結論
エスケイジャパンは、ゲームセンターのクレーンゲームの景品(ぬいぐるみ、フィギュア、雑貨)を企画し、ラウンドワンなどの施設に卸す会社だ。2026/02 期は売上が 22% 増の 162 億円、営業利益が 51% 増の 19 億円と、過去最高を更新した。筆者の結論は、10 年では「適正の近く」である。
強みは、人気キャラクターの景品を素早く企画する力と、ラウンドワンという大口の関係会社だ。営業利益率は 11.5% と卸売の会社としては高く、ROE は 20%、自己資本比率は 78%。借金も無い。
弱みは、利益の山にいることだ。クレーンゲームの市場は 2024 年度に 17.7% 増の 3,918 億円と急成長したが、過去にも 2 度のブームがその後に冷えた。売上の約 4 分の 1 が、ラウンドワンとその海外子会社に集中する。
今の利益率と成長が 10 年続くと置けば割安に見える。しかしブームの後の姿を考えると、適正の近くに収まるというのが筆者の見立てだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、いい商売だが、山の利益に高値は付けられない。
良い点は、少ない資本で稼げることだ。工場も店も持たず、企画と調達に特化する。営業利益率 11.5% と ROE 20% は、その軽さの表れだ。借金が無く、現金が自己資本の 6 割ある。
気になるのは三つ。クレーンゲームのブームの持続性、ラウンドワンへの依存、版権元への依存だ。いずれも会社の努力では動かせない。
筆者は、今の利益率を 10 年続く水準とは置かず、過去の山を少し下回る水準で置いた。そのうえでも、利益率が 10% あり、資本を少ししか使わないなら、適正の近くに収まる。逆に言えば、ブームが続く間は株主が得をし、終われば一気に冷える株だ。持ち続けるなら、利益率が下がる前提で数えておく必要がある。
そのため、現金の厚さと、借金が無いことを悲観の床として評価した。
何で稼ぐ会社か
エスケイジャパンは、キャラクターのぬいぐるみ、キーホルダー、家庭雑貨、電子玩具などの企画・販売を行う。自社の工場は無く、生産と物流は外部に任せる。商品の大半は海外で作られ、為替予約でリスクを抑えている。
事業は二つ。キャラクターエンタテインメント事業は、ゲームセンターのクレーンゲームの景品が中心で、売上 123 億円、営業利益 16 億円。取引先はラウンドワンジャパンが 12.9%、米国のラウンドワンの子会社が 10.0%。商品数の充実と海外事業の人員増強で、2026/02 期は 26% 増収だった。
キャラクター・ファンシー事業は、キャラクターショップや量販店向けの雑貨で、売上 40 億円、営業利益 2.8 億円。ドン・キホーテが 11.0% を占め、インバウンドで取引先の店が好調だった。
従業員は連結で 145 人と少ない(1 人あたりの売上は 1 億円を超える)。米国と中国に子会社を持つ。
人員が少なく、企画・調達・営業を少人数でこなす体制のため、1 人あたりの売上が大きい。その分、特定の担当者や取引先への依存も強い。
優良さと弱いところ
優良さは中の上だが、変動が大きい。
強みは三つ。第一に、人気キャラクターの景品を素早く企画して、施設に安定して卸す力。ラウンドワンは国内最大級のゲームセンター運営会社で、海外にも店を持つ。第二に、財務の強さ。自己資本比率は 78%、借金は無く、現金が 42 億円ある。第三に、営業利益率 11.5%、ROE 20% と、卸売としては高い水準だ。
弱みも三つ。第一に、版権元(キャラクターの権利を持つ会社)に依存する。人気が衰えれば景品の価値が下がり、権利元の契約が切られれば商品が消える。第二に、売り先が偏る。ラウンドワンの関係で約 23%、ドン・キホーテで 11%。第三に、商品の寿命が短く、在庫が滞留すると損失が出る。
資本政策は配当性向 30% 前後を目安とするが、2026/02 期は 59% を出した。経営は株主に前向きだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プライズ(景品)の市場は、いま急成長の山にいる。日本アミューズメント産業協会によると、2024 年度のクレーンゲームの売上は前年度比 17.7% 増の 3,918 億円で、10 年前の 2 倍を超えた。ゲームセンターは、景品を取るクレーンゲームを中心にした店に変わっている。
成長の理由は、専門店の拡大と、オンラインで遊べるクレーンゲームの登場、そして人気キャラクターの景品の充実だ。海外でも、日本のキャラクターの人気が高い。
競合は、バンダイナムコやセガなど大手のゲーム会社の景品部門、フリュー、タイトーなどが並ぶ。エスケイジャパンは、キャラクター商品の企画に特化した中小の位置にいる。
ただしクレーンゲームのブームは、過去にも数年で冷めた。景品の原価が上がると施設の採算が悪化し、景品の値段を抑える圧力が強まる。市場が成熟すれば、キャラクターの権利元も自ら景品を扱うようになる。10 年先の姿は読みにくい。海外では日本のキャラクターの人気が高いが、現地での景品の調達は各国の競合も増えており、勝ち残る会社は限られる。
資本政策と M&A
資本政策は、配当と財務の健全さが中心だ。配当性向の目安は連結で 30% 前後だが、2026/02 期は中間と期末の合計で 59% と大きく上回った。現金は 42 億円で、自己資本の 6 割を超える。
株主では、ラウンドワンが議決権の 32.18% を持つその他の関係会社だ。主要な販売先でもあり、両者の関係は深い。公開買付けの発表は見当たらないが、ラウンドワンが持株を引き上げる可能性はある。
M&A の実績は見当たらない。海外では、米国と中国に子会社を設け、ラウンドワンの海外店向けに出荷を伸ばしている。設備投資は 2 億円弱と小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
営業利益率 11.5%、ROE 20%、自己資本比率 78% の会社が、時価総額 135 億円で買える。直近の純利益 13 億円に対し PER は 10 倍で、現金 42 億円を引けば、事業は 7 倍前後で買えることになる。
クレーンゲームの市場は 4,000 億円規模まで成長し、専門店とオンラインの追加で、まだ拡大の余地がある。ラウンドワンは海外の店を増やしており、エスケイジャパンの出荷もそれに連れて伸びる。
人気キャラクターの景品を素早く企画する力は、短い期間に大量の企画をさばく経験の蓄積であり、新規参入が簡単ではない。2026/02 期は、経常利益が会社予想を上回り、営業利益は 5 割増えた。
配当性向は 6 割に上がり、株主還元を強化している。ラウンドワンが持株を増やす動きがあれば、評価の見直しにつながる。小さな会社なので、少しの追い風で利益が大きく動く。クレーンゲームを遊ぶ人の数が増え続ける限り、景品の企画力は価値を持ち続ける。
慎重な見方
今の利益は山である。クレーンゲームの市場は 2024 年度に 17.7% 増と急成長したが、過去のブームは数年で冷めた。ブームが終われば、景品の出荷が減り、値引きの要求が強まる。営業利益率 11.5% は、過去 12 年のうち最高の水準で、これが普通と思ってはいけない。
売り先が偏る。ラウンドワンとその海外子会社で約 23%、ドン・キホーテで 11%。ラウンドワンが自社企画の景品を増やせば、取引は簡単に減る。
版権元への依存も大きい。人気が衰えるか、権利元が自ら景品を扱えば、商品が消える。自社の工場や店舗が無いことは軽さの強みだが、守るべき資産も無いことを意味する。
2026/02 期の ROE 20% は、利益の山と、自己資本の小ささによるものだ。この水準を 10 年の中立と置くのは、楽観が過ぎる。景品の原価が上がれば、施設の採算が悪化して、卸値への圧力が強まる。ブームの反動は、売上の減少と在庫の値引きが同時に来るため、利益の落ち込みが速い。
どちらに重みを置いたか
山の利益に高い倍率を付けられないという慎重な見方に分がある。一方、財務の強さと軽い事業構造は本物で、悲観の深さは限られる。中立を 35% とし、ブームの終わりを見込むやや悲観と悲観を合わせて 35% に置いた。差は小さく、適正の近くに収まる。山の高さをどこまで割り引くかが、結論を左右する。現金の厚さが下値を支える点は、慎重な見方も認めざるをえない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,758 円295 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 486 円82 億円)。 今の値に割り戻すと 1,145 円192 億円、今との差 +53.5%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,042 円679 億円 | 839 円141 億円 | +554.3% | +20.7% | 390 円66 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,720 円457 億円 | 619 円104 億円 | +347.6% | +16.2% | 735 円123 億円 |
| 中立 | 35% | 1,875 円315 億円 | 476 円80 億円 | +215.1% | +12.2% | 823 円138 億円 |
| やや悲観 | 23% | 673 円113 億円 | 363 円61 億円 | +38.9% | +3.3% | 238 円40 億円 |
| 悲観 | 12% | 208 円35 億円 | 274 円46 億円 | −35.4% | −4.3% | 58 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,758 円295 億円 | 486 円82 億円 | +200.8% | +11.6% | 2,244 円377 億円 |
今の株価時価総額 746 円125 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% クレーンゲームの人気が海外でも続き、ラウンドワンの出店とともに景品が伸び続ける 利益 34 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 4,042 円679 億円
ラウンドワンの国内外の出店が続き、プライズ景品の出荷数が 10 年で 9 割増える。海外の店向けは、米国と中国向けの出荷が柱になる。人気キャラクターの景品を早く企画できる強みで、取り扱いキャラクターも増える。
ファンシー雑貨も、インバウンドで取引先のキャラクターショップが伸び、2 割増える。
利益率は規模の効果で 13% まで上がるが、過去の山(11.5%)を超えるため、売上が 2 倍近くに増えて固定費が薄まることが前提になる。ラウンドワンの出資比率が上がる可能性も含む。
ただし、ここまで伸びるには、企画できるキャラクターの数と、海外の店に届ける物流の体制を同時に増やす必要がある。人員が 145 人の会社が、売上を倍にする難しさは小さくない。
- キャラクターエンタテインメント(プライズ景品):数量 4,163(プライズ景品の出荷数(万個))× 価格 0.08(万円/個(施設への卸値))→ 売上 317 億円・営業利益 41 億円。数量 1.90 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 13.0%
- キャラクター・ファンシー(雑貨):数量 1,200(雑貨の出荷数(万個))× 価格 0.05(万円/個(卸値))→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。数量 1.20 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 19.57 倍、時価総額 666 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:クレーンゲームの市場が今の勢いのまま 10 年伸び、海外のラウンドワンの店向けも倍増する筋書き。ブームは 3 回目で、これまでは数年で冷えた歴史があるため、8% に置いた。
やや楽観 22% クレーンゲームの定着で、景品の出荷が着実に増え続ける 利益 23 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 2,720 円457 億円
クレーンゲームは日本の若者の娯楽として定着し、専門店とオンライン型も含めて、景品の需要が着実に伸びる。出荷数は 4 割増え、海外の店向けも増える。
ファンシー雑貨は 1 割増える。値段は物価並みに上がるが、キャラクターの版権料も上がるため、転嫁は完全にはできない。
営業利益率は 11% 台で、過去の山をわずかに超える水準にとどまる。配当は利益の 6 割近くを出す。
海外のラウンドワンの店向けの出荷は着実に増え、米国と中国の子会社が窓口になる。ただし主要販売先への依存は変わらず、集中のリスクは残る。
- キャラクターエンタテインメント(プライズ景品):数量 3,067(プライズ景品の出荷数(万個))× 価格 0.08(万円/個(施設への卸値))→ 売上 232 億円・営業利益 27 億円。数量 1.40 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 11.5%
- キャラクター・ファンシー(雑貨):数量 1,100(雑貨の出荷数(万個))× 価格 0.05(万円/個(卸値))→ 売上 59 億円・営業利益 4 億円。数量 1.10 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 18.95 倍、時価総額 439 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:クレーンゲームが定番の娯楽として定着し、海外向けも着実に増える筋書き。直近の 22% 増収が一時的なブームではなく続くかどうかは読みにくく、強気の確率は 2 割強にとどめた。
中立 35% 景品は緩やかに増え、利益率は過去の山から少し下がって安定する 利益 16 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 1,875 円315 億円
クレーンゲームの市場は 2024 年度に前年度比 17.7% 増の 3,918 億円と急成長したが、10 年では成長が鈍り、緩やかに増える形に落ち着く。出荷数は 1 割増える。ファンシー雑貨は横ばい。
物価の上昇は卸値にほぼ移せる。ただし人気キャラクターの版権料と、海外生産の仕入れ値も同じ速さで上がり、営業利益率は 10% 前後と、今の 11.5% から下がる。
全体の営業利益は 22 億円前後で、今の 19 億円から 16% の増加にとどまる。物価の上昇に追いつかない形である。
配当は利益の 5 割台で続き、現金は在庫と運転資金に使われて、積み上がりは緩やかだ。大きく崩れず、大きく伸びもしない、10 年の中間の姿である。
- キャラクターエンタテインメント(プライズ景品):数量 2,410(プライズ景品の出荷数(万個))× 価格 0.08(万円/個(施設への卸値))→ 売上 181 億円・営業利益 18 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 10.0%
- キャラクター・ファンシー(雑貨):数量 1,000(雑貨の出荷数(万個))× 価格 0.05(万円/個(卸値))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 18.12 倍、時価総額 293 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の高い利益率が少し下がりつつ、市場の成長が数量を支える筋書き。過去 12 年の営業利益率は 11.5% が山で、10% 前後に落ち着くとみて最も重く置いた。
やや悲観 23% クレーンゲームの人気が冷え、景品の出荷が減って値引きも増える 利益 9 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 673 円113 億円
クレーンゲームのブームが一服し、ゲームセンターの来店数が減る。景品の出荷数は 2 割減り、値引きの要求も強まる。ライセンス元(キャラクターの権利を持つ会社)が自社で景品を扱う動きも出て、利益率は 7% 台に下がる。
ファンシー雑貨はインバウンドの落ち着きで 1 割減る。
営業利益は 12 億円前後と、今より 4 割減る。配当性向は 5 割を維持しようとするが、手元の現金は在庫の調整で減る。
景品の価格が下がれば、仕入れ値との差が縮み、粗利が落ちる。人気キャラクターの権利は、より大きな競合が取りにいくようになる。
- キャラクターエンタテインメント(プライズ景品):数量 1,753(プライズ景品の出荷数(万個))× 価格 0.07(万円/個(施設への卸値))→ 売上 128 億円・営業利益 10 億円。数量 0.80 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 7.5%
- キャラクター・ファンシー(雑貨):数量 900(雑貨の出荷数(万個))× 価格 0.05(万円/個(卸値))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。数量 0.90 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 5.0%
倍率:事業の ROE は 9% 前後で k をわずかに上回る程度。ブーム後の利益の質は低く、1÷k=11.4 倍を割る 9.5 倍に置くため、ROE が k に近い会社の目安(ROE÷k)に沿って引いた。余った現金は谷で食う分を引いて 0.75 倍で数えた。
確率:3 回目のブームが過去の例と同じく数年で冷め、景品の出荷が減る筋書き。景品の市場は過去に 2 度、ブームと反動を繰り返しており、強気側より厚く置いた。
悲観 12% ブームが終わり、主要な販売先とキャラクターの権利元を同時に失う 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 208 円35 億円
クレーンゲームの市場が縮み、ラウンドワンが自社のオリジナル景品に切り替えて、取引が半分に減る。人気キャラクターの権利元が、より大きな競合に移る。景品の出荷数は 55% 減り、在庫の値引き処分が続く。
利益率は 3% まで下がり、全体の営業利益は 4 億円ほどになる。固定費を削っても、事業の規模が縮み、利益は小さくなる。
この局面では、手元の現金と売掛金が値段を決める。配当は大きく減る。
工場も店も無い軽い事業なので、規模を縮めても固定費の負担は小さいが、利益を稼ぐ力は大きく損なわれる。ラウンドワンとの関係が続くかどうかが分かれ目になる。
- キャラクターエンタテインメント(プライズ景品):数量 986(プライズ景品の出荷数(万個))× 価格 0.07(万円/個(施設への卸値))→ 売上 69 億円・営業利益 2 億円。数量 0.45 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 3.0%
- キャラクター・ファンシー(雑貨):数量 600(雑貨の出荷数(万個))× 価格 0.05(万円/個(卸値))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 1.0%
倍率:稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 3 億円ほどで値を支えない。売れる資産の税後約 35 億円のほうが大きいので、床は売れる資産で置き、今の自己資本 66.6 億円に約 0.53 倍を掛けた。
確率:ブームの終わり、主要販売先(ラウンドワンなど)の自社企画への切り替え、人気キャラクターの権利元の離反が重なる複合の筋書き。売上の約 4 分の 1 が関係会社とその海外子会社に集中しているため、1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
キャラクターエンタテインメント(プライズ景品)
ゲームセンターのクレーンゲームの景品(ぬいぐるみ、フィギュア、雑貨)を企画し、ラウンドワンなどのアミューズメント施設に卸す事業。海外のラウンドワンの店向けも伸びている。
| 数量プライズ景品の出荷数(万個) | 価格万円/個(施設への卸値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 2,191 | 0.06 | 123 | 16 |
| 10 年後 中立 | 2,410 | 0.08 | 181 | 18 |
取り方:有報のセグメント売上 122.7 億円・営業利益 15.8 億円(2026/02、売上は前期比 26% 増)を、出荷 2,191 万個(推定。個数は未開示)と卸値 1 個 0.056 万円相当で置いた。クレーンゲームの景品は 1 個数百円の単価が普通で、その水準から割り戻した推定。
キャラクター・ファンシー(雑貨)
キャラクターショップや量販店向けのぬいぐるみ、キーホルダー、家庭雑貨。ドン・キホーテなどの量販店とキャラクターショップが売り先。
| 数量雑貨の出荷数(万個) | 価格万円/個(卸値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,000 | 0.04 | 40 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.05 | 53 | 4 |
取り方:有報のセグメント売上 39.7 億円・営業利益 2.8 億円(2026/02、売上は前期比 11% 増)を、出荷 1,000 万個(推定)で割った卸値 1 個 0.04 万円相当。インバウンド需要で取引先の店が活況だったと説明されている。
リスクと懸念
クレーンゲームのブームの反動
過去 12 年の営業利益率の山は今期の 11.5%。景品市場は 2 度ブームと反動を繰り返しており、3 回目の山が冷めれば出荷は減り、値引きの要求が強まる。
主要販売先への集中
ラウンドワンとその海外子会社が売上の約 23%、ドン・キホーテが 11%。ラウンドワンは議決権の 32% を持つ関係会社でもあり、自社企画の景品を増やせば取引は簡単に減る。
版権元への依存
取扱商品の大半がキャラクター商品で、人気の衰えや契約の解除が直接売上に響く。版権元が自ら景品を扱えば、中間の企画会社は不要になる。
商品の寿命と在庫
景品の寿命は短く、売れ残れば大きな値引きで処分する。在庫は今 8 億円と小さいが、ブームの反動期は急に増えて損失になる。
海外生産と為替
商品の大半は海外で作る。為替予約で抑えているが、円安が長く続けば仕入れ値の上昇を卸値に移せず、利益率が下がる。
今後の分かれ目
- ラウンドワンが持株比率を引き上げる、または公開買付けを発表した
- 買収価格が価値の上限になる。TOB が発表された時点で分析の前提を見直す。
- 2 期続けて営業利益率が 12% を超えた
- 山ではなく新しい水準になった可能性を考え、中立の営業利益率を 10% から 11% 台に引き上げる。
- ラウンドワン向けの売上が前年を 2 割以上下回った
- 自社企画への切り替えの兆候。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 日本アミューズメント産業協会のクレーンゲーム売上が前年を下回った
- ブームの終わりの兆候。出荷数を引き下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 主要キャラクターの版権契約が更新されなかった、または新しい人気キャラクターの契約を得た
- 前者は悲観、後者は楽観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 日本アミューズメント産業協会のクレーンゲーム・プライズの売上
- ラウンドワン向けと海外子会社向けの売上と比率
- 営業利益率(11.5% の維持)と商品在庫の増減
- 版権元の契約の更新と新しい取扱キャラクター
- ラウンドワンの持株比率の変動
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE(余った現金を除く)13% 前後と資本コスト 8% から式で置き、上限の約 9 割に収めた。今の株価や PER 10 倍は使っていない。営業利益率は過去 12 年の山 11.5% を超えない 10% に置いた。現金は 18 億円を切り分け、戻り方 0.75 で数えた。この数字が 1.0 なら中立の時価総額は 4 億円ほど上がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→19.57 倍・やや楽観 PER 12.5→18.95 倍・中立 PER 12→18.12 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.25% を足して 8.75%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.00%。