結論
NaITOは切削工具と計測機器の問屋だ。工具メーカーから仕入れ、全国の販売店を通じて工場に届ける。売上は430億円を超えるが、営業利益は4億円ほどで、取り分は1%に届かない。親会社の岡谷鋼機が議決権の45.65%を持つ。
筆者の結論は「割高」だ。株価は自己資本の7割ほどで安く見える。だがROEは2〜3%で、資本コストの9%に遠く及ばない。資本の大半は売掛金と在庫に寝ており、親会社の下で株主に戻る道も細い。
今期は中国のタングステンの輸出管理で工具の値段が上がり、営業利益は12.5億円へ3倍に増える見込みだ。だが、これは値上げ前の駆け込みと在庫の値上がりによる一時の利益とみる。10年で見れば、メーカーの直販とネット通販が問屋の取り分を削る流れの方が重い。
親会社が残りの株を買い取る可能性は残る。ただ、その値段も稼ぐ力から決まりやすい。筆者は、自己資本の額を下値の目安にする見方には立たない。資本が働かない限り、帳簿の厚さは株主の価値にならないからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「帳簿は厚いが、資本が働いていない会社」だ。自己資本は130億円あるが、そこから生まれる利益は年3億円前後にすぎない。株価が自己資本の7割でも、利回りで見れば安くない。
株主のものになる利益はさらに少ない。売上が物価で増えれば、売掛金と在庫も同じだけ増える。利益の一部は、その運転資金の積み増しに消える。配当で出せるのは、残りの部分だけだ。
経営は堅実で、無理な拡大もしない。だが、資本を減らして効率を上げる手も打たない。親会社がいる限り、外からの圧力も効きにくい。筆者は、今期の一時の増益に目を奪われず、運転資金の重さと問屋の取り分の細りを見るべきだと考える。安全域はここには無い。
親会社による買い取りに期待する見方もある。だが、それは事業の価値ではなく、他人の決定に賭けることだ。筆者はそれを投資の理由にしない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は問屋の典型だ。OSGや三菱マテリアル、タンガロイ、ミツトヨなどのメーカーから工具や測定器を仕入れ、地域の販売店に卸す。販売店はそれを町工場や部品メーカーに届ける。メーカーとユーザーの間に二段の問屋が入る、日本の工具の流通の真ん中にいる。
売上の半分が切削工具、4割が工作機械や省エネ設備などの産業機器、1割が計測だ。切削工具は使えば減る消耗品で、工場が動く限り注文が来る。産業機器と工作機械は設備投資の案件ごとの受注で、年によって大きく振れる。
問屋の価値は、在庫と物流、それに受発注の手間を肩代わりすることにある。NaITOは数多くの品目を在庫に持ち、受発注の仕組み「NICE-NET」とEDIで販売店とつながる。オリジナルの「Victoryエンドミル」も育てている。
海外はベトナムの子会社とタイの持分法の会社があり、日系の工場に工具や計測機器を売る。規模はまだ小さい。
社員の多くは営業で、販売店を回って新しい工具や加工の方法を紹介する。メーカーの販促のキャンペーンを販売店に流し、展示会を開いてユーザーを集める。こうした手間のかかる仕事が、問屋の取り分の中身だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みはほとんど無い。扱う品はメーカーの標準品で、同じ品を他の問屋もネット通販も売っている。取り分を決めるのはメーカーの値付けと、販売店との力関係だ。
資本効率は弱い。過去10年のROEの中央値は3.5%で、資本コストの半分にも届かない。営業利益率は過去12年の山でも2%だ。自己資本の7割強が売掛金と在庫で、薄い利益に対して大きな運転資金を抱える。
親会社の存在は両刃だ。岡谷鋼機のグループで取引の信用は厚く、財務は無借金に近い。一方で、資本の使い方に少数株主の声は届きにくい。自社株買いの実績は乏しく、配当は1株あたりで長く横ばいだ。
強いて挙げれば、地域の販売店との長い付き合いと、在庫の品ぞろえの広さが強みだ。ただ、それはトラスコ中山のような大手の問屋がより大きな規模で持つものでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の工具の流通は、メーカーから一次問屋、販売店、ユーザーへと二段の問屋を通る形で育った。NaITOはその一次問屋の老舗だ。ただ、この形はゆっくり崩れている。
崩しているのは3つの力だ。1つは、トラスコ中山のように巨大な在庫と自前の物流で販売店を囲い込む問屋だ。2つめは、モノタロウやミスミのようなネット通販で、小口の注文を直接ユーザーから取る。3つめは、大手メーカーがEDIで大口のユーザーと直接つながる動きだ。どれも、中堅の問屋の取り分を細らせる。
需要の面では、自動車の電動化が重い。エンジンや変速機の部品の加工が減れば、エンドミルやドリルの消費も減る。一方で、半導体装置や航空・防衛の部品は難削材の加工が多く、高い工具の需要を生む。差し引きで、国内の工具の需要は実質で横ばいからやや減りとみる。
2026年は中国がタングステンの輸出管理を強め、超硬工具の原料が高騰した。メーカーは値上げを重ね、ユーザーの先回りの買いも出た。問屋には一時の追い風だが、値上げが一巡すれば需要は元に戻る。人手不足は工場の自動化を促し、計測や自動化の設備の需要を押し上げる。ここは問屋の数少ない伸びしろだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、1株あたりの配当は長く横ばいだ。2026年2月期は総額2.2億円を払い、配当性向は7割を超えた。自社株買いの実績は乏しい。
資本の多くは運転資金に寝ている。売掛金と電子記録債権、在庫を合わせると140億円を超え、買掛金を引いても100億円強になる。この資本は事業を続ける限り株主に戻らない。
M&Aの面では、親会社の岡谷鋼機が議決権の45.65%を持つ。親子上場の解消が市場から求められる中、残りの株を買い取る可能性はある。ただ、その時の値段は今の稼ぐ力から決まりやすく、自己資本の額で買われる保証は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
工具は工場が動く限り減る消耗品で、需要は底堅い。問屋を飛ばす直接取引が進むと言われて久しいが、町工場や中小の部品メーカーは何千品目もの工具を自分で管理できない。販売店を通じて在庫と物流を肩代わりする一次問屋の役割は、むしろ人手不足で重みを増す。
値段の面でも追い風がある。タングステンの高騰でメーカーは値上げを重ね、2027年2月期の営業利益は3倍の12.5億円に上方修正された。物価が年3%上がる世界では、問屋の取り分も率で同じだけ増える。半導体装置・航空・防衛の部品は難削材の加工が多く、高い工具が売れる。
財務は無借金に近く、自己資本比率は7割を超える。株価は自己資本の7割で、親会社の岡谷鋼機が親子上場を解消するために残りの株を買い取れば、少なくとも自己資本に近い値段がつく。下値は運転資金という手堅い資産が支える。
人手不足は工場の自動化を進め、計測機器や自動化の設備の提案に追い風が吹く。ベトナムとタイの拠点は日系の工場の移転を取り込める。問屋の仕事は地味だが、地味だからこそ新しい競争相手も来にくい。
慎重な見方
問屋の取り分は1%に届かず、過去12年で2%を超えた年が無い。ROEは2〜3%で、資本コストの3分の1だ。これは一時の不振ではなく、二段の問屋という業態そのものの限界を示す。トラスコ中山の在庫と物流、モノタロウのネット通販、メーカーのEDI直販に挟まれ、取り分は細っていく。
今期の増益は、値上げ前の駆け込みと在庫の値上がりで出た一時の利益だ。値上げが一巡すれば、需要の先食いの反動が来る。自動車の電動化でエンジン部品の加工が減り、工具の需要の柱も細る。
資本は売掛金と在庫に寝ており、利益が増えても運転資金に吸われる。自社株買いはしない。親会社が買い取るとしても、値段は今の稼ぐ力で決まりやすく、自己資本の額は保証されない。PBRの低さは割安ではなく、資本が働いていないことの値段だ。
人手不足の追い風も、問屋の取り分には効きにくい。自動化の設備はメーカーと大手のSIerが直接ユーザーに売ることが多い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に分がある。問屋の取り分が細る流れは、10年では戻らない構造の変化だ。今期の値上げの追い風は一時のもので、ROEが資本コストを大きく下回る形は変わらない。親会社の買い取りは起こりうるが、値段は稼ぐ力で決まりやすい。確率は中立を中心に置き、悲観側を楽観側と同じくらいの厚みにした。結果は今の値段を大きく下回り、割高と言える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 95 円52 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 45 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 72 円40 億円、今との差 −57.7%、 期待の年率 −1.9%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 167 円91 億円 | 64 円35 億円 | +35.0% | +3.0% | 23 円13 億円 |
| やや楽観 | 20% | 130 円71 億円 | 55 円30 億円 | +7.9% | +0.8% | 37 円20 億円 |
| 中立 | 38% | 98 円53 億円 | 49 円27 億円 | −14.1% | −1.5% | 56 円31 億円 |
| やや悲観 | 20% | 53 円29 億円 | 33 円18 億円 | −49.8% | −6.7% | 17 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 42 円23 億円 | 22 円12 億円 | −62.6% | −9.4% | 8 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 95 円52 億円 | 45 円25 億円 | −17.8% | −1.9% | 141 円77 億円 |
今の株価時価総額 171 円94 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 値上げが残り、問屋の役割が見直される 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 167 円91 億円
タングステンの高騰で始まった切削工具の値上げは、原料が落ち着いても値段に残る。国内の製造業は半導体装置や防衛、航空の部品で加工の量を保ち、工具の需要は10年で少し増える。中小の販売店は在庫を持てなくなり、NaITOの在庫とEDIの受発注に頼る度合いが増す。シェアは保たれ、計測機器の校正や自動化設備の提案も伸びる。営業利益率は1.7%と過去の山を少し超える。親会社の岡谷鋼機が残りの株を買い取る話が出ても、筆者はこの筋書きの値段を目安にする。それでもROEは5%ほどで、資本コストに届かない。株価が自己資本の半分ほどにとどまるのは、資本が働かないままだからだ。
- 切削工具:数量 4,935(国内の切削工具の市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 6.6%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 328 億円・営業利益 7 億円。国内の切削工具市場 1.05 倍 × シェアと物価 1.40 倍、営業利益率 2.0%
- 計測:数量 3,450(国内の測定工具・計測機器の市場(億円・実質、推定))× 価格 1.8%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 63 億円・営業利益 2 億円。国内の計測市場 1.15 倍 × シェアと物価 1.40 倍、営業利益率 2.5%
- 産業機器・工作機械等:数量 4,700(国内の工作機械・産業機器の内需(億円・実質、推定))× 価格 4.9%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 232 億円・営業利益 2 億円。国内の工作機械・産業機器の内需 1.00 倍 × シェアと物価 1.34 倍、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 91 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工具の値上げが定着し、販売店の在庫を肩代わりする役割が評価される筋書き。過去12年の営業利益率の山は2%で、それをわずかに超える水準は確率を低めにした。
やや楽観 20% シェアを守り、値上げを取る 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 130 円71 億円
切削工具の市場は実質で横ばい、NaITOのシェアも変わらない。メーカーの値上げは物価を少し上回って通り、問屋の取り分も同じ割合で増える。計測は検査・校正の仕事が増え、工作機械は設備の更新の波に乗る。営業利益率は1.4%と、ここ12年の中ほどより上で落ち着く。親会社の後ろ盾で取引条件は安定し、配当は利益の7割前後が続く。ベトナムとタイの拠点も、日系の工場の移転に合わせて少しずつ売上を積む。ROEは4%台で、資本コストにはなお遠い。自社株買いは無く、運転資金の積み増しが利益の一部を吸い続ける。親会社による買い取りの話は出ても、値段はこの稼ぐ力から決まる。
- 切削工具:数量 4,700(国内の切削工具の市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 6.5%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 306 億円・営業利益 5 億円。国内の切削工具市場 1.00 倍 × シェアと物価 1.37 倍、営業利益率 1.7%
- 計測:数量 3,240(国内の測定工具・計測機器の市場(億円・実質、推定))× 価格 1.8%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。国内の計測市場 1.08 倍 × シェアと物価 1.37 倍、営業利益率 2.2%
- 産業機器・工作機械等:数量 4,700(国内の工作機械・産業機器の内需(億円・実質、推定))× 価格 4.8%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 225 億円・営業利益 2 億円。国内の工作機械・産業機器の内需 1.00 倍 × シェアと物価 1.30 倍、営業利益率 0.7%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 71 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シェアを保ち、価格がわずかに物価を上回る筋書き。2027年2月期の上方修正は値上げが通る局面があることを示し、確率を中立の次に置いた。
中立 38% 細る問屋の取り分 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 98 円53 億円
国内の切削工具の需要は、自動車のエンジン部品の加工が電動車への移行で減り、10年で実質5%縮む。トラスコ中山のような在庫の厚い問屋と、モノタロウのようなネット通販、メーカーとユーザーの直接取引が広がり、NaITOのシェアも5%削られる。値段は物価並みに上がるが、問屋の取り分の率は変わらない。営業利益率は1.2%前後にとどまる。ROEは3%ほどで、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まない。配当は利益の7割前後で続く。親子上場の解消を求める声は強まるが、親会社は急がない。少数株主は配当を受け取りながら、帳簿の厚さが働かない状態を見続けることになる。
- 切削工具:数量 4,559(国内の切削工具の市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 6.2%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 281 億円・営業利益 4 億円。国内の切削工具市場 0.97 倍 × シェアと物価 1.30 倍、営業利益率 1.4%
- 計測:数量 3,000(国内の測定工具・計測機器の市場(億円・実質、推定))× 価格 1.8%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 53 億円・営業利益 1 億円。国内の計測市場 1.00 倍 × シェアと物価 1.34 倍、営業利益率 1.8%
- 産業機器・工作機械等:数量 4,559(国内の工作機械・産業機器の内需(億円・実質、推定))× 価格 4.8%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 218 億円・営業利益 1 億円。国内の工作機械・産業機器の内需 0.97 倍 × シェアと物価 1.30 倍、営業利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 53 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の実質の縮みと、問屋を飛ばす直接取引の広がりで、シェアが少しずつ削られる筋書きを中心に置いた。過去10年の売上が横ばいで、営業利益率が1%前後に張り付いてきた実績に合う。
やや悲観 20% 直接取引に押される 利益 2 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 53 円29 億円
大手の工具メーカーがユーザーとの直接取引を広げ、ネット通販も小口の注文を取る。販売店を通す二段の流れが細り、NaITOのシェアは1割減る。工作機械は国内の設備投資の弱さで内需が15%減り、営業利益はほぼゼロになる。値上げは物価に届かない。利益が細り、配当も減る。人手の確保も難しくなり、営業の拠点を絞る判断が続く。運転資金に寝ている100億円超の売掛金と在庫は、事業を続ける限り株主に戻らない。株価は自己資本の2割弱にとどまる。親会社が残りの株を買い取るとしても、この稼ぐ力に見合う値段になりやすい。
- 切削工具:数量 4,136(国内の切削工具の市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 5.6%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 230 億円・営業利益 2 億円。国内の切削工具市場 0.88 倍 × シェアと物価 1.17 倍、営業利益率 1.0%
- 計測:数量 2,700(国内の測定工具・計測機器の市場(億円・実質、推定))× 価格 1.6%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。国内の計測市場 0.90 倍 × シェアと物価 1.23 倍、営業利益率 1.2%
- 産業機器・工作機械等:数量 3,995(国内の工作機械・産業機器の内需(億円・実質、推定))× 価格 4.2%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 169 億円・営業利益 0 億円。国内の工作機械・産業機器の内需 0.85 倍 × シェアと物価 1.15 倍、営業利益率 0.0%
倍率:ROE 1.6% と k を大きく下回る。利益は細るが事業は続くので、価値はその筋書きの稼ぐ力(純利益÷k)とし、PER は 1÷k に近い 11.65 倍。売れる資産の床(悲観)よりわずかに上になる。
確率:メーカーのEDI直販とネット通販が中堅の問屋の仕事を奪う筋書き。問屋の再編は業界で現に進んでおり、確率は小さくない。
悲観 12% 問屋の役割が消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 42 円23 億円
工具の流通がメーカーの直販とネット通販に二分され、中間の問屋の役割が大きく消える。NaITOのシェアは4分の1減り、工作機械の販売は赤字になる。営業利益はほぼゼロで、拠点の統廃合と人員の整理が続く。在庫の評価損と取引先の貸し倒れも重なる。縮む過程で売掛金と在庫は少しずつ現金に戻るが、そのお金は親会社のグループの中にとどまりやすい。最後は親会社が安い値段で残りの株を買い取るか、他の問屋と合わさる形で終わる。株価は自己資本の2割を切る。帳簿の自己資本の厚さは、少数株主の手にはほとんど届かない。配当も年に数千万円まで細る。
- 切削工具:数量 3,760(国内の切削工具の市場(億円・今の値段で測った実質))× 価格 4.5%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 167 億円・営業利益 1 億円。国内の切削工具市場 0.80 倍 × シェアと物価 0.94 倍、営業利益率 0.3%
- 計測:数量 2,400(国内の測定工具・計測機器の市場(億円・実質、推定))× 価格 1.4%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 33 億円・営業利益 0 億円。国内の計測市場 0.80 倍 × シェアと物価 1.06 倍、営業利益率 0.5%
- 産業機器・工作機械等:数量 3,290(国内の工作機械・産業機器の内需(億円・実質、推定))× 価格 3.7%(シェア × 物価の倍率)→ 売上 121 億円・営業利益 −1 億円。国内の工作機械・産業機器の内需 0.70 倍 × シェアと物価 1.00 倍、営業利益率 -0.5%
倍率:利益はほぼ無く、利益の倍率は使えない。床は運転資金が縮む過程で戻る現金の一部(floor_assets_oku)。今の自己資本 131 億円に 0.175 倍を掛けて同じ額。
確率:問屋を通す流れそのものが崩れ、事業を縮める筋書き。過去に2010年2月期の赤字があり、業界の構造の変化は戻らないので無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
切削工具
エンドミル・ドリル・インサートなどの刃物を、工具メーカーから仕入れて地域の販売店に卸す。オリジナルの「Victoryエンドミル」も持つ。
| 数量国内の切削工具の市場(億円・今の値段で測った実質) | 価格シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4,700 | 4.7% | 223 | 3 |
| 10 年後 中立 | 4,559 | 6.2% | 281 | 4 |
取り方:国内の切削工具の市場を約4,700億円(日本機械工具工業会の生産額からの目安・推定)とし、NaITOの売上223億円をそのシェア約4.75%とした。数量は実質の市場、物価3%はシェアに掛ける形で価格の側に入れた。事業は単一区分で、営業利益は推定で割り振った。
計測
ノギス・マイクロメーターなどの測定工具と三次元測定機などの計測機器を卸し、検査・校正も請け負う。
| 数量国内の測定工具・計測機器の市場(億円・実質、推定) | 価格シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 3,000 | 1.3% | 39 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3,000 | 1.8% | 53 | 1 |
取り方:国内の測定工具・計測機器の流通の市場を約3,000億円と推定し、売上39億円をシェア約1.3%とした。数量は実質の市場、物価は価格の側。利益は推定で割り振った。
産業機器・工作機械等
工作機械、空調・省エネ・物流の設備、自動化の装置を工場に納める。案件ごとの受注で振れる。
| 数量国内の工作機械・産業機器の内需(億円・実質、推定) | 価格シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4,700 | 3.7% | 173 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4,559 | 4.8% | 218 | 1 |
取り方:国内の工作機械の受注の内需(約4,700億円の目安・推定)を市場とし、売上173億円をシェア約3.7%とした。産業機器も含むので比は目安。利益率は低く、推定で割り振った。
リスクと懸念
問屋を飛ばす直接取引
大手の工具メーカーはEDIで大口のユーザーと直接つながり、ネット通販は小口の注文を取る。二段の問屋を通す流れが細れば、NaITOの取り分は景気と関係なく削られる。
値上げの反動
2027年2月期の増益は、タングステンの高騰による値上げ前の駆け込みと在庫の値上がりが大きい。値上げが一巡すれば需要の先食いの反動が出て、利益は元の水準に戻りやすい。
自動車の電動化
エンジンや変速機の部品の加工が減れば、エンドミルやドリルの消費も減る。自動車の部品メーカーは工具の大口のユーザーで、電動化の速さが10年の数量を左右する。
親子上場と少数株主
親会社の岡谷鋼機が議決権の45.65%を持ち、取締役2名を出す。資本の使い方に少数株主の声は届きにくい。親会社が残りの株を買い取る時も、値段は今の稼ぐ力から決まりやすい。
運転資金の重さ
売掛金・電子記録債権と在庫が140億円を超える。物価が上がれば運転資金も膨らみ、利益の一部が吸われる。取引先の倒産が重なれば、貸し倒れが薄い利益を消す。
今後の分かれ目
- 値上げが一巡したあとも営業利益率が1.5%を保つ
- 取り分が戻ったとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 親会社の岡谷鋼機が残りの株の買い取りを発表する
- 値段がこの分析の中立を上回るかを見る。分析は止める。
- 大手メーカーが一次問屋を減らす方針を出す
- シェアの削られ方が速いとみて、やや悲観・悲観に寄せる。
- 自社株買いや配当の大きな引き上げを打ち出す
- 資本が株主に戻る道が見えたとみて、中立の倍率を上げる。
- 2028年2月期に営業利益が5億円を割る
- 今期の増益が一時のものだった証拠とみて、中立のままにする。
見ておくもの
- 切削工具の売上の前年比(値上げの分を除いて)
- 営業利益率と売上総利益率
- 売掛金と在庫の回転
- 親会社の資本政策と親子上場の扱い
- 日本機械工具工業会の生産額
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEと資本コスト8.5%から決めた。どの筋書きでもROEがkを大きく下回るので、PERの上限は1÷kの11.1倍で、利益の質に応じて7.7〜9割に置いた。今のPBR0.7倍や過去のPERは使っていない。2027年2月期の上方修正(営業利益12.5億円)は値上げ前の駆け込みとみて、10年の起点にしていない。悲観は過去のPBRの底でなく、運転資金が縮む過程で戻る現金の一部から出した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.76 倍・やや楽観 PER 9.2→11.76 倍・中立 PER 9→11.76 倍・やや悲観 PER 11→11.65 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。