結論
東陽テクニカは、海外の最先端の計測・試験装置を日本に輸入し、据え付けと保守までつけて売る技術商社だ。顧客は自動車メーカー、通信事業者、官公庁、研究機関。自社で作る製品と保守サービスも持ち、粗利率は 45% 前後と商社としては高い。
筆者の結論は、10 年で見ると今の値段は割高に傾いているというものだ。理由は、今期の営業利益 36 億円が、昨期の期ずれが戻る分や防衛の大型案件を含んだ山に近い水準で、その利益に市場が先の成長まで乗せているからだ。
事業は悪くない。防衛、サイバーセキュリティ、量子と、国の予算が向かう分野に商材を揃えている。自己資本比率は 7 割、財務の不安もない。会社は 2030 年に営業利益 75 億円を掲げ、受注も過去最高だ。
ただし、案件が少数で大きいぶん、売上が期をまたいで動く。昨期は売上が伸びず営業利益が 4 割減った。自己資本利益率は 4% 台で、資本コストに届いていない。
中立の筋書きでは、営業利益は 10 年後に 50 億円。そこまで育っても倍率は 12 倍に届かず、本質価値は今の時価総額を 2 割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、東陽テクニカは「商売は堅いが、資本が重くて稼ぎが薄い会社」だ。技術を売って保守で稼ぐ形は、10 年後も要る。借金に頼らず、財務は安全域が厚い。
ただ、資本の使い方が弱い。自己資本 270 億円に対し、営業利益は昨期で 19 億円、直近 10 年の中央値で 15 億円ほどだ。在庫と売掛金と持ち合い株に資金が眠り、資本コストを稼げていない。この資本をどう使うかが、評価の分かれ目になる。
会社は 2027 年 9 月期の自己資本利益率を 11% に上げる計画だ。利益が 45 億円に増えれば届く。筆者はこの計画に、案件の期ずれという割引をかける。
倍率は、稼ぐ力に見合う 12 倍弱が上限だ。山の利益に高い倍率をかけない。
長く持つ価値があるかは、防衛とサイバーの利益が、案件の波を超えて積み上がるかで決まる。その確信が持てるまでは、安全域は薄いと考える。
何で稼ぐ会社か
東陽テクニカは、技術商社と呼ばれる会社だ。世界 150 社以上のメーカーから計測・試験の装置を仕入れ、顧客の開発現場に合わせて組み立て、使い方の支援と保守まで引き受ける。自社で作る製品もあり、通信回線を丸ごと記録する装置などで知られる。
事業は 6 つに分かれる。最大は情報通信・情報セキュリティで、売上の 4 分の 1。通信事業者向けの試験装置と、サイバー攻撃を調べる製品を売る。2026 年 1 月に、官公庁向けの遠隔監視装置を作るソニックガードを買収した。
次が先進モビリティ。自動運転や EV の開発で、車のメーカーが使う試験システムを売る。脱炭素・エネルギーは、燃料電池や水電解、電池の評価装置。EMC・大型アンテナは、電磁ノイズの試験設備だ。
海洋・防衛は売上こそ小さいが、成長の主役だ。海底地形を測る装置や、水中ドローン、暗視カメラを防衛省などに納める。会社は防衛関連の売上を 2030 年に 150 億円以上にすると言う。
そのほか、ソフトウェア開発の支援ツール、量子コンピューターの代理店事業を手がける。
優良さと弱いところ
筆者が評価するのは、技術の目利きと、納めたあとの保守を組み合わせた商売だ。顧客の研究や開発の現場に入り込み、仕様の相談から校正までつきあう。装置を売って終わりでなく、保守と更新が積み上がるため、粗利率は 45% 前後で安定している。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは深くない。扱う商品の多くは海外メーカーのもので、代理店契約は相手の都合で終わる。メーカーが買収されたり直販に移ったりする危うさが、いつもある。自社製品を増やすのは、この弱みを補う動きだ。
資本の効率は低い。自己資本利益率は 10 年の中央値で 4% 台。在庫と売掛金、投資有価証券が厚く、利益に比べて資本が重い。会社は 2027 年 9 月期に 11% を掲げるが、実績はまだ 4% 台だ。
経営は資本政策に前向きになった。配当は自己資本の 5% 以上と決め、自社株買いを重ね、自己株式 400 万株を消却する。その一方で、売上が期をまたいで動く癖は直っていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の需要は、顧客の研究開発費と設備投資の波で決まる。足元で追い風なのは、国の予算が動く分野だ。防衛費は増額が続き、水中ドローンなどの装備品が標準採用された。同社も防衛の大型案件を落札し、受注が伸びた。サイバーセキュリティも、官公庁と通信事業者の投資が続く。
逆風は自動車だ。米国の関税や EV 政策の転換で、主要顧客の自動車メーカーが開発投資を絞った。会社も、自動運転の海外大型案件の計上が遅れた。脱炭素は、燃料電池と電気化学の案件で顧客都合の遅れが出ている。
競合は分野ごとに違う。計測器の輸入では、ほかの専門商社や、メーカーの日本法人の直販が相手になる。情報通信では海外メーカーの直販と競う。
業界の構造は、商社が薄く稼ぐ形から、技術と保守で稼ぐ形へ移っている。メーカー側が直販を強めれば、取り分は減る。サイバーや量子のように新しく立ち上がる市場は、最初の代理店契約を押さえた商社に取り分がある。ただし、新しい市場は立ち上がりの時期が読みにくく、量子の実機の稼働は 2027 年春の予定と、売上になるのはまだ先だ。
資本政策と M&A
還元は厚くなった。配当は自己資本の 5% 以上で、今期は年 15 億円ほど、9 年連続の増配となる。自社株買いは上限 15 億円を発表し、すでに 60 万株超を買い付けた。自己株式 400 万株は 2026 年 9 月に消却した。株主優待も新設したが、年 1 億円に満たず、還元の差は小さい。
投資は M&A が柱だ。2026 年 1 月にソニックガードを 7.7 億円で買った。同社は 2025 年 11 月期に売上 11 億円、営業利益 2 億円で、買い値は妥当と見る。社長は 100 億円規模の買収も視野にあると語る。大型の案件を重ねると、のれんの傷が利益を削る恐れがある。
株主に支配的な株主はいない。信託銀行の口座が上位を占め、生命保険会社も持つ。時価総額は 400 億円ほどで、TOB の確率は外部推計で 10 年以内に 2 割弱だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方はこう読む。受注高は過去最高の 401 億円、受注残は 246 億円と、期初の仕込みが厚い。今期は上期だけで営業利益が 31 億円と、前年同期の 2 倍を超えた。粗利率も 2 ポイント上がった。
成長の中身が変わった。防衛は 2027 年に 50 億円、2030 年に 150 億円を狙い、陸上・航空自衛隊向けの専任チームも作った。水中ドローンは標準装備に採用され、継続して買われる。サイバーセキュリティと通信の試験は、官公庁と通信事業者の投資が続く。
量子の代理店契約や英国の高感度カメラメーカーとの契約は、新しい商材を押さえる動きだ。M&A の余地もある。社長は 100 億円規模の買収を視野に入れ、財務は自己資本比率 7 割で余力がある。
還元も変わった。配当は自己資本の 5% 以上で、自社株買いは上限 15 億円、自己株式の消却も進めた。2030 年に営業利益 75 億円、自己資本利益率 15% の長期ビジョンが達成されれば、今の値段は安い。
慎重な見方
慎重な見方は、まず利益の質を疑う。昨期は売上が 7% 減り、営業利益は 43% 減った。大型案件の期ずれが原因とされるが、期ずれは何度も起きている。今期の上期の好調は、その戻りと前倒しの計上による。第 3 四半期は前倒しの反動で減る見通しだ。
受注高は 3 四半期の累計で前年を 6% 下回った。前年に防衛の超大型案件があったためと説明するが、そうした案件が毎年出る保証はない。
自動車と脱炭素は不調だ。米国の関税と EV 政策の転換で、主要顧客の開発投資が絞られた。燃料電池でも顧客都合の遅れが出ている。海外の EMC は中国が軟調だ。
資本効率は 4% 台のまま。会社自身の資本コストの認識は 6% 台で、これを下回る年が長く続いた。しかも代理店契約は、メーカーの買収や直販化で失う。ソニックガードに続く M&A も、買う側が高く買えば減損になる。
長期ビジョンは計画に過ぎず、過去の中計の達成度を見れば割り引くべきだ。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は受注と防衛の追い風、慎重な言い分は利益の質と資本効率の低さだ。資本の稼ぎが資本コストに届かない期間が長く、期ずれの癖も繰り返された。慎重な指摘のほうが重いと見る。
そこで確率は中立を最も厚くしたうえで、やや悲観と悲観を楽観側より厚く置いた。10 年の悲観は、代理店契約の喪失と防衛案件の失注が重なる構造的な負けで、1 割強を置く。財務は堅く、倒れる筋書きではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 2,370 円495 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,034 円216 億円)。 今の値に割り戻すと 1,802 円376 億円、今との差 −6.0%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,010 円1,046 億円 | 1,585 円331 億円 | +244.1% | +13.2% | 462 円96 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,786 円790 億円 | 1,355 円283 億円 | +168.2% | +10.4% | 1,028 円215 億円 |
| 中立 | 38% | 2,668 円557 億円 | 1,102 円230 億円 | +96.7% | +7.0% | 1,433 円299 億円 |
| やや悲観 | 24% | 903 円189 億円 | 747 円156 億円 | −13.9% | −1.5% | 396 円83 億円 |
| 悲観 | 11% | 287 円60 億円 | 493 円103 億円 | −59.3% | −8.6% | 86 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,370 円495 億円 | 1,034 円216 億円 | +77.6% | +5.9% | 3,404 円711 億円 |
今の株価時価総額 1,917 円400 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:防衛と情報通信が計画を超えて育つ 利益 61 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 5,010 円1,046 億円
防衛省の調達が続き、海洋・防衛の売上は今の 3 倍を超える。水中ドローンなど標準装備に採用された製品が、継続の買い替えを生む。情報通信は通信事業者の試験とサイバーセキュリティで倍増し、ソニックガードの監視装置も官公庁に広がる。
量子コンピューターの代理店事業も、研究機関の導入が進んで利益を出し始める。2〜3 件の買収も当たり、のれんの減損は出ない。自動車関連は EV の調整が終わり、自動運転の開発が戻る。
営業利益率は 9% 台後半へ上がる。ただし高付加価値の事業が増えても、案件の波は消えない。利益が一本調子で伸びることはない。
- 先進モビリティ:数量 0.8(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 163 億円・営業利益 11 億円。自動運転の開発が戻り 6 割増
- 脱炭素・エネルギー:数量 0.7(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 149 億円・営業利益 12 億円。水素・電池が 9 割増
- 情報通信・情報セキュリティ:数量 1.1(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 218 億円・営業利益 26 億円。通信とセキュリティが倍増
- EMC・大型アンテナ:数量 0.4(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 86 億円・営業利益 8 億円。自動車向け大型案件が増える
- 海洋・防衛:数量 0.6(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 116 億円・営業利益 14 億円。防衛が 3 倍超
- ソフトウェア開発支援・その他:数量 0.4(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 88 億円・営業利益 9 億円。ソフトと量子が伸びる
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.15 倍、時価総額 1,046 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛費の増額が続き、情報通信と M&A も当たる筋書きで、起こりにくいと見て小さく置いた。
やや楽観 20% やや楽観:長期ビジョンに近い形で伸びる 利益 49 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 3,786 円790 億円
防衛と情報通信が計画に近い速さで育ち、売上は 700 億円台に乗る。会社の長期ビジョンの 600 億円を物価の分だけ上回る形だ。海洋・防衛は 2.8 倍、情報通信は 1.7 倍になる。
粗利率は 45% 台を保ち、リカーリング、つまり保守や更新で毎年積み上がる売上が増えて、案件の波を和らげる。自動車関連は 2 割ほど増えるにとどまるが、赤字にはならない。
買収は 100 億円規模のものを 1 件こなし、のれんの減損は小さい。還元は配当と自社株買いで利益の 8 割ほどを続け、自己資本は厚くならない。営業利益率は 9% 近くまで上がる。
- 先進モビリティ:数量 0.7(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 143 億円・営業利益 8 億円。自動車関連が 4 割増
- 脱炭素・エネルギー:数量 0.6(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 125 億円・営業利益 9 億円。脱炭素が 6 割増
- 情報通信・情報セキュリティ:数量 0.9(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 185 億円・営業利益 20 億円。情報通信が 7 割増
- EMC・大型アンテナ:数量 0.4(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 77 億円・営業利益 6 億円。EMC が 3 割増
- 海洋・防衛:数量 0.5(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 102 億円・営業利益 11 億円。防衛が 2.8 倍
- ソフトウェア開発支援・その他:数量 0.4(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 78 億円・営業利益 7 億円。ソフトが 5 割増
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.13 倍、時価総額 790 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:長期ビジョン(2030 年に営業利益 75 億円)に近づく筋書き。受注は過去最高だが、期ずれの癖があるため中立より小さくした。
中立 38% 中立:計画の半ばまで届き、あとは物価で伸びる 利益 38 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 2,668 円557 億円
防衛が 2 倍強、情報通信が 4 割台の増加と、会社が掲げる成長の半ばまで届く。自動車関連は EV の調整が長引き、1 割台半ばの伸びにとどまる。脱炭素は燃料電池の遅れが響き、物価の分を除くと小さな伸びだ。
営業利益率は 8% 強で、直近の 9% 台の山にはとどかない。10 年のあいだに、案件の期ずれと設備投資の調整が一度は重なり、利益が 2 年ほど落ちる。
仕入れ先の一部が直販に移る事態も起きるが、代わりの商材を揃えて埋める。買収は 20〜50 億円規模の小さなものが数件で、成果は限定的だ。配当は自己資本の 5% 以上という方針を守る。筆者は、これが 10 年の落としどころだと見る。
- 先進モビリティ:数量 0.6(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 127 億円・営業利益 7 億円。EV の調整が長引き 25% 増
- 脱炭素・エネルギー:数量 0.5(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 110 億円・営業利益 7 億円。燃料電池の遅れで 4 割増
- 情報通信・情報セキュリティ:数量 0.8(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 158 億円・営業利益 17 億円。情報通信が 45% 増
- EMC・大型アンテナ:数量 0.3(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円。EMC は 15% 増
- 海洋・防衛:数量 0.4(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 80 億円・営業利益 8 億円。防衛が 2.2 倍
- ソフトウェア開発支援・その他:数量 0.3(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 67 億円・営業利益 6 億円。ソフトは 3 割増
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.66 倍、時価総額 557 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛と情報通信が育ち、自動車関連が足を引っ張る穏やかな筋書き。景気の波を一度は挟む前提で最も厚くした。
やや悲観 24% やや悲観:期ずれと自動車の不振で利益が伸び悩む 利益 23 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 903 円189 億円
期ずれと設備投資の遅れが繰り返され、売上は 500 億円に届かない。防衛は伸びるが、案件の大きさに左右されて安定しない。自動車関連は米国の関税と EV 政策の転換で、開発投資が絞られる。
仕入れ先が買収されたり直販に切り替えたりして、いくつかの商権を失う。粗利率は 40% 台前半に落ち、人件費の増加が営業利益率を 6% 台に押し下げる。海外の EMC は、中国の景気で苦しい。
買収のうち 1〜2 件でのれんの傷が出て、自己資本は膨らむ一方だ。配当は自己資本の 5% を守ろうとして、利益に対する割合が上がる。自社株買いは控える。ROE は 7% 前後にとどまる。
- 先進モビリティ:数量 0.5(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 195(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 104 億円・営業利益 4 億円。自動車関連はほぼ横ばい
- 脱炭素・エネルギー:数量 0.4(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 195(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 87 億円・営業利益 4 億円。脱炭素は 15% 増
- 情報通信・情報セキュリティ:数量 0.6(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 195(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 121 億円・営業利益 10 億円。情報通信は 15% 増
- EMC・大型アンテナ:数量 0.3(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 195(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 58 億円・営業利益 4 億円。EMC は横ばい
- 海洋・防衛:数量 0.3(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 195(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 56 億円・営業利益 5 億円。防衛は 1.6 倍
- ソフトウェア開発支援・その他:数量 0.3(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 195(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。ソフトは横ばい
倍率:事業の純利益 23 億円・ROE 6.9% は k 8% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。資本の稼ぎが資本コストに届かないため、上限の約 7 割の 8.2 倍に置いた。
確率:期ずれと顧客の設備投資の遅れは過去にも繰り返された。自動車関連の弱さと代理店契約の不確かさを考え、厚めに置いた。
悲観 11% 悲観:構造的に負け、取扱商品を失う 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 287 円60 億円
仕入れ先の主要メーカーが直販に切り替え、代理店の商権を失う。防衛では大きな案件を落札できず、自社製品の更新も遅れる。自動車関連の開発投資は縮み、EMC・大型アンテナの設備案件が減る。
固定費の人件費と研究開発費は残るので、営業利益率は 4% を割る。買収したソニックガードや量子事業ののれんも減損する。純利益は 10 億円を割り、配当は自己資本の 5% 以上という方針を守れず、大きく絞られる。自社株買いは止まる。
財務は堅く、自己資本比率は高いままで倒れはしない。だが利益を生まない在庫と売掛金が積み上がり、資本の稼ぎは資本コストを大きく下回る。評価は稼ぐ力で測るしかなくなる。
- 先進モビリティ:数量 0.4(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 180(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 73 億円・営業利益 2 億円。自動車関連が 2 割減
- 脱炭素・エネルギー:数量 0.3(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 180(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。脱炭素が 2 割減
- 情報通信・情報セキュリティ:数量 0.5(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 180(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 83 億円・営業利益 4 億円。情報通信が 15% 減
- EMC・大型アンテナ:数量 0.2(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 180(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。EMC が 25% 減
- 海洋・防衛:数量 0.2(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 180(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。防衛もやや減る
- ソフトウェア開発支援・その他:数量 0.2(取扱高(億ドル換算・実質))× 価格 180(1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。ソフトが 2 割減
倍率:事業の純利益 8 億円・ROE 2.8% は k 以下で、上限は 1÷k=11.8 倍。構造的に負けて稼ぐ力が資本コストを大きく下回る筋書きのため、上限の約 6 割の 7.5 倍に置いた。
確率:仕入れ先の直販や買収、防衛案件の失注、買収の失敗が重なる構造的な負け。小さな会社で案件に偏りがあり、1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
先進モビリティ
自動車の自動運転・EV 開発向けの試験・計測システム、EV 充電の評価、車載ネットワークの評価。
| 数量取扱高(億ドル換算・実質) | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.5 | 150 | 76 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.6 | 201 | 127 | 7 |
取り方:先進モビリティの売上 76.0 億円(2025/09 期、公表の事業別売上)を、ドル換算の取扱高 0.51 億ドル(実質)×150 円に分けた推定値。為替は 150 円で固定し、物価の分は価格の指数に入れた。営業利益 1.0 億円は事業別の開示が確かめられないため、全社 19.1 億円に合わせた推定(期ずれで落ちた年)。
脱炭素・エネルギー
燃料電池・水電解・電池の評価システム、電気化学測定。研究機関と自動車・電機メーカーが顧客。
| 数量取扱高(億ドル換算・実質) | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.4 | 150 | 58 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 201 | 110 | 7 |
取り方:脱炭素・エネルギーの売上 58.4 億円を、取扱高 0.39 億ドル(実質)×150 円に分けた推定値。営業利益 3.2 億円は全社に合わせた推定。燃料電池・電気化学で顧客都合の遅れが出ている。
情報通信・情報セキュリティ
通信事業者向けの試験製品、大容量パケットキャプチャ装置、サイバーセキュリティ製品。子会社ソニックガードもここ。
| 数量取扱高(億ドル換算・実質) | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.5 | 150 | 81 | 7 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 201 | 158 | 17 |
取り方:情報通信・情報セキュリティの売上 81.2 億円を、取扱高 0.54 億ドル(実質)×150 円に分けた推定値。営業利益 7.0 億円は全社に合わせた推定で、自社製品(パケットキャプチャ装置)の粗利が厚い。ソニックガード(売上約 11 億円)は含まない今期前の値。
EMC・大型アンテナ
電磁ノイズ試験の設備と大型アンテナ試験室、保守・校正。自動車・電機メーカー向け。
| 数量取扱高(億ドル換算・実質) | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.3 | 150 | 44 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 201 | 68 | 5 |
取り方:EMC・大型アンテナの売上 44.3 億円を、取扱高 0.30 億ドル(実質)×150 円に分けた推定値。営業利益 2.3 億円は全社に合わせた推定。海外(中国中心)は軟調。
海洋・防衛
マルチビーム測深機、水中ドローン、微光暗視カメラなど。防衛省と海洋研究機関が顧客。
| 数量取扱高(億ドル換算・実質) | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.2 | 150 | 27 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 201 | 80 | 8 |
取り方:海洋・防衛の売上 27.1 億円を、取扱高 0.18 億ドル(実質)×150 円に分けた推定値。営業利益 2.5 億円は全社に合わせた推定。受注は大型案件で振れる。
ソフトウェア開発支援・その他
ソフトウェア開発の支援ツール、電子顕微鏡や量子コンピューターなどの新規事業。
| 数量取扱高(億ドル換算・実質) | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円×物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.3 | 150 | 39 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 201 | 67 | 6 |
取り方:ソフトウェア開発支援(23.8 億円)とその他(約 14.8 億円)を合わせた売上 38.6 億円を、取扱高 0.26 億ドル(実質)×150 円に分けた推定値。営業利益 3.1 億円は全社に合わせた推定。
リスクと懸念
案件の期ずれと利益の振れ
売上の多くは少数の大型案件で、顧客の都合で計上が期をまたぐ。昨期は売上が 7% 減り、営業利益は 43% 減った。今期の好調には、その戻りと前倒しが含まれる。期ずれは過去にも何度か起きており、1 期の数字だけで会社の実力を測るのは危うい。
代理店契約の喪失
主な商材は海外メーカーの製品だ。メーカーが買収されたり、日本法人を作って直販に切り替えたりすれば、商権を失う。自社製品を増やしているが、売上の多くは他社製品だ。主力メーカーとの契約の動向は、開示だけでは見えにくい。
自動車関連の開発投資の縮み
先進モビリティと EMC は自動車メーカーが主な顧客だ。米国の関税と EV 政策の転換で、顧客の業績と投資が揺れている。顧客の設備投資の遅れは案件の遅れに直結する。自動運転の海外大型案件の計上も遅れた。
防衛の大型案件への偏り
海洋・防衛は成長の主役だが、案件は入札で、前年に 27 億円の水中ドローンを落札した反動もある。次の大型案件を取れなければ、受注は落ちる。防衛関連 150 億円の目標は、大型案件の継続が前提だ。
M&A の失敗とのれんの減損
社長は 100 億円規模の M&A を視野に入れる。自己資本利益率が低い会社が高く買えば、のれんの減損で利益を損なう。直近のソニックガードは 7.7 億円と小さいが、次に大型を買うかどうかが資本効率を左右する。
資本効率が上がらない
自己資本 270 億円に対し、営業利益は昨期で 19 億円。ROE は 4% 台で、会社が自分で見る資本コスト 6% 台にも届かない。在庫、売掛金、投資有価証券が厚く、利益を増やせなければ、還元の厚みだけでは資本の稼ぎは上がらない。
今後の分かれ目
- 受注高が 2 期続けて前年を下回る
- 大型案件の積み上がりが続かない。楽観側の確率を下げ、やや悲観と悲観を厚くする。
- 防衛関連の受注が 50 億円を超えて定着する
- 海洋・防衛の数量を引き上げ、楽観側の確率を上げてよい。ただし大型案件の偏りは確かめる。
- 主な取扱メーカーの買収や直販化が報じられる
- 代理店契約を失う恐れ。該当事業の利益率と数量を下げ、悲観の確率を上げる。
- 100 億円規模の買収を発表する
- のれんの減損の恐れが増す。買う事業の利益率と価格を確かめ、悪ければ悲観の確率を上げる。
- 自動車メーカーの開発投資の回復で、先進モビリティの受注が戻る
- 中立の自動車関連の数量を上げる。期ずれが解けたかを、売上計上のタイミングで確かめる。
- 営業利益率が 2 期続けて 9% を超える
- 中立の利益率を上方に直す余地。ただし山の利益か、定着した水準かを粗利率と保守売上で確かめる。
見ておくもの
- 受注高と受注残高(四半期ごと)
- 防衛関連の売上と大型案件の落札
- 粗利率とリカーリング(保守・更新)売上の割合
- 主な取扱メーカーの買収・直販化の動き
- 自社株買いの実行額と、ROE の推移
倍率と資本コストの決め方
先に 6 つの事業ごとに取扱高(実質)×価格(為替 150 円×物価 1.34 倍)と営業利益率を積み、純利益と自己資本の流れから ROE を出して、その ROE で正当化 PER の上限を計算し、楽観〜中立を上限の約 9 割に置いた。事業別の営業利益と数量の分解は開示でなく推定。資本コストは 8%(基本 7.5%、quality +1.0%)。純現金は小さく余った現金は立てていない。自社株買いで実行済みの分は自己資本の起点と株数から外した。本社の賃借は小さく、リースの形の変化は反映していない。今の株価や PER からは逆算していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.9→17.15 倍・やや楽観 PER 13→16.13 倍・中立 PER 11.9→14.66 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。