結論
明治電機工業は、名古屋に本店を置くFA(工場の自動化)の専門商社だ。オムロンなどの制御機器を仕入れ、自動車や電子部品の工場に納める。検査装置や生産ラインの設計も自社で手がける。筆者の結論は「適正」。本業は良いが、利益が薄く、厚い現金も株主に届きにくい。この二つが、今の安さをほぼ打ち消している。
売上の約半分が自動車関連で、トヨタグループだけで46%を占める。最大の販売先はデンソーで15%。仕入れでは、オムロンが14%を握る。顧客と仕入先の両方が偏っている。
利益率は低い。2026年3月期の営業利益は37億円、営業利益率は4.8%で、過去12年の最高(5.3%)に近い。商社の利幅は薄く、これ以上は伸びにくい。直近の2027年3月期第1四半期は、売上が16%減り、営業利益はほぼゼロまで落ちた。
現金は148億円と時価総額の半分を超えるが、配当は純利益の4割で、自社株買いは見られない。積み上がった現金が株主に戻る保証は弱い。
中立の筋書きは、10年後の営業利益が54億円、純利益が42億円。自己資本利益率は7%前後で、資本コスト7.75%に届かない。10年の価値は今の時価総額とほぼ並ぶ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、明治電機工業は「良い商売をしているが、その果実が株主に来ない会社」だ。顧客の工場に入り込み、売上764億円に対して必要な資本は小さい。本業の稼ぎは、使う資本に比べて高い。
ところが、配当を利益の4割に抑えて現金を積んでいる。148億円の現金は、時価総額の過半にあたる。この現金が2%の利息しか生まないなら、資本コストを大きく下回る。株主にとっては、持っている間ずっと価値が目減りする。
10年の筋書きでは、本業の利益が物価に連れて伸び、営業利益は54億円になる。ただし、積み上がる現金が自己資本利益率を7%前後に押し下げる。
安全域は、現金の厚さにある。純現金を差し引くと、本業は時価総額の半分で買える計算になる。ただ、その現金が戻る確証は弱く、戻り方は5割で見た。
この会社を持ち続けたいかと問われれば、本業は好ましく、値段もほぼ妥当と答える。ただし、現金の使い道が変わらない限り、大きな上振れは期待しない。
何で稼ぐ会社か
事業は、FA機器の販売と、それに付随するエンジニアリングだ。制御機器、産業機器、計測機器、電源機器、実装機器などを仕入れて工場に納める。2026年3月期の売上764億円のうち、産業機器が4割強、制御機器が26%、計測機器が11%を占める。
ただの商社と違うのは、設計と組み立てを自社で請け負う点だ。制御盤などの組立品(コンポ)や、自社開発の検査装置、生産支援システムを作る。部品を売るだけの商社に比べ、顧客の工場に深く入り込む。
顧客は自動車関連が51%で、うちトヨタグループが46%を占める。電気・電子・半導体、工作機械の企業がこれに続く。最大の販売先はデンソーで、売上の15%だ。仕入れではオムロンが14%で最大になる。
拠点は名古屋で、物流センターを1か所に集約している。在庫を一か所で持つことで効率を上げたが、災害時にはここが止まるリスクもある。
商社としての競争力は、メーカー品の在庫と納期の速さに加え、「この部品でこの装置を動かしたい」という顧客の相談に設計から応えられる点にある。取扱品目は数万点にのぼるとみられ、工場の担当者は、まず営業に相談する習慣を持つ。海外は米国、英国、中国、タイの子会社を通じて展開する。
従業員は連結で709人。営業とエンジニアが収益の源だ。業績は下半期に偏る傾向があり、年度の前半は利益が薄い。
優良さと弱いところ
明治電機工業の堀は、トヨタグループの工場に長年入り込んだ関係と、設計まで担う提案力にある。FA機器は取り替えのコストが高く、一度採用されると部品の補充や改修で取引が続く。従業員の平均勤続は16.8年と長く、営業の顔なじみが顧客との関係を支えている。
利益率は薄い。営業利益率は過去12年で3.0%から5.3%の間にあり、足元の4.8%は上位だ。商社としては健闘しているが、規模を伸ばしても率は上がりにくい。
弱みは偏りだ。トヨタグループが売上の46%、デンソー一社で15%を占める。仕入れもオムロンが14%を占め、代理店契約が解除されれば事業の柱を失う。顧客と仕入先の両方が偏る会社は、どちらか一つが動けば揺れる。
資本効率は低い。自己資本利益率は10年の中央値で7.5%、直近も7.5%。自己資本比率は66%と厚いが、現金が多いほど数字は下がる。会社は中長期でROE10%以上を掲げる。
経営は堅実だ。配当は純利益の4割を目安とし、第11次中計の残りは年間配当に下限を設けた。自社株買いは見当たらない。
筆者が気にするのは、現金の使い道である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
FA部品商社の市場は、設備投資の景気に連動する。国内は人手不足による省人化投資が構造的な追い風だ。世界のFA市場の成長率は年6〜12%とされ、国内でも名目で年4〜7%の伸びが期待できる。
ただし、明治電機工業の市場は、その中でも自動車への偏りが大きい。自動車は電動化に向けて工場の設備を入れ替える一方、国内の新設は限られる。トヨタグループの設備投資の波が、そのまま同社の数量に出る。2027年3月期第1四半期の売上16%減は、その揺れの表れだ。
成長の柱は、半導体、電子部品、二次電池など、自動車以外の工場だ。会社はこの分野での検査装置やシステムを伸ばそうとしている。
競争は分散的だ。標準品の在庫と通販で規模を取るミスミやトラスコ中山、機械商社の山善、同じ地盤の電設資材商社などが並ぶ。FAエンジニアリング商社は、メーカーのブランドと設計力で差をつける。
脅威はメーカーの直接販売と、ネット化による中抜きだ。オムロンが自ら顧客に売る範囲を広げれば、代理店の取り分は減る。取適法(下請取引の適正化に関する法律)の対応で、仕入れの支払いが早まる点も、運転資金を圧迫する。
10年の見通しはこうだ。自動車向けは実質で横ばい、その他は実質で1〜2割増える。単価は名目で物価並みに上がる。
資本政策と M&A
還元は安定しているが、積極的ではない。連結配当性向40%を目安に、年2回配当する。第11次中計(2024〜2026年度)の残りは、年間配当に下限を設けた。2026年3月期の配当性向は4割ほどだった。自社株買いの記載は見当たらない。
現金は148億円と、前期から69億円増えた。営業活動で84億円稼いだ一方、投資と配当は小さく、借入はない。純現金が時価総額の5割を超える状態が続く。配当が利益の4割にとどまる限り、現金は積み上がる。
投資は物流センターの集約や、海外の子会社、検査装置の開発に向く。大型の買収は目立たない。
政策保有株は27銘柄で、投資有価証券は54億円と時価総額の2割ほどだ。配当が利益に入っているので、別に足さない。
大株主の構成は確認できなかった。外部の推計で、10年以内のTOB(公開買付け)の確率は2割台とされるが、筋書きの確率には織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
FA機器の需要は構造的に伸びる。人手不足で省人化投資は止まらず、半導体や二次電池の工場が国内外で増えている。明治電機工業は、制御盤や検査装置を自社で設計できるので、顧客の工場に入り込める。
自動車の電動化は、工場の設備を入れ替える。トヨタグループの電動化投資が動き出せば、制御機器の需要は一気に膨らむ。デンソーなどの取引先は、長年の関係で明治電機工業を外せない。
会社の目標は現実的だ。第11次中計は2027年3月期に営業利益40.7億円を掲げ、足元から1割増を見込む。営業利益率4.8%は、過去12年の最高に近く、エンジニアリングの比率を上げれば5%を超えられる。
資本の使い方も変わりうる。現金が時価総額の半分を超えた今、株主から配当や自社株買いの圧力が強まる。会社は配当に下限を設け、還元を重視する姿勢を見せた。ROE10%以上という目標が本気なら、余った現金は戻る。
この筋書きなら、10年後の営業利益は69億円に近づき、純利益は54億円になる。
慎重な見方
商社の宿命は、メーカーに中抜きされることだ。オムロンが直接販売を広げれば、代理店は取り分を失う。明治電機工業の仕入れの14%はオムロン一社で、契約が変われば、事業の柱が揺らぐ。
トヨタグループへの依存が重い。売上の46%、デンソー一社で15%を占める。2027年3月期の第1四半期は、売上が16%減り、営業利益はほぼゼロまで落ちた。トヨタグループの設備投資が止まれば、利益は一気に消える。
現金は148億円あるが、見かけほど余裕はない。取適法への対応で、仕入れの支払いが早まれば、手元の現金は運転資金に食われる。営業債務は前期に18億円減っている。
利益率の天井も低い。営業利益率は過去12年で5.3%が最高だ。商社の取り分は薄く、人件費が上がれば、すぐ削られる。
そして、現金が株主に戻る証拠は薄い。配当は利益の4割で、自社株買いは見られない。積み上がる現金が低い利息で眠ったまま、株主の取り分は薄まっていく。
この筋書きなら、営業利益は28億円まで下がり、純利益は26億円にとどまる。
どちらに重みを置いたか
どちらにも一理ある。ただ、強気が頼る「現金の使い道が変わる」は、実績がない。会社は配当の下限を設けたが、自社株買いは見当たらない。慎重な見方が突く、顧客と仕入先の偏り、薄い利益率、現金が戻らない可能性は、数字で確かめられる。
現金の戻り方を5割に置き、確率は慎重な側へやや寄せた。強気側は27%、やや弱気と弱気で33%、中立に40%を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,364 円551 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,038 円131 億円)。 今の値に割り戻すと 2,784 円351 億円、今との差 +34.2%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,703 円846 億円 | 1,299 円164 億円 | +285.8% | +14.5% | 640 円81 億円 |
| やや楽観 | 19% | 5,665 円715 億円 | 1,188 円150 億円 | +230.5% | +12.7% | 1,302 円164 億円 |
| 中立 | 40% | 5,226 円660 億円 | 1,109 円140 億円 | +205.4% | +11.8% | 2,534 円320 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,462 円311 億円 | 911 円115 億円 | +62.6% | +5.0% | 776 円98 億円 |
| 悲観 | 10% | 950 円120 億円 | 555 円70 億円 | −27.5% | −3.2% | 150 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,364 円551 億円 | 1,038 円131 億円 | +160.5% | +10.0% | 5,402 円682 億円 |
今の株価時価総額 2,074 円262 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 電動化とFA需要が重なり、利益率が過去の最高に並ぶ 利益 54 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 6,703 円846 億円
FA需要が構造的に伸び、自動車の電動化投資も動く。自動車向けの数量は実質で1割増え、その他は半導体と電子分野で4.5割増える。営業利益率は5.3%と過去の最高に並び、営業利益は69億円に近づく。
自社開発の検査装置とシステムの比率が上がり、商社の薄利を押し上げる。オムロンとの関係は安定し、仕入れの条件も崩れない。
配当は純利益の4割を保ち、現金は積み上がる。ただ、株主の圧力で自社株買いが始まり、現金の戻り方が改善する余地はある。
減価償却は商社として小さい。新リース会計基準の影響も限られる。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。純現金の受取利息が年3億円ほど増える。
- 自動車関連(トヨタグループ中心):数量 110(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 5.22(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 574 億円・営業利益 30 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.3%
- 電気・電子・半導体・工作機械ほか:数量 145(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 5.01(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 727 億円・営業利益 39 億円。数量 1.45 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.3%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 14.66 倍、時価総額 846 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車の電動化投資とFA需要が重なり、営業利益率が過去の最高を超える道。実績が薄いので8%にとどめた。
やや楽観 19% 半導体と電子分野が伸び、利益率が5%台に乗る 利益 47 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 5,665 円715 億円
自動車は電動化で数量が増え、その他は半導体と電子で伸びる。自動車向けは実質で5%増、その他は3割増。営業利益率は5%台前半で、営業利益は61億円。
エンジニアリングの比率が上がり、利益率が少し押し上がる。オムロンとの関係は安定する。
配当は純利益の4割を保つ。現金は積み上がるが、一部は成長投資に回る。
自動車向けの電動化投資は、一度に大きくは動かない。工場ごとに少しずつ設備を入れ替えるので、商社の売上は階段状に増える。半導体や電子の工場は海外でも増えるが、国内の納入に絞られる。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。純現金の受取利息が年3億円ほど増える。
- 自動車関連(トヨタグループ中心):数量 105(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 5.22(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 548 億円・営業利益 28 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.1%
- 電気・電子・半導体・工作機械ほか:数量 130(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 5.01(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 652 億円・営業利益 33 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.1%
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 14 倍、時価総額 713 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体や電子分野が伸び、利益率が5%台に乗る道。会社の中計目標に近い。
中立 40% 自動車は横ばい、その他が伸び、営業利益は54億円 利益 42 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 5,226 円660 億円
自動車は実質で横ばい、その他は実質で15%増える。売上は名目で4割ほど増え、1,100億円になる。営業利益率は4.9%と、足元より少し上で落ち着く。営業利益は54億円。
利益率は過去の最高(5.3%)を下回る。商社の取り分は薄く、人件費の増加を価格で吸収しきれない。自社開発の検査装置は育つが、全体を押し上げるほどではない。
現金は積み上がり続ける。配当は純利益の4割を保ち、自社株買いは見込まない。受取利息が年3億円ほど増え、純利益の下支えになる。
減価償却は商社として小さく、物価の影響は限られる。更新するシステムや物流設備は、今の値段で償却が足される。
(名目の前提)数量は実質、価格は物価並みの1.34倍。
- 自動車関連(トヨタグループ中心):数量 100(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 5.22(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 522 億円・営業利益 25 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 4.7%
- 電気・電子・半導体・工作機械ほか:数量 115(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 5.01(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 577 億円・営業利益 29 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 5.1%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 13.86 倍、時価総額 638 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車は横ばい、その他が伸び、利益は物価に連れて戻る最も自然な道。5つの中でいちばん高い40%を置いた。
やや悲観 23% トヨタグループの投資が細り、利益率が薄まる 利益 26 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,462 円311 億円
トヨタグループの設備投資が細り、オムロンの条件も厳しくなる。自動車向けは実質で15%減り、その他も5%減る。値上げは競争で通りきらず、10年1.30倍にとどまる。
営業利益率は3.6%に下がる。商社の取り分が薄いうえ、人件費は物価で増える。営業利益は32億円と、足元より小さい。
現金は営業債務の短縮で一部が運転資金に食われる。配当は下限を守るため、配当性向は上がる。
オムロンの条件が厳しくなると、仕入れの値引きが縮み、粗利が薄まる。トヨタグループ向けの更新投資が先送りされると、数量はさらに落ちる。営業とエンジニアの人員は、すぐには減らせない。
(名目の前提)数量は実質、価格は10年1.30倍(物価に遅れる)。
- 自動車関連(トヨタグループ中心):数量 85.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 5.06(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 430 億円・営業利益 16 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 3.6%
- 電気・電子・半導体・工作機械ほか:数量 95.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 4.86(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 462 億円・営業利益 17 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 3.6%
倍率:自己資本利益率はk以下。PERの上限は1÷k=11.8倍で、その約72%にあたる8.5倍に置いた。
確率:トヨタグループの投資が細り、オムロンの条件も厳しくなる道。第1四半期の落ち込みを見て、過去の谷に近い水準として23%を置いた。
悲観 10% 中抜きと内製化が重なり、商社の機能を失う 利益 11 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 950 円120 億円
オムロンが直接販売を広げ、トヨタグループが内製化や直接購買を進める。自動車向けは実質で35%減り、その他も25%減る。値上げは通らず、10年1.20倍にとどまる。
営業利益率は2%まで落ちる。営業利益は13億円。人員を減らしても、物流センターなどの固定費は重い。
現金は運転資金の縮小で一部が戻るが、少数株主には現金の使い道を決められない。配当は下限を割り込む年もある。
代理店としての取り分が縮み、自社開発の検査装置も規模が足りず、全体の赤字を埋めるには届かない。物流センターの集約や海外子会社の整理で費用を絞っても、売上の減少に追いつかない。会社は縮みながら現金を持ち続け、株主には配当だけが届く。
(名目の前提)数量は実質、価格は10年1.20倍。純現金の受取利息は縮む分を利益から引いた。
- 自動車関連(トヨタグループ中心):数量 65.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 4.67(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 304 億円・営業利益 6 億円。数量 0.65 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 2.0%
- 電気・電子・半導体・工作機械ほか:数量 75.0(販売数量の指数(2026年3月期=100、実質))× 価格 4.49(指数1点あたり売上(億円、名目))→ 売上 337 億円・営業利益 7 億円。数量 0.75 倍・価格 1.20 倍(名目)・営業利益率 2.0%
倍率:稼ぐ力(純利益11億円÷k=約130億円)と、純現金・売れる資産の税後を見た。縮小の影響を重く見て、事業の純利益に8倍を掛けた。
確率:オムロンの代理店契約の悪化とトヨタグループの内製化・直接購買が重なる複合の筋書き。頻度は低いが、10年では無視できないので10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車関連(トヨタグループ中心)
トヨタグループ、デンソー、部品メーカーの工場向け。制御機器、産業機器、検査装置、組立品を納める。
| 数量販売数量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 3.89 | 389 | 19 |
| 10 年後 中立 | 100 | 5.22 | 522 | 25 |
取り方:2026年3月期の自動車関連の売上を、売上764億円の51%(389億円)と置いた。セグメント利益は開示されないため、全社の営業利益率4.8%を同じに置き、利益18.7億円と推定した。数量は実質の指数100、単価3.894。数量は実質、価格は名目。
電気・電子・半導体・工作機械ほか
電気・電子、半導体、工作機械などの工場向け。自社開発の検査装置や生産支援システムが伸びる領域。
| 数量販売数量の指数(2026年3月期=100、実質) | 価格指数1点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 3.74 | 374 | 18 |
| 10 年後 中立 | 115 | 5.01 | 577 | 29 |
取り方:2026年3月期の自動車以外の売上374億円(49%)。セグメント利益は非開示なので、全社の営業利益率4.8%を置き、利益18.0億円と推定。営業利益36.7億円に合わせた。数量は指数100、単価3.742。
リスクと懸念
トヨタグループへの依存
売上の46%がトヨタグループ、デンソー一社で15%を占める。自動車の設備投資が止まれば、数量が同時に落ちる。2027年3月期第1四半期は売上が16%減り、営業利益はほぼゼロまで下がった。
オムロンの代理店契約
仕入れの14%を占めるオムロンとの契約が解除、または条件が悪くなれば、事業の柱を失う。メーカーが直接販売を広げれば、代理店の取り分が減る。有価証券報告書もこのリスクを明記している。
現金が株主に戻らないこと
現金は148億円で時価総額の5割を超えるが、配当は純利益の4割で、自社株買いは見られない。積み上がった現金が低い利息で眠れば、株主の取り分は薄まる。戻り方は5割で見た。
利益率の薄さと人件費
営業利益率は過去12年で5.3%が最高だ。商社の取り分は薄く、賃上げが利益を削る。営業とエンジニアが収益の源で、人件費の増加を価格に転嫁しきれない年がある。
取適法と運転資金
取適法への対応で、仕入れの支払いが早まる。営業債務は前期に18億円減った。支払いが早まるほど、手元の現金が運転資金に食われ、見かけの純現金が減る。
物流センターの1拠点集約
名古屋の物流センター1か所に集約しているため、地震や災害で止まれば、全国の供給が滞る。有価証券報告書もこの点をリスクに挙げる。
今後の分かれ目
- 会社が自社株買いを発表する、または配当性向を5割以上に引き上げる
- 現金の戻り方が1.0に近づき、価値の見方が上がる。
- トヨタグループ向けの売上が2期続けて減る
- 自動車関連の数量が落ち込み、やや弱気の確率が上がる。
- 営業利益が第11次中計の目標(40.7億円)を下回る
- 利益の戻りが遅れ、中立の営業利益を下げて見直す。
- オムロンが代理店の条件を変える、または直接販売を広げる
- 仕入れの柱が揺らぎ、悲観の確率が上がる。
- 自社開発の検査装置・システムの売上が営業利益の2割を超える
- 利益率の天井が上がり、強気の筋書きが近づく。
- 取適法対応で営業債務がさらに減り、現金が運転資金に回る
- 余った現金が減り、価値の見方が下がる。
見ておくもの
- トヨタグループ・デンソー向けの売上比率
- オムロン向け仕入れ比率と代理店契約の条件
- 営業利益率(4.8%)が5%を超えるか
- 現金の水準と自社株買い・配当性向
- 営業債務の動き(取適法の影響)
- 自社開発の検査装置・システムの売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。事業の自己資本利益率(余った現金100億円を除いたもの)が、中立では8%台で資本コスト7.75%に届かず、PERの上限は1÷k=11.8倍。中立はその約92%の10.8倍に置いた。強気とやや強気は、ROEがkを上回るので正当化PERの上限(12.6倍・12.1倍)に近い。やや弱気はROEがk以下の上限1÷k=11.8倍の約72%、悲観は純現金と売れる資産の下限から。kは基本7.5%に品質+1.0%を足して8.5%。今の株価や市場の倍率には寄せていない。
現金148億円のうち、100億円を余りと置き、戻り方は5割で見た。時価総額は(純利益−余った現金×1.4%)×PER+余った現金×0.5で出した。投資有価証券54億円は、配当が利益に入っているので別に足していない。営業利益率は過去12年の山(5.3%)以下に置き、足元の4.8%を基準にした。売上の物価の分は価格で増やし、人件費など費用も物価で増える前提で利益率に反映した。減価償却は商社として小さく、物価の影響は限られる。新リース会計基準の影響は限られる。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。