結論
ジェコスは、ビルや地下鉄の工事現場で地面を支える仮設の鋼材を貸し、仮設工事まで請け負う会社だ。1968年に川崎製鉄(現JFEスチール)の鋼材を貸す会社として生まれ、売上の約9割を「重仮設」と呼ぶこの分野が占める。
筆者の結論は、今の値段は事業の価値をやや上回るというものだ。事業は堅いが、稼ぐ力は資本コストにわずかに届かない。10年の中立でも営業利益率は今とほぼ同じ7%台にとどまり、自己資本利益率(ROE)は7%台のままだ。
強みは三つある。鋼材の約9割を回収して使い回す仕組み。首都圏の主要な再開発案件のほぼすべてに材料か工事で関わる顧客基盤。そして同業で唯一とされる加工専門工場だ。
弱みは、貸す鋼材そのものに独自性が乏しく、値段で差をつけにくいことだ。賃貸用の鋼材と建機に資金を抱え込むため、利益が増えても資本が厚くなるだけで、ROEは上がらない。中計は2027年度の営業利益85億円を掲げるが、前の中計は未達に終わった。
JFEグループが約4割、みずほリースが約2割を持つ。市場で動く株は3割強しかなく、再編の話が出ても不思議ではない。ただ、その期待は価値に入れていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ちたいかと考える。答えは、悪くないが、安く買えない限りは持たない、だ。
事業の中身は悪くない。鋼材は何度も貸して稼ぎ、需要は国土の老朽化とともに続く。つぶれる心配はほぼない。しかし、他社に代わられにくい独自の強みはなく、値段を自分で決められない。資本を食う事業なので、ROEは資本コストの周りで行き来する。長く持って複利で増やす種類の会社ではない。
経営の資本の使い方は、これから問われる。ROEは長く低い水準が続いた。ようやく還元を厚くし、成長投資に踏み出したところだ。自社株買いや買収が価値を壊さず進むかは、数年見ないとわからない。
安全域の見方は単純だ。利益が10年で1.4倍に増えても、資本の厚さが同じ速さで増え、ROEは7%台のままだ。この中立の価値と今の値段を比べて、割安と言えるだけの差はない。悲観の筋書きでも、純現金と保有株が下値を支えるので大きく壊れはしない。だが、それは安全域というより、守りの厚さにすぎない。
筆者は、JFEグループとみずほリースの動きが材料になりうると見る。ただし、非公開化のような出来事を価値に入れるのは筋が違う。起きたときに考え直すのがよい。
何で稼ぐ会社か
ジェコスの稼ぎの源は、建設会社が工事のたびに必要とする仮設の鋼材だ。地下を掘る時に土が崩れないよう、H形鋼や鋼矢板(鉄の板杭)で壁を作る。これが山留(やまどめ)で、工事が終われば抜いて回収し、補修して次の現場に回す。ジェコスはこの鋼材を貸すか売り、図面を描き、組み立てる工事までを担う。
2026年3月期の売上1,157億円のうち、重仮設事業が1,036億円(約88%)、建設機械事業が148億円(約12%)だった。重仮設事業は中計で三つに分けて見る。仮設鋼材の賃貸・販売、仮設工事、そして鉄構加工・橋梁だ。鉄構加工は千葉県の自社工場で行い、仮設橋梁やインフラの補修まで手を広げている。
建設機械事業は、高所作業車などを貸す事業だ。2014年ごろは経常利益が20億円近くあったが、足元は4億円ほどに落ちている。貸出単価が下がり、2022年ごろに国内5社を統合して立て直しを急いでいる。遠隔操作の重機「BROKK」など、狭い場所や危険な場所向けの機種に軸足を移しつつある。
海外は、シンガポールのFUCHI社を2025年8月に連結子会社にした。ベトナムには設計を請け負う子会社がある。国内では、土木の専門工事会社オトワコーエイを子会社に持ち、山岳や狭い現場の工事に入っていく。従業員は連結で約1,760人だ。
優良さと弱いところ
筆者が評価するのは、鋼材を何度も使い回す循環の仕組みだ。貸した鋼材の約9割が戻り、補修して次の現場に出る。鋼材は買った時の値段で一度きり売るのでなく、貸すたびに稼ぐ。回収と補修を回せる規模があることは、新参には越えにくい。同業で唯一とされる加工専門工場も、橋梁や仮設橋の需要を取り込む足場になる。
ただし、堀(他社がまねできない強み)と呼べるほどの力はないと筆者は見る。会社自身も、重仮設は同業とサービスで差をつけにくいと認めている。丸紅系の丸紅建材リースなど、同じ鋼材を貸す会社は他にもある。工事を請け負う側にとって、鋼材の貸し手は代えがきく。値段は工事の量と鋼材の相場で決まりやすい。
資本の効率が低い点も気になる。重仮設事業の資産は約1,200億円と、売上に近い大きさだ。貸し出す鋼材と建機を持ち続けなければならず、稼いだ利益の多くが設備の更新と資産の積み増しに消える。ROEは過去10年の中央値が7.8%で、近年は資本コストに届いていない。
財務は堅い。自己資本比率は58%、純現金は76億円ある。ただし、これは貸し出す資産を抱えた上での数字で、余った現金とは見ていない。経営はJFEグループとみずほリースという大きな株主に支えられ、事業の安定感は高い。一方で、安定は高い成長や高い利益率を約束するものではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社は、建設投資の量に収入が連動する。国が出す土木工事と、民間の再開発や工場・物流施設の工事が、鋼材を貸す機会を決める。国土強靭化やインフラの老朽化対策は、10年先まで続く見通しだ。橋やトンネルの補修需要は、今後さらに広がるとジェコスは見ている。
数量は、実質では大きく伸びない。人口が減り、住宅は縮み、現場の担い手も足りない。実際、施工する人手が足りず、旺盛な需要に応え切れていないとジェコス自身が認める。山留工事は地下を深く掘る都市の工事に偏るので、首都圏の再開発が一巡すれば数量は下がる。筆者は、数量は10年でほぼ横ばいを中心に置く。
値段は鋼材の相場と連動する。H形鋼や鋼矢板の価格が上がれば、販売の売上は増え、貸し出す鋼材の価値も上がる。物価が年3%で上がる世界では、賃貸の単価も年に合わせて上がるのが基本だ。ただし競争があり、会社が単価を上げられるかは工事の量次第だ。
競合は、鋼材メーカー系、商社系、地方の専業が入り混じる。丸紅建材リースが重仮設の売上で約190億円と、ジェコスの5分の1ほどだ。建設機械の貸出は競合が多く、単価の下落が続いている。同業で在庫と設計力を備えた会社に、収益が集まる流れが続くだろう。
業種全体の話もある。卸売業は中抜き(メーカーや顧客が直接やりとりして卸を飛ばすこと)の圧力を受ける。ジェコスは、鋼材を貸して回収し、設計と工事まで担うことで、単なる仲介でなく機能を売る形をとる。この機能を高めるのが、10年の勝負だ。
資本政策と M&A
資本政策は、株主を意識した形に変わってきた。2025年からの中計は、配当性向40%程度と、株主資本配当率(DOE)2.5%以上を掲げる。前の中計の30%程度から引き上げた。2027年度の目標はROE8%以上で、中長期は10%を目指す。
成長に向けては、3年で約250億円の投資を見込む。中心は山留の周辺分野(水処理・地盤改良・計測)と、鉄構加工・橋梁のM&Aだ。借入はD/Eレシオ0.4倍程度まで許容する。純現金の会社が、借入で買収に動く構えだ。買収で価値を上げられるかは、まだ実績がない。
株主構成が最大の特徴だ。JFEグループが約4割、みずほリースが約2割を持つ。みずほリースは2024年にJFEグループから株を取得し、持分法適用の関連会社になった。市場に出回る株は少ない。JFE側が引き取る形での非公開化もありえるが、公表された話はない。
政策保有株は上場8銘柄で37億円。東鉄工業が27億円で最も大きい。当期は東洋建設と三井住友建設の全株を売った。時価総額の約6%にあたり、売却を続ければ還元の原資になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
首都圏の再開発は、ここから10年も大型案件が続く。ジェコスはその主要案件のほぼすべてに材料か工事で関わる。山留の鋼材は約9割が戻って再利用でき、新しい鋼材を買わずに貸し続けられる。環境面でも、スクラップの再生まで含め、建設会社から選ばれやすい。
中計の施策も具体的だ。仮設鋼材は賃貸単価を上げ、設計費などのサービス料を取る。仮設工事は首都圏と土木を拡大し、鉄構加工・橋梁は全国の東西2拠点で伸ばす。橋やトンネルの補修は国土強靭化の予算に乗る。みずほリースとの連携で、建機の調達と省人化技術にも手を打つ。
資本政策も変わった。配当性向40%・DOE2.5%以上という約束は、利益が増えれば還元も増える形だ。2027年度に営業利益85億円を達成すれば過去最高になる。海外はシンガポールで地下鉄工事が旺盛で、FUCHI社の連結化が上乗せになる。
鉄構加工と橋梁は、利益率が高い。ここが全体の2割に育てば、会社の収益力が一段上がる。山留の周辺分野のM&Aが当たれば、賃貸だけの会社から工事の総合サービスへ変わり、ROEが10%台へ上がる余地がある。
慎重な見方
重仮設は、同業とサービスで差をつけにくいと会社自身が認めている。貸す鋼材は他社と変わらず、工事を請け負う側は貸し手を替えられる。だから賃貸単価は値上げの力に乏しい。前の中計(2021〜2024年度)は事業環境の変化で未達に終わっており、今回も達成の保証はない。
資本の効率が低い。重仮設の資産は売上に近い大きさで、利益が出ても資産に消える。ROEは過去10年の中央値で7.8%。近年は資本コストを超えていない。DOE2.5%という下限は、利益が減っても配当を維持する約束にもなる。
数量が伸びにくい。人口が減り、現場の担い手も足りず、旺盛な需要に応え切れない。首都圏の再開発が一巡すれば、山留の需要は落ちる。建機は競争で貸出単価が下がり、経常利益はピークの5分の1だ。
買収で価値が上がるとも限らない。純現金で借入を足し、山留周辺や橋梁のM&Aに250億円規模を投じる構えだが、のれん(買収額が純資産を上回る分)の減損という失敗の型は卸売業に多い。大株主2社で6割を占めるため、少数株主の意見が通りにくいガバナンスの面もある。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと資本の重さがほぼ釣り合う。重仮設は循環の仕組みと再開発の顧客基盤で守られるが、貸す鋼材に独自性がなく、稼ぐ力は資本コストの周りにとどまる。だから中立は利益率7%台、ROE7%台とした。
確率は、やや慎重側に寄せた。前の中計の未達、過去10年のROEの低さ、建機の低迷が、強気の主張より重い。ただ、国土強靭化と再開発の需要は確かなので、悲観は厚くしすぎなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,169 円1,066 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 872 円294 億円)。 今の値に割り戻すと 2,145 円722 億円、今との差 +19.3%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,923 円1,993 億円 | 1,159 円390 億円 | +293.9% | +14.7% | 496 円167 億円 |
| やや楽観 | 21% | 4,639 円1,561 億円 | 1,011 円340 億円 | +214.2% | +12.1% | 1,186 円399 億円 |
| 中立 | 38% | 3,566 円1,200 億円 | 951 円320 億円 | +151.2% | +9.6% | 1,716 円578 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,560 円525 億円 | 684 円230 億円 | +24.8% | +2.2% | 538 円181 億円 |
| 悲観 | 10% | 505 円170 億円 | 535 円180 億円 | −42.1% | −5.3% | 104 円35 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,169 円1,066 億円 | 872 円294 億円 | +124.8% | +8.4% | 4,041 円1,360 億円 |
今の株価時価総額 1,798 円605 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 再開発とインフラ更新が追い風、加工・橋梁と海外が育つ 利益 125 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 5,923 円1,993 億円
首都圏の再開発と橋・トンネルの補修が10年間途切れず、仮設鋼材の貸出量は微増する。賃貸単価は設計費などのサービス料の上乗せで物価を少し上回る。鉄構加工・橋梁は全国2拠点の体制で売上が1.6倍になり、利益率も高く保つ。
山留の周辺分野(水処理・地盤改良・計測)のM&Aが当たり、賃貸だけの会社から工事の総合サービスへ移る。シンガポールでは地下鉄工事の需要が続き、FUCHI社が利益に乗る。建機も遠隔操作機種の比率が上がり、赤字の心配がなくなる。
営業利益は170億円台に乗り、中計が描く2030年度の姿にほぼ届く。自社株買いと配当も厚くなり、ROEは10%台に上がる。
- 仮設鋼材(賃貸・販売):数量 77.0(取扱鋼材量(万トン相当))× 価格 14(1トンあたり売上(万円))→ 売上 1,078 億円・営業利益 92 億円。利益率8.5%
- 仮設工事:数量 598(年間の施工現場数(件))× 価格 7,000(1現場あたり売上(万円))→ 売上 419 億円・営業利益 34 億円。利益率8.0%
- 鉄構加工・橋梁:数量 2.2(加工・橋梁の取扱量(万トン換算))× 価格 123(1トンあたり売上(万円))→ 売上 266 億円・営業利益 43 億円。利益率16.0%
- 建設機械:数量 8,400(賃貸・販売の稼働台数(台))× 価格 241(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 202 億円・営業利益 10 億円。利益率5.0%
倍率:事業の純利益 125 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.91 倍、時価総額 1,989 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再開発・インフラ更新・M&A・海外がすべて計画どおり進む必要がある。前の中計が未達だった実績を考え、確率は低く置いた。
やや楽観 21% 再開発の需要が続き、単価が物価並みに上がる 利益 102 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 4,639 円1,561 億円
仮設鋼材の取扱量は5%ほど増え、賃貸単価は物価並みに上がる。仮設工事は首都圏と土木で現場数が2割増え、オトワコーエイとの連携が利益を押し上げる。鉄構加工・橋梁は鉄道・道路の更新需要で6割増になる。
建機は貸出単価が下げ止まり、遠隔操作機種で小さな黒字を保つ。シンガポールは堅調に利益を出す。配当性向40%を守り、成長投資はやや控えめに進む。みずほリースとの協業で建機の調達が軽くなり、資産の回転も少し上がる。
営業利益は140億円台で、利益率は8%近くまで上がる。ROEは9%近くまで戻るが、資本コストを超える余裕はあまりない。
- 仮設鋼材(賃貸・販売):数量 73.5(取扱鋼材量(万トン相当))× 価格 14(1トンあたり売上(万円))→ 売上 1,000 億円・営業利益 77 億円。利益率7.7%
- 仮設工事:数量 552(年間の施工現場数(件))× 価格 6,800(1現場あたり売上(万円))→ 売上 375 億円・営業利益 26 億円。利益率7.0%
- 鉄構加工・橋梁:数量 1.9(加工・橋梁の取扱量(万トン換算))× 価格 120(1トンあたり売上(万円))→ 売上 230 億円・営業利益 35 億円。利益率15.0%
- 建設機械:数量 8,000(賃貸・販売の稼働台数(台))× 価格 226(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 181 億円・営業利益 7 億円。利益率4.0%
倍率:事業の純利益 102 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15 倍、時価総額 1,522 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靭化と再開発の需要は10年先まで見通せ、中計の施策が部分的に実を結ぶ。筆者は、経営の実行力の弱さを割り引いて、強気の主張より少し軽く置いた。
中立 38% 中立:数量は横ばい、単価は物価並み、利益率は今の7%台 利益 82 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 3,566 円1,200 億円
国の土木工事と首都圏の再開発が下支えし、仮設鋼材の取扱量は10年で1.5%ほど増える。賃貸単価は物価並みの1.34倍まで上がるが、値段で差をつけられず、利益率は今とほぼ同じ7%程度にとどまる。
仮設工事は現場数が1割増え、鉄構加工・橋梁はインフラ更新で2割増える。建機は貸出単価が物価を下回って上がり、小さな利益を保つ。山留周辺のM&Aは小さく当たる程度で、全体を変えない。
営業利益は110億円台。賃貸用の鋼材と建機への投資が続くので、資本は還元後も厚くなり、ROEは7%台で今とほぼ変わらない。配当性向は40%台で、DOE2.5%も守る。
- 仮設鋼材(賃貸・販売):数量 71.0(取扱鋼材量(万トン相当))× 価格 13(1トンあたり売上(万円))→ 売上 951 億円・営業利益 67 億円。利益率7.0%
- 仮設工事:数量 506(年間の施工現場数(件))× 価格 6,700(1現場あたり売上(万円))→ 売上 339 億円・営業利益 22 億円。利益率6.5%
- 鉄構加工・橋梁:数量 1.5(加工・橋梁の取扱量(万トン換算))× 価格 118(1トンあたり売上(万円))→ 売上 171 億円・営業利益 25 億円。利益率14.5%
- 建設機械:数量 8,000(賃貸・販売の稼働台数(台))× 価格 222(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 178 億円・営業利益 6 億円。利益率3.5%・貸出単価の下落が続き物価を下回る(1.20倍)
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.99 倍、時価総額 1,147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設投資は実質で横ばい〜微減、再開発とインフラ更新がそれを支える形が、いちばん起こりやすい。会社の過去の実力(営業利益率4〜8%)にも合う。
やや悲観 24% 再開発が一巡し、担い手不足と単価競争で利益が細る 利益 50 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,560 円525 億円
首都圏の再開発が一巡し、仮設鋼材の取扱量は8%ほど減る。賃貸単価は競争で物価に追いつかず、物価の1.28倍までしか上がらない。仮設工事は現場の担い手が足りず、受注を取り切れない。
建機は貸出単価がさらに下がり、利益はほぼ消える。鉄構加工・橋梁は伸びるが、規模が小さく全体を支えきれない。山留周辺のM&Aは収益に寄与しない。海外も、受注の波に左右されて安定した利益にならない。
営業利益は70億円台に落ち、利益率は5%ほどになる。資本は還元後も増え、ROEは5%近くまで下がる。配当はDOE2.5%の下限を守る程度になる。
- 仮設鋼材(賃貸・販売):数量 64.4(取扱鋼材量(万トン相当))× 価格 13(1トンあたり売上(万円))→ 売上 824 億円・営業利益 45 億円。利益率5.5%
- 仮設工事:数量 460(年間の施工現場数(件))× 価格 6,400(1現場あたり売上(万円))→ 売上 294 億円・営業利益 13 億円。利益率4.5%
- 鉄構加工・橋梁:数量 1.2(加工・橋梁の取扱量(万トン換算))× 価格 113(1トンあたり売上(万円))→ 売上 135 億円・営業利益 15 億円。利益率11.0%
- 建設機械:数量 7,200(賃貸・販売の稼働台数(台))× 価格 204(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 147 億円・営業利益 2 億円。利益率1.0%
倍率:事業の純利益49億円・事業 ROE 4.9% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=12.1倍。ROEが資本コストを大きく下回る構造のため、上限の約74%の9.0倍に置いた。谷の利益に谷の倍率を重ねる二重の下げはしていない。
確率:人口減・担い手不足・再開発の一巡・鋼材と賃貸の単価競争のうち一部は、10年のうちに起こりやすい。過去のROEの低さも重い。
悲観 10% 構造的な負け:需要の縮小と買収・建機の失敗が重なる 利益 20 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 505 円170 億円
国内の建設投資が実質で縮み、担い手不足で工事を取り切れず、仮設鋼材の取扱量は25%減る。中古の鋼材がだぶつき、賃貸単価は物価に遠く及ばない。山留周辺と橋梁のM&Aが期待に届かず、のれんの減損が出る。
建機は貸出単価の下落が止まらず赤字になり、事業の縮小に追い込まれる。鋼材と建機の賃貸資産にも減損が出て、自己資本が目減りする。大株主2社が持つため少数株主の発言力は弱く、立て直しは遅れる。
営業利益は30億円ほどまで落ちる。純現金と、売れる鋼材・保有株が下値を支えるので、事業は続くが、もう資本コストを稼げる会社ではなくなる。
- 仮設鋼材(賃貸・販売):数量 52.5(取扱鋼材量(万トン相当))× 価格 12(1トンあたり売上(万円))→ 売上 604 億円・営業利益 21 億円。利益率3.5%
- 仮設工事:数量 391(年間の施工現場数(件))× 価格 5,750(1現場あたり売上(万円))→ 売上 225 億円・営業利益 5 億円。利益率2.0%
- 鉄構加工・橋梁:数量 1.2(加工・橋梁の取扱量(万トン換算))× 価格 101(1トンあたり売上(万円))→ 売上 121 億円・営業利益 9 億円。利益率7.0%
- 建設機械:数量 6,000(賃貸・販売の稼働台数(台))× 価格 176(1台あたり年間売上(万円))→ 売上 106 億円・営業利益 −2 億円。利益率-2.0%
倍率:事業の純利益20億円・事業 ROE 2.4% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=12.1倍。構造的な負けで稼ぐ力が資本コストを大きく下回るため、上限の約70%の8.5倍に置いた。純現金は事業の備えとして別に見ている。
確率:国内建設の縮小、価格の崩れ、買収の失敗、建機の撤退が同時に重なる複合の筋書き。10年を考えれば、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
仮設鋼材(賃貸・販売)
H形鋼・鋼矢板などの山留用鋼材を建設会社に貸し、一部を売る。回収・補修して使い回す。設計や運賃のサービス料も含む。
| 数量取扱鋼材量(万トン相当) | 価格1トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 10 | 700 | 50 |
| 10 年後 中立 | 71.0 | 13 | 951 | 67 |
取り方:会社は仮設鋼材だけの売上を開示していない。重仮設事業の売上1,036億円を、中計の2027年度目標(仮設鋼材780億・仮設工事270億・鉄構加工橋梁130億)の比で割り、仮設鋼材を約700億円と推定した。取扱量は貸し出す鋼材と売る鋼材を1トン当たりの売上10万円で換算した推定値で、実測ではない。営業利益は重仮設の経常86億円から他の2事業を引いた推定。
仮設工事
山留・仮設の設計と施工を請け負う。首都圏と土木に注力し、子会社オトワコーエイが山岳・狭い現場を担う。
| 数量年間の施工現場数(件) | 価格1現場あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 460 | 5,000 | 230 | 12 |
| 10 年後 中立 | 506 | 6,700 | 339 | 22 |
取り方:中計の目標比から約230億円と推定。1現場あたり約5,000万円として年460件と置いた推定値(開示なし)。工事の利益率は鋼材より低く、営業利益12億円(5%強)とした。
鉄構加工・橋梁
千葉県の自社工場で加工する鋼構造物、支保工、仮設橋、インフラの補修。同業で唯一とされる加工専門工場を持つ。
| 数量加工・橋梁の取扱量(万トン換算) | 価格1トンあたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 88 | 106 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 118 | 171 | 25 |
取り方:中計の目標比から約105億円と推定。加工・橋梁の設計・架設を含む1トン当たり約88万円で、年1.2万トン相当と置いた推定値(開示なし)。加工の付加価値が高く、営業利益は13%ほどの14億円と推定した。
建設機械
高所作業車、遠隔操作重機などを貸す。2022年ごろに国内5社を統合した。
| 数量賃貸・販売の稼働台数(台) | 価格1台あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,000 | 185 | 148 | 4 |
| 10 年後 中立 | 8,000 | 222 | 178 | 6 |
取り方:建設機械事業の売上は148億円(開示)。台数は開示がなく、1台あたり年間185万円として約8,000台と置いた推定。経常利益は3.9億円(開示)で、営業利益4億円とした。貸出単価の下落が続くため、中立でも価格は物価並み(1.34倍)まで上げず、10年で1.20倍とした。
リスクと懸念
賃貸単価が上がらない
貸す鋼材は他社と変わらず、会社も同業と差をつけにくいと認める。単価は鋼材の相場と工事量で決まり、工事を請け負う側は貸し手を替えられる。単価が物価に追いつかなければ、数量が横ばいでも利益は増えない。
担い手不足で受注を取り切れない
施工できる人手と、現場を管理する技術者が足りず、旺盛な需要に応え切れていないと会社自身が述べている。仮設工事は人が増えなければ売上が伸びない。人件費が上がっても、価格に転嫁しにくい面がある。
首都圏の再開発が一巡する
山留は地下を深く掘る都市の工事に偏る。今期は首都圏の主要な再開発案件のほぼすべてに関わるが、案件が一巡すれば取扱量が下がる。公共土木の予算が想定より伸びなければ、下支えも弱まる。
建設機械事業の低迷
建機の経常利益は2014年ごろの約20億円から4億円まで落ちた。高所作業車などの貸出単価の下落が続く。2022年ごろに国内5社を統合したが、立て直しは途上だ。建機を撤退・縮小する場合は、減損が出る。
買収と海外の失敗
中計は成長投資250億円を山留周辺・橋梁のM&Aに充てる構えだ。買収の実績が乏しく、のれんの減損の恐れがある。FUCHI社(シンガポール)の連結化も、段階取得に伴う差損と負ののれん益を出した。海外事業の統制の難しさも残る。
大株主2社の支配と流通株の少なさ
JFEグループが約4割、みずほリースが約2割を持ち、市場で動く株は3割強しかない。少数株主の意見は通りにくく、再編の方向も大株主の都合で決まりうる。流動性が低く、株価が動きにくい面もある。
鋼材相場と賃貸資産の減損
H形鋼や鋼矢板の相場が下がれば、販売の売上と貸し出す鋼材の価値が落ちる。重仮設の資産は約1,200億円と大きく、需要が弱まると減損が出やすい。保有株(37億円)の値下がりも自己資本を動かす。
今後の分かれ目
- 仮設鋼材の賃貸単価が、サービス料の上乗せを含めて物価を上回って上がり続けたら
- 利益率の前提を上げ、楽観側に確率を寄せる。値決め力の評価も見直す。
- 鉄構加工・橋梁の売上が中計の目標(2027年度130億円)を超えて伸びたら
- 利益率の高い事業が育った証拠として、中立の利益率を上げ、やや楽観側に確率を寄せる。
- 首都圏の再開発の新規着工が減り、仮設鋼材の貸出量が目に見えて落ちたら
- 数量の前提を下げ、やや悲観側に確率を寄せる。
- 山留周辺や橋梁のM&Aで、のれんの減損が出たら
- 資本の使い方への評価を下げ、悲観側に確率を移す。
- JFEグループとみずほリースが株を買い増す、または非公開化を発表したら
- 少数株主の取り分と提示価格を見直す。今の価値には入れていないので、起きた時に考え直す。
- 建機事業を撤退・売却したら
- 赤字の足かせが消えて利益率は上がるが、減損の損失も出る。中立の利益率を見直す。
見ておくもの
- 重仮設事業と建設機械事業の売上・利益(半期ごと)
- 仮設鋼材の賃貸単価の動きと取扱量
- 鉄構加工・橋梁の売上(2027年度130億円の目標)
- 首都圏の再開発の新規着工と公共土木の予算
- 中計の営業利益目標(2027年度85億円)の達成度、ROE8%
- 大株主(JFEグループ・みずほリース)の持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)・ROE が資本コスト以下なら 1÷k)と、事業の資産の重さだけで置いた。同業や今の PER は見ていない。資本コストは基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。事業の ROE が 7% 台で k に届かないため、中立の PER 上限は 1÷k の約 12 倍で、そこから約 86% に置いた。悲観は稼ぐ力から出し、床の PBR は使っていない。今の値段に合わせた逆算はしていない。新リース会計(2028/03 期から BS に載る)が始まっても、10 年後の数字は家賃を費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→15.91 倍・やや楽観 PER 10.7→15 倍・中立 PER 10.4→13.99 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。大株主2社が支配する構造や買収の実行リスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。