結論
タカチホは、ホテルや駅、高速道路のサービスエリアに土産品を卸す長野の会社だ。筆者の結論は「今の値段はほぼ妥当で、割安とは言えない」。直近の利益は万博の追い風で押し上げられており、これを10年の水準と見ると高く見積もりすぎる。
稼ぎの9割近くは卸の部門が出す。卸の利益率は8%台で安定している一方、新型コロナの時には売上の半分を失う脆さも見せた。2021年3月期の営業赤字は7億円に達した。観光という景気・疫病・天候に左右される需要に乗る以上、この揺れは10年のうちに一度は来ると見る。
国内の旅行者は人口とともにゆるやかに減る。その穴をインバウンド(訪日客)と、自社企画の菓子で埋められるかが分かれ目になる。日本アジア投資との提携で土産業界の再編に加わる道も開いたが、まだ数字には表れていない。
財務は堅い。借金より現金が多く、自己資本比率は6割に近い。ただ、この現金は卸の運転資金と温浴施設の設備更新に回る分が多く、余剰とは見ない。10年の期待は資本コストをわずかに下回り、割安・割高どちらにも寄らない評価になった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くないが、安くもない」。事業の稼ぐ力は卸の8%台の利益率にあり、これを10年守れるかが全てだ。堀が弱いので、守れる確率は6〜7割と見る。
オーナー利益(株主が自由に使える利益)は、設備の更新を引くと純利益の8割ほどだ。温浴施設の設備は古く、物価で上がる建築費が重い。賃貸の建物も同じだ。
経営は、借金を返し、不採算店を閉め、現金を厚くしてきた。守りの資本配分は評価できる。ただ、積んだ現金を株主に戻す動きは弱い。配当性向を方針の3割まで上げれば、評価は変わる。
安全域は薄い。楽観の筋書きでも今の値段を大きく超えるのは難しく、悲観で割れる幅の方が大きい。分からない部分が観光の需要にあるため、確信度は低い。持ち続けたいかと問われれば、今の値段では「待つ」と答える。
何で稼ぐ会社か
中核は「みやげ卸売」だ。ホテルの売店、JR駅の土産店、高速道路のサービスエリアに、ご当地の菓子や雑貨を届ける。売上の8割強、営業利益の大半がここから出る。
周辺に4つの事業がある。自社の売店で売るみやげ小売、自社の菓子工房でつくるみやげ製造、長野市の日帰り温浴施設「まめじま湯ったり苑」、商業施設の不動産賃貸だ。アウトドア用品店は赤字が続き、規模を縮めている。
卸の収益は「数を運ぶ力」と「仕入先・売り先との関係」で決まる。倉庫と配送の網があれば、小さな土産店が一軒ずつ仕入れるより安く済む。一方、売り先の観光施設は商品の自前企画や直販を進めており、卸が中抜きされる圧力は常にある。
2019年以降、不採算の店は閉めるか譲渡してきた。コロナ禍の2021年3月期は売上が46億円まで落ちたが、卸の回復とともに2026年3月期は97億円まで戻った。連結の従業員は218人、臨時は93人。小さな会社で、人手と物流費の上昇がそのまま利益に響く。
本社は長野市で、観光地・駅・高速道路という「人が集まる場所」の近くに物流の拠点を持つ。これが他社の参入を少しだけ遠ざけている。
優良さと弱いところ
筆者は、堀(他社がまねできない強み)は「普通」と見る。強いブランドも独占もない。あるのは、観光の現場に長く物を届けてきた実績と、土産という少量多品種の商いに向く物流の網だ。
数字は悪くない。卸の利益率は8%台で2年続いて崩れず、自社企画の菓子は2割の利益率がある。ただし利益の山は万博の年に当たり、翌期の会社予想は減収だ。直近の四半期は売上が1割弱減り、営業利益は3割減った。
弱い所もある。売店とアウトドア用品は縮小が続き、全社費用は年4億円近く、セグメント営業利益の4割強に当たる。この費用が物価で増えれば、卸の利益の伸びは相殺される。
資本の使い方は慎重だ。借金を返し、現金を厚くし、配当は利益の2割ほどにとどめてきた。方針の3割には届いていない。日本アジア投資との提携では、自己株の処分で1.4億円を得た。土産業界の再編を狙う手になるが、買収で価値を壊す危うさも同じだけある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
土産品の需要は、旅行者の数と1人あたりの土産代で決まる。国内旅行者は人口減でゆるやかに減る。筆者は実質の数量を10年で0.9〜1.0倍と見る。
支えはインバウンドだ。2025年の訪日客の消費は過去最高の9.5兆円になった。ただ、観光庁の統計では買い物代の割合はやや下がっており、土産の需要は宿泊や飲食ほど強くない。訪日客の増加が、そのまま土産の数量増になるとは限らない。
競争は2つの方向から来る。1つは、売り先の観光施設や駅の運営会社が、自前で商品を企画して卸を飛ばす動きだ。もう1つは、オンライン販売と、土産を介さない購買の広がりだ。どちらも卸の利益を薄くする圧力になる。
人件費と物流費は、2024年以降のインフレで上がり続ける。値上げを売り先に通せる卸だけが利益率を守れる。タカチホの卸は値上げを通せていると見るが、売り先の力が強い。
業界は小さな会社が多く、再編の余地が大きい。日本アジア投資の土産ファンドは、その受け皿になりうる。ただし、卸の利益が薄いため、買収額が高いと割に合わない点には注意がいる。
資本政策と M&A
還元の方針は連結配当性向30%だが、実績は2割ほどだ。2026年3月期の配当は総額0.7億円にとどまる。来期は1割増の予想。方針どおりなら増配の余地はある。
2025年3月に日本アジア投資と資本業務提携を結んだ。自己株式5万株を約1.4億円で同社のファンドに割り当て、土産業界の再編に向けたファンドにも出資者として参加する。同社の保有が議決権の20%を超えない約束もある。ほかにも大量保有報告で9%台の投資会社が2社ある。
株主優待は、100株以上で入浴券5枚か約2,500円相当の自社菓子。費用の開示はないが、株数が小さいので年0.1億円に満たないと推定し、10年の還元に0.5億円を足した。
買収は、土産の卸や小売を買い増す形が自然だ。成功の条件は、買った先の仕入先と売り先を引き継ぎ、物流費を下げること。失敗すれば、積んだ現金が減損に消える。TOBの可能性は、小さな時価総額と大口株主の存在から、ゼロとは言えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
万博で卸の売上が2割伸びたのは、取り込める需要が大きい証拠だ。訪日客は政府目標の6,000万人へ向かい、土産の数量が伸びる。
自社企画の菓子は利益率が2割あり、卸の中で自社品を増やせば、卸全体の利益率は8%台から9%台に上がる余地がある。日本アジア投資のファンドと組み、地方の土産卸を買い集めれば、物流と仕入の規模の利益が出る。
財務は借金より現金が多く、設備投資の負担も小さい。配当性向を方針の3割に近づけるだけで、株主への還元は5割増える。2021年に営業赤字7億円を乗り切った会社が、いま営業利益5億円を出している。その回復力は本物だ。万博の年は特別だが、特別な年を除いても、利益率は2期続けて安定している。この安定が10年続くなら、いまの値段は安い。卸の取引先は全国の観光地に散らばり、1社への依存が小さいことも、利益の安定を支える。
売店とアウトドアの赤字を整理し終えれば、全社の利益率はもう1段上がる。土産は、旅の最後に必ず買う習慣で、需要の底が硬い。
慎重な見方
利益のうち万博の押し上げを差し引くと、卸の稼ぎは10年前とあまり変わらない。直近の四半期は売上が1割減り、営業利益は3割減った。通期計画への進捗も5年平均を下回る。
国内の旅行者は減り、インバウンドの買い物代の割合は下がっている。売り先の観光施設が自前で商品を企画する動きもあり、卸は中抜きの圧力を受ける。売店、温浴、アウトドアは縮小か低利益だ。
全社費用が物価で増えると、卸の利益の伸びを食う。日本アジア投資との提携は、成果が見えないまま買収の失敗リスクだけを増やす。観光は疫病・災害・景気で振れ、2021年の営業赤字7億円は10年のうちにもう一度起こりうる。土産という商いは景気が悪くなれば真っ先に削られる支出で、数量が戻るまで固定費だけが残る。
株主優待や配当が小さいため、株価を支える買い手も薄い。小さな会社で売買が少なく、悪い知らせが出た時に値が大きく動く点も、安全域を削る。日本アジア投資や他の大口株主が売りに回る可能性も、値を押し下げる。
どちらに重みを置いたか
ほぼ互角だが、慎重な見方がやや強い。万博の山は確かに利益を押し上げており、直近の四半期がそれを裏づけた。ただ強気の言う回復力も本物なので、悲観は12%にとどめ、やや悲観を23%に置いた。中立を軸に、利益の山が剥げる側へわずかに厚く配分した。結果として、期待は今の値段とほぼ同じ水準になった。割安と言い切る材料は、いまは足りない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,696 円61 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,452 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 5,016 円35 億円、今との差 +39.5%、 期待の年率 +10.9%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 19,953 円141 億円 | 2,599 円18 億円 | +527.3% | +20.2% | 1,579 円11 億円 |
| やや楽観 | 20% | 14,662 円103 億円 | 2,045 円14 億円 | +364.7% | +16.6% | 3,341 円24 億円 |
| 中立 | 38% | 9,480 円67 億円 | 1,548 円11 億円 | +206.8% | +11.9% | 4,191 円30 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,880 円20 億円 | 1,008 円7 億円 | +8.1% | +0.8% | 894 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 852 円6 億円 | 341 円2 億円 | −66.8% | −10.4% | 143 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,696 円61 億円 | 1,452 円10 億円 | +182.3% | +10.9% | 10,148 円71 億円 |
今の株価時価総額 3,595 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 日本アジア投資との再編が実り、自社企画品と輸出が伸びる 利益 8 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 19,953 円141 億円
日本アジア投資のファンドと組んだ土産卸の買い増しが成功し、卸の規模が広がる。自社企画の菓子は輸出も伸び、卸の中での比率が上がる。
訪日客は6,000万人に近づき、土産の数量は今より1割以上増える。卸の利益率は9.5%まで上がる。
売店・アウトドアは整理が終わり、赤字は消える。純利益は今の2倍強になり、配当性向も方針の3割に近づく。それでも買収の成功は買った先の統合が前提で、卸の中抜き圧力は残る。その場合でも、積んだ現金が大きく減らない限り、株主の損は限られる。
筆者がこの筋書きに置く確率は低い。条件が多く、どれか1つが欠ければ中立に戻るためだ。
- みやげ卸売:数量 1,850(出荷した土産品の個数(万個))× 価格 700(1個あたり卸値(円))→ 売上 130 億円・営業利益 12 億円。利益率9.5%
- みやげ小売:数量 55.0(来店客数(万人))× 価格 1,608(客単価(円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。利益率8.5%
- みやげ製造:数量 110(販売個数(万個))× 価格 580(1個あたり売値(円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。利益率22.0%
- 温浴施設:数量 33.0(入浴客数(万人))× 価格 1,340(客単価(円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。利益率13.0%
- 不動産賃貸:数量 1.1(賃貸面積(万㎡))× 価格 17,373(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。利益率36.0%
- アウトドア用品・その他:数量 4.5(来店客数(万人))× 価格 7,906(客単価(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。利益率3.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 17.03 倍、時価総額 130 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再編の成功と訪日客の増加が重なる上振れ。実現の条件が多く、7%にとどめた。
やや楽観 20% 万博後も需要が定着し、買収も小さく成功する 利益 6 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 14,662 円103 億円
万博の押し上げは剥げるが、訪日客と国内旅行の下支えで卸の数量は今の水準を保つ。卸の利益率は9%に上がり、自社企画の菓子が増えて製造の利益も伸びる。
日本アジア投資のファンドとは小さな案件を1〜2件進め、卸の物流網に乗せる。売店と温浴は現状維持で、アウトドアの赤字は止まる。
純利益は6億円弱になり、配当は方針の3割に近づく。ただし観光需要の振れは残り、利益の安定は保証されない。2021年のような大きな落ち込みを経験した会社として、慎重さは保たれる。
この筋書きは「いまより少し良い10年」で、特別な成功は要らない。確率は2割に置いた。
- みやげ卸売:数量 1,700(出荷した土産品の個数(万個))× 価格 685(1個あたり卸値(円))→ 売上 116 億円・営業利益 10 億円。利益率9.0%
- みやげ小売:数量 53.0(来店客数(万人))× 価格 1,608(客単価(円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。利益率7.5%
- みやげ製造:数量 85.0(販売個数(万個))× 価格 536(1個あたり売値(円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。利益率20.0%
- 温浴施設:数量 31.0(入浴客数(万人))× 価格 1,340(客単価(円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。利益率12.0%
- 不動産賃貸:数量 1.1(賃貸面積(万㎡))× 価格 17,106(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。利益率35.0%
- アウトドア用品・その他:数量 4.2(来店客数(万人))× 価格 7,906(客単価(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。利益率1.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 16.02 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:万博後の水準が定着し、小さな買収が成功する筋書き。
中立 38% 万博の山が剥げ、卸の利益率は8%台で横ばい 利益 4 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 9,480 円67 億円
万博の押し上げは剥げ、卸の数量は今の9割台に落ち着く。国内旅行の減少を、インバウンドと自社企画が半分ほど埋める。
卸の利益率は8%台前半で安定する。値上げは物価並みに通せるが、売り先の力が強く、それ以上は上がらない。売店と温浴は人口減で数量が減り、アウトドアは損益ゼロ。全社費用は物価で増え、営業利益の伸びを食う。
営業利益は5.5億円ほど。ROEは7%台で資本コストを下回る。配当は利益の3割に近づくが、積んだ現金の使い道は変わらない。大きな成功も失敗もない10年になる。株主にとっては、資本コストをわずかに下回る、地味な10年である。
- みやげ卸売:数量 1,520(出荷した土産品の個数(万個))× 価格 670(1個あたり卸値(円))→ 売上 102 億円・営業利益 8 億円。利益率8.2%
- みやげ小売:数量 50.0(来店客数(万人))× 価格 1,608(客単価(円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。利益率6.5%
- みやげ製造:数量 70.0(販売個数(万個))× 価格 536(1個あたり売値(円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。利益率18.0%
- 温浴施設:数量 30.0(入浴客数(万人))× 価格 1,340(客単価(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。利益率11.0%
- 不動産賃貸:数量 1.1(賃貸面積(万㎡))× 価格 16,705(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。利益率33.0%
- アウトドア用品・その他:数量 4.0(来店客数(万人))× 価格 7,906(客単価(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。利益率0.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.34 倍、時価総額 57 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の利益から万博の押し上げを差し引き、減る国内と増えるインバウンドが相殺する中心の筋書き。
やや悲観 23% 中抜きが進み、観光の波で卸の利益率が落ちる 利益 2 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 2,880 円20 億円
売り先の観光施設が自前で商品を企画する動きが広がり、卸は値上げを通しにくくなる。数量は今より2割落ち、卸の利益率は7%に下がる。
売店は店を閉じ、温浴は設備更新の負担で利益が薄くなる。アウトドアは赤字が続く。全社費用は物価で増え、営業利益は3億円に届かない。
配当は維持するが、買収は小さな失敗で現金の一部を失う。ROEは4%台で、資本コストを大きく下回る。構造的に地盤を失う筋書きで、もう優良ではなくなっている。数量も利益率も戻らず、株主への還元も細る。
売り先の力が強まる一方で、人件費と物流費は上がり続け、卸の取り分がじわじわ削られる10年である。
- みやげ卸売:数量 1,350(出荷した土産品の個数(万個))× 価格 650(1個あたり卸値(円))→ 売上 88 億円・営業利益 6 億円。利益率7.0%
- みやげ小売:数量 42.0(来店客数(万人))× 価格 1,560(客単価(円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。利益率4.0%
- みやげ製造:数量 60.0(販売個数(万個))× 価格 520(1個あたり売値(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。利益率12.0%
- 温浴施設:数量 27.0(入浴客数(万人))× 価格 1,300(客単価(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。利益率8.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸面積(万㎡))× 価格 16,037(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利益率30.0%
- アウトドア用品・その他:数量 3.2(来店客数(万人))× 価格 7,670(客単価(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利益率-3.0%
倍率:純利益1.9億円・ROE 4%台は k を大きく下回り、上限は 1÷k=11.8倍。新しく投じる資本の稼ぎが資本コストを下回る構造的な負けの筋書きで、上限の約55%の6.5倍に置いた。
確率:売り先の直販化と観光の落ち込みで利益率が下がる筋書き。
悲観 12% 観光の大波と中抜きが重なり、卸が構造的に縮む 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 852 円6 億円
大きな観光の落ち込みが再び起き、直販化と重なって卸の数量は3割以上落ちる。卸の利益率は4%まで下がる。
売店・アウトドア・温浴は減損を出して縮小し、全社費用は残る。営業赤字が続き、買収の失敗で現金も減る。
利益で測れる価値は小さくなり、純現金の一部と投資有価証券が床になる。清算されない限り少数株主は現金の使い道を決められず、床は半分に割り引く。配当も大きく削られ、優待も縮むか止まる。
過去に2021年3月期の営業赤字を経験しており、荒唐無稽な筋書きではない。ただ、自己資本比率が高いので、会社が存続できなくなるほどではない。
- みやげ卸売:数量 1,050(出荷した土産品の個数(万個))× 価格 625(1個あたり卸値(円))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。利益率4.0%
- みやげ小売:数量 30.0(来店客数(万人))× 価格 1,500(客単価(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。利益率0.0%
- みやげ製造:数量 45.0(販売個数(万個))× 価格 500(1個あたり売値(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利益率8.0%
- 温浴施設:数量 24.0(入浴客数(万人))× 価格 1,250(客単価(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。利益率4.0%
- 不動産賃貸:数量 0.9(賃貸面積(万㎡))× 価格 15,369(1㎡あたり年間賃料(円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。利益率25.0%
- アウトドア用品・その他:数量 2.2(来店客数(万人))× 価格 7,375(客単価(円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利益率-6.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、床は売れる資産で測る。純現金と投資有価証券の税後の半分ほど(約5億円)を床とし、減損を引いた後の自己資本21.5億円に0.28倍を掛けた。今の自己資本26億円に対しては0.23倍。
確率:疫病・災害・景気の落ち込みに、直販化と買収の失敗が重なる最悪の筋書き。2021年の赤字の実績を踏まえ12%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
みやげ卸売
ホテル・駅・高速道路のサービスエリア・観光地の売店へ、ご当地の菓子や雑貨を卸す本業。
| 数量出荷した土産品の個数(万個) | 価格1個あたり卸値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,599 | 500 | 80 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1,520 | 670 | 102 | 8 |
取り方:売上79.9億円・営業利益6.7億円(利益率8.4%)。1個あたり卸値を約500円(菓子の箱物と小物の平均、推定。開示なし)と置き、個数を逆算した。万博の年で卸は前期比+20.8%と伸びており、個数はやや山の水準。
みやげ小売
自社の売店で観光客に直接売る。閉店と事業譲渡が続いてきた縮小の事業。
| 数量来店客数(万人) | 価格客単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 57.0 | 1,200 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 1,608 | 8 | 1 |
取り方:売上6.8億円・営業利益0.6億円(利益率8.3%)。客単価を約1,200円(推定)として来店客数を逆算した。前期は売上が15%減っており、店の数が減っている。
みやげ製造
自社の菓子工房でつくる菓子を、卸と小売に流す。
| 数量販売個数(万個) | 価格1個あたり売値(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 66.5 | 400 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 536 | 4 | 1 |
取り方:売上2.7億円・営業利益0.6億円(利益率22%)。1個あたり約400円(推定)で個数を置いた。自社企画の品は利益率が高く、ブランドづくりの中心。
温浴施設
長野市の日帰り温浴施設「まめじま湯ったり苑」。株主優待の入浴券もここで使われる。
| 数量入浴客数(万人) | 価格客単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.1 | 1,000 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 1,340 | 4 | 0 |
取り方:売上3.3億円・営業利益0.4億円(利益率13%)。客単価を約1,000円(推定)として客数を置いた。燃料費と設備の古さが利益の重しになる。
不動産賃貸
商業施設「ショッピングタウンあおぞら」などの賃貸。
| 数量賃貸面積(万㎡) | 価格1㎡あたり年間賃料(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 13,364 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 16,705 | 2 | 1 |
取り方:売上1.5億円・営業利益0.5億円(利益率34%)。賃貸面積を約1.1万㎡(推定)、1㎡あたり年間賃料約1.3万円として置いた。賃料は更新のたびにしか上がらず、物価ほどは伸びない。
アウトドア用品・その他
アウトドア用品店と細かな事業。赤字が続き、前期は売上が4割減った。
| 数量来店客数(万人) | 価格客単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.5 | 5,900 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 7,906 | 3 | 0 |
取り方:アウトドア売上2.2億円(営業損失0.1億円)とその他0.5億円(営業利益0)の合計2.7億円、営業利益は約−0.1億円。客単価を約5,900円(推定)として来店客数を置いた。
リスクと懸念
万博の山が剥げ、利益が戻る
2026年3月期は大阪・関西万博の年で、卸の売上が2割伸びた。来期の会社予想は減収で、直近の四半期は営業利益が3割減った。万博前の水準に戻ると、今の利益の見方は高すぎることになる。
観光の波に弱い
疫病・災害・景気の悪化で旅行者が減ると、卸・小売・温浴が同時に落ちる。2021年3月期は売上が46億円まで落ち、営業赤字は7億円に達した。10年のうちに同じ規模の波が来る可能性は低くない。
売り先の直販化と中抜き
売り先のホテル・駅・サービスエリアが自前の企画品を増やすと、卸の取り分は削られる。売り先の力が強く、値上げを通せる幅は物価並みが上限と見る。
人件費・物流費の上昇
連結の従業員は218人で臨時が93人。人手不足と物流費の上昇は全社費用を押し上げる。全社費用は年4億円近くあり、物価で増えると卸の利益の伸びが相殺される。
日本アジア投資との再編の失敗
土産業界の買い増しは、買った先の統合に失敗すれば減損になる。積んだ現金が小さいため、1件の失敗でも自己資本の1割を失いうる。成果は開示にまだ出ていない。
設備の更新と減損
温浴施設や賃貸の建物は古く、建築費は物価で上がる。償却は取得時の値段のままで、更新のたびに現金が出ていく。売店の減損も続く可能性がある。
今後の分かれ目
- 卸の営業利益率が2期続けて9%を超える
- 自社企画と値上げの定着が確認でき、楽観側の確率を上げてよい。
- 日本アジア投資のファンドが卸・製造の案件を買う
- 規模の利益が出るかは統合次第。買収額が時価総額の1割を超えるなら悲観側の確率も上げる。
- 卸の売上が万博前の水準を下回る
- 万博の押し上げが剥げた以上の落ち込みで、慎重な見方が当たる。やや悲観の確率を上げる。
- 配当性向が方針の3割に近づく
- 積んだ現金が株主に戻る。余った現金の戻り方を上げて見直してよい。
- 売り先の大手が自前の土産企画を広げる
- 卸の値上げが通りにくくなる。中立の価格の伸びを物価より低く置き直す。
見ておくもの
- 卸の営業利益率(前期8.4%)
- 四半期の売上の前年比(直近は−9.6%)
- 日本アジア投資のファンドの投資先
- 配当性向と自社株買い
- 訪日客の消費のうち買い物代の割合
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEが資本コストを下回る会社の上限1÷kを出発点に、観光依存で利益の質が並みなことから上限の5〜8割に置いた。今の株価や同業の倍率からは置いていない。10年の利益は、セグメントごとの個数・客数と単価から積み、万博の押し上げを数量から外した。結果が今の値段に近く出たが、寄せにいってはいない。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益や負債の形は変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→17.03 倍・やや楽観 PER 10→16.02 倍・中立 PER 8.8→14.34 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。