結論
エコートレーディングは、大阪に本社を置くペットフードとペット用品の卸だ。メーカーから仕入れ、ホームセンターやドラッグストア、ペット専門店に届ける。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正だ。需要は景気に左右されにくいが、卸の利幅は売上の1%前後しかなく、自己資本の稼ぎが資本コストに届かないからだ。
需要の芯は固い。犬の数は減っているが、猫は横ばいを保ち、1匹にかける金額は増えている。高齢のペット向けや療法食など、値の張るフードの比率も上がる。
弱みは利幅の薄さだ。物流費と人件費は上がり続け、大手の小売とネット通販はメーカーとの直接の取引を増やしている。2027年2月期の中間は経常利益が前年の半分に落ちた。10年で見ると、薄利の卸として細く続く姿がいちばんありそうで、今の値段はそれを素直に映している。筆頭株主の国分グループ本社との関係は支えになるが、利幅を広げる決め手にはなっていない。
筆者がいちばん気にしているのは、物流費の上昇を値段に移す力が卸にどれだけ残っているかだ。中間期の減益は、その力の限界を示す最初の印かもしれない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、需要が固く、潰れにくい事業は評価に値する。ペットフードの卸はその一つだ。ただ、潰れにくいことと、株主の価値を増やすことは別の話だ。
オーナー利益、つまり設備の更新を済ませたあとに株主に残る利益は、ならせば年に数億円から10億円弱だ。卸は売上が伸びると売掛金と在庫も増えるので、利益の一部は運転資金に吸われる。
堀、つまり他社がまねできない強みは、物流網と取引先との長い関係だ。これは本物だが、利幅を厚くするほどの力はない。メーカーと小売の両方が大手で、卸は間に挟まれる。
今の値段は、この薄い稼ぎをほぼ素直に映している。安全域、つまり見立てが外れても損をしにくい余裕は、厚くも薄くもない。筆者なら、物流の効率化で利益率が1%台を保てるかを見極めたい。
利益率が0.6%を割り込む年が続けば、価値の見立ては下に動く。その線を割らない年が続くかが、価値を測り直す分かれ目になる。
何で稼ぐ会社か
売り物は二つある。一つはペットフードで、売上の7割強を占める。中でも猫のフードとおやつが大きく、犬のフードは1割強にとどまる。ドッグフードとキャットフード、おやつを、国内外のメーカーから仕入れて小売に届ける。もう一つはペット用品で、トイレの砂やペットシーツ、首輪、ケージなどを扱う。
顧客はホームセンターとドラッグストア、ペット専門店、それにネット通販の会社だ。小売は何千もの品目をメーカーごとに仕入れるのは手間なので、卸がまとめて仕入れ、店ごとに仕分けて届ける。卸の手数料は、この仕分けと配送、在庫を持つ手間への対価だ。
稼ぎの形を一言で言えば、薄い利幅を大きな量で積み上げる商売だ。売上は1,000億円を超えるが、営業利益は10億円前後にとどまる。物流の効率が1%違えば、利益は大きく動く。
資本の面では、食品卸大手の国分グループ本社が2013年に資本業務提携を結び、今も約18%を持つ筆頭株主だ。商品の企画や物流で協力している。国分の食品の物流網と組み合わせられることは、他のペットの卸にない強みになりうる。
物流の拠点は全国に置き、温度や形の違う多くの品目を一つの配送にまとめる。小売の店舗の数が多いほど、この仕分けの価値は上がる。ネット通販の倉庫への一括の納品は、量は大きいが手数料は薄い。
優良さと弱いところ
需要は固いが、値決め力は弱い。これが筆者の見立てだ。ペットフードはペットの数と食べる量で決まり、景気が悪くても大きくは減らない。ここは卸の中でも恵まれた分野だ。
ただ、卸の利幅は買い手と売り手の両方に押さえられる。メーカーは大手のマースやネスレ、ユニ・チャーム、いなばペットフードが強く、小売の側も大手のホームセンターとドラッグストアが値段の主導権を握る。卸はその間で、物流の手間を安く請け負うことでしか利幅を守れない。
利益の記録もそれを示す。営業利益率は過去12年の中ほどで0.4%前後、良い年でも1.6%だった。自己資本の稼ぎは過去10年の中ほどで5%弱と、資本コストを下回る。値上げの局面でようやく1%台に乗せたが、物流費の上昇でまた削られつつある。
経営は堅実で、借金に頼らずに事業を回してきた。ただ、還元は控えめで、ためた利益の使い道は運転資金が中心だ。この控えめさが、資本の効率を下げてきた。
倉庫と土地の一部は借りており、家賃は年8億円を超える。営業利益に近い額の固定の支払いがあることは、利幅の薄い卸にとって重い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の前提は、成熟した国内の需要だ。犬の飼育数は高齢化とともに減り、猫は横ばいを保っている。ペットフードの数量は10年でゆるやかに減るが、1匹あたりの支出は増え、値の張るフードの比率が上がる。金額では物価並みか、それを少し上回る伸びが見込める。
卸の業界は再編が進んできた。日用品卸のあらたがペット用品でも大きく、ほかに地域の専業の卸がいくつかある。数が減るほど、残った卸は物流網を広げて効率を上げる。エコートレーディングは専業の大手の一角にいる。
逆風は二つある。一つは物流の費用だ。運転手の残業規制と人手不足で配送の費用が上がり、卸の薄い利幅を直接削る。もう一つは中抜き、つまり卸を通さない取引だ。大手のネット通販や小売はメーカーから直接仕入れる動きを強めている。卸が生き残るには、小売が自前でやるより安く、正確に届けることを示し続けるしかない。
それでも、何千もの品目を多くの店に毎日届ける仕事を、小売がすべて自前でこなすのは難しい。中小のペット専門店や地方のホームセンターにとって、卸は欠かせない。卸の役目は消えないが、利幅を広げる余地は小さい。筆者は、業界の再編で数が減っても、残った卸の利幅が大きく広がるとは見ていない。小売の側の再編も同時に進むからだ。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。2026年2月期の配当性向は23%で、純資産に対する配当の割合は1.5%ほどだった。自己株買いの実績は乏しい。
期末の純現金は46億円と時価総額に近いが、これは期末に買掛金が膨らんだ一時の値だ。前の期までの純現金は10億円前後で、卸は売掛金と在庫に多くのお金を寝かせる。事業に要らない現金として分ける額はない。
資本の再編では、筆頭株主の国分グループ本社の動きが鍵になる。国分は食品卸の最大手で、ペットの分野を伸ばす意思を示してきた。株を買い増して子会社にする道もありうるが、今のところ具体的な話はない。
買収を通じて規模を広げる動きも、これまでは目立たない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ペットフードは景気に強い。不況でも飼い主はフードを減らさない。猫の数は横ばいを保ち、高齢のペット向けや療法食など値の張るフードの比率が上がる。数量が少し減っても、金額は物価を上回って伸びる。
エコートレーディングはこの分野の専業の大手だ。卸の数は再編で減り、残った会社に取引先が集まる。筆頭株主の国分グループ本社の食品の物流網と組めば、配送の効率はさらに上がる。
値上げを通す力も示した。2024年2月期から3期続けて営業利益率は1%台に乗り、過去の0%台から一段上がった。物流費の上昇は重いが、倉庫の自動化と共同配送で吸収できる。利益率が1%台を保てば、今の値段はむしろ安い。国分が残りの株を買い取る可能性も、上振れの種として残る。
用品でも、トイレの砂やペットシーツは毎日使う消耗品だ。繰り返し買われる品を多く持つことは、卸にとって安定した仕事の源になる。犬の数が減っても、猫の数と1匹あたりの支出が支えになる。
慎重な見方
卸の利幅は売上の1%前後しかない。物流費が少し上がるだけで、利益は簡単に半分になる。2027年2月期の中間は経常利益が前年の半分に落ち、会社の前の予想も下回った。近年の1%台の利益率は、値上げの局面がくれた一時の追い風だった可能性が高い。
中抜きの流れも止まらない。大手のネット通販や小売は、メーカーから直接仕入れる仕組みを広げている。犬の数は減り、ペット用品はネットで買う人が増える。卸を通る量は細る一方だ。
自己資本の稼ぎは過去10年の中ほどで5%弱と、資本コストを下回り続けてきた。ためた利益は株主の価値をほとんど増やしていない。配当性向も2割台と低い。国分が筆頭株主でも、少数株主が報われる仕組みはない。
値の張るフードの比率が上がるのは事実だが、その多くはメーカーの直販や動物病院を通る。卸が取れる分は限られる。物流の自動化には大きな投資が要り、薄い利幅では回収に長い時間がかかる。
筆頭株主が食品卸というのも、両刃の剣だ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。需要の固さは本物だが、卸の利幅の薄さと物流費の上昇は、近年の1%台の利益率を保つのを難しくしている。中心は利益率が近年の山と過去の中ほどの間に落ち着く筋書きで、値上げが定着する上振れに3割強を残した。中抜きで取扱いが細る筋書きには2割を置いた。国分との関係は支えだが、確率を大きく動かす材料とは見なかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,832 円112 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 351 円22 億円)。 今の値に割り戻すと 1,088 円67 億円、今との差 +32.5%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,559 円218 億円 | 555 円34 億円 | +401.1% | +17.5% | 494 円30 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,566 円157 億円 | 457 円28 億円 | +268.2% | +13.9% | 665 円41 億円 |
| 中立 | 36% | 1,823 円112 億円 | 375 円23 億円 | +167.8% | +10.4% | 791 円48 億円 |
| やや悲観 | 20% | 759 円46 億円 | 212 円13 億円 | +18.3% | +1.7% | 194 円12 億円 |
| 悲観 | 10% | 327 円20 億円 | 65 円4 億円 | −52.3% | −7.1% | 39 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,832 円112 億円 | 351 円22 億円 | +165.9% | +10.3% | 2,183 円134 億円 |
今の株価時価総額 821 円50 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 国分と組んで取引先を広げ、高価格のフードで稼ぐ 利益 15 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,559 円218 億円
犬の数は減るが、猫は横ばいを保ち、1匹あたりにかける金額は増え続ける。高齢のペット向けや療法食など、値の張るフードの比率が上がり、単価は物価を上回って伸びる。
エコートレーディングは国分と物流を組み合わせ、ホームセンターとドラッグストアに加えて、ネット通販の倉庫への納品も取る。同業の再編で取引先が流れ込み、数量は横ばいを保つ。
値上げを通す力が付き、営業利益率は1.4%に上がる。自己資本の稼ぎは資本コストにほぼ並び、配当も厚くなる。国分グループの中でペットの物流を担う会社として、存在感が一段と増す。再編で残った専業の大手として、取引先の選別もできる立場になる。
- ペットフード:数量 100(フードの取扱量(千トン・年、推定))× 価格 1.09(1 トンあたりの平均卸値(百万円・名目))→ 売上 1,086 億円・営業利益 15 億円。数量 1.02 倍 × 単価 1.36 倍、利益率 1.4%
- ペット用品:数量 69.0(用品の取扱点数(百万点・年、推定))× 価格 560(1 点あたりの平均卸値(円・名目))→ 売上 386 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍 × 単価 1.40 倍、利益率 1.4%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 192 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ペットの高齢化と高価格のフードへの移行は確かな流れで、国分の物流と組めば取引先を広げる余地はある。ただ、卸の利益率が過去の最良に並ぶには小売の側の譲歩も要るので、1割強にとどめた。
やや楽観 22% 値上げが定着し、利益率が近年並みに戻る 利益 11 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,566 円157 億円
ペットフードの値上げはメーカーから小売まで定着し、卸の手数料も物価に合わせて上がる。犬の頭数の減少は猫と高価格のフードで埋まり、数量はほぼ横ばいを保つ。
物流費と人件費の上昇は重いが、倉庫の自動化と配送の共同化で吸収する。営業利益率は1.1%と、2026年2月期の水準に戻る。
配当性向は3割弱を保ち、自己資本は着実に積み上がる。それでも自己資本の稼ぎは6%前後で、資本コストには届かない。卸の宿命として、利益の厚みは小売の力に左右され続ける。それでも、配送を任せたい中小の小売は残り、仕事が途切れることはない。国分との協力で配送の効率は少しずつ上がる。
- ペットフード:数量 96.0(フードの取扱量(千トン・年、推定))× 価格 1.10(1 トンあたりの平均卸値(百万円・名目))→ 売上 1,053 億円・営業利益 12 億円。数量 0.98 倍 × 単価 1.37 倍、利益率 1.1%
- ペット用品:数量 67.5(用品の取扱点数(百万点・年、推定))× 価格 550(1 点あたりの平均卸値(円・名目))→ 売上 371 億円・営業利益 4 億円。数量 0.98 倍 × 単価 1.375 倍、利益率 1.1%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024年2月期から3期は営業利益率1%台を保ち、値上げを通せることを示した。その水準に戻る道筋はありうるので、中立に次ぐ重みを置いた。
中立 36% 薄利の卸として細く続く 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,823 円112 億円
犬の頭数は減り、猫は横ばいで、フードの数量は10年で5%ほど減る。1匹あたりの金額は増えるので、単価は物価をやや上回る。用品はネット通販が直接仕入れる分が増え、卸を通る数量は細る。
物流費と人件費の上昇を値段に移しきれず、営業利益率は0.8%に下がる。過去12年の中ほどよりは高いが、近年の山には届かない。
配当性向は3割ほどを保つ。自己資本の稼ぎは4%台で、資本コストの半分強にとどまる。会社は国分との関係を保ちながら、薄利の卸として続く。年によっては値上げで利益が戻るが、物流費がそれを追いかける。潰れる心配は小さいが、株主の価値を大きく増やすこともない。
- ペットフード:数量 93.0(フードの取扱量(千トン・年、推定))× 価格 1.09(1 トンあたりの平均卸値(百万円・名目))→ 売上 1,010 億円・営業利益 8 億円。数量 0.95 倍 × 単価 1.36 倍、利益率 0.8%
- ペット用品:数量 63.8(用品の取扱点数(百万点・年、推定))× 価格 536(1 点あたりの平均卸値(円・名目))→ 売上 342 億円・営業利益 3 億円。数量 0.92 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 0.8%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年2月期の中間は経常利益が前年の半分に落ち、物流費の重さが見えている。近年の1%台の利益率は値上げの局面の追い風もあったので、それより低い利益率がいちばんありそうだ。
やや悲観 20% 中抜きが進み、取扱いが細る 利益 4 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 759 円46 億円
大手のホームセンターとネット通販が、メーカーから直接の仕入れを増やす。エコートレーディングを通るフードの数量は10年で1割半減り、用品はさらに細る。
残った取引でも小売の値下げ要求が強く、単価は物価に届かない。物流費は上がり続け、営業利益率は0.45%に落ちる。
配当は減り、自己資本の稼ぎは2%ほどに沈む。会社は残るが、卸の機能を自前で持つ小売が増えるほど、交渉の余地は狭まっていく。物流の拠点は数量の減りに合わせて縮めるが、固定費は数量ほど早くは減らない。利益はさらに細り、株主への還元も先細る。同業の大手に事業を譲る話が出ても、値段は厳しくなる。
- ペットフード:数量 85.0(フードの取扱量(千トン・年、推定))× 価格 1.03(1 トンあたりの平均卸値(百万円・名目))→ 売上 875 億円・営業利益 4 億円。数量 0.87 倍 × 単価 1.29 倍、利益率 0.45%
- ペット用品:数量 58.5(用品の取扱点数(百万点・年、推定))× 価格 500(1 点あたりの平均卸値(円・名目))→ 売上 293 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 0.45%
倍率:事業の ROE 2.2% が k を大きく下回り、取扱いが細る筋書きなので、中立より低い 7.0 倍。稼ぐ力(純利益÷k=46 億円)の範囲に収まる。
確率:大手の小売とネット通販はメーカーから直接仕入れる動きを強めており、卸を通る量が減るのは現実的な筋書きだ。取引先の多くが大手の小売なので、厚めに置いた。
悲観 10% 大口の取引先を失い、赤字すれすれ 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 327 円20 億円
上位の小売の取引先が相次いで、自前の物流か同業の大手の卸に切り替える。フードの数量は10年で3割減り、用品も同じように細る。
残った取引では値下げを迫られ、物流費の上昇も重なって、営業利益率は0.1%前後に沈む。配当はほぼ止まる。年8億円を超える倉庫の家賃は数量が減っても残り、拠点を畳む費用もかさみ、ためた利益が少しずつ削られる。株主は、正味の資産より安い値段のまま長く待たされる。
価値は事業の稼ぎでは測れず、売掛金と在庫から買掛金と借入を引いた正味の運転資産のうち、少数株主が実際に受け取れる見込みの分でしか測れない。国分が残りの株を買い取る可能性はあるが、それを当てにはできない。
- ペットフード:数量 70.0(フードの取扱量(千トン・年、推定))× 価格 1.01(1 トンあたりの平均卸値(百万円・名目))→ 売上 704 億円・営業利益 1 億円。数量 0.71 倍 × 単価 1.26 倍、利益率 0.1%
- ペット用品:数量 48.8(用品の取扱点数(百万点・年、推定))× 価格 480(1 点あたりの平均卸値(円・名目))→ 売上 234 億円・営業利益 0 億円。数量 0.71 倍 × 単価 1.20 倍、利益率 0.1%
倍率:稼ぐ力がほぼ無いので、今の自己資本 121.8 億円に床の PBR を掛けた。中身は floor_assets_why の正味の運転資産と有価証券の税後。
確率:売上の1割を超える取引先はないが、上位の取引先の切り替えが重なれば一度に大きく響く。、過去にも営業赤字の年があった。国分の後ろ盾があるので、悲観は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ペットフード
ドッグフード・キャットフード・おやつを国内外のメーカーから仕入れ、小売に届ける。
| 数量フードの取扱量(千トン・年、推定) | 価格1 トンあたりの平均卸値(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 98.0 | 0.80 | 784 | 8 |
| 10 年後 中立 | 93.0 | 1.09 | 1,010 | 8 |
取り方:2023年2月期の有報の品目別でフードは売上の74%(キャット29%・おやつ28%・ドッグ13%)。2026年2月期の1,058億円に当てて784億円、ドライとウェット・おやつをならした卸値を1トン80万(百万円で0.80)とし、年約9.8万トンと推定した。利益は全社の利益率で按分。
ペット用品
トイレの砂・ペットシーツ・首輪・ケージなどの用品を小売に届ける。
| 数量用品の取扱点数(百万点・年、推定) | 価格1 点あたりの平均卸値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 69.0 | 400 | 274 | 3 |
| 10 年後 中立 | 63.8 | 536 | 342 | 3 |
取り方:品目別で用品は売上の26%(犬・猫用品22%)。約274億円を、消耗品と雑貨をならした1点あたり平均4百円で割り、年6,900万点と推定した。利益は全社の利益率で按分。
リスクと懸念
物流費と人件費の上昇
運転手の残業規制と人手不足で配送の費用は上がり続ける。卸の利幅は売上の1%前後なので、費用を値段に移しきれないと利益はすぐに半分になる。2027年2月期の中間はその兆しが出た。
中抜き
大手のネット通販や小売がメーカーから直接仕入れる仕組みを広げている。卸を通る量が細れば、物流網の固定費が重くのしかかる。
大口の取引先の切り替え
顧客の多くは大手のホームセンターとドラッグストアだ。一社が自前の物流や同業の卸に切り替えるだけで、売上の大きな部分が一度に消えうる。
犬の数の減少
犬の飼育数は飼い主の高齢化とともに減っている。猫と値の張るフードで金額は保てても、数量は細り、卸の物流の効率を下げる。
少数株主の取り分
国分グループ本社が約18%を持つ筆頭株主だ。資本の再編が国分の都合で進めば、少数株主に有利な値段になるとは限らない。
今後の分かれ目
- 物流費の上昇を値段に移し、営業利益率1%台が2年続いたら
- 値上げの定着とみて、やや楽観の確率を上げる。
- 中間期の減益が通期でも続き、営業利益率が0.6%を割ったら
- 利幅の縮みが構造的とみて、やや悲観に寄せる。
- 国分グループ本社が株を買い増したり、物流の統合を深めたりしたら
- 効率化と再編の上振れとして、楽観側の重みを見直す。
- 大口の取引先が直接の仕入れに切り替えたら
- 悲観の確率を上げる。
- 配当性向を3割超へ引き上げる方針を示したら
- 株主への戻り方が良くなったとみて、価値を見直す。
見ておくもの
- 営業利益率と物流費の比率
- ペットフードの値上げの浸透
- 大口の取引先の動き
- 国分グループ本社との資本関係
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト8%と10年後の自己資本の稼ぎだけで決めた。中立の ROE は4%台で k を大きく下回るので、PER は 1÷k を上限に、ためた利益の目減りに合わせてその6割に置いた。悲観は稼ぐ力が小さいので、今の自己資本に床の PBR を掛けた。期末の純現金46億円は買掛金の膨らみによる一時の値なので、余った現金として足していない。倉庫を借りている分は、新しいリースの会計で2028年2月期から負債に載るが、10年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→12.9 倍・やや楽観 PER 9.8→12.5 倍・中立 PER 7.7→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。