結論
丸文は 1844 年創業の電子商社だ。半導体を売るデバイス事業が売上の約 7 割、防衛・宇宙・通信機器を売るシステム事業が約 3 割を占める。筆者は、今の値段は本質価値をやや上回ると見る。持っている資本に対して、稼ぎが薄いからだ。
稼ぎの質を支えているのはシステム事業だ。売上は 3 割弱だが、営業利益の約半分を出している(筆者の推定)。防衛費の増額と人工衛星向けの高信頼部品が追い風になる。デバイス事業は営業利益率が 3% 前後の薄利で、為替と金利の振れが経常利益を大きく削る。2026 年 3 月期は営業利益が 78 億円あっても、純利益は 33 億円にとどまった。
2026 年 5 月、配当方針が改まった。連結配当性向 50% か DOE(株主資本配当率)3.5% の高い方が目安になる。株主に向き合う姿勢は本物だ。ただし配当を厚くしても、10 年後の ROE(自己資本利益率)は中立で 7% 台にとどまり、資本コストの 9% 台に届かない。届かない会社には、PER の上限がかかる。
中立の筋書きでは、売上は 10 年で 6 割増え、純利益は今のおよそ 1.8 倍になる。それでも、配当を足し戻した価値は今の時価総額を 2 割ほど下回る。半導体の好況は、国内の電機メーカーが相手の商社より、世界に網を持つ大手に先に回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くないが、安くもない」と映る。
事業の本質は、メーカーと顧客のあいだで在庫と信用を引き受ける仕事だ。売上が増えるほど、売掛金と在庫が増え、資本が要る。稼ぎに対して資本が重いので、利益を貯めても価値が伸びにくい。ROE が資本コストを下回る限り、貯めた利益は、貯めた額の価値に届かない。
堀は普通だ。アローとの関係やシステム事業の防衛・宇宙の顧客は評価できる。しかし、それだけで値決めの力は生まれない。
経営は、株主への姿勢を変えた。配当性向 50% の方針は、資本の使い道が少ない会社として筋が通る。ここは評価する。一方、為替差損で経常利益が大きく振れる点は、利益の質を落とす。
安全域は薄い。世界の半導体需要が伸び、システム事業が防衛費の増額に乗り、為替の振れも小さければ、価値は積み上がる。しかし中立の筋書きでも、価値は今の値段に届かない。払う値段に余裕がない。持ち続けたい会社かと問われれば、価格次第だ、と答える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は 3 本に分かれる。
デバイス事業は売上の約 7 割を占める。インフィニオンやアナログ・デバイセズなど海外メーカー、セイコーエプソンや旭化成エレクトロニクスなど国内メーカーの半導体を仕入れ、日本の大手電機メーカーに売る。用途は通信機器、民生機器、産業機器、自動車と広い。仕入れの多くはドル建てなので、円安が進むと負債の円換算額がふくらみ、為替差損が経常利益を削る。直近は、民生機器と自動車向けが伸び、産業機器向けは在庫調整で弱かった。代理人取引(仕入先の代わりに売るだけの取引)が減ったことで、粗利益率も下がっている。
システム事業は売上の約 3 割で、防衛・宇宙機器、通信機器、製造・検査装置、レーザー・光学部品を扱う。人工衛星向けの高信頼部品が伸びている。長年の顧客と築いた信頼が、そのまま参入障壁になる事業だ。
アントレプレナ事業は、ICT 通信、AI ロボット、ミリ波レーダーなどの新規商材を育てる部門で、売上は 26 億円にすぎない。損益はほぼゼロで、会社は将来の柱として育てる構えだ。
仕入先は 800 社以上、顧客は 3,000 社以上に及ぶ。数が多い分、一つの取引先の影響は小さい。
優良さと弱いところ
規模では上位に届かない。売上は 2,134 億円で、半導体商社最大手のマクニカの約 6 分の 1だ。加賀電子や東京エレクトロンデバイスと比べても小さい。仕入れ値を決めるのはメーカー側で、丸文に値決めの力は乏しい。営業利益率は 3 〜 5% の薄利で、2026 年 3 月期は 3.6% だった。
強みは二つある。一つは世界最大級の商社アロー・エレクトロニクスとの関係だ。1998 年にアジアの合弁会社を折半出資でつくり、アローは今も株主に名を連ねる。海外の拠点網を自前で持たなくてすむ。もう一つはシステム事業で、防衛・宇宙の基幹顧客との長い取引が、他社の入りにくい領域をつくっている。
弱みは資本の重さだ。ROE は過去 10 年の中央値が 5.3% で、2026 年 3 月期は 5.8%。会社自身も、株主資本コストの 6 〜 9% を下回ると認めている。純有利子負債は 245 億円と時価総額の半分近くあり、営業利益で支払利息を割ると 3.6 倍しかない。自己資本比率は 39% で、安全とはいえるが余裕は大きくない。売上の 10 年の年率は -2.7% で、国内の電機産業の縮小を映している。
筆者は、この会社を「堀は普通、資本効率は弱い」と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は、AI が主役の大きな追い風の中にある。世界半導体市場は AI 向けのロジックとメモリで急拡大し、WSTS(世界半導体市場統計)は見通しを上げ続けている。過去の 3〜4 年周期の好不況とは違う、構造的な拡大との見方が強い。ただ、周期そのものが消えたわけではない。2008 年や 2019 年、2022〜23 年のような急落は、また起こりうる。
追い風が、丸文にそのまま回るわけではない。AI 向けの先端ロジックやメモリは、TSMC やサムスン、SK ハイニックスと直接つながる大手が取る。丸文の顧客は国内の電機・自動車・産業機器メーカーが中心だ。国内の生産が海外へ移るほど、国内向けの需要は細る。アローとの合弁と海外拠点で補うのが丸文の道だ。
商社業界は再編が続く。リョーサンと菱洋エレクトロの統合、旧 UKC とバイテックのレスターへの統合が進み、メーカーも取扱商社を絞る。丸文は、絞り込みの対象に入らない努力を求められる側にいる。
一方、システム事業は別の風を受ける。防衛力の強化で国内の調達額が増え、衛星の打ち上げも増えている。2026 年 4〜6 月期は営業利益が前年の 2 倍を超え、産業機器向けの在庫調整にも底打ちの兆しが出た。足元の回復は本物だ。ただし、半導体全体の好況を丸文だけが取り切れるとは限らない。
資本政策と M&A
配当の方針転換が、いちばん大きな変化だ。2026 年 5 月に、連結配当性向 50% か DOE 3.5% の高い方を目安にすると改めた(旧方針は 40% か 2.5%)。2027 年 3 月期の配当は前の期から大幅に増える予定で、配当性向は約 50% になる。筆者は、資本効率が低いと自覚した経営が、還元で応えようとしたと受け止める。
一方で、自社株買いの実施は確認できていない。自己株は発行済みの 6.7% あり、役員報酬用の処分に回している。
株主は安定している。アロー・エレクトロニクスが約 8%、丸文財団が約 8%、創業家の関係先もある。売りに出る株は少なく、再編は動かしにくい。kabufu の推定では、10 年以内に買収される確率は約 18% だ。具体的な動きは確認できていない。
中期経営計画「丸文 Nextage 2027」は、2028 年 3 月期に売上 2,400 億円、経常利益 80 億円以上、ROE 9% 以上を掲げる。筆者は、売上は届いても、経常利益の 80 億円は為替の振れで外れる余地が大きいと見る。大型の買収の実績はなく、資本は配当と運転資金に使う会社だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
システム事業が、会社の質を変えつつある。防衛費は GDP 比 2% の目標に向けて増え、人工衛星やその地上設備向けの高信頼部品も増える。顧客は国や大手の防衛・宇宙メーカーで、一度入れば取引が長く続く。この事業は営業利益率が 6% を超え、全社の営業利益のほぼ半分を稼ぐ。
デバイス事業にも芽がある。民生機器と自動車向けの特定用途 IC が伸び、産業機器向けは在庫調整の底打ちが見え始めた。2026 年 4〜6 月期の営業利益は前年の 2 倍を超えている。AI データセンター向けにも取扱いを広げ、アローの海外網で拠点も増える。
株主還元の転換も効く。配当性向 50% の方針で、配当利回りは 4% を超える。自己資本は厚く、ROE の目標 9% は、システム事業の比率が上がれば手が届く。今は為替差損で経常利益が削られているが、円安が止まれば利益は一気に戻る。売上 2,400 億円、経常利益 80 億円の中計は、現実的な目標だ。
慎重な見方
稼ぎの質が低い。営業利益は 78 億円あるのに、純利益は 33 億円に減る。差を生むのは、為替差損と取引に係る金利だ。ドル建ての仕入れが多い商社は、円安のたびに利益を削られる。会社が為替を除いた利益を実力値として見せ始めたこと自体、振れの大きさを物語る。
資本の稼ぎも弱い。ROE は過去 10 年の中央値が 5% 台で、資本コストを大きく下回る。配当を増やしても、ROE が変わらなければ価値は増えない。むしろ、成長のための投資余力を削るだけだ。
国内の電機産業は縮み、売上は 10 年で年率 -2.7%。AI の恩恵は、TSMC やサムスンと直接つながるマクニカのような大手に先に回る。メーカーが取扱商社を絞れば、規模で劣る丸文は圧力を受ける。システム事業は優れているが、売上の 3 割弱にすぎず、デバイス事業の薄利を埋めきれない。
しかも、今の時価総額は谷の年の利益の 15 倍にあたる。回復と配当の増額を、すでにかなり織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、システム事業の質と配当方針の転換で、どちらも事実として裏づけがある。慎重な根拠は、資本に対する稼ぎの薄さと為替による利益の振れで、これも数字に表れている。
10 年で見ると、ROE が資本コストを超えにくいという構造の弱さが勝つ。そこで中立の確率は 35% に置き、悲観側(やや悲観と悲観)に 36%、楽観側に 29% を割った。システム事業の底堅さがあるので、構造的に負ける悲観は 12% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,454 円644 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,078 円283 億円)。 今の値に割り戻すと 1,829 円480 億円、今との差 −2.2%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,903 円1,287 億円 | 1,600 円420 億円 | +247.7% | +13.3% | 520 円137 億円 |
| やや楽観 | 21% | 3,554 円933 億円 | 1,280 円336 億円 | +158.5% | +10.0% | 1,015 円266 億円 |
| 中立 | 35% | 2,754 円723 億円 | 1,101 円289 億円 | +106.1% | +7.5% | 1,349 円354 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,085 円285 億円 | 891 円234 億円 | +5.7% | +0.6% | 474 円125 億円 |
| 悲観 | 12% | 762 円200 億円 | 686 円180 億円 | −22.6% | −2.5% | 174 円46 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,454 円644 億円 | 1,078 円283 億円 | +88.9% | +6.6% | 3,532 円927 億円 |
今の株価時価総額 1,870 円491 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% AI と防衛が重なり、国内商社の上位に残る 利益 95 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 4,903 円1,287 億円
AI、車載、産業の需要が長く続き、世界の半導体市場は大きく伸びる。丸文は自動車と AI データセンター周辺の取扱いを広げ、アローの海外網で拠点を増やす。国内の電機メーカーの海外移転を、海外でも追いかけて取り込める。デバイス事業の営業利益率は 4% を超える。
システム事業は、防衛費の増額と衛星需要で取扱いが 7 割近く増える。営業利益率は 7% を超え、全社の稼ぎの主柱になる。アントレプレナ事業は AI ロボの案件が立ち上がり、黒字が定着する。
配当性向 50% の方針が守られ、自社株買いも加わって、ROE は 10% を超える。商社再編の中で、丸文は規模を広げながら生き残る側に立つ。
- デバイス事業:数量 14.5(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS)× 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 2,914 億円・営業利益 125 億円。取扱高 14.5 億ドル、営業利益率 4.3%
- システム事業:数量 6.6(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の防衛・宇宙・通信・計測機器の商社経由市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 1,335 億円・営業利益 100 億円。取扱額 996 億円(市場を 1.8 倍、シェアは微増)、営業利益率 7.5%
- アントレプレナ事業:数量 0.3(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の AI ロボ・ICT 通信ソリューション市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 69 億円・営業利益 5 億円。取扱額 51 億円、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.55 倍、時価総額 1,287 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界の半導体需要が 10 年続いて強く、防衛・宇宙の拡大と AI ロボの立ち上げ、アローの網の活用がすべて当たる必要がある。実現すれば大きいが、重なる確度は高くない。
やや楽観 21% システムの伸びとデバイスの回復が重なる 利益 75 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 3,554 円933 億円
デバイス事業は、民生機器と自動車向けが伸び、産業機器向けも在庫調整が終わって戻る。国内の生産の縮小を、海外向けと新しい用途が補い、取扱高は今より 3 割ほど増える。営業利益率は 4% 近くまで戻る。
システム事業は、防衛・宇宙の需要拡大に乗って 5 割増える。営業利益率は 7% を保つ。アントレプレナ事業は、まだ小さいが黒字になる。
配当性向 50% の方針は守られ、為替の振れも落ち着く。ROE は 9% に近づく。中計の ROE 目標に手が届くが、資本コストを超えるには至らない。
商社再編が進んでも、丸文は国内で中堅の地位を保ち、仕入先の絞り込みの対象にならずに済む。
- デバイス事業:数量 12.9(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS)× 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 2,593 億円・営業利益 101 億円。取扱高 12.9 億ドル、営業利益率 3.9%
- システム事業:数量 5.9(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の防衛・宇宙・通信・計測機器の商社経由市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 1,178 億円・営業利益 82 億円。取扱額 879 億円(市場を 1.6 倍、シェア少し上昇)、営業利益率 7.0%
- アントレプレナ事業:数量 0.3(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の AI ロボ・ICT 通信ソリューション市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。取扱額 39 億円、営業利益率 5%
倍率:事業の純利益 75 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.44 倍、時価総額 933 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の回復、配当方針の転換、防衛・宇宙の拡大という既に見えている材料が、10 年を通して続く想定。実現の確度は中程度ある。
中立 35% システムが稼ぎ、デバイスは薄利のまま名目で伸びる 利益 60 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,754 円723 億円
世界の半導体市場は伸びるが、丸文の取扱高の伸びは世界の半分ほどにとどまる。顧客の中心は国内の電機・自動車・産業機器メーカーで、国内の生産が細る分を、海外向けと自動車向けが埋める。デバイス事業の営業利益率は 3.5% で落ち着く。
システム事業は、防衛費の増額と衛星需要で取扱いが 3 割ほど増える。営業利益率は 6.5% を保つ。アントレプレナ事業は小さな黒字にとどまる。
為替の振れで、純利益は営業利益の 4 割程度に目減りする。配当性向 50% の方針を守りながら、ROE は 7% 台だ。「普通に回る、資本の重い商社」として評価が収まる 10 年になる。
- デバイス事業:数量 11.7(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS)× 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 2,352 億円・営業利益 82 億円。取扱高 11.7 億ドル、営業利益率 3.5%
- システム事業:数量 5.1(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の防衛・宇宙・通信・計測機器の商社経由市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 1,021 億円・営業利益 66 億円。取扱額 762 億円(市場を 1.5 倍、シェアは微減)、営業利益率 6.5%
- アントレプレナ事業:数量 0.2(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の AI ロボ・ICT 通信ソリューション市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。取扱額 31 億円、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 723 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の回復と配当方針の転換を織り込んだうえで、国内の需要の弱さと薄利の構造が続くと見る、最も無理のない筋書き。他の領域の同業と物差しをそろえて 35% とした。
やや悲観 24% 国内の縮みで、取扱いが伸び悩む 利益 38 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,085 円285 億円
国内の電機メーカーの生産が海外へ移り続け、デバイス事業の取扱高は今とほぼ同じ水準で横ばいになる。メーカーが取扱商社を絞り、取扱品目も一部が大手に移る。営業利益率は 2.5% に下がる。
システム事業は堅調だが、防衛予算の伸びは頭打ちとなり、取扱いの伸びは 1 割ほどにとどまる。アントレプレナ事業は黒字化しないまま、整理の対象になる。
為替の振れが続き、純利益は今の水準をわずかに上回る程度。利益が伸びないのに DOE 3.5% の下限が効き、配当は利益の 6 割前後に上がる。それでも ROE は 5% 台にとどまる。
- デバイス事業:数量 10.0(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS)× 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 2,010 億円・営業利益 50 億円。取扱高 10.0 億ドル、営業利益率 2.5%
- システム事業:数量 4.3(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の防衛・宇宙・通信・計測機器の商社経由市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 864 億円・営業利益 48 億円。取扱額 645 億円(市場 1.2 倍、シェア低下)、営業利益率 5.5%
- アントレプレナ事業:数量 0.1(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の AI ロボ・ICT 通信ソリューション市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。取扱額 20 億円、営業利益率 0%
倍率:事業の純利益38億円・事業 ROE 5.2% は k 8.3% 以下なので、上限は 1÷k=10.8倍。ROE は 5% 台で資本コストを大きく下回る。成長の持ちを低く見るため、上限の 1÷k よりさらに低く置いた。上限の約7割の7.5倍に置いた。
確率:国内の電機産業の縮小が続いた過去 10 年(売上の年率 -2.7%)の延長に近い筋書き。メーカーの商社絞り込みも重なる。
悲観 12% 取扱商権を失い、小さな商社になる 利益 13 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 762 円200 億円
メーカーが大口顧客との直接取引を広げ、取扱商社を数社に絞る。丸文は主要な仕入先の取扱いを失い、デバイス事業の取扱高は 3 割落ちる。国内の電機メーカーの海外移転も止まらず、営業利益率は 1% 台に下がる。
システム事業も、主要顧客の調達方式の変更で取扱いを一部失い、営業利益率は 3% 台に下がる。アントレプレナ事業は赤字が続く。
純利益は十数億円まで落ち、配当は大きく減らさざるを得ない。事業は残るが、資本が重い小さな商社として、運転資本の回収価値で評価される。
10 年後には、国内の電機産業の縮小と商社の集約の流れに取り残された会社として、見られている。
- デバイス事業:数量 7.0(取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS)× 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 1,407 億円・営業利益 18 億円。取扱高 7.0 億ドル、営業利益率 1.3%
- システム事業:数量 3.3(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の防衛・宇宙・通信・計測機器の商社経由市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 670 億円・営業利益 23 億円。取扱額 500 億円(市場 1.0 倍、シェア大きく低下)、営業利益率 3.5%
- アントレプレナ事業:数量 0.1(取扱額(億ドル換算・実質)=国内の AI ロボ・ICT 通信ソリューション市場 × 取扱シェア)× 価格 201(円/ドル(150円)× 物価・値段の指数)→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。取扱額 10 億円、営業利益率 -5%
倍率:事業の稼ぐ力は純利益 13 億円で、PER を掛けても約 90 億円にしかならない。運転資本を畳んで回収する価値(売掛金と在庫の回収)を床とし、今の自己資本に掛ける形で置いた。
確率:メーカーの直接取引化、国内顧客の海外移転、大手商社への集約が同時に進む複合の筋書き。為替の振れと運転資本の重さが重なると、立て直しが難しい。システム事業の底堅さがあるので、12% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
デバイス事業
半導体・電子部品を海外・国内メーカーから仕入れ、日本の電機・自動車・産業機器メーカーに供給する。アナログ IC、メモリー、マイコン、特定用途 IC、カスタム IC を扱い、仕入れの多くはドル建て。
| 数量取扱高(億ドル・実質)=世界半導体市場(WSTS)× 取扱シェア | 価格円/ドル(150円)× 物価・値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.2 | 150 | 1,522 | 42 |
| 10 年後 中立 | 11.7 | 201 | 2,352 | 82 |
取り方:売上 1,522 億円を 150 円で割ると取扱高約 10.2 億ドル。2025 年の世界半導体市場 7,956 億ドルに対する取扱シェアは約 1.3% に当たる。営業利益は全社の営業利益 78 億円からシステム・アントレプレナを引いた約 42 億円の推定(開示は経常利益のみ)。
システム事業
防衛・宇宙機器、通信機器、製造・検査装置、レーザー・光学部品の販売と保守。人工衛星向けの高信頼部品が伸びている。
| 数量取扱額(億ドル換算・実質)=国内の防衛・宇宙・通信・計測機器の商社経由市場 × 取扱シェア | 価格円/ドル(150円)× 物価・値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.9 | 150 | 586 | 36 |
| 10 年後 中立 | 5.1 | 201 | 1,021 | 66 |
取り方:売上 586 億円を、国内の防衛・宇宙・通信・計測機器の商社経由市場(推定で約 1.5 兆円、防衛費の増額と衛星需要を含む)に対する取扱シェア約 3.9% として置いた。営業利益は経常利益 36.7 億円に近い約 36 億円の推定。
アントレプレナ事業
ICT 通信、AI ロボット、ミリ波レーダーモジュール、超音波画像診断装置などの新規商材を育てる部門。
| 数量取扱額(億ドル換算・実質)=国内の AI ロボ・ICT 通信ソリューション市場 × 取扱シェア | 価格円/ドル(150円)× 物価・値段の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 150 | 26 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 201 | 41 | 1 |
取り方:売上約 26 億円を、国内の AI ロボット・ICT 通信ソリューション市場(推定で約 2 兆円)に対する取扱シェア約 0.13% として置いた。経常損益はほぼゼロ(2026 年 3 月期は約 -0.1 億円)。 10 年の伸びの置き方:市場(AI ロボット・ICT の約 2 兆円)が伸びても、この事業は損益がほぼゼロの赤字続きで、2026 年 3 月期第 1 四半期の売上は前年比 9.1% 減だった(アントレプレナ事業)。取扱シェア 0.13% を保つ前提で中立は実質 10 年 1.2 倍(旧 1.5 倍)、楽観 2.0 倍(旧 3.0 倍)。
リスクと懸念
為替と金利による利益の振れ
仕入れの多くがドル建てで、円安のたびに為替差損が出る。2026 年 3 月期は営業利益 78 億円に対し、経常利益が 42 億円まで減った。会社は為替を除いた利益を実力値として示し始めたが、最終利益は振れ続ける。
半導体の周期と在庫の評価損
過去の不況期には、商社の営業利益が半分以下に落ちた。在庫と売掛金が膨らむ商社は、需要が急減すると運転資金を圧迫される。純有利子負債が時価総額の半分近くあり、悪化の時の余裕は大きくない。
メーカーの商社絞り込み
半導体メーカーが取扱商社を数社に絞る動きは続いている。規模で劣る丸文は、主要仕入先の取扱いを失えば、デバイス事業の取扱高を一度に落とす。代理人取引の減少で、粗利益率はすでに下がっている。
国内の電機産業の縮小
顧客の中心は国内の電機・自動車・産業機器メーカーだ。生産の海外移転が進むほど、国内向けの需要は細る。売上の 10 年の年率は -2.7% で、アローとの合弁と海外拠点で補えるかが問われる。
システム事業の顧客の集中
システム事業は防衛・宇宙の基幹顧客に支えられている。調達方式の変更や、特定の案件の終了があれば、全社の営業利益のほぼ半分が影響を受ける。取扱いの大きな顧客数が限られる点は、確認すべき弱みだ。
新規事業が育たない
アントレプレナ事業は売上 26 億円で、損益はほぼゼロ。中計は経常利益 10 億円以上を掲げるが、AI ロボなど新商材は競争が激しい。育たなければ、整理の費用だけが残る。
今後の分かれ目
- 円安が止まり、為替差損が出なくなったら
- 経常利益は営業利益に近づく。純利益の比率が上がるので、中立の純利益は上振れする。やや楽観の筋書きに重みを移す。
- システム事業の営業利益率が 7% を超えて定着したら
- 全社の収益の質が一段上がる。楽観・やや楽観の確率を上げ、倍率の上限を見直す。
- 自社株買いを実施し、配当と合わせて総還元性向を明示したら
- 自己資本の肥大が抑えられ、ROE の改善が早まる。ROE が資本コストに近づくなら、中立の倍率を上げてよい。
- 主要な半導体メーカーが取扱商社を絞り、丸文が対象から外れたら
- デバイス事業の取扱高が一度に落ちる。やや悲観・悲観の筋書きに重みを移す。
- アロー・エレクトロニクスが持ち分を増やす、または提携を深めたら
- 買収・統合の可能性が高まる。評価は変わりうるが、価格は買う側の条件に左右されるので、事実が出るまで筋書きには入れない。
- 産業機器向けの在庫調整が終わり、売上が前年を上回り続けたら
- デバイス事業の営業利益率は 3.5% を超えて戻る。やや楽観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- システム事業の営業利益率と、防衛・宇宙の受注残
- デバイス事業の営業利益率(3% を保てるか)
- 営業利益と経常利益の差(為替差損と取引に係る金利の大きさ)
- 自社株買いの実施と、総還元の水準
- 主要仕入先の取扱契約の変更(取扱商社の絞り込み)
- アロー・エレクトロニクスの持ち分の動き
倍率と資本コストの決め方
世界半導体市場に取扱シェアを掛けてデバイス事業を、国内の防衛・宇宙・通信・計測機器市場に取扱シェアを掛けてシステム事業を置き、物価 3% は値段の指数に入れた。倍率は資本コスト 8.3%(基本 7.5%、quality 合計 +1.8%)と事業の ROE から出し、中立は ROE が資本コストに届かないので 1÷k の上限の 8 割に置いた。今の PER(谷の年の利益に対して約 15 倍)にも、配当方針の転換後の株価の動きにも寄せていない。悲観は取扱商権を失う構造的な負けで、床は運転資本の回収価値から置き、過去の PBR の谷は使っていない。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)は、店舗や倉庫を持つ商社ではないため影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.4→13.55 倍・やや楽観 PER 9.4→12.44 倍・中立 PER 8.5→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.30% → 8.30%。