結論
ヤマタネは、コメ卸を祖業に、食品、物流、情報、不動産の 4 事業を持つ会社だ。売上の約 6 割が食品、約 3 割が物流になる。利益では、東京の賃貸ビルを持つ不動産が 4 分の 1 を占める。
筆者の結論は、10 年の本質価値が約 210 億円で、今の時価総額 436 億円の 5 割弱にとどまる「割高」だ。理由は、利益の水準に比べて、純資産が大きすぎることにある。自己資本は 635 億円あるが、純利益は特別益を除くと 25 億円ほどにすぎない。
2026 年 3 月期の営業利益 59 億円は、コメの高値と資産の売却益が押し上げた山だった。2027 年 3 月期の会社予想は 41 億円に戻り、第 1 四半期は営業利益が 8 割近く減った。
純負債は 725 億円で、自己資本の 1.1 倍ある。金利が上がると、利払いが 10 年で年 18 億円ほど増える。越中島などの再開発に 2030 年度以降で 1,300 億円超を投じる構想もあり、財務の重さはさらに増しうる。
中立の 10 年後は、営業利益 52 億円、純利益 23 億円、PER 9.4 倍で、時価総額は約 250 億円になる。今の 6 割弱だ。資本コストは 8.25%。
強気の筋書きでも、時価総額は約 550 億円と今の 1.25 倍にとどまる。ただし、政策保有株の売却余地と、東京の不動産の含み益は、帳簿に表れにくい強みだ。筆者はその価値を、悲観の床に残して見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヤマタネは「資産は厚いが、稼ぎは資産に見合わない」会社だ。東京と港の物流拠点、首都圏の賃貸ビル、政策保有株など、持っているものは多い。コメ卸の長い取引網も、簡単には作れない。
一方で、持つ資産の割に稼ぎが薄い。ROE は過去 10 年の中央値で 5% 台、資本コストに届かない。利益を内部にためるほど、1 億円あたりの価値が下がる構造だ。
資本の使い方は、方向は正しいが道半ばだ。総還元性向 70〜80% と政策保有株の縮減は評価できる。ただし 1,300 億円超の再開発を借金で進めれば、せっかく増やした還元を食いかねない。
10 年後も事業は残る。ただし、残る利益は今の半分近くまで落ちうる。今の PER は会社予想で 10 倍に見えるが、特別益を除くと 17 倍ほどだ。安全域は、帳簿の純資産ではなく、稼ぐ力で測る。中立で測ると、払う値段に安全域はない。確信は中くらいで、判断の重みは軽くしている。
経営の資本配分は、これまでの「ためて、少し配る」から、「配って、減らす」へ変わりつつある。これが実行されれば、評価は上がる。再開発の資金計画が示されれば、見方を改める。
含み益は、不動産の時価が開示されておらず、数えられなかった。ここは、強気の見方に残る余地だ。
何で稼ぐ会社か
4 つの事業がある。2026 年 3 月期の売上は 887 億円、営業利益は 59 億円だ。
食品は売上の約 6 割で、コメの仕入れ、精米、卸売と、冷凍食品などの加工食品の卸売を営む。売上は 564 億円、利益は 40 億円。コメの販売数量は 5.4 万トンで、前期より 23% 減った。ただし米価の急騰で、コメ販売の売上は 365 億円と 2 割増えた。
物流は倉庫業、港湾運送業(京浜港・神戸港)、貨物利用運送業で、売上 268 億円、利益 24 億円だ。2025 年 7 月に文書管理の会社など 2 社を連結に入れた。海外引越しも伸びている。
不動産は首都圏のビルの賃貸と管理で、売上 46 億円ながら利益は 20 億円と、利益率が 44% に達する。情報はシステムの開発・運用や棚卸サービスで、売上は 21 億円、利益は 0.7 億円と小さい。
全社の費用と内部取引の消去で、区分利益の合計から 26 億円が引かれ、連結の営業利益は 59 億円になる。
会社は 2025 年 4 月にカンパニー制へ移り、2026 年 3 月期に M&A で 4 社を連結に加えた。中期経営計画「ヤマタネ 2028 プラン」では、2028 年 3 月期に売上 1,000 億円、営業利益 47 億円、ROE 7.5% 以上を掲げる。純資産の 4 割強を占める政策保有株も、2030 年 3 月期までに 2 割以下へ減らす。
従業員は連結 1,087 人。大株主は山種美術財団 8.8%、信託口 6.5%、スノーボールキャピタル 5.4% で、特定の支配株主はいない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、東京と横浜・神戸の港に持つ物流拠点と、首都圏の自社ビルだ。倉庫と港湾運送は、立地と許認可、荷主との長い取引で守られる。不動産は、利益率が 44% と高い。ただし、どちらも新しく増やすには多額の資金が要る。
コメ卸には堀がない。米価と調達量が振れるたびに、差益が大きく動く。2026 年 3 月期の食品の利益率は 7% 台だったが、会社自身が 2028 年 3 月期に 3.4% へ戻る前提を置いている。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 5% 台で、資本コストを下回る。2026 年 3 月期の ROE 8.6% は、売却益で上げた山だ。自己資本は 10 年で倍以上に膨らんだが、利益はその割に増えていない。
財務は軽くない。純負債は自己資本の 1.1 倍で、営業利益は支払利息の 4.5 倍にとどまる。借入金は 1 年で 150 億円ほど増えた。
経営は資本効率の改善を掲げ、総還元性向 70〜80%、政策保有株の縮減、自己株取得を打ち出した。方向は正しいが、実績はこれから。優良さは「資産は厚いが、稼ぐ力が資産に追いついていない」と筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
コメ卸の数量は、人口と食生活で決まる。国内のコメ消費は人口とともに細る。会社も、農家の高齢化で 2030 年前後に需給が逆転すると見ている。2025 年の米価高騰は、供給不足が生んだ例外だ。
その反動が今期に出る。会社は 2027 年 3 月期に、需給の緩和でコメの差益が縮むと説明している。10 年で見ると、数量は横ばいから微減、単価は物価に沿って戻る、と置くのが妥当だ。ただし米価は、高騰前の水準に物価を乗せたところまでしか戻らないと見る。
物流は、荷主の外注化と人手不足で、需要が底堅い。倉庫の稼働率と料金の転嫁が稼ぎを決める。人件費と燃料費の上昇を転嫁できるかが分かれ目で、一部荷主の失注が起きた例もある。
不動産は、東京のオフィス賃貸で、景気後退のたびに空室と賃料の下落が出る。ただし、築古物件の建て替えには長い時間と多額の投資が要る。
10 年の構造的な負け筋は 2 つある。ひとつは、コメの需給緩和と小売の直接取引で、卸の差益が細ること。もうひとつは、再開発の借金で利払いが重くなり、本業の稼ぎを食うことだ。
景気後退の谷は、物流と不動産が同時に打撃を受ける。荷動きが減り、ビルの賃料も下がる。食品は動きが小さいので、全体の利益は半分近くまで落ちうる。
資本政策と M&A
資本政策は、改善を掲げて動き始めた段階だ。中期経営計画は、総還元性向 70〜80%、DOE 3%、自己株取得 30〜40 億円を打ち出した。2026 年 3 月期は、自己株取得に 26 億円を使った。
政策保有株は、純資産の 4 割強にあたる。上場株は約 230 億円で、2030 年 3 月期までに純資産の 2 割以下へ減らす方針だ。当期に 1 銘柄、18 億円を売った。売却の見込み分は、余った資産として別に足した。
借入は増えている。1 年で長期借入金が 150 億円ほど増え、物流不動産の一部流動化も始まった。2030 年度以降に、越中島と新宿の再開発に 1,300 億円超を投じる構想がある。時価総額の 3 倍で、実行すれば借金が一気に膨らむ。この額は、会社の要約資料の数字で、原文は未確認だ。
M&A は小口で積み上げる形だ。2026 年 3 月期に 4 社を連結に加え、山種不動産を株式交付で吸収合併する予定がある。
株主優待は、3 月末と 9 月末にある。9 月末は、300 株以上でコメ 2 キロから、1,000 株以上でコメ 10 キロとカレンダーまで。年の費用は 1 億円に届かないと推定し、還元には入れていない。kabufu の推定では、10 年以内の買収の確率は 25%。株主が分散しているので、動く余地はある。
店舗ではなく倉庫と港の営業所の賃借が中心で、年の賃借料は 1 か所あたり 0.3〜0.4 億円と小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東京の不動産は、帳簿に載らない価値を持つ。越中島と新宿の再開発が進み、賃料の高い新しいビルに入れ替われば、利益率 44% の不動産が一気に厚くなる。不動産の売上は 81 億円まで増える。
物流は、冷凍・生鮮のコールドチェーンへ入る。本牧の新しい倉庫も満床で動き、人員は 600 人に増える。荷主へ料金を転嫁できるので、利益率は 9.5% に上がる。
コメは、自社の圃場で安定して調達できる。ブルーシード新潟を中核に、関連圃場を約 1,650 ヘクタールまで広げると、仕入量が確保でき、差益単価が上がる。数量は 7 万トンまで戻る。
資本政策も動く。政策保有株を 2030 年までに 2 割以下へ減らし、売却益で借金を返し、自己株取得を続ける。総還元性向 75% が定着し、ROE は 6.6% まで上がる。
全体では、営業利益 89 億円、純利益 48 億円になる。会社の中期計画が実現し、その先まで続く、うまくいった 10 年である。
慎重な見方
利益の質が低い。2026 年 3 月期の営業利益 59 億円は、米価の急騰と資産の売却益が重なった山だ。2027 年 3 月期の予想は 41 億円で、第 1 四半期は 78% 減った。コメの差益は、需給が緩めば一気に縮む。
借金が重い。純負債は 725 億円で、自己資本の 1.1 倍、営業利益は支払利息の 4.5 倍しかない。金利が 10 年で上がれば、利払いは年 18 億円ほど増える。利益の大半が利払いに消える。
再開発が大きな賭けになる。越中島と新宿に 1,300 億円超を投じる構想は、時価総額の 3 倍で、借金で進めるしかない。賃料が計画どおりに取れず、工事費が膨らめば、財務が一気に傷む。
コメ卸は、小売や外食が生産者と直接結ぶ流れで、卸の取り分が細る。会社は 2028 年 3 月期に食品の利益率を 3.4% に戻すと見ており、足元の 7% 台は続かない。
さらに、物流は一部荷主の失注が出ている。ROE は 10 年の中央値で 5% 台。資本コストに届かず、純資産を厚くするほど、1 億円あたりの価値が薄まる。今の PER は特別益を除くと 17 倍ほどで、これらを織り込んでいない。
どちらに重みを置いたか
不動産の含み益と物流の底堅さ、政策保有株の売却余地では、強気の見方に分がある。ただし、コメの差益が山から戻ること、純負債が自己資本の 1.1 倍あること、ROE が資本コストに届かないことは、慎重な見方を裏づける。そこで中立の営業利益を 52 億円に置き、利払いの増加を純利益に入れた。確率は、慎重な筋書き(やや悲観と悲観)に厚めに置いた。結果は、強気の筋書きでも今の時価総額の約 1.25 倍にとどまり、本質価値は今の約 5 割になる。割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,378 円293 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 784 円167 億円)。 今の値に割り戻すと 1,151 円245 億円、今との差 −43.0%、 期待の年率 +0.7%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,031 円644 億円 | 1,355 円288 億円 | +117.1% | +8.1% | 263 円56 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,107 円448 億円 | 1,079 円229 億円 | +57.7% | +4.7% | 605 円129 億円 |
| 中立 | 37% | 1,588 円337 億円 | 906 円193 億円 | +23.5% | +2.1% | 923 円196 億円 |
| やや悲観 | 28% | 605 円128 億円 | 523 円111 億円 | −44.2% | −5.7% | 316 円67 億円 |
| 悲観 | 10% | 389 円83 億円 | 165 円35 億円 | −72.6% | −12.1% | 55 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,378 円293 億円 | 784 円167 億円 | +7.1% | +0.7% | 2,163 円459 億円 |
今の株価時価総額 2,020 円429 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 再開発が稼働し、コールドチェーンとコメの調達が噛み合う 10 年 利益 48 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,031 円644 億円
越中島と新宿の再開発が 2035 年までに第 1 期を稼働させ、不動産の売上は 81 億円に増える。物流は人員 600 人に増え、冷凍・生鮮のコールドチェーンが本牧の新倉庫と合わさり、料金転嫁も進んで、利益率は 9.5% に上がる。
コメは、自社圃場の拡大で調達が安定し、販売数量が 7 万トンまで戻る。単価は物価と合わさり、2025 年 3 月期より少し高い水準で落ち着く。
政策保有株は 2 割以下へ減り、売却資金が借金の返済と自己株取得に回る。総還元性向は 75% を保ち、自己資本は 731 億円、ROE は 6.6% になる。
全体の営業利益は 89 億円、純利益は 48 億円。会社の中期計画が実現し、その先まで続く、うまくいった 10 年である。ただし ROE は資本コストに届かず、倍率は上限の 9 割にとどまる。
- 物流:数量 600(物流カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 8,641(1 人あたり年間売上(万円。外注費を含む))→ 売上 518 億円・営業利益 49 億円。600 人 × 8,641 万円。コールドチェーンと本牧の満床で人員が増え、料金転嫁で利益率 9.5%
- 食品(コメ卸):数量 70.0(コメの販売数量(千玄米トン))× 価格 62(1 トンあたり販売単価(万円))→ 売上 436 億円・営業利益 20 億円。7.0 万トン × 62.3 万円。自社圃場で調達が安定し、差益単価が上がる
- 食品(加工食品等):数量 80.0(加工食品等の取扱量(千トン、当社推定))× 価格 42(1 トンあたり売上(万円、当社推定))→ 売上 337 億円・営業利益 14 億円。8.0 万トン × 42.1 万円。ショクカイの販路と高付加価値品で利益率 4%
- 情報:数量 160(情報カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 2,405(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 39 億円・営業利益 3 億円。160 人 × 2,405 万円。システムの更新需要を取り込み利益率 7%
- 不動産:数量 10.0(賃貸可能面積(万 ㎡、当社推定))× 価格 81,130(1 万 ㎡ あたり年間売上(万円))→ 売上 81 億円・営業利益 37 億円。10 万 ㎡ × 8.1 億円。再開発の第 1 期が稼働し、利益率 46%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 644 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再開発の稼働、コールドチェーンの成功、コメ調達の安定、政策保有株の売却が同時に必要で、重なる確率は低い。資産の厚さがあるので 5% 以上は置く。
やや楽観 19% 物流が伸び、政策保有株の売却で財務が軽くなる 10 年 利益 32 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,107 円448 億円
物流は、2 社の連結と新倉庫の稼働が効き、人員 520 人、利益率 9.2% で伸びる。コメは数量 6.4 万トンまで戻るが、差益は 4% で高止まりしない。
不動産は、築古の入れ替えが一部進み、売上は 71 億円に増える。再開発の本体は 2036 年以降にずれ込み、費用だけが先に出る。
政策保有株の売却は計画どおり進み、借金の増加を抑える。総還元性向は 75%、自己資本は 711 億円、ROE は 4.5% だ。
全体の営業利益は 65 億円、純利益は 32 億円になる。堅実な 10 年だが、金利の上昇で利払いが増え、利益の伸びは物価並みにとどまる。
- 物流:数量 520(物流カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 8,223(1 人あたり年間売上(万円。外注費を含む))→ 売上 428 億円・営業利益 39 億円。520 人 × 8,224 万円。利益率 9.2%
- 食品(コメ卸):数量 64.0(コメの販売数量(千玄米トン))× 価格 60(1 トンあたり販売単価(万円))→ 売上 385 億円・営業利益 15 億円。6.4 万トン × 60.2 万円。利益率 4%
- 食品(加工食品等):数量 74.0(加工食品等の取扱量(千トン、当社推定))× 価格 41(1 トンあたり売上(万円、当社推定))→ 売上 302 億円・営業利益 11 億円。7.4 万トン × 40.9 万円。利益率 3.7%
- 情報:数量 140(情報カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 2,337(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。140 人 × 2,336 万円。利益率 5%
- 不動産:数量 9.0(賃貸可能面積(万 ㎡、当社推定))× 価格 78,812(1 万 ㎡ あたり年間売上(万円))→ 売上 71 億円・営業利益 32 億円。9 万 ㎡ × 7.9 億円。入れ替えが一部進み、利益率 45%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 448 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物流の M&A が実り、政策保有株の売却が計画どおり進む現実的な上振れ。
中立 37% 売上は伸びるが、利払いと本社費で利益は足踏みする 10 年 利益 23 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,588 円337 億円
売上は 887 億円から 1,109 億円に増える。物価で単価が 1.34 倍になるためで、数量はほぼ横ばいだ。物流は人員が 480 人に増え、利益率 8.8% を保つ。コメは数量 6 万トン、単価は 2025 年 3 月期に物価を乗せた水準まで戻り、利益率は 3.8% に下がる。
不動産は、築古の入れ替えが一部進み、売上 66 億円、利益率 44%。再開発は構想のまま大きく進まず、資金計画だけが議論される。
本社費は物価で増えて 35 億円になり、利払いは年 13 億円ほど増える。営業利益は 52 億円、純利益は 23 億円になる。
総還元性向は 75% で、10 年の還元は 190 億円ほど。自己資本は 699 億円まで増え、ROE は 3.3% と資本コストを大きく下回る。資産は厚いが、稼ぎは資産に追いつかない標準的な 10 年である。
- 物流:数量 480(物流カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 7,985(1 人あたり年間売上(万円。外注費を含む))→ 売上 383 億円・営業利益 34 億円。480 人 × 7,985 万円。店舗でなく倉庫の稼働と M&A で人員が 480 人に増える。利益率 8.8%
- 食品(コメ卸):数量 60.0(コメの販売数量(千玄米トン))× 価格 58(1 トンあたり販売単価(万円))→ 売上 348 億円・営業利益 13 億円。6.0 万トン × 58.0 万円。今の単価は米価高騰の山で、物価の 1.34 倍にはしない。2025 年 3 月期の約 43 万円に物価を乗せた水準へ戻ると置く。差益は 3.8%
- 食品(加工食品等):数量 70.0(加工食品等の取扱量(千トン、当社推定))× 価格 40(1 トンあたり売上(万円、当社推定))→ 売上 282 億円・営業利益 10 億円。7.0 万トン × 40.3 万円。物価で単価が 1.34 倍、利益率 3.5%
- 情報:数量 130(情報カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 2,302(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。130 人 × 2,302 万円。赤字から利益率 4% に戻る
- 不動産:数量 8.5(賃貸可能面積(万 ㎡、当社推定))× 価格 77,653(1 万 ㎡ あたり年間売上(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 29 億円。8.5 万 ㎡ × 7.8 億円。築古の入れ替えが一部進み、利益率 44%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 337 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は物価で伸びるが、コメの差益が戻り、利払いと本社費が増えて利益が足踏みする標準的な姿。最も重みを置く。
やや悲観 28% コメの差益が戻り、荷主の失注と金利高が重なる 10 年 利益 9 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 605 円128 億円
2027 年 3 月期の予想が、そのまま 10 年続く。コメの需給が緩み、差益は 3% まで縮む。数量も 5.4 万トンにとどまる。
物流は、一部荷主の失注が重なり、人員は 460 人。人件費の上昇を料金へ転嫁しきれず、利益率は 8% に下がる。不動産は賃料が伸びず、利益率が 41% に下がる。
本社費は物価で増え、営業利益は 32 億円。利払いの増加で純利益は 9 億円にとどまる。自己資本は 695 億円、ROE は 1.4% まで下がる。
政策保有株は計画どおり売るが、資金は借金の返済に消える。総還元性向は 65% に落ち、10 年の還元は 111 億円。堀の薄さが表に出た 10 年である。
- 物流:数量 460(物流カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 7,628(1 人あたり年間売上(万円。外注費を含む))→ 売上 351 億円・営業利益 28 億円。460 人 × 7,628 万円。荷主の失注で人員が伸びず、利益率 8%
- 食品(コメ卸):数量 54.0(コメの販売数量(千玄米トン))× 価格 53(1 トンあたり販売単価(万円))→ 売上 285 億円・営業利益 9 億円。5.4 万トン × 52.8 万円。需給緩和で差益が 3% に縮む
- 食品(加工食品等):数量 64.0(加工食品等の取扱量(千トン、当社推定))× 価格 38(1 トンあたり売上(万円、当社推定))→ 売上 244 億円・営業利益 7 億円。6.4 万トン × 38.2 万円。利益率 3%
- 情報:数量 115(情報カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 2,148(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。115 人 × 2,148 万円。補助金頼みが薄れ利益率 1%
- 不動産:数量 8.0(賃貸可能面積(万 ㎡、当社推定))× 価格 74,176(1 万 ㎡ あたり年間売上(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 24 億円。8 万 ㎡ × 7.4 億円。賃料が伸びず利益率 41%
倍率:ROE 1.4% は k 8.25% 以下なので、正当化 PER は 1÷k = 11.8 倍が上限。コメの差益の縮小と荷主の失注が続く筋書きなので、上限から大きく離す。やや悲観は上限の約 7 割(8.24 倍)に置いた。 売れる資産の床(保有株の税後 約 162 億円)も考えた。売却見込み分 約 127 億円の 0.75 倍を余った資産として足してあり、残りは経営が売らないと置く。EV(時価総額+純負債 725 億円)÷営業利益は約 26 倍と高いが、借金の裏には倉庫・不動産・保有株があり、利益の倍率だけでは割高と言わない。
確率:2027 年 3 月期の予想(営業利益 41 億円、第 1 四半期は 78% 減)の方向がそのまま続く姿。足元の傾向に近く、厚く置く。
悲観 10% コメ卸の取り分が細り、再開発の借金が利益を食う 10 年 利益 −12 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 389 円83 億円
コメ卸は、小売や外食が産地と直接結ぶ流れで取り分が細り、数量は 4.2 万トン、利益率は 1.5% に落ちる。単価も、高騰前の水準に近い 44.7 万円まで戻る。
物流は荷主の失注と人件費の上昇で、人員 400 人、利益率 6% になる。不動産は賃料が下がり、利益率は 36%。情報は赤字が 3% に広がる。
本社費は 38 億円に増え、営業利益は 1 億円まで落ちる。再開発の借金と利払いで、純利益は 12 億円の赤字になる。
総還元性向は 50% に下がり、10 年の還元は 35 億円ほど。会社は資金繰りのために政策保有株を早く売る。半値で売ると置くと、手元に残るのは 81 億円ほどだ。優良だった面影を失う 10 年である。
- 物流:数量 400(物流カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 6,555(1 人あたり年間売上(万円。外注費を含む))→ 売上 262 億円・営業利益 16 億円。400 人 × 6,555 万円。荷主の失注と人件費高で利益率 6%
- 食品(コメ卸):数量 42.0(コメの販売数量(千玄米トン))× 価格 45(1 トンあたり販売単価(万円))→ 売上 188 億円・営業利益 3 億円。4.2 万トン × 44.7 万円。小売の直接取引で卸の差益が 1.5% まで細る
- 食品(加工食品等):数量 55.0(加工食品等の取扱量(千トン、当社推定))× 価格 33(1 トンあたり売上(万円、当社推定))→ 売上 182 億円・営業利益 4 億円。5.5 万トン × 33.1 万円。利益率 2%
- 情報:数量 90.0(情報カンパニーの人員(人、当社推定))× 価格 1,718(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 −1 億円。90 人 × 1,718 万円。赤字 3%
- 不動産:数量 7.5(賃貸可能面積(万 ㎡、当社推定))× 価格 63,745(1 万 ㎡ あたり年間売上(万円))→ 売上 48 億円・営業利益 17 億円。7.5 万 ㎡ × 6.4 億円。賃料が下がり、利益率 36%
倍率:ROE -1.8% は k 8.25% 以下で、稼ぐ力は純損失 12.1 億円と小さい。床は、上場の政策保有株 約 232 億円の税後 約 7 割(約 162 億円)を、資金繰りで急いで売ることを考えて半値で見た約 81 億円。今の自己資本 635 億円に PBR 0.13 倍を掛けた約 83 億円とほぼ同じ。他の資産(倉庫・不動産・在庫)が借金を賄うと置く。やや悲観の PBR 0.15 倍より低い。EV(時価総額+純負債 725 億円)÷営業利益は営業利益がほぼゼロで意味を持たないので、売れる資産の床で測った。
確率:コメ卸の構造的な後退に、再開発の借金と物流の失注が重なる負け。確度は低いが、純負債が自己資本の 1.1 倍ある点を考えると無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流
倉庫業、港湾運送業(京浜港・神戸港)、貨物利用運送業、海外引越し、文書管理。
| 数量物流カンパニーの人員(人、当社推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円。外注費を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 450 | 5,959 | 268 | 24 |
| 10 年後 中立 | 480 | 7,985 | 383 | 34 |
取り方:人員 450 人は当社の推定(連結 1,087 人からの割り振り)。会社は人員も倉庫の面積も開示していない。売上 268.2 億円と営業利益 23.69 億円は会社開示の区分値(内部取引を含む)。1 人あたりの売上が大きいのは、傭車・外注費を含むため。
食品(コメ卸)
コメの仕入れ・精米加工・卸売、米穀・穀物の小売。
| 数量コメの販売数量(千玄米トン) | 価格1 トンあたり販売単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 54.0 | 68 | 365 | 33 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 58 | 348 | 13 |
取り方:販売数量 54 千玄米トン(前期比 23.3% 減)と、コメ販売の売上 365.4 億円は会社開示。単価 67.7 万円は、米価の急騰で前期の約 43 万円から 5 割以上高い。営業利益 33.0 億円は、食品の区分利益 40.27 億円を、コメ(利益率 9%)と加工食品に当社が割り振った推定。
食品(加工食品等)
冷凍食品などの加工食品の卸売。食品区分のうち、コメ以外。
| 数量加工食品等の取扱量(千トン、当社推定) | 価格1 トンあたり売上(万円、当社推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 66.0 | 30 | 198 | 7 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 40 | 282 | 10 |
取り方:食品の区分売上 563.7 億円から、コメ販売 365.4 億円を引いた残り。取扱量 6.6 万トンは、1 トンあたり 30 万円(冷凍食品の卸値の目安)で割った当社の推定。営業利益 7.27 億円は、区分利益 40.27 億円からコメ分を除いた推定(利益率 3.7%)。
情報
コンピュータシステムの導入・開発・保守・運用、棚卸サービス。
| 数量情報カンパニーの人員(人、当社推定) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 1,718 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 130 | 2,302 | 30 | 1 |
取り方:人員 120 人は当社の推定。売上 20.6 億円と営業利益 0.68 億円は会社開示の区分値(内部取引を含む)。
不動産
首都圏のビルなどの賃貸・管理、不動産の売買・仲介。
| 数量賃貸可能面積(万 ㎡、当社推定) | 価格1 万 ㎡ あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 57,950 | 46 | 20 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 77,653 | 66 | 29 |
取り方:賃貸可能面積 8 万 ㎡ は当社の推定で、会社は開示していない。売上 46.4 億円と営業利益 20.43 億円は会社開示の区分値(内部取引を含む)。区分利益の合計 85.1 億円と連結の営業利益 58.6 億円の差、マイナス 26.4 億円が、全社費用と内部取引の消去。
リスクと懸念
コメの差益の反動
2026 年 3 月期は米価の急騰で食品の利益率が 7% 台に上がった。会社は 2027 年 3 月期にコメの需給が緩んで差益が縮むと見ており、2028 年 3 月期に 3.4% へ戻す前提を置く。
純負債と金利の上昇
純負債は 725 億円で自己資本の 1.1 倍。営業利益は支払利息の 4.5 倍しかなく、借り換えで金利が上がれば、利払いが 10 年で年 18 億円ほど増える。
再開発の資金負担
越中島と新宿の再開発に、2030 年度以降で 1,300 億円超を見込む(会社の要約資料の数字で、原文は未確認)。時価総額の約 3 倍で、賃料が計画に届かなければ財務が傷む。
景気後退で物流と不動産が同時に落ちる
荷動きの減少で倉庫・港湾の稼ぎが減り、オフィスの空室と賃料の下落で不動産も落ちる。食品の動きは小さく、下支えは限られる。
政策保有株の価格変動
純資産の 4 割強を占める。株式市場が崩れると、自己資本と含み益が一緒に減り、売却による資金も細る。
M&A の統合と減損
2026 年 3 月期に 4 社を連結に入れ、山種不動産の吸収合併も予定する。小口でも積み重なると、統合の失敗やのれんの減損が出る。
コメ調達の不安定
2026 年 3 月期は調達が計画を下回り、販売数量が 23% 減った。農家の高齢化で、調達の確保がさらに難しくなりうる。
今後の分かれ目
- コメの差益が高止まりし、食品の利益率が 5% を保てば
- 純利益の水準が上がり、中立から強気の筋書きに近づく。
- 政策保有株の売却が進み、借金の返済や自己株取得に回れば
- 利払いが減り、1 株あたりの価値が上がる。評価を改める。
- 越中島の再開発で、自己資金と売却を組み合わせた資金計画が示されれば
- 借金の膨張の不安が薄れ、不動産の価値が見えてくる。
- 再開発の費用が膨らみ、借入が自己資本の 1.5 倍を超えれば
- 利払いが重くなり、やや悲観〜悲観の筋書きに近づく。
- コメの数量が 4 万トンを下回れば
- 卸の取引網が細ったことを示し、食品の稼ぎが大きく落ちる。
- TOB が出れば
- 買付価格しだいで少数株主が上振れる。ただし、価格が本質価値を上回るかは別に見る。
見ておくもの
- コメの販売数量・単価と、食品カンパニーの利益率
- 物流の倉庫稼働率と、荷主の動き
- 純負債と、営業利益÷支払利息
- 政策保有株の残高と売却額
- 越中島・新宿の再開発の資金計画
- 総還元性向と自己株取得の額
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER を見て筋書きを作っていない。先に物流・コメ・加工食品・情報・不動産を「数量 × 単価」で 10 年分積み、そこから ROE と資本コスト 8.25% で倍率を決めた。ROE が資本コストに届かないので、倍率は 1÷k = 11.8 倍の 8 割に置いた。
結果が割高に出たのは、今の PER が高いからではない。売上は 25% 増えるが、人件費と本社費が物価で増え、利払いも増えるため、純利益は 10 年で今の特別益を除く水準とほぼ同じにとどまるからだ。
物流・情報・不動産の人員や面積と、加工食品の物量は、会社が開示しておらず、当社の推定だ。コメは開示の数量と売上を使った。米価の単価は、2025 年 3 月期の水準に物価を乗せた値まで戻ると置いた。
新リース会計基準(2028 年 3 月期から)は、今と同じ「家賃を営業費用に入れた形」にそろえて置いた。賃借料は小さく、影響は軽い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.59→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 9.41→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。