結論
ヤガミは、学校の理科室の実験台や調理台、保健室の設備、AED(自動体外式除細動器)、滅菌器、産業用ヒーターをつくって売る、名古屋の機器メーカー兼卸である。売上は115億円、営業利益は22億円で、営業利益率は19%と卸売業では異例に高い。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。会社の質は高い。借金はなく、自己資本比率は77%、ROEは11%台だ。だが、中核の学校向けは少子化で数量が減る。時価総額274億円は、その減る需要の上に、現在の高い利益率が続くことを織り込んでいる。
強みは2つある。実験台などの自社ブランドと、約700社の代理店網だ。学校の改修需要は当面続き、AEDや滅菌器、半導体向けヒーターが穴を埋める。弱みは、利益の多くを学校予算と半導体の景気に頼ることである。
中立の10年では、売上は名目で160億円ほどになる。営業利益は28億円前後で、今の水準を物価の分だけ上回る。配当が利益とほぼ同額なので、自己資本は増えない。ROEは12%前後を保ち、価値は今の値段に近いが、やや下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家の目で見れば、ヤガミは「小さいが、質のよい事業」である。営業利益率が19%、借金なし、ROEは11%台と、数字は立派だ。学校の理科室という、地味だが仕様が決まれば続く需要を持つ。
気になるのは、需要の方向だ。児童・生徒が減る市場で、利益率が過去最高の水準にある。10年後の中立では、利益率は17%台に落ち着き、純利益は20億円ほどにとどまる。物価の上昇を除けば、利益は少し減る。
資本の使い方は好ましい。借金をせず、配当を厚くする。ただ、少数株主の目では、親会社の意向を超えて配当が続く保証はない。
払う値段はどうか。時価総額274億円は、純資産の2倍だ。10年後の本質価値は、そこからやや下がる。ROEの高さを評価しても、少子化の需要と親会社支配を考えれば、安全域は薄い。筆者は、「安く買えない良い会社」とみる。
何で稼ぐ会社か
ヤガミは、1947年に名古屋で創立した。3つの事業で稼ぐ。
最大は理科学機器設備で、売上58億円、利益12億円。学校の理科室の実験台、調理室の台、収納戸棚と、理科の教育用機器を売る。実験台は1970年から自社ブランドで、愛知県内の学校には直接も売る。全国の学校向けは、約700社の代理店を通す。滅菌器もこの区分に入り、国内とアジアで売る。
保健医科機器は売上30億円、利益5億円。保健室の設備、AED、蘇生法の教育用人体モデルを扱う。前期はAEDの民間向けが大きく伸び、13%増えた。
産業用機器は売上27億円、利益6億円。保温・加熱用のヒーターと環境試験装置をつくる。半導体の製造装置に使われるヒーターが好調だった。
製造は、実験台を木工でつくるヤガミファニテクと、滅菌器と環境試験装置の平山製作所の2社に任せる。平山製作所は2025年4月に完全子会社にした。親会社のやがみビルが議決権の66.7%を持つ。海外の売上は17%ほどで、従業員は連結で約230人と少数精鋭だ。研究開発費は年2億円弱で、売上の1.6%ほどにあたる。
優良さと弱いところ
優良さは、利益率の高さと財務の堅さにある。営業利益率は2021年4月期から16%を超え、直近は19%台だ。自社ブランドの実験台と、700社の代理店網は、学校の改修や更新の案件が出るたびに効く。借入金も社債もなく、自己資本比率は77%、ROEは目標の10%を超えた。
一方、堀、つまり他社がまねできない強みは、限られる。学校向けは入札や見積もりで値段が決まる。実験台は木工で、技術の差は大きくない。少子化とネット通販の広がりで、会社自身が「市場の大幅な成長は見込みにくい」と認めている。滅菌器は中国製品が台頭し、産業用ヒーターは半導体の景気に振れる。
経営は堅実だ。借金をせず、配当を積極的に増やしてきた。ただ、親会社が議決権の3分の2を握るため、少数株主の意見が資本政策に反映されにくい。棚卸資産の約4割が愛知県に集中する点も、災害時の弱みである。
筆者は、残る割合を普通の水準でみる。強い堀とまでは言わない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は3つの流れで決まる。
1つ目は学校だ。出生数は年70万人を割り、児童・生徒は減り続ける。学校の統廃合も進む。ただし、校舎の長寿命化改修は、老朽化した校舎を直す国の事業で続いており、理科室や調理室の台、収納戸棚の更新が出る。新築より改修の方が、単価は小さいが件数は多い。数量は10年で1割ほど減ると見るのが妥当だ。
2つ目は医療・健康である。AEDは公共の場から、会社・店舗・集合住宅など民間へ広がる。設置後の耐用年数は10年ほどで、更新需要も出る。保健室の設備は学校の数に連動して縮むが、AEDが補う。
3つ目は産業用で、半導体の設備投資だ。国内の半導体関連の投資で、ヒーターの需要が伸びている。ただし、この需要は景気の波が大きい。環境試験装置は、東アジアの設備投資で伸び悩んでいる。
納入先は公立・私立の小中高校が中心で、大学や企業の研究室、病院も少しある。競合は、理科教育機器の同業メーカーと、ネット通販である。滅菌器は、中国製の安価な製品が競合になる。市場は小さく、全体を取るような大手がいないため、ヤガミのような専業が高い利益率を保てる。
資本政策と M&A
還元は配当に偏る。2026年4月期の配当性向は100%で、増配は7期連続だった。2027年4月期の予想は前期より減るが、それでも利益とほぼ同額である。自社株買いはしていない。配当は、財務の健全性とのバランスで決めるとし、明確な性向の約束はない。
親会社のやがみビルが議決権の66.7%を持つため、配当の3分の2は親会社に入る。社長は親会社の社長も兼ねる。少数株主には、親会社の資金需要が高い配当を支えている面がある。逆に言えば、配当が続く保証も、親会社の意向次第だ。
投資は小さい。設備投資は年1億円ほどで、本社の改修が中心だ。2025年4月に平山製作所を完全子会社にした。取得に約7億円を使った。借入は一切ない。
手元の資金は厚く、純現金は40億円ある。うち、事業に要らない分は30億円とみた。自己資本比率77%で、買収を急ぐ様子はない。時価総額が小さく、親会社による非上場化の可能性も、完全には否定できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
学校向けは、少子化でも当面の需要が続く。校舎の長寿命化改修で、実習台や収納戸棚の更新が出ており、前期の理科学機器設備は売上が4%増、利益は19%増えた。自社ブランドと約700社の代理店網は、全国の改修案件を拾う入り口になる。
AEDは公共の場から民間へ広がり、前期の保健医科機器は売上が13%増えた。耐用年数がくれば更新需要も出て、数量は長く伸びる。産業用ヒーターは、半導体の国内投資を受けて好調で、利益率は22%に近い。滅菌器もアジアで販売を広げている。
財務は盤石だ。借金はなく、自己資本比率は77%、純現金は40億円ある。配当性向は100%に達し、増配は7期連続だった。ROEは11%台で目標の10%を超えた。受注高は前期に6.5%増え、受注残も9%増えた。
営業利益率は5年で13%台から19%台に上がった。値上げが通り、製品の組み合わせも良くなった。親会社の支配は安定した経営を意味し、10年でAEDとヒーターが伸びれば、営業利益は35億円近くまで増える筋書きは十分にありうる。
慎重な見方
学校向けの数量は、構造的に減る。出生数は年70万人を割り、児童・生徒は減り続け、統廃合も進む。会社自身が「市場の大幅な成長は見込みにくい」と認めている。改修需要は一時的で、国の事業が終われば更新も止まる。理科教育機器はネット通販との競争も強まる。
営業利益率19%は、過去最高だ。2015年から2020年は13%前後で、今の水準が続く保証はない。2027年4月期は、会社自身が減益の計画だ。経常利益は3%減る。
滅菌器は中国製品が台頭し、産業用ヒーターは半導体の景気に振れる。環境試験装置は東アジアで伸び悩んだ。AEDは普及してくると、更新以外の新規需要が頭打ちになる。
少数株主には構造的な弱みがある。親会社が議決権の3分の2を持ち、配当も資本政策も親会社の意向次第だ。前期の配当性向100%は、利益の使い方に余裕がないことの裏返しでもある。時価総額は純資産の2倍にあたり、減る需要に対して、その高い評価は安全域に欠ける。
どちらに重みを置いたか
質の高さと財務の堅さは本物だが、学校向けの数量の縮みと、過去最高の利益率が続くかという疑問のほうが重いと判断した。強気の言い分であるAEDとヒーターの伸びは、中立の数量に織り込んだ。確率は中立を厚くし、財務の堅さと受注の勢いを見て、楽観側とやや楽観側をやや厚めに置いた。悲観は、学校予算の縮小と半導体の不況が重なる筋書きに限った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 6,527 円342 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,651 円139 億円)。 今の値に割り戻すと 5,110 円268 億円、今との差 +6.0%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 10,413 円546 億円 | 3,089 円162 億円 | +180.1% | +10.8% | 1,080 円57 億円 |
| やや楽観 | 22% | 8,797 円461 億円 | 2,974 円156 億円 | +144.2% | +9.3% | 2,590 円136 億円 |
| 中立 | 40% | 7,380 円387 億円 | 2,726 円143 億円 | +109.7% | +7.7% | 4,043 円212 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,172 円166 億円 | 2,345 円123 億円 | +14.5% | +1.4% | 1,214 円64 億円 |
| 悲観 | 8% | 1,357 円71 億円 | 1,792 円94 億円 | −34.7% | −4.2% | 252 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,527 円342 億円 | 2,651 円139 億円 | +90.4% | +6.7% | 9,178 円481 億円 |
今の株価時価総額 4,820 円253 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% AEDとヒーターが伸び、高い利益率が定着する 利益 26 億円 · PER 19.9 倍 · 株価時価総額 10,413 円546 億円
学校の改修需要は想定より長く続き、理科室の更新は数量が今の9割台を保つ。AEDは民間向けの普及と耐用年数による更新が重なり、件数は今の1.45倍に増える。半導体の国内投資が続き、産業用ヒーターも同じ倍率で伸びる。滅菌器もアジアで販売が広がる。
値上げは通りやすく、営業利益率は19%台後半と、今の水準を保つ。人件費の上昇は価格に移せる。代理店との関係も深まり、直販の学校も増える。
営業利益は37億円まで増え、ROEは15%近くまで上がる(事業に要らない現金を除くと17%台)。配当は利益の8割を保ち、自己資本は増える。小さいが質の高い企業として、評価が一段高くなる10年である。
- 理科学機器設備:数量 4,900(納入・販売の件数(件))× 価格 160(1件あたり売上(万円))→ 売上 78 億円・営業利益 16 億円。数量2%減
- 保健医科機器:数量 17,400(納入・販売の件数(件))× 価格 34(1件あたり売上(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 11 億円。件数1.45倍
- 産業用機器:数量 8,700(納入・販売の件数(件))× 価格 62(1件あたり売上(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 12 億円。件数1.45倍
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 19.87 倍、時価総額 546 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改修需要が長引き、AEDの普及と半導体の投資が同時に続く必要がある。条件は多いので8%にとどめた。
やや楽観 22% 改修需要が続き、医療・産業が学校の縮みを補う 利益 23 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 8,797 円461 億円
学校の理科室の更新は、改修需要に支えられて数量が今の9割ほどを保つ。AEDは民間向けと更新需要で件数が3割増える。産業用ヒーターは半導体の投資の波を乗り越え、数量は3割近く伸びる。
営業利益率は18%台に下がるが、過去の水準(13%台)よりは高い。値上げが通りやすく、人件費の上昇を価格に移せる。代理店網は安定し、直販の学校も少しずつ増える。
営業利益は32億円ほどで、ROEは14%近くになる。多くの業界見通しの上位に近く、無理のない伸びである。配当は利益の8割台半ばを保つ。成長は緩やかだが、質の高さが保たれる、堅実な10年である。
- 理科学機器設備:数量 4,650(納入・販売の件数(件))× 価格 157(1件あたり売上(万円))→ 売上 73 億円・営業利益 14 億円。数量7%減
- 保健医科機器:数量 15,840(納入・販売の件数(件))× 価格 34(1件あたり売上(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 9 億円。件数3割増
- 産業用機器:数量 7,680(納入・販売の件数(件))× 価格 61(1件あたり売上(万円))→ 売上 47 億円・営業利益 10 億円。件数3割増
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 19.45 倍、時価総額 461 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の上位レンジに近い想定。AEDとヒーターの伸びが、学校向けの縮みを上回る。
中立 40% 学校向けは縮み、医療・産業が補う 利益 20 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 7,380 円387 億円
学校向けは出生数の減少で、理科室の更新件数が今の9割弱に減る。改修需要が続く間は下支えされるが、その後に統廃合の影響が出る。保健医科機器はAEDの普及で件数が2割増える。産業用機器は、半導体の投資が波を描きながら、件数が1割5分増える。
名目の売上は物価で膨らみ、160億円ほどになる。営業利益率は17%台に落ち着く。2021年から続いた過去最高水準の利益率からは、少し下がる姿だ。
営業利益は28億円前後で、物価の分を除くと今より少し小さい。配当は利益の85%を保ち、自己資本は緩やかに増える。ROEは12%前後を保つ(余った現金を除くと14%台)。「質は高いが、需要が縮む」10年になる。
- 理科学機器設備:数量 4,400(納入・販売の件数(件))× 価格 155(1件あたり売上(万円))→ 売上 68 億円・営業利益 13 億円。数量12%減
- 保健医科機器:数量 14,400(納入・販売の件数(件))× 価格 33(1件あたり売上(万円))→ 売上 48 億円・営業利益 8 億円。件数2割増
- 産業用機器:数量 6,900(納入・販売の件数(件))× 価格 61(1件あたり売上(万円))→ 売上 42 億円・営業利益 8 億円。件数15%増
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 18.62 倍、時価総額 387 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:少子化による学校向けの縮みと、AED・ヒーターの伸びが釣り合う、会社の実力どおりの10年。会社の見通しとも矛盾しない。
やや悲観 22% 少子化と競争で、利益率が元の水準へ戻る 利益 13 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 3,172 円166 億円
学校向けの数量は今の8割弱まで減る。統廃合が早く進み、改修需要の終わりも前倒しになる。滅菌器は中国製品との価格競争が強まり、ヒーターも半導体の不況の年に落ち込む。AEDは民間向けの普及が頭打ちになる。
営業利益率は14%台まで下がり、2020年以前の水準に戻る。人件費の上昇を、価格に移しきれない。学校は予算の制約から、値上げを受け入れにくくなる。
営業利益は19億円まで下がる。配当は自己資本の水準を保つ姿勢で、利益の9割を出し、ROEは9%弱まで下がる。高採算の企業が、普通の企業に戻る10年になる。内部留保は厚いので、財務の不安は出ない。
- 理科学機器設備:数量 3,900(納入・販売の件数(件))× 価格 150(1件あたり売上(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 9 億円。数量22%減
- 保健医科機器:数量 12,000(納入・販売の件数(件))× 価格 32(1件あたり売上(万円))→ 売上 39 億円・営業利益 6 億円。件数は横ばい
- 産業用機器:数量 5,700(納入・販売の件数(件))× 価格 59(1件あたり売上(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 5 億円。件数5%減
倍率:事業の純利益13億円(現金の利息を除く)・事業ROE10.0%。RONICは8.9%、g 4% から正当化PERの上限は14.7倍。減る需要で新しい投資の稼ぎが薄れるため、上限の約75%の11.0倍に置いた。
確率:少子化の縮みが想定より早く、滅菌器とヒーターで競争が強まる想定。過去の利益率13%台に戻る範囲。
悲観 8% 学校予算の縮小と半導体不況が重なる 利益 7 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 1,357 円71 億円
出生数の減少が加速し、統廃合で理科室の需要が今の6割に減る。国の改修事業が縮み、更新も後ろ倒しになる。滅菌器は中国製品に市場を奪われ、産業用ヒーターは半導体の不況で数量が大きく落ちる。AEDは新規の需要が一巡し、価格競争になる。
営業利益率は8%まで下がり、固定費の重さが利益を削る。
営業利益は8億円まで落ち、実質の売上は4割ほど減る。配当も利益の9割を保てず、ROEは5%弱になる。時価総額は、稼ぐ力と手元の資金で決まる水準まで下がる。親会社が少数株主を買い取る形で幕を引く可能性も、この筋書きでは高まる。
- 理科学機器設備:数量 3,100(納入・販売の件数(件))× 価格 139(1件あたり売上(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 4 億円。数量38%減
- 保健医科機器:数量 9,600(納入・販売の件数(件))× 価格 30(1件あたり売上(万円))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。件数2割減
- 産業用機器:数量 4,200(納入・販売の件数(件))× 価格 54(1件あたり売上(万円))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。件数3割減
倍率:事業の純利益7億円(現金の利息を除く)・事業ROE5.0% は k 7.25% を下回り、上限は1÷k=12.9倍。需要が縮む構造的な負けで、上限の約65%の8.4倍に置いた。稼ぐ力は7億円÷k=約86億円に、余った現金を足した額がおよその上限。
確率:学校向けの需要の縮み、滅菌器の価格競争、半導体の不況が同時に起きる構造的な負け筋。確率は小さいが、10年では無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
理科学機器設備
学校の理科室・調理室の実験台、収納戸棚、理科の教育用機器、滅菌器。自社ブランドで、全国は約700社の代理店を通して売る。
| 数量納入・販売の件数(件) | 価格1件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 5,000 | 116 | 58 | 12 |
| 10 年後 中立 | 4,400 | 155 | 68 | 13 |
取り方:セグメント売上は57.84億円(前期比4.0%増)・利益11.58億円。件数は開示がなく推定で年約5,000件・1件約116万円。学校の理科室の改修(数百万円)から、備品・消耗品(数万円)、滅菌器(数百万円)までの平均値。
保健医科機器
保健室の設備、AED(自動体外式除細動器)、蘇生法の教育用人体モデル。
| 数量納入・販売の件数(件) | 価格1件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 12,000 | 25 | 30 | 5 |
| 10 年後 中立 | 14,400 | 33 | 48 | 8 |
取り方:セグメント売上は29.98億円(前期比13.0%増)・利益5.44億円。件数は推定で年約1.2万件・1件約25万円。AED1台が数十万円、保健室の備品や人体モデルが数万円の組み合わせ。
産業用機器
保温・加熱用のヒーターと環境試験装置。ヒーターは半導体の製造装置などに使われる。
| 数量納入・販売の件数(件) | 価格1件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 6,000 | 45 | 27 | 6 |
| 10 年後 中立 | 6,900 | 61 | 42 | 8 |
取り方:セグメント売上は27.18億円(前期比2.2%増)・利益5.95億円。件数は推定で年約6,000件・1件約45万円。ヒーターは小口、環境試験装置は数百万円の大型が混じる平均値。
リスクと懸念
少子化と学校の統廃合
出生数は年70万人を割り、児童・生徒は減り続ける。学校の統廃合が進めば、理科室や調理室の数が減る。会社自身が「市場の大幅な成長は見込みにくい」と認めている。最大の事業の数量は、10年で1割以上減ると見るべきだ。
改修需要の終わり
前期の理科学機器設備は、校舎の長寿命化改修に伴う実習台の納入で利益が19%増えた。この需要は国の事業に支えられた一時的な面がある。事業が縮めば、更新の件数は一気に減る。
親会社の支配
親会社のやがみビルが議決権の66.7%を持ち、社長も兼ねる。配当の3分の2は親会社に入る。親会社の資金需要が変われば、配当方針が変わりうる。少数株主の意見は、資本政策に反映されにくい。
滅菌器と中国製品
滅菌器は、中国の安価な製品が台頭している。会社は差別化とシェア拡大が課題としている。価格競争が強まれば、理科学機器設備の利益率を押し下げる。
半導体の景気と環境試験装置
産業用ヒーターは、半導体の設備投資に左右される。環境試験装置も、東アジアの景気で伸び悩んだ。産業用機器は利益率が高く、不況の年は全社の利益を大きく削る。
災害と在庫の集中
棚卸資産の約4割が愛知県に集中する。大規模な地震や水害で供給が止まれば、納入が遅れ、費用もかさむ。取引先の信用リスクも、代理店が多いため無視できない。
今後の分かれ目
- 学校向けの受注が改修需要の終わりで2期続けて減ったら
- 理科学機器設備の数量を下げ、やや悲観側に確率を寄せる。
- AEDの民間向け販売が2期続けて1割以上伸びたら
- 保健医科機器の件数を上方修正し、楽観・やや楽観の確率を増やす。
- 半導体関連の投資が急減し、ヒーターの受注が落ちたら
- 産業用機器の数量と利益率を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- 営業利益率が16%を割ったら
- 利益率の前提を下げ、中立をやや悲観寄りに見直す。
- 親会社による完全子会社化(TOB)が提示されたら
- 提示額を10年の価値(中立)と比べ、上回るかで受けるかを考える。
- 配当性向を100%から引き下げる発表があったら
- 還元の前提を下げ、価値の見直しを行う。
見ておくもの
- 理科学機器設備の受注高と受注残
- AEDなど保健医科機器の売上の伸び
- 産業用ヒーターの受注と半導体投資の動向
- 営業利益率(16%を割るか)
- 配当性向と親会社の動き
- 滅菌器の海外販売と中国勢との競争
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から置き、ROEが資本コスト k 7.25% を超える中立以上は上限の約85〜90%、やや悲観・悲観は上限の6〜7割台とした。今の時価総額274億円に合わせて逆算してはいない。純現金40億円のうち30億円は余った現金として別に足した。10年の利益率は過去最高の19%を超えない。配当性向が100%に近いことは、自己資本が積み上がらない形として織り込んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.4→19.87 倍・やや楽観 PER 15.5→19.45 倍・中立 PER 14.4→18.62 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality を足した(決まり v2)。親会社支配による少数株主のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。