結論
IDOM は、中古車買取店「ガリバー」を全国に約 500 店展開する会社だ。車を買い取り、自社の店で売る。売れ残りや業者向けの車は卸す。筆者の結論は、事業の質は並みだが、いまの値段はその稼ぎに比べてやや安いというものだ。
理由は利益の薄さにある。売上は 5,600 億円を超えたが、営業利益は 200 億円、利益率は 3.6% にとどまる。中古車は仕入れも売値も相場で動く。在庫は 1,190 億円と総資産の 4 割を超え、借金は 950 億円ある。金利が上がれば、その分がそのまま利益を削る。
良い点もある。2023 年のビッグモーター問題で、中古車選びは「信頼できる店」へ流れた。同社は値引きをしない売り方を打ち出し、小売台数は 2026 年 2 月期に 16 万台を超えて過去最高になった。大型店の先行投資が実れば、中期計画の営業利益 300 億円も見えてくる。
筆者は、10 年後の中立の姿を、台数は増えるが利益率は 4% 台で頭打ちと見る。その稼ぎを正当な倍率で評価すれば、10 年後の価値は今の時価総額を大きく上回る。ただし利益が薄く、大型店が外れると価値が半分以下になる筋書きにも 4 割近い確率がある。この下振れを織り込んでも、総合ではやや割安と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この会社の最大の問いは、稼いだ利益のうち株主が自由に使えるお金がどれだけ残るかだ。営業利益は 200 億円あるが、売上が伸びれば在庫も同じ速さで増え、在庫を買う資金が先に出ていく。利益が出ても現金が手元に残りにくい。これは、売上を伸ばすほど財布が重くなる業態の特徴だ。
堀の見方では、買取の入口と店舗網は価値があるが、ネクステージという同じ形の相手がいて、市場全体は縮む。10 年後に今より強いと言える根拠は薄い。ビッグモーター問題の追い風も、時間とともに薄れる。
資本配分は、無理な買収を避け、還元も安定している点を評価する。ただ、大型店への投資は、店が当たれば大きく、外れれば固定費が残る賭けだ。
安全域を問う段になると、今の値段は、会社の計画(営業利益 240 億円、中期の 300 億円)の実現を前提にしていない。時価総額は、予想の純利益の 7 倍弱にすぎない。筆者は、台数は増えても利益率は薄いままと見るが、それでも、10 年で見れば今の値段は事業の堅さに対して低く、悲観の筋書きを織り込んでも安全域がわずかに残る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、買い取った車を自社の店で売る「小売」だ。売上のおよそ 6 割を占める。ガリバーの店は全国に約 500 あり、買取から販売、整備、保険や金融まで一つの店で済ませる。大型店では在庫を数百台そろえ、輸入車・軽自動車・SUV などの専門店も育てている。
もう一つが卸売である。買い取った車のうち、自社の店で売るには年式や状態が合わないものは、オークションや業者へ売る。海外向けの販売も卸売の一部で、売上は 90 億円と小さく、利益はまだほぼゼロだ。
会社の利益の源は「台粗利」、つまり 1 台売って残る利益だ。1 台でおよそ 40 万円残るが、店の人件費・広告費・家賃は固定費に近い。台数が伸びなければ、これが重しになる。月額制で乗れる「NOREL」や個人間売買のサービスも手がけるが、利益への寄与はまだ小さい。
売上の増減は「台数 × 1 台の値段」で決まる。台数は、買取でどれだけ仕入れられるかと、店でどれだけ売れるかで決まる。値段は中古車の相場で、いまは仕入れ相場が高止まりしている。仕入れが高ければ、売値にそのまま乗せられるかが利益を分ける。
優良さと弱いところ
筆者がこの会社に認める強みは、買取の入口を持っていることだ。車を売りたい個人が最初に来る店は、そのまま良い在庫の仕入れ口になる。ガリバーは約 30 年この商売をしており、ブランドの認知は高い。ビッグモーターの不正で業界全体の信用が揺らぐなか、値引きをしない売り方は、買う側の安心につながった。
一方で、堀と呼べるほど深くはない。買取の台数ではネクステージが上で、年 28 万台に届く。差は広がりやすい。中古車は、買う人から見れば「どの店でも同じ車」で、価格の差でしか選ばれない場面も多い。ブランドの力には限りがある。
資本の効率も平凡だ。自己資本利益率は直近 14% 前後だが、棚卸資産に資金が張り付く業態で、利益率が 3% 台と薄いため、少し相場が崩れると利益が消える。財務は、自己資本比率 33% で、純有利子負債が自己資本の 8 割ほどある。ただし借金は主に在庫に見合うものだ。
経営の資本配分は、堅実だ。配当性向は 3 割ほどを続けている。大型店への投資は、成否がまだ見えない。創業家とみられる資産管理会社が筆頭株主で、経営の方向は安定しているが、少数株主の発言力は強くない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の中古車は、年間 650 万台ほどが登録される大きな市場だ。ただ人口は減り、新車を買う人も減るため、台数は横ばいから緩やかな減少になる。台数が伸びない市場で伸びる会社は、シェアを取る会社だけだ。
いまの勢力図は、ネクステージとガリバーの二強に、カーセブンなど買取特化型のフランチャイズ、新車ディーラー系の中古車部門が加わる。ビッグモーターは 2023 年の不正で信用を失い、店舗を縮小した。その分の顧客と人材が上位の会社に流れ、二強は大型店で応えている。
中古車の仕入れは、買取とオークションで決まる。オークション相場は 2025 年も高値で、仕入れが難しい。海外の需要も強く、中古車輸出は 170 万台を超えた。輸出向けの需要が仕入れ価格を押し上げ、国内の小売の粗利を圧迫する面がある。
構造の変化は二つある。一つは、車の売買がネットで進むこと。買取の査定や契約がオンラインで完結すれば、店舗網の価値は下がる。もう一つは、電気自動車への移行だ。電池の劣化や技術の進歩で、中古車の残りの価値が読みにくくなる。在庫を大きく抱える業態にとって、評価損のリスクが増す。
資本政策と M&A
還元は、配当性向 3 割ほどを続けている。2027 年 2 月期の配当も、予想純利益の 3 割にあたる額だ。自社株買いは大きくは行っていない。自己株式の保有は 6% ほどある。
利益の大半は、大型店の出店と在庫の積み増しに回る。在庫が増えれば、借金も増える。支払利息は 2026 年 2 月期に 2 倍の 13 億円に増え、金利が上がるほど重くなる。
筆頭株主は、創業家とみられる資産管理会社のフォワードで、持ち株比率は 26%。ビッグモーターは 2024 年 2 月までに持ち株を全て売った。大型の買収は、近年は行っていない。成長は自前の出店が中心だ。
M&A で動くとすれば、同業の再編だろう。ネクステージや買取特化のフランチャイズとの統合は、規模の面では筋が通るが、いまのところ話は表に出ていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
小売の台数は 2026 年 2 月期に 16 万台を超え、前年から 1 割増えた。大型店 10 拠点の先行投資で一時的に利益が伸び悩んだが、投資が一巡すれば営業利益は 240 億円、さらに中期計画の 300 億円へ進む。1 台あたりの粗利は 40 万円を超え、小売中心のため在庫の回転も良い。
ビッグモーターが退場し、ネクステージと二強で信頼を求める顧客を受け止める構図は、10 年続く。値引きをしない売り方は、店頭の信頼を築き、来店前に値段が決まる分だけ営業の手間を減らす。
買取の入口を持つ会社は、良い在庫を安く確保できる。買取のブランド力に、専門店と大型店のカテゴリー戦略が加わり、同じ台数でも利益が厚くなる。海外も黒字化し、卸の副産物ではなく柱の候補になりうる。配当性向 3 割に余力があり、利益が増えれば還元も増える。さらに、中古車の仕入れで中古車輸出の需要が強いことも、買取の台数を持つ会社には卸の販路が増えるという追い風になる。
慎重な見方
売上は過去最高なのに、純利益は 11% 減った。大型店を増やすほど、人件費・広告費・利払いが先に出て、台数が伸びても儲からない。営業利益率は 3.6% と薄い。金利は上がり、支払利息はすでに 2 倍になった。
在庫は 1,190 億円で、総資産の 45% を占める。中古車は相場が崩れると、棚卸資産の評価損が一気に出る。電気自動車への移行で、ガソリン車の残りの価値が読みにくくなることも、在庫を抱える業態には重い。
買取の台数ではネクステージが 1.5 倍以上の差をつけ、仕入れ競争は資金力の勝負になる。ビッグモーターの追い風は消えていく。中期計画の営業利益 300 億円も、台粗利と出店が計画どおり進むことが前提で、当初の 210 億円を引き上げた目標は達成の確度が高くない。
ネットでの売買、メーカー系の認定中古車が広がれば、店舗網の価値自体が下がる。そのとき、固定費の重い大型店は負債になる。ビッグモーターのような不祥事が業界で再び起きるリスクも、店頭で人に頼る売り方には残る。同社の利益率は、わずかな相場の揺れで消えるほど薄い。
どちらに重みを置いたか
事業の方向は正しく、堅い会社だというのが筆者の見立てだ。ただ、10 年で見ると、利益率の薄さと在庫・借金の重さが、成長の果実を削る。強気の見方は台数の伸びで説得力があるが、利益率が 4% 台に乗る根拠は弱い。慎重な見方は、薄利と在庫のリスクで具体的だ。確率は、やや楽観を 2 割、やや悲観を 2 割台後半に置き、悲観側へ寄せた。それでも中立で今の時価総額の 2 倍を超えるため、総合ではやや割安になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,520 円2,530 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 440 円442 億円)。 今の値に割り戻すと 1,466 円1,472 億円、今との差 +48.9%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,853 円4,873 億円 | 697 円700 億円 | +463.4% | +18.9% | 388 円390 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,923 円3,938 億円 | 637 円640 億円 | +362.9% | +16.6% | 912 円916 億円 |
| 中立 | 35% | 3,229 円3,242 億円 | 518 円520 億円 | +280.4% | +14.3% | 1,311 円1,317 億円 |
| やや悲観 | 27% | 769 円772 億円 | 299 円300 億円 | +8.4% | +0.8% | 288 円289 億円 |
| 悲観 | 11% | 525 円527 億円 | 15 円15 億円 | −45.2% | −5.8% | 59 円60 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,520 円2,530 億円 | 440 円442 億円 | +200.4% | +11.6% | 2,959 円2,971 億円 |
今の株価時価総額 985 円989 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 出店が当たり、小売の最大手の一角に 利益 289 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 4,853 円4,873 億円
大型店の出店が当たり、直営の小売は年 24 万台まで伸びる。買取から販売まで自社で完結させる売り方が、ビッグモーター後の中古車選びで「安心して買える店」として定着した姿だ。値引きをしないことが顧客に受け入れられ、1 台あたりの粗利は中期計画の上限圏を保つ。輸入車や SUV など専門店の育成も奏功し、ネクステージとの二強で市場を分け合う。海外は卸売の一角として利益が出る規模になる。借金は台数の伸びに合わせて増えるが、利益の伸びがそれを上回る。会社が掲げる営業利益 300 億円の目標を、かなり早く超える流れだ。
- 直営小売(ガリバーの店):数量 24.0(直営小売の台数(万台・年))× 価格 307(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 7,378 億円・営業利益 391 億円。直営小売 24.0 万台 × 1 台 307.4 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 5.3%
- 卸売・海外・その他:数量 19.5(卸売・海外の台数(万台・年、推定))× 価格 172(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 3,362 億円・営業利益 101 億円。卸売・海外 19.5 万台 × 1 台 172.4 万円(今の 1.36 倍)、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 289 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.95 倍、時価総額 4,610 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型店の出店が当たり続け、台粗利も上限圏で保つには、10 年の間に失敗がほぼ無いことが要る。実現すれば強いが、連続成功の確度は高くない。
やや楽観 20% 大型店が育ち、台数と台粗利が伸びる 利益 241 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 3,923 円3,938 億円
直営の小売は 22 万台台に乗り、台粗利は計画の 41〜44 万円の範囲でおおむね保たれる。大型店が全国に広がり、先行投資の費用が売上に吸収されて営業利益率が上がる。中古車の市場自体は人口とともにやや細るが、買取の強みを持つ上位の会社にシェアが集まり、同社はその受け皿の一つになる。海外は小さいままだが赤字は消える。ネクステージの買取台数の厚さには届かないものの、小売の質では並び、業界の評価も落ち着く。株主への還元は純利益の 3 割前後を保つ。中古車輸出の強い需要が卸売の販路を支え、小売で売りにくい車の処分にも困らない。
- 直営小売(ガリバーの店):数量 22.5(直営小売の台数(万台・年))× 価格 301(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 6,770 億円・営業利益 325 億円。直営小売 22.5 万台 × 1 台 300.9 万円(今の 1.37 倍)、営業利益率 4.8%
- 卸売・海外・その他:数量 18.5(卸売・海外の台数(万台・年、推定))× 価格 171(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 3,167 億円・営業利益 89 億円。卸売・海外 18.5 万台 × 1 台 171.2 万円(今の 1.35 倍)、営業利益率 2.8%
倍率:事業の純利益 241 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.34 倍、時価総額 3,697 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画どおり大型店が育ち、台数が 22 万台台に乗る筋書き。直近の小売の伸び(年 1 割)と買取の強みを素直に延ばした形で、実現しやすい上側。
中立 35% 中立:台数は着実に増え、利益率は並みに落ち着く 利益 196 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 3,229 円3,242 億円
小売は 10 年で年 20 万台台まで増える。店は増えるが、増え方は今ほど速くない。1 台あたりの価格は物価並みに上がり、中古車の流通台数はほぼ横ばいのまま、同社が少しずつシェアを取る。利益率は大型店の先行投資が一巡して今より少し上がるが、中古車は仕入れも販売も相場に左右されるため、4% 台が天井だ。卸売と海外は小売の仕入れの副産物で、薄い利益を積む。借金は在庫の増加に合わせて膨らみ、金利が上がる分だけ純利益を削る。配当は 3 割程度の性向を続ける。堅いが、突き抜けない会社として落ち着く 10 年だ。
- 直営小売(ガリバーの店):数量 20.5(直営小売の台数(万台・年))× 価格 294(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 6,033 億円・営業利益 265 億円。直営小売 20.5 万台 × 1 台 294.3 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 4.4%
- 卸売・海外・その他:数量 17.5(卸売・海外の台数(万台・年、推定))× 価格 170(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 2,973 億円・営業利益 77 億円。卸売・海外 17.5 万台 × 1 台 169.9 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 2.6%
倍率:事業の純利益 196 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.17 倍、時価総額 2,973 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:台数は着実に増えるが、利益率は相場と競合で頭打ちになる、いちばん起こりやすい形。
やや悲観 27% 大型店が重荷になり、シェアが止まる 利益 72 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 769 円772 億円
大型店への投資が重荷になり、小売は 17 万台止まりになる。出店が増えるほど立地の競合が増え、広告費と人件費を払っても台数が伸びない。仕入れ相場が高止まりして台粗利が圧縮され、値引きなしの売り方を保つほど売れ残りが増える。営業利益率は 2% 台に落ち、金利が上がって利払いも増える。卸売はオークション相場に左右され、薄い利益が不安定になる。ネクステージなど資金力のある相手に買取で押され、同社は「大きいが儲からない」中古車店になる。還元は絞られ、新規出店は止まる。この筋書きでは、会社が掲げた営業利益 300 億円は遠いままになる。
- 直営小売(ガリバーの店):数量 17.0(直営小売の台数(万台・年))× 価格 286(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 4,854 億円・営業利益 126 億円。直営小売 17.0 万台 × 1 台 285.5 万円(今の 1.30 倍)、営業利益率 2.6%
- 卸売・海外・その他:数量 14.0(卸売・海外の台数(万台・年、推定))× 価格 162(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 2,272 億円・営業利益 34 億円。卸売・海外 14.0 万台 × 1 台 162.3 万円(今の 1.28 倍)、営業利益率 1.5%
倍率:事業の純利益 72 億円・ROE 4.6% は k 8% に届かず、ためた利益は額面未満の価値。上限は 1÷k=11.4 倍。構造的な負けの筋書きなので稼ぐ力から置き、上限の 7 割の 8.0 倍にした。減損は自己資本に入れていない。EV÷営業利益は借金の分を足すと 15 倍ほどだが、利益が薄い年の数字で参考にとどめた。
確率:大型店の投資が回収できず、利益率が 2% 台に沈む筋書き。薄利で在庫と借入が重い業態なので、上側より下側にやや厚く置いた。
悲観 11% 値引きなしの売り方が通用せず、構造的に負ける 利益 −18 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 525 円527 億円
値引きをしない売り方が通用せず、構造的に負ける筋書きだ。中古車の売買がネットで完結する流れが進み、メーカー系の認定中古車や新車ディーラーも買取を強め、買取の入口を握れなくなる。小売は 12 万台まで縮み、店舗の家賃や人員という固定費だけが残る。在庫の評価損と、金利上昇で増えた支払利息が重なり、営業利益はほぼ消える。大型店の閉鎖と減損が続き、純利益は小幅の赤字になる。配当は早い段階で打ち切られ、10 年の還元は初めの数年分にとどまり、その分も在庫と店舗の売却で払う。出店と買取の投資で積んだ在庫は、値下げして売るしかない。稼ぐ力ではなく、在庫と店舗を売った値打ちが株価の下限になる。創業家が筆頭株主でも、赤字では還元は大きく絞られる。
- 直営小売(ガリバーの店):数量 12.0(直営小売の台数(万台・年))× 価格 264(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 3,162 億円・営業利益 25 億円。直営小売 12.0 万台 × 1 台 263.5 万円(今の 1.20 倍)、営業利益率 0.8%
- 卸売・海外・その他:数量 9.0(卸売・海外の台数(万台・年、推定))× 価格 146(1 台あたり販売価格(万円・名目))→ 売上 1,312 億円・営業利益 7 億円。卸売・海外 9.0 万台 × 1 台 145.8 万円(今の 1.15 倍)、営業利益率 0.5%
倍率:稼ぐ力は事業の純利益がほぼゼロで、売れる資産の税後(棚卸資産 1,190 億円などを売った後)の方が大きい。PBR は今の自己資本 879 億円に掛け、0.6 倍に置いた。借金を足した EV でも見た結果、EV ÷ 営業利益は 172 倍(純有利子負債を足して見た)。ただしこの倍率は営業利益がほぼ消えた年の数字で意味を持たないため評価には使っていない。
確率:買取の入口を失い、在庫の評価損と固定費が重なる構造的な負け。中古車は相場の一年の振れで利益が消える業態で、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営小売(ガリバーの店)
買い取った車を自社の店で売る。全国約 490 店、大型店を拡大中。
| 数量直営小売の台数(万台・年) | 価格1 台あたり販売価格(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 16.4 | 220 | 3,599 | 150 |
| 10 年後 中立 | 20.5 | 294 | 6,033 | 265 |
取り方:小売 163,931 台(会社開示)に、連結売上 5,628 億円のうち小売分を約 3,600 億円と推計して割り、1 台約 220 万円。セグメント別の利益は開示がなく、台粗利約 41 万円から販管費を引く形で営業利益 150 億円と推定した。台数は実質の数量、物価は価格に入れる。
卸売・海外・その他
店で売らない車をオークション・業者へ売る卸売と、海外向け販売など。
| 数量卸売・海外の台数(万台・年、推定) | 価格1 台あたり販売価格(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 16.0 | 127 | 2,029 | 52 |
| 10 年後 中立 | 17.5 | 170 | 2,973 | 77 |
取り方:連結売上 5,628 億円から小売分を引いた約 2,029 億円(海外 90 億円を含む)を、年 16 万台と推定して割り 1 台約 127 万円。台数は開示がなく、買取台数と小売台数の差から置いた。営業利益は利益率 2.6% の 52 億円と推定した。
リスクと懸念
中古車相場の下落と在庫の評価損
棚卸資産は 1,190 億円と総資産の 4 割を超える。相場が 1 割下がれば、利益の大半に相当する評価損が出うる。中古車は仕入れも売値も相場で動くため、薄利の業態では一年の振れで利益が消える。電気自動車への移行で、ガソリン車の残りの価値が読みにくくなることも重い。
金利上昇と借金
有利子負債は約 950 億円。支払利息は 2026 年 2 月期に 2 倍へ増えた。借り換えのたびに金利が上がり、在庫の増加に合わせて借金も増えるため、利益の押し下げが続く。
大型店投資が回収できない
大型店 10 拠点の先行投資で、人件費と広告費が先に出た。台数が計画に届かなければ、固定費だけが残る。店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。
買取でネクステージに離される
買取台数はネクステージが年 28 万台で、同社の 1.5 倍ほど。買取で差がつけば、良い在庫の仕入れで差がつき、小売の粗利も開く。資金力の勝負になれば不利になりうる。
ネット販売と他業態の参入
査定や契約がオンラインで完結する流れが進めば、店舗網の価値が下がる。メーカー系の認定中古車や新車ディーラーが買取を強めれば、買取の入口を奪われる。
ビッグモーター問題の追い風が薄れる
同業の不正で流れ込んだ顧客と人材は、時間とともに元に戻る。信頼の差は、同社自身が不正を起こした時にも逆に効く。店頭の販売品質を保つ管理が要る。
創業家の大株主と少数株主
筆頭株主は創業家とみられる資産管理会社で 26%。経営は安定するが、買収提案などで少数株主に有利な動きが出にくい。
今後の分かれ目
- 小売台数が 18 万台を超え、台粗利が 41 万円以上で続く
- 中期計画の営業利益 300 億円が現実味を帯び、やや楽観の筋書きに近づく。
- 仕入れ相場が下落に転じる
- 在庫の評価損が先に出て、1 年で利益が吹き飛ぶ。下側の筋書きの確率が上がる。
- 金利が想定以上に上がる
- 支払利息が利益を削り、純利益は営業利益ほど伸びない。
- ネクステージなど同業との統合・再編が表に出る
- 規模の面で筋が通り、買収価格次第で株主に有利になりうる。
- 大型店の新規出店で、台数が計画を下回る店が目立つ
- 固定費が重荷になり、やや悲観の筋書きに寄る。
- オンライン完結の買取が急に広がる
- 店舗網の価値が下がり、悲観の筋書きの確率が上がる。
見ておくもの
- 四半期の小売台数と台粗利(41〜44 万円の範囲か)
- 棚卸資産と有利子負債の増え方
- 中古車オークションの相場
- 大型店の新規出店と閉鎖
- 支払利息の推移
- 同業(ネクステージ)の買取台数との差
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が k をわずかに上回るため、式の上限と 1÷k が近く、中立は 11.6 倍に置いた。今の株価や同業の PER から決めていない。今の時価総額は見ずに、セグメントごとの台数 × 価格で 10 年後の営業利益を積み、金利上昇と借金を利益に反映した。物差しはネクステージと同じ k 8%・堀は普通・確率の寄せ方もほぼ同じ。新リース会計は 2029/02 期から効くが、今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。店舗の家賃は悲観で固定費として残している。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→15.95 倍・やや楽観 PER 11.8→15.34 倍・中立 PER 11.6→15.17 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。