結論
共同紙販ホールディングスは、印刷用紙や情報用紙を東京の印刷会社に卸す、創業80年近い紙の問屋だ。筆者の結論は割高である。純資産の8割ほどの値段だが、その純資産がほとんど稼いでいない。
本業の利益は消えかけている。2026/03期の営業損益は小さな赤字で、純利益は持ち合いの株を売った益で黒字を保った。チラシや帳票が電子に移り、扱う紙の量は毎年減っている。
貸借対照表は堅い。借金は無く、現金は14億円ある。ただ、筆頭株主の日本製紙が議決権の3割を握り、自社株買いの実績は無い。配当は年0.3億円ほどだ。現金が株主に戻る道は細い。
10年後の中立は、取扱量が4分の1減り、利益率は0.4%ほどにとどまる姿だ。稼ぐ力に余った現金の戻る分を足しても、今の時価総額の3分の1に届かない。
下値を支えるのは現金だ。ただし、それは会社が持ち続ける現金で、株主の手元にある現金ではない。日本製紙が系列の卸をまとめる日が来れば話は変わるが、その時期と値段は読めない。値段の安さは、稼がない資本に付いた正しい値札だと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安く見えて安くない会社だ。
時価総額は純資産の8割で、現金と持ち合いの株を足すと時価総額の3分の2になる。だが、その資産はほとんど稼いでいない。本業の利益は年に数千万円で、資本コストを8.75%とすれば、毎年その差の分だけ株主の価値が目減りする。
資産が株主に届く道も見えない。日本製紙が3割を握り、会社は自社株買いをしたことが無い。少数の株主には、現金の使い道を決める力が無い。
紙の卸という事業は、10年後も残るだろう。ただ、取扱量は減り、卸の取り分は製紙会社と運送費に挟まれる。利益が育つ筋道を、筆者は描けない。安全域は資産の厚さでなく稼ぐ力から取るものだ。今の値段は、その稼ぐ力に比べて高い。
もし会社が現金を自社株買いに回すと数字で約束するか、日本製紙が少数の株主に公平な値段で買い取ると決めれば、筆者の見方は変わる。それまでは外から見ておきたい。
何で稼ぐ会社か
共同紙販は1947年に東京・豊島で創業した洋紙の卸だ。製紙会社や代理店から紙を仕入れ、印刷会社や出版、帳票、折込広告の会社に売る。顧客は首都圏の中小の印刷会社が中心で、1社に頼る形ではない。
売上のほぼ全部が紙だ。主力は印刷用紙と情報用紙で、ここ数年は板紙や産業用紙、家庭紙にも品ぞろえを広げている。特殊紙は子会社のファイビストオフィスを通じて仕入れる。
物流は子会社の関東流通が担う。紙を倉庫で預かり、断裁などの加工をして、得意先に届ける。社内向けの売上が大半で、利益は年0.3億円ほどだ。
不動産の賃貸は小さくなった。2025年に戸田の賃貸マンションを売り、今は自社の建物を子会社に貸す分が残るだけだ。
稼ぎ方は、仕入れ値に1割強の粗利を乗せて売る形だ。ところが、人件費と物流と本社の費用で、その粗利はほぼ消える。紙の卸の部門は年2.5億円を稼ぐが、本社の費用が3.5億円かかる。2022年には同業のわかば紙商事を買い、取扱いを積み増したが、利益の形は変わっていない。
従業員は137人で、平均年齢は50歳を超える。長く付き合う得意先を、少ない人数で回す形だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは見当たらない。扱うのは製紙会社の汎用の紙で、どの卸から買っても中身は同じだ。
値決めの力も無い。仕入れ値は製紙会社が決め、値上げは客にそのまま回すだけだ。2026/03期は仕入れ値の上昇を売値に乗せきれず、利益率が下がった。普通の紙では、日本紙パルプ商事や国際紙パルプ商事のような大手が規模で勝つ。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は2.6%で、資本コストの3分の1に届かない。純資産の3分の1は現金で、本業には使われていない。
管理の甘さも見えた。2026年に雇用調整助成金0.7億円を全額返した。受け取りに不備があったためで、1年分の利益を上回る額だ。
強みを挙げるなら、無借金の財務と、首都圏の印刷会社との長い取引だ。日本製紙の系列にあることで、紙が足りない時にも仕入れが途切れにくい。
ただ、系列の安心は値段の強さにはつながらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
紙の卸は、縮む市場で戦っている。チラシ、カタログ、帳票、雑誌が電子に移り、印刷用と情報用の紙の国内出荷は毎年数%ずつ減る。この流れは戻らない。企業が販促の予算を絞る時、真っ先に削られるのも印刷物だ。
残る需要はある。包装や紙器に使う板紙、プラスチックの代わりになる紙、教科書や書籍だ。ただ、量は印刷用紙の減りを埋めるほど大きくない。
卸の役割も細っている。大手の印刷会社は製紙会社や大手の代理店から直接買う。中小の卸が残るのは、少量の注文を倉庫からすぐ届け、代金の回収を引き受ける場面だ。
費用は上がる。運送費、倉庫、人件費は物価以上に上がりやすい。製紙会社は工場を減らし、値上げを続けている。卸の粗利は、その間に挟まれて薄くなる。
10年の中立では、取扱量は4分の1減り、値段は物価にやや遅れて上がると見る。卸の数は減り、統合の話が増えるだろう。共同紙販のような小さな卸は、統合される側に回りやすい。
値上げは続くが、それは製紙会社の取り分を守るためのもので、卸の取り分を広げるものではない。量が減る中で値段だけが上がれば、客はさらに紙を減らす。この悪い循環が、小さな卸の利益を細らせている。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。1株あたりの配当を据え置き、総額は年0.3億円ほど。利益より配当が多い年が続く。自社株買いの実績は無い。
現金は増えている。2026/03期は賃貸マンションと持ち合いの株を売り、現金は14億円になった。使い道の方針は出ていない。会社の目標は、2028/03期までに純利益2億円とROE5%を安定して出すことだ。今の稼ぎの5倍で、道筋は示されていない。
筆頭株主の日本製紙は、子会社の分と合わせて議決権の30%を持つ。当社は日本製紙の持分法の会社だ。日本製紙が紙の流通を組み替える時、当社の行方もそこで決まる。買われる側に回る可能性はあるが、時期も条件も読めない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、資産の厚さと、日本製紙という親の存在に目を向ける。
借金は無く、現金は14億円、持ち合いの株は6億円ある。土地と建物も帳簿で12億円持つ。時価総額はこれらの合計に近い。東証は資本の使い方を改めるよう求め続けており、会社も持ち合いの株を減らし始めた。現金を自社株買いに回せば、株主の取り分はすぐに増える。
日本製紙は紙の流通の再編を進めている。系列の卸をまとめる時、少数の株主の分を買い取る形になれば、純資産に近い値段がつきうる。
本業にも手はある。板紙や家庭紙に品ぞろえを広げ、物流の子会社で加工と配送を引き受ける。中小の印刷会社にとって、少量をすぐ届ける卸は今も要る。値上げが通り、本社の費用を削れば、利益率1%は過去にも届いた水準だ。会社の目標の純利益2億円の半分でも届けば、今の稼ぎの数倍になる。
物流の子会社も、紙の保管と加工を外の客から引き受ければ、小さいながら別の稼ぎになる。
慎重な見方
慎重な見方は、20年続く縮小と、稼がない資本を突く。
売上は10年前とほぼ同じだが、その間に紙の値段は3割上がった。量は大きく減っている。営業利益率が1%を超えた年は、この20年でほとんど無い。2026/03期は仕入れ値の上昇を売値に乗せきれず、営業赤字になった。
値決めの力は無い。仕入れ値は製紙会社が決め、運送費と人件費は上がる。得意先の紙器の会社が破産し、債権の回収にも不安が出た。助成金の受け取りの不備で、0.7億円を返した。管理の質にも疑問が残る。
現金は厚いが、日本製紙が3割を握り、自社株買いの実績は無い。会社の中に残る現金は、利息の分しか株主に届かない。ROE2%の会社の純資産は、帳簿どおりの価値を持たない。
日本製紙が流通を組み替えるとしても、少数の株主に有利な値段が出る保証は無い。条件の悪い統合なら、株主はむしろ損をする。
会社の目標の純利益2億円も、今の稼ぎの5倍で、道筋が示されていない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。強気の見方の柱は、現金の還元と親による買い取りという、会社の外の出来事だ。どちらも数字の方針や実績が無い。本業の利益率は20年近く1%以下で、量の減りは止まらない。確率は中立と慎重の側に寄せ、資産が動く可能性は強気の側にだけ置いた。現金が株主に戻る仕組みができるまで、資産の厚さは値段の根拠にならないと筆者は見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,344 円16 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 470 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 1,322 円9 億円、今との差 −70.5%、 期待の年率 −4.5%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,178 円28 億円 | 740 円5 億円 | +9.8% | +0.9% | 344 円2 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,412 円23 億円 | 592 円4 億円 | −10.6% | −1.1% | 721 円5 億円 |
| 中立 | 40% | 2,781 円19 億円 | 503 円3 億円 | −26.7% | −3.1% | 1,314 円9 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,058 円7 億円 | 370 円3 億円 | −68.1% | −10.8% | 314 円2 億円 |
| 悲観 | 13% | 710 円5 億円 | 222 円2 億円 | −79.2% | −14.5% | 121 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,344 円16 億円 | 470 円3 億円 | −37.2% | −4.5% | 2,814 円19 億円 |
今の株価時価総額 4,480 円30 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 品ぞろえが広がり、利益率1% 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 4,178 円28 億円
板紙や産業用紙、家庭紙の品ぞろえが効き、印刷用紙の減りを一部埋める。取扱量は10年で15%減にとどまる。
製紙会社の値上げが続き、卸もそれを客に乗せられるようになる。平均の単価は4割上がる。物流の子会社は加工と配送を外の客からも引き受け、本社の費用は人の入れ替えで抑えられる。営業利益率は1%に乗る。
純利益は約1.8億円で、会社の目標の2億円に近づく。それでもROEは4%ほどで、資本コストには届かない。配当は少しずつ増える。
強気の筋書きでも、株主の取り分を大きく変えるのは、現金を株主に戻す決断か、日本製紙による買い取りだ。事業の稼ぎだけでは、今の値段に届かない。
- 洋紙卸売(物流・賃貸を含む):数量 69.7(取扱量(千トン、推定))× 価格 28(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 195 億円・営業利益 2 億円。取扱量−15%、単価+40%、利益率1%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 28 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率1%は過去12年の山(2020/03期1.0%)にあたる。板紙と家庭紙への広がり、値上げの浸透、本社費用の削減がそろう必要があり、7%に抑えた。
やや楽観 18% 値上げが少し通り、利益率0.7% 利益 1 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,412 円23 億円
印刷用紙の減りは続くが、板紙と産業用紙が支え、取扱量は10年で2割減る。単価は物価をやや上回って36%上がる。
値上げのたびに卸の取り分も少しずつ広がり、物流の子会社の加工の売上も増える。営業利益率は0.7%で、営業利益は約1.25億円になる。現金の利息と持ち合いの株の配当を足し、純利益は約1.25億円だ。
配当は今の額を続け、少しだけ増やす。現金は積み上がるが、使い道は決まらない。
ROEは3%に届かず、資本コストとの差は大きい。事業は小さな利益を確実に出す形に落ち着くが、株主の価値を大きく動かすほどではない。
- 洋紙卸売(物流・賃貸を含む):数量 65.6(取扱量(千トン、推定))× 価格 27(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 178 億円・営業利益 1 億円。取扱量−20%、単価+36%、利益率0.7%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 22 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率0.7%は2019/03期と2024/03期の間の水準で、会社の今期計画(0.4%)より少し上。値上げの転嫁が続けば届く範囲なので2割弱に置いた。
中立 40% 紙は4分の1減り、利益率0.4% 利益 1 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,781 円19 億円
印刷用紙と情報用紙の需要は減り続ける。板紙や家庭紙が一部を埋め、取扱量は10年で4分の1減る。単価は物価にやや遅れて3割上がる。
運送費と人件費、本社の費用は物価で上がる。値上げとの差は埋まらず、営業利益率は0.4%ほどにとどまる。営業利益は約0.6億円で、現金の利息と持ち合いの株の配当を足し、純利益は約0.8億円になる。
配当は今の1株あたりの額を続け、利益の4割ほどを配る。自社株買いはしない。純資産は42億円ほどでほとんど増えず、ROEは2%に届かない。
事業は続くが、株主の価値はほとんど増えない。現金は会社の中に残り、日本製紙の流通の組み替えを待つ形になる。
- 洋紙卸売(物流・賃貸を含む):数量 61.5(取扱量(千トン、推定))× 価格 26(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 160 億円・営業利益 1 億円。取扱量−25%、単価+30%、利益率0.4%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率は−0.4〜1.0%で中央は0.5%前後。会社の今期計画も0.4%だ。紙の量が毎年数%減る延長がいちばん起こりやすく、4割に置いた。
やや悲観 22% 卸の取り分が消え、本業は赤字 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,058 円7 億円
電子化が速まり、取扱量は10年で35%減る。大手の印刷会社は製紙会社から直接買い、中小の得意先は廃業が続く。単価は物価に遅れ、22%しか上がらない。
運送費と倉庫と人件費だけが上がり、本業の営業損益は小さな赤字が続く。現金の利息と配当で、純利益はゼロ近くに沈む。得意先の倒産で貸し倒れも出る。
配当は途中で減らし、自社株買いはしない。現金は赤字と減配の間に少しずつ減る。
残る価値は、現金と持ち合いの株と、首都圏の得意先の網を誰かが買う時の値段だけになる。日本製紙が系列の卸をまとめるなら、その時の条件しだいだ。
- 洋紙卸売(物流・賃貸を含む):数量 53.3(取扱量(千トン、推定))× 価格 24(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 130 億円・営業利益 0 億円。取扱量−35%、単価+22%、小さな赤字
倍率:本業は稼がず、稼ぐ力では測れない。現金と持ち合いの株は会社の中に残り、少数の株主への戻り方は弱い。今の自己資本39.7億円の0.18倍で、床の資産の額に合わせた。
確率:2025/03期と2026/03期は営業赤字だった。仕入れ値の上昇と取扱量の減りが続けば、赤字が定着する。2割強に置いた。
悲観 13% 得意先が細り、赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 710 円5 億円
構造的に負ける筋書きだ。印刷用紙と情報用紙は10年で半分近くに減り、板紙でも大手の卸に押される。首都圏の中小の印刷会社は廃業が続き、得意先の網そのものが細る。
単価は物価に大きく遅れ、運送費と人件費は上がる。営業損益は毎年1億円ほどの赤字になる。倉庫の整理や在庫の値下げの損も出る。配当は大きく減る。
会社は持ち合いの株を売り、現金を取り崩して赤字を埋める。純資産は36億円を割り込む。
株主に残るのは、細った事業と、会社の外に出てこない現金だ。統合されるとしても、条件の悪い側として吸収される形になりやすい。
- 洋紙卸売(物流・賃貸を含む):数量 45.1(取扱量(千トン、推定))× 価格 23(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 104 億円・営業利益 −1 億円。取扱量−45%、単価+15%、赤字
倍率:赤字が続き稼ぐ力は無い。現金は赤字で減り、残りも会社の中にとどまる。今の自己資本39.7億円の0.12倍で、床の資産の額に合わせた。
確率:印刷用紙の需要は20年で半分近くに減った。卸を飛ばす流れが速まれば赤字は続く。1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
洋紙卸売(物流・賃貸を含む)
印刷用紙・情報用紙を主力に、板紙・産業用紙・家庭紙を仕入れて首都圏の印刷会社などに売る。子会社の倉庫・加工・配送と小さな賃貸を含む。
| 数量取扱量(千トン、推定) | 価格平均単価(万円/トン、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 82.0 | 20 | 165 | 0 |
| 10 年後 中立 | 61.5 | 26 | 160 | 1 |
取り方:取扱量の開示は無い。印刷用紙・情報用紙と板紙の混ざった平均単価を1トン20万円と推定し、売上164.5億円から約8.2万トンと置いた。物流と賃貸の外部売上0.9億円は同じ欄に含める。営業利益は本社費用3.5億円を引いた全社の−0.3億円。
リスクと懸念
印刷用紙と情報用紙の縮み
チラシ、帳票、カタログの電子化で、主力の紙は毎年数%ずつ減る。品ぞろえを板紙や家庭紙に広げても、量の減りを埋めきれない。
仕入れ値と運送費に挟まれる
仕入れ値は製紙会社が決め、運送費と人件費は物価以上に上がる。粗利が1割強の卸では、値上げを乗せきれない年は赤字になる。2026/03期がそうだった。
得意先の倒産
顧客は首都圏の中小の印刷会社と紙器の会社だ。2026年5月にも紙器の得意先が破産した。売掛金と電子記録債権は36億円あり、純資産に比べて大きい。
現金が戻らない
日本製紙が議決権の3割を持ち、自社株買いの実績は無い。現金14億円が会社の中に残る限り、株主に届くのは利息の分だけだ。
管理の質
雇用調整助成金0.7億円を、受け取りの不備で全額返した。1年分の利益を上回る額で、社内の点検の甘さが見えた。
今後の分かれ目
- 現金を使う自社株買いや増配を数字で出した
- 余った現金が株主に届く道が見える。戻り方を上げて見直す。
- 日本製紙が系列の紙の卸をまとめる計画を出した
- 買い取りの値段が株主の取り分を決める。純資産に近いか、条件の悪い統合かで大きく分かれる。
- 営業利益率が2期続けて0.7%を超えた
- 値上げの転嫁が定着した合図だ。やや強気の筋書きの確率を上げる。
- 営業赤字が3期続いた
- 卸の取り分が消える構造が見えた。慎重な筋書きの確率を上げる。
- 大口の得意先の倒産が続いた
- 貸し倒れで純資産が削られる。床の資産を下げて見直す。
見ておくもの
- 印刷・情報用紙の国内出荷量
- 営業利益率と本社費用
- 現金の残高と使い道
- 日本製紙の紙流通の再編
- 配当と自社株買いの額
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。中立のROEは2%弱で資本コスト8.75%に遠く、PERの上限は1÷kの約11.1倍で、その約7割の8倍に置いた。今の株価やPBR0.8倍、同業の値付けは倍率の根拠に使っていない。持ち合いの株は配当を利益に残すので価値を別に足さず、悲観の床の説明にだけ使った。余った現金は戻り方0.5で足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.43 倍・やや楽観 PER 9→11.43 倍・中立 PER 8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality +1.5%を足した9.0%。同じ紙卸の平和紙業(+1.25%)より寿命を0.25%重くした。特殊紙の比率が低く、汎用の印刷用紙の縮みをそのまま受けるため。