結論
立花エレテックは三菱電機の工場自動化(FA)機器と、ルネサスなどの半導体を売る技術商社だ。売上の約5割がFA、約4割が半導体で、空調などの施設設備が1割弱。営業利益率は3%台で、典型的な薄利多売の商売である。
筆者の結論は、10年で見ると今の値段はやや割高、というものだ。理由は単純で、稼ぐ力に比べて自己資本が厚く、ROEが資本コストに届かないからだ。現金が積み上がるほど、ためた利益は、積み上げた額より小さくしか評価できない。
強みは確かにある。仕入先との関係が深く、純現金で財務は安全だ。中期経営計画では売上3,000億円と営業利益率4%以上を掲げ、累進配当とPBR1倍以上の達成も打ち出した。これは株主を向いた姿勢として評価できる。
ただし、この会社の稼ぎは仕入先が売る権利を与え続けてくれることに依存している。三菱電機かルネサスが販売網を絞れば、利益の土台が揺らぐ。10年の筋書きは、この商権の持ちを軸に分けた。
中立の筋書きでは、売上は名目で年4%ほど伸び、利益率は3.5%前後にとどまる。そこから出る価値は、今の時価総額に10年分の利回りを乗せても届かない。安全域は薄い、と筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「安全だが、増やすのが下手な金庫」に近い。事業は続くが、元手が稼ぐ力は弱い。
オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、条件付きだ。三菱電機とルネサスの商流が10年先も続き、海外でも同じ仕組みを再現できるなら、堅実な複利になる。逆に、仕入先が販売網を絞れば、残るのは薄利の流通網と大きな自己資本だけだ。
資本の使い方は評価が割れる。現金を抱えたまま自己資本が増え続けると、ROEは7%前後で動かない。資本コストは7.5%と置くので、ためた利益は、積み上げた額より小さい価値しか持たない。累進配当と政策保有株の圧縮が本当に進むかどうかが、価値を大きく左右する。
安全域は、悲観の筋書きでも一定ある。純現金と持ち株を売れば、時価総額の4割弱は回収できる。ただし、これは負けない保証ではなく、最悪でも半値以下になりうるという意味だ。筆者は、確実に勝てる事業とは見ない。
結論として、今の値段は、10年の利回りを考えるとやや割高だ。売買の勧めではなく、価値の置き方の話である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は3つある。まずFAシステム事業で、売上のほぼ半分を占める。三菱電機のシーケンサ、インバータ、サーボ、ロボットなどを工場に売るだけでなく、制御盤や生産ラインの組み立てまで請け負う。物を売る商売から、システムを組んで売る商売へ移りつつある。
半導体デバイス事業は売上の約4割で、ルネサスエレクトロニクスの特約店として、国内の産業機器・車載・家電メーカーに半導体を供給する。需給が逼迫した時に部品を確保する「割り当て」の役割が、商社の存在意義になる。ルネサスは特約店を絞り込んでおり、立花は残った側にいる。
施設事業は売上の約1割弱で、業務用エアコンや熱交換器、都市部の再開発向け設備を扱う。酷暑でエアコンが売れると利益が伸びる、天気に左右されやすい事業だ。MS事業(製造受託サービス)は売上の約3%と小さく、太陽光や立体駐車場の関連が中心だ。
地域は国内が中心で、海外関連の売上比率は約2割にとどまる。中期経営計画ではインドと東南アジアを軸に、海外売上900億円を目標に置く。インドでは本社を設立し、チェンナイに初の支店を出した。
つまり、仕入先は三菱電機とルネサスに集中し、顧客は製造業の設備投資と生産に連動する。この集中が、強みでもあり弱みでもある。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、堅実さにある。派手な高収益ではない。営業利益率は過去10年で2.5〜4.7%の範囲で、直近は3.3%まで下がった。薄いが、赤字の年はない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、三菱電機の販売網に入っていることだ。FAの技術提案と、制御盤・システムの組み立てまで担える点が、単なる転売との差になる。ただし値段を決めるのは仕入先で、立花は値決め力を持たない。堀は商権という借り物に近く、持ち主が替えれば消える。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で7%、直近も7.1%だ。自己資本比率は約58%と厚く、純現金が133億円ある。安全な反面、使われない資本が利回りを薄めている。ここが、同業のマクニカや加賀電子との大きな差になる。
経営の姿勢は変わりつつある。累進配当への転換、PBR1倍以上の明言、非事業資産の圧縮は、資本の使い方を意識し始めた証拠だ。ただし、実際に政策保有株を減らして還元に回すかは、まだ見えない。
弱点は2つある。仕入先への集中と、海外の薄さだ。強い国内の商流に頼る会社は、国内の人口減と工場の海外移転を、そのまま受ける。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電子部品・半導体商社の市場は、2つの顔を持つ。AIデータセンター向けの先端半導体は急拡大している。一方、立花が扱う産業機器・車載・FA向けの汎用品は、景気と在庫調整で波打つ。この二重構造を押さえておく必要がある。
世界半導体市場は、AIサーバー向けのロジックとメモリが牽引して大きく伸びている。ただし、その恩恵を主に受けるのは先端半導体を扱うマクニカのような商社だ。立花の主力はルネサスの汎用マイコンや電源などで、国内の製造業の生産に連動する。
FAの分野では、人手不足を背景に省人化・自動化の投資が続く。半導体製造装置や電池工場の投資が回復すれば、追い風になる。足元でも半導体装置向けが上向き、実績も回復基調にある。一方、中国の景気や国内の設備投資の先送りは、いつでも逆風になりうる。
業界の再編も進んでいる。リョーサンと菱洋エレクトロの統合、レスターの誕生など、半導体商社は大型化に向かっている。仕入先が取扱商社を絞る流れの中で、小さい商社は生き残りをかけた選択を迫られる。
立花は三菱電機系商社の中で上位にいる。同じ系列にRYODENがあり、FAの現場では競合する場面が多い。10年で見れば、国内の成熟需要を海外で補えるかどうかが、取り分を決める。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから攻めへ変わる途中にある。純現金が厚く、自己資本比率は約58%。借金に頼らず経営できる体力がある。
株主への還元は強まる方向だ。中期経営計画では、2027年3月期から累進配当を基盤とする方針に改めた。年間配当は大きく増える予定で、株主優待も続ける。PBR1倍以上を目指すことも明言している。自己株式は2023年に上限100万株・30億円の取得枠を設けた実績がある。
政策保有株は非事業資産の圧縮を掲げ、売却の仕方を検討中だ。上場株を27銘柄持つとされ、規模は小さくない。売却益が還元に回れば株主には追い風だが、具体策はまだ示されていない。
M&Aは「積極果敢に挑戦」する構えだが、大型の実績はない。海外の拠点づくりやパートナー提携が中心になりそうだ。買われる側の可能性は、kabufuの推定で10年以内に約19%ある。三菱電機が約8%を持つ大株主で、系列の安定株主が厚い点は、買収を難しくする要因でもある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
楽観の見方は、商流の深さと資本政策の変化を重く見る。立花は三菱電機のFAシステムの主要な特約店で、機器の販売から制御盤の組み立てまで担える。人手不足で国内の自動化投資は構造的に続き、半導体装置・電池・食品など投資先も広がっている。
半導体デバイスでは、ルネサスが特約店を数年で絞り込んだ結果、残った立花の取り分は広がった。需給が逼迫した時の割り当てを確保できる商社は、顧客から選ばれる。国内だけでなくインド、東南アジアでも、日系顧客の進出に付いていける。
中期経営計画の売上3,000億円は、10年で名目物価が1.3倍になることを考えれば、決して高い目標ではない。営業利益率4%以上も、システム案件の比率が上がれば届く。純現金に加え、政策保有株の圧縮と累進配当が進めば、ROEは改善する。PBR1倍以上を会社が公約したことで、資本効率を高める圧力も効いている。
さらに、業界再編の中で、系列と技術を持つ商社は統合の受け手にも買われる側にもなりうる。再編の価値は現在の株価に含まれていない。これらがそろえば、売上は4,000億円を超え、利益率も4%を超える10年になる。
慎重な見方
慎重な見方の出発点は、立花が値段も商権も自分で決められないことだ。FAの機器は三菱電機が値段を決め、半導体はルネサスが決める。仕入先が販売網を見直せば、特約店の一つが外されることもある。ルネサスはすでに特約店を絞り込んでおり、立花が次も残る保証はない。
FAは、国内の工場が海外に移れば先細る。三菱電機が直販を増やせば、商社を通さない取引も増える。半導体でも、大口顧客はメーカーとの直接取引へ向かう。中抜きの圧力は、静かだが確実に進む。
営業利益率は10年で2.5〜4.7%の幅に収まっており、中期経営計画の4%以上は過去の最高水準に近い。名目物価が上がっても、人件費や物流費も同じだけ上がる。利益率が自然に上がる仕組みはない。
資本の面では、現金が厚いのに使い道が決まらない。ROEは7%前後で資本コストを下回り、ためた利益は評価が目減りする。政策保有株の圧縮と言っても、売却の時期や額は示されていない。
今の時価総額は、純資産とほぼ同じ水準にある。成長も改善も織り込まれている中で、仕入先の一手一つで落ちる事業に、さらに高い値付けをする理由は見当たらない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。強気の根拠は、累進配当やPBR1倍以上の公約など、これから実現するはずの話に偏っている。一方、弱気の根拠は、仕入先に値段と商権を握られているという、すでに存在する構造だ。
確率は、やや悲観と悲観に厚めに置いた。特に悲観は、仕入先の販売網から外れるという、一度起きると戻りにくい筋書きなので、14%を割らなかった。楽観は、利益率の上振れが過去の最高水準を超える必要があるため、8%にとどめた。
結果として、中立の価値でも今の時価総額には届かず、総合ではやや割高になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,559 円1,222 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,222 円488 億円)。 今の値に割り戻すと 4,245 円933 億円、今との差 −10.6%、 期待の年率 +5.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,772 円2,587 億円 | 3,222 円708 億円 | +215.7% | +12.2% | 1,199 円264 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,570 円1,883 億円 | 2,771 円609 億円 | +138.8% | +9.1% | 2,268 円498 億円 |
| 中立 | 34% | 6,126 円1,346 億円 | 2,389 円525 億円 | +79.3% | +6.0% | 2,895 円636 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,403 円528 億円 | 1,752 円385 億円 | −12.5% | −1.3% | 997 円219 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,744 円383 億円 | 1,265 円278 億円 | −36.7% | −4.5% | 421 円93 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,559 円1,222 億円 | 2,222 円488 億円 | +63.8% | +5.1% | 7,781 円1,710 億円 |
今の株価時価総額 4,750 円1,044 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 三菱電機・ルネサスの商流を深く押さえ、海外も立ち上がる 利益 162 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 11,772 円2,587 億円
10年でFAと半導体の両方が大きく伸びる。国内の自動化投資が続くうえ、インド・東南アジアの拠点が立ち上がり、売上は4,000億円を超える。ルネサスの特約店は絞り込みが一巡し、立花は残った数社の中で取り分を広げる。割り当てを確保できる商社として、顧客の信頼も増す。システム案件の比率が上がり、営業利益率は4%台前半まで改善する。施設事業も都市部の再開発で堅調に伸びる。政策保有株の圧縮で現金が還元に回り、ROEは10%前後まで上がる。三菱電機との関係はむしろ深まり、系列の中核商社としての地位が固まる10年になる。
- FAシステム事業:数量 19,500(FA機器・システム市場(立花の事業地域、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.10(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 2,000 億円・営業利益 100 億円。FA市場×取り分、利益率5.0%
- 半導体デバイス事業:数量 17,400(立花が扱う半導体の流通市場(国内産業・車載向け、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.11(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 1,875 億円・営業利益 75 億円。半導体市場×取り分、利益率4.0%
- 施設事業:数量 21,000(国内の業務用空調・設備工事市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.01(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 304 億円・営業利益 15 億円。施設市場×取り分、利益率5.0%
- MS事業:数量 3,000(製造受託・駐車設備関連の市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.03(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 91 億円・営業利益 2 億円。MS市場×取り分、利益率2.5%
倍率:事業の純利益 162 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 15.97 倍、時価総額 2,587 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が過去の最高(4.7%)を超え、海外も目標どおり立ち上がる必要があり、条件が重なるため低く置いた。
やや楽観 20% FAの省人化と半導体の安定確保が効き、目標に近づく 利益 129 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 8,570 円1,883 億円
中期経営計画の目標に近い形で進む。FAは省人化投資を背景に実質で2割近く伸び、半導体も安定確保の役割が効いて取り分を保つ。海外は900億円の目標に届かないまでも、インドと東南アジアで着実に積み上がる。売上は3,800億円ほどになり、営業利益率は3.9%まで上がる。累進配当と政策保有株の圧縮が実行され、還元性向は6割に乗る。ROEは9%近くまで改善し、資本コストを上回る。仕入先との関係に大きな変化はなく、施設事業も再開発の波に乗り、全社の利益を下支えする。ただし、利益率の水準は過去の最高に届かず、評価は穏やかなものにとどまる。堅実な成長が評価される10年になる。
- FAシステム事業:数量 17,700(FA機器・システム市場(立花の事業地域、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.10(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 1,790 億円・営業利益 82 億円。FA市場×取り分、利益率4.6%
- 半導体デバイス事業:数量 15,360(立花が扱う半導体の流通市場(国内産業・車載向け、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.11(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 1,621 億円・営業利益 58 億円。半導体市場×取り分、利益率3.6%
- 施設事業:数量 20,000(国内の業務用空調・設備工事市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.01(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 289 億円・営業利益 14 億円。施設市場×取り分、利益率4.8%
- MS事業:数量 3,000(製造受託・駐車設備関連の市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.03(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 91 億円・営業利益 2 億円。MS市場×取り分、利益率2.0%
倍率:事業の純利益 129 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.6 倍、時価総額 1,883 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の目標(売上3,000億円・利益率4%)に近い形。実現しうるが、利益率の上振れが要る。
中立 34% 国内は成熟、海外が補い、名目で普通に伸びる 利益 101 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 6,126 円1,346 億円
国内は成熟し、海外が補う。FAの数量は実質で1割増、半導体は1割強の増加にとどまり、施設とMSは横ばいか微減になる。価格は名目物価に沿って1.3倍強になり、売上は3,350億円ほどに達する。これは中期経営計画の目標に近いが、営業利益率は3.5%前後と、目標の4%には届かない。三菱電機とルネサスとの関係は続くが、取り分が広がることはない。累進配当は実行され、還元性向は6割に乗るが、現金が厚い構造は変わらず、ROEは7%台で動かない。海外の立ち上げは遅れ気味だが、国内の防御は崩れない。株主が見る景色は、今とほとんど変わらない。可もなく不可もない堅実な10年である。
- FAシステム事業:数量 16,500(FA機器・システム市場(立花の事業地域、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.10(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 1,620 億円・営業利益 68 億円。FA市場×取り分、利益率4.2%
- 半導体デバイス事業:数量 13,800(立花が扱う半導体の流通市場(国内産業・車載向け、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.10(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 1,375 億円・営業利益 44 億円。半導体市場×取り分、利益率3.2%
- 施設事業:数量 19,000(国内の業務用空調・設備工事市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.01(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 275 億円・営業利益 12 億円。施設市場×取り分、利益率4.5%
- MS事業:数量 2,700(製造受託・駐車設備関連の市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.03(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 82 億円・営業利益 1 億円。MS市場×取り分、利益率1.5%
倍率:事業の純利益 101 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,346 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内成熟・海外補完・利益率3.5%前後という、過去の実績に最も近い中心の筋書き。
やや悲観 24% 仕入先の販売網の絞り込みで取り分が削られる 利益 66 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 2,403 円528 億円
仕入先の販売網の絞り込みが少しずつ進む。三菱電機は大口顧客への直販を増やし、ルネサスは特約店の再編で立花の取り分を一部削る。FAと半導体の数量は実質で横ばいか微減になり、価格も物価に追いつかない。営業利益率は2.8%まで下がり、売上は2,750億円前後にとどまる。海外は伸びるが、国内の落ち込みを埋めきれない。現金は厚いままで、ROEは5%を下回る。それでも事業が崩れるわけではなく、配当は維持されるが、施設事業は天候と案件に左右されて振れが大きく、全社の安定を支えきれない。累進配当の公約は守られるが、還元の水準は今の延長線にとどまる。
- FAシステム事業:数量 14,700(FA機器・システム市場(立花の事業地域、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.10(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 1,400 億円・営業利益 48 億円。FA市場×取り分、利益率3.4%
- 半導体デバイス事業:数量 11,400(立花が扱う半導体の流通市場(国内産業・車載向け、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.09(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 1,017 億円・営業利益 25 億円。半導体市場×取り分、利益率2.5%
- 施設事業:数量 19,000(国内の業務用空調・設備工事市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.01(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 261 億円・営業利益 10 億円。施設市場×取り分、利益率4.0%
- MS事業:数量 2,700(製造受託・駐車設備関連の市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.03(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 80 億円・営業利益 1 億円。MS市場×取り分、利益率1.0%
倍率:事業の純利益66億円・ROE 約4.8% は k 以下で、上限は 1÷k=11.8倍。取り分が削られ資本効率も落ちる筋書きのため、上限の約7割の8.0倍に置いた。
確率:仕入先の販売網の見直しは静かに進む傾向があり、取り分の削られ方が部分的な筋書きとして厚めに置いた。
悲観 14% 三菱電機かルネサスの販売網から外れ、商権の核を失う 利益 27 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,744 円383 億円
三菱電機かルネサスの販売網から外れ、商権の核を失う。FAでは、三菱電機が一次店を整理し、立花は二次的な位置に下がる。半導体でも、ルネサスが特約店契約を終了し、取扱量は半分になる。残るのは非系列の機器と施設事業で、売上は1,700億円ほどに縮み、営業利益率は2%を割る。固定費の重さで利益は大きく落ち、減損も出る。純現金と持ち株を売って還元に回す選択肢はあるが、事業の価値は大きく削られる。10年のうちに、堅実な技術商社から小さな流通業者へ変わる筋書きである。固定費の見直しと拠点の統廃合に追われ、海外への投資も止まる。仕入先に依存した事業の危うさが、そのまま表に出る10年である。
- FAシステム事業:数量 11,250(FA機器・システム市場(立花の事業地域、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.08(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 948 億円・営業利益 24 億円。FA市場×取り分、利益率2.5%
- 半導体デバイス事業:数量 6,000(立花が扱う半導体の流通市場(国内産業・車載向け、実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.08(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 491 億円・営業利益 7 億円。半導体市場×取り分、利益率1.5%
- 施設事業:数量 17,000(国内の業務用空調・設備工事市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.01(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 220 億円・営業利益 7 億円。施設市場×取り分、利益率3.0%
- MS事業:数量 2,100(製造受託・駐車設備関連の市場(実質・億円)× 立花の取り分)× 価格 0.03(取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る)→ 売上 57 億円・営業利益 0 億円。MS市場×取り分、利益率0.0%
倍率:事業の純利益27億円・ROE 約2.3% は k 7.5% よりかなり低い。稼ぐ力(純利益÷k)は約320億円で、純現金と売れる資産の税後(約383億円)のほうが大きいため、今の自己資本1,050億円に0.365倍を掛けて置いた。
確率:三菱電機とルネサスへの集中度が高く、商権を失うと戻りにくい。同業の確率(12%前後)より、集中度の分だけ厚く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
FAシステム事業
三菱電機のFA機器と、制御盤・システムの組み立て販売。
| 数量FA機器・システム市場(立花の事業地域、実質・億円)× 立花の取り分 | 価格取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15,000 | 0.07 | 1,099 | 44 |
| 10 年後 中立 | 16,500 | 0.10 | 1,620 | 68 |
取り方:開示は売上構成比(約48%)のみ。事業地域のFA機器・システム市場を約1.5兆円と推定(国内の制御機器・駆動機器の流通市場を中心に東南アジアを足した置き方)、立花の取り分を約7.3%とした。営業利益は開示が無く、利益率4%と推定。
半導体デバイス事業
ルネサスなどの半導体を国内の産業機器・車載・家電メーカーへ供給する。
| 数量立花が扱う半導体の流通市場(国内産業・車載向け、実質・億円)× 立花の取り分 | 価格取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,000 | 0.07 | 892 | 27 |
| 10 年後 中立 | 13,800 | 0.10 | 1,375 | 44 |
取り方:開示は売上構成比(約39%)のみ。ルネサス系の汎用半導体の国内流通市場を約1.2兆円と推定し、取り分を約7.4%とした。営業利益は開示が無く、利益率3%と推定。
施設事業
業務用エアコン・熱交換器・再開発向け設備の販売と施工。
| 数量国内の業務用空調・設備工事市場(実質・億円)× 立花の取り分 | 価格取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,000 | 0.01 | 216 | 10 |
| 10 年後 中立 | 19,000 | 0.01 | 275 | 12 |
取り方:開示は売上構成比(約9.5%)のみ。国内の業務用空調・設備関連の市場を約2兆円と推定し、取り分を約1.1%とした。利益率は4.5%と推定。
MS事業
太陽光・立体駐車場など製造受託サービス。
| 数量製造受託・駐車設備関連の市場(実質・億円)× 立花の取り分 | 価格取り分(売上÷市場)の指数。物価は価格に入る | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.02 | 68 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,700 | 0.03 | 82 | 1 |
取り方:開示は売上構成比(約3%)のみ。関連市場を約3,000億円と推定し、取り分を約2.3%とした。利益率は1%と推定。
リスクと懸念
三菱電機とルネサスへの仕入先集中
FAは三菱電機グループ、半導体はルネサスが主要な仕入先で、どちらか一方が販売網を絞れば、利益の大半が揺らぐ。ルネサスは過去5年で特約店を絞り込んだ。立花は残った側にいるが、次の見直しで残る保証はない。値段も商権も、立花は自分で決められない。
国内製造業の設備投資の波
FAシステムは、製造業の設備投資が減ると売上と利益が同時に落ちる。国内工場の海外移転や、中国景気の減速は、そのまま数量に響く。人手不足による自動化需要は追い風だが、投資の先送りが起きる年には在庫調整が重なる。
メーカーの直販化と中抜き
三菱電機が大口顧客への直販を広げたり、半導体の大口顧客がメーカーと直接取引したりすれば、商社を通す量が減る。技術提案と在庫・納期の確保という機能で上回れなければ、手数料は縮む。
低い資本効率とためこむ現金
純現金133億円と厚い自己資本の割に、ROEは7%前後にとどまる。累進配当や政策保有株の圧縮が進まなければ、現金はためたままで評価されない。経営が資本を使い切る力を持てるかが問われる。
海外展開の実行リスク
中期経営計画は海外売上900億円を掲げるが、今は海外関連が全体の約2割にとどまる。インド・東南アジアは競合も多く、顧客の日系企業の動きにも左右される。初期投資が先行し、利益率が下がる期間が長引くおそれがある。
施設事業の天気と大型案件頼み
施設事業は酷暑でエアコンが売れると利益が跳ねるが、反動で落ちる年もある。都市部の再開発と省エネ工事は伸びる分野だが、案件が少数に偏るため、年ごとの利益の振れは大きい。
業界再編で相対的に小さくなる
半導体商社はリョーサンと菱洋エレクトロの統合など大型化が進む。規模で劣る商社は、仕入先の絞り込みで不利になりやすい。系列の安定株主は厚いが、再編の主役になれない場合の孤立も考えておく必要がある。
今後の分かれ目
- ルネサスが特約店の絞り込みを再び進め、立花が対象に入ったら
- 半導体デバイスの取り分が大きく減るため、やや悲観から悲観の筋書きへ重みを移す。FAとの合計で利益の何割が失われるかを確認する。
- 三菱電機がFAの販売網を再編し、直販や特約店の整理に踏み込んだら
- FA事業が全社の約半分を占めるため、悲観の筋書きの確率を大きく上げる。立花が一次店の地位を保てるかが分かれ目になる。
- 営業利益率が3年続けて4%以上になったら
- システム案件の比率が上がり、利益率の水準が切り上がったとみて、やや楽観の筋書きへ重みを移す。
- 政策保有株の売却と累進配当が実際に進み、現金が還元に回ったら
- ROEが改善し、純現金の評価の目減りが減る。中立の倍率の見方を上方に見直す余地が出る。
- 海外売上が目標どおり伸び、海外関連比率が3割に近づいたら
- 国内の成熟を海外で補えている証拠になる。数量の前提を上方修正する。
- 国内の設備投資や半導体装置向けの需要が急に冷え込んだら
- FAと半導体の両方に影響するため、やや悲観の筋書きが近づく。在庫の水準と受注の回復時期を見る。
見ておくもの
- FA事業の売上総利益率と営業利益率
- ルネサスの特約店政策と三菱電機の販売網の動き
- 海外関連売上比率(19%から30%への道筋)
- 政策保有株の売却額と配当・自己株式取得の実績
- 半導体デバイスの在庫水準と受注
- 施設事業の大型案件と空調の需要
倍率と資本コストの決め方
世界と国内の市場規模に取り分(シェア)を掛けて売上を積み、物価3%は価格の側に入れた。倍率は資本コスト7.5%と、事業のROE(7%台)から正当化PERの上限を出し、中立は上限の約9割、やや悲観は約7割に置いた。ROEが資本コストを下回るため、中立の上限は1÷kである。今の株価や同業のPERには寄せていない。悲観は倍率でなく、純現金と持ち株の売却額(税引き後)で置いた。市場規模と取り分は開示がないので推定である。新リース会計基準でBSの形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→15.97 倍・やや楽観 PER 11.8→14.6 倍・中立 PER 10.6→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まりv2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。