結論
クワザワホールディングスは、北海道で建材を売り、工事も手がける 1933 年創業の商社だ。筆者の結論は「やや割高、ほぼ適正」である。稼ぎは薄いが、時価総額の 67%にあたる現金があり、事業をほぼ現金の値段で買える会社だ。
中身は地味である。2026 年 3 月期の売上は 648 億円、営業利益は 14 億円と、売上の 2%しか残らない。建材の販売、工事、運送、不動産賃貸の 4 本柱で、どれも北海道の建設需要に結びつく。住宅の着工は減るが、千歳の半導体工場、札幌の再開発、北海道新幹線の延伸が下支えする。
筆者がいちばん気にしているのは、現金の戻り方だ。配当は 2 年続けて上がり、会社予想はさらに増配だが、自社株買いはなく、現金は積み上がる一方だ。事業の価値は需要の細りを織り込み、現金は一部だけを数えた。それでも今の値段と近い数字になる。筆者は、安い会社を探すより、現金を株主へ戻す会社を探す。この会社はその手前にいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ちたいか。筆者の答えは「事業は地味で、利益は薄い。ただ、現金が厚く、値段が見合うなら持てる」だ。
事業は 90 年続いた必需の商売だ。北海道の建設が続く限り、なくならない。利益率が薄いのは欠点だが、設備投資が軽く、現金が出る構造は悪くない。
資本の使い方は評価が分かれる。配当は上がっているが、積み上がる現金を持て余している。この現金が株主に戻れば、時価総額の半分以上の価値がある。逆に戻らなければ、事業の稼ぎだけで評価することになる。
安全域でいうと、悲観の筋書きでも現金と政策保有株が下値を支える。割高になる形は考えにくい。ただし、成長が見込めない事業に高い値は払わない。筆者は、現金の一部だけを数え、事業は需要の細りを織り込んで置く。それでも今の値段と近い。
何で稼ぐ会社か
クワザワホールディングスは、持株会社の下に 17 の連結子会社を持つ。主な稼ぎは 4 つある。
一つ目は建設資材だ。売上 349 億円で全体の 54%を占める。建材メーカー 1,000 社超から仕入れ、ハウスメーカー、ゼネコン、工務店、建材店へ売る。製造・加工の子会社も持ち、利益率は 1.9%。
二つ目は建設工事で、売上は 257 億円、利益率は 1.8%。商社の強みを活かし、材料を手配して工事まで請け負う。北海道の大型物件の増減で、売上が動く。
三つ目は資材運送。売上 35 億円で、冬期の需要と人手不足に悩み、利益は赤字だ。
四つ目は不動産賃貸で、売上は 3 億円ほどだが、営業利益は 2 億円を稼ぐ。利益率が高く、全体の下支えになる。
従業員は連結で 1,009 人。北海道に基盤が集中し、季節変動が大きい。冬は工事と物流が止まり、春から秋にかけて売上が動く。基幹システムの更新に 16 億円を投じており、2027 年 7 月に完了する予定だ。店舗を持たない卸なので、設備は倉庫と事務所が中心で、設備投資は年 2 億円ほどと軽い。
優良さと弱いところ
強みは、北海道での取扱量の多さと、長い取引関係だ。メーカー 1,000 社超の窓口になり、地域の工務店や建材店へ細かく配送する網を持つ。これは北海道という広い地域で、他社が簡単にまねできない。大株主には、太平洋セメント、吉野石膏、LIXIL といった主要メーカーが並び、仕入れの安定に役立つ。
ただし、堀と呼べるほど深くはない。粗利は薄く、価格決定力は弱い。メーカーの直販やネット通販も脅威になりうる。
収益性は低い。営業利益率は 10 年で 1%台から 2%に上がっただけで、ROE は 4〜6%。資本コストに届かない。自己資本比率は 39%だが、実際は仕入先への支払いの猶予で現金が膨らんだ形で、見かけほど強くはない。
経営は守りだ。政策保有株を 150 銘柄ほど持ち、縮減の方針を掲げるが、規模はまだ大きい。配当は増やしているが、株主の取り分は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建材商社の需要は、住宅と非住宅の着工で決まる。北海道では人口減が早く、新設住宅の着工は長く下がってきた。2026 年 3 月期も、住宅市場の低迷で建設資材は小幅な増収にとどまり、建設工事は大型物件の減少で 4.7%減った。
ただ、北海道には他の地域にない追い風が3つある。千歳市でのラピダスの半導体工場とその周辺の物流施設、札幌の再開発、北海道新幹線の札幌延伸のトンネル工事だ。ラピダス関連は地元の建設会社への発注比率が低いとの指摘もあるが、資材の調達や運送の需要は確実に広がる。
構造的な課題は、新築の減少、職人の高齢化、物流費の上昇だ。2024 年問題で運送費が上がり、資材運送の部門は赤字に沈んでいる。
価格は、合板や鋼材、セメントの相場と人件費に連動する。物価が年 3%で続く世界では、売価の上昇は避けられないが、仕入先の値上げが先行し、利益率を削る時期がある。競合は、地場の建材商社と、全国チェーンのホームセンター・住設の流通網だ。再編と M&A で大手が地場を束ねる動きが続く。北海道では、道内の需要が小さい分、全国大手の進出より地場の商社の結びつきが強いという特徴がある。
資本政策と M&A
資本の使い方は、株主にも優しくなり始めたが、まだ遠慮がある。
2026 年 3 月期の配当は前の期から 4 割以上増え、総額は 3.8 億円で純利益の 36%だった。2027 年 3 月期はさらに増配を予想する。ただ、自社株買いはなく、現金は 93 億円まで積み上がった。
政策保有株は 137 銘柄を持つ会社がある。取締役会が毎年検証し、縮減する方針だが、実際の売却額は小さい。基幹システムの更新に 16 億円、DX の専任部署の設置と、投資は内向きで、買収の公表案件は見当たらない。課題の一つに M&A を挙げているが、実績はまだない。
大株主は太平洋セメント(18%)、創業家系の桑澤商事(9%)、吉野石膏(5%)。安定株主が多く、市場からの圧力は弱い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額の 67%が現金だ。営業利益 14 億円を稼ぐ事業が、実質で時価総額の 3 分の 1 の値段で手に入る。配当は 2 年続けて上がり、27 年 3 月期も増配の予想だ。経常利益は 6%増の 18 億円を見込み、第 1 四半期も 5 割増と順調に滑り出した。
北海道には他の地域にない追い風がある。千歳の半導体工場とその周辺の物流施設、札幌の再開発、北海道新幹線の延伸だ。建設資材と工事、運送を一社で手がける商社は、資材の手配から施工まで一括で請け負え、大型物件で強い。
政策保有株の縮減と基幹システムの更新が進めば、効率が上がる。安定株主が多く、完全子会社化や自社株買いの可能性も残る。現金の戻り方が少しでも増えれば、評価は大きく変わる。営業利益率が 2%台を保つだけでも、利益は今より増える。実際に、最近の経常利益の増益と増配は、経営が株主の目を意識し始めた兆しだ。賃貸不動産は売上の 1%に満たないのに営業利益の 2 割近くを稼ぎ、事業全体の下支えにもなる。
慎重な見方
利益が薄すぎる。営業利益率は 2%で、売上が 3%落ちるだけで利益は半分になる。住宅の着工は北海道で長く下がり続け、人口減はさらに進む。ラピダス関連の工事は、地元の建設会社への発注比率が低いとの指摘もある。
現金は魅力でも、株主に戻る保証がない。配当は純利益の 36%で、自社株買いはなく、現金は 10 年で 4 倍近くに積み上がった。買収も実績がない。資本効率を高める道筋が見えない会社に、現金の山の価値を認めるわけにはいかない。現金は、仕入先への支払いの猶予で膨らんだ部分もあり、自由に使えるとは限らない。
運送部門は赤字で、2024 年問題で人手と運賃の上昇が続く。メーカーの直販やネット通販も脅威になる。今の純利益は政策保有株の売却益などで底上げされ、実力は小さい。事業の ROE は資本コストに届かず、ためた利益の価値は額面を下回る。しかも現金の一部は、仕入先への支払い期間の長さで生じたもので、利益の積み上がりではない。
どちらに重みを置いたか
強気と慎重はほぼ互角で、わずかに慎重が強い。現金の厚みは本物だが、事業の稼ぎは薄く、現金の戻り方も限られる。中立に 4 割弱、やや悲観に 3 割弱を置き、楽観は 6%に抑えた。悲観は 12%と厚めに置いたが、現金と保有株が下値を支えるため、沈みは浅い。北海道で最も古い建材商社の一つで、信用力は高く、取引が急に途切れることは考えにくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,271 円188 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 308 円46 億円)。 今の値に割り戻すと 831 円123 億円、今との差 +10.0%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,387 円353 億円 | 541 円80 億円 | +287.8% | +14.5% | 176 円26 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,889 円279 億円 | 419 円62 億円 | +205.7% | +11.8% | 392 円58 億円 |
| 中立 | 38% | 1,516 円224 億円 | 338 円50 億円 | +145.5% | +9.4% | 704 円104 億円 |
| やや悲観 | 27% | 698 円103 億円 | 243 円36 億円 | +24.7% | +2.2% | 254 円38 億円 |
| 悲観 | 12% | 349 円52 億円 | 81 円12 億円 | −43.1% | −5.5% | 52 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,271 円188 億円 | 308 円46 億円 | +109.0% | +7.7% | 1,578 円233 億円 |
今の株価時価総額 755 円112 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 千歳・札幌・新幹線の需要を取り込み、利益率が 2.5%に乗る 利益 20 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 2,387 円353 億円
千歳の半導体工場とその周辺の物流施設、札幌の再開発、北海道新幹線の札幌延伸のトンネル工事が、資材と工事の需要を押し上げる。建設工事は大型物件が続き、工事量は今の 1.08 倍になる。資材の取扱量も、住宅の減少を非住宅が補って横ばいを保つ。
運賃の転嫁が進み、運送部門は黒字化する。基幹システムの更新で効率が上がり、営業利益率は 3%近くまで上がる。
配当性向も上がり、自社株買いも始まる。現金の戻りが見えて、市場の評価が変わる。ただ、10 年のあいだに需要の谷が来ない保証はなく、ここまでそろうのは強気の側の最上位である。
- 建設資材(製造・加工を含む):数量 100(取扱量の指数(2026/03 を 100))× 価格 4.82(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 482 億円・営業利益 13 億円。取扱量 100、売価 1.38 倍、営業利益率 2.6%
- 建設工事:数量 108(工事量の指数(2026/03 を 100))× 価格 3.60(工事量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 389 億円・営業利益 9 億円。工事量 108、単価 1.40 倍、営業利益率 2.4%
- 資材運送:数量 100(輸送量の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.51(輸送量 100 あたりの売上(億円)。運賃の上昇を含む)→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。輸送量 100、運賃 1.45 倍、営業利益率 1.0%
- 不動産賃貸・その他:数量 100(賃貸面積等の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.07(指数 100 あたりの売上(億円)。賃料の上昇を含む)→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。賃貸 100、賃料 1.20 倍、利益率 40%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 15.88 倍、時価総額 343 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体工場、札幌の再開発、北海道新幹線の延伸が重なり、物流の赤字も解消する形。北海道の人口減の逆風を、非住宅で補いきる必要がある。
やや楽観 17% 非住宅の追い風で取扱量が保たれ、利益率は 2.3% 利益 16 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 1,889 円279 億円
非住宅の需要が住宅の減少を補い、資材の取扱量は今の 0.96 倍にとどまる。建設工事は大型物件の波がありながら横ばいを保ち、単価は物価並みに上がる。
運送は運賃の転嫁で赤字を脱し、営業利益率は 2.1%まで戻る。過去 10 年の最高 2.2%に近い水準だ。配当は純利益の 4 割に乗り、増配が続く。
政策保有株の縮減で現金がさらに積み上がるが、戻り方はわずかに改善する程度にとどまる。基幹システムの更新で受発注の効率が上がり、人手不足を一部補う。大株主との取引関係も安定し、仕入れ条件は悪化しない。物価が年 3%で続く世界でも、売価の上昇は仕入価格と人件費の上昇で打ち消され、利益率は大きく動かない。
- 建設資材(製造・加工を含む):数量 96.0(取扱量の指数(2026/03 を 100))× 価格 4.72(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 453 億円・営業利益 10 億円。取扱量 96、売価 1.35 倍、営業利益率 2.3%
- 建設工事:数量 100(工事量の指数(2026/03 を 100))× 価格 3.52(工事量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 352 億円・営業利益 7 億円。工事量 100、単価 1.37 倍、営業利益率 2.1%
- 資材運送:数量 98.0(輸送量の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.50(輸送量 100 あたりの売上(億円)。運賃の上昇を含む)→ 売上 49 億円・営業利益 0 億円。輸送量 98、運賃 1.42 倍、営業利益率 0.6%
- 不動産賃貸・その他:数量 100(賃貸面積等の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.07(指数 100 あたりの売上(億円)。賃料の上昇を含む)→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。賃貸 100、賃料 1.20 倍、利益率 40%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 14.71 倍、時価総額 263 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期予想の増収増益、第 1 四半期の経常利益 5 割増、配当の連続増配という実績がある。非住宅の追い風は具体的で、住宅の減少を補える。
中立 38% 住宅の減少を非住宅が補い、取扱量は 1 割減、利益率は 2% 利益 13 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 1,516 円224 億円
北海道の新築住宅は人口減で細り、資材の取扱量は 10 年で今の 0.92 倍に縮む。建設工事は大型物件の波があるが、非住宅と更新工事に支えられ、0.95 倍にとどまる。価格は物価並みを基本とし、資材は 1.32 倍、工事は 1.34 倍、運送は運賃の転嫁で 1.40 倍になる。
営業利益率は 2.1%。過去の最高水準に近いが、仕入先の値上げが先行する年が毎年のように出るため、上は望みにくい。運送は赤字を脱して収支がとんとんになる。
償却は取得原価のままだが、基幹システムの更新と物流拠点の建て替えは建築費の上昇で膨らむ。配当は純利益の 3 分の 1 から 4 割を払い、現金は積み上がる。
- 建設資材(製造・加工を含む):数量 92.0(取扱量の指数(2026/03 を 100))× 価格 4.61(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 424 億円・営業利益 8 億円。取扱量 92、売価 1.32 倍、営業利益率 1.9%
- 建設工事:数量 95.0(工事量の指数(2026/03 を 100))× 価格 3.45(工事量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 328 億円・営業利益 6 億円。工事量 95、単価 1.34 倍、営業利益率 1.8%
- 資材運送:数量 95.0(輸送量の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.50(輸送量 100 あたりの売上(億円)。運賃の上昇を含む)→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円。輸送量 95、運賃 1.40 倍、営業利益率 0%
- 不動産賃貸・その他:数量 100(賃貸面積等の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.07(指数 100 あたりの売上(億円)。賃料の上昇を含む)→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。賃貸 100、賃料 1.15 倍、利益率 38%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 13.4 倍、時価総額 202 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の会社予想(営業利益 16.5 億円)は過去最高に近く、中立はそこから需要の細りを織り込んで置く。北海道の住宅の減少は構造的だが、非住宅の追い風がある。
やや悲観 27% 住宅の落ち込みと運送の赤字で、利益率は 1.4%に下がる 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 698 円103 億円
北海道の住宅着工が想定より速く減り、非住宅の追い風も一時的にとどまる。資材の取扱量は今の 0.85 倍、工事は 0.88 倍に縮む。仕入先の値上げを転嫁しきれず、売価は 1.28 倍にとどまる。
運送は人手不足と運賃の転嫁の遅れで赤字が続き、営業利益率は全体で 1.4%まで下がる。営業利益は 11 億円ほど。配当は純利益の 3 割強にとどまり、現金は谷で食われる。
基幹システム更新の費用が先行し、効果が出るのが遅れる。メーカー直販・通販に取扱量を奪われる動きも出る。工事の人手不足で受注を断る場面も増え、売上の伸びが抑えられる。
- 建設資材(製造・加工を含む):数量 85.0(取扱量の指数(2026/03 を 100))× 価格 4.47(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 380 億円・営業利益 6 億円。取扱量 85、売価 1.28 倍、営業利益率 1.5%
- 建設工事:数量 88.0(工事量の指数(2026/03 を 100))× 価格 3.29(工事量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 290 億円・営業利益 4 億円。工事量 88、単価 1.28 倍、営業利益率 1.4%
- 資材運送:数量 88.0(輸送量の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.46(輸送量 100 あたりの売上(億円)。運賃の上昇を含む)→ 売上 41 億円・営業利益 0 億円。輸送量 88、運賃 1.30 倍、営業利益率 -0.8%
- 不動産賃貸・その他:数量 95.0(賃貸面積等の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.07(指数 100 あたりの売上(億円)。賃料の上昇を含む)→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。賃貸 95、賃料 1.10 倍、利益率 35%
倍率:事業の純利益 7.8 億円、事業の自己資本約 191 億円で ROE 4.1%と、k 7.5%を大きく下回る。上限の 1÷k の 11.8 倍の約 64%(7.5 倍)に置く。余った現金は今の額の 0.75 倍(谷で食う分を引く)に戻り方 0.75 を掛けて足す。
確率:北海道の住宅着工の減少、仕入先の値上げ先行、運送の赤字は、足もとで実際に起きている逆風。利益率が過去平均の 1.3% に戻る形。
悲観 12% 住宅が崩れ、運送とともに縮み、買い手が消える 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 349 円52 億円
北海道の新築住宅が構造的に減り、資材の取扱量は今の 0.70 倍に落ちる。非住宅の追い風も続かず、工事は 0.72 倍。仕入先との価格交渉で売価は 1.22 倍にとどまる。
営業利益率は 0.4%で、運送の赤字が足を引っ張る。事業は利益をほぼ生まず、拠点の統合と減損が必要になる。配当は下限を割り、10 年の総還元は 12 億円に細る。
値打ちは稼ぐ力ではなく、現金と政策保有株、賃貸の不動産で測る。現金は谷の損失で細り、戻り方も限られる。運送は不採算の拠点を閉じ、外部の運送会社へ委託する形に変わる。賃貸不動産だけが利益を支える。
- 建設資材(製造・加工を含む):数量 70.0(取扱量の指数(2026/03 を 100))× 価格 4.26(取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む)→ 売上 298 億円・営業利益 2 億円。取扱量 70、売価 1.22 倍、営業利益率 0.5%
- 建設工事:数量 72.0(工事量の指数(2026/03 を 100))× 価格 3.09(工事量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む)→ 売上 222 億円・営業利益 1 億円。工事量 72、単価 1.20 倍、営業利益率 0.4%
- 資材運送:数量 75.0(輸送量の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.43(輸送量 100 あたりの売上(億円)。運賃の上昇を含む)→ 売上 32 億円・営業利益 −1 億円。輸送量 75、運賃 1.20 倍、営業利益率 -1.5%
- 不動産賃貸・その他:数量 90.0(賃貸面積等の指数(2026/03 を 100))× 価格 0.06(指数 100 あたりの売上(億円)。賃料の上昇を含む)→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。賃貸 90、賃料 1.05 倍、利益率 30%
倍率:稼ぐ力は事業の純利益 3 億円で、÷k でも 35 億円ほど。値打ちは純現金と売れる資産の税後。今の自己資本 172 億円への PBR 0.30 倍(約 52 億円)で見る。床の資産の内訳は floor_assets_why に書く。
確率:北海道の人口減が加速し、メーカー直販・通販が取扱量を奪う形。2009 年度に新設住宅が 3 割減った前例があり、十分起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設資材(製造・加工を含む)
メーカー 1,000 社超から建材を仕入れ、ハウスメーカー・工務店・建材店へ売る。製造・加工も一部持つ。
| 数量取扱量の指数(2026/03 を 100) | 価格取扱量 100 あたりの売上(億円)。売価の上昇を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 3.49 | 349 | 7 |
| 10 年後 中立 | 92.0 | 4.61 | 424 | 8 |
取り方:有価証券報告書のセグメント売上 349.26 億円とセグメント利益 6.73 億円。取扱量の開示はなく、今を 100 とした指数で置いた。
建設工事
材料を手配して工事まで請け負う。北海道の大型物件の増減で売上が動く。
| 数量工事量の指数(2026/03 を 100) | 価格工事量 100 あたりの売上(億円)。単価の上昇を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.57 | 257 | 5 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 3.45 | 328 | 6 |
取り方:有価証券報告書のセグメント売上 257.25 億円と利益 4.53 億円。工事量の開示はなく、今を 100 とした指数で置いた。
資材運送
建材の配送と運送を手がける。冬期の需要と人手不足で利益が出にくい。
| 数量輸送量の指数(2026/03 を 100) | 価格輸送量 100 あたりの売上(億円)。運賃の上昇を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.35 | 35 | 0 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 0.50 | 47 | 0 |
取り方:有価証券報告書のセグメント売上 35.46 億円と利益 -0.28 億円(赤字)。輸送量の開示はなく指数で置いた。
不動産賃貸・その他
賃貸不動産の賃料と、その他の小さな事業。利益率が高く全体の下支えになる。
| 数量賃貸面積等の指数(2026/03 を 100) | 価格指数 100 あたりの売上(億円)。賃料の上昇を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.06 | 6 | 3 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.07 | 7 | 3 |
取り方:有価証券報告書の不動産賃貸(売上 2.65 億円・利益 2.05 億円)とその他(売上 3.39 億円・利益 0.50 億円)の合計。
リスクと懸念
北海道の住宅着工の減少
人口減が全国より早く進み、新設住宅は長く減ってきた。建設資材の売上は住宅向けが中心で、着工が年 2%減るだけで取扱量が細る。非住宅の追い風が弱まれば、売上は一気に縮む。
利益率の薄さと仕入先の値上げ
営業利益率は 2%前後で、粗利も薄い。合板、鋼材、セメントの値上げが先に利益を削る年がある。物価が年 3%で続く世界では、転嫁の遅れが毎年の利益率を押し下げる。
運送部門の赤字
資材運送は売上 35 億円で、2026 年 3 月期は営業赤字だった。2024 年問題で運転手が足りず、運賃と人件費が上がっている。冬期の需要も振れ、この部門が足を引っ張り続ける恐れがある。
現金が株主に戻らない
現金は 93 億円と時価総額に近く、自社株買いはない。配当は増えたが、純利益の 3 分の 1 にとどまる。現金のうち、仕入先への支払いの猶予で膨らんだ分は、事業が縮むと逆に減る。
基幹システム更新と AI・通販の脅威
基幹システムの更新に約 16 億円を投じ、2027 年 7 月に完了する予定で、費用の先行と移行の失敗リスクがある。ネット通販やメーカー直販が伸びれば、商社の取扱量は縮む。AI による受発注の自動化は効率を上げるが、卸の存在意義も問われる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が 16.5 億円を超えたら
- 会社の予想を上回る着地で、やや楽観の確率を上げる。
- 運送部門の赤字が 2 年続いて広がったら
- 構造的な不採算で、撤退や減損が視野に入る。やや悲観の確率を上げる。
- 自社株買いや配当性向 50%などの方針が出たら
- 現金の戻り方を 0.75 から 1.0 に上げる材料になる。
- 住宅着工が北海道で前年比 1 割以上落ちたら
- 取扱量が細り、利益率が崩れる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 太平洋セメントなど大株主が持株を動かしたら
- 再編や完全子会社化の前触れかもしれない。発表があれば分析の対象から外れる。
見ておくもの
- 四半期のセグメント別営業利益
- 北海道の新設住宅着工と非住宅の着工床面積
- 運送部門の損益と運賃の転嫁
- 配当方針と自社株買いの有無
- 政策保有株の売却額
倍率と資本コストの決め方
今の株価からは置かず、4 つのセグメントを取扱量の指数 × 売上あたりの単価で積んだ。取扱量の開示はなく、売上から指数で置いた。倍率は事業の ROE と資本コストから正当化 PER を出し、中立は上限の 76%に置いた。余った現金は戻り方 0.75 を掛けて足した。リースは小さく、新リース会計基準の影響も小さい。10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→15.88 倍・やや楽観 PER 10→14.71 倍・中立 PER 9→13.4 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。