結論
理経は、海外のメーカーの電子部品やソフトを国内に売る、社員180人ほどの技術商社だ。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正だ。いまの利益の大半は、自衛隊のヘリコプターのエンジンを海外で修理する仕事から来ており、その山は10年続かないと見るが、市場もすでにそう値付けしている。
売上は3年で100億円から195億円へ倍になった。伸びた分のほとんどが防衛省向けだ。国内でエンジンを直すと4年かかり、海外なら1〜2年で済む。この詰まりを子会社のエアロパートナーズがすくい取った。
防衛費が増える流れは確かに追い風だ。だが、国内の修理の体制が整えば、海外へ回す理由は薄れる。会社自身も、2027年3月期は営業利益が4割減ると見込む。防衛以外の事業は、営業利益率2%前後の地味な商社に戻る。
筆者は、防衛の仕事が細りながら残る姿を真ん中に置いた。その姿では資本コストをわずかに下回る稼ぎにとどまるが、利益をためた現金を数えると、今の時価総額とほぼ釣り合う。
財務は軽く、配当性向30%の方針もある。下値の支えはあるが、上値を買うだけの確かな柱がまだ無い会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、理経は「一度きりかもしれない幸運をつかんだ、ふつうの商社」だ。
防衛の修理の仕事は、確かに上手く取った。国内の詰まりを見て、海外の整備会社とつないだ判断は経営の手柄だ。だが、その利益は客の都合で生まれ、客の都合で消える。10年後も同じ形で稼げるかは、理経が決められない。
防衛を除いた事業は、資本コストを下回る利益率で回っている。オーナーとして持ち続けたい事業とは言いにくい。
安全域を考えると、今の時価総額は防衛の山がならされる前提とほぼ同じだ。筆者は、防衛の山がならされた姿を真ん中に置く。値段は妥当だが、安全域と呼べる余裕は無い。
もちろん、防衛の山が長く続けば、話は変わる。配当性向30%の方針どおりに利益を戻し、宇宙の芽が育てば、今の値段は安かったことになる。だが筆者は、客の判断ひとつで消える利益に、上乗せの値段を払うことはしない。分からない部分が大きい会社では、確信度を下げて見るのが筋だ。
何で稼ぐ会社か
理経は1957年創業の技術商社だ。海外のメーカーを中心に、電子部品・計測機器・ソフトを仕入れ、官公庁・大学・製造業・放送局に売る。自分で工場は持たない。
稼ぎの柱は電子部品及び機器の部門で、売上の7割を占める。中身の8割は防衛省向けだ。子会社のエアロパートナーズが、自衛隊のヘリコプターのターボシャフトエンジンを米国などの整備会社に送って直す。チャフ・フレア、給油ホース、防弾板といった装備品も納める。防衛以外では、光ファイバの関連品や導電性の接着剤、衛星に載せる部材を扱う。
システムソリューションの部門は売上の2割だ。大学のIT基盤、3D CAD、車の開発に使うVR、電力の系統を解析するソフトなどを売り、保守で稼ぐ。ネットワークソリューションの部門は1割で、自治体のJアラートの受信機や、衛星通信の地上局のアンテナを納める。
商社なので、利益の源は仕入れと売値の差と、技術の支援の手数料だ。値段の主導権は、多くの場合、メーカーか買い手の側にある。
社員は連結で180人ほど、拠点は国内7か所と香港にある。取り扱うメーカーの7割は海外の会社だ。
優良さと弱いところ
理経の強みは、防衛と衛星通信という参入の難しい売り先に、40年かけて築いた口座だ。防衛省の調達に入るには実績と信用が要り、新参が簡単には割り込めない。海外修理の段取りも、メーカーとの長い付き合いがあってこそ回る。
だが、堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほど太くはない。扱う品の多くは海外メーカーの製品で、代理の権利はメーカーの都合で動く。防衛の仕事は防衛省という1つの客に寄り、修理の外注先をどこにするかは客が決める。
資本の効率は、ここ3年で大きく変わった。ROEは10年の中央値3%から、直近2期は12%台に上がった。ただ、その差はほぼ防衛の山の分だ。防衛を除いた事業は、営業利益率2%前後で資本コストに届かない。
経営は、防衛の山を「稼ぐ力の強化」と呼ぶ。筆者はその言葉を半分だけ信じる。客の都合で来た山を、自分の力で守れる形に変えられるかが、これからの10年の勝負だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
理経の需要を決めるのは、国の防衛費と、大学・自治体・製造業のITの投資だ。
防衛費は2023年度から大きく増えた。装備品の維持整備の費用も膨らみ、令和8年度の概算要求は2兆円を超える。修理を待つ機体が積み上がり、国内の整備会社は人手が足りない。大手は利益の厚い新しい装備の開発へ人を移した。だから海外での修理が選ばれた。
この構図は長くは固定されない。防衛省は国内の整備の基盤を立て直す方針で、詰まりがほどければ海外へ回す量は減る。米国の部品の調達や修理も、中東やウクライナの戦争で遅れがちだ。追い風の中にも、納期の揺れという向かい風がある。
防衛以外の市場は成熟している。大学のIT基盤、自治体の防災の無線、放送の設備は、数量がほぼ横ばいで、入札で値段を叩かれやすい。伸びしろは宇宙だ。国の宇宙戦略基金は1兆円規模で、低軌道の衛星の部材や地上のアンテナが動き出した。ただ、理経の売上に効くのはまだ先だ。
競合は、防衛では大手の重工や商社系の整備会社、IT では大塚商会のような大きな販売会社や、メーカー系の SI の会社だ。理経は規模で勝てないので、特殊な品と細かい技術の支援で隙間を取る。その隙間は狭いが、大手が入りにくい場所でもある。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は配当性向30%で、前期の配当の額を下限として保つ。2026年3月期の配当は総額1億円余りで、性向は14%にとどまった。利益の急増に配当が追いついていない。創立70周年の記念の配当も検討している。
自社株買いはほぼしていない。自己株は発行済の2%余りで、2026年8月にも処分した。親会社はなく、M&Aは会社を大きくする投資として中期計画に書かれている。
財務は軽い。純現金は9億円ほどだが、防衛の修理は仕入れから代金の回収までが長く、短期の借入も増えた。手元の現金は運転資金と見るのが妥当だ。
利益が戻る筋では配当は増えるが、余った現金を自社株買いに回す姿勢はまだ見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防衛の仕事は一時の山ではない。防衛費はGDPの2%へ増え、さらに上がる議論もある。装備品の維持整備の予算は年々膨らみ、修理を待つ機体は減らない。国内の整備会社は人手不足で、大手は新しい装備の開発に人を回した。海外修理の需要は少なくとも数年は続く。
理経はエアロパートナーズで米国の整備会社との口座を持ち、実績を積んだ。防衛省の調達で信用を一度得れば、次の機種や部品にも広げやすい。チャフ・フレアや給油ホースなど、装備品の幅も広がっている。
宇宙という新しい柱も育ちつつある。国の基金は1兆円規模で、低軌道の衛星の部材、地上のアンテナ、製品の設計を管理するソフトで案件が出始めた。KDDIの宇宙のプログラムにも加わった。
財務も軽い。純現金で、配当性向30%の方針がある。利益が戻れば配当は今の倍になってもおかしくない。中期計画の2028年3月期の目標は、すでに2026年3月期に越えた。
株価が利益の倍になったわけでもない。防衛の山がならされると見る人が多い今こそ、本当の値打ちとのずれが大きい、と強気の側は言う。
慎重な見方
利益の7割が、防衛省という1つの客と、ヘリのエンジンの海外修理という1つの仕事に乗っている。この形は脆い。修理を国内に戻すか海外に出すかは、客が決める。防衛省は国内の整備の基盤を立て直す方針だ。詰まりがほどければ、海外へ回す理由は消える。
会社自身も弱気だ。2027年3月期は、売上を189億円、営業利益を7.4億円と見込む。前期から4割の減益で、理由は米国での部品の調達と修理の遅れだ。戦争が続く限り、納期は読めない。
防衛を除くと、理経はふつうの商社だ。2015年3月期から2023年3月期まで、営業利益率は2%前後か赤字だった。海外メーカーの代理は、メーカーの直販や代理店の乗り換えで失いうる。大学や自治体の案件は入札で、値段を叩かれる。
宇宙はまだ夢の段階だ。売上に効くのは早くて数年先で、規模も小さい。防衛の山が引いたあと、それを埋めるだけの柱は見えない。
人の費用も重い。社員180人の会社で、ベースアップと採用の強化は利益率を直接削る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。防衛費が増える流れは確かだが、理経の利益は「海外へ修理を出す」という客の判断に乗っている。その判断は国内の体制が整えば変わり、会社自身も来期の減益を見込む。中立は防衛の仕事が細りながら残る姿とし、確率は悲観の側に少し寄せた。宇宙の芽は楽観の側に入れた。防衛費の増額そのものは中立にも入れ、件数の細りだけを慎重に見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 665 円101 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 124 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 362 円55 億円、今との差 +0.8%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,154 円175 億円 | 181 円28 億円 | +271.9% | +14.0% | 107 円16 億円 |
| やや楽観 | 20% | 955 円145 億円 | 154 円23 億円 | +209.1% | +11.9% | 222 円34 億円 |
| 中立 | 37% | 777 円118 億円 | 129 円20 億円 | +152.4% | +9.7% | 335 円51 億円 |
| やや悲観 | 23% | 363 円55 億円 | 99 円15 億円 | +28.6% | +2.5% | 106 円16 億円 |
| 悲観 | 12% | 91 円14 億円 | 70 円11 億円 | −55.1% | −7.7% | 19 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 665 円101 億円 | 124 円19 億円 | +119.9% | +8.2% | 790 円120 億円 |
今の株価時価総額 359 円54 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 防衛と宇宙の二本足で伸びる 利益 13 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 1,154 円175 億円
防衛費の増額が続き、装備品の維持整備の予算は10年で大きく膨らむ筋書きだ。国内の整備の人手不足は解けず、ヘリのエンジンの海外修理は件数を増やす。エアロパートナーズは機種を広げ、装備品の納入も増える。
宇宙の仕事も育つ。低軌道の衛星の部材と地上のアンテナが、国の基金の案件で売上になる。システムの部門も、衛星の会社に設計の管理のソフトを売る。
営業利益率は6%台を保ち、配当性向30%の還元が続く。理経は「防衛と宇宙の技術商社」として、ふつうの商社より一段上の稼ぎを持つ会社になる。
防衛の利益が続くうちに、宇宙の柱を育てられるかが分かれ目になる。
- 防衛関連(エンジンの海外修理・装備品):数量 180(修理・調達の案件(エンジン 1 台の修理に換算した件数・推定))× 価格 9,814(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 177 億円・営業利益 12 億円。180 件×9,814 万円(1.40 倍)、7%
- 電子部品・機器(防衛以外):数量 360(取引先の数(推定))× 価格 1,350(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 49 億円・営業利益 3 億円。360 社×1,350 万円(1.39 倍)、6%
- システムソリューション:数量 650(構築・保守の案件の数(推定))× 価格 870(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 57 億円・営業利益 3 億円。650 件×870 万円(1.38 倍)、5%
- ネットワークソリューション:数量 150(納入の案件の数(推定))× 価格 2,000(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。150 件×2,000 万円(1.35 倍)、4%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.61 倍、時価総額 158 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛費の一段の増額で海外修理が続き、宇宙の部材も育つ筋。両方がそろう必要があるので8%とした。
やや楽観 20% 防衛の仕事が今の規模で続く 利益 10 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 955 円145 億円
国内の整備の立て直しが遅れ、海外修理が今に近い件数で続く筋書きだ。防衛省は維持整備の予算を増やし、待っている機体を早く戻したい。理経は米国の整備会社との口座を守り、件数は少し減るが単価は物価並みに上がる。
防衛以外の事業は、光ファイバの関連品やシステムの保守で少しずつ伸びる。宇宙は小さな柱にとどまる。
営業利益率は6%前後を保つ。ROEは資本コストをわずかに上回り、配当は性向30%で今の2倍近くになる。
宇宙と光ファイバの芽が小さく育ち、防衛の偏りは少しだけ薄まる。会社は配当性向30%の方針を守り、余った現金は少しずつ積み上がる。
- 防衛関連(エンジンの海外修理・装備品):数量 150(修理・調達の案件(エンジン 1 台の修理に換算した件数・推定))× 価格 9,534(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 143 億円・営業利益 10 億円。150 件×9,534 万円(1.36 倍)、7%
- 電子部品・機器(防衛以外):数量 330(取引先の数(推定))× 価格 1,300(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。330 社×1,300 万円(1.34 倍)、5.5%
- システムソリューション:数量 620(構築・保守の案件の数(推定))× 価格 850(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。620 件×850 万円(1.35 倍)、4.5%
- ネットワークソリューション:数量 135(納入の案件の数(推定))× 価格 1,990(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。135 件×1,990 万円(1.35 倍)、3.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.34 倍、時価総額 126 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外修理が今の件数に近いまま10年続く筋。国内の整備の立て直しが遅れる場合で、20%とした。
中立 37% 海外修理が細りながら残る 利益 8 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 777 円118 億円
防衛省が国内の整備の体制を少しずつ立て直し、海外へ回す修理が減る筋書きだ。それでも詰まりは一気には解けず、理経の件数は今の8割ほどで落ち着く。単価は物価並みに上がり、防衛の売上は名目ではほぼ今の水準を保つ。
利益率は少し下がる。米国での部品の調達の遅れと、人を増やす費用が重なるからだ。防衛以外の事業は、営業利益率3〜5%の商社のまま、物価並みに売上を伸ばす。宇宙は芽が出るが、大きな柱にはならない。
全社の営業利益率は5%台で、ROEは資本コストをわずかに下回る。利益の質は、防衛の山の前よりは良く、山の頂よりは悪い。
この姿が、防衛の山を客の都合で得た会社の、いちばんありそうな10年だと筆者は考える。
- 防衛関連(エンジンの海外修理・装備品):数量 130(修理・調達の案件(エンジン 1 台の修理に換算した件数・推定))× 価格 9,393(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 122 億円・営業利益 8 億円。130 件×9,393 万円(1.34 倍)、6.5%
- 電子部品・機器(防衛以外):数量 330(取引先の数(推定))× 価格 1,300(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。330 社×1,300 万円(1.34 倍)、5%
- システムソリューション:数量 600(構築・保守の案件の数(推定))× 価格 844(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。600 件×844 万円(1.34 倍)、4%
- ネットワークソリューション:数量 130(納入の案件の数(推定))× 価格 1,976(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。130 件×1,976 万円(1.34 倍)、3%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.87 倍、時価総額 100 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の整備が少しずつ戻り、海外へ回す修理は2割減るが仕事は残る筋。会社の来期の減益見込みとも合い、37%とした。
やや悲観 23% 海外修理が半分に縮む 利益 5 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 363 円55 億円
国内の整備の体制が予想より早く整い、海外へ回す修理が半分になる筋書きだ。防衛省は国内の産業の基盤を守るため、修理を国内に戻す。理経に残るのは、国内で直せない機種の修理と装備品の納入だけになる。
防衛以外の事業も冴えない。海外メーカーの1つが直販に切り替え、光ファイバの関連品の売上が減る。大学や自治体の案件は入札で値段が下がる。
全社の営業利益率は4%を切り、ROEは5%前後に落ちる。配当は方針の下限に近づく。
防衛の仕事が残る分、山の前の姿よりは稼ぐが、資本コストには遠く届かない。手元の現金は運転資金として寝たままになる。
- 防衛関連(エンジンの海外修理・装備品):数量 80.0(修理・調達の案件(エンジン 1 台の修理に換算した件数・推定))× 価格 9,393(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 4 億円。80 件×9,393 万円(1.34 倍)、5%
- 電子部品・機器(防衛以外):数量 280(取引先の数(推定))× 価格 1,250(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。280 社×1,250 万円(1.29 倍)、4%
- システムソリューション:数量 560(構築・保守の案件の数(推定))× 価格 820(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円。560 件×820 万円(1.30 倍)、3%
- ネットワークソリューション:数量 110(納入の案件の数(推定))× 価格 1,900(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。110 件×1,900 万円(1.29 倍)、2%
倍率:ROE 4.7%はk 9%を大きく下回る。PERの上限1÷kの11.8倍に対し、稼ぎの細りが続くので8.5倍。PBRは0.4倍で中立の0.8倍より低い。
確率:国内の整備の立て直しが進み、海外修理が半分になる筋。防衛省の方針の向きから23%とした。
悲観 12% 防衛の仕事を失い、昔の商社に戻る 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 91 円14 億円
防衛省が海外修理の外注先を変えるか、修理を国内に戻し、理経の防衛の仕事がほぼ消える筋書きだ。残るのは小さな装備品の納入だけだ。
会社は2023年3月期以前の姿に戻る。売上は100億円前後、営業利益率は2%前後だ。海外メーカーの代理の1つも失い、ネットワークの部門は赤字すれすれになる。宇宙の仕事は育たない。
利益はほぼ出ず、配当は方針の下限を守るだけになる。手元の現金は運転資金と配当に食われ、ためた利益は資本コストを生まない。
防衛の仕事の喪失は、1客に頼った商社の典型的な負け方だ。残るのは純現金と、縮んだ事業から戻る運転資金くらいだ。
- 防衛関連(エンジンの海外修理・装備品):数量 20.0(修理・調達の案件(エンジン 1 台の修理に換算した件数・推定))× 価格 9,393(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。20 件×9,393 万円、3%
- 電子部品・機器(防衛以外):数量 250(取引先の数(推定))× 価格 1,200(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。250 社×1,200 万円(1.24 倍)、3%
- システムソリューション:数量 520(構築・保守の案件の数(推定))× 価格 800(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。520 件×800 万円(1.27 倍)、1.5%
- ネットワークソリューション:数量 100(納入の案件の数(推定))× 価格 1,850(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。100 件×1,850 万円(1.25 倍)、0%
倍率:ROE 1.6%で稼ぐ力はほぼ無い(純利益÷kは約15億円)。値は床の資産で付ける:純現金9億円と、防衛の仕事が消えて戻る売掛金・前渡金の運転資金約5億円の計14億円。今の自己資本60億円に掛けるとPBR 0.23倍。
確率:海外修理の外注先が変わるか国内に戻り、防衛の仕事がほぼ消える筋。1客への偏りの大きさから12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
防衛関連(エンジンの海外修理・装備品)
子会社エアロパートナーズを通じ、自衛隊のヘリコプターのエンジンを海外で修理し、チャフ・フレアや給油ホースなどの装備品も納める。
| 数量修理・調達の案件(エンジン 1 台の修理に換算した件数・推定) | 価格1 件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 158 | 7,010 | 111 | 9 |
| 10 年後 中立 | 130 | 9,393 | 122 | 8 |
取り方:防衛省向けの売上 110.77 億円(説明資料)を、エンジンの海外修理 1 台あたり約 7,000 万円とみて 158 件に換算した推定。利益は電子部品及び機器の営業利益 10.36 億円を、防衛 8% 前後・その他 5% に分けた推定。
電子部品・機器(防衛以外)
光ファイバの関連品、導電性の接着剤、衛星に載せる部材などを海外のメーカーから仕入れて、メーカーや研究機関に売る。
| 数量取引先の数(推定) | 価格1 取引先あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 970 | 29 | 1 |
| 10 年後 中立 | 330 | 1,300 | 43 | 2 |
取り方:電子部品及び機器 139.85 億円から防衛省向け 110.77 億円を引いた 29.08 億円を、取引先 300 社・1 社 970 万円と置いた推定。
システムソリューション
大学・自治体・製造業に IT 基盤の構築、3D CAD、VR、電力の系統解析のソフトなどを売り、保守で稼ぐ。
| 数量構築・保守の案件の数(推定) | 価格1 件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 630 | 38 | 2 |
| 10 年後 中立 | 600 | 844 | 51 | 2 |
取り方:セグメントの売上 37.77 億円を、案件 600 件・1 件 630 万円と置いた推定(件数の開示は無い)。
ネットワークソリューション
自治体の防災情報の配信(J アラートの受信機)、放送・衛星通信の地上局のアンテナ設備を納める。
| 数量納入の案件の数(推定) | 価格1 件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 1,477 | 18 | 0 |
| 10 年後 中立 | 130 | 1,976 | 26 | 1 |
取り方:セグメントの売上 17.73 億円を、案件 120 件・1 件 1,480 万円と置いた推定。営業利益は 0.17 億円で、期ずれで振れる。
リスクと懸念
防衛省の1客への偏り
利益の7割が防衛省向けで、その多くがヘリのエンジンの海外修理だ。修理を国内に戻すか、外注先を変えるかは客が決める。方針が変われば、利益は数年で山の前に戻る。
米国での部品の調達と修理の遅れ
修理の多くは米国の整備会社に頼る。中東やウクライナの戦争で部品の取り合いが起き、納期が延びている。売上の期ずれが続けば、利益は年ごとに大きく振れる。
海外メーカーの代理の権利
扱う品の7割は海外のメーカーの製品だ。メーカーが直販に切り替えるか、別の代理店を選べば、その品の売上は消える。代理の権利の厚さは開示されていない。
防衛以外の稼ぐ力の弱さ
防衛を除いた事業は、2015年3月期から2023年3月期まで営業利益率2%前後か赤字だった。大学や自治体の案件は入札で、値段を上げにくい。
人手の不足と人件費
社員は180人ほどで、技術の支援ができる人が要る。会社はベースアップと採用の強化を掲げ、来期の減益の理由にも挙げた。小さな会社ほど人の費用が利益率に響く。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の防衛省向けの売上が100億円を割ったら
- 海外修理の細りが早いと見て、やや悲観に重みを移す。
- 防衛省が国内の整備の体制を立て直す予算を大きく増やしたら
- 海外へ回す理由が薄れるので、中立の防衛の件数をもう一段下げる。
- エアロパートナーズが新しい機種や装備品の修理を受けたら
- 1本足から2本足になる証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 宇宙の部材やアンテナの売上が年10億円を超えたら
- 防衛の後を継ぐ柱が見えたとして、楽観の確率を上げる。
- 配当性向30%を超える還元や自社株買いを始めたら
- 利益を株主に戻す姿勢が強まったとして、資本の使い方の評価を上げる。
見ておくもの
- 防衛省向けの売上(説明資料の安全保障関連の欄)
- 電子部品及び機器の営業利益率
- 防衛省の維持整備の予算と国内の整備の方針
- 宇宙関連の受注の件数と金額
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ずに、各筋書きのROEとk 9%から決めた。中立のROEは7.9%でkを下回るので、PERは1÷kの11.8倍を上限とし、1客への偏りで8.5割の10倍にした。防衛の売上の起点は会社の来期計画ではなく2026年3月期の実績で、中立は件数を2割減らした。briefの来期予想(246億円)は会社計画(189億円)と食い違うので使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→12.61 倍・やや楽観 PER 11.8→12.34 倍・中立 PER 10→11.87 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。