結論
ラクト・ジャパンは、チーズや粉乳などの乳原料を海外から輸入して国内の食品メーカーへ売る専門商社だ。豚肉などの食肉、プロテイン原料、アジアでの乳原料の販売とチーズ製造も手がける。売上は 1,828 億円で、営業利益率は 3% 前後と薄い。大手企業グループに属さない独立系である。
筆者の結論は「適正」だ。10 年後の中立で、時価総額は今の約 1.8 倍になるが、利益の伸びの大半は物価で、事業の質は上がらない。ROE は 9% 前後と資本コストをわずかに超えるだけ。足元の PER は 8 倍台と低く見えるが、純負債が時価総額の 76% にのぼる借入の重さが、その理由を説明する。
足元は減益局面だ。2026 年 11 月期は経常利益が 17% 減る計画で、シンガポール新工場の償却、本社移転、基幹システムの費用がかさむ。国内のチーズ消費は前年度に 3.4% 減り、輸入原料の需要も落ちている。
筆者が注目するのは、国内の縮小を海外とプロテインでどこまで埋められるかだ。アジアの販売網と工場が育てば景色が変わるが、商社の薄い利ざやは借入の金利上昇に弱い。10 年の評価は、この海外展開の成否で決まる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ラクト・ジャパンは「回転で稼ぐ商社」だ。利益率は薄いが、売上を回す速さで ROE を支える。オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、純利益から運転資金の増加分を引いた額で、売上が伸びる間は借入が膨らむため、見かけの利益より小さい。
堀は狭い。調達網と専門人材は価値があるが、他社がまねできない強みとまでは言えず、10 年先に今より強くなるとも言い切れない。
資本配分は無難だ。累進配当と ROIC の管理は評価できるが、借入が自己資本の 0.84 倍と重く、金利上昇に弱い。
安全域は薄い。PER は 8 倍台と低いが、資本コストを考えれば妥当な範囲にとどまる。借入が重い分、悪い年には利益が急に減る。
だから結論は「適正」だ。専門商社として安定して稼ぐ力は認めるが、期待を上回る余地は小さい。買い増したくなるのは、借入が減って ROE が保たれた時か、海外の工場が軌道に乗った時である。
何で稼ぐ会社か
ラクト・ジャパンの稼ぎの源は、世界の産地から原料を買い、国内メーカーが使いやすい形で売る仲介にある。売上の約 65% は乳原料・チーズの部門だ。オセアニアや欧州などの産地から、粉乳、バター、チーズ、ホエイなどを輸入し、乳業、製菓、パン、外食向けに納める。為替予約で円建ての損益を固め、仕入れと販売の契約を同時期に結んで、市況の振れを抑えている。
食肉食材は売上の約 12%。米国のシーボード・フーズの日本のパートナーとして豚肉を輸入し、欧州から生ハムやサラミも入れる。ハム・ソーセージのメーカーや外食、スーパーが買い手だ。
機能性食品原料は 2025 年 12 月にライフサイエンス部門と改称した。プロテインなど、スポーツ栄養や美容・介護向けの原料を扱い、売上の約 5%と小さいが、成長が速い。
アジア事業は売上の約 17%。現地で乳原料を売るほか、シンガポールでチーズを製造する。シンガポールの工場は、現地の食品庁(SFA)から最高の「A」評価を続けて得ている。
共通するのは、自社で生産設備を多く持たず、調達網と専門人材で付加価値を出す点だ。利益率は 2〜3% と薄く、扱う量を増やして稼ぐ。
優良さと弱いところ
ラクト・ジャパンの優良さは、中くらいだ。堀、つまり他社がまねできない強みは、産地とのつながりと、乳製品を専門に扱う人材にある。国内では乳製品の専門商社が少なく、独立系で系列に縛られない点は強い。ただし、メーカーが直接調達すれば置き換えられるため、堀は広くない。
資本効率は、商社としては悪くない。過去 10 年の ROE の中央値は 11.6% で、2025 年は 13.3% だった。ただしこれは営業利益率が 3% と低いまま、借入を使って売上の回転を上げた結果である。自己資本比率は 36% で、純負債は自己資本の 0.84 倍。利息の支払いは営業利益の 12 倍で賄えるが、金利が上がれば利益を削る。
財務の弱さも見逃せない。2025 年の中間期には、運転資金の増加で有利子負債が約 102 億円増えた。会社は在庫を売り先が決まったものに限ると説明するが、在庫の価格変動の危険は残る。
経営は、独立系らしく柔軟で、中期計画でも ROIC と Net D/E を社内の指標にした。累進配当を加えた点も評価できる。一方、新工場の竣工は計画より遅れ、実行力に課題が残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の乳製品は、少子高齢化で長期的に縮む市場だ。農林水産省の需給表では、2025 年度のチーズの総消費量は約 31.5 万トンで前年比 3.4% 減。ナチュラルチーズの輸入量は約 24.2 万トンで 4.5% 減った。国産比率は 15.5% に上がっている。
足元の需要減には、最終製品の値上げと、国産の脱脂粉乳の在庫増が効いている。輸入原料の販売数量は落ち、円安が売上を支える形になっている。
海外では逆に、アジアの乳製品需要が増える。所得の上昇と食の西洋化で、チーズやベーカリー向けの原料の需要が増える。ラクト・ジャパンはシンガポールの新工場と現地法人の拡大で、そこを取りにいく。プロテインは健康志向の高まりで、世界的に需要が伸びる分野である。
競合は、総合商社の食品部門と、乳業メーカーの自社調達である。専門商社は少なく、規模の大きな相手と競うことになる。
10 年の中立は、国内の数量が緩やかに減り、アジアとプロテインが物価を超える勢いで伸びる構図。為替は 150 円で固定して考える。仲介の機能が厚い商品ほど、価格の変動を吸収できる。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 35% を目標に、累進配当、つまり減らさない配当を掲げることだ。中期計画「NEXT-LJ 2028」は、キャッシュフローの約 6 割を事業と人材に、約 4 割を株主還元に配分する。自社株買いも選択肢に入る。
計画の数値は、2028 年 11 月期に売上 2,100 億円、経常利益 60 億円、ROE は 10〜12%、自己資本比率は 35〜40%。
成長の資金は、シンガポール工場に約 35 億円、基幹システム、海外の販売網に使う。M&A は、資本提携を含めて検討するが、金額の目標はない。
株主優待は、100 株以上でカタログから選べる 3 千円相当、300 株以上で 5 千円相当。年 1〜2 億円の費用と推定し、10 年の還元に足した(費用は利益から引き済み、受け取りは還元に入れる)。
株主構成は、信託銀行が上位に並ぶ分散型で、創業家や親会社の支配はない。TOB の確率は低めだ。10 年の還元は、中立で純利益の合計の約 38%(460 億円のうち約 175 億円)に優待を足して置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の乳製品は縮むが、それは織り込み済みだ。ラクト・ジャパンの成長は海外とプロテインにある。シンガポールの工場は、現地の食品庁(SFA)から最高の「A」評価を得ており、ハラル認証も取った。東南アジア全体のチーズ需要を取れる位置にある。
ライフサイエンスはプロテインの高機能化と製造受託で、顧客との関係を深めている。販売数量は 2028 年に 1 万トンを目指しており、現状の約 1.4 倍になる。アジアの乳原料も 4.7 万トンを目標とし、数量が伸びる地域である。
独立系の強みも大きい。系列に縛られず、世界の産地から最適な原料を選び、専門人材が顧客に提案できる。国内で乳製品を専門に扱う商社は数少ない。
財務面でも、累進配当と配当性向 35%、ROIC と Net D/E の管理、自己資本比率 35〜40% の維持を掲げ、規律ある成長を示した。2025 年は営業利益が前年比で 33% 増え、中期計画の財務目標を前倒しで達成した。足元の減益は、新工場の償却や本社移転という成長のための先行費用で、一過性の要素が大きい。
慎重な見方
国内の乳製品需要は、人口減と値上げで確実に減っている。2025 年度のチーズ消費は 3.4% 減、ナチュラルチーズの輸入量は 4.5% 減だった。国産の脱脂粉乳の在庫が増え、輸入原料の需要が落ちた。
商社の利ざやは 2〜3% と薄く、仲介の役割はメーカーの直接調達で置き換えられる。大手乳業、総合商社、外食の本部が直接買えば、ラクト・ジャパンの取り分は減る。
借入は重い。純負債は自己資本の 0.84 倍で、金利が上がれば利益が削られる。2025 年の中間期だけで有利子負債が約 102 億円増え、在庫は「販売に紐づく」という説明でも、市況が崩れれば評価損の危険がある。
成長の柱とされるシンガポールの新工場は、竣工が計画より遅れた。減価償却と金利の負担が先に来て、稼働率が上がる保証はない。2026 年の経常利益は 17% 減の計画で、中期計画の 2028 年の経常利益 60 億円も、2025 年の実績 58 億円とほぼ同じ水準にとどまる。成長の絵姿は小さい。
どちらに重みを置いたか
国内の縮小と薄い利ざや、重い借入では慎重な見方が優勢で、海外とプロテインの成長では強気の見方に分がある。ROE が資本コストをわずかに上回るだけなので、中立は 1÷k を下限とした。借入の重さから k に 1.25% を上乗せし、悲観側(やや悲観と悲観の合計)を楽観側より厚くした。結論は今の値段に近い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 6,483 円649 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,768 円177 億円)。 今の値に割り戻すと 4,043 円405 億円、今との差 +15.5%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,252 円1,126 億円 | 2,527 円253 億円 | +293.7% | +14.7% | 1,102 円110 億円 |
| やや楽観 | 20% | 9,011 円902 億円 | 2,118 円212 億円 | +218.0% | +12.3% | 2,226 円223 億円 |
| 中立 | 40% | 7,278 円729 億円 | 1,898 円190 億円 | +162.2% | +10.1% | 3,670 円367 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,290 円329 億円 | 1,349 円135 億円 | +32.5% | +2.9% | 1,020 円102 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,456 円146 億円 | 859 円86 億円 | −33.8% | −4.0% | 232 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,483 円649 億円 | 1,768 円177 億円 | +135.7% | +9.0% | 8,250 円826 億円 |
今の株価時価総額 3,500 円350 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% アジアとプロテインが育ち、利益率が上がる 利益 80 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 11,252 円1,126 億円
シンガポールのチーズ工場が軌道に乗り、アジアの乳原料の販売先が東南アジア全域に広がる。アジアの販売数量は今の約 1.9 倍になり、利益率も 6% に上がる。ライフサイエンスはプロテインの高機能化と製造受託が当たり、販売数量が倍近くまで増える。国内の乳原料は、輸入先の多様化と付加価値の高い原料で数量を保つ。食肉も加工度の高い商品で利益率が 3% に届く。売上は 3,000 億円規模になり、営業利益率は 4% 台に近づく。借入は増えるが利益の伸びが上回り、ROE は 11% を超える。独立系の強みを生かし、海外の産地や提携先との関係も広げる。
- 乳原料・チーズ(国内):数量 175(販売数量(千トン、推定))× 価格 9.36(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 1,637 億円・営業利益 49 億円。販売数量 175 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 3.0%
- 食肉食材:数量 31.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 11(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 338 億円・営業利益 10 億円。販売数量 31 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 3.0%
- ライフサイエンス:数量 13.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 19(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 251 億円・営業利益 20 億円。販売数量 13 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.41 倍)、営業利益率 8.0%
- アジア(乳原料販売・チーズ製造):数量 62.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 13(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 801 億円・営業利益 48 億円。販売数量 62 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 80 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.76 倍、時価総額 1,101 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シンガポール工場の稼働が当初の計画より遅れ、乳原料の国内需要も足元で落ちている。アジアの売上が 10 年で倍増し、プロテインも伸びるという連続した成功が要るため、確率は低い。
やや楽観 20% 中期計画の方向に進み、アジアが柱になる 利益 66 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 9,011 円902 億円
中期計画が、少し遅れながら実現する。アジアの乳原料とチーズ製造が伸び、販売数量は今の約 1.7 倍に増える。ライフサイエンスも年 1 割台の成長を続ける。国内の乳原料は人口減で横ばいだが、付加価値の高い原料に軸足を移して利益率を保つ。食肉は調達先の多様化で、利益率が小幅に改善する。売上は 2,800 億円台、営業利益は 100 億円。借入は運転資金の増加で膨らむが、自己資本比率は 35〜40% を保つ。シンガポール工場の償却が一巡し、利益に効き始めるのは計画の後半になる。総合商社が手を出しにくい中規模の専門領域で、顧客の信頼を積み重ねる。
- 乳原料・チーズ(国内):数量 170(販売数量(千トン、推定))× 価格 9.36(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 1,590 億円・営業利益 45 億円。販売数量 170 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 2.8%
- 食肉食材:数量 30.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 11(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 327 億円・営業利益 9 億円。販売数量 30 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 2.7%
- ライフサイエンス:数量 11.5(販売数量(千トン、推定))× 価格 18(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 211 億円・営業利益 15 億円。販売数量 11.5 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 7.0%
- アジア(乳原料販売・チーズ製造):数量 55.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 13(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 710 億円・営業利益 39 億円。販売数量 55 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.16 倍、時価総額 869 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:NEXT-LJ 2028 は売上 2,100 億円・経常利益 60 億円。2026 年は減益の計画だが、先行投資の償却が一巡したあとの回復を、やや強めに見る確率。
中立 40% 物価の分と海外の伸びで増収、利益率は今の水準 利益 55 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 7,278 円729 億円
国内の乳原料・チーズは、人口減で数量が緩やかに減る。単価は物価並みに上がるが、利益率は薄く、2.6% 前後で動かない。食肉は取扱量をほぼ維持する。ライフサイエンスは、プロテインの高機能化で数量が 5 割ほど増える。アジアは、シンガポール工場とアジア各国の販売網で数量が 5 割増になる。売上は 2,700 億円、営業利益は 86 億円で、営業利益率は 3.2% と、今の水準にとどまる。借入の金利は上がり、純利益の伸びは営業利益より小さい。株主には配当性向 35% と累進配当を続ける。大きな買収はせず、提携や小さな出資で海外の販路を補う。
- 乳原料・チーズ(国内):数量 165(販売数量(千トン、推定))× 価格 9.36(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 1,544 億円・営業利益 40 億円。販売数量 165 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 2.6%
- 食肉食材:数量 29.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 11(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 316 億円・営業利益 8 億円。販売数量 29 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 2.4%
- ライフサイエンス:数量 10.5(販売数量(千トン、推定))× 価格 18(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 193 億円・営業利益 12 億円。販売数量 10.5 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 6.0%
- アジア(乳原料販売・チーズ製造):数量 50.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 13(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 646 億円・営業利益 32 億円。販売数量 50 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.34 倍)、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.56 倍、時価総額 695 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の需要は減り、海外とプロテインが伸びる姿が中心。足元の減益は先行投資と一過性の反動が主因で、実力の利益率は今期の水準に落ち着くとみて、最大の確率を置く。
やや悲観 22% 国内の需要減と競争で、利ざやが薄くなる 利益 31 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 3,290 円329 億円
国内の乳原料・チーズの数量が、人口減と国産への切り替えで 1 割ほど減る。大手乳業や総合商社が直接調達する動きが広がり、商社の取り分が薄くなる。アジアは現地の競合が増え、シンガポール工場の稼働率も思ったほど上がらない。為替の変動を、価格に転嫁し切れない期が増える。売上は 2,200 億円台と物価の伸びに届かず、営業利益は 52 億円に減る。借入の金利が上がり、純利益は 31 億円まで落ちる。配当は累進配当を守れず、横ばいにとどまる。成長への投資を絞って、借入の圧縮を優先する。為替の変動や在庫の評価損が重なる年は、営業利益が計画を大きく下回る。
- 乳原料・チーズ(国内):数量 150(販売数量(千トン、推定))× 価格 9.08(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 1,361 億円・営業利益 27 億円。販売数量 150 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.30 倍)、営業利益率 2.0%
- 食肉食材:数量 25.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 11(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 265 億円・営業利益 5 億円。販売数量 25 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.30 倍)、営業利益率 1.8%
- ライフサイエンス:数量 8.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 17(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 6 億円。販売数量 8 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.27 倍)、営業利益率 4.5%
- アジア(乳原料販売・チーズ製造):数量 38.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 12(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 466 億円・営業利益 19 億円。販売数量 38 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.27 倍)、営業利益率 4.0%
倍率:ROE 5.9% が k 8.5% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、正当化 PER の上限は 1÷k=11.4 倍。やや悲観は伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 8.00 割の 9.1 倍に置いた。
確率:国産脱脂粉乳の在庫増や最終製品の値上げで、輸入原料の需要がすでに落ちている。メーカーによる直接調達も進んでおり、現実的な筋書きとして厚めに置く。
悲観 10% 直接調達と関税枠の見直しで商社の役割が薄れる 利益 7 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,456 円146 億円
乳製品の輸入制度の変更や、大手乳業・外食による直接調達の拡大で、仲介の役割が薄れる。国内の乳原料の数量は 2 割以上減り、利ざやも 1% 台に落ちる。シンガポール工場は稼働が上がらず、減損を計上する。在庫の評価損と金利の上昇が重なり、営業利益は 18 億円まで落ち込む。借入が重く、純利益は 7 億円に縮む。会社は成長ではなく、財務の立て直しと在庫の圧縮に追われる。それでも販売に紐づいた在庫と売掛金は回収でき、事業は小さくなりながら続く。株主還元は優待の縮小を含めて絞られ、配当は減配をさけられない年も出る。
- 乳原料・チーズ(国内):数量 125(販売数量(千トン、推定))× 価格 8.61(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 1,076 億円・営業利益 13 億円。販売数量 125 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.23 倍)、営業利益率 1.2%
- 食肉食材:数量 20.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 9.82(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 196 億円・営業利益 2 億円。販売数量 20 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.21 倍)、営業利益率 1.0%
- ライフサイエンス:数量 6.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 16(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 94 億円・営業利益 2 億円。販売数量 6 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.14 倍)、営業利益率 2.0%
- アジア(乳原料販売・チーズ製造):数量 25.0(販売数量(千トン、推定))× 価格 12(1 トンあたりの平均販売額(億円・名目))→ 売上 290 億円・営業利益 6 億円。販売数量 25 千トン × 1 トンあたりの単価(今の 1.21 倍)、営業利益率 2.0%
倍率:ROE が k 8.5% を大きく下回る悲観では、帳簿の自己資本は床にならない。稼ぐ力(純利益÷k)は約 80 億円にとどまり、販売に紐づいた在庫・売掛金の回収と工場の売却で見た床(約 150 億円)のほうが大きい。今の自己資本 324 億円の約 0.45 倍に置いた。EV(時価総額+純負債)を営業利益で割ると 24 倍と高く出るが、これは谷の利益が小さいためで、倍率ではなく床の資産から値を付けている。
確率:国内の需要減と直接調達が同時に進み、新工場の稼働も失敗する複合の筋書き。借入が重い卸は、利ざやが少し下がるだけで利益が急減するため、無視できない確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
乳原料・チーズ(国内)
粉乳・チーズ・バター・ホエイなどを輸入し、食品メーカー・乳業・外食へ販売する。
| 数量販売数量(千トン、推定) | 価格1 トンあたりの平均販売額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 170 | 6.98 | 1,187 | 34 |
| 10 年後 中立 | 165 | 9.36 | 1,544 | 40 |
取り方:開示の部門売上 1,187 億円(構成比 64.9%)を、中期計画の販売数量目標 17.6 万トンを手がかりに、約 17 万トン、1 トンあたり約 70 万円と推定した。数量は実質、物価と原料の値上がりは単価に入れる。営業利益率は商社として 2.9% と見た。
食肉食材
米国産の豚肉、欧州の生ハム・サラミなどを輸入し、ハム・ソーセージメーカー、外食、小売へ販売する。
| 数量販売数量(千トン、推定) | 価格1 トンあたりの平均販売額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 28.0 | 8.14 | 228 | 6 |
| 10 年後 中立 | 29.0 | 11 | 316 | 8 |
取り方:部門売上 228 億円(構成比 12.5%)。中期計画の 2028 年目標が約 3.5 万トンなので、今は約 2.8 万トン、1 トンあたり約 81 万円と推定した。営業利益率は 2.6% と見た。
ライフサイエンス
プロテインなどの機能性食品原料。スポーツ栄養・美容・介護向け。
| 数量販売数量(千トン、推定) | 価格1 トンあたりの平均販売額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 7.0 | 14 | 96 | 6 |
| 10 年後 中立 | 10.5 | 18 | 193 | 12 |
取り方:部門売上 96 億円(構成比 5.2%)。中期計画の 2028 年目標が約 1 万トンなので、今は約 7 千トンと推定し、1 トンあたり約 137 万円とした。営業利益率は付加価値の高さから 6.5% と見た。
アジア(乳原料販売・チーズ製造)
アジアで乳原料を現地企業に販売し、シンガポールでチーズを製造・販売する。
| 数量販売数量(千トン、推定) | 価格1 トンあたりの平均販売額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 33.0 | 9.64 | 318 | 18 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 13 | 646 | 32 |
取り方:アジア事業・その他の売上 318 億円(構成比 17.4%)。中期計画の 2028 年目標(乳原料 4.7 万トン、チーズ 1 万トン)から、今は約 3.3 万トン、1 トンあたり約 96 万円と推定した。営業利益率は 5.5% と見た。
リスクと懸念
国内の乳製品需要の縮小
人口減に最終製品の値上げが重なり、2025 年度のチーズ消費は 3.4% 減った。国産の脱脂粉乳の在庫が増え、輸入原料の需要が落ちている。国内が売上の過半を占める以上、縮小は直接効く。
メーカーの直接調達による中抜き
大手乳業、総合商社、外食の本部が産地から直接買えば、専門商社の取り分は減る。利ざやが 1% 下がるだけで営業利益が 3 割動く構造だ。
金利上昇と重い借入
純負債は自己資本の 0.84 倍で、運転資金の増加に合わせて膨らむ。借り換えの金利が 3.5% 程度に上がれば、10 年で純利益が数億円削られる。
為替と市況の振れ
為替予約でリスクを抑えているが、会計処理により取引の途中で差損益が出る。乳製品の国際価格が急落すれば、在庫の評価損が出る。
新工場の稼働遅れ
シンガポールの新工場は竣工が計画より遅れ、減価償却と金利が先に利益を削る。稼働率が上がらなければ、投資の約 35 億円は回収が遅れる。
貿易制度と地政学の変化
関税や関税割当の見直し、保護主義の拡大、産地の気候変動と自然災害は、調達の安定と価格に直接響く。
海外展開の実行力
アジアの現地法人と工場を増やす一方、人材と管理の体制が追いつくかは未知数だ。M&A も検討するが、金額の目標はなく、買収の失敗は財務を痛める。
今後の分かれ目
- 国産の脱脂粉乳の在庫が解消し、輸入原料の需要が回復したら
- 国内の数量の前提を上方修正し、やや楽観に確率を寄せる。
- シンガポール工場の稼働率が 8 割を超え、アジアの営業利益率が 6% に乗ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 純負債が自己資本の 1 倍を超えて膨らんだら
- 借入の重さを理由に、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 大手乳業や商社が直接調達を拡大し、取引先を失ったら
- 国内の数量と利益率を下方修正する。
- 累進配当が守れず減配になったら
- 利益の質が落ちたとみて、悲観側に寄せる。
- 2028 年 11 月期に経常利益 60 億円と ROE 10% を達成したら
- 中立の利益率の前提を維持する。大きく上回れば上方修正してよい。
見ておくもの
- 国内のチーズ消費と輸入量(農林水産省の需給表)
- アジア事業とシンガポール工場の稼働率
- 純負債と自己資本比率
- 為替と国際乳製品価格
- 配当性向・累進配当・自社株買いの発表
倍率と資本コストの決め方
数量は実質(販売トン数)で置き、物価と原料の値上がりは価格の側に入れて売上を積んだ。部門別の今の数量・単価・営業利益は開示になく、売上構成比と中期計画の数量目標からの推定である。営業利益率は、過去 12 年の山 3.8% と今期の 3.2% を超えない位置に中立を置いた。倍率は k 8.5%(基本 7.5% + 1.25%)と g 4% の式から出し、ROE が k を超える中立は PER の下限 1÷k=11.4 倍に置いた。今の PER 8 倍台には合わせていない。純負債 271 億円の金利上昇による利益の減少(10 年で約 7 億円・税前)を純利益に入れた。純利益÷営業利益は過去の中央値 0.70 を基本にした。株主優待の費用(年 1〜2 億円と推定)は還元に足した。リースは今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.55→13.76 倍・やや楽観 PER 11.43→13.16 倍・中立 PER 11.43→12.56 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。