結論
都築電気は、企業や官公庁のネットワークとシステムを売り、つくり、保守する会社だ。1932年の電話交換機の販売店が出発点である。富士通の製品を主に扱い、保守の契約で毎年の収入を積み上げてきた。
筆者の結論は、おおむね適正だ。営業利益率は10年前の1%台から8%近くへ上がり、株主への還元も厚くなった。それでも10年後の価値は今の時価総額を1割ほど下回る。事業の伸びが物価をやや上回る程度で、堀(他社がまねできない強み)が深くないからだ。
いちばんの強みは財務だ。時価総額の4割にあたる純現金がある。筆者が気にしているのは、その現金の行き先だ。新しい中期計画は、400億円規模の買収枠を掲げた。自社株買いで株主に返すのか、買収に回すのか。買収が外れると、現金はそのまま失われる。
親会社的な存在もある。麻生が議決権の24%を持ち、富士通が12.8%を持つ。この2社に守られて、敵対的な買収は起こりにくい。一方で、少数株主の発言力は弱い。
バリュー投資の目で見れば、悪くない会社だが、安全域が足りない。割安になるのは、事業の利益が今より1〜2割落ちた時だろう。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、都築電気は「悪くない、だが安くもない」会社だ。
まず事業の質を見る。保守契約という繰り返しの収入があり、利益率は上がった。10年後も事業が存在する可能性は高い。ただし堀は中程度で、10年先に今より強くなっているとまでは言えない。技術の独自性がなく、仕入先と大手の動きに左右される。
次に、株主のものになる利益を見る。営業利益は82億円、純利益は65億円(特別な益を除くと約58億円)。事業を保つために必要な投資は小さく、利益の多くが現金として残る。この性質は魅力だ。
問題は、その現金の使い方だ。新しい計画は還元を厚くしたが、400億円規模の買収枠も置いた。筆者は、買収で価値を高められる経営かどうか、まだ判断できない。買収に使われる現金は、評価を下げて見るのが筋だ。
安全域は、現金を除いた事業だけで測るのが妥当だ。事業の価値は、今の時価総額から現金の分を引いた額に近く、特に安くはない。割安と言えるのは、利益が今より2割ほど落ちた時だろう。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は3つに分かれる。機器の販売、システムの開発・構築、そして運用保守などのサービスだ。2026年3月期の売上は、機器が約434億円、開発・構築が約174億円、サービスが約430億円。単一の事業として開示され、顧客に偏りはない。売上の1割を超える相手先は1社もない。
収益の質は、この3つで大きく違う。機器は利益率が薄く、仕入先の価格に左右される。開発・構築は人の稼働で稼ぐ。サービスは、一度結んだ保守契約が続くため、利益のほとんどをここで出していると見てよい。
仕入れでは富士通が主要な相手だ。販売パートナー契約は1年ごとに自動で更新される。富士通は株主でもあり、同社の株を約10億円分持ち合っている。
2024年1月に、半導体関連の子会社4社をレスターホールディングスへ売った。以後は情報ネットワークだけを手がける、いわゆる純粋なICT企業になった。この売却で入った資金が、今の厚い純現金のもとだ。従業員は連結で約2,000人。人手不足の中で、技術者を確保できるかが成長の上限を決める。
機器・開発・サービスの比率は、ほぼ4対2対4だ。利益はサービスに偏っているため、保守の契約を守ることが会社の土台になる。
優良さと弱いところ
強みは顧客との距離の近さだ。官公庁や大企業の通信設備を90年以上手がけてきた。保守契約は切り替えが面倒で、解約されにくい。ここに堀がある。ただし技術に独自性は乏しく、堀は中程度と見る。
数字は着実に良くなっている。営業利益率は2015年3月期の1.4%から、2026年3月期の7.9%へ上がった。ROEは13%台に乗った。自己資本比率は55%、純現金が厚く、財務の心配はない。
弱いところは3つある。1つめは、機器の利益率の薄さだ。富士通など仕入先の条件に左右される。2つめは、規模の小ささだ。売上1,000億円では、大手のシステム会社と値段で張り合えない。3つめは、人だ。ソフトの開発と構築は、技術者の数が売上の上限になる。
経営の資本の使い方は、まだ評価が定まらない。配当は、新しい計画で配当性向60%・DOE(株主資本に対する配当の割合)6%を下限に引き上げた。株主にはありがたい。しかし同じ計画で、400億円規模の買収枠も置いた。過去には都築の買収が目立った成果を出した例が少ない。筆者は、買収の規律を最も重く見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の企業向けICT投資は、人手不足と老朽システムの更新で、実質ではゆるやかに伸びている。生成AI、セキュリティ、クラウドへの移行が、新しい需要になっている。一方で、通信機器やパソコンなどの機器は、数量がほぼ横ばいで、性能あたりの値段は下がり続ける。都築が属する市場では、機器の伸びは期待しにくい。
競合は大きく2層に分かれる。NECや富士通、NTTデータなどの大手が大型案件を握り、都築のような中堅は、中堅企業と官公庁の地域案件、そして保守で戦う。同じ領域には、大塚商会や内田洋行がいる。顧客の数と営業網では、大塚商会が一回り大きい。
業界の景気の波は大きくない。ただし不況期には、企業が新規の投資を凍らせる。都築も2010年代前半には、営業利益率が1%前後まで落ちた。保守が下支えしても、機器と開発の落ち込みは避けられない。
長期の構造変化として、クラウドの普及で、機器を売る仕事は減る。顧客が自社でサーバーやネットワーク機器を持たず、サービスとして借りるからだ。都築はこれに対し、運用の仕事を増やして対応している。この転換がうまくいくかが、10年先の利益の質を決める。
資本政策と M&A
資本政策は、いま転換点にある。2026年5月に新しい中期計画「Trust & Challenge 2029」を発表した。配当性向の目安を40%から60%へ、配当の下限となるDOEを3.5%から6.0%へ引き上げた。2027年3月期の配当は、前期から大きく増える予想だ。
同じ計画で、成長投資に70億円、買収などの戦略投資に400億円を置いた。ROEは14.5%以上を目標にする。
株主構成は特徴的だ。麻生が24%、富士通が12.8%を持つ。麻生とは2017年に資本業務提携を結び、2024年に提携を更新して、取締役を1人受け入れている。この2社で議決権の約37%になる。親会社ではないが、買収の防波堤として働く一方、少数株主の発言力は弱い。
過去の買収は、2020年のコムデザインが目立つ程度で、大きなものはない。半導体関連の子会社4社は2023年にレスターへ売り、現金に換えた。持ち合いの株は約19億円で、時価総額に比べて小さい。
筆者は、400億円の買収枠が最大の分かれ目だと見る。時価総額の約半分にあたる額で、外れれば株主価値を大きく壊す。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
都築電気は、静かに稼ぐ力を高めている。営業利益は4期連続で最高を更新し、利益率は10年で1%台から8%近くへ上がった。人手不足と古いシステムの更新で、企業のICT投資は当面続く。都築は保守で毎年の収入を持っており、そこへセキュリティやクラウドの仕事を足せる。
財務は強い。時価総額の4割にあたる純現金があり、新しい計画ではROE14.5%以上を目標に、配当性向を60%まで引き上げた。現金が株主に戻るなら、1株あたりの価値は上がる。事業の利益が今の水準を保つだけでも、還元だけで年率の収益がかなり出る。
買収の枠にも前向きな見方ができる。同業の中堅企業を取り込めば、技術者と顧客が増える。麻生や富士通との関係は安定しており、買収の実行は落ち着いて進められる。利益率が9%台に乗れば、事業の利益は100億円を超え、今の値段は割安に見えてくる。
強気の根拠は、新しい計画にもある。ROE14.5%以上という目標は、今の13%台からさらに上を目指すもので、経営が資本の効率を意識していることを示す。富士通と麻生という安定した株主がいるため、短期の株価に振り回されず、長い目で投資できる。
慎重な見方
利益率の上昇は、景気のよい今の需要に支えられた面が大きい。機器は性能あたりの値段が下がり続け、クラウドの普及で売る機会そのものが減る。保守も、顧客がクラウドへ移れば縮む。富士通との販売契約は1年ごとの自動更新で、条件が変われば仕入れの条件が一気に悪くなる。
現金の使い方にも不安が残る。400億円規模の買収枠は、時価総額の半分に近い。都築は買収で成果を出した実績が乏しく、外れれば現金は消える。資本コストを超える買収先を見つけるのは、中堅企業には難しい。
株主構成も壁になる。麻生と富士通で議決権の37%近くを握り、少数株主が経営に口を出しにくい。配当を上げたのは前向きだが、DOE6%の下限は、利益が落ちた時に重荷になる。また売上1,000億円という規模では、大手のシステム会社と値段で競り合えない。今の値段は、現金と最高益を前提にしており、利益が少し落ちるだけで割高に変わる。
最後に、株価の面でも懸念がある。純現金を除いた事業の評価は、今の時価総額のほぼ6割にすぎない。残りは現金への期待で、その現金の戻り方が不透明なため、期待は裏切られやすい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、利益率の上昇と還元の強化という事実に裏付けられている。しかし堀が中程度で、利益が最高水準にあることを考えると、10年の中立の利益は今の水準を物価分だけ伸ばした程度にとどめるのが自然だ。現金の行き先が不明なうえ、400億円の買収枠が重い。確率は中立を最も厚くし、やや悲観側にも同程度を置いた。結果として、10年後の価値は今の時価総額を1割ほど下回る計算になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,107 円1,304 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,316 円425 億円)。 今の値に割り戻すと 4,964 円911 億円、今との差 +8.8%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 10,933 円2,006 億円 | 3,052 円560 億円 | +206.7% | +11.9% | 1,398 円257 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,701 円1,780 億円 | 2,725 円500 億円 | +172.5% | +10.5% | 2,734 円502 億円 |
| 中立 | 35% | 8,321 円1,527 億円 | 2,452 円450 億円 | +136.3% | +9.0% | 3,771 円692 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,612 円663 億円 | 2,071 円380 億円 | +24.6% | +2.2% | 1,307 円240 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,368 円251 億円 | 763 円140 億円 | −53.3% | −7.3% | 213 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,107 円1,304 億円 | 2,316 円425 億円 | +106.6% | +7.5% | 9,423 円1,729 億円 |
今の株価時価総額 4,560 円837 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% ICT 投資の波に乗り、買収も当たる 利益 100 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 10,933 円2,006 億円
人手不足と古いシステムの更新、セキュリティとクラウドの需要が10年続く。都築は開発・構築の人員を増やし、同規模の中堅企業を数社買って、技術者と顧客を取り込む。買収は大きく外れず、のれんの減損も出ない。サービスの収入が積み上がり、機器の利益率の低さを補う。
配当性向60%の方針は守られ、自社株買いも加わる。麻生と富士通との関係は安定している。営業利益率は9%台に乗り、事業の利益は今の約1.8倍になる。それでも技術の独自性は乏しく、大手との競争は続く。ROEは目標の14.5%に近づく。
筆者の目には、この筋書きの鍵は人の確保にある。技術者が採れれば、需要はいくらでもある。採れなければ、買収で補うしかない。買収が当たる確率は高くないが、当たれば利益の伸びは物価を大きく上回る。
- 機器:数量 35,000(国内の企業向け機器市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.6%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 555 億円・営業利益 28 億円。数量は横ばい、値段は性能あたりの下落で 1.28 倍(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- 開発・構築:数量 47,959(国内の企業向けシステム開発・構築市場(実質)(億円・実質))× 価格 0.8%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 373 億円・営業利益 34 億円。数量 1.6 倍(需要と買収)(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- サービス:数量 47,998(国内の運用保守・マネージドサービス市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.4%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 691 億円・営業利益 86 億円。数量 1.2 倍(クラウド運用の積み上がり)(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
倍率:事業の純利益 97 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 18.74 倍、時価総額 1,972 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:400億円の買収を成功させ、利益率も 9% 台へ上げる必要があり、揃う確率は高くない。新計画の ROE 目標を大きく超える筋書きでもある。
やや楽観 22% 会社の計画どおりに利益が伸びる 利益 88 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 9,701 円1,780 億円
開発・構築がセキュリティやクラウドの案件で伸び続け、サービスの保守も保たれる。機器は数量が横ばいで、利益率は薄いままだ。買収は小粒のものが中心で、のれんの減損は出ない。
配当は性向60%を守り、利益の増加がそのまま株主に返る。営業利益率は8%台後半で安定する。大手との競争は続くが、保守契約の切り替えにくさが、極端なシェア低下を防ぐ。
10年後、都築は今より少しだけ大きな、安定した中堅のICT会社になっている。保守の収入が土台にあり、機器の薄い利益を支える。株主への還元は厚いままで、現金は積み上がりすぎない。大きな成功も大きな失敗もなく、会社の計画どおりに進む。
- 機器:数量 34,653(国内の企業向け機器市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.6%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 550 億円・営業利益 28 億円。数量ほぼ横ばい(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- 開発・構築:数量 42,007(国内の企業向けシステム開発・構築市場(実質)(億円・実質))× 価格 0.8%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 326 億円・営業利益 26 億円。数量 1.4 倍(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- サービス:数量 44,004(国内の運用保守・マネージドサービス市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.4%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 633 億円・営業利益 76 億円。数量 1.1 倍(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 18.55 倍、時価総額 1,730 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率の改善は続いており、新計画の ROE 14.5% 以上へ近づく流れも出ている。会社の目標の延長線上にある筋書きとして置いた。
中立 35% 利益は物価並みに伸び、現金の一部は戻る 利益 76 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 8,321 円1,527 億円
開発・構築は人手不足を追い風に、数量が2割ほど増える。サービスはほぼ横ばいから微増で、クラウドへの移行が保守を少しずつ削る。機器は数量が横ばいで、値段は性能あたりの下落でほぼ物価の伸びに届かない。
営業利益率は今と同じ8%近辺で落ち着く。買収は小粒で、のれんの減損はない。配当は性向60%近くを保ち、現金の一部は自社株買いなどで戻るが、残りは手元に積み上がる。大手と競り合う中堅として、堅実に利益を積む10年になる。
筆者がこの筋書きを中心に置くのは、堀の深さが並みだからだ。保守の契約は強いが、機器と開発は景気に左右される。10年を通せば、良い年と悪い年が混じり、利益は物価に沿って伸びる。
- 機器:数量 33,967(国内の企業向け機器市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.6%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 539 億円・営業利益 24 億円。数量 0.97 倍(性能あたりの値下がりで値段は 1.28 倍)(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- 開発・構築:数量 37,435(国内の企業向けシステム開発・構築市場(実質)(億円・実質))× 価格 0.8%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 291 億円・営業利益 22 億円。数量 1.25 倍(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- サービス:数量 41,993(国内の運用保守・マネージドサービス市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.4%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 604 億円・営業利益 70 億円。数量 1.05 倍(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 18.05 倍、時価総額 1,471 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益の上昇に勢いはあるが、不況期の落ち込みと機器の利益率の低さがある。両方の言い分が拮抗するため、中立を最も厚くした。
やや悲観 23% 機器と保守が削られ、利益率が下がる 利益 54 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 3,612 円663 億円
クラウド化が思ったより早く進み、機器の数量が1割減る。値段は下がり続け、機器の利益率は4%を割る。保守も、顧客が自前の設備を減らすことで、数量がわずかに縮む。
セキュリティなどの新しい仕事は伸びるが、人手の確保で費用が増え、開発・構築の利益率は上がらない。買収は小規模のものが外れ、小さな減損が出る。配当は性向を保てず、利益に合わせて減る。事業は続くが、最高益の時期は遠ざかる。
株主の目から見れば、悪い筋書きではない。会社は赤字にならず、配当も出る。ただ、最高益の水準が続かないだけだ。ここまで利益率が下がると、今の値段で買った株主には重い。
- 機器:数量 31,466(国内の企業向け機器市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.5%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 468 億円・営業利益 18 億円。数量 0.9 倍・値段の下落(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- 開発・構築:数量 30,000(国内の企業向けシステム開発・構築市場(実質)(億円・実質))× 価格 0.8%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 233 億円・営業利益 14 億円。数量横ばい(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- サービス:数量 38,799(国内の運用保守・マネージドサービス市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.4%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 542 億円・営業利益 54 億円。数量 0.97 倍・値上げの鈍化(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
倍率:事業の純利益 52億円・事業 ROE 約 10%。上限は約 13.9倍だが、堀が削られ伸びも鈍る筋書きなので、約 7 割にとどめた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 606 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:利益率が最高水準にあり、不況やクラウド移行で下がる余地がある。富士通との契約条件が変わる可能性も、この筋書きの確率を支えている。
悲観 10% 仕入れと顧客を失い、買収も失敗する 利益 22 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,368 円251 億円
富士通との販売契約の条件が悪くなり、機器の仕入れ価格が上がる。顧客はクラウドへ移り、機器と保守の数量が2割前後減る。大手のシステム会社が中堅企業の案件まで取り、開発・構築の値段は上がらない。
同時に、400億円規模の買収が外れ、大きな減損が出る。手元の現金は大きく減る。配当は性向もDOEの下限も守れず、大幅に減る。営業利益率は3%台まで下がり、事業は小さな保守会社に戻る。
筆者はこの筋書きを、起こりにくいが無視できないものと見る。富士通との契約、クラウド化、買収の3つが同時に悪くなるのは稀だ。それでも現金が厚いため、会社の存続は揺るがない。
- 機器:数量 26,222(国内の企業向け機器市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.4%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 374 億円・営業利益 9 億円。数量 0.75 倍(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- 開発・構築:数量 23,979(国内の企業向けシステム開発・構築市場(実質)(億円・実質))× 価格 0.7%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 174 億円・営業利益 5 億円。数量 0.8 倍(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
- サービス:数量 33,985(国内の運用保守・マネージドサービス市場(実質)(億円・実質))× 価格 1.3%(都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0))→ 売上 438 億円・営業利益 26 億円。数量 0.85 倍(市場×シェア。シェアは一定、市場の実質の伸びを数量に置いた)
倍率:事業 ROE は k 以下で、上限は 1÷k=12.5倍。構造的に負けた後の利益はならしても伸びないので、約 6 割に抑えた。現金は床の資産として別に見る。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8 倍・時価総額 251 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:富士通との契約の悪化、クラウドへの急な移行、400億円の買収の失敗が重なる必要があり、頻度は低い。ただし1年更新の販売契約と買収枠があるため、5% 未満にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
機器
通信機器・ネットワーク機器・パソコンなどを、企業や官公庁に販売する。仕入れの中心は富士通グループ。
| 数量国内の企業向け機器市場(実質)(億円・実質) | 価格都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35,000 | 1.2% | 434 | 20 |
| 10 年後 中立 | 33,967 | 1.6% | 539 | 24 |
取り方:国内の企業向けネットワーク・通信・端末機器の市場は数兆円規模と推定され、都築のシェアは 1% 台前半とみる(市場規模は推定)。セグメント別の利益は非開示のため、利益率 4.6% は全体の営業利益 82億円に合わせた推定。 市場規模は推定で、都築のシェアは売上÷市場。
開発・構築
ネットワークやシステムの設計・導入・ソフト開発を、人の稼働で請け負う。
| 数量国内の企業向けシステム開発・構築市場(実質)(億円・実質) | 価格都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30,000 | 0.6% | 174 | 12 |
| 10 年後 中立 | 37,435 | 0.8% | 291 | 22 |
取り方:国内の SI・開発市場は数兆円規模と推定され、都築のシェアは 1% に届かない。前期比 13.6% 増と伸びが速い。利益率 6.9% は全体に合わせた推定。 市場規模は推定で、都築のシェアは売上÷市場。
サービス
運用保守、クラウド、セキュリティの監視など、毎年の契約収入が続く仕事。利益の大半をここで出す。
| 数量国内の運用保守・マネージドサービス市場(実質)(億円・実質) | 価格都築のシェア × 値段の指数(今期の指数=1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40,000 | 1.1% | 430 | 50 |
| 10 年後 中立 | 41,993 | 1.4% | 604 | 70 |
取り方:国内の運用保守市場は数兆円規模と推定。都築の保守は官公庁・大企業の通信設備が土台。前期比 0.8% 増と伸びは鈍い。利益率 11.6% は全体に合わせた推定。 市場規模は推定で、都築のシェアは売上÷市場。
リスクと懸念
400億円規模の買収の失敗
新しい計画は、買収などの戦略投資に400億円規模を置いた。時価総額の約半分にあたる額で、外れれば現金とのれんの減損で株主価値が大きく削れる。都築は買収で目立った成果を出した例が少ない。買収の規律が、最大の分かれ目になる。
富士通への仕入れの依存
機器の主な仕入先は富士通で、販売パートナー契約は1年ごとに自動更新される。富士通は都築の12.8%の株主でもあるが、条件が変われば、仕入れ価格と取り扱う商品が一気に変わる。独自の商品戦略の自由度は小さい。
クラウド化による機器と保守の縮小
顧客が自前のサーバーや通信機器を持たなくなれば、機器の販売も保守も縮む。都築は運用サービスへ軸足を移しているが、その速さが顧客の移行に追いつくかは不明だ。機器は売上の4割を占めており、影響は大きい。
最高益の水準からの反落
営業利益率は7.9%と、過去の最良の水準にある。不況期にICT投資が凍結されると、機器と開発から先に落ちる。2010年代前半には利益率が1%前後まで下がった。今の利益を平常と見なすのは危うい。
人手不足と人件費の上昇
開発・構築と運用は、技術者の数が売上の上限になる。人件費は物価以上に上がる恐れがある。値段に転嫁できなければ利益率が下がる。採用と定着に失敗すると、需要があっても取り込めない。
筆頭株主と少数株主の関係
麻生が24%、富士通が12.8%を持ち、取締役も受け入れている。買収の防波堤になる一方、少数株主の意見は通りにくい。配当や買収の判断が、少数株主の利益と一致しない恐れもある。
今後の分かれ目
- 400億円規模の買収が発表され、価格がのれんを大きく含むものだった場合
- 余った現金の戻り方を低く見直し、やや悲観側に確率を移す。買収の相手と価格が、事業の稼ぐ力に見合うかを確かめる。
- 配当性向60%を超える自社株買いが発表された場合
- 現金の戻り方を高く見直す。強気側の確率を上げてよい。
- 富士通との販売パートナー契約の条件が変更された場合
- 機器の利益率と数量を引き下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が9%を超えて定着した場合
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。ただしサービスの伸びか、機器の一時的な需要かを分けて見る。
- 企業のICT投資が不況で凍結され、受注が落ちた場合
- 開発・構築と機器から先に落ちる。やや悲観側に確率を移す。
- 麻生または富士通が持ち株を売却した場合
- 買収の防波堤が崩れ、株主構成が変わる。提案される価格が本質価値を上回るかで判断する。
見ておくもの
- サービスと開発・構築の売上の伸び(機器との比率)
- 営業利益率が8%台を保てるか
- 戦略投資400億円の使い道と、自社株買いの有無
- 富士通との販売パートナー契約の更新条件
- 麻生・富士通の持ち株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価や同業の倍率には寄せていない。機器・開発構築・サービスの3つを、市場規模×シェアの実質の取扱高と値段の指数で積み、利益率は事業の構造から置いた。k は基本7.5%に quality +0.5%、堀は普通、長期の g は4%まで。中立〜楽観は正当化PERの8.5〜9割に置いた。純現金が厚いので200億円を余りとして分け、戻り方は買収枠と筆頭株主の存在から0.5とした。本社などの賃借と PC のリースがあり、2028年3月期から新リース会計で BS の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.3→18.74 倍・やや楽観 PER 14→18.55 倍・中立 PER 13.4→18.05 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した(決まり v2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。