結論
MERF(旧黒谷)は、銅のスクラップを世界から集め、銅合金のインゴットや再生原料に作り替えて売る会社だ。売上の 99% 超が非鉄金属で、利ざやで稼ぐ。
筆者の結論は割高だ。2026 年 8 月期は銅の値上がりで営業利益が 44 億円と過去最高になった。だが過去 12 年の中央値は 6 億円ほどで、赤字の年も 4 回ある。今の好調を 10 年続く姿とは見ない。
稼ぎの源は、スクラップの仕入れ値と製品の売値の差だ。銅の値段が上がる局面では在庫の評価もふくらみ、利益が一気に出る。逆の局面では、薄い利ざやが消える。
借金も気になる。純有利子負債は 111 億円で時価総額の 7 割ある。銅の値上がりで運転資金がふくらむほど、借金は増える。借り換えで金利が上がれば、利益はさらに削られる。
強気に見る材料もある。電気自動車やデータセンターで銅の需要は長く伸びる、という見方だ。筆者はこれを高めの値段に反映したが、薄い利ざやの構造は変わらないと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の本質は「銅相場に左右される仲介業」だ。強い堀や、価格を決める力はない。こういう事業の利益は、好況の年だけを見てはいけない。
通した利益で見ると、12 年の営業利益の平均は 8 億円ほどで、赤字の年が 4 回ある。2026 年 8 月期の 44 億円は、この過去から外れた例外とみる。
次に、借金の重さを見る。純有利子負債は自己資本を上回り、金利が上がる局面で負担は増える。借り換えの時期に市況が悪いと、財務が一気に苦しくなる。
安全域の面では、今の時価総額は好調な 2026 年 8 月期の純利益の 6 倍ほどだ。だが、それは利益が続けばの話だ。利益を通して均すと、割安とは言えなくなる。
結論として、銅の長い追い風は認める。ただ、薄い利ざやと重い借金を考えると、今の値段に安全域はない。割安に変わるのは、利ざやの底上げが数字で確かめられた時、または値段が大きく下がった時だ。
何で稼ぐ会社か
MERF は富山県射水市に本社を置く、銅など非鉄金属のリサイクル会社だ。旧社名は黒谷。売上は 2025 年 8 月期で 825 億円、うち非鉄金属が 99% を超える。
仕組みは単純だ。世界の調達網で金属スクラップを集め、精錬して銅合金のインゴットにし、非鉄メーカーへ売る。もう 1 つは、スクラップをプレス加工して再生原料にし、非鉄メーカーや電線メーカーへ売る形だ。
顧客は造船、住宅設備、電線・ケーブル、銅の製錬メーカーに広がる。国内の供給が足りない時でも、海外から調達できる点が強みだ。米国とタイに拠点を持ち、2025 年 1 月には米カリフォルニアの事業を取得した。
利益の出方は、銅の値段で大きく変わる。仕入れから販売までの在庫を抱えるため、銅が上がれば評価益が出て、下がれば損が出る。加えて、運転資金が銅価格に比例して膨らみ、借入も増える。
副業として、アート&クラフト(銅を使った美術工芸)がある。売上は 6 億円ほどで、利益は小さい。
2026 年 8 月期は、銅価格の上昇と利幅の改善で、売上 1,068 億円、営業利益 44 億円と大きく伸びた。
優良さと弱いところ
事業の質は「機会に強いが、堀は薄い」と見る。
強みは調達力だ。国内で銅スクラップが足りない時も、世界の網から集められる。顧客は銅合金のメーカーや電線会社で、需要は底堅い。米国の事業を足し、取扱量を広げる余地もある。
弱みは値決めだ。スクラップの仕入れと製品の売値は、どちらも銅の相場で決まる。MERF が決められるのは、その差のごく一部だ。営業利益率は過去 12 年で最高 5.1%、中央値は 1% 台にとどまる。
財務も弱い側にある。純有利子負債は自己資本を上回り、2025 年 8 月期は営業利益で支払利息をまかなえなかった。2026 年 8 月期で改善したが、銅が下がれば元に戻る。
ROE は過去 10 年の中央値で 5.3%。山の年は 15% 台でも、谷の年は赤字になる。安定した資本効率を持つ会社とは言いにくい。
経営は配当に前向きで、2026 年 8 月期は記念配当と特別配当を出した。好調を株主に分ける姿勢は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銅の需要は、電力網、電気自動車、データセンターで長く伸びるという見方が多い。国際エネルギー機関は、2035 年までに銅の供給不足が最大 3 割に達しうると警告している。値段は構造的に上がりやすい。
その追い風は、スクラップの需要も押し上げる。新しい鉱山の開発には時間がかかるので、再生銅は鉱山を補う供給源として価値が高まる。
ただし競争も強い。リサイクル業者は国内外に多く、中国が銅スクラップの輸入規制を変えれば、スクラップの流れが一変する。
銅の値段は短い周期で大きく動く。2026 年 8 月期の好調も、価格上昇の効果が大きい。2027 年 8 月期は、会社予想で経常利益が 4 割減る見通しだ。数量では、再生原料の販売量が 2026 年 8 月期の 9 か月で 17.8% 減った。
筆者は、値段は物価を上回る緩やかな上昇、数量は横ばいから微増と見る。利益率は通して 1% 台後半にとどまる。
再生銅の需要は、環境規制の強まりや、企業の調達方針の変化でも支えられる。ただ、その恩恵が MERF の利ざやに届くかは別の話だ。
資本政策と M&A
配当は、2026 年 8 月期が総額で 5〜6 億円(記念配当と特別配当を含む)。2027 年 8 月期は普通配当のみの方針で、総額は 4 億円ほどになる。好況の年に特別配当を出す形で、利益が落ちる年は配当も下がりうる。
自社株買いの実績は確認できなかった。上場は 2011 年と新しく、過去に増資で株数が増えた期もある。
借入は純有利子負債で 111 億円。運転資金が主な使い道で、銅価格の上昇で膨らんでいる。借り換えで金利が上がれば、利息は 3 億円ほど増える見込みだ。
M&A は、2025 年 1 月の米国事業の取得がある。規模や条件は確かめられていない。
筆者は、この会社の資本政策を「借金で運転資金を回しながら、稼げた年に配当を出す」型と見る。株主への戻りは利益の 3 割台とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造が変わった可能性は十分にある。銅は電力網、電気自動車、データセンターの需要で長く不足し、再生銅は新しい鉱山の遅れを補う。国内で足りないスクラップも、世界の調達網で確保できる。
2026 年 8 月期の営業利益は 44 億円。過去の山の 2021 年 8 月期を超えた。利益率も 4% を超え、価格の追い風だけでなく、調達と加工の力が上がったと見ることもできる。
米国の事業を取得し、取扱量の拡大の道もある。配当も特別配当を出す余裕があり、株主への姿勢は前向きだ。
財務は借金が重いが、利益が戻ればすぐ縮む。PER は好調な年で 6 倍ほどと低い。10 年後に売上 1,800 億円、営業利益率 3% 台に届く筋書きは、銅の長い需給ひっ迫を前提にすれば成り立つ。
過去 12 年の最高の利益率 5.1% をもう一度見る機会が来る可能性もある。
再生銅は環境の面でも需要が強く、顧客が調達先を選ぶ時の評価も上がっている。
慎重な見方
2026 年 8 月期の好調は、銅の値上がりという外部の追い風だ。会社の実力が変わった証拠ではない。過去 12 年で営業利益の中央値は 6 億円ほどで、赤字の年が 4 回ある。会社自身も、2027 年 8 月期は経常利益が 4 割減ると予想している。
値決めの力もない。仕入れも売値も銅の相場で決まり、MERF が取れるのは薄い利ざやだ。数量も、2026 年 8 月期の 9 か月で 12.3% 減っている。値段で増収になっただけだ。
借金の重さは致命的になりうる。純有利子負債は自己資本を上回り、2025 年 8 月期は支払利息をまかなえなかった。銅が急落すれば、在庫損と運転資金の負担が同時に来る。
中国の輸入規制の変更や、大手の参入でスクラップの調達が難しくなる心配もある。
この会社の利益は、通して見れば薄い。10 年後の価値は、今の値段の裏づけにならない。
好調な年ほど配当や投資を増やす企業が、谷で苦しむ例は多い。特別配当も、毎年出せる性質のものではない。
どちらに重みを置いたか
強気の材料は銅の長期の追い風だが、会社の利ざやの薄さと重い借金は変わらない。慎重な見方のほうが根拠が厚いと判断した。確率は中立を 4 割弱に置き、やや悲観を楽観側よりやや多く置いた。楽観は銅の高値が続き利益率が 3% 台に乗る形で 1 割強とし、悲観は銅の急落と借り換えが重なる構造的な負けで 1 割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,227 円174 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 329 円47 億円)。 今の値に割り戻すと 704 円100 億円、今との差 −33.3%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 3,019 円427 億円 | 565 円80 億円 | +239.4% | +13.0% | 430 円61 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,802 円255 億円 | 410 円58 億円 | +109.4% | +7.7% | 487 円69 億円 |
| 中立 | 36% | 1,023 円145 億円 | 297 円42 億円 | +24.9% | +2.3% | 475 円67 億円 |
| やや悲観 | 20% | 370 円52 億円 | 254 円36 億円 | −40.9% | −5.1% | 125 円18 億円 |
| 悲観 | 10% | 261 円37 億円 | 134 円19 億円 | −62.6% | −9.4% | 39 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,227 円174 億円 | 329 円47 億円 | +47.3% | +4.0% | 1,556 円220 億円 |
今の株価時価総額 1,056 円149 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 銅の需給ひっ迫が続き、利益率が 3% 台に乗る 利益 35 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,019 円427 億円
銅の需給ひっ迫が続き、電力網・電気自動車・データセンターの需要が値段を支える。銅合金の値段は 10 年で 1.8 倍に上がり、取扱量も米国の事業の効果で 25% 増える。
利ざやも改善する。調達の力が評価され、利益率は 3% 台に乗る。売上は 1,800 億円を超え、営業利益は 59 億円ほどになる。
利益が増えるため、借入の負担は軽くなり、配当も増える。ROE は 13% を超え、資本コストを上回る。
過去の最高の 5.1% には届かないが、通して稼げる会社に変わる。
米国の事業が軌道に乗り、調達網の広さが顧客に評価される。大手の電線メーカーとの長期契約も増える。
- 非鉄金属事業:数量 1,024(取扱量(銅相当の実質、今を 1.0 とする指数))× 価格 1.80(値段の指数(銅の相場。今を 1.0))→ 売上 1,843 億円・営業利益 59 億円。銅の高値が続き利ざやも改善
- アート&クラフト:数量 6.7(売上相当額(実質、今を 1.0))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.6% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.16 倍、時価総額 427 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:銅の需給ひっ迫が続き、2026 年 8 月期の水準が定着する筋書き。過去の最高 5.1% に迫るので 1 割強にとどめた。
やや楽観 22% 銅の値上がりと米国事業の効果で、利益率が 2% 台後半に上がる 利益 23 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 1,802 円255 億円
銅は物価を上回って上がり、10 年で 1.7 倍になる。取扱量は米国の事業が乗り 15% 増える。
利益率は 2% 台後半。2026 年 8 月期のような好況の年が、周期の中で何度か来る形だ。売上は 1,600 億円ほど、営業利益は 37 億円ほどになる。
借金は運転資金の増加で少し増えるが、利益が支える。配当性向は 35% を保ち、ROE は 12% 前後になる。
再生銅の需要が環境の面でも強まり、調達の力が顧客から評価される。
好況の年は特別配当が出る一方、谷の年も赤字は避ける。過去の山と谷のふれ幅は小さくなり、利益の安定感が少し増す。
- 非鉄金属事業:数量 942(取扱量(銅相当の実質、今を 1.0 とする指数))× 価格 1.70(値段の指数(銅の相場。今を 1.0))→ 売上 1,601 億円・営業利益 38 億円。銅の追い風と米国事業の効果
- アート&クラフト:数量 6.1(売上相当額(実質、今を 1.0))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.2 倍。全体の PER 11.21 倍、時価総額 255 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:銅の長い追い風に、米国事業の取扱量が乗る筋書き。通期の利益率が過去の山の半分ほどに上がる形で、2 割強に置いた。
中立 36% 物価を上回る値上がりと小幅な数量増で、利益率は通して 1% 台後半にとどまる 利益 13 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,023 円145 億円
銅の値段は物価を上回って、10 年で 1.5 倍になる。取扱量は米国の事業で 5% 増える。
利益率は通して 1.8% だ。好況の年は 4%、谷の年は赤字というふれ幅を均した値だ。売上は 1,300 億円、営業利益は 23 億円になる。
借金は運転資金が膨らむ分だけ増え、利息は 5 億円近くに増える。純利益は 12 億円ほどだ。配当は性向 35% を保つ。
ROE は 7% 台と資本コストに届かず、稼ぎは伸びても会社の価値を押し上げるには足りない。
米国の事業は取扱量を押し上げるが、利ざやの薄さは変わらない。好況の年と谷の年が交互に来る。
- 非鉄金属事業:数量 860(取扱量(銅相当の実質、今を 1.0 とする指数))× 価格 1.50(値段の指数(銅の相場。今を 1.0))→ 売上 1,290 億円・営業利益 23 億円。物価を上回る値上がり、数量は小幅増
- アート&クラフト:数量 6.1(売上相当額(実質、今を 1.0))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通して見た利益率が過去 12 年の平均の少し上にとどまる筋書き。最も筋が通るので最大に置く。
やや悲観 20% 相場が横ばいで利幅が薄くなり、金利負担で利益が細る 利益 6 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 370 円52 億円
銅は 10 年で 1.3 倍にとどまり、物価に届かない。取扱量は競合に押され 1 割減る。
利益率は 1.2% に落ち、営業利益は 13 億円ほどだ。借金の利息は 4〜5 億円で、純利益は 6 億円ほどにしかならない。
配当は今の水準を守るために性向が高くなる。運転資金の借入が膨らみ、自己資本比率も下がる。
銅の価格は動くが、利ざやが戻らないまま、年ごとのふれ幅だけが続く。経営は借入の返済を優先し、配当の水準を維持するか迷う。ROE は 3% を割る。
仕入れ先の確保も難しくなり、米国の事業は期待ほど利益に貢献しない。
米国の事業は取扱量こそ増やすが、利益には貢献しきれない。競合の増加で、調達の優位性も薄れる。
- 非鉄金属事業:数量 737(取扱量(銅相当の実質、今を 1.0 とする指数))× 価格 1.30(値段の指数(銅の相場。今を 1.0))→ 売上 958 億円・営業利益 12 億円。銅が物価に届かず数量も減る
- アート&クラフト:数量 5.6(売上相当額(実質、今を 1.0))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:ROE は 3% を割り k を大きく下回る。上限の 10.5 倍よりかなり低く、7 倍に置いた。
確率:銅が横ばいで、利ざやが薄い年が続く筋書き。2019 年や 2025 年に起きた形で、2 割に置いた。
悲観 10% 銅の急落と借り換えが重なり、事業が赤字に沈む 利益 −5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 261 円37 億円
銅が 2 割以上急落し、在庫損と運転資金の負担が同時に来る。取扱量は中国のスクラップ規制の変更で 25% 減る。
利益率はマイナスになり、営業赤字に落ちる。借り換えの金利は上がり、利息が利益を食う。
配当は減らされ、増資や資産売却が選択肢になる。
借入の条件を守るため、財務の改善が最優先になる。経営は米国の事業の整理も検討するが、買い手は見つかりにくい。事業の価値は低く、売れる資産と運転資金の回収が下支えになる。
米国の事業は減損の対象になり、自己資本も傷つく。取引先の信用も下がり、仕入れの条件が悪くなる。
会社は事業の縮小と借入の返済を優先し、成長への投資を止める。
- 非鉄金属事業:数量 614(取扱量(銅相当の実質、今を 1.0 とする指数))× 価格 1.05(値段の指数(銅の相場。今を 1.0))→ 売上 645 億円・営業利益 −1 億円。銅の急落と数量減で営業赤字
- アート&クラフト:数量 5.0(売上相当額(実質、今を 1.0))× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。縮小
倍率:赤字で PER は使えない。売れる資産と運転資金の回収を床とし、今の自己資本 92 億円に PBR 0.4 倍を掛けた。
確率:銅の急落と借り換えが重なり、運転資金と在庫損で赤字になる構造的な負け。借金が重いので 1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
非鉄金属事業
銅合金インゴットの製造・販売と、スクラップ・再生原料の加工・販売。
| 数量取扱量(銅相当の実質、今を 1.0 とする指数) | 価格値段の指数(銅の相場。今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 819 | 1.00 | 819 | 0 |
| 10 年後 中立 | 860 | 1.50 | 1,290 | 23 |
取り方:2025/08 期のセグメント売上 819 億円・利益 0.14 億円(envalith)。トン数の開示が見つからず、売上相当額を実質の取扱量、値段の指数を 1.0 とした推定。
アート&クラフト
銅を使った美術工芸品。
| 数量売上相当額(実質、今を 1.0) | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 5.6 | 1.00 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6.1 | 1.34 | 8 | 1 |
取り方:2025/08 期のセグメント売上 5.6 億円・利益 1.0 億円(envalith)。売上相当額を数量とした推定。
リスクと懸念
銅価格の急落
仕入れから販売まで在庫を持つため、銅が急落すれば在庫損が出る。運転資金は相場に比例するので、借入の負担も同時に動く。2016 年と 2019 年は営業赤字になった。
薄い利ざやと値決めの弱さ
仕入れも売値も銅の相場で決まる。取れるのは薄い差だけで、競合が増えれば縮む。数量は 2026 年 8 月期の 9 か月で 12.3% 減っている。
借金の重さと金利
純有利子負債は 111 億円で自己資本を上回る。借り換えで金利が 3.5% 前後に上がれば、利息は 3 億円ほど増える。2025 年 8 月期は営業利益で利息をまかなえなかった。
中国のスクラップ規制
中国が銅スクラップの輸入規制を変えれば、スクラップの流れと値段が一変する。調達網は強みだが、世界の需給の変化には逆らえない。
好調の反動
2026 年 8 月期の 44 億円は価格の追い風が大きい。会社も 2027 年 8 月期は経常で 4 割減と予想する。好況を元に配当や投資を決めると、反動で苦しくなる。
米国事業の取り込み
2025 年 1 月に取得した米国事業の収益性はまだ確かめられていない。統合の失敗や減損が出れば、利益と財務が傷む。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 3% を超える
- 2026 年 8 月期が例外でなく実力と確かめられる。中立の利益率を上げ、割安の側へ動く。
- 銅が 2 割以上急落する
- 在庫損と運転資金の負担で悲観の筋書きに寄る。借り換えの条件も重くなる。
- 純有利子負債が 80 億円を下回る
- 財務の不安が薄れ、資本コストの借金の上乗せを下げられる。価値が上がる。
- 中国が銅スクラップの輸入規制を緩める、または強める
- スクラップの調達と値段が動く。利ざやの上下を見直す。
- 他社による買収や資本提携が出る
- 事業規模と調達網が評価されうる。ただし重い借金を含めた価格になる。
見ておくもの
- 銅価格(円建て)
- 営業利益率(四半期)
- 純有利子負債と支払利息
- インゴットと再生原料の販売数量
- 米国事業の損益
- 中国の銅スクラップ輸入規制
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(g 4%、k 9.5%、ROE が k に届かない時の上限 1÷k)から置いた。今の PER や PBR は見ていない。今の純利益は好調な 2026 年 8 月期の水準だが、価値は通して見た利益率で置いた。2026 年 8 月期の実績(営業利益 44 億円・純利益 28 億円)は 10 年の累計に入れている。リース会計の変更は影響が小さいので、今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→12.16 倍・やや楽観 PER 9.1→11.21 倍・中立 PER 7.5→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。