結論
ヨンキュウは、愛媛県宇和島市に本社を置く養殖魚の専門商社だ。養殖業者に餌を売り、育った魚を買い取って市場やスーパーへ流す。筆者の結論は割高である。稼ぐ力に比べて資産が重く、その資産の多くが株主に戻らない形で眠っているからだ。
利益の柱は餌料・飼料の販売だ。売上は全体の3分の1だが、営業利益の約9割をここで出す。イワシなどの生餌を急速冷凍して各地の倉庫に置き、養殖業者へ切らさず届ける。この物流網は一朝一夕にはまねできない。一方、売上の3分の2を占める鮮魚の販売は、利益率が1%に満たない薄利の仕事である。
2026年3月期の純利益は38億円と大きく見えるが、投資有価証券の売却益を含む一度きりの数字だ。ならした稼ぎは16億円ほどにとどまる。純現金は158億円で、時価総額の半分に迫る。ただ、配当性向は1割未満で、貯めた現金の使い道も示されていない。筆者はこの現金を額面どおりには評価できないと見る。
10年先を考えると、国内の養殖は担い手の高齢化で量が細り、餌も生餌から配合飼料へ移っていく。物価の上昇は価格が運んでくれるが、量の減りまでは補えない。中立の見立てでは、事業の利益は今より少し増える程度だ。資本の効率が資本コストを下回る間は、貯めた利益は積んだ額ほどの価値を持たない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は良い事業と良くない資本の組み合わせだ。餌の事業は小さいが堅い。しかし、稼いだ利益の多くが現金のまま積み上がり、株主のもとで増えていかない。
まず、10年先もこの事業が存在し、今より強いかを問う。餌の事業は存在し続けるが、生餌から配合飼料への移行と養殖業者の減少で、量は細る。堀は広がらない。
次に、オーナーとして得られる利益を考える。ならした純利益は16億円で、自己資本は408億円ある。利益は自己資本の4%にすぎない。これでは資本コストに届かず、手元の現金を持つほど価値は薄まる。
最後に、安全域を見る。純現金158億円は確かに安全域だが、その全部を株主のものとは数えられない。運転資金と設備投資の余地を引き、残りを戻り方で割り引くと、現金の評価はほぼ半分になる。筆者は、事業の質は悪くないが、払う値段に見合う安全域はないと見る。経営者が現金の使い道を変えない限り、保有を続けたい会社にはならない。
何で稼ぐ会社か
ヨンキュウの仕事は、養殖の入口と出口をつなぐことだ。入口では餌と稚魚を養殖業者に売る。出口では育った魚を買い、加工して全国へ流す。創業は1963年で、養殖魚用の餌の冷凍販売から始まり、鮮魚、稚魚、養殖と広げてきた。
稼ぎ頭は餌料・飼料の販売である。マイナス20度の冷凍倉庫を各地に持ち、イワシなどの生餌を急速冷凍して漁協や養殖業者に売る。処理能力は日量100トン、保存量は1万トンに及ぶ。生餌と配合飼料を混ぜた自社のモイストペレットや、茶の成分を加えた飼料も手がける。2026年3月期の売上は162億円、セグメント利益は17億円で、利益率は1割を超える。
鮮魚の販売は量が大きい。ブリ、タイ、カンパチなどの養殖魚と、グループで育てるマグロやウナギを、本社の加工場と神奈川県の三崎事業所から市場やスーパーへ届ける。本社の加工場は食品安全の認証を取り、魚を切り身にして出荷できる。売上は315億円に上るが、利益は2億円ほどだ。魚の相場に利益が左右されやすく、ウナギの養殖は直近で苦戦した。
別の柱として、人工ふ化の稚魚がある。大分県の蒲江種苗センターなどで育てた稚魚を養殖業者に売る事業だ。天然の稚魚に頼らない養殖への切り替えは、業界の長い流れに沿う。ただ、この事業の利益は決算の区分からは読み取れない。顧客は全国の漁協、養殖業者、中央卸売市場の荷受会社である。
優良さと弱いところ
餌の事業には堀がある。堀とは、他社がまねしにくい強みのことだ。各地に冷凍倉庫を持ち、養殖の現場に毎日のように餌を届ける仕組みは、設備と顧客との付き合いの両方で守られている。2020年にはUmios(旧マルハニチロ)、飼料大手のフィード・ワン、坂本飼料と資本・業務提携を結び、飼料の共同開発と販路を固めた。
弱いのは鮮魚である。売上の3分の2を占めるのに、利益率は1%に満たない。魚の値段は市場が決め、仕入れも養殖業者に頼る。値決めの力はほとんどない。ウナギ養殖やマグロ養殖は、この薄い利益をさらに揺らす要因になっている。
資本の使い方には課題が多い。過去10年の自己資本利益率(ROE)の中央値は4.5%で、資本コストを大きく下回る。それでも利益の多くを現金のまま持ち続けてきた。純現金は158億円まで膨らんだが、配当性向は1割未満である。
顧客である養殖業者は高齢化し、数も減っている。売掛金を通じて資金を預ける側でもあるため、顧客の廃業は餌の販売量と回収の両方に響く。筆者は、餌の堀は本物だが、堀に守られた市場そのものが細る点を重く見る。財務の安全度は高いが、安全であることと、株主に報いることは別の話である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の海面養殖は、収獲量が約85万トン、生産額が約5,700億円の市場である(令和5年)。ブリ類が1,400億円、マダイが700億円を占め、ヨンキュウの主戦場はこの二つに重なる。量は横ばいか微減で、担い手の高齢化と餌代の上昇が採算を圧迫している。
国内の魚の消費は人口とともに減る。ただ、ブリは米国やアジア向けの輸出が伸び、国内の減少を一部相殺している。マグロやウナギも、天然資源の制限が強まる分、養殖への期待が高い。人工ふ化の稚魚や完全養殖は、この流れの中心にある。
餌の側では、生餌に使うイワシの漁獲が年ごとにぶれる。養殖業者は作業が楽で品質が安定する配合飼料へ移りつつあり、生餌の量は構造的に減る方向だ。飼料はフィード・ワンやニッスイなどの大手が強く、ヨンキュウは地域密着の生餌と自社のペレットで住み分けている。
鮮魚では、ニッスイやUmios、極洋のような大手が養殖から加工、販売まで一貫して持つ。中堅のヨンキュウは、産地に近い出荷と加工の速さで戦う。中東情勢による燃料や為替の変動は、運搬や輸入飼料の費用を通じて利益を揺らす。
この業界は景気の波よりも、人と資源の制約で動く。中立では量が少し細り、物価の分だけ金額が増える。成長産業ではないが、すぐに消える産業でもない。
資本政策と M&A
資本の使い方は、守りに偏っている。2026年3月期の配当性向は8%で、投資有価証券の売却益があった年でも特別配当は小さかった。会社は大型の設備投資の計画を理由に挙げているが、中身は開示から確認できていない。自社株買いの実績も見当たらない。
上位の株主は個人と有限会社、それに愛媛・伊予・香川の地銀3行で、安定した顔ぶれである。経営への外圧は強くなく、貯めた現金が株主へ戻る力は弱い。
事業の広げ方は、提携と少額の出資が中心だ。2024年にはWismettacフーズと資本・業務提携を結び、2025年には持分法適用会社の最上鮮魚への出資を44%まで引き上げた。大きな買収で価値を壊した歴史はない。ただ、買う側にも売られる側にも、まとまった動きは見えない。現金が事業の拡大にも還元にも向かわなければ、資本効率の低さは続く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
餌の事業はまだ伸びる余地がある。ヨンキュウは冷凍倉庫と配送網をすでに持ち、増産しても追加の投資は小さい。養殖業者が減っても、残った大型の業者に餌を集中的に売れれば、量の減りは吸収できる。人手不足で配合飼料の値上げが続けば、餌の価格は物価を上回って上がる。
鮮魚も変わる。ブリの輸出が増え、Wismettacフーズとの提携で海外の販路が開く。マグロやウナギの養殖は、天然資源が細る中で希少価値が増す。人工ふ化の稚魚は、完全養殖への流れで単価と利益率を引き上げる。
財務も強い。純現金158億円は、買収と設備投資の両方に使える。同業の中小の餌業者や加工会社を束ねれば、餌の物流網の密度が上がり、利益が積み上がる。経営が現金を使い始めれば、資本効率は一気に改善する。2026年3月期に保有株を売って現金化した実績もある。会社が考え方を変えれば、評価は大きく変わるはずだ。
餌の事業の利益率は1割を超え、鮮魚の薄い利益を支えている。売上の3分の1で利益の9割を出す構造は、少し改善するだけで全体の利益を大きく動かす。養殖の現場で餌を切らさない信頼は、価格交渉の場でも効く。
慎重な見方
餌の事業は、市場そのものが縮む。養殖業者は高齢化し、廃業が続く。生餌から配合飼料への移行は止まらず、生餌の倉庫と物流網は稼働率が下がって固定費が重くなる。飼料大手が直販に力を入れれば、ヨンキュウの餌の価格にも圧力がかかる。
鮮魚は、売上の3分の2を占めるのに儲からない。利益率は1%に満たず、相場が少し悪化すれば赤字になる。ウナギの養殖は苦戦しており、鹿児島の養鰻場の追加投資が回収できない恐れがある。
最大の問題は資本の使い方だ。純現金は158億円あるのに、配当性向は1割未満である。ROEは4%台で資本コストを下回り、貯めるほど価値が薄まる。大型設備投資の中身も見えない。現金が失敗した投資や買収で消えれば、株主の取り分はさらに減る。2026年3月期の38億円の利益は一度きりで、基本の稼ぎは16億円にとどまる。市場が細るなかで現金を抱え込む経営は、株主にとって最も報われにくい形である。
加えて、顧客である養殖業者の高齢化は、売掛金の回収を通じて財務にも跳ね返る。生餌の漁獲が不安定なことも、仕入れと価格の両面で重荷になる。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方である。餌の堀は本物だが、市場が細る流れと、資本が株主に戻らない構造は、10年のスパンでは重い。楽観の根拠である輸出と完全養殖は、現時点では収益に表れていない。経営が現金の使い方を変えるという条件も、これまでの実績からは期待しにくい。確率は中立を4割に置き、悲観の側へ寄せた。楽観は6%、悲観は12%とし、やや楽観とやや悲観に残りを分けた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,450 円301 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 389 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 1,429 円175 億円、今との差 −46.2%、 期待の年率 +0.7%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,186 円514 億円 | 693 円85 億円 | +83.8% | +6.3% | 293 円36 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,422 円420 億円 | 497 円61 億円 | +47.6% | +4.0% | 706 円87 億円 |
| 中立 | 40% | 3,027 円371 億円 | 375 円46 億円 | +28.1% | +2.5% | 1,361 円167 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,113 円137 億円 | 293 円36 億円 | −47.0% | −6.2% | 337 円41 億円 |
| 悲観 | 12% | 873 円107 億円 | 310 円38 億円 | −55.4% | −7.8% | 142 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,450 円301 億円 | 389 円48 億円 | +6.9% | +0.7% | 2,838 円348 億円 |
今の株価時価総額 2,655 円326 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 輸出と人工種苗が育ち、現金を事業に使う 利益 32 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,186 円514 億円
ブリの輸出が米国とアジアで伸び、Wismettacフーズとの提携で海外の販路が開く。人工ふ化の稚魚は完全養殖への流れで単価と利益率を引き上げ、鮮魚の営業利益率は2%台に乗る。餌は、廃業する小さな業者の分を大型の業者が引き取り、販売量は横ばいを保つ。配合飼料の値上げが続き、価格は物価を上回る。経営は現金の一部を同業の餌・加工会社の買収に使い、物流網の密度が上がる。ならした営業利益は38億円と今の2倍になる。ただ、現金は積み上がり、自己資本利益率(ROE)は資本コストに届かない。値付けは頭打ちで、この水準が上限になる。
10年後の売上は740億円を超え、営業利益率は5%台に乗る。筆者は、この水準が事業の実力の上限に近いと見る。
- 鮮魚の販売事業:数量 29.1(取扱量(千トン))× 価格 18(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 511 億円・営業利益 13 億円。取扱量1.12倍(輸出と人工種苗)、価格1.45倍(高付加価値化)、営業利益率2.5%
- 餌料・飼料の販売事業:数量 80.0(販売量(千トン))× 価格 2.88(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 230 億円・営業利益 27 億円。販売量は横ばい(大型業者へ集中)、価格1.42倍、営業利益率11.5%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)128 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 514 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:輸出の伸びと完全養殖が収益に表れ、さらに経営が現金を事業に使うという条件が重なる必要がある。実績がないため低く置いた。
やや楽観 18% 餌の堀が保たれ、鮮魚の利益率が少し上がる 利益 25 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,422 円420 億円
餌の堀が保たれ、養殖業者の集約で量の減りは小さい。販売量は10年で4%ほど減るにとどまり、価格は物価を少し上回って上がる。鮮魚は輸出とマグロの養殖が少し利益に効き、営業利益率は1%台半ばに乗る。人工ふ化の稚魚の貢献は小さいが、赤字は出ない。営業利益は28億円で、今から5割増える。現金は買収には使われず、積み上がる。配当は少しずつ増えるが、還元の割合は3割にとどまる。ROEは6%前後で、資本コストを下回る。
餌の事業は堅く、鮮魚の利益率も少し改善するため、全体の利益は安定して伸びる。ただ、資本の使い方が変わらないため、評価は大きくは上がらない。売上は660億円ほどになる。
- 鮮魚の販売事業:数量 27.0(取扱量(千トン))× 価格 17(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 455 億円・営業利益 7 億円。取扱量1.04倍、価格1.39倍、営業利益率1.5%
- 餌料・飼料の販売事業:数量 76.8(販売量(千トン))× 価格 2.78(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 213 億円・営業利益 22 億円。販売量0.96倍、価格1.37倍、営業利益率10.5%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)135 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 420 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:餌の堀が保たれ、養殖業者の集約で量の減りが小さくなる。輸出が一部効く筋書き。
中立 40% 餌は細りつつ価格で支え、現金は積み上がる 利益 20 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,027 円371 億円
国内の養殖は人口の減少と高齢化で細り、生餌から配合飼料への移行も続く。餌の販売量は10年で1割ほど減るが、物価の分は価格で取り、餌の利益は17億円から20億円ほどに増える。鮮魚は薄利のままで、ブリの輸出が国内の減少を埋める。ウナギの養殖は赤字が続く年を挟みながら、損益は均衡する。営業利益は23億円。経営は設備投資を少し行うが、大きな買収は行わず、現金は積み上がる。配当は利益の4分の1にとどまり、ROEは資本コストに届かない。優良とは言えないが、事業は堅く続く。
10年後の売上は約610億円で、物価の分だけ膨らむ。営業利益率は3%台後半と、過去10年の平均に近い。利益は伸びるが、貯まる現金のほうが速く増える。
- 鮮魚の販売事業:数量 25.2(取扱量(千トン))× 価格 16(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 409 億円・営業利益 4 億円。取扱量0.97倍(国内の減少を輸出が埋める)、価格1.34倍(物価並み)、営業利益率0.9%
- 餌料・飼料の販売事業:数量 73.6(販売量(千トン))× 価格 2.71(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 200 億円・営業利益 20 億円。販売量0.92倍(配合飼料への移行と業者の減少)、価格1.34倍、営業利益率10%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)142 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 371 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:餌は量が細るが物価の分を価格で取り、鮮魚は薄利のまま。現金は積み上がる。もっとも起こりやすい。
やや悲観 24% 養殖業者の減少で餌が縮み、鮮魚は赤字すれすれ 利益 12 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,113 円137 億円
養殖業者の廃業と配合飼料への移行が速く、餌の販売量は2割強減る。生餌の倉庫と物流網は稼働率が下がり、固定費が利益率を押し下げる。価格は物価に追いつかず、転嫁の力が弱い。鮮魚は相場の悪化で利益がほぼ消え、ウナギ養殖は追加投資の回収が遅れる。営業利益は14億円。経営は新しい成長の道を見つけられず、現金を持て余す。貯めた利益は資本効率の低さからほとんど評価されず、倍率も低い。
10年後の売上は約520億円と、物価の分を差し引けば縮む。営業利益率は2%台半ばまで落ちる。現金の一部は赤字の穴埋めと追加投資に使われる。
- 鮮魚の販売事業:数量 22.9(取扱量(千トン))× 価格 15(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 354 億円・営業利益 1 億円。取扱量0.88倍、価格1.28倍、営業利益率0.2%
- 餌料・飼料の販売事業:数量 62.4(販売量(千トン))× 価格 2.59(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 162 億円・営業利益 14 億円。販売量0.78倍、価格1.28倍、営業利益率8.5%
倍率:事業の ROE は 2.6% で、上限の PER は 11.8 倍。利益の質が悪く、固定費の重さで利益が不安定なので、上限の 6 割強の 7.5 倍に置いた。現金は今の 0.75 倍の約 68 億円とし、戻り方 0.5 を掛けた。
確率:養殖業者の廃業と配合飼料への移行が想定より速い。慎重な見方が強いので、中立より少し高めに置いた。
悲観 12% 餌の市場が崩れ、現金も食われる 利益 6 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 873 円107 億円
飼料大手が養殖業者への直販を強め、ヨンキュウの餌の価格と量が同時に落ちる。生餌のイワシが不漁になり、仕入れ値が上がる。養殖業者の廃業が続き、売掛金の回収にも滞りが出る。鮮魚は赤字に転じ、ウナギ養殖の鹿児島の養鰻場は減損する。餌の利益は半分以下に落ち、営業利益は5億円。経営は現金の一部を失敗した投資や買収に使い、株主の取り分は大きく目減りする。事業としては残るが、もう優良とは呼べない。自己資本は減損で今より小さくなる。
10年後の売上は約400億円で、営業利益率は1%強。現金の取り崩しが進み、事業の縮小を急ぐ局面に入る。
- 鮮魚の販売事業:数量 19.5(取扱量(千トン))× 価格 15(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 283 億円・営業利益 −1 億円。取扱量0.75倍、価格1.20倍、赤字(営業利益率−0.5%)
- 餌料・飼料の販売事業:数量 48.0(販売量(千トン))× 価格 2.43(1 千トンあたりの売上(億円)。名目)→ 売上 117 億円・営業利益 7 億円。販売量0.60倍、価格1.20倍、営業利益率6%
倍率:赤字すれすれの利益で、稼ぐ力だけで測ると床は 80 億円前後。それより、純現金と売れる資産の税後(floor_assets)を床にした。自己資本は減損で減らした値に PBR を掛ける形で、今の自己資本の 4分の1 程度に置いた。
確率:飼料大手の直販と生餌の急減で餌の利益が半分近くまで落ち、現金が失敗した投資で減る。構造的な負けで、確率は1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鮮魚の販売事業
ブリ・タイ・カンパチなどの養殖魚を仕入れて市場やスーパーへ売る。グループのマグロ・ウナギ養殖、加工、稚魚の売上もここに含まれる。
| 数量取扱量(千トン) | 価格1 千トンあたりの売上(億円)。名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 26.0 | 12 | 315 | 2 |
| 10 年後 中立 | 25.2 | 16 | 409 | 4 |
取り方:取扱量は開示がないため推定した。ブリ類・マダイ・マグロ・ウナギの混合の平均的な卸値から売上315億円を逆算し、約2.6万トンとした(国内の海面養殖の魚類の生産額で見ると、市場の約7〜8%に相当)。量は実質、価格は1千トンあたりの売上(名目)。
餌料・飼料の販売事業
イワシなどの冷凍生餌と、EP・DP飼料、モイストペレットを漁協や養殖業者に売る。利益の約9割を稼ぐ主力。
| 数量販売量(千トン) | 価格1 千トンあたりの売上(億円)。名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 2.03 | 162 | 17 |
| 10 年後 中立 | 73.6 | 2.71 | 200 | 20 |
取り方:販売量は開示がないため推定した。生餌の保存量1万トン・日量100トンの処理能力に加え、EP・DP飼料とペレットの仕入れ販売を含めて、売上162億円を約8万トンとした(1千トンあたり売上は約2億円)。量は実質、価格は1千トンあたりの売上(名目)。
リスクと懸念
養殖業者の減少で餌の市場が縮む
餌の利益は養殖業者の数と生産量に直結する。担い手の高齢化で廃業が進めば、餌の販売量は減り、冷凍倉庫と配送網の固定費が重くなる。売掛金の回収にも響く。大型の業者へ顧客が集中すれば、値引きの圧力も強まる。
生餌から配合飼料への移行
作業が楽で品質が安定する配合飼料へ養殖業者が移れば、ヨンキュウの生餌は量を失う。自社のペレットや飼料の共同開発で対抗しているが、フィード・ワンなど飼料大手との競争が厳しくなる。利益の9割を稼ぐ事業なので、ここが揺れると全体が揺れる。
鮮魚の薄利と相場
鮮魚は売上の3分の2を占めるが、利益率は1%に満たない。魚の相場が少し悪化するだけで赤字になり得る。養殖魚の仕入れ値と販売値の差が命で、値決めの力はほとんどない。在庫の評価損や天候による出荷のぶれも、利益を簡単に消す。
ウナギ・マグロ養殖の損益
直近はウナギ養殖が苦戦した。鹿児島に3つの養鰻場を持ち、追加投資が重い。稚魚の不漁や価格の乱高下で、回収が遅れる、あるいは減損になる恐れがある。マグロ養殖も、餌代と成育の期間が長く、資金が長く寝る。
貯めた現金の使い道
純現金158億円は時価総額の半分に迫るが、配当性向は1割未満だ。大型設備投資の中身も見えない。現金が失敗した投資や買収に使われれば、株主の取り分は減る。使い道が示されない限り、現金を額面で評価することは難しい。
生餌の仕入れと外部環境
生餌に使うイワシの漁獲は年ごとにぶれる。不漁になれば仕入れ値が上がり、中東情勢による燃料や為替の変動が運搬や飼料の費用に響く。物価の上昇を価格に転嫁できるかは、取引先との交渉次第である。
今後の分かれ目
- 餌料・飼料の販売事業の利益が、売上の増減と関係なく2期続けて減る
- 生餌から配合飼料への移行が速まっている。悲観の確率を上げてよい。
- 鮮魚の販売事業の営業利益率が2%を超えて定着する
- 輸出や人工種苗が効き始めた。楽観とやや楽観の確率を上げてよい。
- 会社が自社株買いや配当性向の引き上げを具体的に示す
- 現金が株主に戻る。戻り方を0.5から1.0に上げ、価値が大きく改善する。
- 大型設備投資の中身が開示される
- その投資の稼ぐ力を確かめる。現金を回収できる事業に使うなら評価は上がり、そうでなければ下がる。
- ウナギ養殖で減損が出る
- 追加投資の回収が難しい。悲観の確率を少し上げる。
- 飼料大手が養殖業者への直販を強める
- 餌の価格と量が同時に落ちる。悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 餌料・飼料の販売事業の利益と、生餌の販売量
- 鮮魚の販売事業の営業利益率
- 配当性向と自社株買いの有無、大型設備投資の中身
- ウナギ・マグロ養殖の損益と減損
- ブリの輸出量と海外の販路(Wismettacフーズとの提携)
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEと資本コスト7.75%から出る上限(ROEが資本コストを下回るので1÷k≒11.8倍)の6〜9割に置いた。今の株価や同業の倍率は見ていない。現金は純現金158億円のうち約90億円だけを余った分とし、戻り方0.5で割り引いた。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10年後も家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.9 倍・やや楽観 PER 10.5→12.9 倍・中立 PER 9→12.9 倍・悲観 PBR 0.258→0.276 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。