結論
横浜丸魚は、横浜と川崎の中央卸売市場で水産物を集めて売る卸の会社だ。生産者から魚を受け取り、仲卸や小売に売る。取扱いは大きいが、利益率は 1% 前後と薄い。
筆者の結論は、割高だ。本業の営業利益は 5 億円に届かず、純利益 6 億円の半分以上は、保有株の配当などの営業外の収益が占める。この利益に妥当な倍率を掛けると、今の時価総額には届かない。
見かけの割安さは、貸借対照表にある。投資有価証券は 190 億円で、時価総額を上回る。しかしこの株は売る方針が示されておらず、配当を受け取るだけの資産だ。配当は既に利益に入っているので、資産としてさらに足せば二重に数えてしまう。
水産物の消費は人口と魚離れで細り、市場を通る流通も減る。数量は実質で 10 年に 3 割近く減ると見る。物価で単価が上がっても、利益はほとんど増えない。
見直しの契機は、保有株の売却と自社株買いだ。過去に株主から要求を受けた経緯もある。実現すれば、楽観の筋書きで今の値段に近づく。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えるが、割安とは言い切れない」会社だ。
本業は価値を生まない。営業利益は売上の 1% で、資本コストに遠く及ばない。事業の価値は、手元の現金と保有株の配当で説明できる範囲に限られる。
帳簿の厚みが唯一の根拠だが、そこには条件が付く。保有株の価値が株主に届くには、会社が売却して還元するか、配当を大きく増やす必要がある。会社の現状の方針は、どちらでもない。持ち続ける限り、これらは 2% の配当を生む資産でしかない。
オーナー利益は、純利益 6 億円からほとんど変わらない。設備投資は軽いが、事業の縮小に備えた投資も要る。
安全域は、足元の値段ではなく、売却と還元の実行に見出すしかない。実行の確証がない今は、厚い帳簿を理由に割安とは言えない。経営の資本配分は、率直に言って守りに偏っている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、市場での手数料と販売の差益だ。2026 年 3 月期の売上 406 億円のうち、水産物卸売事業が 326 億円、グループ会社の水産物販売が 75 億円を占める。
卸売事業は、生産者や水産会社から魚を預かり、せりや相対取引で仲卸に売る。取扱高が大きくても、会社の取り分は薄い。営業利益率は 1% に届かない。
運送事業は売上 4 億円で、市場内外の配送を担う。不動産等賃貸事業は売上 2 億円ながら、営業利益は 1 億円を超え、全社の利益の 3 割近くを稼ぐ。神奈川と東京にオフィスや住宅を持つ。
連結子会社は 4 社で、川崎丸魚(持株 51%)、館山丸魚、ハンスイ、横浜魚市場運送だ。従業員は連結で 178 人と少ない。
沿革では、2018 年に川崎南部の事業を整理し、2022 年には横浜市の南部市場の閉場に伴い南部支社を廃止した。市場の縮小に合わせた撤退が続いている。
営業利益と経常利益の差は、2026 年 3 月期で約 4.5 億円ある。主に保有株の配当とみられる。本業より保有株の方が、稼ぎを支えている。
優良さと弱いところ
堀は薄い。市場の荷受は許可と長年の取引関係に守られているが、利益率が上がる構造ではない。手数料の率は市場のルールで決まり、仕入れる魚の値段も自分では動かせない。
良い点は、財務の安定だ。自己資本比率は 68% で、現預金 28 億円に対し短期借入は 6 億円しかない。
悪い点は三つある。第一に、資本の使い方だ。自己資本の 9 割近くが投資有価証券に回り、その収益は配当の 2% 台にとどまる。ROE は過去 10 年の中央値で 2.8%だ。第二に、市場を通す流通そのものが細っている。売上は 2015 年の 552 億円から、2025 年は 398 億円に縮んだ。第三に、水産大手や地元の銀行が株主に並ぶ。持ち合いは安定をもたらす一方、資本の効率を上げる圧力を弱める。
筆者は、事業としては地味で安定、資本政策としては動きの鈍い会社と見る。バリュー投資家が期待するのは、保有株をどうするかの一点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
水産物の卸売は、長い縮小の途中にある。国内の魚の消費は人口の減少と魚離れで細り、1 人あたりの量も落ちてきた。供給側でも、漁獲量の減少と資源保護の規制が重なる。
流通の形も変わっている。産地から量販店や外食へ直接運ぶ流れが強まり、市場を通る割合は下がってきた。横浜市は南部市場を閉じ、市場の再編が進んだ。同社の売上は 10 年で 3 割近く縮み、物価の上昇を差し引けば、数量の落ち込みは更に大きい。
追い風もある。輸入水産物が増え、冷凍・加工の需要が伸びている。鮮魚加工に力を入れる計画は、この流れに沿う。
競争相手は、同じ中央卸売市場の別の荷受、仲卸、産地直送を担う商社だ。大手水産会社は、自社で販売網を持ち、市場の外で売る。
人口は年 0.5% ほど減り、首都圏でも魚の量は細る。単価は物価で上がるが、手数料の取り分は上がりにくい。魚が高騰する局面では、買い手が減って取扱量が落ちる。筆者は、国内の水産流通のこの構造は、10 年では反転しないと見ている。ただし市場が消えるわけではなく、鮮度や量の調整を担う機能は残るため、縮み方は緩やかだ。
資本政策と M&A
還元は穏やかに増えている。2026 年 3 月期の配当性向は 35% で、純資産配当率は 1% だ。配当は 2020 年の水準から段階的に引き上げ、2025 年には中間配当も始めた。自社株は発行の 9% 弱を持つ。
株主優待は小さい。期末に 100 株以上で QUO カード、中間に 300 株以上で取扱い商品や施設の割引券を出す。年間の費用は 1 億円に届かず、価値への影響は 1 ポイントに満たない。
課題は保有株だ。投資有価証券は 190 億円で、時価総額を上回る。2020 年には外国の株主が、売却と社外取締役の選任を求めた。会社の縮減方針や売却実績は、確かめられなかった。
大株主は水産大手の Umios、極洋、地元の横浜銀行など。親会社はない。10 年以内に買収される確率は、外部の推計で 22% とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額 118 億円に対し、投資有価証券だけで 190 億円ある。これに現預金 28 億円が加わり、借入は 6 億円しかない。会社の持つ資産の価値は、時価総額を大きく上回る。
東証は、資本効率の改善と政策保有株の縮減を上場会社に求めている。2020 年には外国の株主が売却を要求した。大株主の水産大手や銀行との関係を整理し、保有株を売って自社株買いに回すことは、十分に起こりうる。
売れば、含み益に課税されても、時価総額に近い額が株主に戻る。配当性向も 35% から引き上げられる余地がある。
本業も悪くはない。営業利益は 2 年続けて約 3 割増え、不動産賃貸は安定して稼ぐ。川崎や館山の事業整理が一巡し、利益率は上向いている。取り分が薄い商売でも、人員が少なく固定費が軽いのは強みだ。保有株の評価益が積み上がった今、売却の機運は以前より高まっている。会社が動けば、株価は資産の価値に引き寄せられる。
慎重な見方
保有株の売却は、20 年以上言われ続けて実現していない。2020 年の株主要求の後も、縮減の方針は示されていない。水産大手や銀行の大株主と、持ち合いを続ける関係が根強い。売らない資産は、配当 2% しか生まない。
本業は縮む。市場経由の流通は下がり続け、売上は 10 年で 3 割近く減った。営業利益 5 億円は売上の 1% で、人件費が物価で上がれば簡単に消える。
純利益 6 億円の半分以上は、保有株の配当だ。本業の稼ぎは小さく、倍率を掛けるに値しない。
仮に株を売っても、含み益に課税され、残る現金を会社が株主に戻す保証はない。しかも自己資本の厚みは、株価が上がった結果にすぎず、株価が 4 割下がれば簡単に失われる。買収の話が出ても、保有株の価値を見込んだ高い価格が付くとは限らない。最後に、経営が動く保証のない資産に、動く前提の価格は払えない。市場が長く縮む産業で、薄い利益率の事業に再投資しても、資本コストは回収できない。
どちらに重みを置いたか
売却の実績が確かめられない以上、慎重な見方が強い。ただし売却が起こる可能性は小さくないので、楽観側にも一定の確率を残した。楽観とやや楽観を合わせて 22% に置いた。本業の薄さは事実なので、中立も売却が起きない前提で保守的に置いている。動けば大きく、動かなければ地味という非対称の賭けで、確率の置き方がそのまま結論を決める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,653 円100 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 503 円30 億円)。 今の値に割り戻すと 1,126 円68 億円、今との差 −42.0%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,106 円127 億円 | 1,211 円73 億円 | +71.0% | +5.5% | 265 円16 億円 |
| やや楽観 | 14% | 1,659 円100 億円 | 929 円56 億円 | +33.4% | +2.9% | 362 円22 億円 |
| 中立 | 40% | 2,136 円129 億円 | 415 円25 億円 | +31.5% | +2.8% | 1,020 円61 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,178 円71 億円 | 332 円20 億円 | −22.2% | −2.5% | 393 円24 億円 |
| 悲観 | 12% | 763 円46 億円 | 199 円12 億円 | −50.4% | −6.8% | 115 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,653 円100 億円 | 503 円30 億円 | +11.1% | +1.1% | 2,156 円130 億円 |
今の株価時価総額 1,940 円117 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 増配と保有株の一部売却で、資本効率が上がる 利益 10 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,106 円127 億円
東証の資本効率の要請と株主の圧力で、会社は政策保有株の 2 割を売る。税引き後で約 30 億円を、自社株買いで株主に戻す。配当性向も 50% へ引き上げる。
配当収入はやや減るが、自己資本は軽くなり、ROE は 4% 近くへ上がる。本業は、魚の高騰と鮮魚加工・海外販売の伸びで数量の減りを 15% にとどめる。
それでも営業利益は 7 億円台で、本業の価値は限られる。株主に戻る現金が、この筋書きの価値の中心である。会社が動くきっかけは、株主の要求と東証の要請の二つだ。売却の時期は読めないが、10 年あれば一度は動くという見方である。
- 水産物卸売事業(荷受):数量 3.9(取扱数量(万トン))× 価格 99(1 トンあたりの取扱単価(万円))→ 売上 386 億円・営業利益 5 億円。数量 3.9 万トン(0.85 倍)× 単価 98.9 万円(1.40 倍)、営業利益率 1.2%
- 水産物販売事業(グループ会社):数量 1.2(販売数量(万トン))× 価格 88(1 トンあたりの販売単価(万円))→ 売上 105 億円・営業利益 1 億円。数量 1.2 万トン(横ばい)× 単価 87.5 万円(1.40 倍)、営業利益率 0.5%
- 運送事業:数量 8.0(取扱貨物(万トン))× 価格 0.70(1 トンあたりの運賃(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。貨物 8 万トン × 運賃 0.7 万円(1.40 倍)、営業利益率 10%
- 不動産等賃貸事業:数量 2.5(賃貸面積(万平方メートル))× 価格 1.12(1 平方メートルの年賃料(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。面積 2.5 万平方メートル × 年賃料 1.12 万円(1.40 倍)、営業利益率 65%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.82 倍、時価総額 127 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売却の実績がなく、大株主との持ち合いも固い。起これば大きいが、実現の確証がないので 8% とした。
やや楽観 14% 市場の細りが緩やかで、保有株の一部を売る 利益 8 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,659 円100 億円
魚の流通は市場から外へ移るが、冷凍・加工の取扱いが伸びて数量の減りは 2 割強にとどまる。単価は物価並みに上がる。
会社は保有株の 2 割ほどを売り、税引き後で約 29 億円を自社株買いに充てる。配当性向は 35% を保つ。
営業利益は 6 億円ほどに増えるが、本業の利益率は 1% 台のままだ。大きな変化はなく、株主の取り分が少し増える程度の 10 年になる。配当も、売却にも頼らない中での自然な増え方だ。経営の目線も、本業の維持が中心になる。不動産賃貸の安定が、薄い本業を下支えする。単価の上昇が数量の減りを一部補い、売上の落ち込みは名目では小さい。
- 水産物卸売事業(荷受):数量 3.6(取扱数量(万トン))× 価格 96(1 トンあたりの取扱単価(万円))→ 売上 346 億円・営業利益 4 億円。数量 3.6 万トン(0.78 倍)× 単価 96.1 万円(1.36 倍)、営業利益率 1.0%
- 水産物販売事業(グループ会社):数量 1.1(販売数量(万トン))× 価格 85(1 トンあたりの販売単価(万円))→ 売上 94 億円・営業利益 0 億円。数量 1.1 万トン(0.92 倍)× 単価 85.0 万円(1.36 倍)、営業利益率 0.3%
- 運送事業:数量 7.5(取扱貨物(万トン))× 価格 0.66(1 トンあたりの運賃(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。貨物 7.5 万トン × 運賃 0.66 万円(1.32 倍)、営業利益率 9%
- 不動産等賃貸事業:数量 2.5(賃貸面積(万平方メートル))× 価格 1.04(1 平方メートルの年賃料(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。面積 2.5 万平方メートル × 年賃料 1.04 万円(1.30 倍)、営業利益率 63%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.82 倍、時価総額 100 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の縮小は止まらないが緩やか。保有株の一部売却が起こる筋書きで、14% とした。
中立 40% 市場は細り、本業は薄いまま、保有株の配当が稼ぎを支える 利益 7 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,136 円129 億円
市場を通る魚が減り、卸売の数量は今の 7 割強になる。単価は物価並みに上がり、売上は 400 億円前後に保たれる。
営業利益率は 0.8% に下がる。人件費の物価上昇は、手数料の取り分を超えるからだ。不動産賃貸が全社の利益の 3 割を支える構図は変わらない。
保有株の配当は名目で伸び、営業外収益は 6 億円台になる。純利益は 7 億円強で、配当性向 35% を続ける。保有株は売られないまま、自己資本の厚みが増えていく。価値は増えているのに、利益に結びつかない状態が続く。配当性向 35% の下で、積み上がる現金と評価益が、いつまでも株主に届かない。株主から見れば、帳簿は膨らんでも手元の果実は増えない 10 年だ。市場の縮小に合わせた支社の統廃合が、さらに続く可能性もある。
- 水産物卸売事業(荷受):数量 3.3(取扱数量(万トン))× 価格 95(1 トンあたりの取扱単価(万円))→ 売上 313 億円・営業利益 3 億円。数量 3.3 万トン(0.72 倍)× 単価 94.7 万円(1.34 倍)、営業利益率 0.8%
- 水産物販売事業(グループ会社):数量 1.0(販売数量(万トン))× 価格 84(1 トンあたりの販売単価(万円))→ 売上 84 億円・営業利益 0 億円。数量 1.0 万トン(0.83 倍)× 単価 83.75 万円(1.34 倍)、営業利益率 0.2%
- 運送事業:数量 7.0(取扱貨物(万トン))× 価格 0.65(1 トンあたりの運賃(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。貨物 7 万トン × 運賃 0.65 万円(1.30 倍)、営業利益率 8%
- 不動産等賃貸事業:数量 2.5(賃貸面積(万平方メートル))× 価格 1.00(1 平方メートルの年賃料(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。面積 2.5 万平方メートル × 年賃料 1.0 万円(1.25 倍)、営業利益率 62%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 7.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.82 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 10 年の縮小が同じペースで続く、もっとも自然な筋書き。売却の兆しは出ない前提。
やや悲観 26% 市場経由の流通が急速に細り、本業は薄利にとどまる 利益 5 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,178 円71 億円
市場の再編が進み、卸売の数量は今の 6 割まで落ちる。単価は物価ほど上がらず、売上は 330 億円に縮む。
営業利益は 2 億円台まで下がり、純利益の中心は保有株の配当になる。配当は名目で横ばいだ。
会社は配当性向 35% を保てず、引き下げる。保有株は売られず、資本効率は更に悪化する。売上が減るのに人員の整理が追いつかず、固定費の重さが表に出る。賃貸の利益は残るが、全体の赤字を埋めるには足りない。経営は規模の縮小と人員の整理を迫られる。整理の費用が先に出て、利益の回復は遅れる。人員を絞っても、市場に常駐する体制は崩せない。
- 水産物卸売事業(荷受):数量 2.8(取扱数量(万トン))× 価格 92(1 トンあたりの取扱単価(万円))→ 売上 257 億円・営業利益 1 億円。数量 2.8 万トン(0.61 倍)× 単価 91.8 万円(1.30 倍)、営業利益率 0.5%
- 水産物販売事業(グループ会社):数量 0.8(販売数量(万トン))× 価格 81(1 トンあたりの販売単価(万円))→ 売上 65 億円・営業利益 0 億円。数量 0.8 万トン(0.67 倍)× 単価 81.25 万円(1.30 倍)、営業利益率 0%
- 運送事業:数量 6.0(取扱貨物(万トン))× 価格 0.62(1 トンあたりの運賃(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。貨物 6 万トン × 運賃 0.62 万円(1.24 倍)、営業利益率 6%
- 不動産等賃貸事業:数量 2.2(賃貸面積(万平方メートル))× 価格 0.96(1 平方メートルの年賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。面積 2.2 万平方メートル(空室増)× 年賃料 0.96 万円(1.20 倍)、営業利益率 55%
倍率:ROE 2.2% は k 7.8% を下回る。RONIC は 5.3%、g 1% の正当化 PER は約 11 倍だが、稼ぐ力が細るので 8 割の 9.0 倍に置いた。自己資本比の PBR が低いのは、自己資本の大半が利益を生まない保有株の評価益だからで、倒産に近い姿ではない。
確率:産地直送の拡大と魚の高騰で、市場を通る数量が 4 割減る。すでに進む変化の延長で、厚めに 26%。
悲観 12% 市場の縮小に株式相場の長い下落が重なる 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 763 円46 億円
中央卸売市場の統合と流通の直送化で、卸売の数量は今の 5 割を割る。営業利益は赤字に転じる。
同じ時期に株式相場が長く低迷し、保有株の時価は 6 割下がる。配当も減り、自己資本は厚みを失う。
価値は、売れる資産を戻り方 0.5 で割り引いた額に近づく。本業に事業価値はない。市場の再編が進み、会社の存続の形そのものが問われる。賃貸不動産を除けば、従業員を養うだけの収入が残らない。この筋書きでは、保有株の評価と、売却の判断だけが価値を決める。経営が動かなければ、その価値は株主に届かない。配当は半分に減り、株主はほとんど何も受け取れない。
- 水産物卸売事業(荷受):数量 2.1(取扱数量(万トン))× 価格 85(1 トンあたりの取扱単価(万円))→ 売上 178 億円・営業利益 −1 億円。数量 2.1 万トン(0.46 倍)× 単価 84.8 万円(1.20 倍)、営業利益率 −0.5%
- 水産物販売事業(グループ会社):数量 0.5(販売数量(万トン))× 価格 75(1 トンあたりの販売単価(万円))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。数量 0.5 万トン(0.42 倍)× 単価 75 万円(1.20 倍)、営業利益率 −0.5%
- 運送事業:数量 4.0(取扱貨物(万トン))× 価格 0.55(1 トンあたりの運賃(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。貨物 4 万トン × 運賃 0.55 万円(1.10 倍)、営業利益率 0%
- 不動産等賃貸事業:数量 2.5(賃貸面積(万平方メートル))× 価格 0.80(1 平方メートルの年賃料(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。面積 2.5 万平方メートル × 年賃料 0.8 万円(横ばい)、営業利益率 50%
倍率:ROE がほぼゼロで稼ぐ力は付けられない。保有株の売却額(時価が 6 割下がった後)と現金から事業の処分費用を引いた額に戻り方 0.5 を掛けた約 46 億円に合わせた。
確率:市場の機能が構造的に縮み、保有株の市場価値も長く低迷する重なり。起これば価値は大きく目減りする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水産物卸売事業(荷受)
横浜・川崎の中央卸売市場で産地や水産会社から魚を預かり、仲卸・小売に売る。手数料と販売の差益。
| 数量取扱数量(万トン) | 価格1 トンあたりの取扱単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.6 | 71 | 325 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3.3 | 95 | 313 | 3 |
取り方:卸売事業の売上 326 億円から、数量 4.6 万トン・平均単価 1 トン 70.65 万円と推定した(トン数の開示は確認できず、市場全体の取扱量を参考にした推定)。営業利益 3 億円は 2026 年 3 月期のセグメント開示。
水産物販売事業(グループ会社)
ハンスイ、館山丸魚などが量販店・外食向けに水産物を販売する。
| 数量販売数量(万トン) | 価格1 トンあたりの販売単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 63 | 75 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 84 | 84 | 0 |
取り方:売上 75 億円から、数量 1.2 万トン・単価 62.5 万円と推定した(開示は金額のみ)。営業利益 0.15 億円はセグメント開示。
運送事業
横浜魚市場運送が市場の内外で魚を運ぶ。
| 数量取扱貨物(万トン) | 価格1 トンあたりの運賃(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 0.50 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 0.65 | 5 | 0 |
取り方:売上 4 億円から、貨物量 8 万トン・運賃 1 トン 0.5 万円と推定した。営業利益 0.39 億円はセグメント開示。
不動産等賃貸事業
神奈川と東京のオフィス・賃貸住宅を貸す。
| 数量賃貸面積(万平方メートル) | 価格1 平方メートルの年賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.5 | 0.80 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.5 | 1.00 | 3 | 2 |
取り方:売上 2 億円から、面積 2.5 万平方メートル・年賃料 1 平方メートル 0.8 万円(月 月に数千円台)と推定した。営業利益 1.35 億円(利益率 68%)はセグメント開示。
リスクと懸念
市場経由の流通の細り
産地から量販店や外食への直送が増え、中央卸売市場を通る魚は減り続ける。売上は 10 年で 3 割近く縮んだ。数量は実質で 3 割近く減る前提で見ている。
魚の消費と供給の減少
人口の減少と魚離れで国内の消費が細る。漁獲量の減少で魚が高くなれば、買い手はさらに減る。単価が上がっても、取扱量の減りを補えない。
保有株の評価と配当
投資有価証券は 190 億円で、自己資本の 9 割に当たる。株価が下がれば自己資本が削られ、配当を減らす銘柄が出れば経常利益が落ちる。
資本政策の鈍さ
売却や自社株買いの方針が確かめられない。大株主との持ち合いが続く限り、資本効率は上がりにくい。株主の要求が実を結ぶかは不透明である。
人件費と物流費の上昇
従業員は 178 人と少ないが、人件費は物価で上がる。手数料の取り分は上がりにくく、薄い営業利益率を圧迫する。
市場の再編・移転
横浜市は南部市場を閉じた。今後も市場の再整備や統合が進めば、施設の費用負担や取扱いの移動が起こりうる。
今後の分かれ目
- 保有株の売却と自社株買いの方針が数字で開示される
- 余った資産の戻り方が確かになる。楽観・やや楽観の確率を上げて見直す。
- 営業利益が 3 期連続で 6 億円を超える
- 本業の利益率が構造的に改善した証拠になる。中立の利益率を引き上げる。
- 卸売事業の取扱数量が毎年 3% 以上減る
- 数量が実質で細る筋書きが進んでいる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 大株主の水産会社や銀行が株を売却する
- 持ち合いの解消が始まる。大株主との関係が変わる可能性にも注意する。
- 公開買付けが発表される
- 買付価格が資産の厚みを反映するかが焦点。基準は保有株の売却後の価値になる。
見ておくもの
- 投資有価証券の残高と売却の有無
- 卸売事業の営業利益率
- 配当性向と自社株買い
- 市場再編に関する横浜市・川崎市の動き
倍率と資本コストの決め方
本業の営業利益と、営業外の保有株の配当を分けて見た。倍率は ROE が k を下回るので上限 1÷k のおよそ 8 割強に置き、市場の PER や PBR は使っていない。持ち合い株の価値は配当で既に利益に入っているので、余り資産に足していない(二重を避けた)。売却して戻る筋書きは楽観・やや楽観にだけ入れ、確率を限った。悲観の床は、保有株が大きく下がった局面の売却額を戻り方 0.5 で割り引いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.82 倍・やや楽観 PER 9.8→12.82 倍・中立 PER 9.5→12.82 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。