直売センター):数量 0.7(販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 896(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。数量 0.679 万トン × 売値 896(円/キロ)、利益率 2.5%
倍率:事業の ROE は純利益 8.7 億円(現金の利息を除く)÷自己資本(余った現金を除く)329 億円で 2.6%。k 7.5% を大きく下回るので、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。ROE÷k(0.33)は下限の 0.6 を割る。上限 12.5 倍に 0.6 と 9 割を掛けた 6.8 倍より少し高い 7.2 倍に置いた。余った現金は谷で運転資金に食われて 0.75 倍とみた。
確率:東北の人口減は速く、運賃と人件費の上昇も続く。大手卸の攻勢が重なると利益率が1%台後半まで下がる。中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 中抜きと人口減で、卸の利幅が消える 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 751 円63 億円
構造的に負ける。大手卸が東北でも業務用を取りにきて、メーカーの直販や外食チェーンのセントラルキッチン化が卸の取引を減らす。量は実質で3割近く減り、価格は物価に届かず、卸売の営業利益率は3%台前半まで落ちる。直売センターは店舗網を縮小し、ほぼ稼げない。本社の費用を削っても、営業利益は2億円台まで細る。配当は維持するが、優良な会社とは見られなくなる。現金は赤字の穴埋めに食われる。それでも実質無借金の財務は残るので、倒産は遠い。会社は、再編の対象か、事業を縮めて現金を返す道を選ぶしかない。コロナ禍でも営業利益率が1.9%を保った事業が、構造変化では保てないという意味で、深い負けだ。
- 卸売(業務用食品):数量 5.3(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 720(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 385 億円・営業利益 13 億円。数量 5.34 万トン × 売値 720(円/キロ)、利益率 3.4%
- 小売(業務用食品直売センター):数量 0.5(販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 840(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。数量 0.498 万トン × 売値 840(円/キロ)、利益率 0.5%
倍率:構造的に優良でなくなり、稼ぐ力は細る姿。この筋書きの純利益は 2.5 億円で、稼ぐ力は純利益 2.2 億円 ÷ k 7.5% ≒ 28 億円に余った現金を足した約 33 億円にしかならない。他方で、実質無借金の財務が残るので、純現金約 62 億円を床に置いた。今の自己資本 272 億円に対する PBR 0.23 倍(時価総額 約 62 億円)。
確率:大手卸の攻勢・メーカー直販・外食のセントラルキッチン化が重なり、地場の卸が構造的に負ける筋書き。コロナ禍でも赤字にならなかった実績を踏まえ、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
卸売(業務用食品)
ホテル・飲食店・病院・給食・福祉施設などに、冷凍食品や食材・原材料・包装資材を卸す。売上の約 88%。
| 数量取扱数量(万トン、実質。推定) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.4 | 600 | 445 | 22 |
| 10 年後 中立 | 6.8 | 804 | 549 | 26 |
取り方:卸売の売上 445 億円・セグメント利益 22.1 億円(irbank のセグメント表)。数量は開示が無く、冷凍食品・食材・包装資材の平均の卸値を 1 キロあたり約 600(円/キロ)と置いて、445 億円を割った推定値 7.42 万トン。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
小売(業務用食品直売センター)
東北 5 県の業務用食品直売センター 21 店。業務用の食品を現金払いで持ち帰れる売場。
| 数量販売数量(万トン、実質。推定) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 700 | 63 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 938 | 72 | 3 |
取り方:小売の売上 63.4 億円・セグメント利益 2.66 億円。小売は小分けの分だけ卸より単価が高いので、1 キロあたり約 700(円/キロ)と置いて割った推定値 0.906 万トン。
リスクと懸念
人件費と運賃の上昇が利益を削る
直近は増収でも営業利益が5.8%減り、2027年3月期の第1四半期も営業利益が7%減った。配送の人手と運賃が毎年上がり、卸売の粗利の改善を食っている。価格転嫁が遅れる年は、営業利益率が過去12年の下限1.9%に近づく恐れがある。
東北の人口減と外食の縮小
東北は人口の減りが速く、外食の客数・給食の食数が細る。業務用の食材卸は量の影響を直接受ける。10年で量が1割前後減る想定は、人口動態の延長線上にあり、大きく外れにくい。
大手卸・メーカーによる中抜き
国分グループ、三菱食品など全国の大手卸が業務用でも物流網を広げる。メーカーの直販や、外食チェーンのセントラルキッチン化も、地場の卸の取引を減らす。構造的に負けると、卸の利幅が根こそぎ削られる。
現金が株主に戻らない
現金・有価証券は70億円近くあるが、配当性向は3割強で、自社株買いも2022年が最後だ。安定株主が4割を超え、投資組合が動いても会社が変わる保証はない。現金が積み上がるほどROEは下がる。
小売の店舗運営費の上昇
業務用の直売センターは、直近で店舗運営費の増加により売上が4.4%減った。人手不足と賃料の上昇が続けば、小売の営業利益3億円は圧迫される。規模が小さく全体を揺らす力は限られるが、卸と同じ人件費の構造を持つ。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて2.5%を割ったら
- 人件費と運賃の上昇が価格転嫁を上回ったとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 配当性向を5割以上へ引き上げ、または自社株買いを大きく増やしたら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0へ上げ、楽観側の確率を増やす。
- 光通信系などの組合が持株比率を高め、会社に株主還元の提案を出したら
- 還元の引き上げか再編に動きうるので、楽観側の確率を少し増やす。
- 全国の大手卸が東北の業務用で拠点を増やし、顧客を奪ったら
- 卸売の営業利益率を4%台から下げ、中抜きの筋書きの確率を上げる。
- 直売センターの出店や自社ブランド商品が伸び、営業利益率が3.5%を超えたら
- 価格を決める力が高まったとみて、中立の営業利益率を少し上げる。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率と、人件費・運賃の動き
- 卸売の売上の伸びと、病院・給食向けの比率
- 配当性向と自社株買いの有無
- 現金・有価証券の残高の推移
- 大株主(光通信系・サトー興産)の持株比率の変化
- 直売センターの店数と1店あたりの売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 7.5%(基本 7.5% + quality 0.5%)を大きく下回る前提で、正当化 PER の上限 1÷k(12.5 倍)に、ROE÷k と、実質無借金で再投資が小さい点を見て 0.7 前後を掛けて置いた。今の株価や今の PER を見てから決めたわけではない。悲観は谷の利益からでなく、純現金で測った。余った現金は、純現金 62 億円から運転資金(月商の約 1 か月分 42 億円)を引いた 20 億円とし、戻り方は 0.5 にした。現金同等物 68.8 億円のうち現金及び預金は約 26 億円で、差の約 43 億円は流動の有価証券等とみて純現金に含めた。固定資産 189 億円(投資有価証券・土地を含むが内訳は未確認)は簿価の確認ができず、含み益も足していない。減価償却は内訳が取れず、全社費用の 1 億円を償却と仮置きして物価で増やさなかった。株主優待は費用が年 0.3 億円前後と小さいので、還元には足していない。リースは小さく、新リース会計基準(2028 年 3 月期)の影響は小さいと見て、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。