結論
三共生興は、英国の DAKS と仏国のレオナールという 2 つの高級ブランドを持つ大阪の会社だ。ほかに衣料の OEM(取引先の名前で売る製品の受託生産)と、東京・大阪のビルを貸す不動産業がある。筆者の結論は、今の株価は本質価値より高いというものだ。資産は厚いのに、それを生かす稼ぐ力が資本コストにまるで届かない。
稼ぎの中身はいびつだ。2026 年 3 月期の営業利益は 7.5 億円で、不動産が 7.4 億円を稼いだ。ブランド事業は百貨店の客足減と中国の不振が重なり、商標権とのれんを 15 億円規模で減損した。
純利益が 20 億円を保てたのは、本業の外の収入が大きいからだ。受取配当が 11.7 億円あり、株の売却益も 31.6 億円出た。投資有価証券は 381 億円と、時価総額を上回る。ただ配当利回りは 3% ほどで、資本コストには遠い。
10 年の中心は、ブランドの縮小を物価と賃料が埋めきれず、ROE が 3% 台にとどまる道だ。一方、保有株を売って株主に返す道が開けば、評価は大きく上がる。この上振れに 1 割の確率を置いた。資産の厚さが安全域になるのは、その道が開く時だけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えるが、持ち主の取り分は小さい」会社である。
帳簿の資産は 558 億円ある。保有株の含み益が大きく、時価総額の 318 億円を上回る。だがバリュー投資家が見るのは、持ち主のものとして残る利益だ。純利益の約半分は受取配当で、残りも賃料が中心だ。ブランドの本業は、ほぼ稼いでいない。
保有株の配当利回りは 3% ほどだ。物価が年 3% の世界で、資本コストの 8.5% には届かない。この株を会社が持ち続ける限り、株主にとっての価値は帳簿の額より小さい。
安全域の面では、財務の堅さと不動産の安定は安心材料だ。しかし、それは「負けにくい」という意味にとどまる。株を買うほどの割安さではない。
筆者が見たいのは、資本の使い方が変わる証拠だ。保有株を売って株主に返す方針が数字で示されれば、評価は変わる。今は、その約束がない。含み益は、売って初めて株主のものになる。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つある。売上は、ファッションが約 46%、繊維(OEM)が約 43%、不動産が約 11% だ。利益では不動産が半分近くを占める。
ファッションの軸は、DAKS とレオナールだ。DAKS は 1894 年創業の英国ブランドで、1991 年に買収した。レオナールはパリのブランドで、2022 年に全株を取得した。百貨店や直営店で売るほか、韓国やタイなどにブランド使用権を貸して使用料を得る。店は香港・中国・台湾に多い。2026 年 3 月期の売上は 112 億円、利益は 2.9 億円にとどまった。商品評価損が 5.3 億円出たうえ、南青山の旗艦店の費用が重い。
繊維は、アパレルの OEM である。取引先のブランドの注文を受け、原料の手配からデザイン提案、生産、国内外の物流まで請け負う。売上は 104 億円、利益は 4.8 億円で、利益率は 4.6% と高めだ。2025 年 4 月に OEM 子会社を本体に吸収し、受注競争に備えた。
不動産は、東京と大阪の自社オフィスビル、東京・横浜・神戸のビジネスホテル(東横イン 4 棟を含む)、イベントホールを貸す。売上 26 億円に対して利益が 7.4 億円と、利益率は 3 割近い。遊休地の再開発を決め、ホテル運営にも乗り出した。
3 つの利益を足すと 15 億円だが、本社費が年 7 億円台あり、全社の営業利益は 7.5 億円まで減る。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、狭いと見る。
DAKS は 130 年を超える歴史があり、英国王室の御用達だ。ただし売り場の多くは百貨店とアジアの店で、値段を自分で決める力は弱い。レオナールは買収から 4 年で、商標権とのれんを減損した。買った値段が高すぎたと言われても仕方がない。
OEM は、顧客の注文に応えるのが仕事だ。利益率は 4% 台と悪くないが、同じ仕事ができる商社や生産業者は多い。今の水準が続く保証はない。
強いのは財務と不動産だ。自己資本比率は 71%、純現金は 49 億円ある。不動産は年 7 億円台の利益を安定して出す。
弱いのは資本の使い方だ。過去 10 年の ROE の中央値は 4.8% で、資本コストを一度も超えていない。稼いだ金を、利回り 3% の株式の買い増しに回してきた面がある。配当は上場以来 63 年続き、利益の約 5 割を返す方針は評価できる。だが、資本の厚さが収益に変わっていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は、事業ごとに向かい風の強さが違う。
ブランド事業が立つ中高級の衣料は、国内で数量が減り続ける市場だ。百貨店の衣料売り場は長く縮み、客数の減少が続く。中国と香港では、観光客層の高齢化と買い方の変化で、DAKS に底打ちの兆しが見えない。高級品は欧州の大手に、手頃な品は速く作る量販店に挟まれる。英国のブランドでは、バーバリーとの差も大きい。国内の同業にはオンワードホールディングスや三陽商会がいるが、どこも店舗を絞っている。
OEM は、国内のアパレル向けの供給が中心と見られる。縫製の中心は中国から東南アジア・南アジアへ移り、人件費の上昇で調達コストが上がる。顧客が直接工場と取引する動きもあり、商社の蝶理などとの受注競争が強まる。同社は小ロットの生産と素材開発で差をつけようとしている。
不動産は追い風が弱まりつつも、堅い。東京・大阪の大都市にあるオフィスは空室が少なく、賃料は緩やかに上がる。ホテルは訪日客に支えられる。金利が上がると不動産の評価額は下がるが、賃料収入そのものは減らない。
ここまでをまとめると、ブランドは構造的に不利で、OEM は競争が厳しく、不動産だけが堅い。筆者は、10 年後も稼ぎの重心が不動産と保有株の配当にあると見ている。ブランドが生き残る鍵は、少ない店で高く売る力と、使用料で稼ぐ形を広げることだ。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、配当と保有株の入れ替えだ。
配当は、特別損益を除く純利益の 50% を目安にする。年間の配当は純利益の約 5 割で、自社株買いは機動的に行う。直近の 2 年で 5〜10 億円を買った。保有株は、2026 年 3 月期に約 33 億円を売り、売却益が 31.6 億円出た。一方で、投資有価証券を約 11 億円、有価証券を約 10 億円買い増している。入れ替えであって、縮小の方針ではない。
第 2 次中期経営計画は、成長投資に M&A 約 20 億円と不動産約 40 億円を見込んでいた。当初の 2027 年 3 月期の目標は、営業利益 28 億円・ROE 6.5% だ。2026 年 5 月に見直し、営業利益は 15 億円に下がった。
株主は、公益財団法人の三木瀧蔵奨学財団が約 20% を持つ。自己株式も約 19% ある。10 年以内に TOB で買われる確率は、確率モデルの参考値で 2 割ほどある。株主優待は DAKS などの割引券で、費用は年 1 億円を下回ると見て、還元には加えていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産の厚さは、変わるきっかけがあれば一気に価値になる。含み益のある保有株は 381 億円あり、時価総額を上回る。これを売って税を払っても、約 280 億円が手元に残る。会社は 2026 年 3 月期にすでに 33 億円分を売り、売却益を出した。方針を数字で示せば、市場の見方は大きく変わる。
第 2 次中計は PBR 0.6 倍を課題と認め、株価を意識した経営を掲げている。配当性向 50% の目安に、自社株買いを加えれば、総還元は利益を超えうる。
ブランド事業は、底を打てば反発が大きい。2025 年 3 月期にはブランド事業が 12.5 億円を稼いでいた。減損で重い商標権の償却が減り、旗艦店の費用も一巡する。ライセンス収入は費用が軽い。レオナールの旗艦店は、パリと表参道に構えた。アジア全体で、DAKS の使用許諾が広がる余地もある。
不動産の再開発とホテルが育てば、稼ぎは物価以上に増える。20% 近い TOB の確率を考えれば、買い手が資産価値を前提に高い値を付ける道もある。
慎重な見方
資産が厚いことと、株主が得をすることは別だ。保有株は売るまで株主の手に渡らず、会社は利回り 3% のまま持ち続けている。ROE は過去 10 年の中央値で 4.8% と、資本コストの 8.5% に遠く及ばない。
今の純利益は、特別な収入で見かけが良い。2026 年 3 月期の営業利益は 7.5 億円で、純利益 20 億円の大半は株の売却益だ。2027 年 3 月期の予想営業利益 15 億円も、値下げ販売が続けば届かない。減損を出したブランド事業の費用構造は、そのままだ。
中国と香港は戻らず、百貨店は縮む。旗艦店の家賃は売上が落ちても減らない。レオナールの買収は 4 年で減損になった。次の買収が同じ結果になれば、資産はさらに傷む。第 2 次中計の M&A 約 20 億円の投資先は、まだ見えない。
OEM は、顧客に直接取引へ切り替えられると利益率が落ちる。今の 4.6% は、受注の質が良かった期の数字だ。物価で本社費は増える。不動産は堅いが、利益の半分も支えきれない。含み益のある保有株は、株価が下がれば消える。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強いと判断し、確率を中立から下に寄せた。ブランドの縮小と ROE の低さは、数字で確認できる事実だ。保有株を返す道は仮説にとどまり、方針の開示も売却の実績も途中までしかない。
ただし上振れの大きさは無視できない。保有株の返還や TOB が起きれば、価値は今の 2 倍近くになる。そこで楽観に 1 割、やや楽観に 2 割弱を置き、悲観は財務の厚さを理由に 1 割強にとどめた。期待値は、今の株価を大きく下回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 644 円239 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 387 円143 億円)。 今の値に割り戻すと 561 円208 億円、今との差 −35.0%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,013 円376 億円 | 804 円298 億円 | +110.4% | +7.7% | 182 円67 億円 |
| やや楽観 | 18% | 950 円352 億円 | 470 円174 億円 | +64.3% | +5.1% | 255 円95 億円 |
| 中立 | 36% | 720 円267 億円 | 375 円139 億円 | +26.8% | +2.4% | 394 円146 億円 |
| やや悲観 | 24% | 340 円126 億円 | 281 円104 億円 | −28.1% | −3.2% | 149 円55 億円 |
| 悲観 | 12% | 254 円94 億円 | 162 円60 億円 | −51.8% | −7.0% | 50 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 644 円239 億円 | 387 円143 億円 | +19.3% | +1.8% | 1,031 円382 億円 |
今の株価時価総額 864 円320 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 保有株を株主に返し、ブランドも持ち直す 利益 28 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,013 円376 億円
保有株を売って株主に返す道が開き、ブランド事業も持ち直す。2036 年 3 月期の営業利益は 26 億円になる。
ブランドは中国の底打ちと、ライセンス先の拡大で数量が 5% 増える。営業利益率は 11% に戻り、2025 年 3 月期の水準に並ぶ。OEM は小ロット生産と素材開発が当たり、取扱いが 15% 増える。不動産は遊休地の再開発とホテル運営が育ち、賃料は物価並みに上がる。
資本政策が変わる。含み益の大きい保有株の約 4 割を売り、税を払った後の約 117 億円を配当と自社株買いで返す。受取配当は減るが、返した資金で 1 株の価値が上がる。TOB で買われる道もこの筋書きに含める。
それでも ROE は 6% 弱にとどまる。事業の稼ぐ力が資本コストに届かないので、倍率は上限の 1 倍に置いた。
- ファッション関連:数量 78.6(販売点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 2.01(1 点あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 158 億円・営業利益 17 億円。市場 3.00 兆円 × シェア 0.393%、営業利益率 11.0%
- 繊維関連(OEM):数量 4,769(取扱点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 3.4%(1 点あたり取扱額(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 160 億円・営業利益 8 億円。市場 2.20 兆円 × シェア 0.542%、営業利益率 4.8%
- 不動産関連:数量 88.0(稼働している貸床面積(千㎡・推定))× 価格 0.43(1 千㎡あたり年間収入(億円。賃料・ホール・工事を含む。物価並みなら 10 年 1.34 倍))→ 売上 38 億円・営業利益 11 億円。貸床×稼働率の指数 1.10、賃料の指数 1.34、営業利益率 30%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.54 倍、時価総額 376 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:上振れは、保有株を売って株主に返す道が開き、ブランドも持ち直す形。20% 近い TOB 確率の参考値や売却の実績はあるが、数値の方針は未開示。確率は 1 割にとどめる。
やや楽観 18% ブランドは下げ止まり、賃料と OEM が支える 利益 27 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 950 円352 億円
ブランドは下げ止まり、OEM と不動産が物価を上回る力で稼ぐ。営業利益は 20 億円近くまで戻る。
DAKS はアジアのライセンス収入が安定し、直営店は絞ることで利益を守る。レオナールは旗艦店の費用が一巡し、赤字から抜ける。ブランドの営業利益率は 9% まで戻る。OEM は新しい素材と小ロット生産で、受注の質を上げる。
不動産は再開発したビルとホテルが加わり、賃料の伸びが物価に近づく。保有株の売却は小さく、受取配当は物価に沿って増える。還元は純利益の 75% ほどで、方針の 5 割に自社株買いを足した形が続く。
ROE は 4% 台にとどまる。資産が厚く、稼ぎの伸びがその分を埋めきれないためだ。
- ファッション関連:数量 74.8(販売点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 2.01(1 点あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 150 億円・営業利益 14 億円。市場 2.90 兆円 × シェア 0.387%、営業利益率 9.0%
- 繊維関連(OEM):数量 4,354(取扱点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 3.4%(1 点あたり取扱額(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 146 億円・営業利益 6 億円。市場 2.15 兆円 × シェア 0.506%、営業利益率 4.3%
- 不動産関連:数量 84.0(稼働している貸床面積(千㎡・推定))× 価格 0.42(1 千㎡あたり年間収入(億円。賃料・ホール・工事を含む。物価並みなら 10 年 1.34 倍))→ 売上 35 億円・営業利益 10 億円。貸床×稼働率の指数 1.05、賃料の指数 1.30、営業利益率 29%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 352 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ブランドが下げ止まり、OEM と賃料が物価を上回って稼ぐ。保有株の売却は小さく、還元は方針どおり。中立よりやや起こりにくい。
中立 36% 稼ぎは横ばい、ROE は 3% 台のまま 利益 20 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 720 円267 億円
稼ぎは横ばいで、資産だけが厚い会社のまま 10 年が過ぎる。営業利益は 12 億円で、会社の今期予想の 15 億円を下回る。
ブランドの数量は 13% 減る。国内の百貨店客数の減少と、中国・香港の弱さが続くためだ。値段は物価並みに上がるが、営業利益率は 6.5% にとどまる。OEM は受注競争が続き、数量は 5% 減、営業利益率は 3.6% に落ち着く。今の 4.6% は一時的に高いと見る。
不動産は貸す面積がわずかに増え、賃料は物価の 7 割ほどの伸びにとどまる。ホテルの賃貸契約は固定が多く、オフィスも更新のたびにしか上がらないためだ。本社費は物価で増え、10 億円を超える。
営業外の受取配当は 13 億円で、純利益の約半分を占める。ROE は 3% 台で、資本コストの半分にも届かない。
- ファッション関連:数量 65.1(販売点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 2.01(1 点あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 131 億円・営業利益 9 億円。市場 2.70 兆円 × シェア 0.362%、営業利益率 6.5%
- 繊維関連(OEM):数量 3,940(取扱点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 3.4%(1 点あたり取扱額(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 132 億円・営業利益 5 億円。市場 2.05 兆円 × シェア 0.480%、営業利益率 3.6%
- 不動産関連:数量 82.4(稼働している貸床面積(千㎡・推定))× 価格 0.40(1 千㎡あたり年間収入(億円。賃料・ホール・工事を含む。物価並みなら 10 年 1.34 倍))→ 売上 33 億円・営業利益 9 億円。貸床×稼働率の指数 1.03、賃料の指数 1.25、営業利益率 27%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 267 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も起こりやすい道。ブランドは国内の縮小を中国の底打ちで一部埋め、OEM と不動産は物価並みに伸びる。ROE は資本コストに届かない。
やや悲観 24% ブランドの縮小が続き、本社費が重くのしかかる 利益 12 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 340 円126 億円
ブランドの縮小が続き、本社費が重くのしかかる。営業利益は 4 億円まで細る。
国内の百貨店は店舗を減らし続け、DAKS の売り場も縮む。中国と香港は回復せず、ブランドの数量は 3 割近く減る。南青山の旗艦店などの固定家賃は売上が落ちても減らず、利益率は 3.5% まで下がる。追加の減損で自己資本も傷む。
OEM は受注価格の競争で利益率が 3% に落ちる。不動産は空室とホテルの賃料更新で伸びが鈍る。本社費は物価で増え、営業利益を食う。
受取配当は 11 億円に減る。赤字の穴を埋めるため、保有株を一部売るからだ。純利益の大半が営業外になり、事業の稼ぐ力は弱い。倍率は上限の 7 割に置いた。
- ファッション関連:数量 53.9(販売点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 2.01(1 点あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 108 億円・営業利益 4 億円。市場 2.55 兆円 × シェア 0.317%、営業利益率 3.5%
- 繊維関連(OEM):数量 3,400(取扱点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 3.4%(1 点あたり取扱額(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 114 億円・営業利益 3 億円。市場 1.90 兆円 × シェア 0.447%、営業利益率 3.0%
- 不動産関連:数量 76.0(稼働している貸床面積(千㎡・推定))× 価格 0.37(1 千㎡あたり年間収入(億円。賃料・ホール・工事を含む。物価並みなら 10 年 1.34 倍))→ 売上 28 億円・営業利益 7 億円。貸床×稼働率の指数 0.95、賃料の指数 1.15、営業利益率 24%
倍率:事業の純利益12億円・ROE 1.9% は k 8% 以下なので、上限は 1÷k=11.8倍。ブランドの縮小で利益の質が落ちるため、上限の約7割の8.2倍に置いた。PBR 0.17倍と低いのは、保有株の含み益が自己資本に入るためで、売れば税引後で約215億円の資産があるが、清算されない限り株主は取り出せず、床にはしない。
確率:ブランドの国内外の不振が続き、減損や旗艦店の閉鎖が重なる。本社費は物価で増え、稼ぎが細る。強気の道より起こりやすいと見て 2 割台半ばを置く。
悲観 12% ブランドが赤字に沈み、資産の切り売りで耐える 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 254 円94 億円
ブランドが赤字に沈み、OEM の価格競争も強まる。営業利益は赤字になる。
DAKS とレオナールの数量は半分近くまで落ち、値引き販売が増える。直営店の固定家賃と人件費は重く、ブランド事業は営業赤字になる。OEM は大手商社や海外メーカーの直接取引に押され、数量が 3 分の 1 減る。
不動産は稼ぎが残るが、空室とホテルの賃料減で営業利益が 4.6 億円まで下がる。本社費は 9 億円台が残る。
穴を埋めるため、保有株を半分近く売る。受取配当は 8 億円に減り、商標権の残りも減損する。構造的に優良とは言えなくなった姿で、価値は売れる資産の税引後の額の 4 割に置いた。清算されない限り、少数株主はその資産を取り出せないからだ。
- ファッション関連:数量 41.2(販売点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 1.88(1 点あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 77 億円・営業利益 −1 億円。市場 2.40 兆円 × シェア 0.257%、営業利益率 -1.0%
- 繊維関連(OEM):数量 2,695(取扱点数(万点)= 対象市場 × シェア)× 価格 3.4%(1 点あたり取扱額(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 90 億円・営業利益 2 億円。市場 1.80 兆円 × シェア 0.374%、営業利益率 2.2%
- 不動産関連:数量 68.0(稼働している貸床面積(千㎡・推定))× 価格 0.34(1 千㎡あたり年間収入(億円。賃料・ホール・工事を含む。物価並みなら 10 年 1.34 倍))→ 売上 23 億円・営業利益 5 億円。貸床×稼働率の指数 0.85、賃料の指数 1.05、営業利益率 20%
倍率:事業の純利益4億円では稼ぐ力は小さく(4億円÷k 8%=約45億円)、売れる資産の税引後は約215億円。清算されない限り少数株主は資産を取り出せないので、今の自己資本558億円に0.169倍を掛け約94億円に置いた(売れる資産の約4割)。
確率:構造的な負けの筋書き。ブランドが赤字に沈み、OEM の価格競争も強まる。保有株を売って穴を埋める。財務は厚いので 1 割強にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ファッション関連
DAKS・レオナールを軸に、百貨店・直営店・EC で売る衣料の販売と、アジア・欧州へのブランド使用権(ライセンス)の貸与。
| 数量販売点数(万点)= 対象市場 × シェア | 価格1 点あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 74.8 | 150.0% | 112 | 3 |
| 10 年後 中立 | 65.1 | 2.01 | 131 | 9 |
取り方:推定。1 点平均 1.5 万円で 74.8 万点(衣料・雑貨・使用料を点数に直した推定)。販売額 112 億円を、国内の百貨店・専門店の中高級衣料と中華圏などの対象市場 約 3.0 兆円(実質)× シェア 0.37% に分けて置いた。開示は金額だけで数量は無い。国内の百貨店衣料は実質で縮小が続き、中国・香港は戻っていない。営業利益 2.9 億円は商品評価損 5.3 億円と旗艦店の費用を含む。
繊維関連(OEM)
アパレル製品の OEM。原料の手配、デザイン提案、生産、国内外の物流まで請け負う。
| 数量取扱点数(万点)= 対象市場 × シェア | 価格1 点あたり取扱額(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,147 | 2.5% | 104 | 5 |
| 10 年後 中立 | 3,940 | 3.4% | 132 | 5 |
取り方:推定。1 点平均 0.25 万円で約 4,150 万点。取扱高 104 億円を、国内アパレル企業の調達・OEM 委託額 約 2.2 兆円(推定)× シェア 0.47% に分けて置いた。国内の衣料の数量は人口とともにわずかに減る。2025 年 4 月に OEM 子会社を吸収合併した。営業利益率 4.6% は高めと見る。
不動産関連
東京・大阪のオフィスビル、東京・横浜・神戸のビジネスホテル、イベントホールの賃貸と、ビル管理・内装工事。
| 数量稼働している貸床面積(千㎡・推定) | 価格1 千㎡あたり年間収入(億円。賃料・ホール・工事を含む。物価並みなら 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 0.32 | 26 | 7 |
| 10 年後 中立 | 82.4 | 0.40 | 33 | 9 |
取り方:推定。開示は金額のみ。稼働面積は約 8 万㎡と置き(オフィス・ホテル・ホール)、1 千㎡あたり年 0.32 億円とした。遊休地の再開発とホテル参入で面積はわずかに増える。営業利益率は 29%。
リスクと懸念
ブランド事業の構造的な縮小
百貨店の客数減と、中国・香港の不振が続く。2026 年 3 月期は DAKS とレオナールの減損を出した。売り場の家賃や旗艦店の費用は固定で、売上が落ちても減らない。ブランド事業は赤字に落ちうる。
本社費と物価
本社費は年 7 億円台あり、セグメント利益の半分に当たる。物価で人件費が増えれば、10 年後は 10 億円を超える。削減の実績が乏しく、利益の足を引っ張り続ける。
資本の使い方
利回り 3% の保有株を持ち続け、一部を入れ替えている。レオナールの買収は 4 年で減損になった。M&A の約 20 億円と不動産の約 40 億円が、同じ結果になれば自己資本が減る。
保有株の価格変動
自己資本の約 4 割は、保有株の含み益だ。株式相場が 3 割下がれば、自己資本は 80 億円近く減る。受取配当も景気で変わる。売却益は毎期は出ない。
OEM の中抜きと受注競争
顧客のブランドが工場と直接取引すれば、商社機能の利益は削られる。今の利益率 4.6% は高めだ。縫製の拠点移転と素材の調達でも、費用が増えうる。
不動産の金利と更新
金利が上がると、賃貸ビルの評価額と借り入れの利払いに響く。ホテルの賃貸は固定が多く、物価に沿った賃料の改定が難しい。オフィスの空室が増えれば、利益の半分を稼ぐ部門が崩れる。
今後の分かれ目
- 保有株の売却額と、株主への還元の方針が数字で示されたら
- 資産の厚さが株主の取り分に変わる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。含み益の約 70% が、税を払った後の値打ちになる。
- ブランド事業の営業利益率が 2 期続けて 8% を超えたら
- 減損後の償却が軽くなり、本業が再び稼ぐ。やや楽観に確率を移す。DAKS のライセンス収入が柱になっているかを見る。
- レオナールや DAKS の追加の減損、または旗艦店の閉鎖が出たら
- ブランド事業の構造的な縮小が進む。やや悲観・悲観の確率を上げる。固定家賃の負担が見えた時は特に重く見る。
- 大型の M&A が公表され、買収額が 20 億円を大きく超えたら
- 資本の使い方が失敗に終わる恐れが高まる。のれんの大きさと、買う相手の利益の質を見る。
- 東京・大阪のオフィスの空室率が上がり、賃料が下がったら
- 不動産の利益が細り、全社の営業利益の半分が危うくなる。やや悲観の確率を上げる。
- 10 年以内に TOB が公表されたら
- 資産価値を前提にした買い付け価格になる可能性が高い。その価格が資産の厚さをどこまで反映するかが焦点になる。
見ておくもの
- ブランド事業の営業利益率と、減損後の償却額
- 保有株の売却額と、受取配当の水準
- 第 2 次中期経営計画の見直し後の数値目標
- 旗艦店(南青山・パリ)の固定費と売上
- OEM の営業利益率と受注の動向
- 東西サンライズビルの稼働率と賃料
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE が資本コスト 8% を下回るので、上限の 1÷k=11.8 倍に対する割合で置いた。今の PER 15 倍・PBR 0.57 倍には寄せていない。今の PER は、売却益と減損を含んだ純利益で出た数字で、基準にならない。保有株は配当が利益に入っているため、含み益を別に足していない。悲観の床は、売れる資産の税引後の約 4 割とした。新リース会計基準では、使用権資産が貸借対照表に載るが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→12.54 倍・やや楽観 PER 11.2→12.5 倍・中立 PER 10.6→12.5 倍・悲観 PBR 0.15→0.169 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。