結論
アルコニックスは、アルミ・銅やレアメタルを売る商社と、精密部品や検査装置を作る製造業を併せ持つ会社だ。筆者の結論は割高である。会社は成長を描くが、10 年後の ROE は資本コストにわずかに届かないと見る。
利益の半分は、売上の 2 割に満たない金属加工が稼ぐ。2026/03 期の経常利益 89 億円のうち、金属加工が 46 億円、電子機能材が 29 億円、装置材料が 15 億円だ。売上の 4 割を占めるアルミ銅は、ほぼ利益を出していない。
会社は 2031 年 3 月期に経常利益 150 億円・ROE 12% を掲げる。筆者はこれを、製造が育てば近づくが、達成の確率は高くないと見る。ROE の過去 10 年の中央値は 8.9% だ。2023 年の説明会で掲げた 15% 超は、大きく外れた。
10 年の中立では、営業利益は 170 億円ほどになる。物価が 3 割以上上がるので、実質ではやや増える程度だ。倍率は、ROE が資本コスト 7.7% に届かない会社の上限に近い 9.7 倍とみる。
今の時価総額は、直近の純利益の 17 倍だ。製造の成長を先取りした値段で、安全域はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社に資本を預けて安心かが問われる。答えは、半分が良く、半分が普通だ。
金属加工と装置材料の一部には、技術と顧客の替えにくさがある。資本を足しても稼ぎが続く見込みがある。商社流通は、市況と在庫に頼る薄利の仕事で、投じた資金に見合う稼ぎが出にくい。
株主のものになる利益で見ると、物足りない。純利益の多くを、運転資金と設備と買収に再投資しないと、今の利益を保てない。純有利子負債も 395 億円ある。ROE が過去 10 年の中央値 8.9% で、資本コスト 7.7% を超える程度では、再投資した資金は、投じた額以上の価値を生みにくい。
経営は、資本の配分に動き始めた。低採算事業の整理と DOE 4% の還元は、前向きだ。ただし 20 年で 21 件の買収をした会社の資本配分は、のれんが減損されるかどうかで最後に判断される。
安全域の面では、今の値段は事業の稼ぐ力を先取りしている。製造の計画が思いどおり進んで初めて、値段に見合う。商社の市況、製造の景気循環、小さな会社の買収が重なるので、予測の確信度は高くない。筆者は、10 年先の中立を基準にすると、今の値段を払う理由を見つけにくいと考える。
何で稼ぐ会社か
アルコニックスは、非鉄金属の専門商社を祖業に、製造業へ広がった会社だ。事業は四つある。商社流通が電子機能材とアルミ銅、製造が装置材料と金属加工だ。
電子機能材は、レアメタルとレアアースの原料から、電池や半導体向けの電子材料までを扱う。タングステンなどの値段が上がる局面で、取扱額が伸びる。顧客は電子部品、電池、半導体のメーカーだ。
アルミ銅は社名の由来で、売上の 4 割を占める。アルミ・銅の地金、板、管、スクラップを、林金属、アルコニックス三高、平和金属などの流通子会社が売る。取引の差益は薄く、市況と在庫で利益が動く。
装置材料は、検査・試験装置(マークテック)と、自動車・半導体向けの材料を作って売る。装置を売り、その後の保守や消耗品でも稼ぐ形が育っている。
金属加工は、精密金属部品の製造だ。顧客は自動車、半導体製造装置、業務用エアコンのメーカーである。2022 年末にはソーデナガノを買い、車載電池向けのプレス部品にも入った。
この会社の特徴は、商社と製造を両方持つことだ。製造で得た製品を、商社の営業網で売れる。製造メーカーの多くが販売を代理店に頼るのとは違う。2001 年の経営陣による買収(MBO)のあと、2004 年から 2022 年末までに 21 件の買収を重ね、そのうち 11 件が製造業だ。多くは後継者に困る中小企業の事業承継である。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、狭い範囲に限られる。商社部門の堀は浅い。アルミ・銅は誰が売っても同じ品物で、値段は市場が決める。総合商社の非鉄部門や、鉄・非鉄を扱う専門商社と競り合う。
製造部門には技術の堀がある。金属加工は営業利益率が 1 割を超え、2026/03 期は経常利益の半分を稼いだ。精密加工の技術と、顧客の装置に組み込まれたら替えにくいことが理由だ。
ただし、堀は売上の 2 割弱に集中する。全社の営業利益率は 4% 台で、10 年の最高は 7.0%(2022/03 期)だ。ROE は 10 年で 2.4% から 16.7% の間を動いた。
資本の使い方に、筆者は課題を見る。20 年で 21 件の買収を重ね、株が薄まった期もあった。買収の質は、積み上がったのれんが減損されるかどうかで測られる。純負債は自己資本の半分あり、自己資本比率は 36% だ。
良い点もある。経営は低採算事業の整理を掲げ、中国の昆山拠点の閉鎖や流通子会社の統合に動く。DOE(自己資本に対する配当の割合)4% の還元方針も打ち出した。ただし ROIC 8% の目標は、資本コストをやっと上回る水準にすぎない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
非鉄金属の流通は、自動車と電機の需要が決める。アルミと銅は、電気自動車、送電網、データセンターの冷却に使われ、長く伸びる素材だ。ただし日本国内の需要は、人口が減るにつれて細る。国内向けの数量は、10 年で 1 割ほど減るのが自然だ。
値段は、中国の生産と米国の関税、為替で振れる。2026/03 期は、上期にアルミ・銅とスクラップの市況が不振で、下期に戻った。アルミ銅の利益が出ないのは、この値動きの影響が大きい。
レアメタルは別の話だ。タングステンなどは産出が中国に偏り、輸出規制で値段が上がった。供給の不安は、取り扱う商社には追い風になる。ただし値段は急落もする。半導体の設備投資にも、2〜3 年おきに波がある。データセンター向けは強いが、自動車と北米の電気自動車は鈍い。
製造の分野では、半導体の製造・検査装置、航空・宇宙・防衛の部品の需要が伸びる。大手が手を出しにくい少量多品種を、中堅が拾う構図だ。
競合は三種類いる。総合商社の非鉄部門、鉄・非鉄を扱う専門商社、各製品の専業メーカーだ。商社流通は規模の大きい相手に値段で勝てず、製造は専業メーカーに技術で勝つ必要がある。両方を持つことが差だが、どちらでも一流とまでは言えない。
中国の過剰生産が加工品に及べば、国内の流通と金属加工の双方で値段が押される。
資本政策と M&A
還元は厚くなっている。会社は DOE の目標を 3% から 4% に引き上げ、2027/03 期も増配を見込む。
会社の計画では、営業キャッシュフローの 400 億円のうち、成長投資に 200〜240 億円、還元に 50〜70 億円を回す。還元は 15% 前後と控えめで、稼ぎの多くは買収と設備に向かう。
買収は、事業承継型の小粒な案件が中心だ。ベンチャー投資も始め、核融合、次世代の化合物半導体、太陽電池の新興企業に少額を出した。成功は読みにくいが、額が小さいので傷は浅い。
再編では、アルミ銅の流通子会社 4 社を 2027 年 4 月に統合する検討を進める。重複費用を減らし、薄利の事業の利益率を上げる狙いだ。
2001 年のMBOではファンドが 6 割を持った経緯がある。今の上位株主は信託銀行の口座が中心で、特定の支配株主は目立たない(2026 年 3 月時点の公開情報)。TOB の可能性は、kabufu の推計で 10 年以内に 15% ほどだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
製造と商社を併せ持つ会社は少なく、その形が価値を生み始めている。2026/03 期の経常利益は 89 億円で、金属加工と装置材料が半分以上を稼いだ。2027/03 期の計画では、製造の経常利益が 75 億円と、商社流通の 25 億円の 3 倍になる。
追い風は強い。データセンター、半導体、航空・宇宙・防衛の設備投資は、10 年続く可能性が高い。レアメタルは産出が中国に偏り、輸出規制で値段が上がりやすい。取り扱う商社の価値は高まる。
アルミ銅の赤字は、構造改革で消える。流通子会社 4 社の統合で重複費用が減り、リサイクル施設で利益率が上がる。昆山の拠点の閉鎖で、製造の無駄も消える。
資本の面では、DOE 4% を約束し、時価総額 1,000 億円規模を目指すと説明してきた。経営は ROE 12% を掲げ、資本効率を上げにかかっている。買収は小粒で、事業承継型の目利きには実績がある。製造が利益の 6 割を占めれば、会社は商社でなく製造業として評価される。倍率は今の 15 倍近くが続いても不思議ではない。
慎重な見方
成長の話は、この会社の過去の実績と合わない。ROE は 10 年のうち 4 年が資本コストを下回り、最近 3 年は 7% 前後以下だ。2023 年の説明会で ROE 15% 超を掲げたが、実際は 2024/03 期に 2.4% まで落ちた。計画は、何度も達成が遅れてきた。
2027/03 期の計画も割り引くべきだ。電子機能材は、会社自身が 12% の減収、30% の減益を見込む。レアメタルの値段の波が、利益を大きく動かすことを示している。
アルミ銅は売上の 4 割を占めながら、利益がほぼゼロだ。統合しても、市場が値段を決める商品の利益率は 1% 前後にとどまる。
製造の利益も安定しない。昆山の拠点は閉鎖して再編する。電池向けの部品は、北米の電気自動車の失速で伸びが鈍っている。半導体の景気は、2〜3 年で波が来る。
資本の面でも、20 年で 21 件の買収を重ね、株が薄まった年がある。純負債は自己資本の半分で、金利が上がれば利払いが増える。今の時価総額は直近の純利益の 17 倍だ。10 年後に製造が育っても、倍率は 9〜10 倍に縮む。今の値段は、起こりうる最良に近い筋書きを織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、製造の育ちが商社の薄さを補うという点で筋が通る。ただし、実績の ROE と、計画の未達が続いてきた事実のほうが重い。
確率は、中立を最大の 38% に置いた。悲観側(やや悲観 24%・悲観 12%)を、楽観側(やや楽観 19%・楽観 7%)より厚くしている。製造が計画どおり進んでも、10 年後の ROE は 8〜10% で、資本コストを大きくは超えない。倍率を高くする理由が見つからない。
そのため、中立でも今の値段を下回り、期待は本質価値より低くなる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,694 円1,112 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,217 円366 億円)。 今の値に割り戻すと 2,599 円782 億円、今との差 −14.6%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 7.7%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,455 円2,243 億円 | 1,595 円480 億円 | +197.2% | +11.5% | 634 円191 億円 |
| やや楽観 | 19% | 5,502 円1,656 億円 | 1,396 円420 億円 | +126.5% | +8.5% | 1,311 円394 億円 |
| 中立 | 38% | 4,341 円1,306 億円 | 1,329 円400 億円 | +86.2% | +6.4% | 2,155 円648 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,436 円432 億円 | 1,063 円320 億円 | −17.9% | −2.0% | 600 円180 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,105 円333 億円 | 665 円200 億円 | −41.9% | −5.3% | 212 円64 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,694 円1,112 億円 | 1,217 円366 億円 | +61.3% | +4.9% | 4,911 円1,478 億円 |
今の株価時価総額 3,045 円916 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.7% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:AI と半導体の波に乗り、製造が稼ぎの柱になる 利益 147 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 7,455 円2,243 億円
10 年後、データセンターと半導体の設備投資が思った以上に続く。電子機能材のレアメタルは、供給を絞る産出国の政策で値段が高止まりし、取扱いが大きく伸びる。装置材料は、検査装置と車載・半導体向けの材料で顧客を増やす。
金属加工は、半導体製造装置と航空・宇宙・防衛の部品で伸びる。中国の昆山拠点の閉鎖で、製造の無駄が消える。アルミ銅は、流通子会社の統合とリサイクルで利益が出るようになる。
製造と商社を組み合わせた会社として、営業利益は 240 億円ほどに届く。会社が掲げる ROE 12% にも近づく。ただし、商社の利益は市況で振れるため、倍率は高くならない。
- 電子機能材(商社流通):数量 4.5(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 218(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 981 億円・営業利益 83 億円。データセンターとレアメタルの高騰で取扱いが 7 割増
- アルミ銅(商社流通):数量 11.3(取扱量(万トン))× 価格 107(1 トンあたり万円(地金と加工品の平均))→ 売上 1,214 億円・営業利益 19 億円。統合とリサイクルで 1.6% の利益率
- 装置材料(製造):数量 4.8(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 210(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 1,016 億円・営業利益 59 億円。検査装置と半導体向け材料で 5 割増
- 金属加工(製造):数量 3.5(出荷額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 713 億円・営業利益 89 億円。半導体・航空宇宙向けで 3 割増、利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 147 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.70% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.26 倍、時価総額 2,243 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI・半導体の追い風が 10 年続き、製造の利益率も上がる条件が全部そろう必要がある。会社の計画はこれまで何度も未達だったので、1 割を切る 7% に置いた。
やや楽観 19% やや楽観:統合の効果が出て、利益率が一段上がる 利益 117 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 5,502 円1,656 億円
10 年後、電子機能材と装置材料が会社の計画に近い形で育つ。半導体向けの検査装置と材料、電池向けの部品が伸び、金属加工も安定して稼ぐ。
アルミ銅は、流通子会社 4 社の統合で重複の費用が消え、赤字から薄い黒字に変わる。市況の悪い年でも、製造部門の利益が下を支える。営業利益は 200 億円ほどになる。
新しい買収は、事業承継型の小さな案件が中心だ。成功が続けば、製造の比率がさらに上がり、利益の質が少しずつ良くなる。それでも配当と成長投資の両立で自己資本は厚くなり、ROE は 9% 台にとどまる。
電子機能材は、レアメタルの値段の波を受けながらも、電池と半導体の底堅い需要で取扱いを 4 割以上伸ばす。装置材料は検査装置の更新と保守で利益率が 5% を超える。
- 電子機能材(商社流通):数量 3.8(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 207(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 796 億円・営業利益 64 億円。電池・半導体向けで 45% 増
- アルミ銅(商社流通):数量 11.1(取扱量(万トン))× 価格 107(1 トンあたり万円(地金と加工品の平均))→ 売上 1,190 億円・営業利益 14 億円。統合で重複費用が消えて薄い黒字
- 装置材料(製造):数量 4.4(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 204(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 902 億円・営業利益 47 億円。検査装置の更新で 37% 増
- 金属加工(製造):数量 3.3(出荷額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 669 億円・営業利益 80 億円。半導体向けで 22% 増
倍率:事業の純利益 117 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.70% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.15 倍、時価総額 1,656 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:製造部門の成長と流通子会社の統合が計画に近い形で進む筋書き。ROE の実績は過去 10 年の中央値 8.9% で、計画の 12% には届いていない。それでも製造の育ちを評価して 2 割弱とした。
中立 38% 中立:製造がじわり伸び、商社部門は薄利のまま 利益 98 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,341 円1,306 億円
10 年後、アルミ銅は国内の需要減を輸出とリサイクルで補い、取扱量は 1 割弱減る。利益は統合で薄い黒字になるが、売上の大きさに比べると小さい。
稼ぎを支えるのは製造だ。金属加工は半導体と航空向けで 15% ほど伸び、装置材料は検査装置の更新需要で 25% ほど伸びる。電子機能材もデータセンターと電池で 3 割伸びるが、レアメタルの値段の波があり、利益率は 7% 台にとどまる。
営業利益は 170 億円、純利益は 100 億円弱になる。DOE 4% の還元を続けると自己資本が積み上がり、ROE は 8% 前後だ。会社の掲げる 12% には届かない。
- 電子機能材(商社流通):数量 3.4(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 693 億円・営業利益 52 億円。取扱いは実質 3 割増、値段は物価並み
- アルミ銅(商社流通):数量 10.7(取扱量(万トン))× 価格 107(1 トンあたり万円(地金と加工品の平均))→ 売上 1,154 億円・営業利益 10 億円。取扱い 5% 減、利益率は 1% 弱
- 装置材料(製造):数量 4.0(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 811 億円・営業利益 41 億円。検査装置の更新で 25% 増、利益率 5%
- 金属加工(製造):数量 3.1(出荷額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 201(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 630 億円・営業利益 72 億円。半導体・航空向けで 15% 増、利益率 11.5%
倍率:事業の純利益 98 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.70% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,306 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アルミ銅は薄利のまま、製造がじわり伸びる筋書き。過去 10 年の純利益と ROE の実績に最も近いので、最大の 38% にした。
やや悲観 24% やや悲観:市況と顧客の内製化で、製造の利益も削られる 利益 54 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,436 円432 億円
10 年後、半導体とデータセンターの投資が一巡し、電子機能材のレアメタルは値崩れする。装置材料と金属加工も、顧客が部品を内製する動きや中国勢との競争で、利益率が下がる。
アルミ銅は、統合しても国内の需要減と中国の過剰生産に押され、取扱量が 1 割以上減る。赤字は避けるが、ほぼ利益が出ない。
営業利益は 100 億円ほどで、今とほぼ同じだ。物価が 3 割以上上がるなかで利益が増えないのだから、実質では減っている。買収の一部は期待どおりに稼げず、のれんの減損も出る。還元は DOE 4% を維持できず、減配に近づく。
- 電子機能材(商社流通):数量 2.9(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 195(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 569 億円・営業利益 31 億円。取扱いは 1 割増にとどまり利益率が 5% 台へ
- アルミ銅(商社流通):数量 9.9(取扱量(万トン))× 価格 103(1 トンあたり万円(地金と加工品の平均))→ 売上 1,021 億円・営業利益 4 億円。取扱い 1 割強減、ほぼ利益なし
- 装置材料(製造):数量 3.4(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 195(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 661 億円・営業利益 25 億円。内製化の動きで伸びが鈍る
- 金属加工(製造):数量 2.7(出荷額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 192(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 524 億円・営業利益 47 億円。伸びず、利益率は 9% に低下
倍率:事業の純利益 54 億円・ROE 5.0%(k 7.7% 以下で上限は 1÷k=11.5 倍)。RONIC = 8.7% + 1/2 ×(5.0% − 8.7%)= 6.9%、g 4% から正当化 PER ≒ 8.9 倍。構造的な負けに近いので、上限の 7 割へ引き上げず稼ぐ力の見立てで 8.0 倍に置いた。
確率:市況と顧客の内製化で製造の利益率が下がる筋書き。アルミ・銅は市場に値段を決められ、過去 10 年で ROE 2.4% の年(2024/03)もあった。実績と構造から、中立より少し低い 24% に置いた。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける。中国勢と顧客の内製化に押される 利益 14 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,105 円333 億円
10 年後、会社は優れた商社でも製造会社でもなくなっている。中国の加工品がアルミ・銅の流通と金属加工の両方に流れ込み、値段で勝てない。電池向けの部品は北米の電気自動車の失速で行き場を失う。
半導体の顧客は、検査と材料を内製に切り替える。電子機能材のレアメタルは、取引の相手が産出国の国有企業や総合商社に集約され、取り分が細る。
営業利益は 40 億円まで落ち、これまでの買収の多くで減損が出る。借金は残り、配当は大きく削られる。売れる資産と運転資本の回収が、株主の最後の支えになる。
統合したアルミ銅も赤字に戻り、商社部門は全体の足を引く。金属加工の利益率は 6% まで下がり、製造会社としての評価も失われる。
- 電子機能材(商社流通):数量 2.1(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 180(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 382 億円・営業利益 11 億円。取引が産出国・総合商社に集約され 2 割減
- アルミ銅(商社流通):数量 9.0(取扱量(万トン))× 価格 92(1 トンあたり万円(地金と加工品の平均))→ 売上 834 億円・営業利益 −3 億円。中国勢に押され取扱い 2 割減、赤字
- 装置材料(製造):数量 2.9(取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 180(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 523 億円・営業利益 13 億円。顧客の内製化で 1 割減、利益率 2.5%
- 金属加工(製造):数量 2.3(出荷額(億ドル)=対象市場 × シェア)× 価格 173(1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数))→ 売上 400 億円・営業利益 24 億円。中国勢との競争で 15% 減、利益率 6%
倍率:悲観は稼ぐ力(純利益 14 億円 ÷ k ≒ 160 億円)でなく、売れる資産で値段をつける。今の自己資本 792 億円に床の倍率 0.42 を掛けた。内訳は floor_assets_oku に書いた。純有利子負債 395 億円を抱え、リースの約束も固定費として残る(売上が落ちても家賃は落ちない)。
確率:10 年で構造的に負ける筋書き。小さい会社が 20 年で 21 件の買収を重ねた経営の難しさ、中国の過剰生産、顧客の内製化が重なる。1 割強の 12% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子機能材(商社流通)
レアメタル・レアアースの原料から、電池材料・半導体向けの電子材料までを扱う商社部門。顧客は電子部品、電池、半導体のメーカー。
| 数量取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.7 | 150 | 398 | 32 |
| 10 年後 中立 | 3.4 | 201 | 693 | 52 |
取り方:26/03 の売上は約 398 億円。27/03 計画の前期比(350 億円・-12%)から逆算した推定で、開示の数字ではない。対象市場を約 88 億ドル、取扱いのシェアを約 3% と置いた推定。数量は実質で、物価の分は価格の指数に入れた。
アルミ銅(商社流通)
祖業。アルミ・銅の地金や板・管などの加工品、非鉄スクラップを扱う。流通子会社の林金属・アルコニックス三高・平和金属が担う。
| 数量取扱量(万トン) | 価格1 トンあたり万円(地金と加工品の平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.3 | 80 | 906 | 3 |
| 10 年後 中立 | 10.7 | 107 | 1,154 | 10 |
取り方:26/03 の売上は約 906 億円。27/03 計画の前期比(950 億円・+4.9%)から逆算した推定。取扱量を約 11 万トン、平均単価を 1 トン約 80 万円とした推定(アルミは 50 万円前後、銅や加工品は 100 万円超)。物価の分は価格に入れ、数量は実質。
装置材料(製造)
検査・試験装置(マークテックなど)と、自動車・半導体向けの各種材料を作って売る製造部門。
| 数量取扱額(億ドル)=対象市場 × シェア | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.2 | 150 | 484 | 17 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 201 | 811 | 41 |
取り方:26/03 の売上は約 484 億円。27/03 計画(610 億円・+26%)から逆算した推定。非破壊検査装置と車載・半導体向け材料の市場を約 129 億ドル、シェアを約 2.5% とした推定。数量は実質、物価の分は価格の指数に入れた。
金属加工(製造)
自動車、半導体製造・実装装置、業務用エアコン向けの精密金属加工部品。車載電池のプレス部品、カーボン製品も含む。
| 数量出荷額(億ドル)=対象市場 × シェア | 価格1 ドルあたり円(為替 150 円 × 物価の指数) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.7 | 150 | 409 | 49 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 201 | 630 | 72 |
取り方:26/03 の売上は約 409 億円。27/03 計画(440 億円・+7.5%)から逆算した推定。精密金属部品の対象市場を約 110 億ドル、シェアを約 2.5% とした推定。数量は実質、物価の分は価格の指数に入れた。
リスクと懸念
非鉄の市況と在庫
アルミ・銅・レアメタルの値段が急に動くと、在庫の評価と差益が振れる。2026/03 期のアルミ銅は、上期の市況不振で利益がほぼ出なかった。電子機能材はタングステンなどの高騰で伸びたが、反落すれば逆に回る。
半導体・データセンター投資の波
電子機能材と装置材料、金属加工は、半導体とデータセンターの設備投資に乗っている。この投資は 2〜3 年おきに波があり、止まれば 3 部門が同時に冷える。会社は 2027/03 期に電子機能材の減益を見込んでおり、すでに波の山を過ぎた可能性もある。
買収の失敗とのれんの減損
20 年で 21 件の買収を重ねた。小粒の事業承継が中心だが、一つでも期待を外せば減損が出る。買収で株が薄まった期もあった。成長を買収に頼る度合いが高いほど、資本配分の失敗が利益に響く。
電気自動車の失速と中国勢
車載電池向けのプレス部品は、北米の電気自動車の減速で伸びが鈍った。中国の加工品が国内に流れ込めば、アルミ・銅の流通と金属加工の両方で値段が押される。昆山の拠点を閉じるのも、中国の事業環境の厳しさの表れだ。
金利と借金
純有利子負債は 395 億円で、自己資本の半分ほどある。借り換えのたびに新しい金利になり、10 年で利益を年 10 億円ほど押し下げる計算だ。不況と金利の上昇が重なると、配当の余力が先に削られる。
アルミ銅の統合の遅れ
流通子会社 4 社の統合は、重複費用を減らす狙いだ。ただし統合の費用が先に出て、効果が出るまでに年数がかかる。それでも市況が悪ければ、統合しても利益率は 1% に届かないままになる。
今後の分かれ目
- アルミ銅の経常利益が統合後 2 期続けて 20 億円を超える
- 薄利の事業が利益を出し始めたことになる。中立の利益率を上げ、やや楽観の確率を上げる。
- 製造部門(装置材料と金属加工)の経常利益が 100 億円を超える
- 会社の計画に近づく。楽観側の確率を上げ、製造業として見た倍率を認めてよい。
- 電子機能材のレアメタルの取扱いが、値段の反落で 2 割以上減る
- 市況に頼る利益の姿が表に出る。中立の利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 数百億円規模の大型買収を発表する
- のれんの減損と借金の増加が心配になる。買う事業の利益率と価格を確かめ、悪ければ悲観の確率を上げる。
- 自社株買いを含めて、還元が営業キャッシュフローの 3 割を超える
- 資本配分が改善し、自己資本が膨らみにくくなる。ROE の見通しを上げ、倍率の上限を見直す。
- 同業や総合商社による TOB・再編が報じられる
- 買収の上乗せがつく可能性がある。ただし本質価値は変わらないので、値段が価値を超えていないかを見直す。
見ておくもの
- 電子機能材・アルミ銅・装置材料・金属加工の四半期ごとの経常利益
- 会社の長期計画(2031/03 期の経常利益 150 億円・ROE 12%)の達成度
- 流通子会社 4 社の統合の進み具合とアルミ銅の利益
- タングステンなどのレアメタルとアルミ・銅の市況
- 純有利子負債と、借り換えの金利
倍率と資本コストの決め方
先に四つの事業ごとに数量 × 価格で 10 年後の営業利益を積んだ。次に利払いの増加(10 年で年 10 億円ほど)と、税・少数株主を引いて純利益を出し、自己資本は今の額に純利益の合計を足して還元の合計を引いて流した。そこから出した ROE と資本コスト 7.7%(基本 7.5% + quality 1.2%)で正当化 PER を計算し、中立は ROE が k にわずかに届かないので、1÷k × ROE÷k × 0.9 に置いた。悲観は売れる資産から出し、谷の PBR は使っていない。今の株価・PER は見ていない。27/03 期の見通しは会社の計画(営業利益 107 億円・純利益 66 億円)を使った。数字の形は家賃を営業費用に入れた今と同じにそろえ、新リース会計での変化は 10 年後の置き方に混ぜていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→15.26 倍・やや楽観 PER 10.5→14.15 倍・中立 PER 9.7→13.33 倍)。
資本コスト 7.7% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別のリスクは筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.70% → 7.70%。