結論
星医療酸器は、在宅酸素療法の機器と医療ガスを病院や患者に届ける会社だ。売上は 155 億円、営業利益率は 10 年以上 12% を超えている。
筆者の結論は「おおむね適正」だ。事業は堅く、純現金は時価総額の 4 割近い。だが値段は診療報酬という国のルールに縛られ、増えた利益は株主にあまり戻ってこない。この 2 つが、価値を今の値段近くに抑える。
稼ぎの源は、患者の自宅に置く酸素濃縮器や CPAP 機器の貸し出しと、病院向けの医療ガス配管・供給だ。高齢化で患者が増え、機器の保守や交換で長く取引が続く。
気になるのは配当性向が 2 割にとどまる点だ。自社株買いは 2021 年 3 月期が最後で、現金は積み上がりやすい。大株主に光通信(約 7%)がいるが、純投資とされ、動きは読めない。
ただし利益の質は高い。粗利率は 5 割近く、赤字の期は過去に一度もない。診療報酬の改定が最大のリスクだが、数量の伸びで補える範囲にあると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず見るのは「10 年後もこの稼ぎが続くか」だ。在宅酸素と医療ガスは、高齢社会の基盤の事業で、需要は景気に左右されない。この点は強い。
次に、価格決定力だ。国が価格を決める事業は、利益が国の財政方針に左右される。改定で単価が下がっても、利益率を守れるかがこの会社の試金石になる。過去 10 年は守ってきた。
資本の使い方は評価が割れる。利益の 2 割しか配当せず、現金は積み上がる。経営が堅実なのは良いが、株主から見れば、低い利息で眠るお金が多い。
安全域の面では、純現金が時価総額の 4 割近い。事業の評価が多少厳しくても、下値は固い。ただし、現金は少数株主が使い道を決められない。
結論として、堅い会社を適正な値段で持つことになる。割安に変わるのは、性向の引き上げや自社株買いで現金の戻りが見えた時だ。
何で稼ぐ会社か
星医療酸器は、医療用ガスと在宅医療機器の会社だ。2026 年 3 月期の売上は 155 億円で、5 つの事業に分かれる。
最大は在宅医療関連で、売上の約 5 割を占める。自宅で酸素を吸う患者に濃縮器を貸し出し、CPAP(睡眠時無呼吸の治療機器)も扱う。毎月の貸出料と保守で、収益が繰り返し入る。利益率は 13% 台と高い。
次に医療用ガス関連だ。病院へ酸素や窒素などを届ける。高圧ガス保安法の規制を受けるため、配送網と保安の体制を持つ会社でないと参入しにくい。売上の 3 割超はこの医療ガスだ。
医療ガス設備工事は、病院の配管を作る事業で、利益率は 16% 前後ある。
介護福祉関連(用具のレンタル・販売)と施設介護(有料老人ホーム・デイサービス)は小さい。特に施設は赤字だ。
従業員は 500 人余り、平均年収は 560 万円ほど。主な顧客は病院、診療所、在宅の患者で、取引は長く続く。売上総利益率は 49.5% と高く、原材料と物流費の上昇で少し下がった。
2027 年 3 月期の第 1 四半期は、売上が 1% 増、経常利益が 8% 増と堅調だった。
優良さと弱いところ
事業の質は高いと見る。理由は 3 つある。
1 つは、利益率の安定だ。営業利益率は 10 年以上、12〜13% の幅に収まる。コロナ禍の 2020 年 3 月期でも 9.5% までしか落ちなかった。赤字の期はない。
2 つめは、取引の固さだ。在宅の機器は患者の病状が続く限り使い続けられ、保守も付く。医療ガスは安全規制で参入が難しい。この 2 つは、新規参入を寄せつけにくい堀、つまり他社がまねしにくい強みだ。
3 つめは、財務だ。純現金 59 億円、自己資本比率 75%。借金に頼らず、倒れる心配が小さい。
弱みは、値段を自分で決められない点だ。在宅酸素は診療報酬の加算で決まり、改定のたびに国が下げうる。また、資本効率は高くない。ROE は 7% 前後にとどまり、現金や有価証券が積み上がっているからだ。
経営は堅実だが、株主への戻りには消極的だ。配当性向は 2 割、株主還元のスコアは業界でも低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本は高齢化が続き、在宅で医療を受ける人は増え続ける。国も入院から在宅への移行を進めている。在宅酸素療法の患者は国内で十数万人とされ、CPAP の利用者も増えている。
一方、収入の大半は診療報酬だ。在宅酸素の材料加算は、機器の実態に合わせて見直す案が検討されたことがある。改定のたびに単価が下がるリスクは避けられない。
競合は、機器を作る側にも売る側にもいる。酸素濃縮器では帝人ファーマが大手として知られ、2011 年時点で在宅患者の過半が同社製を使っていたという報道がある。医療ガスの供給は、産業ガス大手も手がける分野だ。地域ごとの配送網と保守の体制が、競争の分かれ目になる。
原材料や物流費の上昇、人手不足による人件費の増加も続く。2026 年 3 月期は粗利率が 0.6 ポイント下がり、営業利益は 3% 減った。
筆者は、数量は実質で年 2〜3% の伸び、価格は物価より低い上昇と見る。診療報酬が物価に追いつかない前提で、利益率はいまの水準を守るのがやっとだ。
人口は減っても、高齢者の数は 2040 年ごろまで増える。在宅の需要は、人口の減少とは別の動きをする。
資本政策と M&A
配当は 2026 年 3 月期が総額で 2.8 億円ほどで、利益に対する性向は 2 割ほど。方針は「長期に安定的に」とだけ示され、数値の目標はない。
自社株買いは 2021 年 3 月期の 6.5 億円が最後だ。ここ数年は行っていない。
純現金は 59 億円で、投資有価証券も 42 億円ある。ただ、有形固定資産への投資が年 12 億円前後あり、機器の貸出用資産が増える仕組みでもある。現金が全部余っているわけではない。
大株主に光通信(約 7%)がいる。純投資とされ、経営参画の動きは確認できない。
中期経営計画は準備中の扱いで、数値目標は確認できなかった。M&A の実績や計画も見つからなかった。
筆者は、現金のうち 40 億円ほどを余剰とみて、戻り方を半分に割り引いた。性向を引き上げる動きが出れば、この割り引きは外せる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
高齢化で在宅医療の需要は 10 年以上続く。在宅酸素と CPAP は、患者が増え続ける市場だ。国も入院から在宅への移行を進めており、星医療酸器は地域の配送網と保守を持つ数少ない会社だ。
医療ガスは高圧ガス保安法の規制で新規参入が難しい。病院との取引は長く、価格も安定している。工事は病院の建て替えや新設で受注が積み上がり、利益率は 16% と高い。
財務も強い。純現金は時価総額の 4 割近く、赤字の期は過去にない。営業利益率は 12〜13% を 10 年以上守っており、利益の質は高い。
配当性向は 2 割と低く、引き上げ余地が大きい。大株主に光通信が入り、還元強化を求める圧力が出る可能性もある。
10 年後に売上 300 億円近く、営業利益率 12% 台後半という筋書きは十分ありうる。
在宅医療に強い会社は少なく、地域の病院との関係も長い。業界の再編が進む中、星医療酸器の配送網は買収側からも魅力的に映るはずだ。
慎重な見方
この会社の収入の大半は診療報酬だ。国は財政の悪化から、改定のたびに単価を引き下げてきた。在宅酸素は加算の見直しが検討されたこともある。物価が 3% 上がる世界で、診療報酬が追いつかなければ、利益率は削られる。
2026 年 3 月期は粗利率が 0.6 ポイント下がり、営業利益は 3% 減った。原材料と物流費の上昇、人件費の増加が重なった結果だ。これが続くと、12% 台の利益率は守れない。
競合の影響もある。酸素濃縮器では帝人ファーマなど大手が強い。機器メーカーが自ら貸出に踏み込めば、星医療酸器の取り分は減る。施設介護は赤字が続き、経営の幅の広さが重荷になっている。
資本効率も低い。ROE は 7% 前後で、現金と有価証券が積み上がっている。配当性向は 2 割、自社株買いは 2021 年 3 月期以降ない。現金が戻らないなら、財務の強さは株主の価値にならない。
この会社は堅いが、伸びない。10 年後の価値は今の値段と同じが関の山だ。
どちらに重みを置いたか
強気の材料は高齢化と利益の安定で、慎重な見方の材料は診療報酬と現金の戻りの弱さだ。どちらも根拠があり、中立を 4 割に置いて、やや楽観とやや悲観を同程度にした。現金の戻り方は 0.5 と控えめに見ている。楽観は数量の伸びと値上げの浸透が重なる形で 1 割とし、悲観は診療報酬の大幅な引き下げと競争の激化が重なる形で 1 割弱とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,612 円269 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,345 円42 億円)。 今の値に割り戻すと 5,337 円167 億円、今との差 +6.7%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 13,165 円411 億円 | 1,856 円58 億円 | +200.4% | +11.6% | 1,502 円47 億円 |
| やや楽観 | 22% | 10,784 円337 億円 | 1,408 円44 億円 | +143.8% | +9.3% | 2,682 円84 億円 |
| 中立 | 40% | 9,325 円291 億円 | 1,184 円37 億円 | +110.2% | +7.7% | 4,204 円131 億円 |
| やや悲観 | 20% | 4,879 円152 億円 | 1,280 円40 億円 | +23.2% | +2.1% | 1,232 円38 億円 |
| 悲観 | 8% | 2,720 円85 億円 | 1,504 円47 億円 | −15.5% | −1.7% | 338 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,612 円269 億円 | 1,345 円42 億円 | +99.2% | +7.1% | 9,958 円311 億円 |
今の株価時価総額 5,000 円156 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 高齢化の追い風で数量が伸び、診療報酬の影響も軽く済む 利益 25 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 13,165 円411 億円
高齢化と在宅への移行が想定以上に進む。在宅酸素と CPAP の利用者が増え、在宅医療関連の数量は 10 年で 5 割増える。診療報酬の改定でも単価の下げは小さく、物価の 3 割増に近い上昇を保つ。
医療ガスと工事も、病院の建て替えと新設で堅調だ。利益率は 14% まで上がり、売上は 280 億円を超える。営業利益は 40 億円近い。
大株主の働きかけもあり、配当性向が 3 割台に上がる。自社株買いも再開される。
施設介護の赤字は整理され、介護福祉の用具レンタルが小さな黒字を足す。ROE は 7% 台後半と、資本コストを少し超える。
- 在宅医療関連:数量 108(対象患者数の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 140 億円・営業利益 20 億円。高齢化と在宅移行で数量が伸び、単価の下げも小さい
- 医療用ガス関連・その他:数量 57.5(供給量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.40(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 81 億円・営業利益 10 億円。物価を上回る値上げ
- 医療用ガス設備工事関連:数量 18.7(工事量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.40(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 26 億円・営業利益 4 億円。病院の新設・建て替えで好調
- 介護福祉関連・施設介護:数量 20.8(サービス量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。用具が伸びる
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 15.51 倍、時価総額 411 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高齢化と在宅移行が想定以上に進み、診療報酬の影響も軽い筋書き。国の方針に左右されるので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 数量が堅調に伸び、利益率が 13% 台に乗る 利益 22 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 10,784 円337 億円
在宅医療の数量が 4 割増え、CPAP が新しい柱になる。単価は診療報酬の引き下げで物価に届かず、1.25 倍にとどまる。
医療ガスは物価並みに値上げできる。工事も病院の新設で堅調だ。全社の利益率は 12.5% に上がり、売上は 250 億円ほどになる。
営業利益は 30 億円を超える。配当性向は少し上がるが、現金は積み上がり続ける。
施設介護の赤字は縮小し、介護福祉の用具レンタルも伸びる。ROE は 7% ほどと、資本コストにほぼ並ぶ。
診療報酬の改定は単価を押し下げるが、数量の伸びがそれを上回る。経営は在宅の機器の更新に投資を続け、サービスの質で競合に差をつける。
- 在宅医療関連:数量 101(対象患者数の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 126 億円・営業利益 17 億円。CPAP が柱に
- 医療用ガス関連・その他:数量 55.0(供給量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.37(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 75 億円・営業利益 9 億円。物価並みの値上げ
- 医療用ガス設備工事関連:数量 17.9(工事量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.37(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。堅調
- 介護福祉関連・施設介護:数量 19.2(サービス量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。小幅な伸び
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 14.51 倍、時価総額 337 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量の伸びが堅調で、単価の下がりも小さい筋書き。過去 10 年の安定した実績から、2 割強に置いた。
中立 40% 数量は着実に増え、単価は物価に届かず、利益率は 12% 前後を守る 利益 19 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 9,325 円291 億円
在宅医療関連の数量は、高齢化を受けて 10 年で 3 割増える。単価は診療報酬の改定で物価に届かず、1.2 倍にとどまる。利益率は 13% を保つ。
医療ガスは物価並みに上がる。工事と介護は小幅な伸びだ。人件費と物流費は物価で増えるが、利益率はほぼ今の水準を守る。
売上は 226 億円、営業利益は 27 億円になる。機器の貸出用資産を増やす投資が毎年あり、償却は今の設備分が増えない一方、新しい機器は高い値段で買う。
配当性向は 2 割台前半で、現金は積み上がる。ROE は 6% 台にとどまる。
施設介護の赤字は続くが、全体への影響は小さい。診療報酬の改定は 2 年ごとに来るが、数量の伸びがその下げを吸収する。
- 在宅医療関連:数量 93.6(対象患者数の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 112 億円・営業利益 15 億円。数量増、単価は報酬改定で物価に届かず
- 医療用ガス関連・その他:数量 52.5(供給量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 70 億円・営業利益 8 億円。物価並みの値上げ
- 医療用ガス設備工事関連:数量 17.0(工事量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。横ばい
- 介護福祉関連・施設介護:数量 17.6(サービス量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。小幅な伸び
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量が実質で年 2〜3% 伸び、単価が物価に届かず、利益率が過去並みを保つ筋書き。最も筋が通るので最大に置く。
やや悲観 20% 診療報酬の引き下げが重なり、利益率が 9% 台に落ちる 利益 13 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 4,879 円152 億円
診療報酬の改定が続けて引き下げになり、在宅医療の単価は 10 年で 1.1 倍にとどまる。数量は 15% しか増えない。
医療ガスは病院の値下げ交渉に押され、物価ほど値上げできない。人件費と物流費は物価で増え、利益率は 9% 台に落ちる。
売上は 190 億円、営業利益は 17 億円で、今より少し減る。配当は今の水準を守るために性向が少し上がる。現金の積み上がりも鈍る。
機器メーカーとの取引条件も厳しくなるが、決定的な打撃にはならない。ROE は 4% 台にとどまる。
経営は施設介護の整理を検討するが、決断は遅い。在宅医療の安定した需要が、利益の最低ラインを支える形になる。
- 在宅医療関連:数量 82.8(対象患者数の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 91 億円・営業利益 10 億円。報酬の引き下げで単価が伸びない
- 医療用ガス関連・その他:数量 50.0(供給量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 63 億円・営業利益 6 億円。病院の値下げ交渉に押される
- 医療用ガス設備工事関連:数量 16.2(工事量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。受注が減る
- 介護福祉関連・施設介護:数量 16.0(サービス量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。利益がほとんど出ない
倍率:ROE が 5% 前後で k を下回る。上限の 14.3 倍より低く、9.5 倍に置いた。
確率:診療報酬が改定で下がり、費用の上昇を価格に転嫁できない筋書き。過去にも利益率が 9.5% に落ちた例があり、2 割に置いた。
悲観 8% 診療報酬の大幅な引き下げと競争で、利益率が 4% 台に沈む 利益 5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,720 円85 億円
診療報酬が大幅に引き下げられ、在宅医療の単価は 10 年で物価と逆に下がる。機器メーカーが自ら貸出に進出し、数量も減る。
医療ガスは大手の産業ガス会社に価格で押され、工事も受注が細る。施設介護の赤字は拡大する。
営業利益率は 4% 台に落ち、営業利益は 7 億円ほどになる。経営は事業の整理を迫られるが、純現金と資産が下支えになる。
配当は維持できず、投資も止まる。
機器の貸出資産が古くなるのに更新できず、サービスの質も落ちる。取引先の病院が他社に移るのを止められない。
株主構成にも変化が出るかもしれない。大株主が持株を増やし、経営への関与を強める可能性もある。
- 在宅医療関連:数量 68.4(対象患者数の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 0.95(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 65 億円・営業利益 4 億円。報酬の大幅引き下げと直営化で数量・単価とも減
- 医療用ガス関連・その他:数量 45.0(供給量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。産業ガス大手に価格で押される
- 医療用ガス設備工事関連:数量 13.6(工事量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。受注が細る
- 介護福祉関連・施設介護:数量 14.4(サービス量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円))× 価格 1.00(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。赤字が拡大
倍率:稼ぐ力が低く PER では測りにくい。純現金・投資有価証券・設備の売れる分を床とし、今の自己資本 200 億円に PBR 0.425 倍を掛けた。
確率:診療報酬の大幅な引き下げと競争の激化が重なる構造的な負け。国の財政の方針を考え 1 割弱に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
在宅医療関連
在宅酸素療法・CPAP などの在宅医療機器の貸出と保守。
| 数量対象患者数の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円) | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 72.0 | 1.00 | 72 | 10 |
| 10 年後 中立 | 93.6 | 1.20 | 112 | 15 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 72 億円・利益率 13.8%(edinetdb)から利益 9.9 億円。患者数・単価の開示が見つからず、売上相当額を数量、値段の指数を 1.0 とした推定。
医療用ガス関連・その他
病院向け医療ガスの供給。連結売上と報告セグメントの差(約 11 億円)もここに含める。
| 数量供給量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円) | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 1.00 | 50 | 6 |
| 10 年後 中立 | 52.5 | 1.34 | 70 | 8 |
取り方:医療用ガス関連 39 億円にセグメント外の差 11 億円を足した 50 億円。利益は全社の営業利益 19.2 億円から他のセグメントを引いた逆算の推定。数量・単価は売上相当額と値段の指数 1.0 とした推定。
医療用ガス設備工事関連
病院の医療ガス配管工事。
| 数量工事量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円) | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.0 | 1.00 | 17 | 3 |
| 10 年後 中立 | 17.0 | 1.34 | 23 | 4 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 17 億円・利益率 16.0%(edinetdb)から利益 2.7 億円。工事量・単価の開示がなく、売上相当額を数量とした推定。
介護福祉関連・施設介護
介護用具のレンタル・販売と、有料老人ホーム・デイサービスの運営。
| 数量サービス量の実質規模(今を基準にした売上相当額、億円) | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.0 | 1.00 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 17.6 | 1.20 | 21 | 1 |
取り方:介護福祉 12 億円と施設介護 4 億円の合計 16 億円。施設は 0.16 億円の赤字(edinetdb)で、介護福祉の利益は推定。売上相当額を数量とした推定。
リスクと懸念
診療報酬の引き下げ
収入の大半は診療報酬で決まる。改定のたびに在宅酸素の加算や医療ガスの単価が下がりうる。物価が上がる中で、報酬が追いつかなければ利益率が削られる。
コストの上昇
2026 年 3 月期は粗利率が 0.6 ポイント下がり、営業利益は 3% 減った。原材料、物流費、人件費の上昇を価格に転嫁できない状態が続くと、12% 台の利益率を保てない。
機器メーカーの直接参入
酸素濃縮器の大手は帝人ファーマなど。機器メーカーが貸出を直営化すれば、取り分が減る。保守の体制も競争の的になる。
施設介護の赤字
有料老人ホームとデイサービスは赤字が続く。規模は小さいが、拡大すれば人件費の負担が増える。撤退か育成かの判断が経営の課題だ。
現金が戻らない
配当性向は 2 割で、自社株買いは 2021 年 3 月期以降ない。純現金は時価総額の 4 割近く、利息 2% 程度で眠る。ROE を押し下げ、少数株主には使い道を決められない。
設備投資の費用の膨らみ
今の機器の減価償却は物価で増えない。一方、貸出用の機器と配送設備の更新は高い値段で買う。償却を超える分は現金から出ていき、会計の利益は増えて見えても現金は細る。
今後の分かれ目
- 診療報酬の改定で在宅酸素の加算が大きく引き下げられる
- 単価が下がり、やや悲観から悲観の筋書きに寄る。確率を引き上げる。
- 配当性向が 3 割以上に上がる、または自社株買いが出る
- 現金の戻りが開ける。戻り方を 1.0 に上げ、価値が上がる。
- 営業利益率が 3 期続けて 13% を超える
- 原価上昇を転嫁できる力が確かめられる。中立の利益率を上げる。
- 光通信など大株主が持株を増やす
- 還元強化や再編の圧力が高まる。ただ価格や条件を見込む材料はない。
- 機器メーカーが貸出を直営化する
- 在宅医療の取り分が減る。数量と単価が下がる筋書きに寄る。
見ておくもの
- 診療報酬改定(2 年ごと)での在宅酸素・医療ガスの単価
- 在宅医療関連の売上と利益率
- 粗利率と販管費(人件費・物流費)
- 配当性向と自社株買いの有無
- 施設介護の損益
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(g 4%、k 7.0%、ROE が k に届かない時の上限 1÷k)から置いた。今の PER や PBR、同業の倍率は見ていない。今の時価総額は自己資本の 8 割弱で純現金が厚いが、PBR 1 倍割れは割安の根拠にしていない。事業の利益から価値を出し、現金は戻り方 0.5 を掛けて足した。リース会計の変更は影響が小さいので、今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→15.51 倍・やや楽観 PER 12.5→14.51 倍・中立 PER 11.5→14.29 倍・悲観 PBR 0.4→0.425 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。