結論
大丸エナウィンは、大阪を地盤にLPガスを約12万世帯へ届け、病院や在宅患者に医療ガスと在宅酸素の機器を貸す会社だ。時価総額は約120億円、自己資本比率は約70%で、借金はほとんどない。
筆者の結論は、10年の稼ぐ力で測ると今の値段は割高、というものだ。理由は、売上の約6割を占めるLPガスの数量が、人口減とオール電化で10年で1〜2割縮む構造にあるからだ。稼ぎの伸びしろは在宅医療だが、公定の報酬が物価ほど上がらないため、利益率の改善は限られる。
2026年3月期は売上327億円、営業利益13億円。内訳は、LPガスなどのリビング事業が営業利益7.8億円、医療・産業ガスが4.7億円だった。在宅医療は売上が前期より約8億円増え、20%近く伸びている。
資本政策は堅い。配当は安定重視で、配当性向は2割台。純現金は約20億円あるが、投資に回ってきたため積み上がらず、自社株買いの実績もない。
気になるのは、LPガス小売の利幅が料金規制と競争で細りやすい点だ。医療と産業ガスがその穴を埋めきれるかが、10年の分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安全だが、ほとんど稼ぎが増えない」と見る。
良い点は、事業が生活の必需品を扱うことだ。LPガスは冬も夏も使われ、医療ガスは止められない。自己資本比率が約70%で、借金の心配はない。
悪い点は、資本の稼ぐ力が資本コストに届かないことだ。ROEは5〜6%で、資本コスト7.5%を下回る。資本の多くが貯槽や配管など、更新に金のかかる設備に張り付いている。利益の多くが設備投資に消え、株主に戻る分は少ない。
成長の源は在宅医療だが、公定価格で、利益率を大きくは変えられない。LPガスは、数量が減る市場で買収で穴を埋める形だ。買収価格が高くなれば、資本の効率はさらに落ちる。
経営の資本配分は、堅実さが取り柄で、株主の取り分を最大にする意識は薄い。配当性向2割台の会社が現金を貯め続ければ、10年後も資本の効率は変わらない。
安全域は純現金と保有株にあるが、時価総額の2割強にすぎない。10年の稼ぐ力で測れば、今の値段に余裕はない。
何で稼ぐ会社か
大丸エナウィンの事業は3つある。2026年3月期の売上は、リビング事業が225億円、医療・産業ガス事業が90億円、アクア事業が13億円だった。
リビング事業の中心はLPガスだ。家庭や業務用に直接売る「ぽっぽガス」が60億円、販売店などへ卸すエネルギー部門が130億円。ほかに、給湯器など住宅設備が35億円ある。家庭用LPガスだけで、連結売上の2割程度を占める。LPガスは元売り(石油精製会社など)から仕入れ、ボンベとタンクで配る。
医療・産業ガス事業は、成長を担う。在宅医療は、在宅酸素などの機器を患者に貸す事業で、売上は48億円。前期より8億円(20%)増えた。医療ガスは病院へ酸素などを納め、産業ガスは工場へ高圧ガスと機材を納める。
アクア事業は、飲料水の宅配とウォーターサーバーだ。小さい。
営業利益率はリビング3.4%、医療・産業ガス5.3%で、全社で4%。設備投資は大きく、2026年3月期は26億円。そのうち18億円は、高圧ガスの貯槽や在宅医療の機器など、医療・産業ガスに向けたものだ。
買収では、2022年に滋賀のクサネンを連結子会社にし、2023年に完全子会社化した。岩崎工業所も連結している。小さな同業を買い足すことで、LPガスの数量減を補ってきた。
優良さと弱いところ
事業の質は、筆者の目には「手堅いが、成長は医療が頼り」だ。
LPガスの強みは、顧客との長い関係と配送網にある。ボンベが家の外に置かれ、保安の点検を会社が担うため、顧客が切り替えにくい。ただ、LPガスは料金の透明化と過大な営業行為の規制が続き、小売りの利幅は縮みやすい。地方の中小販売店が多く、買収で集約する余地はあるが、買い手は大手も含めて多い。
医療・産業ガスは、供給先の病院や在宅患者から見て、止められない生活インフラに近い。高齢化で在宅酸素の患者は増えるが、診療報酬は公定価格で、物価ほどには上がらない。機器のレンタルは設備投資が先行し、償却が重くなる。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値が5.4%、2026年3月期は6.0%。自己資本が毎年積み上がる一方、利益は横ばいに近い。自己資本比率は69%と厚く、安全性は高いが、資本を回す力は弱い。
経営は保守的で、配当性向は2割台。記念配当や特別配当を出す余地を残すが、自社株買いの実績は見当たらない。従業員は連結676名で、労働組合はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の周りの市場は、二つの顔を持つ。
LPガスの国内需要は、構造的に縮んでいる。家庭用はオール電化と省エネ機器で減り、業務用・自動車用も弱い。年間の需要は1,200万トンを割り込み、実質で年1.6%前後の減少が続く。LPガスは地方ほど利用率が高く、人口減の影響も大きい。値段は輸入価格(CP)と原油に連動し、10年で物価並みに上がるが、小売りの利幅は競争と規制で伸びにくい。
業界は再編が進む。大手の岩谷産業、伊藤忠エネクスなどが中小の販売店を買う。大丸エナウィンも小さな買収を重ねてきた。
医療・産業ガスは、高齢化で伸びる。在宅酸素療法の患者は2040年ごろまで増える。ただ、診療報酬は2年ごとに見直され、機器レンタルの単価は下がりやすい。病院向けの医療ガスは、病床の減少で横ばい。産業ガスは、製造業の動きに連動する。
住宅設備は新築着工の減少で縮む。アクアは小さな市場で、10年を通じて大きく変わらない。
全体として、国内の需要は人口減で細り、伸びるのは在宅医療だけだ。国内の他社は、LPガスの縮みを新エネルギーで補おうとしているが、中小の販売店は選択肢が少ない。
資本政策と M&A
還元の方針は「安定的な配当の継続」だ。2026年3月期の配当は総額約2億円で、配当性向は2割台。業績に応じて記念配当や特別配当を出す。自社株買いの実績は見当たらない。
資本の使い方は、設備投資が中心だ。2026年3月期は26億円を投じ、営業利益の2年分に近い。そのため、純現金は2015年3月期の40億円から約20億円まで減った。これは、投資に回したためで、無駄に積んでいるのではない。
保有株は、上場131銘柄で約11億円。新コスモス電機(約5億円)、ミツウロコグループ(約3億円)などで、取引関係の維持が目的だ。配当収入は利益に入っているので、価値として別には足さない。
M&Aは、クサネン(滋賀)と岩崎工業所の取り込みが最近の例だ。小規模の買収を続けており、大型の買収は見えない。
親会社はない。TOBの動きも出ていない。株主優待はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大丸エナウィンは、LPガスの会社に見えて、実は医療インフラの会社に変わりつつある。在宅医療の売上は2026年3月期に20%伸び、48億円に達した。高齢化で在宅酸素の患者は2040年ごろまで増える。一度機器を貸せば、保守と更新で長く稼げる。
LPガスも手堅い。生活の必需品で、保安の点検を担う会社は顧客が切り替えにくい。業界は再編が進み、クサネンなどの買収で数量の減少を補ってきた。
財務は鉄壁だ。自己資本比率は約70%で、純現金が約20億円ある。上場株も11億円持つ。営業利益は13億円と、過去10年で最高だ。
在宅医療の機器は一度貸せば保守と更新が続くため、収益が積み上がる形になる。
配当性向は2割台と低く、増配の余地が大きい。配当を3割に上げるだけで、10年で10億円の上乗せになる。医療が伸び、還元が強まれば、時価総額120億円は安い。
小さな会社なので、同業の大手が買う動きも出やすい。kabufuのモデルでも、10年内のTOBの確率は約21%と出ている。買収されれば、純現金と保有株の価値が価格に表れる。
慎重な見方
稼ぎの6割がLPガスという事実は変わらない。国内のLPガス需要は年1.6%減り、10年で1〜2割縮む。小売りの利幅は料金規制で削られ、買収で数量を補えば資本の効率は落ちる。
在宅医療は伸びているが、公定の診療報酬は2年ごとに見直され、物価に届かない。患者が増えても、単価が下がれば利益率は上がらない。2026年3月期の医療・産業ガス全体の営業利益率は5.3%と、LPガスよりわずかに高いだけだ。
設備投資は営業利益の2年分で、更新費は建築費の高騰でさらに膨らむ。純現金は2015年の40億円から半減した。自己資本が積み上がっても、ROEは5〜6%にとどまり、資本コストを下回る。
自社株買いの実績もなく、株主の取り分は薄い。純現金や保有株も、経営の判断で使い道が決まる。
10年の稼ぐ力で測れば、今の値段は先取りしすぎだ。
高齢化が進んでも、診療報酬を決めるのは国の財政だ。医療費を抑える圧力は、10年の間に強まることはあっても弱まることは考えにくい。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと財務の安全については強気の言い分が正しい。ただ、10年の価値を決めるのは、LPガスの縮みと診療報酬の引き下げをどこまで医療の伸びが補えるかで、そこでは慎重な見方に重みがある。確率は中立を最大に、悲観の側を3割半とした。純現金の戻り方は0.5にとどめた。慎重な見方を織り込むと、今の値段を下回る結果になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,092 円161 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 304 円23 億円)。 今の値に割り戻すと 1,227 円94 億円、今との差 −21.4%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,093 円238 億円 | 455 円35 億円 | +127.4% | +8.6% | 248 円19 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,763 円213 億円 | 390 円30 億円 | +102.1% | +7.3% | 631 円49 億円 |
| 中立 | 38% | 2,506 円193 億円 | 338 円26 億円 | +82.3% | +6.2% | 1,081 円83 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,313 円101 億円 | 221 円17 億円 | −1.7% | −0.2% | 384 円30 億円 |
| 悲観 | 10% | 421 円32 億円 | 104 円8 億円 | −66.4% | −10.3% | 52 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,092 円161 億円 | 304 円23 億円 | +53.6% | +4.4% | 2,396 円184 億円 |
今の株価時価総額 1,560 円120 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 在宅医療が大きく伸び、LPガスの買収も進む 利益 17 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,093 円238 億円
筆者が描く上振れは、在宅医療が主役になる姿だ。高齢化で患者数が1.7倍に増え、新しい機器の貸出も広がる。診療報酬の引き下げが緩やかで、単価は物価の9割ほどまで上がる。利益率は6%に乗る。
LPガスは、中小販売店の買収が続き、数量の減少が5%にとどまる。小売りの利幅は規制の中でも保たれる。
医療ガスと産業ガスは、病院と工場の取引先を増やす。営業利益は20億円近くまで増え、純利益は15億円に届く。
還元は厚くなり、配当性向を引き上げて10年で35億円を返す。純現金も株主に戻る。筆者が描く上振れの条件は多いが、どれも会社の方向性に沿う。
- LPガス(小売・卸):数量 85.5(LPガスの販売量(千トン、推定))× 価格 28(平均単価(万円/トン、小売と卸の平均、推定))→ 売上 241 億円・営業利益 9 億円。買収で数量減を5%に抑える
- 住宅設備:数量 2,750(工事・販売件数(件、推定))× 価格 163(1件あたり売上(万円、推定))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。物価並み
- アクア(飲料水):数量 84.0(配送本数(万本、推定))× 価格 2,393(1本あたり売上(円、推定))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。契約増
- 在宅医療:数量 22,400(在宅の患者数(人、推定))× 価格 45(患者1人あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 101 億円・営業利益 6 億円。患者数1.7倍・単価は物価の9割
- 医療ガス・産業ガス:数量 6,900(納入先の数(件、推定))× 価格 94(1件あたり年間売上(万円、推定))→ 売上 65 億円・営業利益 4 億円。取引先増
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 228 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:在宅医療が高齢化の追い風を最大限に受け、診療報酬も下げ止まり、LPガスの買収が数量減を埋める必要がある。三つが揃うのは1割未満。
やや楽観 20% 在宅医療が堅調で、LPガスの縮みが緩やか 利益 14 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,763 円213 億円
在宅医療は患者数が1.45倍に増え、単価は物価の8割ほどまで上がる。利益率は5.5%。
LPガスは数量が12%減るが、買収で一部を埋める。小売りの利幅は3.5%に保たれる。
医療ガスと産業ガスは1割増える。住宅設備は新築の減少で小さく縮む。営業利益は17億円台、純利益は13億円近く。
配当性向は2割台から3割へ引き上げ、10年で30億円を返す。自社株買いは小さい。純現金は設備投資に使われ、積み上がる分は少ない。
LPガスの縮みを在宅医療が上回る形が、この筋書きの核だ。会社が進めている医療事業の強化が、そのまま数字に出る。
- LPガス(小売・卸):数量 79.2(LPガスの販売量(千トン、推定))× 価格 28(平均単価(万円/トン、小売と卸の平均、推定))→ 売上 222 億円・営業利益 8 億円。数量12%減・買収で一部補う
- 住宅設備:数量 2,610(工事・販売件数(件、推定))× 価格 163(1件あたり売上(万円、推定))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。新築減
- アクア(飲料水):数量 70.0(配送本数(万本、推定))× 価格 2,393(1本あたり売上(円、推定))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 在宅医療:数量 19,100(在宅の患者数(人、推定))× 価格 41(患者1人あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 79 億円・営業利益 4 億円。患者数1.45倍
- 医療ガス・産業ガス:数量 6,300(納入先の数(件、推定))× 価格 94(1件あたり年間売上(万円、推定))→ 売上 59 億円・営業利益 3 億円。横ばい〜微増
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 191 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高齢化は確実で、在宅酸素の需要が伸びる。LPガスの買収も続く。上振れの中で最も起こりやすいので2割。
中立 38% LPガスは縮み、在宅医療が補う。全社は物価並みに伸びる 利益 12 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,506 円193 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、「LPガスの縮みを在宅医療が補う」姿だ。LPガスの数量は10年で16%減る。単価は物価の9割ほどの上がりにとどまり、小売りの利幅は3.2%まで細る。
在宅医療は患者数が1.35倍。診療報酬が物価ほど上がらず、単価は1.15倍にとどまるので、利益率は今の5.3%を保つのがやっとだ。
医療ガスと産業ガスは取引先が5%増え、物価並みに値上げする。住宅設備は新築の減少で数量が1割減る。
営業利益は15億円台、純利益は12億円。設備の償却は取得時の値段のままだが、新規の設備投資は建築費の高騰で膨らむ。
配当性向は2割台を保ち、10年で26億円。純現金は設備投資に使われ、積み上がらない。
- LPガス(小売・卸):数量 75.6(LPガスの販売量(千トン、推定))× 価格 27(平均単価(万円/トン、小売と卸の平均、推定))→ 売上 207 億円・営業利益 7 億円。数量16%減・単価は物価の9割
- 住宅設備:数量 2,610(工事・販売件数(件、推定))× 価格 163(1件あたり売上(万円、推定))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。新築減
- アクア(飲料水):数量 70.0(配送本数(万本、推定))× 価格 2,393(1本あたり売上(円、推定))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 在宅医療:数量 17,800(在宅の患者数(人、推定))× 価格 41(患者1人あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。患者数1.35倍・単価は報酬改定で1.15倍
- 医療ガス・産業ガス:数量 6,300(納入先の数(件、推定))× 価格 94(1件あたり年間売上(万円、推定))→ 売上 59 億円・営業利益 3 億円。取引先5%増
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 168 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:LPガスの縮みは業界の見通しに沿い、在宅医療の伸びも高齢化の統計に沿う。両方が見通しどおりに進む姿が最も自然。4割弱。
やや悲観 25% LPガスの縮みが速く、診療報酬の引き下げが続く 利益 8 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,313 円101 億円
LPガスの数量は10年で22%減り、小売りの利幅は料金規制の強化で2.7%まで落ちる。買収も高値づかみを避けて進まない。
在宅医療は患者数が1.15倍にとどまり、診療報酬の引き下げで単価は据え置きに近い。利益率は3.8%に下がる。
住宅設備は新築の減少で2割縮む。営業利益は9億円台、純利益は7億円台。
配当性向は2割台を保つが利益が減るため、10年の還元は17億円。設備投資は続けるので、純現金は減る。
この筋書きでは、医療の伸びがLPガスの縮みを埋めきれず、全社の営業利益は今より小さくなる。配当は守られるが、増配の余地はなくなる。
- LPガス(小売・卸):数量 70.2(LPガスの販売量(千トン、推定))× 価格 26(平均単価(万円/トン、小売と卸の平均、推定))→ 売上 185 億円・営業利益 5 億円。数量22%減・利幅が縮む
- 住宅設備:数量 2,320(工事・販売件数(件、推定))× 価格 158(1件あたり売上(万円、推定))→ 売上 37 億円・営業利益 1 億円。新築減
- アクア(飲料水):数量 63.0(配送本数(万本、推定))× 価格 2,322(1本あたり売上(円、推定))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。競争
- 在宅医療:数量 15,200(在宅の患者数(人、推定))× 価格 36(患者1人あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。単価据え置き
- 医療ガス・産業ガス:数量 6,000(納入先の数(件、推定))× 価格 88(1件あたり年間売上(万円、推定))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。伸びず
倍率:ROEは約3.4%と資本コストを大きく下回る。上限12.9倍の約6.6割、8.5倍に置く。縮む事業が多く、利益の質が低い。余った現金は0.75倍に減ると見て数える。
確率:LPガスの電化は想定より速く進みうる。診療報酬も2年ごとに見直され、下がる年が続くことは珍しくない。両方の悪化は4分の1。
悲観 10% オール電化が加速し、診療報酬も大きく下がる 利益 4 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 421 円32 億円
LPガスは電化と人口減で数量が35%減る。料金規制の強化で利幅は1.8%にとどまり、小売りはほぼ稼げない。
在宅医療は診療報酬が大幅に下がり、単価が15%減る。利益率は1.5%まで落ちる。医療ガス・産業ガスも価格競争を受ける。
営業利益は5億円台、純利益は4億円台。もう優良な事業ではなくなる。
会社は清算されないので、少数株主は現金の使い道を決められない。床は純現金と上場株の税後の手取りに、戻り方をかけた額とみる。
10年を通じて、設備の更新費が現金を食い、純現金は半分以下に減る。在宅医療の機器は、技術の更新ごとに買い替えが要り、貸出の収益より先に現金が出ていく。
- LPガス(小売・卸):数量 58.5(LPガスの販売量(千トン、推定))× 価格 24(平均単価(万円/トン、小売と卸の平均、推定))→ 売上 142 億円・営業利益 3 億円。数量35%減
- 住宅設備:数量 2,300(工事・販売件数(件、推定))× 価格 146(1件あたり売上(万円、推定))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。新築が大きく減る
- アクア(飲料水):数量 56.0(配送本数(万本、推定))× 価格 2,143(1本あたり売上(円、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。競争
- 在宅医療:数量 13,200(在宅の患者数(人、推定))× 価格 31(患者1人あたりの年間売上(万円、推定))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。診療報酬が大幅に下がる
- 医療ガス・産業ガス:数量 5,100(納入先の数(件、推定))× 価格 81(1件あたり年間売上(万円、推定))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。価格競争
倍率:ROEは約2%。稼ぐ力はあるが小さい。上限12.9倍の約6割、7.5倍に置く。余った現金は0.5倍に減ると見て数える。
確率:LPガスの需要が3割以上減り、診療報酬も大幅に下がる深い筋書き。ただし、全国で急減した例は少なく、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
LPガス(小売・卸)
家庭・業務用のLPガスの小売(ぽっぽガス)と、販売店などへの卸(エネルギー部門)。保安の点検を担う。
| 数量LPガスの販売量(千トン、推定) | 価格平均単価(万円/トン、小売と卸の平均、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 21 | 190 | 7 |
| 10 年後 中立 | 75.6 | 27 | 207 | 7 |
取り方:2026年3月期のリビング事業のうちぽっぽガス60.0億円とエネルギー129.5億円の合計。販売量は開示がないため、小売(高単価)と卸(低単価)を混ぜた平均単価を1トン約21万円とみて割り戻した推定。営業利益はリビング全体の7.75億円から住宅設備の推定1.05億円を引いた6.7億円。
住宅設備
給湯器・住宅設備機器の販売と工事。
| 数量工事・販売件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,900 | 121 | 35 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,610 | 163 | 43 | 1 |
取り方:2026年3月期の売上35.2億円。件数は開示がなく、1件約120万円で割り戻した推定。営業利益1.05億円は、リビング事業の利益のうち住宅設備に3%の利益率を当てた推定。
アクア(飲料水)
飲料水の宅配とウォーターサーバーの提供。
| 数量配送本数(万本、推定) | 価格1本あたり売上(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 1,786 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 2,393 | 17 | 1 |
取り方:2026年3月期の売上12.54億円、セグメント利益0.51億円。本数は開示がなく、1本約1.8千円で割り戻した推定。
在宅医療
在宅酸素などの医療機器を患者に貸し出し、保守する。
| 数量在宅の患者数(人、推定) | 価格患者1人あたりの年間売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13,200 | 36 | 48 | 3 |
| 10 年後 中立 | 17,800 | 41 | 74 | 4 |
取り方:2026年3月期の在宅医療の売上47.54億円(前期比+8.0億円)。患者数は開示がなく、1人あたり年36万円で割り戻した推定。価格は公定の診療報酬で決まり、物価に連動しないため、中立でも物価(1.34倍)より低く置く。営業利益2.5億円は、医療・産業ガス事業の利益4.73億円のうち、在宅医療に5%の利益率を当てた推定。
医療ガス・産業ガス
病院へ酸素など医療ガスを、工場へ高圧ガスと機材を納める。
| 数量納入先の数(件、推定) | 価格1件あたり年間売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 70 | 42 | 2 |
| 10 年後 中立 | 6,300 | 94 | 59 | 3 |
取り方:2026年3月期の医療ガス17.50億円と産業ガス・機材24.59億円の合計。納入先は開示がなく、1件年約70万円で割り戻した推定。営業利益は医療・産業ガス事業の4.73億円から在宅医療分を引いた2.23億円。
リスクと懸念
LPガス需要の構造的な縮小
LPガスは売上の約6割を占める。オール電化と人口減で国内需要が年1.6%前後のペースで細るなか、会社の数量も同じ道をたどる。買収で埋めても、高値づかみになれば資本の効率が落ちる。
LPガス小売りの規制と利幅
料金の透明化や過大な営業行為の規制が続き、小売りの利幅は縮みやすい。家庭用LPガスは売上の2割程度で、規制強化の影響が出やすい。
診療報酬の引き下げ
在宅医療の機器レンタルは公定の診療報酬で値段が決まる。2年ごとの改定で単価が下がれば、売上が増えても利益率は上がらない。患者数が増える分を、単価の低下が食う恐れがある。
設備投資の重さ
2026年3月期の設備投資は26億円と営業利益の2年分。貯槽や配管、在宅医療機器は更新に金がかかり、建築費の上昇で膨らむ。減価償却は取得時の値段のままだが、更新の投資は膨らむので、現金が細る。
純現金が株主に戻らない可能性
自社株買いの実績がなく、配当性向も2割台。純現金は設備投資に使われ、株主に戻る分は小さい。
小さな会社の規模
売上327億円で、従業員は676名。保安事故や医療機器の不具合など、1件の事故が信頼を傷つけるリスクがある。AIエージェントによる代替は、現場の配送と保守が中心なので限られる。
今後の分かれ目
- 診療報酬の改定で在宅酸素の単価が大きく下がる
- 在宅医療の利益率の中立を下げ、やや悲観の側に確率を寄せる。
- LPガスの販売量の減少が年2%を超える
- 数量の置き方を見直し、やや悲観の側に確率を寄せる。
- 在宅医療の売上が前期比で15%以上伸び続ける
- 患者数の置き方を上げ、強気の側に寄せる。
- 配当性向が3割を超える、または自社株買いを始める
- 純現金の戻り方を0.75へ見直し、余った現金の価値を上げる。
- LPガスの中堅・中小を買収するニュースが出る
- 買収価格が営業利益の何倍かを見て、資本の効率が上がるか下がるかを判断する。
- 他社によるTOBや提携の話が出る
- 純現金と保有株、医療事業の価値が価格に織り込まれるかを本質価値と比べる。
見ておくもの
- 在宅医療の売上と診療報酬の改定
- LPガスの販売量と小売りの利幅
- 配当性向と自社株買い
- 設備投資の額と純現金
- 買収の価格と対象
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト7.5%を下回るため、式の上限(1÷k=12.9倍)の8割に置いた。今の株価も同業のPERも見ていない。同じ領域の会社(カメイ・三愛オブリなど)の中立のPERは10〜12倍で、並べて矛盾はないと確かめたが、倍率の根拠にはしていない。上場株式は配当が利益に入っているので足さず、現金だけを戻り方0.5で数えた。新リース会計基準で営業利益が少し増え純負債が増える点は、10年後も今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.33 倍・やや楽観 PER 11→13.33 倍・中立 PER 10→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。