結論
第一実業は、工場やプラントの機械・設備を仕入れて売るだけでなく、据え付けから立ち上げまで面倒を見る「エンジニアリング商社」である。電池製造装置、半導体や自動車の生産設備、製薬の包装・検査機、空港の地上支援機材まで、7つの事業を持つ。
筆者の結論は「適正」だ。2026年3月期まで営業利益は3期連続の過去最高で、北米の電池製造装置の大型案件が押し上げた。ただ、その案件は続かない。会社自身が今期を減益と見ている。
強みは現場力と、大型で複雑な案件をまとめきる力である。弱みは、利益が設備投資の循環と一部の大口案件に偏ることだ。売上の半分強が海外で、為替と各国の政策にも揺れる。
10年で見れば、数量は人手不足の自動化投資で緩やかに伸び、物価分が売上を押し上げる。それでも利益率は今の水準を保てず、ROEは資本コストを少し上回る程度にとどまる。
財務は堅い。純現金は時価総額の約4割あり、悲観の場面でも守りになる。資本を厚く返す方針なので、持ち続けて損をしにくい会社だ。ただ、いま払う値段に安全域と呼べる余裕はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、第一実業は「悪くない会社を、適正な値段で買える」類いの銘柄だ。
事業は予測しやすい部類に入る。設備投資に左右されるとはいえ、人手不足で自動化の需要は10年先も残る。ただし、強い堀は見当たらない。値段は装置メーカーと顧客が決め、中抜きの圧力は長く続く。だから筆者は、利益の伸びを織り込みすぎない。
株主のものになる利益は、純利益から運転資金の増加を引いたものだ。商社は売上が増えると運転資金が増えるので、利益が出てもすべてが自由に使えるわけではない。足元の純現金が厚いのは安心材料だが、事業の運転資金を兼ねる部分が大きい。
経営は資本をていねいに扱っている。還元の基準が明確で、政策保有株を減らし、自社株買いも消却する。これは持ち続ける側にとって好ましい。
安全域は、悲観の場面で現金が下支えする点に出る。それでも、いまの値段に大きな割安感は見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、メーカーと顧客のあいだに立つことだ。海外の装置メーカーの機械を日本や北米の工場へ売る。逆に、国内の機械を海外へ出す。装置を売って終わりにせず、据え付け・試運転・保守まで引き受け、そこに手数料が乗る。
事業は7つに分かれる。売上の最大はエレクトロニクスで約530億円、半導体や電子部品の装置、実装機、物流の自動化を扱う。次がエナジーソリューションズの約400億円で、リチウムイオン電池の製造装置が中心だ。プラント・エネルギーは約230億円で、化学・ガス・資源開発の設備を手がける。
残りは自動車(車体や電動車部品の設備)、産業機械(射出成形機など)、ヘルスケア(製薬向けの包装・検査)、航空・インフラ(空港の地上支援機材)だ。ヘルスケアと航空・インフラは小さいが、利益率が高く伸びている。
売上の半分強が海外で、2026年3月期は米州が約440億円、アジアが約340億円、中国が約260億円だった。案件は1件が大きく、受注の時期で四半期ごとの数字が大きく振れる。
顧客は自動車・電池・半導体・製薬・航空と幅広く、単一の業界に縛られない点は、設備投資の循環をならす助けになる。ただし、年に数件の大型案件が利益を左右する構造は変わらない。
優良さと弱いところ
第一実業の優良さは中くらいだ。強い堀、つまり他社がまねできない強みを持つ会社ではない。ただ、専門商社の中では稼ぐ力が高まってきた。
営業利益率は10年前の3%台から、直近の6%台へ上がった。売るだけの商社から、装置の選定・据え付け・立ち上げまで抱える形へ軸足を移したためだ。この「面倒を見る力」が顧客の信頼になり、他社に乗り換えにくくしている。
ただし値段は市場と装置メーカーが決める面が強い。メーカーが直販に踏み切れば、手数料は削られる。大口の電池案件への依存も弱みで、利益が一度に積み上がる反面、案件が途切れると減益に転じる。
経営は資本をよく扱っている。政策保有株は売却を進め、配当は性向40%かDOE4%の高い方という基準を明示した。ROEは10%前後で、資本コストを小さく上回る。筆者は、利益の質が一過性の大型案件にどこまで支えられているかを、最も気にしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社が相手にする市場は、工場の設備投資だ。景気で大きく動く。リーマン後の2009年や、2019年の中国の製造業不況では、機械商社の受注が3〜5割減った。
今は追い風と向かい風が混ざっている。人手不足で省人化・自動化の投資は構造的に続く。半導体やデータセンター関連の投資も根強い。一方、北米の電池投資はEVの減速と関税政策で勢いを欠き、会社は電池事業を「踊り場」と呼んでいる。国内の製造業は人口が減り、海外へ出る流れも止まらない。
競合は分散している。同じ領域では、工具のトラスコ中山や山善、電設資材の因幡電機産業、FA部品のミスミがいるが、第一実業の領域は大型の個別案件が中心で、正面から重なる相手は少ない。西華産業が産業機械・プラントで近い立ち位置にある。
構造の変化としては、メーカーの直販化とECによる中抜きが長期の圧力になる。生き残るのは、据え付けや保守まで含めて顧客の手間を減らす会社だ。
追い風の側には、日本の人手不足がある。工場は人を増やせないので、自動機や検査装置への投資で補うしかない。北米やインドでも工場の新設が続き、設備を現地で立ち上げられる商社の出番は増える。ただ、この需要は景気の波を打ち消すほど強くはない。
資本政策と M&A
資本の使い方は素直だ。配当は性向40%かDOE(自己資本に対する配当の割合)4%の高い方で、足元は利益の4割前後に当たる。2026年5月から上限20億円の自社株買いも始め、取得した株は消却する。政策保有株は4銘柄を約5億円で売却した。
中期計画「MT2027」では3年間で150億円を成長投資に回し、営業利益は累計400億円を目指す。最終の2028年3月期には売上2,500億円、営業利益150億円、ROE11〜12%を掲げる。さらに2031年3月期は売上3,000億円、営業利益180億円を見据える。
買収の実績は大きくない。商社の買収は人材と顧客を買う側面が強く、小粒にとどまる限り価値を壊しにくい。会社がTOBの対象になる可能性は、時価総額が1,100億円台で純現金が厚いことから、筆者は無視できないと見ている。
2026年5〜8月の自己株式取得(約16.9億円)は実行済みで終了した。株数に反映した。この分は10年の還元に入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電池製造装置の大型案件は、第一実業が装置の据え付けから立ち上げまで丸ごと引き受けられると証明した実績だ。この力は電池に限らず、半導体、製薬、空港機材へ横展開できる。実際、ヘルスケアは売上200億円規模に育ち、航空・インフラは営業利益が前年の約2倍になった。
中期計画の営業利益150億円は、足元の最高益と大きく離れていない。約100名の増員で現場の実行力が増えれば、案件の取りこぼしが減る。純現金が時価総額の約4割あり、配当は性向40%かDOE4%の高い方と明記されているので、下値は固い。
人手不足は日本だけでなく北米やインドでも進み、自動化と省人化の投資は構造的に続く。10年後には営業利益率が7%近くまで上がり、ROEは13%台に乗る。そうなれば、いまの時価総額は割安に見える。
電池で磨いた据え付け・立ち上げの経験は、次の大型投資が来たときに最大の武器になる。株主還元も厚く、利益が伸びれば配当と自社株買いの額も自然に増える。
慎重な見方
今の最高益は、北米の大型の電池案件という一過性の要因で積み上がった。会社自身が今期を減益と見て、電池事業を踊り場と呼んでいる。大口案件の依存は、次の案件が出なければ利益がそのまま消えるという意味だ。
電池の投資は、顧客企業の戦略とEV・関税の政策に左右される。商社は値段を決められず、装置メーカーの直販が増えれば手数料は削られる。国内の製造業は人口減で細り、設備投資の絶対量は10年で縮む可能性が高い。
増員した約100名の人件費は、案件が減っても残る。営業利益率は過去の平均の4%台へ戻りやすい。純現金も運転資金を兼ねるため、見かけほど余裕はない。そもそも10年前の営業利益率は3%台で、いまの6%台が例外だと考えるのが自然だ。
さらに、物価が上がる世界では人件費も同じように上がる。値段を決められない商社は、手数料率が横ばいなら利益額は物価並みにしか増えない。数量の伸びが乏しければ、利益は期待ほど育たない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。理由は、足元の最高益が大型の電池案件に偏っていること、堀が強くないこと、人件費が固定費として残ることの3つだ。ただ、純現金の厚さと還元方針の明確さが下を支えるので、悲観の確率は10%にとどめた。確率は楽観8%、やや楽観22%、中立38%、やや悲観22%、悲観10%で、中立を中心に悲観側へやや寄せている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,905 円2,172 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,959 円616 億円)。 今の値に割り戻すと 4,907 円1,543 億円、今との差 +37.4%、 期待の年率 +9.5%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,713 円3,999 億円 | 2,747 円864 億円 | +333.1% | +15.8% | 1,237 円389 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,495 円2,987 億円 | 2,248 円707 億円 | +228.9% | +12.6% | 2,583 円813 億円 |
| 中立 | 38% | 7,973 円2,508 億円 | 1,994 円627 億円 | +179.2% | +10.8% | 3,787 円1,191 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,112 円979 億円 | 1,644 円517 億円 | +33.2% | +2.9% | 1,046 円329 億円 |
| 悲観 | 10% | 843 円265 億円 | 1,256 円395 億円 | −41.2% | −5.2% | 210 円66 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,905 円2,172 億円 | 1,959 円616 億円 | +148.3% | +9.5% | 8,864 円2,788 億円 |
今の株価時価総額 3,570 円1,123 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% エンジニアリング商社として一段上の収益階層に乗る 利益 214 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 12,713 円3,999 億円
北米で電池工場の新設と増設が続き、第一実業は製造装置の大型案件を継ぎ目なく受注する。装置の据え付けから立ち上げまでを一括で請け負う力が評価され、案件ごとの利益率も上がる。
半導体の後工程や物流の自動化でアジア向けが伸び、ヘルスケアは製薬の自動化投資を取り込んで売上が大きく増える。航空・インフラでは長納期部材の在庫が効き、空港の電動化需要を取りこぼさない。
約100名の増員が現場の実行力に変わり、売上は4,000億円規模、営業利益率は7%まで上がる。資本の使い方も規律を保ち、配当は性向40%かDOE4%のいずれか高い方を守りつつ、自社株買いも続ける。純現金は買収ではなく還元に回り、1株の価値はさらに高まる。
- エレクトロニクス:数量 1,320(年間の販売案件数(件))× 価格 0.81(1件あたり売上(億円))→ 売上 1,064 億円・営業利益 59 億円
- エナジーソリューションズ:数量 56.0(年間の販売案件数(件))× 価格 13(1件あたり売上(億円))→ 売上 751 億円・営業利益 75 億円
- プラント・エネルギー:数量 84.0(年間の販売案件数(件))× 価格 4.35(1件あたり売上(億円))→ 売上 365 億円・営業利益 24 億円
- 自動車:数量 720(年間の販売案件数(件))× 価格 0.80(1件あたり売上(億円))→ 売上 579 億円・営業利益 43 億円
- 産業機械:数量 750(年間の販売案件数(件))× 価格 0.54(1件あたり売上(億円))→ 売上 402 億円・営業利益 16 億円
- ヘルスケア:数量 221(年間の販売案件数(件))× 価格 2.06(1件あたり売上(億円))→ 売上 456 億円・営業利益 41 億円
- 航空・インフラ:数量 468(年間の販売案件数(件))× 価格 0.90(1件あたり売上(億円))→ 売上 421 億円・営業利益 42 億円
倍率:事業の純利益 214 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.66 倍、時価総額 3,999 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北米の電池投資が第二の波を迎え、半導体・ヘルスケアの伸びも重なり、人材投資が全部当たる必要がある。強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% 電池は踊り場のまま、ヘルスケアと航空・インフラが育つ 利益 167 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 9,495 円2,987 億円
電池製造装置は北米で次の大型案件が間をあけて入り、売上は今の水準を保つ。それより効くのが、利益率の高い事業の伸びだ。
ヘルスケアは製薬会社の自動化・検査の需要で売上が1.5倍に育ち、航空・インフラも空港の機材更新で底上げされる。エレクトロニクスは半導体関連とアジアの実装機が回復し、物流自動化の引き合いも売上に変わる。
全体の営業利益率は6%台で保ち、中期計画で掲げた営業利益の水準を10年にわたって維持・上積みする。M&Aは小粒な買収にとどまり、買収で価値を壊すことはない。中期計画の営業利益150億円は2028年3月期に届き、その水準が10年後まで底上げされていく。
自動車と産業機械は国内の需要が横ばいでも、北米とインドの工場新設で数量を保つ。
- エレクトロニクス:数量 1,100(年間の販売案件数(件))× 価格 0.81(1件あたり売上(億円))→ 売上 887 億円・営業利益 44 億円
- エナジーソリューションズ:数量 46.0(年間の販売案件数(件))× 価格 13(1件あたり売上(億円))→ 売上 617 億円・営業利益 56 億円
- プラント・エネルギー:数量 77.0(年間の販売案件数(件))× 価格 4.35(1件あたり売上(億円))→ 売上 335 億円・営業利益 19 億円
- 自動車:数量 672(年間の販売案件数(件))× 価格 0.80(1件あたり売上(億円))→ 売上 540 億円・営業利益 37 億円
- 産業機械:数量 750(年間の販売案件数(件))× 価格 0.54(1件あたり売上(億円))→ 売上 402 億円・営業利益 15 億円
- ヘルスケア:数量 195(年間の販売案件数(件))× 価格 2.06(1件あたり売上(億円))→ 売上 402 億円・営業利益 33 億円
- 航空・インフラ:数量 416(年間の販売案件数(件))× 価格 0.90(1件あたり売上(億円))→ 売上 374 億円・営業利益 35 億円
倍率:事業の純利益 167 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.63 倍、時価総額 2,950 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の営業利益150億円(28年3月期)に届けば、10年で上振れる土台が整う。計画を一度は達成してきた実績があり、足元の最高益から見て確度は低くない。
中立 38% 最高益の水準を保ち、数量は緩やかに増える 利益 142 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 7,973 円2,508 億円
電池製造装置は北米の大型案件が一巡したあと、国内の小型案件と更新需要にとどまり、事業の規模は実質で横ばいになる。ほかの事業は設備投資の循環に揺られながら、人手不足による自動化の需要で少しずつ増える。
ヘルスケアと航空・インフラは規模が小さいぶん伸びが利き、全体の営業利益率は今よりやや低い6%弱で落ち着く。ROEは9%台で資本コストをわずかに上回る。
配当は性向40%かDOE4%の高い方を守り、自社株買いは年次の判断で行う。数量の伸びは小さく、売上の増加の大半は物価分だ。受注の山谷で単年の利益は大きく振れるが、10年を均すと営業利益は200億円弱で収まる。
北米の電池は新たな大型案件が時々出る程度で、特需の再来とは見ない。エレクトロニクスは半導体関連が支える。
- エレクトロニクス:数量 1,012(年間の販売案件数(件))× 価格 0.81(1件あたり売上(億円))→ 売上 816 億円・営業利益 39 億円
- エナジーソリューションズ:数量 40.0(年間の販売案件数(件))× 価格 13(1件あたり売上(億円))→ 売上 537 億円・営業利益 46 億円
- プラント・エネルギー:数量 70.0(年間の販売案件数(件))× 価格 4.35(1件あたり売上(億円))→ 売上 305 億円・営業利益 17 億円
- 自動車:数量 630(年間の販売案件数(件))× 価格 0.80(1件あたり売上(億円))→ 売上 507 億円・営業利益 33 億円
- 産業機械:数量 713(年間の販売案件数(件))× 価格 0.54(1件あたり売上(億円))→ 売上 382 億円・営業利益 13 億円
- ヘルスケア:数量 169(年間の販売案件数(件))× 価格 2.06(1件あたり売上(億円))→ 売上 348 億円・営業利益 28 億円
- 航空・インフラ:数量 364(年間の販売案件数(件))× 価格 0.90(1件あたり売上(億円))→ 売上 327 億円・営業利益 29 億円
倍率:事業の純利益 142 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.1 倍、時価総額 2,425 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:設備投資の循環と大型案件の山谷を織り込み、最高益の利益率がほぼ保たれる姿を中心に置いた。会社の予想(27年3月期は減益)も、一服をはさんだ中心像と整合する。
やや悲観 22% 北米の電池投資が縮み、国内の設備更新も細る 利益 88 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 3,112 円979 億円
北米のEV・電池投資が見直され、電池装置の案件が大型から小型へ縮む。前の大型案件の利益を補う新しい柱は育たず、エナジーソリューションズの売上は今の7割台に落ちる。
自動車向けの設備も、EVの減速で投資が先送りされる。産業機械と国内の自動車向けは、メーカーの直販が増えて手数料が削られる。
営業利益率は過去の平均に近い4%台へ戻る。人材投資で増やした固定費がかさみ、利益が減る局面でも人件費は下がらない。それでも配当は、DOE4%の基準が支えとなって大きくは削らない。
中国やアジアの景気も弱く、エレクトロニクスの数量は今より減る。
- エレクトロニクス:数量 836(年間の販売案件数(件))× 価格 0.78(1件あたり売上(億円))→ 売上 654 億円・営業利益 26 億円
- エナジーソリューションズ:数量 30.0(年間の販売案件数(件))× 価格 13(1件あたり売上(億円))→ 売上 391 億円・営業利益 27 億円
- プラント・エネルギー:数量 59.5(年間の販売案件数(件))× 価格 4.22(1件あたり売上(億円))→ 売上 251 億円・営業利益 11 億円
- 自動車:数量 540(年間の販売案件数(件))× 価格 0.78(1件あたり売上(億円))→ 売上 421 億円・営業利益 23 億円
- 産業機械:数量 600(年間の販売案件数(件))× 価格 0.52(1件あたり売上(億円))→ 売上 312 億円・営業利益 9 億円
- ヘルスケア:数量 143(年間の販売案件数(件))× 価格 2.00(1件あたり売上(億円))→ 売上 286 億円・営業利益 20 億円
- 航空・インフラ:数量 286(年間の販売案件数(件))× 価格 0.87(1件あたり売上(億円))→ 売上 249 億円・営業利益 20 億円
倍率:事業の純利益88.1億円・事業 ROE 6.6%。ROE が k 以下なので上限は 1÷k=12.1 倍。構造的な負けへ向かう途中の姿で、上限の約 80% の 9.7 倍に置いた。
確率:電池設備は顧客と政策に左右され、国内の製造業は人口減で細る。商社が中抜きされる向きの変化も続くので、慎重な側に厚めに置いた。
悲観 10% 電池の特需が消え、中抜きと国内空洞化で商社の役割が縮む 利益 31 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 843 円265 億円
北米の電池工場の投資が止まり、第一実業の収益を押し上げた大型案件がほとんど消える。顧客が装置メーカーと直接取引するようになり、商社を通す理由が薄れる。
国内の製造業は海外へ出ていき、自動車・産業機械の設備投資は絶対量で縮む。価格競争が強まり、案件あたりの単価も物価に追いつかない。
ヘルスケアや航空・インフラは持ちこたえるが、規模が小さく全体を支えきれない。営業利益率は2%台へ落ち、会社は優良な専門商社ではなくなる。ただし現金は厚く、縮む過程で運転資金が現金に戻る。会社は赤字には落ちず、配当を保てるぎりぎりの水準で踏みとどまる。
- エレクトロニクス:数量 616(年間の販売案件数(件))× 価格 0.72(1件あたり売上(億円))→ 売上 445 億円・営業利益 12 億円
- エナジーソリューションズ:数量 16.0(年間の販売案件数(件))× 価格 12(1件あたり売上(億円))→ 売上 192 億円・営業利益 8 億円
- プラント・エネルギー:数量 49.0(年間の販売案件数(件))× 価格 3.90(1件あたり売上(億円))→ 売上 191 億円・営業利益 6 億円
- 自動車:数量 390(年間の販売案件数(件))× 価格 0.72(1件あたり売上(億円))→ 売上 281 億円・営業利益 10 億円
- 産業機械:数量 450(年間の販売案件数(件))× 価格 0.48(1件あたり売上(億円))→ 売上 216 億円・営業利益 4 億円
- ヘルスケア:数量 117(年間の販売案件数(件))× 価格 1.85(1件あたり売上(億円))→ 売上 216 億円・営業利益 11 億円
- 航空・インフラ:数量 234(年間の販売案件数(件))× 価格 0.80(1件あたり売上(億円))→ 売上 188 億円・営業利益 11 億円
倍率:事業の純利益31.2億円・事業 ROE 2.6%。ROE が k 以下なので上限は 1÷k=12.1 倍。構造的な負けの筋書きで、上限の約 70% の 8.5 倍に置いた。稼ぐ力から出る価値は純現金+売れる資産より小さいが、悲観の値はその稼ぐ力の側で置く(床の内訳は floor_assets_oku)。
確率:北米の電池投資の凍結、国内の製造拠点の海外移転、メーカー直販の拡大が10年のうちに重なる複合の筋書き。電池の大型案件への依存が大きいので、10%の確率は無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エレクトロニクス
半導体・電子部品の製造装置、実装機、物流自動化装置の販売。中国・アジア向けが厚い。
| 数量年間の販売案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 880 | 0.60 | 529 | 26 |
| 10 年後 中立 | 1,012 | 0.81 | 816 | 39 |
取り方:開示は売上・利益の金額が中心で件数は無いため、案件数と1件あたり売上は推定。売上は2026年3月期の決算説明にある数字(エレクトロニクス529億・エナジーソリューションズ400億・プラント・エネルギー227億)を使い、残り4事業は全体2,191億円との差を決算説明の増減コメントに沿って按分した推定。利益も事業ごとの内訳は推定で、合計に全社費用の調整を足して全社137億円に合わせた。
エナジーソリューションズ
リチウムイオン電池の製造装置など次世代エネルギー関連の設備。北米の大型案件が柱。
| 数量年間の販売案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 10 | 401 | 38 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 13 | 537 | 46 |
取り方:開示は売上・利益の金額が中心で件数は無いため、案件数と1件あたり売上は推定。売上は2026年3月期の決算説明にある数字(エレクトロニクス529億・エナジーソリューションズ400億・プラント・エネルギー227億)を使い、残り4事業は全体2,191億円との差を決算説明の増減コメントに沿って按分した推定。利益も事業ごとの内訳は推定で、合計に全社費用の調整を足して全社137億円に合わせた。
プラント・エネルギー
化学・ガス・石油精製などのプラント機器、資源開発、脱炭素関連の設備。
| 数量年間の販売案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 3.25 | 227 | 14 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 4.35 | 305 | 17 |
取り方:開示は売上・利益の金額が中心で件数は無いため、案件数と1件あたり売上は推定。売上は2026年3月期の決算説明にある数字(エレクトロニクス529億・エナジーソリューションズ400億・プラント・エネルギー227億)を使い、残り4事業は全体2,191億円との差を決算説明の増減コメントに沿って按分した推定。利益も事業ごとの内訳は推定で、合計に全社費用の調整を足して全社137億円に合わせた。
自動車
車体・内外装の生産設備、電動車部品の製造設備。北米・インド・国内。
| 数量年間の販売案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.60 | 360 | 26 |
| 10 年後 中立 | 630 | 0.80 | 507 | 33 |
取り方:開示は売上・利益の金額が中心で件数は無いため、案件数と1件あたり売上は推定。売上は2026年3月期の決算説明にある数字(エレクトロニクス529億・エナジーソリューションズ400億・プラント・エネルギー227億)を使い、残り4事業は全体2,191億円との差を決算説明の増減コメントに沿って按分した推定。利益も事業ごとの内訳は推定で、合計に全社費用の調整を足して全社137億円に合わせた。
産業機械
射出成形機を中心にした成形・塗装・自動化設備。
| 数量年間の販売案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 750 | 0.40 | 300 | 11 |
| 10 年後 中立 | 713 | 0.54 | 382 | 13 |
取り方:開示は売上・利益の金額が中心で件数は無いため、案件数と1件あたり売上は推定。売上は2026年3月期の決算説明にある数字(エレクトロニクス529億・エナジーソリューションズ400億・プラント・エネルギー227億)を使い、残り4事業は全体2,191億円との差を決算説明の増減コメントに沿って按分した推定。利益も事業ごとの内訳は推定で、合計に全社費用の調整を足して全社137億円に合わせた。
ヘルスケア
製薬向けの包装機、錠剤の外観検査、印刷検査などのエンジニアリング。
| 数量年間の販売案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 130 | 1.54 | 200 | 16 |
| 10 年後 中立 | 169 | 2.06 | 348 | 28 |
取り方:開示は売上・利益の金額が中心で件数は無いため、案件数と1件あたり売上は推定。売上は2026年3月期の決算説明にある数字(エレクトロニクス529億・エナジーソリューションズ400億・プラント・エネルギー227億)を使い、残り4事業は全体2,191億円との差を決算説明の増減コメントに沿って按分した推定。利益も事業ごとの内訳は推定で、合計に全社費用の調整を足して全社137億円に合わせた。
航空・インフラ
空港の地上支援機材(GSE)や航空機部材、インフラ設備。
| 数量年間の販売案件数(件) | 価格1件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 260 | 0.67 | 174 | 18 |
| 10 年後 中立 | 364 | 0.90 | 327 | 29 |
取り方:開示は売上・利益の金額が中心で件数は無いため、案件数と1件あたり売上は推定。売上は2026年3月期の決算説明にある数字(エレクトロニクス529億・エナジーソリューションズ400億・プラント・エネルギー227億)を使い、残り4事業は全体2,191億円との差を決算説明の増減コメントに沿って按分した推定。利益も事業ごとの内訳は推定で、合計に全社費用の調整を足して全社137億円に合わせた。
リスクと懸念
電池の大型案件への依存
2025年3月期の最高益は北米向けの電池製造装置が押し上げた。顧客の投資計画やEV・関税の政策が変われば、次の大型案件が出ず、利益が急に落ちる。会社自身が電池事業を「踊り場」と呼んでいる。
設備投資の循環
商社の受注は工場の設備投資に連動する。2009年のリーマン後や2019年の中国の不況では、機械商社の受注が3〜5割減った。固定費が増えた今は、減収が利益に与える打撃も大きい。
メーカーの直販化と中抜き
装置メーカーが顧客と直接取引すれば、商社の手数料は削られる。据え付けや保守で顧客に手間を減らす価値を出せるかが、中抜きの圧力に耐えられるかの分かれ目になる。
海外売上の為替と政策
売上の半分強は海外で、米州・アジア・中国の景気と関税などの政策に左右される。欧州向けは前期に約6割減るなど、地域の振れも大きい。為替は筋書きでは動かさないが、現実には利益に響く。
増員による固定費
今期は約100名を増やして受注の回復を狙う。受注が戻らなければ人件費だけが残り、営業利益率が下がる。人材投資が収益に変わるまでの時間が長引くリスクがある。
運転資金と純現金の見かけ
純現金は時価総額の約4割あるが、大型案件の前受けや買掛金が混ざり、自由に使える額は見かけより小さい。案件の入金と支払のタイミングで、現金は大きく動く。
今後の分かれ目
- 北米で電池製造装置の新しい大型案件が受注できたら
- エナジーソリューションズの利益が再び積み上がり、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 受注高が2期続けて減り、増員した人件費が重くなったら
- 営業利益率は過去の平均に戻りやすく、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ヘルスケアと航空・インフラの営業利益が引き続き2桁で伸びたら
- 電池に頼らない収益の柱ができ、中立の利益率を高めに見てよい。
- 装置メーカーが日本で直販を強化したら
- 手数料の低下で数量が同じでも利益が減るので、中立の利益率を下げる。
- 純現金のまま株価が下がり、TOBや大型の自社株買いが出たら
- 純現金の戻り方が早まり、時価総額への配分が見直される。
- 北米・中国・インドのいずれかで設備投資が急に冷えたら
- 海外の売上の過半が影響を受けるので、数量を下げる側に確率を寄せる。
見ておくもの
- 受注高と受注残(特にエナジーソリューションズ)
- 営業利益率の推移(6%台を保てるか)
- ヘルスケア・航空・インフラの利益
- 中期計画(営業利益150億円)の進み具合
- 自社株買いと配当(性向40%・DOE4%)
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から、普通の堀(残る割合1/2)を前提に決めた。資本コストは7.5%に quality +0.75% を足した8.25%で、同じ領域の山善・泉州電業(+0.7〜0.8%)と揃え、確率は動かしていない。今の株価や同業のPERは使っていない。悲観は事業の稼ぐ力と純現金+売れる資産の大きい方で置き、谷のPBRは使っていない。新リース会計基準で営業利益や有利子負債の形が変わる点は、10年後の数字も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)に揃えた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.3→18.66 倍・やや楽観 PER 12.3→17.63 倍・中立 PER 12.3→17.1 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。顧客集中・大型案件の山谷などの個別リスクは、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.00%。