結論
サンワテクノスは、電子部品・制御機器・産業用PC・FA機器を扱う独立系の専門商社だ。売上は1,483億円、営業利益は41億円で、利益率は3%に届かない。筆者の結論は割高である。AI向けの設備投資という追い風は本物だが、薄利の商社が資本コストを超えて稼ぐ姿は、10年先でも描きにくい。
稼ぎの源は、メーカーの商品を顧客の工場へ届ける仲介料だ。車載の光学ユニット、データセンター向けのモータ、半導体装置向けの検査機器が伸び、2027年3月期の営業利益は60億円と会社は見ている。ただ、粗利を握るのは仕入先のメーカーで、商社は値段を自分で決めにくい。10年を均した利益率は3%前後に落ち着くと考える。
資本効率も課題だ。自己資本の3割は純現金で、ROEは過去10年の中央値で7.5%にとどまる。資本コストの8.5%には届かない年のほうが多い。利益が伸びても、払ってよい倍率は10倍前後に収まる。
最大の株主に加賀電子が入った(11.6%)。業界再編の火種ではあるが、買収の約束ではない。価値の計算には入れていない。総合では、今の時価総額は10年後から割り戻した本質価値を大きく上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「よい商売」とまでは言えない。商社の利益は、メーカーと顧客のあいだの手数料で、堀も値決め力も強くない。ROE は資本コストに届かず、ためた利益は、積んだ額どおりの価値を生まない。
それでも、悪い会社でもない。赤字は 2 期だけで、借金に頼らず、純現金が積み上がる。倒れる心配が小さいぶん、悲観の筋書きでも床が硬い。ここは評価する。
問題は値段だ。10 年先の利益が 7 割ほど伸びても、その時点の中立の倍率は 10 倍前後が上限になる。資本コストを超えて稼げない会社に、高い倍率は払えない。
経営者の資本配分を見る。前の中計を大きく外し、余った現金の使い道を示さず、自己資本の 3 割が遊んでいる。ここが変われば、価値の見方も変わる。たとえば自己株の取得や大胆な還元に踏み切れば、ROE が上がり、倍率の上限も上がる。
安全域は、今の値段にはない。AI 向け需要の追い風が 10 年続く筋書きを置いても、価値は今の時価総額に届かない。事業の分かりやすさと倒れにくさは認める。ただ、今の値段は払う理由にならない。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 部門に分かれる。最大は電子コンポーネントで売上の 6 割(891 億円)を占め、車載向けの光学ユニットや液晶、小型モータ、コネクタを扱う。制御デバイス(342 億円)はモータやセンサで、データセンター向けが伸びる一方、中国の太陽光向けは落ちた。産業用 PC(86 億円)は半導体装置への組み込み、FA ソリューション(164 億円)は半導体の検査・搬送設備が中心だ。
商いの本質は、メーカーと顧客のあいだに入る調達・在庫・技術提案の請負である。仕入先は約 2,000 社、顧客は 3,100 社を超え、単一顧客が売上の 1 割を占めることはない。最大の仕入先でも安川電機の 7.6% だ。特定の相手に命運を預けない分散が、この会社の安定の元になっている。
地域では日本が売上の 4 分の 3 で、営業利益率は 2.5%。アジアは 2.2% と薄く、欧米は 0.8% に過ぎない。海外は拠点網としての価値はあるが、稼ぐ力はまだ弱い。
会長は「売ってくださいと顧客から言われる関係」を目指すと語る。画像鮮明化やロボティクスなど、国内に取り扱う会社が少ない技術のメーカーと組み、値引きを求められにくい商品を増やす狙いだ。成果が出れば粗利率が上がる。だが、これまでの利益率は 1〜4% の帯を出ていない。
優良さと弱いところ
堀は浅い。筆者は、この会社を強い堀の持ち主とは見ていない。商社の優位は、仕入先との契約(特約店の権利)と、顧客の設計に入り込んだ実績だ。どちらも長く続くが、メーカーが販売網を絞れば揺らぐ。
利益の安定は評価できる。赤字は 2009 年と 2010 年の 2 期だけで、リーマン後を除けば営業利益率は 1〜4% の狭い帯に収まってきた。2023 年 3 月期の 4.2% が過去最高で、2020 年 3 月期の 1.3% が近年の底だ。景気の山でも谷でも利益の額が小さい代わりに、借金に頼らず現金がたまっていく体質である。
資本の使い方には課題が多い。純現金は 163 億円、時価総額の 2 割にあたる。この現金が ROE を押し下げ、過去 10 年の ROE は 4〜12% で中央値は 7.5% だ。前の中期計画(SNS2024)は営業利益 70 億円を掲げたが、最終年は 31 億円の見込みまで落ちた。計画を外した経営への信頼は、まだ完全には戻っていない。
今の計画(SGP2027)は営業利益 80 億円超、ROE 10% 超を掲げる。還元は DOE(自己資本に対する配当)4% 以上を目安にしており、配当は安定している。ただ、自社株買いは機動的としか言わず、余った現金の使い道は見えにくい。
会社の規模も弱みだ。時価総額が小さく、売買も薄い。加賀電子という最大の株主が現れたことは、この弱みを変える可能性がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
サンワテクノスが戦うのは、半導体そのものの商社市場ではない。電子部品・制御機器・FA 機器を、国内外の製造業に届ける中堅商社の市場だ。需要の根っこは、顧客の工場の設備投資と生産量にある。
追い風は今、二つある。一つは AI データセンターで、関連のモータの需要が増えている。もう一つは省力化投資で、人手不足を背景に工場の自動化が進む。2027 年 3 月期の増益予想(営業利益 41 億円から 60 億円)は、この二つが主役だ。
逆風も根深い。車載向けは自動車の生産次第で振れ、中国の太陽光向けはすでに落ちた。半導体装置向けも設備投資の循環に左右され、波が来れば受注は急に減る。サンワ自身が「世界的な流通の混乱時に業績が伸びる」と語るのは、平時の稼ぎが薄いことの裏返しでもある。
競争では、再編が進む。加賀電子は 2026 年に新光商事を TOB で子会社化し、売上 1 兆円を狙う。マクニカやレスターなど大手は買収と統合で規模を積み上げ、メーカーも取引する商社を絞る方向にある。規模で劣る中堅は、独自の取扱品で付加価値を出すか、大手の傘に入るかの二択に追い込まれやすい。
商社の粗利は「仕入れ値の差」より「技術提案の対価」に移りつつある。サンワもここを狙うが、メーカーが顧客に直接売る動き(直販化)が強まれば、商社の取り分は縮む。10 年では、この直販化と大手への集約が最も大きな構造変化だと筆者は考える。
資本政策と M&A
還元は DOE 4% 以上を目安とする。配当性向でなく自己資本を基準にするため、利益が谷でも配当が急には減らない。2026 年 3 月期の DOE は 4.3% だった。自社株買いは機動的としているが、大きな実績はない。
純現金が 163 億円あり、自己資本比率は 52% と厚い。事業の運転資金に要る分を除いても余りそうだが、使い道は示されていない。M&A の方針も明確でなく、これまでの資本業務提携は、エムテック(2023 年 10 月)とロジック・アンド・デザイン(2024 年 10 月)の 2 件にとどまる。
最大の株主は加賀電子(11.6%)で、2026 年 3 月に純投資の目的で取得した。同社は 5 月に新光商事を TOB している。買い増しや提携に進む可能性は残るが、サンワに対する買収や提携の発表はなく、確認できる範囲では約束のない話だ。ほかに安川電機(5.0%)、第一生命(4.5%)が名を連ねる。
筆者は、加賀電子の存在を、価値の上乗せ要因としては数えない。ただ、経営が現金を放置し続ければ、株主からの圧力が強まる土台にはなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI データセンターと省力化の波は、まだ序盤だ。データセンター、半導体の検査設備、工場の自動化はどれも長い投資の波に乗っている。サンワはその全部に部品と装置を届ける位置にいる。2027 年 3 月期の営業利益 60 億円は通過点で、中計の 80 億円超は 2028 年 3 月期に届く。
粗利の質も上がる。画像鮮明化やロボティクスなど、国内で取り扱う商社が少ない技術を持つメーカーと組み、付加価値型の商品を増やしている。これが定着すれば、営業利益率は過去最高の 4% 台を超える。
純現金 163 億円は、資本効率を引き上げる材料になる。DOE 4% 以上の配当に加え、自社株買いを実施すれば ROE は 10% に近づく。最大株主の加賀電子が買い増す、あるいは提携を結ぶなら、仕入先の幅と購買力が広がり、事業の厚みが増す。
さらに、独立系であることは、仕入先を選べる自由にもなる。海外は欧米の利益率が 0.8% と低く、立て直しの余地が大きい。ここが 3% に届けば、全社の利益を一段押し上げる。
慎重な見方
追い風は一時のものだ。AI 向け投資の勢いが鈍れば、データセンター向けモータも半導体装置向けの検査設備も、受注が急に落ちる。売上が落ちても人件費と拠点の費用は残る。2020 年 3 月期は営業利益が前の期の半分に沈んだ。過去 10 年の ROE の中央値は 7.5% で、資本コストに届く年のほうが少ない。
商社の利益は仕入先が握る。メーカーが特約店を絞るたびに、中堅は選別の対象になる。直販化が進めば、手数料そのものが消える。大手の加賀電子やマクニカは買収で規模を積み上げており、独立系で時価総額の小さいサンワは、規模でも交渉力でも見劣りする。
前の中計は営業利益 70 億円の目標に対し、最終年は 31 億円の見込みまで落ちた。今の中計の 80 億円超も、2027 年 3 月期の会社予想は 60 億円で、そこから 3 割の上積みが要る。会社の計画を割り引いて見るのは、実績に根拠がある。
海外は売上の 3 割強を占めるが、アジアの営業利益率は 2.2%、欧米は 0.8%。中国の太陽光向けは落ち込み、欧米の産業用ロボットは設備投資の減速を受けた。海外の拠点網は、利益を生む資産になりきっていない。
最後に、今の値段が示す期待が高すぎる。2027 年 3 月期予想の純利益 42 億円に対しても高い倍率で、その先も利益が伸び続ける前提が要る。倍率が収れんすれば、株主の取り分は大きく目減りする。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。強気の見方は需要の追い風を根拠にするが、その追い風は利益の額には効いても、倍率の上限を上げない。ROE が資本コストを超えない限り、10 年後に払える倍率は 10 倍台前半にとどまる。
一方で、赤字が少なく純現金が厚い点は、悲観の底を支える。そこで確率は、楽観 8%・やや楽観 21%・中立 34%・やや悲観 24%・悲観 13% とし、悲観側へわずかに寄せた。加賀電子の動きは上振れの可能性だが、約束のない話なので確率には入れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,232 円661 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,594 円249 億円)。 今の値に割り戻すと 3,104 円485 億円、今との差 −30.3%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,155 円1,275 億円 | 2,112 円330 億円 | +130.7% | +8.7% | 821 円128 億円 |
| やや楽観 | 21% | 6,159 円963 億円 | 1,888 円295 億円 | +80.8% | +6.1% | 1,690 円264 億円 |
| 中立 | 34% | 4,705 円735 億円 | 1,664 円260 億円 | +43.1% | +3.6% | 2,165 円338 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,945 円304 億円 | 1,408 円220 億円 | −24.7% | −2.8% | 805 円126 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,692 円265 億円 | 960 円150 億円 | −40.4% | −5.0% | 345 円54 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,232 円661 億円 | 1,594 円249 億円 | +30.9% | +2.7% | 5,826 円910 億円 |
今の株価時価総額 4,450 円695 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% AI と省力化の波に乗り、利益率が過去最高を超える 利益 86 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 8,155 円1,275 億円
AI データセンターと工場の自動化の投資が 10 年にわたって続く。サンワはデータセンター向けのモータ、半導体の検査・搬送設備、組み込み PC のすべてで取扱量を増やし、売上は 3,000 億円を超える。国内に取扱先の少ない技術のメーカーと組む付加価値型の商品が定着し、営業利益率は過去最高の 4% 台を超えて 3.7% に達する。
純現金は還元と提携に回り、ROE は 10% 台に乗る。加賀電子との関係が深まり、仕入先の幅と購買力が広がる展開も含む。それでも商社である点は変わらず、倍率は資本コスト 7.75% を超える稼ぎの質に見合った 11 倍台にとどまる。
- 電子コンポーネント:数量 67,500(対象市場の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 1,791 億円・営業利益 61 億円。数量 1.5 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.4%
- 制御デバイス:数量 33,750(制御機器の流通需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00))→ 売上 619 億円・営業利益 26 億円。数量 1.35 倍・価格 1.34 倍・利益率 4.2%
- 産業用PC:数量 11,400(組み込みPCの需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00))→ 売上 219 億円・営業利益 9 億円。数量 1.9 倍・価格 1.34 倍・利益率 4.0%
- FAソリューション:数量 22,800(半導体関連設備の需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00))→ 売上 418 億円・営業利益 18 億円。数量 1.9 倍・価格 1.34 倍・利益率 4.2%
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.82 倍、時価総額 1,274 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI と自動化の追い風が 10 年続き、さらに付加価値型の商品が根づく必要がある。薄利の商社でそこまで届く確率は低く、同業の 8〜10% より薄い 8% に置いた。
やや楽観 21% 中計の営業利益 80 億円超を超えて、薄利から一段上がる 利益 70 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 6,159 円963 億円
追い風はほぼ計画どおりに進む。中計の営業利益 80 億円超は 2028 年 3 月期に届き、その後も 90 億円前後まで伸びる。データセンター向けのモータと半導体関連の設備が伸びを引っ張り、車載は横ばいから緩やかな増加となる。
粗利率は付加価値型の商品で少しずつ上がり、営業利益率は 3.4% 前後になる。ROE は 9% 近くで、資本コストにようやく届く。海外のアジア・欧米は黒字幅が少し広がるが、全社を押し上げるほどにはならない。
電子コンポーネントの車載向けは、光学ユニットの採用が広がる一方、部品単価の下落が数量の伸びを一部削る。海外では取扱先を増やすが、利益率の差は縮まりきらない。
- 電子コンポーネント:数量 62,100(対象市場の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.32(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 1,623 億円・営業利益 50 億円。数量 1.38 倍・価格 1.32 倍・利益率 3.1%
- 制御デバイス:数量 30,500(制御機器の流通需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00))→ 売上 559 億円・営業利益 21 億円。数量 1.22 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.8%
- 産業用PC:数量 9,600(組み込みPCの需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.32(価格指数(今=1.00))→ 売上 182 億円・営業利益 7 億円。数量 1.6 倍・価格 1.32 倍・利益率 3.6%
- FAソリューション:数量 19,800(半導体関連設備の需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00))→ 売上 363 億円・営業利益 13 億円。数量 1.65 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.7%
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.75 倍、時価総額 962 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標(営業利益 80 億円超)が遅れて届く筋書き。前の中計を外した実績があるため、同業の 22% よりやや薄い 21% に置いた。
中立 34% 追い風を取り込むが、薄利の商社の枠は出ない 利益 57 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,705 円735 億円
追い風を取り込みながら、利益率は 3% 前後に収まる。売上は 2,400 億円台、営業利益は 70 億円台前半で、会社の計画(80 億円超)にはやや届かない。電子コンポーネントは車載向けが伸びるが、部品単価の下落が数量の伸びを削る。
データセンター向けモータと半導体関連設備は、投資の波の山と谷をならして堅調に伸びる。経営は DOE 4% 以上の配当を続け、自社株買いは小さい。純現金は積み上がり、ROE は 7% 台後半にとどまる。資本コストを超えられない商社として評価される。
仕入先と顧客の分散は保たれ、大きな商権を失うことも、大きな商権を得ることもない。最大株主の加賀電子との関係は静かなまま推移する。
- 電子コンポーネント:数量 56,250(対象市場の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.28(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 1,426 億円・営業利益 40 億円。数量 1.25 倍・価格 1.28 倍・利益率 2.8%
- 制御デバイス:数量 28,000(制御機器の流通需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00))→ 売上 513 億円・営業利益 18 億円。数量 1.12 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.5%
- 産業用PC:数量 8,400(組み込みPCの需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.30(価格指数(今=1.00))→ 売上 157 億円・営業利益 5 億円。数量 1.4 倍・価格 1.3 倍・利益率 3.3%
- FAソリューション:数量 17,400(半導体関連設備の需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.34(価格指数(今=1.00))→ 売上 319 億円・営業利益 11 億円。数量 1.45 倍・価格 1.34 倍・利益率 3.4%
倍率:事業の純利益 57 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 735 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:追い風を取り込みつつ、利益率は過去の帯(1〜4%)の上のほうに収まる筋書き。同業と同じ 34% を置いた。
やや悲観 24% 仕入先と大手に押され、取り分が削られる 利益 38 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,945 円304 億円
追い風が止まり、取り分が削られる。AI 向けの投資が一巡し、半導体関連の設備需要は減る。仕入先は特約店を絞り、サンワの取扱品の一部が大手に移る。売上は 2,000 億円弱にとどまり、値段も競争で上がりにくい。
営業利益率は 2.5% 前後に落ち、営業利益は 50 億円を割る。現金はたまるが、使い道がないままで ROE は 5% 台に沈む。加賀電子との関係は動かず、再編の流れには取り残される。
中国の太陽光や欧米の産業用ロボット向けが戻らず、海外の稼ぎは伸びない。値引き競争で、会社が目指した付加価値型の商品の厚みも出ない。
- 電子コンポーネント:数量 47,250(対象市場の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.24(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 1,160 億円・営業利益 27 億円。数量 1.05 倍・価格 1.24 倍・利益率 2.3%
- 制御デバイス:数量 25,000(制御機器の流通需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.30(価格指数(今=1.00))→ 売上 445 億円・営業利益 13 億円。数量 1.0 倍・価格 1.3 倍・利益率 2.8%
- 産業用PC:数量 6,600(組み込みPCの需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.25(価格指数(今=1.00))→ 売上 118 億円・営業利益 3 億円。数量 1.1 倍・価格 1.25 倍・利益率 2.6%
- FAソリューション:数量 13,800(半導体関連設備の需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.30(価格指数(今=1.00))→ 売上 245 億円・営業利益 7 億円。数量 1.15 倍・価格 1.3 倍・利益率 2.7%
倍率:事業の純利益 38 億円・ROE 約 5.4% は k 以下で、上限は 1÷k=11.8 倍。取り分が削られ資本効率も下がる筋書きのため、上限の約 7 割の 8.0 倍に置いた。
確率:取扱品の一部を失い、利益率が 2.5% 前後に落ちる筋書き。独立系で規模が小さい点を考え、同業の 22% より厚い 24% に置いた。
悲観 13% 商権の集約と直販化で、独立系の中堅が選別から外れる 利益 15 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,692 円265 億円
大手への集約と直販化で、中堅の独立系は選別される。仕入先は取引先を主要な大手に絞り、サンワは取扱品の一部を失う。メーカーが顧客に直接売る動きも強まり、商社の手数料が縮む。
売上は名目でほぼ横ばいの 1,500 億円、営業利益率は 1.3% まで落ち、営業利益は 20 億円前後になる。純現金は残るが、事業の稼ぐ力は小さく、価値は純現金と運転資本の回収価値に支えられる姿になる。
欧米とアジアの拠点は赤字に近い水準で、海外の撤収や縮小を迫られる。経営への信頼も下がり、大手との統合の話が出ても有利な条件にはなりにくい。
- 電子コンポーネント:数量 38,250(対象市場の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.15(価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む))→ 売上 871 億円・営業利益 11 億円。数量 0.85 倍・価格 1.15 倍・利益率 1.2%
- 制御デバイス:数量 21,250(制御機器の流通需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.20(価格指数(今=1.00))→ 売上 349 億円・営業利益 5 億円。数量 0.85 倍・価格 1.2 倍・利益率 1.5%
- 産業用PC:数量 5,400(組み込みPCの需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.15(価格指数(今=1.00))→ 売上 89 億円・営業利益 1 億円。数量 0.9 倍・価格 1.15 倍・利益率 1.4%
- FAソリューション:数量 12,000(半導体関連設備の需要の実質規模(億円)× 取り分の変化)× 価格 1.20(価格指数(今=1.00))→ 売上 197 億円・営業利益 3 億円。数量 1.0 倍・価格 1.2 倍・利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 15 億円・ROE 約 2.4% は k よりかなり低く、稼ぐ力(純利益÷k)は約 176 億円。純現金と運転資本の税後の回収価値(約 265 億円)のほうが大きいため、今の自己資本 529 億円に 0.5 倍を掛けて置いた。
確率:仕入先の絞り込みと直販化で選別される筋書き。純現金が厚く倒れにくいので、同業の 12〜14% の中ほどの 13% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子コンポーネント
小型モータ・コネクタ・光学ユニット・液晶など電子部品の販売。車載向けが厚い。
| 数量対象市場の実質規模(億円)× 取り分の変化 | 価格価格指数(今=1.00。物価の分と部品単価の下落を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 45,000 | 1.00 | 891 | 22 |
| 10 年後 中立 | 56,250 | 1.28 | 1,426 | 40 |
取り方:開示は部門売上891億円。数量は、日本とアジアで車載・民生の電子部品を商社経由で調達する市場を約 4.5 兆円(実質)と推定し、サンワの取り分を約 2.0% とした。利益率は部門の開示が無く、日本29億円・アジア10億円の地域別利益から全社2.7%に近い2.5%と推定。
制御デバイス
モータ・センサ・制御機器の販売。データセンター冷却用モータや産業機械向け。
| 数量制御機器の流通需要の実質規模(億円)× 取り分の変化 | 価格価格指数(今=1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25,000 | 1.00 | 342 | 11 |
| 10 年後 中立 | 28,000 | 1.34 | 513 | 18 |
取り方:開示は部門売上342億円。数量は、制御機器・モータの流通市場を約 2.5 兆円(実質)と推定し、取り分を約 1.4% とした。利益率は推定3.2%(データセンター向けの伸びで全社平均よりやや厚い)。
産業用PC
工場や半導体装置に組み込む産業用PCとボードの販売・組み込み。
| 数量組み込みPCの需要の実質規模(億円)× 取り分の変化 | 価格価格指数(今=1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 1.00 | 86 | 3 |
| 10 年後 中立 | 8,400 | 1.30 | 157 | 5 |
取り方:開示は部門売上86億円。数量は、組み込みPC・ボードの市場を約 6,000 億円(実質)と推定し、取り分を約 1.4% とした。利益率は推定3.2%。
FAソリューション
半導体の検査装置・搬送設備・FA機器の提案と販売。
| 数量半導体関連設備の需要の実質規模(億円)× 取り分の変化 | 価格価格指数(今=1.00) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,000 | 1.00 | 164 | 5 |
| 10 年後 中立 | 17,400 | 1.34 | 319 | 11 |
取り方:開示は部門売上164億円。数量は、半導体関連の検査・搬送設備の流通市場を約 1.2 兆円(実質)と推定し、取り分を約 1.4% とした。利益率は推定3.0%。
リスクと懸念
仕入先が販売網を絞る
商社の利益は、メーカーが与える特約店の権利に乗っている。取引先の絞り込みが進めば、取扱品の一部が大手に移る。最大の仕入先でも安川電機の 7.6% と分散しているが、それでも複数の仕入先で同時に起きれば痛手になる。値段も商権も、サンワは自分で決められない。
直販化で手数料が縮む
メーカーが顧客に直接売る動きは、ネット受注の広がりとともに強まる。商社の取り分は、仕入れ値の差ではなく技術提案の対価に移りつつあるが、そこで差をつけられなければ手数料は縮む。10 年の悲観の核になる構造変化だ。
設備投資の循環と AI 向け需要の反動
データセンターや半導体装置向けの伸びは、投資の波に乗った一時の追い風かもしれない。波が引けば受注は急に減る一方、人件費と拠点費は残る。2020 年 3 月期には営業利益が前の期の半分に落ちた。
海外の収益力の弱さ
アジアの営業利益率は 2.2%、欧米は 0.8% にとどまる。中国の太陽光向けは落ち込み、欧米の産業用ロボットは設備投資の減速を受けた。海外の拠点網が稼ぐ資産になりきっていない。
計画の達成度と資本配分
前の中計(SNS2024)は営業利益 70 億円を掲げたが、最終年は 31 億円の見込みまで落ちた。今の中計の 80 億円超も、2027 年 3 月期の会社予想 60 億円から 3 割の上積みが要る。純現金 163 億円の使い道も示されていない。
流動性の低さと再編の波
時価総額が小さく、売買も薄い。大手の加賀電子やマクニカは買収で規模を積み上げており、中堅の独立系は規模と購買力で見劣りする。再編に取り残されれば、仕入れの条件が相対的に悪くなる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社予想の 60 億円を超え、中計の 80 億円超が 2028 年 3 月期に届きそうになったら
- やや楽観から楽観の筋書きに重みを移す。ただし倍率の上限(1÷k)は変わらないので、利益の伸びがそのまま価値に出るわけではない。
- 自社株買いなど、純現金を使う大きな還元策が出て、ROE が 9% を超える見通しになったら
- 倍率の上限が上がる。中立の見立てを、やや楽観の側へ引き上げる根拠になる。
- 加賀電子が持株を買い増す、または資本業務提携や TOB に動いたら
- 上振れの可能性がある。ただし価値の計算は、事業の稼ぐ力で決めるので、買収の値段は本質価値の根拠にしない。
- 主要な仕入先が特約店を絞り、サンワの取扱品が減ったら
- やや悲観から悲観の筋書きへ重みを移す。取扱品の減りが営業利益の何割に当たるかを見る。
- AI 向け投資の減速で、データセンター向けモータや半導体関連設備の受注が落ちたら
- 売上と利益率が同時に落ちる局面になる。2020 年 3 月期のように営業利益が半減する前提で見直す。
見ておくもの
- 四半期の営業利益率(3% を超えて定着するか)
- データセンター向けモータと半導体関連設備の受注
- 主要仕入先の特約店政策の変更
- 加賀電子の持株比率の変化
- 純現金の使い道と DOE の水準(自社株買いの有無)
倍率と資本コストの決め方
取扱の実質物量(今の値段の億円)に価格指数を掛けて売上を積み、物価 3% は価格の側に入れた。倍率は資本コスト 7.75% と事業の ROE から正当化 PER の上限(中立は ROE が k 以下なので 1÷k)を出し、中立は約 9 割、やや悲観は約 7 割に置いた。今の株価や同業の倍率には寄せていない。悲観は倍率でなく、純現金と運転資本の回収価値で置いた。部門別の利益と物量は開示が無く推定。新リース会計基準で BS の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.4→14.82 倍・やや楽観 PER 11→13.75 倍・中立 PER 10.3→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。