結論
あらたは、日用品・化粧品・ペット用品の卸である。メーカーから商品を仕入れ、ドラッグストアやホームセンターの約 6 万 4 千店に届ける。売上は 2026 年 3 月期に初めて 1 兆円を超えた。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正というものだ。稼ぐ力は安定しているが、利益率は最大手の PALTAC に見劣りする。割安と言えるほどの余裕は無い。
足元は苦しい。2026 年 3 月期の営業利益は 132 億円で、1 割以上減った。今期の会社予想は 110 億円とさらに下がる。人件費と物流費の上昇を、売り先から取り返せていない。
ただ、悪い事業ではない。営業利益率は 1% 台前半と薄いが、赤字は 20 年に 1 度だけで、ROE は 8〜9% で安定してきた。借金も軽い。
10 年後は、売上が 1.3 兆円ほど、営業利益が 175 億円前後と見る。強気なら 235 億円、慎重なら 120 億円だ。分かれ目は 2 つある。大型化するドラッグストアに対して、条件の交渉力を保てるか。新しい物流センターが、人手不足を吸収できるか。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、あらたは「悪くないが、持ち続けたいとまでは言えない」会社だ。事業は分かりやすい。日用品は毎日売れる。10 年後も、メーカーと小売店のあいだの物流は要る。
問題は、利益の取り分だ。売上 1 兆円に対し、株主の手元に残る利益は 100 億円ほど。1% の利益率は、0.2 ポイント動くだけで利益が 2 割近く変わる。安全域が薄い事業である。
堀は物流網の規模にある。PALTAC との利益率の差を見れば、規模で劣る二番手は不利だとわかる。新しい物流センターで人手を減らし、差を縮められるかが、本物の堀になれるかの分かれ目だ。
資本の使い方には、良い点と心配な点が両方ある。借金は軽く、配当も自社株買いも続けてきた。一方で、化粧品の M&A は、成功すれば利益率を押し上げるが、失敗すれば資本効率を落とす。
払う値段の側では、10 年先の中心の姿に対して、今の値段にいくらか余裕がある。ただし厚い余裕ではない。事業は並、値段は適正圏。これが見立てだ。
何で稼ぐ会社か
事業の中身は、メーカーと小売店のあいだをつなぐ卸だ。仕入れ先は P&G・ユニリーバ・ライオンなどの大手で、扱いは約 9.5 万品目。納品先は全国約 3,370 社の小売業、約 6 万 4 千店舗である。全国 41 か所の拠点から配送する。
売上は 2026 年 3 月期で 1 兆 47 億円。品目で見ると、ヘルス&ビューティー(シャンプーや化粧品など)が 3 割、紙製品とペット用品が各 2 割弱を占める。ペットは子会社のジャペルが担い、日用品卸としては厚みがある。
売り先では、ドラッグストアが半分強の 5,229 億円で最大だ。ホームセンター、ディスカウントストア、スーパー、コンビニや EC が続く。ドラッグストアに偏る構図は、最大手の PALTAC と同じである。
稼ぎ方は薄利多売だ。粗利は売上の 1 割に届かず、人件費と物流費を引くと営業利益は 1% 強しか残らない。小売の物流センターを使う手数料(センターフィー)やリベートも払う。物流を安く回す力が、そのまま利益になる。
2026 年 1 月には、MAP ホールディングスを 67 億円で買った。傘下の msh はアイメイク「ラブ・ライナー」を持ち、Polite はバラエティストア向けの卸だ。卸が商品を作る、製造卸への一歩である。海外は中国・香港・タイ・ベトナムに拠点があるが、まだ小さい。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、全国に広がる物流網と、小売店との長い取引にある。41 拠点と約 3,370 社の取引先は、新規参入者がすぐには作れない。ただ、堀(他社がまねできない強み)と呼べるほど深くはない。
筆者がまず見るのは、稼ぐ力の差だ。最大手 PALTAC の経常利益率は 2025 年 3 月期で約 2.7%。あらたは 1.6% で、6 割ほどにとどまる。規模の差が、そのまま利益率の差になっている。
資本の効率は並だ。ROE はここ 8 年、8〜9% で動いてきた。資本コストとほぼ同じで、株主のお金を増やす力は平均的である。借金は軽く、純負債は自己資本の 1 割以下。この安定感は評価できる。
弱点は値決めの力だ。小売が大型化するほど、卸は条件をのまされやすい。2026 年 3 月期は、センターフィーやリベートの増加で粗利率が 0.07 ポイント下がった。人件費も重い。
東風谷誠一社長は、就任 1 年目を終えたところだ。新しい中期計画を出したばかりで、実行の成績はまだ見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
舞台は、日用品・化粧品・ペット用品の卸売りである。洗剤、紙おむつ、シャンプー、ペットフードなど、毎日の暮らしに欠かせない品が中心だ。景気には左右されにくいが、人口が減るので量は伸びにくい。
市場の形は二強だ。PALTAC の売上は約 1.2 兆円、あらたは約 1.0 兆円。この 2 社で 2 兆円を超える。大木ヘルスケアホールディングスなどの中堅が続く。卸経由の流通額を 5 兆円規模と筆者は推定しており、その場合、あらたは 2 割ほどを握る。
数量は、10 年で緩やかに細る前提が自然だ。人口減が重しになり、ヘアケアやペットの高級化と訪日客の買い物が支える。物価の分だけ金額は増える。
最大の変化は、売り先の再編だ。ツルハとウエルシアが 2025 年 12 月に統合した。ドラッグストアは売上の半分強を占める主力で、大きくなるほど値引きの要求は強まる。大手が物流を自前で抱える動きが進めば、卸には脅威になる。
卸の側では、協力も進む。PALTAC、あらた、プラネットが商品情報を一元管理する会社を設立した。重複した業務を減らす狙いだ。
10 年の焦点は、物流を安く回す力で、値下げの圧力を跳ね返せるかに尽きる。
資本政策と M&A
還元は、配当を軸に自社株買いを加える形だ。2026 年 3 月期の配当性向は 4 割弱。自己株式は発行済み株式の 7% ほどに積み上がっている。中期計画では、4 年間で 150 億円以上を還元に回す。
筆者は、この水準を控えめと見る。利益は薄いが、営業キャッシュフローは 4 年で約 540 億円ある。成長投資は 500〜600 億円の枠で、設備に約 190 億円を使う。残りが M&A などに偏れば、資本効率はむしろ下がりかねない。
買収は小さな案件を重ねてきた。2012 年に市野、2019 年にアサヒ化粧品販売へ追加出資、2026 年に MAP ホールディングスだ。MAP は 3 社合算で売上 137 億円、営業利益 6 億円ほど(2025 年 8 月期)。化粧品を 200 億円以上伸ばす計画の、最初の 1 歩である。
株主は分散している。信託銀行の口座が 1 割強、音羽殖産が 6%、フィデリティの運用ファンドが 9% 台で並ぶ。大きな親会社は見当たらず、再編の対象になる余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日用品卸は、二強の一角を占める安定した事業だ。人は毎日、洗剤や紙を使う。景気が悪くても売上は落ちず、売上は 11 期連続で過去最高を更新した。
足元の減益には、一時的な費用が混じる。広島センターの移転と M&A の費用が営業利益を押し下げた。関西に建てる新センターが動けば、人手は 3 分の 1、出荷量は 1.5 倍になる計画だ。物流が軽くなれば、営業利益率は過去最高の 1.5% に戻り、さらに上を狙える。
商品の側でも利益率は上がる。専売・優先流通品の比率を 7.8% から 9% へ上げる。化粧品は MAP ホールディングスを取り込み、売上を 200 億円以上増やす。薄利の卸から抜け出す入口になる。
PALTAC との利益率の差は、裏返せば伸びしろだ。規模と物流の自動化で差が少し縮まるだけで、利益は 2 割以上増える。
財務は軽く、配当も自社株買いも続いている。手元の資金で投資を続けながら、株主にも返せる。この安定が 10 年続けば、利益は着実に積み上がる。
慎重な見方
利益の土台が崩れ始めている。2026 年 3 月期の営業利益は 12% 減り、今期の予想はさらに 17% 下がる。売上は伸びているのに、利益は減る。薄利の卸にとって、これは最も悪い形だ。
原因は構造にある。ドラッグストアが大きくなり、卸に求める条件が重くなっている。センターフィーとリベートの増加で粗利率は下がった。ツルハとウエルシアの統合後は、この傾向が加速しかねない。人件費と物流費は毎年上がるが、卸は自力で値上げできない。
規模の差も重い。PALTAC の経常利益率は約 2.7% で、あらたの 1.6% を大きく上回る。二番手が同じ売り先を追う限り、条件は不利なままだ。
新しい物流センターと M&A も、成果は未知数だ。関西の新センターは約 100 億円を投じ、稼働は 2028 年。人員を減らす計画は、順調に進んで初めて利益になる。化粧品の M&A は 67 億円と小さく、本体の薄い利益率を変えるほどではない。
最悪の場合は、大手小売が物流を内製し、メーカーとの直接取引も増える。卸の取り分そのものが減る。ROE が資本コストを下回る年が続けば、ためた利益の価値は額面を下回る。
どちらに重みを置いたか
事業の安定さでは、強気の言い分が勝つ。需要は底堅く、物流網も本物だ。しかし利益の質では、慎重な見方が正しい。売上が伸びても利益が減る現実は、PALTAC との差が縮まっていない証拠だ。
確率は、中立に 4 割弱を置き、やや悲観を楽観側より厚くした。慎重な見方の指摘が具体的で、直近の会社予想もそれを裏づけるからだ。悲観は 1 割にとどめた。物流網と財務の軽さが、完全な負けにはさせないと見る。結果として、本質価値は今の値段を小幅に上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,426 円1,484 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,382 円463 億円)。 今の値に割り戻すと 3,110 円1,043 億円、今との差 +17.0%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,650 円2,565 億円 | 1,828 円613 億円 | +256.4% | +13.6% | 663 円222 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,186 円2,074 億円 | 1,625 円545 億円 | +193.7% | +11.4% | 1,406 円471 億円 |
| 中立 | 38% | 5,257 円1,763 億円 | 1,431 円480 億円 | +151.5% | +9.7% | 2,542 円852 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,521 円845 億円 | 1,237 円415 億円 | +41.3% | +3.5% | 1,015 円340 億円 |
| 悲観 | 10% | 991 円332 億円 | 835 円280 億円 | −31.3% | −3.7% | 183 円61 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,426 円1,484 億円 | 1,382 円463 億円 | +118.4% | +8.1% | 5,808 円1,948 億円 |
今の株価時価総額 2,659 円892 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 物流の自動化と化粧品が効き、利益率が過去最高を超える 利益 172 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 7,650 円2,565 億円
新しい物流センターが予定どおり動き、人手不足を吸収する。関西に続いて首都圏にも新センターが立ち上がり、出荷あたりの費用が下がる。営業利益率は 1.55% と、これまでの最高をわずかに上回る。
専売・優先流通品は 1 割に近づき、msh と Polite を軸に化粧品の自社企画品が伸びる。卸が商品を作る比率が上がり、薄利から少し抜け出す。ドラッグストアの再編後も、あらたは物流と売場の提案で選ばれ続ける。
納品先は 6 万 8 千店に増え、1 店あたりの取扱額も実質で 6% 伸びる。売上は 1.5 兆円に近づき、営業利益は 235 億円ほど。ROE は資本コストを上回り、還元も厚くなる。
- 日用品・化粧品・ペット用品の卸売:数量 68,000(納品先の店舗数(年平均・店))× 価格 0.22(1 店あたり年間取扱額(億円・名目)。物価(10 年 1.34 倍)と、1 店あたりの実質の取扱量の変化を含む)→ 売上 15,164 億円・営業利益 235 億円。納品先 68,000 店 × 1 店 0.2230 億円(今の 1.42 倍)、営業利益率 1.55%
倍率:事業の純利益 172 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.45 倍、時価総額 2,485 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:7% 程度。新センターの効率化、専売品の拡大、化粧品の M&A がそろって当たる姿。売り先の大型化の中で全部が成功する必要があるため、確率は低くとどめた。
やや楽観 18% 中期計画の目標をほぼなぞり、緩やかに利益を伸ばす 利益 145 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 6,186 円2,074 億円
中期計画が概ね達成される。売上は 2030 年 3 月期に 1.16 兆円へ届き、その後も物価の分だけ伸びる。新センターで物流費の伸びを抑え、営業利益率は 1.4% 台まで戻る。
化粧品は M&A の効果で 200 億円の上積みが入り、専売品の比率も 9% に届く。ただし、ドラッグストア大手への値引き圧力は続き、利益率は過去最高の 1.5% には届かない。
納品先は 6 万 6 千店台、1 店あたりの取扱額は実質でわずかに伸びる。営業利益は 205 億円、純利益は 145 億円ほど。ROE は 8% 台で、資本コストをわずかに上回る。評価は、安定した卸にふさわしい水準で落ち着く。
- 日用品・化粧品・ペット用品の卸売:数量 66,500(納品先の店舗数(年平均・店))× 価格 0.22(1 店あたり年間取扱額(億円・名目)。物価(10 年 1.34 倍)と、1 店あたりの実質の取扱量の変化を含む)→ 売上 14,411 億円・営業利益 205 億円。納品先 66,500 店 × 1 店 0.2167 億円(今の 1.38 倍)、営業利益率 1.42%
倍率:事業の純利益 145 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.74 倍、時価総額 1,992 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:18% 程度。売上 1.16 兆円、化粧品の上積み 200 億円、専売品 9% が概ね達成される姿。会社の計画に近いが、売り先の圧力が残るため、中立より薄く置いた。
中立 38% 物価の分だけ伸びるが、利益率は 1.3% にとどまる 利益 123 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,257 円1,763 億円
売上は物価の分だけ伸び、数量は横ばいにとどまる。納品先は 6 万 4 千店台。ドラッグストアの出店は続くが、再編と閉店で店数の伸びは打ち消される。1 店あたりの取扱額は、物価の 3% に対し、人口減と値引きで実質は 1% 下がる。
営業利益率は 1.3% で、今とほぼ同じ。人件費と物流費の上昇を、新センターの効率化とリベート条件の見直しで何とか吸収する。PALTAC との差は縮まらない。
営業利益は 175 億円、純利益は 123 億円ほど。ROE は 7% で資本コストをわずかに下回り、自己資本が積み上がる分だけ資本効率は下がる。堀は広がらず、狭まりもしない。評価は、薄利の卸にふさわしい落ち着いた水準になる。
- 日用品・化粧品・ペット用品の卸売:数量 64,500(納品先の店舗数(年平均・店))× 価格 0.21(1 店あたり年間取扱額(億円・名目)。物価(10 年 1.34 倍)と、1 店あたりの実質の取扱量の変化を含む)→ 売上 13,435 億円・営業利益 175 億円。納品先 64,500 店 × 1 店 0.2083 億円(今の 1.33 倍)、営業利益率 1.30%
倍率:事業の純利益 123 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,640 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:38% 程度。10 年の中心。数量は横ばい、利益率は今の水準という落としどころで、最も厚く置いた。
やや悲観 27% 売り先の大型化で条件が悪化し、利益率が 1% に下がる 利益 82 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,521 円845 億円
ツルハ・ウエルシアに続く再編で、ドラッグストアの上位が一段と大きくなる。センターフィーとリベートの要求は強まり、卸は価格転嫁もしにくい。粗利率は毎年少しずつ下がる。
あらたは商品の力で対抗しきれず、納品先は 6 万 2 千店に減り、1 店あたりの取扱額も実質で 8% 落ちる。新しい物流センターは動くが、効率化の成果は値引きに吸われて利益に残らない。
営業利益率は 1.0% まで下がり、営業利益は 120 億円。純利益は 80 億円強で、ROE は 5% 台に落ちる。MAP の化粧品も、本体の薄い利益を支えるほどには育たない。資本コストを稼げない会社になり、利益を返すことでしか評価されなくなる。
- 日用品・化粧品・ペット用品の卸売:数量 62,000(納品先の店舗数(年平均・店))× 価格 0.19(1 店あたり年間取扱額(億円・名目)。物価(10 年 1.34 倍)と、1 店あたりの実質の取扱量の変化を含む)→ 売上 11,997 億円・営業利益 120 億円。納品先 62,000 店 × 1 店 0.1935 億円(今の 1.23 倍)、営業利益率 1.00%
倍率:事業の純利益 82 億円・事業 ROE 5.2% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=13.3 倍。稼ぐ力が資本コストを下回り堀も薄れる筋書きなので、上限の約 6 割の 8.5 倍に置いた。
確率:27% 程度。直近の減益と今期予想が示す流れの延長で、ドラッグストア再編の圧力が続く姿。楽観側より厚く置いた。
悲観 10% 大手が物流を内製し、卸の取り分が構造的に減る 利益 31 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 991 円332 億円
ドラッグストア大手が自前の物流センターを広げ、メーカーとの直接取引も増える。あらたの役割は、小さな店向けの配送や大手の補完にしぼられていく。売上は 1 兆円を割り、粗利も落ちる。
納品先は 5 万 8 千店に減り、1 店あたりの取扱額は実質で 18% 落ちる。固定費の重い物流拠点は稼働が下がり、営業利益率は 0.45% まで沈む。営業利益は 45 億円、純利益は 31 億円ほどだ。
新センターへの投資と M&A は、利益を生まない。減損も出て、配当を維持するだけで利益を使い切る。それでも借金は軽く、物流用の土地建物も残るため、倒れる心配は小さい。ただし株主にとっては、ROE が 2% 台の長い低迷になる。
- 日用品・化粧品・ペット用品の卸売:数量 58,000(納品先の店舗数(年平均・店))× 価格 0.17(1 店あたり年間取扱額(億円・名目)。物価(10 年 1.34 倍)と、1 店あたりの実質の取扱量の変化を含む)→ 売上 10,005 億円・営業利益 45 億円。納品先 58,000 店 × 1 店 0.1725 億円(今の 1.10 倍)、営業利益率 0.45%
倍率:事業の純利益 31 億円・事業 ROE 2% 台は k 7.5% を大きく下回る。上限は 1÷k=13.3 倍だが、構造的に負けて稼ぐ力が資本コストを大きく下回る筋書きなので、やや悲観(8.5 倍)よりさらに低い上限の約 56% の 7.5 倍に置いた。倍率はためた利益には掛けず、売れる資産の床(土地・有価証券を売っても借入 103 億円を引くと稼ぐ力の額に届かない)は使っていない。
確率:10% 程度。大手小売の物流内製とメーカーの直接取引で、卸の役割が縮む姿。物流網と財務の軽さが残るため、1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日用品・化粧品・ペット用品の卸売
メーカーから仕入れ、ドラッグストア・ホームセンターなど約 3,370 社の小売業へ配送する卸。子会社のジャペルがペット用品、MAP ホールディングス傘下の msh・Polite が化粧品を担う。
| 数量納品先の店舗数(年平均・店) | 価格1 店あたり年間取扱額(億円・名目)。物価(10 年 1.34 倍)と、1 店あたりの実質の取扱量の変化を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 64,000 | 0.16 | 10,047 | 132 |
| 10 年後 中立 | 64,500 | 0.21 | 13,435 | 175 |
取り方:統合報告書にある約 6 万 4 千店舗との接点を数量とし、2026/03 期の連結売上 10,047 億円を割って 1 店あたり約 0.157 億円。数量は店の数(実質)、物価の 3% と 1 店あたりの買い上げ量の変化は価格の側に入れた。2026 年 1 月に買った MAP ホールディングス(msh・Polite)は期末直前の連結なので、売上への寄与は小さく本体に含める。
リスクと懸念
売り先の大型化と値引き要求
ドラッグストアは売上の半分強を占める。ツルハとウエルシアが 2025 年 12 月に統合し、売り先の交渉力はさらに増した。2026 年 3 月期はセンターフィーやリベートの増加で粗利率が 0.07 ポイント下がった。この傾向が続けば、1% 台の営業利益率はすぐ 1% を割りうる。
足元の減益が続く恐れ
今期の会社予想は営業利益 110 億円で、前期から 17% 減る。人件費、物流費、新センターと M&A の費用が先に出る。中期計画は 2030 年 3 月期に経常利益 160 億円を掲げるが、今期予想の 105 億円から 55 億円を積み上げる道筋は、まだ具体的に見えていない。
最大手との規模の差
PALTAC の経常利益率は約 2.7% で、あらたは 1.6%。同じ売り先を二番手が追う構図では、仕入れ条件も物流の効率も不利になりやすい。差が縮まらなければ、売上が増えても利益は伸びない。
物流投資と人手不足
関西の新センターは約 100 億円で、稼働は 2028 年。人員 3 分の 1、出荷 1.5 倍の計画が崩れると、投資は回収できない。物流の人件費は物価を超えて上がりやすく、効率化が追いつかない年は利益率が先に削られる。
M&A の実行と化粧品の戦略
MAP ホールディングスは 67 億円で、3 社合算の営業利益は 6 億円ほど。化粧品を 200 億円以上伸ばす計画は、本体の利益率を変えるほどの額ではなく、ブランドの流行り廃りにも左右される。のれんの減損や、次の大型買収で資本効率が下がる恐れもある。
倉庫の賃借とリースの固定費
中期計画に契約倉庫の見直しが入っており、倉庫を借りて営む面がある。賃借料は売上が落ちても減らない固定の約束で、純負債 103 億円には入っていない。2028 年 3 月期からの新リース会計で貸借対照表に載り、負債と自己資本比率の見え方が変わる。
売り先とメーカーによる中抜き
大手小売が自前の物流を広げるか、メーカーが直接取引を増やせば、卸の取り分そのものが減る。商品情報の一元管理や共同配送で卸全体が効率を上げても、役割が縮むなら利益は戻らない。
今後の分かれ目
- センターフィーとリベートの増加が止まり、粗利率が上向いたら
- 売り先との条件が落ち着いた合図。中立に重みを寄せ、やや悲観の確率を下げてよい。
- 営業利益率が 1.4% を超える年が出たら
- 新センターと専売品が効いている。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- 今期の営業利益が会社予想の 110 億円を下回ったら
- 減益の土台がさらに下がる。やや悲観に重みを移し、人件費と物流費の伸びを確かめる。
- 大手ドラッグストアの物流内製やメーカー直取引が報じられたら
- 卸の取り分が構造的に縮む合図。悲観の確率を上げる。納品先の店数と 1 店あたりの取扱額を併せて見る。
- MAP ホールディングスの化粧品が計画どおり伸び、200 億円の上積みが見えたら
- 製造卸への転換が進んでいる。利益率の上振れ要因として、楽観側に重みを移す。
- 配当性向の引き上げや大きな自社株買いが出たら
- 現金の使い道の規律が高まる合図。同じ利益でも株主に回る分が増え、本質価値は上向く。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率と粗利率、センターフィー・リベートの動き
- 納品先の店数と、ドラッグストア向け売上の伸び
- 関西新センターの稼働時期と、人員・出荷量の実績
- 専売・優先流通品の比率と、化粧品カテゴリの売上
- PALTAC との利益率の差、配当・自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益と資本コスト 7.5%(基本 7.5%、quality 合計 0)・長期成長 g 4% から求めた正当化 PER の 6〜9 割に置いた。ROE が資本コストを下回る中立は上限 1÷k を土台にした。確率は今の株価では動かしていない。今の PER や過去の PBR は倍率の根拠にしていない。悲観は事業の稼ぐ力(純利益÷k)を今の自己資本に直した値で置いた。新リース会計(2028/03 期から)で営業利益・負債の形が変わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→14.45 倍・やや楽観 PER 12→13.74 倍・中立 PER 11.3→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality の合計 0 を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。